2023年1月31日火曜日

日本のピエールエルメのお店にビックリした! PIERRE HERMEとピエールエルメ

  


 現在、日本で仕事をしている娘が時々、自分が美味しいものを食べたり、これが、こんな値段で売られているとか、私の好きなお店とか、フランスにゆかりのあるものなどを見つけたりすると写真を送ってくれるのですが、つい最近、娘が送ってくれたのは、ピエールエルメのお店の写真でした。

 「偽物かと思ったら、ホンモノだった・・ダサすぎ・・」と。

 正直、私も正直、「なにこれ?」とビックリしました。

 パリにピエールエルメのお店はかなりありますが、どこの店舗もおしゃれで洗練されていて、同時期でも場所によって、デコレーションは違いますが、それぞれに、イメージのコンセプトがはっきりしていてカッコいいのです。

 私は、正直、そんなに興味もないので、通りすがりに外から眺める程度なのですが、今回、彼女が送ってくれた写真には、びっくりしました。

 日本人でも読みやすいようにカタカナ表記にしたのかもしれませんが、イメージや店舗のデコレーション、デザインなどには、ことさら気を配っていると思っていたピエールエルメ(というか、全般的にフランスのブランドのお店)がまさかのこの表記には、ビックリです。

 見慣れない分、違和感も強いのだと思いますが、100歩譲ってカタカナ表記にするとしても、せめて、そのカタカナの書体(字体)くらいはもう少し選んでもよかったのではないか?と。

 まぁ、これは、失礼な言い方をすれば、かなりマイナーな地域にできた店舗なのかな?と思いきや、なんと、これは渋谷の店舗なのだと聞いて、二重にビックリしました。

 これまでも、ピエールエルメは、かなり商魂たくましいという印象があり、今はパリにもかなり店舗が増え、ギャラリーラファイエットなどには、すべての階にピエールエルメのスタンドがある?と思うくらいですが、一時はフランスよりも日本の店舗数の方が多いくらいで、日本は完全にマーケットのターゲットになっているんだな・・と思ったこともありました。

 最近では、コンビニスイーツに参入したり、高級イメージで売っていたはずなのに、大丈夫なの?と思ったりもしました。

 もう数年前になりますが、シャンゼリゼの真ん中にロクシタンとのコラボの店舗を展開したり(今でもあるけど・・)、それが、同じマカロンで有名なラデュレのハス向かいだったりして、なかなかたくましいものだ・・と思っていました。

 しかし、今回、彼女が送ってくれた写真の店舗は、調べてみると、渋谷の東急フードショー・デリゾーン(しぶちか)の新名所を目指している「Made in ピエールエルメ」という店舗で、PIERRE HERMEとは別のブランドのお店なのでした。

 つまり、私の思っていたPIERRE HERMEではなかったわけです。

 偽物というよりは、別物だったのです。

 娘が「なんだか売っているものも全然違う・・」と言っていたのですが、ここでのメインの商品は、焼き立てのフィナンシエやマドレーヌ、マカロンやロールケーキ、チーズケーキなのだそうで、元祖PIERRE HERMEのお店とは別物の「Made in ピエールエルメ」というお店なのだそうです。

 この渋谷の店舗はお菓子が中心なようですが、ピエールエルメ氏と初期からのビジネスパートナーであった「Made in ピエールエルメ」の社長は、ピエールエルメ氏とともに見つけた日本の厳選された食材に目を向け、お菓子だけではない、調味料やお茶など、広範囲にわたる食材の選りすぐりの商品を扱っているお店のようです。

 どちらにしても、まだあまり知られていない「Made in ピエールエルメ」という命名もどうかと思いますが、なんといっても、このお店の看板には、わざわざ「ピエールエルメ」の名前を使うことがマイナスのイメージになっているような、そんな感じです。

 これが全くの別物ならば。PIERRE HERMEからしたら、「ピエールエルメはPIERRE HERMEとは別ブランドです」と言いたくなる感じな気がします。

 どちらにしても、商品そのものがよければ、いいとはいえ、「ん~~この看板・・」どうにも納得がいきません。

 


ピエールエルメ 渋谷 Made in ピエールエルメ


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2023年1月30日月曜日

数年ぶりに冬のソルドで買い物

  


 今やほしいものはネットで探して、値段を比較して、より安い商品をいつでもどこでもポチって買える時代に政府がソルド(バーゲン)の期間を制定する意味がどれだけあるのかと思いますが、一応、今でもフランスでは政府が夏と冬のバーゲンの期間を設定しています。

 若い頃には、このソルドの時期が待ち遠しく、ソルドの初日にはお休みをとって買い物に行ったり、普段は、お店を見て歩くと、欲しいものを我慢するのがつらくなるから、むやみに見て歩かないようにするほど、洋服や靴などをやたらと買っていた私ですが、もうすっかり、そういった物欲も着飾りたいと思う気持ちも失せ、どちらかというと、もうすでに持っているものを有効に処分することに注力するようになっています。

 それでも、少し前までは、娘が○○が欲しいなどと言われて、その買い物につきあったりして、ソルドの時に買い物に行ったりしてもいたのですが、娘も独立した今、ソルドだからといって、買い物に行くこともなくなっていました。

 今年の冬のソルドは2023年1月11日8時からとご丁寧に時間まで決められていて(いつものことですが・・)終了は2月7日ということになっているようです。

 以前は、とにかくカッコいい靴が好きで、今から考えると、若い頃は、ソルドというと、ハイヒールばかりを買っていたのですが、フランスに来て以来、石畳ということもあり、ハイヒールなどはすっかり履かなくなり、今やもっぱらスニーカーというか運動靴ばかり。

 健康のことを考えて、できるだけ歩くことを心掛けているため、運動靴でひたすら、パリの街を歩いているのです。さすがに運動靴は消耗品で、傷んできても、修理して履くというわけにもいかず、ネットで探してもいいけれど、やっぱり靴は履いてみないとモデルによってもサイズも違うし、まぁ機会があれば、ソルドの期間中に買えればな・・くらいに思っていたのです。

 今回も一人だったら、めんどくさくなって、「まぁ、また今度でもいいか・・とか、どうしても必要になれば、ソルドじゃなくても買うか・・」と思ってしまっていたと思うのですが、たまたま友人がつきあってくれるというので、「まぁ、気に入ったものが見つかれば・・」くらいなつもりで、久しぶりにソルドを覗いてきました。

 ソルドは特に狙いを定めたものがある場合は、初日か最初の週末、それ以降は、1週間ごとに値引き率が上がっていくので、物にもよるし、タイミングにもよるのですが、早すぎれば、さほど値引きしていないし、かといって、遅いと、商品も残っていないので、どこがよいタイミングなのかも難しいところです。

 ましてや靴の場合はサイズもあるので、欲しいものがあってもサイズがないということも少なくないので難易度が上がります。そしてソルドも終盤に近付くと、ソルドの商品よりも並んでいるのはほとんど春物の新作だったりもするので、ソルドに行ったつもりが、結局、全然、値引きしていないものを買ってくることになるということも少なくありません。

 何よりも、春物の値段は定価でも冬物に比べて安いことは大きな落とし穴です。

 結局、数店舗を廻って、いくつかの靴を履いてみても結局サイズがなくて、また、自分のサイズだと思っていたものが、このモデルは小ぶりだからと、サイズが合わなかったりして買えず、いい加減、めんどくさくなってきて、ここでもうなければ、今回はもういいやと思ったところで、気に入った運動靴に出会い、その中で2足、サイズのあうものがありました。

 どっちにしようかな?と思ったのですが、2足とも、半額になっていたので、「まぁいいか・・、どうせ、いつも同じようなのが欲しいんだし、2足買っても1足分だ・・」と思い、2足の運動靴を買ってきました。

 結局、2足買って、定価分と同じ金額を支払うことになったので、なんだか安かったにしろ、高くついたような気もしましたが、結局は1足分の値段で2足買えたわけで、やっぱり安かったなと満足し、「やっぱりソルドは悪くない・・」と、ついソルドなど面倒になって、ついつい定価で買いがちな私は、えらく満足したのでした。


冬のソルド バーゲン


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2023年1月29日日曜日

2月1日からコロナウィルス感染対策緩和へ

  


 フランス政府は、コロナウィルス感染対策について、2月1日から、緩和することを発表しました。

 この感染対策緩和は、これまで「コロナウィルスの検査で陽性となっていた人々に対して強制的に隔離することが求められていたものが、この強制措置が解除され、感染者との接触した人の強制的な検査が求められなくなる」という結構、大胆といえば、大胆な内容となっています。

 しかし、厚生省は、「これらの感染対策は強制されるものではないにせよ、引き続き推奨されるものである」と追記しています。

 フランスのコロナウィルス感染については、ここ1カ月間で、1日の感染者数が1日平均2万件以上だったものが、5千件以下にまで減少しています。ここのところ、感染者数が劇的に減っているので、私はこの数字がちょっと信じ難く、検査機関のストライキのため、結果が正確に収集できていないせいだと思っていましたが、どうやら本当に減少していたようです。

 しかし、これらの感染対策緩和措置が発表されるまでもなく、もともと強制といいながらも、すでに、この強制措置はそれほど遵守されていたとも思えないので、この決定が大きく影響を及ぼすとも考え難く、むしろ、現状のフランス人の生活ぶりを見るにつけ、ほぼほぼ通常どおりの日常を送っているため、一応、名目上は強制措置となっていることが、なんとなくアンバランスな気さえするくらいです。

 この気温で、しかも、この普通の日常の生活ぶりで、感染者が減少しているのであれば、ことさら強制的な感染対策措置を行う必要も感じられず、むしろ、個々人の責任や感覚でそれぞれが感染対策を行うことも、少数派ではありながら、一定のマスク着用などが定着したことなどからも、ある程度は可能になってきたと同時に、何よりもこの感染者数の現状を見る限り、強制的な措置は妥当ではないとの判断なのだと思います。

 しかし、一部の専門家は依然として、異論を唱えてはいますが、義務化したところで、もうこれだけ生活が日常に戻っていれば、実際には制御不可能であり、また、義務化することによる社会的な補償が嵩み続けるのを抑えたかったことも正直なところではないかと思われます。

 これにより、隔離のために病欠扱いで補償されていた給与保障は、一般の病気?の病欠扱いと同じ保障の形態になります。

 これらの感染対策が緩和される中、依然として特別扱いされているのは、中国からのフライトと入国者に関するもので、1月初旬から規制されている「中国からフランスへのフライトを利用する搭乗客にはフライト中のマスク着用義務(6歳以上)、搭乗前48時間以内の検査での陰性証明提示、フランスに到着後は、無作為にスクリーニング検査を受け、結果が要請であった場合には隔離されることを約束しなければならない」という規制は、とりあえず、2月15日まで延長されることになりました。

 中国当局の発表によると、コロナウィルス感染に関する1日の死亡者数が1月初めから80%近く減少しており、12月から発生した最新の汚染の波が収まりつつあることを発表していますが(それ自体もあまりフランス側は信用していないと思われる)、しかし、1月22日に行われた旧正月で大規模な人の移動があり、ウイルスが広がる可能性が高いことから、旧正月後に感染の新たなピークが訪れると警告もしています。

 フランスの中国に対する感染対策の決定はこれによるものと見られています。

 パンデミックが始まって、そろそろ3年が経ちます。当初は、私は一年くらいで収まるだろうな・・と思い、「あの時は大変だったね・・」と笑顔で話せるときがくることを思い描いてきました。

 フランスの感染対策や数字を見る限り、峠は越えたかな?とも思えなくもありませんが、イマイチすっきり吹っ切れない日は、まだ、もう少し続きそうな感じです。


フランス コロナウィルス陽性者強制隔離措置撤廃


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2023年1月28日土曜日

13歳 LGBTの少年の自殺でクラスメイトが身柄拘束・裁判へ

  


