2022年10月16日日曜日

パリ12区で服従拒否の運転手に警察官が発砲 運転手死亡

  


 パリはまことに物騒な犯罪の多い街でもありますが、同時に警察官の検問にも注意を払い、素直に従わないと撃たれる可能性があると言うののは非常に恐ろしい話です。

 今年に入ってから、一体、何件、同じような事件を聞いたか、警察官を見ても、ちょっとそら恐ろしくなるような気さえしてしまいます。

 金曜日の夜7時半ごろ、パリ12区で保険未加入の車両の取締をしていた警察官が車を停めるように促したところ、運転手はこれを無視して逃走をはかり、交通渋滞に巻き込まれた脇道に入りました。

 車がいったん、止まったところで、2人の同乗者は徒歩で逃走し、車内に残った運転手にエンジンを切って、車から降りるように言うと、運転手は警察官に向かって車を発車させようとしたため、警察官が発砲したということです。

 同乗者は依然として逃走中、知人が殺された現在、どんな気持ちで逃げていることやら・・。なぜ、逃げるのだろうか?と一瞬、思いましたが、警察官に拳銃を向けられたら、さすがに怖くなって逃げるのは、普通です。

 運転手はその後、この脇道で店の前に駐車していた別の車両に突っ込み、まもなく死亡したそうです。現場を目撃していた人の証言によると、警察官が発砲したのは、3発、うち1発が命中し、運転手は重傷を負い、現場で心臓マッサージを受けたものの死亡してしまいました。

 この発砲事件で警察官2名が身柄を拘束され、国家警察監察局(IGPN)により「権力者による自発的過失致死」の調査の一環としての捜査が開始される予定です。

 今年に入ってから、服従拒否に関連して警察が発砲し、12人が死亡しています。私がちょっと思い浮かべるだけでも2〜3件はあります。シートベルトのチェックのための取り締まりの際の服従拒否での発砲事件もあったし、車ではなく、空港でのホームレスに向けての発砲事件もありました。

 いずれの事件もその時は、警察官の発砲事件が起こった!と一瞬、報道され、公権力保持者による自発的過失致死で捜査・・とまでは報じられるのですが、その後にその警察官がどうなったのかは、あまり報道されません。

 その度に、法務相などが出てきて、警察官は非常に危険な職務についているなどと、警察を擁護するかのごとき発言をするのがとても気になるところですが、保険未加入で逃走しようとする運転手に向けて、発砲までしなければならない理由がわかりませんし、発砲するにしてもとりあえず車を止めるならば、タイヤに向けて発砲するとか、別の方法があるのではないかと思ってしまいます。

 警察官が危険にさらされる職業であることは理解できますが、あまりに気安く発砲しすぎる傾向がある気がしてなりません。今回、法務相は、「警察官が武器を使用するケースは0.5%に過ぎない」と得意げに話していましたが、警察官や憲兵が1年間に記録した約26,000件の応召拒否のうち、約200件に発砲しています。つまり、0.76%の確率ということです。

 そもそも従わないから殺してしまうというのは、どう考えてもおかしな話です。死刑制度のないフランスは、死刑制度を声高く非難しながらも、微罪の犯人に対しても警察官の手であっさり射殺してしまう一面もあるのです。


パリ12区警察官発砲事件 服従拒否 射殺


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