 年明け早々に、LGBTの13歳の少年の自殺が報じられていました。

 自殺とは、自ら自分の生命を絶つという意味では自殺ではありますが、ある意味では、そうせざるを得なかった、彼を自殺に追い込んだ人がいるという意味では殺人事件と言えないこともありません。

 13歳といえば、ティーンエイジャーとはいえ、まだまだ小学校を終えたばかりの子供です。もしも、自分の子供が自殺してしまうようなことがあったとしたら、彼自身は十分すぎるほどに傷ついていたことはもちろんですが、彼の両親や家族も悔やんでも悔やみきれないほど、深い悲しみに苦しむことになるのは、間違いありません。

 フランスでは、同性婚も認められていますし、私には、かなり市民権を得られているような印象があったのですが、このような事件が起こってしまうということは、やはりLGBTの人々が侮蔑的に扱われることがある・・しかも子供の間で・・ということはショッキングなことです。

 子供の社会は大人の社会が反映されるとも言われるので、大人の世界では、ある程度、分別がついてきて、オブラートに包まれるところを「これから大人になるステップの途中」である彼らの年代では、残酷さがそのまま表れてしまうのかもしれません。

 イジメは、どこの国においてもあることなのだと思いますが、個人をターゲットにイジメるという行為への理由はいくらでもあり、こじつけのようなものまであるものの、その理由がLGBTであったということが、今回は、話を深刻化しているようです。

 娘が小学生の時のクラスメイトにLGBTと思われる少年がいて、娘の仲良しの4人組みの一人でしたが、心優しく非常に繊細な子でした。

 今回、自殺してしまった少年は中学校に入ったばかりで、彼が自殺する前に、「自分の人生を終わらせたいという気持ちを説明するメモ」をノートに書き残していたことが公表され、検察は、「自殺につながるスクールハラスメントの罪で4人の13歳の未成年者を裁く」と発表し、事件の起こったエピナル警察署の都市警備隊によって、4人の未成年者が身柄を拘束されました。

 この少年・少女4人が彼に対して、どのような言動をしていたのかわかりませんが、被害者も加害者も13歳という悲惨な裁判です。しかし、このようなことが二度と起こらないように、真実を追求することは必要なことなのではないかと思います。

 実際に、私の周囲にも、同性婚をしている人が複数人いますが、その誰もが本当に普通の優しい人々で、私も普通に友人としてつきあっているので、なぜ、LGBTの人々を特別扱いするのかは、正直、私には理解ができません。

 このニュースを見ていたところに、日本の岸田首相が「同性婚の導入を否定」「我が国の家族の在り方の根幹に関わる」と発言したというニュースを目にして、ちょっと、あまりに情けない・・と深いため息が出てしまいました。

 人を傷つけるわけでもなし、どうして自分と違う人を認めることができないのか?なぜ、こんなにもズレていることばかり発言するのか? 首相の発言は、国内だけでなく、海外からも注目されるものです。今、この時代に、「家族の在り方の根幹に関わる」などという言い方をするのは、どういう風に受け取られるか? これでは、まるで昨年から問題視されている新興宗教が言っていることみたいではないですか?

 話は、横道に逸れてしまいましたが、今回のフランスで起こった13歳の少年の自殺の予備調査について、検察官は「4人の少年少女の同性愛嫌悪の嘲笑と侮蔑行為と少年の自殺との直接的な因果関係を検証する」ことに焦点を当て、「ハラスメント行為の実態、期間、糾弾された発言の正確な内容を確認し、取られた様々な措置とともにサイバーハラスメントの可能性も検証する」と述べています。

 被害者の母親は、この闘いのために人生を捧げると宣言しています。


LGBT13歳少年自殺 クラスメイト4人身柄拘束 裁判


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2023年1月27日金曜日

フランスの刑務所は超満員、受刑者数はちょっと減少したらしいがその理由が怖い

 


 幸いなことに、全くご縁のない刑務所という施設ですが、フランスでは犯罪に遭遇(といっても、スリとかひったくり、せいぜい強盗??・・くらいですが・・)する機会はやはり日本よりは多く、しかも、簡単な窃盗の類では、ほぼ、事情聴取、調書を取られるくらいで釈放されてしまうので、フランスで刑務所に収監されるということは、よほどの場合なんだろうな・・という認識がありました。

 一度、万引き集団(若者たち)に出くわしたことがあって、お店の人が警察に通報して。お店に警察官の一団がやってきて、抗う若者たちを取り押さえて、後ろ手に手錠をかけたりしているのを目にして、なんだか殺伐としていて、やることが派手だな・・と思っていました。

 その時に、同行していた警察官に「この子たちはどうなるんですか?」と尋ねたら、「身元を確認して、調書を作って、家に帰します」と言われて、「えっ?それだけ?」とビックリしていたら、逆に警察官にビックリし返され、「あなたはそれ以上にどうしてほしいの?」と言われて、ダブルに驚いたことがありました。

 なので、変な話、フランスで刑務所に入るには、かなりハードルが高いと思われるのですが、にもかかわらず、刑務所はいつも超満員で、2023年1月1日現在の受刑者数は72,173人(日本の受刑者の約2倍(フランスの人口は日本の約2分の1))で若干減少した・・と言われています。

 しかし、フランスでの犯罪が減少しているはずはなく、2022年11月、12月と過去最高記録を更新し続けた挙句の若干の減少で受刑者数がかなり高い人数であることに変わりない中での若干の減少ということらしいです。

 そして、前述したように、フランスでの収監は狭き門?でありながら、刑務所は常に不足状態であり、全体の刑務所密度は119%、150%を超える刑務所は56ヶ所あります。6つの刑務所では稼働率?が200%以上に達しているそうです。

 フランスは3年前に欧州人権裁判所(ECHR)から、慢性的な刑務所の過密状態を指摘され、歴史的ともいえる非難を受けました。この記録的な稼働率を改善するために、政府は新しい刑務所の建設と仮釈放の延長による効果を期待しているのだそうです。

 1月1日以降、これによって懲役2年以下、刑期3カ月未満の受刑者の早期釈放が可能になりました。2021年4月からの試算では、6,000人の受刑者がこの仕組みの影響を受けるとされています。

 新しい刑務所の建設はともかく、早期釈放が刑務所の過密回避の対策というのは、どうにも恐ろしい話で、「それは、あまりに安易で、解決策ではないだろ!」・・と思います。

 以前、パンデミックが始まったばかりの頃に、刑務所内での感染拡大のために、一部受刑者を釈放・・ということがあり、「ちょっ・・ちょっ・・と待ってよ!」と思ったことがありましたが、今回もまたそんな気持ちです。

 特に性犯罪者、DVなどの暴力犯に関しては、マスコミを騒がすような重大事件などでも、よく「つい数ヶ月前に出所したばかりだった・・」とか、釈放後、追跡用のプレスレット(電子タグ)の監視が充分にできていなかった・・などという話が浮上することが多い気がするので、一般市民の安全が脅かされる可能性があるのです。

 そもそも、犯罪者にもかかわらず、収監に至るケースが日本などに比べるとかなり低いうえに、懲役2年以下、刑期3カ月未満の受刑者の早期釈放というのは、全く理解しがたいことです。

 ここで、チラッと日本の刑務所問題を見てみたら、一般社会同様、刑務所内の受刑者の高齢化が問題になっているようで、下手をすると、介護施設?と思われるようなところもあるようで、それはそれで、ため息が出てしまう感じです。

 また、一時、カルロスゴーンの逮捕の際にフランスにも日本の刑務所内の受刑者への厳しい扱いは常軌を逸しているとフランスでも話題になりました。

 フランスの刑務所と日本の刑務所、それぞれのドキュメンタリーを見たりすると、それぞれ全く別の恐怖にかられます。

 しかし、とりあえず一般社会の生活を脅かす人について、少なくとも刑務所のキャパの問題で解放してしまうことは、やめていただきたいと思うのです。


フランスの受刑者数


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2023年1月26日木曜日

PICARD(ピカール)の日本食メニュー開発の努力と微妙なズレ

 


 フランスの冷凍食品メーカー・ピカール(PICARD)が日本に上陸して久しくなりますが、日本に一時帰国したりした際には、わざわざピカールに買い物に行くことはありませんが、たまたま出かけた先でピカールの店舗を見かけたりすると、日本のピカールには何が売っているのだろうか? いくらくらいで売っているのかな?と、思いつつ、ちょっと、ひやかし半分に覗いてみたりもします。

 いつだったか、青山あたりを歩いていて、ピカールのお店を見つけて入ってみたら、フランス人の店員さんがいて、なんだか日本のピカールでフランス語で話ができたことがちょっと嬉しい妙な気分を味わったこともありました。

 ピカールはフランスの冷凍食品専門のお店ですが、一般的にスーパーマーケットで売っている冷凍食品よりも若干、高めの価格設定ですが、それなりにクォリティーも高く、まあまあ、そんなにハズレもない印象ですが、さすがに日本のピカールの値段を見ると、フランスでの値段にプラスアルファのせられているので(輸入品だから仕方ないとは思うけど・・)、ちょっと驚きの値段で、これでも売れているのか?とビックリします。

 私が、普段、フランスのピカールで買うものは、どちらかというと野菜や魚などの素材の方が多いのですが、その定番メニューともいうべく、お料理されたものやお菓子類なども、フランスのメーカーにしては、新製品が登場する割合が高いので、けっこう興味深く、行くと必ず店内を一回りして、新製品やセール品などをチェックします。

 そんな中でも特に興味深いのは、日本食メニューで、日本食ブームと言われてからは特に、かなり日本食メニューの開発には力を入れているのだろうな・・という印象です。

 しかし、日本人の目からしたら、努力はわかるが、「惜しい」!というか、「ちょっと、どこかがズレている感じ・・」と思うものが多く、だいたい値段に見合う内容とも思えないので、ほとんど買ったことはありません。

 さすがに本家フランスのピカールの商品でも日本のピカールでは絶対、販売しないであろうフランスのピカールの日本食メニューをここで少しご紹介します。


チーズの牛肉巻き串焼き


 このチーズを牛肉の薄切りで巻いた串焼きは、かなり前からピカールにある商品ですが、これは中国人がやっているチェーン展開のお寿司屋さんには必ずある焼き鳥の盛り合わせの中に混ざっているもので、焼き鳥のタレで味付けてありますが、ほぼ、肉というよりもチーズですが、フランス人には人気のようです。

 

スープ ラーメン

 「スープ ラーメン」という名前はスープ扱いなのか、ラーメン扱いなのか、疑問ではありますが、醤油とショウガのブイヨンと書いてありますが、このどうにもふやけた様な麺には、どうにも食欲をそそられません。

 

鶏そぼろ丼


 「鶏そぼろ丼」肝心の鶏そぼろがあんまりのっておらず、そう言われてみれば鶏そぼろ?という感じ。鶏そぼろに添えられていることが多い炒り卵が人参になっていて、青物に枝豆が使われているところは、不思議ではありますが、枝豆は、フランスでも、最近、少し知名度があがり、似非日本食屋さんなどの丼ものには、枝豆が使われることが多い気がします。

 

バオ バーガー カツ

「バオ バーガー カツ」バオがなぜ日本食とされているのかは不明ですが、カツ(チキンカツ)、しかもカレーソースが使われているところで、カツカレー=日本というカテゴリー入りしているのかもしれませんが、謎な商品

 

お好み焼き

 ちっちゃいお好み焼きの4個セット しかし、なぜかバーベキューソース、お好み焼きソースをバーベキューソースと呼んでいるのかは、不明


おにぎり2個 野菜の照り焼き

 最近、登場したとばかりのおにぎりセット、しかし、ベジタリアン向けなのか?具は野菜の照り焼きという不思議なもの、しかも、すごく小さいおにぎりで、一般的なおにぎりが120g程度なところ、これは2つで160g。

 
ミニ餃子

 餃子もまた、フランスで急激に広まった食品であり、普通のスーパーマーケットなどでも、味の素の冷凍餃子などをかなりの頻度で見かけるようになりましたが、ピカールの餃子は、それらの餃子と少々差別化を狙ったのか、餃子の中身はチキン、枝豆、コリアンダー、しかもポン酢で・・という組み合わせの仕方が、なかなか絶妙で、オリジナルです。

 
BENTO

 今回、見かけたものの中では、一番、まともそうな「BENTO」弁当、鶏のから揚げ、なすのしぎ焼き、インゲンの胡麻和え、これで6.50ユーロ(約910円)、しかし内容量350gとかなり、量は控え目です。

 この他にも、まだまだ日本食とされている商品はたくさんあるのですが、どれも、「惜しい!」というか、なぜか若干の絶妙なアレンジが加えられているものが多く、次から次へと新メニューが登場しているのを見ると、日本食商品開発にはチカラを入れて頑張っているのだなぁと思いつつ、もう少しのところで違っているというか、残念な気がして、結局は、自分で作った方がいいな・・と思ってしまうのです。

 しかし、考えてみれば、日本にあるフランス紛いのものにも、ちょっと違うけど・・(特にお店の名前とか、フランス語が使われていることも多いわりには、間違いも多い)というか、日本風にアレンジしているのかな?と思うものも、けっこうあるわけで、なにもホンモノばかりがウケるとは限らないので、ピカールの日本食はそんな意味では、なかなか、ユニークなものが出てくるのが楽しみでもあります。
 
 でも、すごく基本的なところで、パッケージの写真上のお箸が揃えて置かれていなかったり、ひどいとお箸が1本だけだったりするところに、妙な気持ち悪さを感じたりもします。

 ピカールが日本で結構、人気なように、日本食ブームのパリで、ニチレイなどの日本の冷凍食品メーカーがピカールのような店舗を展開してくれたら、そのクォリティーにしても、メニューのバラエティとしても、ずっと素晴らしいだろうし、すごく人気になるだろうにな・・と逆展開も夢見たりしています。

 
PICARD(ピカール)日本食メニュー


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2023年1月25日水曜日

フランス人のディベートの凄まじさ

  


 もともと口が達者で議論好きなフランス人は、一般市民に関しても、知人が集まって、喧々囂々と議論に花をさかせている場面をみかけることも少なくありません。

 人の話を聞くというよりも、いいたいことを言い合う感じで同時に複数の人が話し続けて、人に話を譲らず、はたから見れば、ケンカしているの?と思うほど、熱が入っていきます。

 そういう議論(というか言い合い)にどうにも慣れない私としては、そういう場面はごめん被りたいし、そんな場面では、私などはとても口をはさむ余地もないし、ハラハラさせられるばかりであまり好きではないし、ものすごい言い合いをして、その後、その当事者たちが険悪で気まずくなったりしないか?などと余計なことを思ったりするのですが、たいていの場合、議論は議論、それはそれ・・で、意外とそのあとは、ケロッとしているのも不思議な感じがします。

 現在のフランス人の最大の関心事は間違いなく、年金改革問題なのですが、一般市民の中でもこの件に関しての議論がさぞかし行われていることだと思いますが、テレビの報道番組などでも、政治家を招いてディベートの様子を公開する番組などが組まれています。

 先日のディベートには、マクロン大統領の側近の政府のスポークスマンと、それに反するグループの議員の代表3名のディベートが生放送されました。

 最初は、それぞれが話している時間がカウンターで示され、だいたい均等に発言ができるようになっているのですが、議論がヒートアップしてくるにつれて、同時に話続けるというまあ、フランスでのディベートとすれば珍しくない現象が起こり始め、それぞれのタイム(発言時間)のカウントは計測不可能な感じになってきます。

 今回の年金問題に関しては、最初に発言を始めた女性が先制パンチを食らわせた感じで、大臣に向かって「年金改革問題に関しては、国民の80%が反対している。あなたは圧倒的な少数派、孤立状態だ」と話し始め、立場に忖度することなく、勢いよくディベートが始まったのでした。

 まぁ内容については、ことさら新しいことはないのですが、今回の年金改革は、女性に対して、よりペナルティが多くかかるようになっているとか、健康寿命の話まで持ち出して、2年の定年延長は、定年後の人生を奪うことになるとか、年寄に長く働かせることは、フランス全体の生産性を下げることになる・・とか、それぞれに様々なデータを示しながら、激しく議論(言い合い)をするのです。

 こういったディベートに参加するには、よほどの自分の理論をしっかりと構築していなければならず、相当な理論武装の準備をしていると思いますが、ハッキリ言って、これは、ある種のスポーツだな・・と思うのです。

 それぞれに、ああ言えば、こう言う者同士の応戦は、その言葉の選び方から、間合いやタイミング、語調や勢いなど、あらゆることが戦況を変えていく感じで、頭の回転が良いことはもちろん、その人々の持っている熱量が測られる場であることも感じます。

 このようなディベート番組に登場する人は、それなりの理論構築をしていますが、フランス人は、一般的に内容や人にもよりますが、このディベートの熱量はレベルの差こそあれ、また、理屈がまったく通らないことでさえも、変わらず主張し続ける印象があります。

 しかし、政治の場面に関しては、政治家がこのようなテレビのディベート番組に出演して話をすることは、少々、荒っぽい感じはありますが、日本のように、いつの間にか、政府が勝手に重要な事項を決定してしまうような状況から比べれば、余程、健全であるような気がします。

 この中の登場人物の一人は、「年金改革に対しての国民投票」を提案していましたが、国民投票を行えば、必ず却下されると思うので、政府は改正案を提案せざるを得ないことになると思います。

 前回の年金改革反対のデモは100万人規模の動員になりましたが、次回は1月31日に大規模なストライキを含めた大規模なデモが行われる予定になっており、また2月以降の冬休みのバカンス時期を狙ったストライキの予定なども続々、発表されています。

 このような番組を見ていると、今回の年金改革の騒動は、そう簡単にはおさまりそうもないことをひしひしと感じます。

 併せて感じるのは、日本でも、このような場面が少しは見られるようになればいいのに・・ということです。


年金改革 フランス人のディベート


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2023年1月24日火曜日

パリ11区で警察官発砲事件で男性1名死亡

  


 日曜日の夜、パリ11区レピュブリック広場近くのレピュブリック通りとトロワ・ボーン通りの角で偽物の拳銃を持って脅しをかけてきた(といわれている)男に対してパトロール中だった警察官が発砲し、銃撃を受けた男性が死亡しました。

 現場に居合わせた人の証言によると、男は、最初は犬に対して拳銃を向けて脅していたといい、警察官によれば、その後、警察官が近寄ってくると、男は警察官に銃を向けてきたところで、警察官2人が4発(一人が1発、もう一人が3発)発砲したと言われています。

 警察官が発砲し、男が倒れた時点で私服の男性がすぐに心臓マッサージを始めたという証言があるようですが、この心臓マッサージをした男性が警察官かどうかは確認されていません。

 撃たれた時点で、この男は被害者、警察官が加害者となったわけですが、被害者は死亡しているので、当然、被害者の証言が得られることはなく、警察官側の言い分と周囲の目撃証言のみによる検証しかできないことになります。

 ましてや被害者が持っていたのは本物の拳銃でもなく、当初には拳銃を犬に向けて、犬を脅していたというのですから、なんだか子供じみているというか、彼の行動には、警察官に射殺されるほどのものであったのかどうか疑問が残るところです。

 昨年、起こった警察官発砲事件では、少なからず死亡者が出ているうえに、本当に発砲の必要があったのかどうかと思われる事件も少なくありません。

 この事件はパリ司法警察に委託され、「公権力者の殺人事件」、「殺意のない意図的な暴力」で捜査が行われることになっています。

 今年に入ってから聞くのは2度めの警察官の発砲事件ですが、ここ数年、警察官の発砲事件は、定期的に耳にするようになっており、今回の事件現場などは、パリの街中で人通りも少なくない場所での出来事で、ゾッとさせられます。

 この手の事件が起こるたび、警察官発砲事件として、報道されるものの、その後は、司法警察の捜査が行われる・・というところまでで、その後、発砲した警察官がどう扱われたのかに対してまでは報道されないのですが、もしも、なんらかの刑罰が下れば、当然、報道されるところ、それがないということは、そこそこの措置で済まされているような気がします。

 警察側が命を張って仕事をしているのはわかりますし、治安が悪くなっていることも事実なので、緊急事態に際して、容疑者を無力化するというのはわからないではありませんが、こうも簡単に容疑者を殺してしまうということがしばしば起こることは、容認できない気もします。

 ましてや、事前には、わからなかったにしろ、この被害者が持っていたのは、ほんものの拳銃ではなかったわけで、当然、彼は発砲もしていなかったのです。

 フランスは死刑制度を強く非難し、今の時代の人権問題に死刑などあり得ないようなことを堂々と言っていますが、死刑もなにも、こうも簡単に警察官が発砲し、裁判以前に容疑者を殺してしまうことに、大きな矛盾も感じます。

 私は日本の死刑制度に対しても、少なくとも、議論が必要なことであるとは思っていますが、フランスでの警察官の発砲事件に関しても、見直しと指導が必要であると思っています。緊急に、犯行を止める必要があったとしても致命傷になる発砲にならないようにする努力は、必要なのではないかと思うのです。

 フランスは治安の改善対策として、警察官の大幅増員を計画していますが、警察官に発砲されて殺されてしまうのでは、必ずしも安心ともいえません。しかも、公的な絶対的な権力に守られた人間の発砲ということで、軽く扱われてしまうことは、とても恐ろしいことです。

 

パリ警察官発砲事件


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2023年1月23日月曜日

現在の日本のコロナウィルス対応についてフランスで報道されていること

  


 今、ネットでコロナウィルスと検索すると中国のニュースがズラリと上がってきます。

 中国疾病予防管理センタ(CDC)の発表によると、中国側は現在、1週間の病院での死亡者が13,000人としているようですが、これには、自宅等、別の場所で死亡した人の数は含まれていません。しかも、この数字は、感染対策規制が緩和されたことを受けて、かなり控え目の数字におきかえられていると他国の専門家たちは分析しています。

 もともと、中国の発表する数字はどこの国でも信用していない様子で、イギリスの医療分析会社エアフィニティによると、中国では旧正月休みの間、1日のコロナウィルス感染死亡者数が約3万6千人に上ると予想されています。また、同社は、中国が12月に規制を解除して以来、60万人以上がこの病気で死亡したと推定しています。

 フランスにしても、この中国の感染拡大には、警戒を続けているものの、フランス国内でのコロナウィルス感染に関しては、フランスならではの問題が浮上・・ここでも、検査機関のストライキの影響で、正確な数字がつかめていませんが、日常生活自体においては、国による規制は、医療施設などの一部の機関を除けば、ほぼほぼ通常モードの生活に戻っています。

 そんな中、日本のコロナウィルス感染に関しても、「日本はコロナウィルス感染第8波を迎えており、過去最高の死亡率を記録している!」と伝えています。

 そして、また辛口なフランスの報道では、「日本ではこのパンデミック以来、過去最高の死亡者数を記録しているにもかかわらず、日本政府は景気回復を後押しするために、コロナウィルスをクラス2から季節性インフルエンザと同じランクのクラス5に格下げする予定であることを発表しました」

 「昨年、10月に外国人観光客への門戸を開いたばかりで死亡率が過去最高を記録しているこの時期に、最新の健康規制を解除することで、経済の活性化を図ることを目的とした施策のようだが、この宣言は驚きである」と書いています。

 日本が鎖国を続けていた時には、いつまで鎖国をしているつもりなのか?と言っていたのに、鎖国をやめて感染が拡大してみれば、これでさらに規制を緩和するのは驚きだ・・などと言われるのは、心外な気もしますが、たしかに、日本政府の対応はタイミングが悪いことも否めません。

 東京オリンピックに関しても、延期をしておきながら、結局、延期する前以上に状況の悪い事態になって、ギリギリまで開催か否かが発表されずに強行開催というタイミングの悪さでした。

 中国とまでは言わないまでも、パンデミックが始まってから3年間、諸外国に比べて、かなり隔離されてきた日本で、中国とほぼ同じタイミングで過去最高の死亡率を記録したりしているのには、これまでに国民の間にどれだけ免疫ができているかということも関連している気もしますが、フランスでは、日本での死亡率の上昇には、オミクロン対応のワクチン接種率が低いことと、世界一、国民の平均年齢が高いことではないか?と言っています。

 日本は未だにマスク率が高く、政府は今年の夏には屋外ではマスクを外すように呼び掛けているそうですが、もともと必要に応じてすればよいだけの話です。

 フランスでは、一時はアンチマスクの人がいて、マスクをしていることに対して嫌な顔をする人もいましたが、最近は、必要だと思う人はマスクをし、それに対しても嫌な顔をしたり、とやかく言う人もいなくなり、マスクをしようとしまいと放っておいてくれるので助かります。

 フランスでは「みんなが同じでなければいけない」という観念がないので、規制をするときには、罰金付きなどにしなければ国民も言うことをきかないのですが、規制解除に関しては、助かるのかもしれません。


日本のコロナウィルス対応


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2023年1月22日日曜日

パティスリーのワールドカップ SIRHA で日本が優勝した!

今回、優勝した日本チームの作品

  

 リヨンで開催されたパティスリー(洋菓子)のワールドカップと言われる SIRHA(Salon International Restauration Hotellerie et de l’alimentation)で日本のチームが優勝しました。

 このクープ・デュ・モンド・デュ・ラ・パティスリーは世界20か国からトップパティシエが参加しており、2日間にわたって17チーム(各国3人のメンバーで構成される)が10時間かけて、味はもちろんのこと、その技能や芸術性を競いあいます。

 今年は、地球温暖化をテーマに行われ、それぞれのチームが試食用のシェアデザート、アントルメ、レストラン(皿盛りデザート)、フローズンデザートなどに加えて、ビュッフェテーブルに展示するアート(飴細工、チョコレート細工、アイスクリーム(氷)細工作品が作成されました。

 日本チームは、柴田勇作さん、高橋萌さん、鈴鹿成年さんの3名で、開催国のフランスにおいても、「日本が世界のパティスリー界の頂点に立った!」と報道されています。

 昨年は惜しくも日本は2位にとどまってしまったようでしたが、今年はイタリア、フランスを抑えての堂々の優勝でした。


今回、優勝した日本チームの作品


 この大会の会長ピエール・エルメ氏は「非常に僅差の結果からもわかるように、大会ごとにレベルが上がっている。16年ぶりに再び表彰台の頂点に立った、表彰台慣れしている日本が、この第1位を授与することに、大きな感慨を覚えます」とコメントしています。

 このピエール・エルメ氏のコメントからもわかるように、日本はこの大会のトップの常連で、本家本元の洋菓子の国々を抑えて日本が優勝することは、スゴいことだな・・と思います。

 なにより、このような洋菓子をはじめとして、料理などでも日本人の活躍は目覚ましいものがあり、これは、日本人が器用であり、また職人技を追及する姿勢や辛抱強さや丁寧な仕事、また日本の食文化そのもののレベルの高さがベースにあるように思いますが、日本人が輝ける場面として、洋菓子だけでなく、職人技の仕事という国の宝が他にもたくさんあるような気がします。

 多少、うがった見方をするならば、このワールドカップの会長がピエール・エルメ氏ということで、日本でビッグビジネスを展開している彼が日本贔屓なところがあるかもしれないとチラッと頭をかすめたりもするのですが、それは、出場者に対して失礼なことです。

 私は日本人でありながら、あまり器用な方ではありませんが、しかし、一般的にフランス人が例えば、なにかプレゼントのパッケージをしたりしているのを見ていると、「もうちょっと、なんとかならないのかな?」と思うことも少なくないので、全般的に日本人というのは器用な方なのかな?と思うこともあります。

 いずれにせよ、なんだか衰退していく感が否めない日本の中で、なにか日本人が輝ける場所はないものか?などと思うことがあるのですが、このような職人技があったではないか!・・と思えた明るいニュースでした。


クープ・デュ・モンド・デュ・ラ・パティスリー 日本優勝


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2023年1月21日土曜日

日本のニューワードに疎くなる 「片親パン」の巻

  


 メトロの中で日本のネット記事を見ていたら、「片親パン」という言葉がでてきて、???となりました。

 今や海外に住んでいても、いつでも日本の記事も読めるし(yahooニュースはVPNを使わないと見れなくなってしまったけど・・)、日本人のYouTubeを見たりするので、そんなに日本語に疎くなる感じもありませんが、それでも、たまに新しい言葉だったり、表現だったりを知らなくて、長くフランスにいるからといって、ネイティブのようにフランス語を操れるわけでもなく、え~?日本語にもついていけなくなっちゃったかも??と焦るような気持ちになることがたまにあります。

 前回は、仕事で日本の雑誌への広告の文面を考えていて、編集の人に「ガーリーな・・」という言葉を使われて、「えっ?ガーリーってなに?」と焦ったことがありました。

 今回は、何の記事だったか忘れましたが、文面の中に、「親ガチャとか、片親パンとか・・」という内容があり、親ガチャは、ネット上でなんとなく、知っていた言葉でしたが、片親パンというニューワードの登場に再び、ちょっとドッキリしたのです。

 しかも、私自身は、片親で育ったわけではありませんが、私の夫は娘が10歳の時に亡くなっているので、いわば片親状態で育ったので、きっと普通以上に片親というワードが気にかかったのかもしれません。

 フランスは親が亡くなっていなくとも、両親が離婚している場合も多いので、片親家庭も日本よりは多い気もするので、片親であることをそんなに気にすることもないかもしれないと思っていたのは、私だけで、ある日、娘から「私の友達の間では、父親の話はなんとなくタブーになっている・・」という話を聞いて、普段、口にすることはなくとも、父親が早くに亡くなってしまったことは、娘にとっても周囲の友人が気を使ってくれるほどのやはり傷になっていることを思わせられたことがありました。

 まあ、考えてみれば当然のことです。

 そんなに豊かとはいえないものの、様々な援助などのおかげで、夫が亡くなったにも関わらず、そんなに経済的にひっ迫したということはなかったつもりですが、これもまた、娘が気を使って気にしていないふりをしてくれていただけかもしれません。

 「片親パン」というのは、量が多くて安価な菓子パンのことを言うそうですが、この言葉が、単なる自虐的なジョークのように使われているものなのか?その重みはわかりませんし、これらのパンを単に自分の好みで選んで食べている人もいるだろうとも思います。

 しかし、ジョークとしたら、あまりセンスは良くないな・・とは思います。

 フランスの場合は、スーパーマーケットなどで大量にパックになっているバゲットやヴィエノワズリー(パンオショコラなどのいわゆる菓子パン?の類)やブリオッシュなどもありますが、それらは片親パンというよりも大家族用?のイメージです。

 この片親パンには、経済的な問題が含まれているとは思いますが、その点で言えば、なんとなく、思い浮かぶのは、夕方、バゲットを買いに来ている少年がオイルサーディンの缶詰だけを握りしめているのを何回か見かけたことがあります。

 家の場合は、小学校を卒業するまでは、一人で買い物に出かけることもなかったし、娘があまりフランスの食べ物を好まなかったこともあり、おなかがすいたらいつでも食べられるように、我が家の冷蔵庫には娘が赤ちゃんの頃から好きだったブロッコリーを茹でたものや人参の茹でたもの(つくづく健康的なものが好きな子でした)を入れておくようにしていたので、さしずめ我が家にとっての片親パンはブロッコリーだったかな?と思います。

 値段から言えば、菓子パンもブロッコリーも大した代わりはありませんが、この片親パンには、単に安価というだけでなく、手間暇をかけないという意味もあるかもしれません。

 手間暇をかける時間の余裕もないのが片親なのかもしれませんが、現実に片親だった私が日本に住んでいたら、このパンを娘に食べさせていたかどうか?などと、やっぱり片親というワードに過敏に反応してしまうことは、やっぱり自分が普段は意識していなくても、片親であったということに何かひっかかるものがあったということを気付かせられるニューワードなのでした。


片親パン


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2023年1月20日金曜日

フランス全土で112万人動員!想像以上に長引きそうな年金改革のデモとストライキ

 


 今回の年金改革反対の動きは、12年ぶりの労働組合統一の大規模なデモだと言われていましたが、その動員数は、パリだけでも40万人、フランス全土で112万人を動員したと発表されています。

 これは、この動員を呼び掛けていた労働組合にとっも想像以上のものに盛り上がったようで、まだ、その1日が終わらないうちから、次回の動員は1月31日だと発表され、早くも長期戦の兆しを呈しています。

 とはいえ、これに伴うストライキについては、以前の2019年12月の大規模なストライキの時のような大混乱とはならずに、渋滞もさして深刻にはならず、駅も場所によっては、いつもより人が少ない場所もあったようです。

 これは、パンデミックのロックダウンなどの経験により、リモートワークが広がったことや自転車を交通手段として使う人の割合が増えたことにより、いつのまにか公共交通機関のストライキに対する耐性を身に着けていたことも大きいのかもしれません。

 とはいえ、誰もがリモートワークが可能なわけでもなく、また、誰もが自転車通勤が可能なわけでもなく、これが長く続けば、疲弊していくことに変わりはありません。

 私自身、以前、パリ近郊に住んでいた頃に1カ月近く、ストライキのための間引き運転が続いて、心身ともに疲れ果てたこともあり、その月のNavigo(定期券のようなもの)が払い戻しのような対応になったものの、その直後に電車内にキセルのコントロールに回ってきたRATP(パリ交通公団)の職員が「こんなに長いことストライキをやっていたくせに、コントロールとは何事だ!」と周囲の乗客に袋叩きに遭っているのを見かけたこともありました。

 また、学校のストライキが1カ月近く続いたときにも困り果てて、学校がストライキだからと私まで休むわけにもいかずに、勉強も見てくれる娘のベビーシッターを急遽探して頼んだら、私の安い給料などは、ほとんどベビーシッターのためにすっ飛んで、一体、何のために働いているのかわからないと思ったり、何より、明日は学校やっているのか?と不安な状態が続くことに、つくづくウンザリしたこともありました。

 その結果、「なにがなんでも娘はストライキをやらない私立の学校へ入れる!」という決意を固くし、後になってみれば、それが娘にとっては、幸いしたのです。

 今回の年金改革には、国民の80%が反対していると言われており、今回の動員数を見ても、そう易々と解決するとは思えません。

 今後、このデモがどのように発展していくはわかりませんが、デモが単に大勢の人が集まってモノ申すだけにとどまらず、乱暴者が介入し、破壊や放火などにつながる危険がついてまわるため、その日はまともな生活が送れなくなります。

 時間の経過とともに、勢いを失っていくデモもありますが、今回のデモはどうにも今のところ、沈静化していく兆しはないので、余計に盛り上がっていく可能性が高い気がしています。

 定年の年齢が62歳から64歳になったことで、「死ぬまで働かせるつもりか!」と怒っているのですが、特に若い世代にとっては、これがそのうち64歳どころでは済まなくなる・・ということで、職種にかかわらず、男女にかかわらず、年齢にもかかわらず、ほぼすべての人に該当することで、すでに定年を迎えている人でさえ、自分の子供、孫のためにと立ち上がっているのですから、動員数が膨れ上がるのも致し方ないところです。

 長く働くことで、それなりに受給する年金額は増額されることになるのですが、このインフレの折り、その増額はインフレにおいついていないというのも反発を買っている一つでもあります。

 とはいえ、政府に対して声を上げるデモの権利というものは、当然、正当な権利であり、それ自体はこの抗議を受ける側である政府も認めるところではありますが、いずれにしても長期化しても国全体にとってもよいはずはないため、今後、この国民の声に政府がどう対応していくのかは目が離せないところです。

 このようなデモによって、これからの政策がさらに練られていくことは、必要なことで、自分の意見をはっきり主張することを良しとする教育を受けて育っているフランス人にとっては、ごくあたりまえのことなのだろうと思います。

 フランスのこんな様子を見ていると、少しは日本人も政府に対してモノ申せばいいものをと思っても、おとなしく従うことを良しとする教育を受けてきた日本人には、なかなか難しいことで、教育からして、政府の都合のいいようにできているのだな・・と果てしない問題を抱えているようにも思います。

 

フランス年金改革デモ112万人動員


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2023年1月19日木曜日

LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額4,000億ユーロ超の絶好調

  


 2年前の冬、まだまだパンデミックにもっと緊迫感があったころ、それでもクリスマスのイルミネーションは綺麗だろうとパリの街中に出かけて行ったとき、クリスマス前だというのに、人もまばらで、ようやく飲食店以外の店舗の営業ができるようになったものの、シャンゼリゼはもちろんのこと、高級品店が並ぶヴァンドーム広場などは、お店が開いているというのに、お客さんが全然いなくて、暇そうに店員がお店の中でつったている様子を見て、いつもは、忙しそうにしているこれらのお店のお客さんは、ほとんどが観光客だったんだと思わされて、クリスマスのデコレーションでいつも以上に煌びやかにお店が飾られている分、余計に物悲しい感じがしました。

 考えてみれば、ヴァンドーム広場やコンコルド広場などに出るまでの比較的細い道は、いつもは、クリスマスとは関係なくとも、けっこうな人がいて、スムーズには歩きづらいほどなのですが、そういえば、今日はスイスイ歩いてきたな・・などと、ガラガラのお店をみて思ったものでした。

 しかし、こんな状態が続いたら、これらのお店も大打撃だろうな・・と思ったのを覚えています。

 あれから、徐々に観光客も戻り、現在は、ほぼ通常モードに戻っているパリは、ルイヴィトンを筆頭に高級品店は長蛇の列がもとどおりになりました。もとどおりどころか、最近は、その派手なデコレーションやアピールぶりで、さらに否応なしに存在感を増している感じです。

 つい先日、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)の時価総額が4,000ユーロを突破し、これは欧州企業では初めてのことだと沸いています。これは株価の上昇によるものなのですが、企業自体が好調であることは言うまでもありません。

 このインフレでガソリンの値段が、バゲットの値段が・・などと騒いでいる時に、ルイヴィトングループなどの高級品店は、インフレの影響をまるで感じさせず、ごくごく日常のものについては買い渋りなどの現象が見られるのに、けた違いの値段の商品が行列を作って人が買っていくのですから、まるで別世界のようです。

 別世界といえば、このグループ、最近はルイヴィトンにしてもディオールにしてもギャラリーや美術館まで拡大しているのがこれまでと違うところで、私などは、お店を覗くだけでも、美術館みたいだ・・と思うのですが、その美術館みたいだ・・と思って、なにも買わずに出てくる私のような人間に、本物の美術館を作って買わない人からも入場料を徴収するというのが凄いところ・・。

 また、このギャラリーなどが、大金を使っているだけあって、なかなか見応えがあり、予約しても行列ができるという大盛況ぶりです。

 そもそもこのグループの一つ一つのブランドは一つずつでも最強なブランドばかりが束になっているのですから、強者がさらに虎の威を借りてさらに強くなっていく相乗作用で、ルイヴィトンをはじめとして、そんなにブランドに詳しくもない私も知っているディオールやをセリーヌ、フェンディ、ティファニー、ショーメ、ブルガリ、ウブロ、ゲラン、ロエベなどなど・・名前を上げれば上げるほど、そりゃそうだよね・・という感じです。

 LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ会長ベルナール・アルノーは、昨年12月に個人資産もイーロンマスクを抜いて、世界一の資産家となり、彼はなにかと比較の対象となっています。

 今回の4,000億ユーロ超の記録についても、「LMVHベルナール・アルノーは、株式市場でもイーロンマスクに勝っている!」などと見出しがつくほどです。

 このインフレ知らずの強者は雪だるま式に大きくなっていく感じがしますが、よくよく考えてみれば、フランスには、このグループには属していないシャネルやエルメスなどのブランドが控えており、この業界の層の厚さを感じさせられます。

 個人的には、願わくば、LVMHは、そんなに大きくなってくれなくてもいいので、シャネルやエルメスなどは、このLVMHの傘下には入ってほしくないと思うのです。


LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額過去最高


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2023年1月18日水曜日

日本の空き家問題をフランスのニュースで知る 空き家の相続問題



 日本では850万戸の空き家があり、政府は相続人に対する規制を強化することを検討している・・とフランスのニュースで取り上げられているのを見て、「えっ?そうなの?」「空き家が多くなっていることは知ってたけど、それに対する規制を強化・・という話は知らなかった・・」とちょっと斜め読みしていたところ、じっくり読むことにしました。

 「高齢化社会を迎え、団塊の世代が80歳を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になるという試算もある」

 「多くの国々と同様、日本も深刻な住宅問題に直面しています。毎年人口が減少しているとはいえ、ある程度の広さが必要な家族にとっては住宅価格は高い。特に住宅市場は、相続した人が手入れをしないために空き家のままになっている数百万戸の家屋の存在によって歪んでいる。そのため、日本政府は税制改正を検討しています」

 なんか耳が痛いような話でした。

 そういう私の実家も母が亡くなったあと、長いこと父が一人で暮らしていましたが、その父が亡くなって以来、長いこと空き家になっていました。

 残された私と弟は二人とも海外生活をしていて、相続手続きからして、容易ではありませんでした。それは、父の容態が悪化してからの介護問題から始まっていたのですが、私はかなり前に夫を亡くして、フランスで一人で仕事をしながら子育てをしていたので、介護のために長期で日本に滞在することは不可能で、娘の教育のことを考えると、娘の受験の時期も重なっていたりして、その時点で日本に本帰国することは無理な話で、結局、父は最期を介護施設で迎えました。

 父の死後も落ち着いて、日本に滞在しているわけにも行かず、相続手続きは、すべて銀行に頼んで、なんどか書類を行ったり来たりさせるだけで、最後のサインの時だけ日本に帰国するという感じだったと思います。

 これで両親ともにいなくなってしまったという心理的なショックや家への思い入れなどもあり、家はすぐにどうこうするということは決められずに、とりあえず、家の名義は私と弟の共同名義にして、年に2~3回、日本に帰国しては、家の中を少しずつ片付けていました。

 父が亡くなった翌年だったか、日本の税務署から固定資産税の請求がフランスの家に届いて、「どうして?フランスの住所、知ってるの?こんなに追跡してくるんだ・・」とちょっと焦って、慌てて帰国したこともありました。

 そのうちになんとかしなくちゃ・・と思いながら、ある日、突然、パンデミックで容易に帰国もできなくなり、いよいよ、家は本格的な空き家になっていきました。

 家は住んでいないと傷むと言いますが、そのとおりで、それでも我が家の場合は家の地続きに従妹が住んでいるので、全くの空き家というわけでもなかったのですが、台風が来て、鎧戸が飛んでしまったとか、庭の草木が生い茂り植木屋さんに入ってもらったり、住んでもいない家の庭にお金をかけるのももったいない・・などと、帰国時に必死に草抜きをして、除草シートを張ったり、苦労していました。

 その後、パンデミックのため、色々な番狂わせがあったものの、その間、娘はフランスでの教育課程を修了し、日本で外資系の企業に就職したため、空き家だった家に今は彼女が一人で暮らしています。数年間、無駄にしましたが、現在、彼女が私の実家に住んでくれています。

 彼女が日本で暮らし始めるときに、一緒についていって、家が傷んでいるのにびっくりしましたが、まぁ、彼女にとっては家賃なしで暮らせる場所としては上々なのではないかと思っています。

 とりあえず、空き家問題からは一時回避している私ですが、いつかは、なんとかしなければならない空き家問題。現在は、他にも家をすぐには処分できない理由もあるので、手つかずのままいるのですが、いつかは再び、なんとかしなければならない問題として残されているのです。

 そんなところにこの「日本の空き家問題」のニュースをフランスで見たのは、何かのお告げかしら?とも思ってしまったわけですが、詳細については書かれていないものの、この空き家対策として「条件付き税額控除」を検討中だということです。

 850万戸の空き家は日本の総住宅数の14%に相当するそうで、我が家などは、都内でその気になれば、借り手も買い手もいくらでもいそうなのですが、私たち自身が高齢になっていくにつれて、終の棲家をどこにするのかも考えるし、色々なことが億劫になってきているので、いいかげん、なんとかした方がいいなとは思っています。

 団塊の世代が80代を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になっているという試算もあり、誰にとっても空き家問題は他人事ではなく、ましてや海外在住の人にとっては、さらにハードルが高い問題なのです。


日本の空き家問題


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2023年1月17日火曜日

12年ぶりの労働組合統一戦線  年金改革抗議の強力なストライキの予定

 


 年がら年中、誰かがデモやストライキをやっている感じがするので、ストライキ自体に少々、麻痺している感じもあります。とはいえ、自分が利用する交通機関などだったりすると、それなりにうんざりして、対策を考えるのですが、個人的には、防ぎようもないことなので、こうなると、あまり怒りすぎないように、大きくため息をつく感じです。

 怒ったときには、一度、大きく深呼吸をするといいといいますが、なるほど、ため息というのは、深く息をつくという意味では、自然発生的に自分がとっている防衛本能の一つかもしれないなどと、つまらないことまで考えます。

 さて、1月10日に政府が提示した年金改革は予想どおりに大きな反発を呼び、もうそれ以来、フランスでは、いつテレビをつけても年金の話ばかり・・、よくもこう年金について話続けることができるのかと思うほど、年金問題一色になっています。

 そんな年金の話題の中には、「日本人はより長く働きたいと思っている・・経済的な問題もあるものの、日本人は仕事を辞めてしまうことで社会との繋がりを絶ちたくないとか、適度に仕事を続けることが健康にもよいと考えている・・」などと説明されてもいます。

 しかし、定年後も仕事以外の生活で楽しむことをしっかり織り込み済みのフランス人には、日本のような事例は理解しにくいかもしれません。

 まあ、年金問題は、どんな人にでも関連する共通の関心事であることに違いなく、私などはフランスで仕事を始めた年齢が遅すぎるので、もう考える余地なしなので、問題外なのです。

 しかし、今回の年金改革の一番の争点は、現在62歳の定年退職が64歳に引き上げられるという点で、これには、職業によって例外はあるものの、要するに年金をもらうまでの年数が2年引き伸ばしになるという点では、すべての職業について共通するところで、つまり、「もっと働け!」ということです。

 ストライキは、できるだけ徒党を組んで大規模にやった方がインパクトは強く、SNCF(フランス国鉄)、RATP(パリ交通公団)はもちろんのこと、空港、航空会社などのほぼすべての交通機関、学校、警察、病院、ガソリン供給会社などのエネルギー部門、公務員からトラックの運転手まで、ほぼすべての機能が麻痺しそうな勢いで、中には、まだ仕事にもついていない高校生までがデモに参加するために、徒党を組んでいるという話まで聞くので、もうこの日は抗うことは考えずに、リモートワークにするか、それができない場合は休むことにした方がよいような気がしています。

 年金改革をしなければ、どうにも現在の年金制度が立ち行かなくなるというのも理解できないではありませんが、これは、国が一律に決めることなのだろうか?と思うこともあります。年金制度としては、そうしなければならないのかもしれませんが、これは働く側の人だけでなく、経営者側にとっても大問題で、2年定年が延長すれば、その2年間分は新しい採用を控えなければならなくなるということで、職種にもよりますが、会社として活性化が悪くなる気もします。

 以前の私の職場では、だいたい、定年が近づいてくると、ロクに仕事もせずに年金の計算ばかりしていた人たちがけっこういたことを思い出しますが、そんな社員を2年余計に雇い続けなければならない会社も気の毒な気もします。

 結局は、どこに一番負担が来るのかわからない今回のフランスの年金改革ですが、とりあえず、今回の1日のストライキで、15億から20億ユーロのコストがかかる(損失を含む)とそんな見積もりまでなされています。

 今回、とりあえず予定されているのは、19日(木)ですが、これが1日で解決するとは考え難く、しかも、12年ぶりとまでいわれる労働組合統一戦線と言われれば、収拾がつくのは一体、いつになることやら、年明け早々、うんざりしています。


年金改革ストライキ デモ


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2023年1月16日月曜日

フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事

  


 偶然、フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事を見つけて、「あ~そういえば、彼女はフランス人だったんだわ・・」と思うほどに、私の中での彼女の記憶は曖昧なのですが、そういえば、「モレシャンさん・・」と呼ばれていた彼女を子供の頃は時々、テレビで見かけることがあり、昭和生まれの人なら記憶があるかもしれません。

 インタビュー記事によると、彼女は私が生まれる前から日本に来ていたらしく、いわゆる外タレの先駆者みたいな存在だったようです。今の日本にいる外タレはビックリするほど日本語が流暢で堪能な人が多い感じがしますが、私の記憶の中での彼女は「ワタシノク二では~~!」と、今から思えば、わざとだった?と思うほど、外国人アクセントで、ちょっとツンとして指をたてながら話す、まったく外国人のままのタレントさんでした。

 1958年に来日して以来、フランス語教師などを経て、1964年にタレントとして初めて日本のテレビに登場し、NHKでフランスの生活様式を紹介する番組の司会などを務めて、タレント活動を開始し、本を出せば、ミリオンセラー、そしてファッションコーディネーターとしても活躍、ジュエリーコレクション、テーブルウェア、着物などのデザイナーとしても活躍、また、ディオール、シャネル、日産などとも協賛で仕事をしたりし、フランスではレジオンドヌール勲章を受章しています。

 60年以上、日本に滞在しているという彼女のインタビューは、なかなか興味深いもので、日本がまだ、豊かとは言えない時代から、上り坂の高度成長の時代を経て、下り坂にかかっている現在までの日本の変化を初めて日本に接して感じた印象を持ちつつ、ずっと、フランス人(外国人)の目で日本を見てきたことを語っています。

 彼女は、現在では、外国人が日本人以上に尊敬している価値観・日本の美学、(わびさび、禅宗に由来する精神性など)をとても尊敬しているが、その日本の価値を若い日本人は何も知らないと言っています。

 「1974年、日本を先進工業国時代に突入させた利口なペテン師、田中角栄首相が就任するまで日本は日本であった。それから、日本のコンクリート化が始まった。あちこちに工場ができ、小さな職人たちの工場は終わりを告げ、もはや本物の日本ではなくなった」

 「1980年代に日本急はに豊かになり、ゴッホの絵を世界中が驚愕する値段で買い落したり、ゴルフ場を買いまくったり、ついには、トヨタが、フランスのノートルダム寺院を借り切って自動車ショーを開催するとまで言い出し、お金にものを言わせて慎みを失ったようだったと言っています。(この自動車ショーの開催は却下された)」・・

 「しかし、バブルがはじけて、自殺者が激増し、日本人は再び謙虚になりました」・・

 この後、彼女は日本の女性の位置づけの変換について、日本の教育について(日本の学校は自分で考えないこと、ひたすら人に従うことを教えている)、男性と女性、夫婦の関係についてなど、延々と語っていますが、最後に目を引いたのは、インタビュアーの「日本は今のアジアのモデルになれるでしょうか?」という問いに対して、「もう手遅れです」とバッサリと答えたことです。

 「日本はもはや中国や韓国、その他の地域の国々のモデルにはなり得ない。日本は消えつつありますが、文化レベルではまだ生きています。そして、このことは特にヨーロッパで顕著です」という文面です。

 同等に語るにはおこがましいのですが、日本に住むフランス人とフランスに住む日本人という逆の立場で、彼女に比べれば、まだ20数年しかフランスにいない私でさえ、この私が日本を離れてからの期間だけに限っても、外国から見る日本という意味でも、少しは客観的に見て、危機感を感じています。

 日本に60年以上住んで、様々な場面に遭遇してきたであろうフランス人の言葉に、なんとなく、わかっている気がしていた内容であっても、グッサリ刺された気がしたのでした。


フランソワーズ・モレシャン 外タレ


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2023年1月15日日曜日

パリに巻き起こる「エミリーパリへ行く」現象と経済効果 Emily in Paris

  


 Netflix の人気シリーズ「エミリーパリへ行く」(Emily in Paris)がその舞台となっているパリで、訪れる観光客やドラマの中に登場するブランドなどに大旋風を巻き起こしているようです。

 新シーズンは、放送開始後わずか5日間で全世界で1億1700万時間の視聴時間を記録したという「エミリーパリへ行く」は、もはや、どんなファッション雑誌よりも影響力が大きく、ドラマに釘付けになっている視聴者、特にテレビから離れてしまっているといわれているティーンエイジャーや若い層(若くない場合もあり)へのアクセスの役割を果たし、彼女たちは、ドラマを見ると同時に、ヒロインと同じバッグ、同じ洋服、アクセサリーをインターネットで探しはじめ、ドラマに出てきたブランドの売り上げが急上昇するのだそうです。

 視聴者にとってあこがれの存在であるヒロインに少しでも近づきたい、ファッションを真似したい、同じ場所を訪れてみたいという感情は珍しいことではありません。

 エミリーに限ったことではありませんが、熱狂的なファンにとって、その映画やドラマの撮影に使われた場所への聖地巡礼のようなことはよくあることです。

 前シーズンに、ヒロインがドラマの中でNach(ナッシュ)(アニマルモチーフの陶器のアクセサリーブランド)のフラワーピアスとインコのネックレスを着用しており、そのアクセサリーは1週間もしないうちに、品切れになり、それ以来、売上高はうなぎ上りを続け、フランス全土、アメリカ、イタリア、日本から注文が殺到し続けているといいます。

 シーズン2、3に登場するボタン・パラダイスのベルトなどもその一つですが、すでに有名なハイブランドと小規模なアーティストのブランドを上手にミックスして登場させているところも巧みなところで、ヒロインが高級マーケティング会社に勤務という設定から、架空のブランドだけでなく、シーズン2では宝飾店のショパール、シーズン3では自動車メーカーのマクラーレンなど実在のブランドの広告キャンペーンを企画することもできています。

 このドラマのヒロインが自由な服やジュエリーを使うことで、このシリーズは多くのフランス人デザイナーのショーウィンドーになっているのです。

 実際にドラマの中で主人公が訪れるフランスのマクドナルドでは、年末から「エミリーインパリ」なるメニュー(バゲットのパンを使ったサンドイッチとポテトとドリンク+デザートにマカロンが付いたセット)が販売されています。

 こんなエミリー効果に沸いているパリは、もっと素直に喜んでもよさそうなものだとも思いますが、世界中の観光客を魅了する絵葉書のような風景を映し出すこのドラマに、真実とはほど遠い「理想化されたパリ」ばかりを映し出していることを指弾するエコロジストの政治家なども出てきて、それはそれで、ちょっと驚きで、閉口してしまいます。

 彼ら曰く、「エミリーが私たちに見せているのは、変わらないパリの写真であり、超中心地区に限定され、富裕層だけが住む、均質で固定された建築遺産を持つパリのディズニーランドに他ならない」のだそうです。

 しかし、私は思うのです。いいじゃない!ドラマなんだから・・と。

 ドラマの中では、決して便利でもなく、いじわるな人もところどころに登場し、適度にパリの嫌なところもシニカルに表現されているところもあるので、せめて美しい場所を映してくれる(美しいところばかりではないのも事実ではあるが・・)このドラマはありがたいものだと思いますが、どうにもイチャモンをつけたがる人はいるものだな・・と思います。

 以前、「アメリ」という映画が人気で、「アメリがクレームブリュレを食べたカフェ」をツアー行程に盛り込んでいる日本の旅行会社のツアーなどがありましたが、今や日本の旅行会社はツアーを組むということがあるのかないのか? 以前のように日本人観光客がツアーでパリを廻ることがあれば、さしずめ、「エミリー巡礼ツアー」なるものが登場していただろうな・・などと、新しい流れに昔を懐かしむ気分でもあるのです。


エミリーパリへ行く 社会現象 Emily in Paris


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2023年1月14日土曜日

ルイヴィトンと草間彌生の仰天コラボ

  


 シャンゼリゼのルイヴィトンが凄いことになっていると聞いて、近くまで行く用事があったついでに、噂につられて、ちょっと立ち寄ってみました。

 ついこの間までクリスマスのデコレーションに彩られていたシャンゼリゼにあるたくさんのお店もノエルのデコレーションが取り払われて、静けさを取り戻しているかのような様子の中、シャンゼリゼの中心にあるルイヴィトンのビルは、ちょっと度肝を抜くほど大きな草間彌生さんの超特大の人形を乗せ、ビル全体には、あのカラフルな水玉?が散りばめられ、ものすごい姿になっていました。

 たしか、ノエルの時には、シャンゼリゼのルイヴィトンのデコレーションはそこそこのデコレーションで、そこまで目を引くものでもなかった気がしますが、あれは、今回の草間彌生とのコラボにまつわるこのキャンペーンの前の嵐の前の静けさであったのか?と思わされるほどです。

 草間彌生さんは、そのお名前と、なんとなくその作風を存じ上げる程度であまり知識はありませんが、ルイヴィトンのサイトに行くと、「新しいルイヴィトンのコレクションは、世界的に著名な日本人アーティストである草間彌生氏とのコラボレーション!その大胆なシルエットや色彩豊かな作風にルイヴィトンのノウハウを融合させ、ルイヴィトンのアイコニックなデザインを草間氏のカラーで蘇らせている」と説明しています。

 ペインテッド・ドット、メタル・ドット、インフィニティ・ドット、サイケデリック・フラワーなどのシグネチャー・モチーフは、ルイ・ヴィトンの世界観の中で抽出されたものであり、彼女のアート、大胆さ、クラフツマンシップ(職人気質)が見事に表現されており、草間彌生氏は、魔力のような才能と決意で自分の存在を変容させて止まない、今日、最も影響力のある比類なき女性アーティストの一人であると大絶賛しています。



 パリ市はなにかと街全体の景観に対する規制が厳しく、マクドナルドでさえも、あのマクドナルドのトレードマークと言われる赤いテントを使えない場所もあるくらいの街です。そんな街で。このインパクトの強いデコレーションには、ちょっと度肝を抜かれる感じでもあります。

 これは、期間限定のものだからなのか? ルイヴィトンだからできるのか? わかりませんが、ちょっと人目を惹く・・なんてレベルのものではないことだけは確かです。

 思い起こしてみれば、シャンゼリゼの店舗はそれほど印象には残っていないものの、ヴァンドーム広場のルイヴィトンの店舗のクリスマスのデコレーションはなかなかインパクトの強いもので、もう元来のショーウィンドーも見えなくなっているほどのデコレーションで、ルイヴィトン・・どうしちゃったの?どこまでいくの?と思ったばかりで、すぐ、その翌月には、この草間彌生コラボキャンペーンです。


昨年クリスマスの時期のヴァンドーム広場のルイヴィトン

 どれだけ主張するの?と思ってしまう最近のルイヴィトン、草間彌生氏の強いインパクトのある作風が今のルイヴィトンの感覚と合致したのかもしれません。


ルイヴィトン 草間彌生 シャンゼリゼ


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2023年1月13日金曜日

フランスの学校に制服は必要なのか?

  


 フランスの公立の学校での制服着用案が議会に提案されているという話を聞いて、ちょっと驚いています。フランスの学校では、ほとんど制服というものを目にすることはなく、また、それが話題にあがることさえ、不思議な気がするほど、フランスの学生の服装は自由でラフな印象があったからです。

 ところが、制服着用を義務化しようという声もあるらしく、また、ブリジット・マクロン(マクロン大統領夫人)がこれに賛同するようなインタビュー記事が流れたりしたことで、この制服論議がにわかに注目されています。

 彼女はこの制服導入に肯定的な立場をとっている人で、自分自身が学生時代に制服を着ていたことは良い経験であった・・「違いをなくし、時間の節約に役立つ」と説明し、彼女自身は、学生時代、15年間、紺のスカートに紺のジャンパーを着用していたと語っています。

 時に、制服は社会的な格差を覆い隠すような役割を果たしたり、服装を管理することで、学校と外の世界との境界を再構築することができるという意見もあるようですが、現実的にフランスの現状を見る限り、制服を導入するには、人々の意識はあまりにかけ離れていて、かなりハードルが高いような気がします。

 だいたい、フランスの場合、義務化する場合は、国がそれを負担するか、援助するのが当然のことで、個人負担で制服導入などということは、ちょっと考えにくく、また実際に、そのためにかかる莫大な費用を考えると、公金を学校教育に使うとしたら、もっと別の方法があるのではないか?という意見もあります。

 そもそも、教師が不足していると言われているのは、公立の学校の教員の給与が低いこともあり、もう少し給与を上げて、質の高い教員を確保することの方が有効なのではないかとも思います。

 私は、日本で生まれ、日本の教育を受けて育ってきましたが、制服のある学校には行ったことがなく、どちらかというと、皆が同じ服を着ているという制服というものには、抵抗があるので、時間や経済的に節約したければ、個人的に学校に行くための服を決めればよいし、制服を着ることで社会的な不平等が埋められるものではないと思っています。

 それでも、やはり、中・高校生くらいになると、子供(学校?)によっては、ハイブランドとまではいわないものの、そこそこのそれなりのブランドのトレーナーや靴、バッグなどを持っている学生も私立の学校などだと、まあまあいて、フランスの学生は質素でシンプルでラフだという印象を持っていた私は、なるほど、ラフでシンプルの中にも、それなりのブランドがあるのだな・・と妙に感心したりしたこともあります。

 しかし、むしろ、自分が着る服ぐらい自分で選ぶ時間も機会もあってよいと思うし、人と違うことを認める、受け入れることも必要なことではないかと思うのです。

 以前、娘が高校生だったころに、日本に一時帰国をしていた時に、電車のホームでたむろする制服姿の日本の高校生を見て、もしも彼女が日本に住んでいたら、こんな制服を着る機会があったかもしれないと彼女の制服姿を想像してみたら、どう考えてもコスプレをしているようにしか思えないだろうな・・と思ったことを思い出します。

 ブリジット・マクロンについては、ちょっと世代も違い(今年70歳)、考え方も違うかもしれないと思いつつも、むしろ、フランスにもそんなことを言い出す人がいることに驚いた次第です。

 そもそも、彼女の本業は教師なので、学校の問題に対しては、特に考えるところがあるのかもしれないと思いつつ、そもそも彼女はファーストレディという微妙な立場。議会で討議されることに対して、公に発言するということにも少々、疑問も感じます。

 しかし、一方では、もしもフランスの学校に制服があったとしたら、もしかしたら、すごくセンスのいい制服ができあがるのでは?と見てみたい気もします。


フランスの学校制服導入法案


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2023年1月12日木曜日

早朝のパリ北駅での6人刺傷事件 容疑者は、OQTF(フランス領土退去命令)の移民

 


 年始早々、しかも早朝のパリ北駅で、刺傷事件が起こり、朝からパリ北駅には、大勢の警察官が押し寄せ、まことに物騒極まりない光景に震撼とさせられました。

 事件が起こったのは、早朝6時半ごろのことで、北駅入り口でナイフを持った男が襲い掛かり、そのままなだれ込むように容疑者が駅構内へと移動していく中、6人がナイフで刺されたのち、駅構内の警備にあたっていた警察官がとりおさえ、容疑者逮捕になりました。

 警察官は現場で容疑者に向けて3発発砲し、容疑者は生と死の間をさまよっている意識不明の重体だそうです。

 内務大臣はしきりと容疑者が犯行を開始してから、1分ほどで取り押さえた警察官の勇敢さを讃えていましたが、一方では、1分間であっという間に6人を切りつけるという容疑者の勢いにも驚かされます。

 被害者のうち1名が重症とのことですが、命に別状はないということです。

 現場に居合わせた人は、駅には人々の叫び声が響き渡り、血まみれになっている被害者を目撃したと証言しています。

 犯行の途中で撃たれた容疑者はそのまま意識不明になったため、動機はもとより、本人の身元確認もできない状態でしたが、指紋鑑定により、彼は20代のリビア人男性であることが判明しています。

 容疑者は3年前にフランスに入国しており、複数の犯罪により、昨年の夏の段階でOQTF(フランス領土退去命令)を受けていたことがわかっていますが、この容疑者の場合も(OQTF命令を受ける人によく聞く)複数の名前を持ち、また彼がリビア人であることから、彼を自国に追放することができずに、彼に対するOQTFは実行されていなかったと言われています。

 リビアへの追放は、同国が現在不安定であることと、リビア人ということを特定するためのフランスとリビアの間の交換ルートがないことで複雑になっているそうです。

 もともと彼がどのような経緯でフランスに入国していたのかわかりませんが、国籍を確認できずに、自国へ追放することができない国の人間がなぜ?滞在し続けられるのか? ビザ(滞在許可証)更新のたびに、すべての書類をそろえながらも、そのたびにヤキモキさせられながら、役所の横柄な態度にもひたすら耐えている身としては、ますます理解に苦しむところではあります。

 結局、犯人が意識不明の状態のため、この犯行の動機はわからずじまいですが、犯行に使われたものが「一般的に市販されているものではなく、自分で作ったものと思われる非常に危険な凶器であった」(これにはちょっと山上容疑者を思いだしました)と発表されており、このテロ行為が組織的なものであった可能性もあり得るという見方もされていますが、現在のところは、確認がとれていません。

 昨年発表された移民対策に対しては、このOQTFのリストを頑強なものにして、徹底的に追跡を行うと昨年末の段階で発表されていたはずですが、実際には、この容疑者のように結局のところ、OQTFが発令されながらも実際には退去させることができないのに、監視対象にもなっておらず、犯罪を重ねたうえにテロ行為に及んでいるということは、看過できない問題です。

 だいたい複数の名前を持っていれば、その追跡自体も困難で、今回のように指紋の照合でもしないかぎり、本人の特定もできない状態で移民問題のハードルの高さを感じさせられます。

 今まで、あまり気が付いていなかったこのOQTFに関して、昨年の大きな犯罪を見ても、このOQTF該当者が多い気がします。そもそもOQTFが発令されている時点で何等かの犯罪にかかわったことがあるということで、再犯を重ねる可能性が高いのも当然のことかもしれません。

 もともとパリ・北駅周辺は治安の悪いところで、私などはあまり近寄らない場所ではありますが、人の多い大きな駅。まさかのこんな騒ぎに警察官が駅構内で発砲するという事態には、さらに腰が引ける感じです。

 年末にもモンパルナス駅で同様の事件が起こったばかりです。

 年明けに、政府のスポークスマンが今年は、大幅に警察官が増員されるので、少し治安が改善され安心できるようになるだろうという発表をしていたばかり。いくら警察官が増員しても、同時に犯罪者が増えれば、結局はあまり変わらないことになります。

 警察官の発砲についても、思うところはありますが、今回のような緊急事態に際しては、致し方ないものなのかもしれません。


パリ北駅刺傷事件


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2023年1月11日水曜日

岸田首相のパリ訪問 海外首脳として初めての工事中のノートルダム大聖堂訪問

  


 日本の岸田首相がパリを訪問しているというニュースはフランスではあまり報道されていないようです。私はマクロン大統領が「Cher Fumio・・G7の議長国としてのヨーロッパ訪問の最初の国に選んで頂いたことを光栄に思います・・」というツイートで岸田首相のパリ訪問を知りました。

 昼間の時間帯はテレビをつけないのでわかりませんが、夜の時間帯のニュースでは、全く扱われない、まるで存在感が感じられない印象です。

 とはいえ、探してみれば、いくつかの報道機関では、ニュースとして取り上げられており、「1年間のG7の議長国を引き受けたばかりの日本の岸田首相が欧州最初の国として、フランスを訪問、アジア太平洋地域の安全保障問題において両国のパートナーシップを強化する意思を示す機会となった」とあります。

 岸田首相は10日にローマ、11日にロンドン、12日にカナダの首都オタワを訪問し、13日にワシントンでジョー・バイデン米国大統領と会談する予定。次回のG7首脳会議は、1945年に史上初の原爆を投下された広島で5月に開催される予定。

 岸田首相は「東シナ海や南シナ海で力による一方的な現状変更の試みが強まり、安全保障環境が緊迫する中、フランスと、合同軍事演習を含む協力を引き続き推進したい」と述べ、「フランスは自由で開かれたインド太平洋空間を実現するための主要なパートナーです」と力説したとか・・、G7に関しても防衛政策を中心にG7を動かしたい意向が伝えられています。

 日本の民生用原子力産業に積極的なフランスは、軍隊と防衛戦略の見直しに着手している日本の軍事産業での存在感を強化する意向だそうです。

 今回の岸田首相のパリ訪問で特に注目されたのは、マクロン大統領が岸田首相を修復工事中のノートルダム大聖堂に招待したことで、マクロン大統領が2019年の火災で破壊されたこの場所に海外からの首脳を招いたのは、初めてのことだそうです。

 マクロン大統領は「逆境に直面しても再建を目指すという共通の意志の象徴として、今回の訪問は、遺産という観点からフランスの並外れたノウハウを紹介する」と述べており、震災などの災害の多い日本という国には、「復興を成し遂げる国」というイメージが深く刻まれていることを感じさせられます。

 2024年修復工事完成予定のノートルダム大聖堂ですが、先日、久しぶりに通りかかって横から眺めたら(中には入れませんが)、想像以上に進んでいなくてビックリしたばかりです。

 ノートルダム大聖堂訪問の後は、エリゼ宮で晩餐会が催され、自動車(ルノー・日産・三菱連合)、原子力、再生可能エネルギー、民間航空分野での二国間協力が話題に上がったと言われています。

 フランスは現在、年金改革問題で話題沸騰中ということもありますが、岸田首相の訪仏はほぼ年金問題にかき消されて、テレビのニュースに上がらないのですが、報道している新聞等では、「最新の世論調査によると、首相の支持率は3.2ポイント上昇し37.4%となり、一方、政府が想定している防衛予算の倍増には48%が反対(39%は賛成)、このプロジェクトの財源として考えられる増税には71%が反対している」などという彼の日本での不人気ぶりまでを併せて報道しているところは、ちょっと微妙な気分です。


岸田首相パリ訪問


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2023年1月10日火曜日

マクドナルドの再利用食器盗難続出

 


 フランスでは、今年の1月から、まずは大手のファストフード店から、店内飲食に関しては、これまでの紙の容器使用が禁止になり、その再利用食器の盗難が相次いでいて、大手チェーン店マクドナルドやバーガーキングなどが盗難問題に頭を抱えているという話を聞いて、滅多に行かないファストフード店を覗いてみました。

 大手ファストフードメーカーは、すでにかなりの割合で再利用食器に切り替わっているということだったのに、実際には、私が覗いてみたマクドナルドやバーガーキング、KFC(ケンタッキーフライドチキン)は、見事に店内飲食に関しても、まだ紙の容器を使用していたので、なんだか肩透かしを食った感じでした。

 たま~に食べたくなる程度で、普段はあまり利用しないファストフード店に、その盗難続出しているほど人気らしい再利用容器見たさに覗きに行ったのですが、結局、まだ全然、使われていなくてガッカリしました。

 それともあまりの盗難の多さに何か対策を講じているのでしょうか?

 しかし、この盗難騒ぎは、十分に想像のつく話ではあったものの、今のところは、めずらしくて、にわかコレクターが持って行ってしまったりすることもあるのかもしれませんが、少し、見慣れて落ち着いてくれば、とりたてて、特別感があるわけでなし、すごく可愛いという感じでもないので、そのうち落ち着いていくのだと思います。

 なんなら、その再利用食器、マニアのために販売したら、どうか?とも思います。

 まあ、そんな食器を見たさに覗きに行く私のような野次馬もいるのだし、客よせとしては悪くないことかもしれませんが、そもそも言わせてもらえば、フランスのマクドナルドなどは、日本のように次々と魅力的なメニュー?が出てくるわけでもなく、新しいメニューが出たとしても、チーズやベーコンが出たり入ったりする程度で、大して、あっ!これ食べてみたい!ともならないし、ケンタッキーに至っては、あのケンタッキー独特の(といっても日本のケンタッキーしか知らないのですが)ケンタッキーフレーバーが感じられずに衣ばかりが多くて、そのうえ、そんなに安くもないので、あんまり行かないのです。

 しかし、最近、マクドナルドでは、NETFLIXで人気らしい「エミリーパリに行く」に乗っかって、「Emily in Paris」というメニューができて、ハンバーガーのバンズがバゲットになっているハンバーガーとポテトにドリンク、そしてデザートにマカロンがついてくるというメニューがあって、ちょっと気になっているところです。フランスのマクドナルドもなかなか商魂たくましくなってきたな・・とちょっと感心しています。




 この再利用可能食器に関しては、食器を洗剤で洗って、乾燥させなければならないため、より多くのエネルギー、水、洗剤を使うことになると、一部では、紙製放送よりもエコではないという声も上がっています。

 それでも、フランス人はなんだかんだ言ってもハンバーガーは嫌いなはずもなく、マクドナルドはファストフード業界の中では、やはり一番人気で、1日120万人以上、年間4億4千万人がマクドナルドを利用しているそうで、毎秒29個、9億個以上のビッグマックを販売しているそうです。

 うちの夫はけっこう古い世代のフランス人でもあり、アメリカのものを目の敵にするようなところがあり、マクドナルドなどは、その標的の一つで、「あんな手で食べる下品な食べ物(フランスのサンドイッチだって手で食べるのに・・と私は思う)」などと言うのですが、実のところは、たまにマクドナルドなどを買ってくると、誰よりも勢いよく食べるのは彼なのです。

 しかし、繁華街に行けば、ファストフードのようなお店は、なにもマクドナルドやバーガーキングだけではないわけで、なんか、この規制も不公平感がある感じもしないでもありません。

 ましてや、フランス人は、(まぁどこの国の人もそうかもしれませんが、)なんてことないものでも、ちょっとおしゃれなパッケージやプレゼンテーションだったりすると、喜んで飛びつく(特に食べ物)ところがあるので、このパッケージ問題、一般のお店からしたら、意外と大きく響いてくる話かもしれません。


マクドナルド再利用食器盗難続出


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2023年1月9日月曜日

20日連続10℃超えのパリの暖冬 150年ぶりの記録

 


 今年の冬はエネルギー危機で、1月から2月にかけての冬の寒さが厳しくなり、最も電力消費が激しくなる時期には、停電もありうる・・一時停電だとか、計画停電のシミュレーションだとか、昨年12月には、さんざん騒いでいて、しまいには、マクロン大統領までが登場して、「パニックを起こさないで!」などと、まだ起こってもいない停電騒ぎを鎮火しようとしていたくらいでした。

 ところが、一時、12月に氷点下にまで気温が下がった週が1週間あっただけで、その後は、どういうわけか、気温は真冬とは思えないような10℃超えの気温がもう20日以上も続いています。

 電力消費に関しては、まことに幸いしているこの異常な暖冬は、気象学者によれば150年ぶりの記録だとかで、150年ということは、おそらく現在生きている人が誰も経験したことのない暖冬を経験していることになります。

 この記録は、少なくともあと1週間くらいは更新しつづける見込みと言われています。

 昨年、秋から冬にかけて、エネルギー危機について騒ぎはじめ、政府首脳の面々が「寒けりゃ着ろ!」と言わんばかりに、タートルネックを着て節電アピールしていたのが、あれは、何だったのだろう?と思うくらいにタートルネックも暖房もいらない気候です。

 パニックを必要以上に騒ぎ立てる感があるフランスで、本当に停電になれば、えらい騒ぎになりそうですが、今のところ、この暖冬のおかげで我が家も暖房を入れなくても全然、OKで、助かっています。

 もとより電気代の高騰で、まだ新しい請求書は受け取ってはいませんが、パン屋さんの電気代が去年の7倍になったとか、8倍になったとかいう話を聞いていれば、家庭用の電気代とて、例外ではないはずで、今から恐れをなしているので、暖房がいらないのは、非常に助かる話です。

 とはいえ、気温が穏やかなせいか、そのかわりというべきなのか?天気が悪く雨の日が多くて、「少々、寒くても天気がいい方がいいな・・」などと無いものねだりをしてしまいますが、きっと、「寒けりゃ寒いで文句言ってるんだろうな・・」とも思います。

 フランス気象庁のデータによると、2022年はフランス本土で過去最も暖かい年となり、平均気温は14.5℃、前回の記録(2020年)より0.4℃高くなりました。年明け早々に、この気温が続いているということは、現段階では、間違いなく昨年の記録は更新しているわけで、暖冬は助かるけれど、この分でいくと、一体、夏はどんなことになるんだろうか?と少なからず不安でもあります。

 昔、大学の恩師に「心配してもしなくても変わらないことは、心配することはない・・」と言われたことを思い出しますが、まさにお天気、気候に関しては私が心配してもしなくても変わらないものに違いありません。


150年ぶりの記録 パリの暖冬


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2023年1月8日日曜日

黄色いベストが帰ってきた!

  


 前回、激しく、長く続いた黄色いベスト運動は、パンデミックの訪れとともに沈静化していました。途中、何回か再開の動きは見られましたが結局、そこまでの騒ぎにもならず、継続もせずにいました。

 黄色いベスト運動は、まさにこの黄色いベストという、どの家庭にも1つや2つはありそうな身近なモノ、また蛍光色で目立ち、お手軽なわりには、存在感をアピールすることができる絶好のアイテムでもあり、このデモを盛り上げた一つの重要なツールになっていたかもしれません。

 まさに黄色いベストは、このデモ活動の名前に使われるほど、求心力を持つシンボル的な役割も果たしていました。

 毎週のように土曜日になると登場する黄色いベスト運動は、一時は、日常生活に支障をきたすほどに、盛り上がりを超えて、危険な状態にまで達して、デモ隊の行進するルート近辺の店舗やレストランなども土曜日になるとシャッターを閉めて、休業を余技なくされる事態でした。

 それが突然のロックダウンで街に出られなくなったことで、デモどころではなくなり、否応なしに沈静化したのでした。

 ワクチン接種が進むにつれて、コロナウィルスは常に存在するものの、フランス人の生活は、ほぼ日常を取り戻し、ポツポツとデモは起こっているものの、前回の黄色いベストのような大きなうねりのような動きは現在のところ起こってはいません。

 そんな黄色いベストが年明け早々に戻ってくると聞いて、非常に警戒していましたが、実際には、フランス国内で4700人が参加した(そのうちパリ2000人)程度だったというので、あまり盛り上がりはないようです。

 最初の黄色いベスト運動が発生してからすでに4年半が経ち、実際には、経済状況は、むしろ悪化しているうえ、インフレや年金改革、エネルギーコストの問題など、抗議する内容は、膨れ上がっているのに、どういうわけか、あまり求心力がないようです。

 そもそも、黄色いベスト運動に参加している人には、マクロン大統領の政権に対して、マクロン大統領のやることなすことすべてが気に入らないという人も少なくないのですが、それらは、社会全体を動かしていくような動機としては、成り立たないのかもしれません。

 ある労働組合や社会運動を専門とする歴史家によると、今回の黄色いベストはもはや印象に残るものではなく、勢いがなくなったというよりも、いくつかの過激派のコアに似た動員になっていると言われています。

 社会運動は、自然発生的に起こるものであり、それを同一の形で維持しようとすることは、そもそも不自然であり、失敗に終わることが多いと言われています。彼の見解が正しかったのかどうかはわかりませんが、今回の再結成の動員は、期待されたほどの人を集めなかったようで、とりあえず警備にあたった警察官の数を大きく上回ることはなかったようです。

 年末に100万人の人が集まったシャンゼリゼに比べると、2000人ですから、なんだか貧弱にさえ感じでしまいますが、火種はいくらでもある現在の状況で、これにいつ火がつき、燃え上がるかは、わからない状況です。

 このようなデモの発生を恐れて、政府はエネルギーコストに圧迫されるパン屋さんなどの対応に奔走し、早急に対応策を示したり、「国民の声を注意深く聞く」と訴えかけたり、大きなムーブメントにならないように必死に対応している様子がうかがえます。

 あまりに問題が山積みすぎて、逆に国民の怒りも分散しがちな感もありますが、とりあえず、おそらく、今年、一番の火種になりそうなのは、年金改革問題で、この年金改革に対するデモは、1月21日に予定されています。

 このデモが黄色いベストに変わる何か新しいシンボリックなものを掲げて立ち上がると、大変な騒ぎになる可能性もありえます。

 しかし、今回の黄色いベストを見るかぎり、同じデモを長く続ける・・ましては、一度、沈静化したものを以前の勢いに戻すのは、難しい感じです。やはり、本物の国民の激しい怒りが着火剤になるもので、また、一度ついた火は長い間燃え続けるので、とりあえず着火しないようにと、問題が山積する現在、政府は地雷のうえを歩いているような感じなのかもしれません。


黄色いベスト運動再開


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