高齢化問題は、日本の「おはこ」のような気がしていましたが、フランスにも高齢化問題は、特に医療問題において、顕著になりつつあるようです。
今週、マクロン大統領は、現在、国会で審議中の社会保障財源法案の一部として議論されているこの国の医療問題について、「病院や街に「十分な医師がいない」と指摘し、「今後、数年の間にフランスの医師の25%は60歳以上になる」「彼らが定年を迎えた後には、この医師不足の問題はさらに深刻になるため、定年後も彼らに仕事を続けてもらえるためのシステムを構築する」と発表しています。
現時点では、開業医の定年は、生まれた年によって異なりますが、法的には、1955年以降に生まれた医師の定年は62歳です。仕事を開始した時期により僅差はありますが、67歳で年金を満額受け取ることができます。
なので、フランスの医師の25%は、このまま放置すれば、10年以内に消えていくことになります。もちろん、現在でも定年後にも仕事を続けている医師はいますが、現時点では定年後も働き続けることに対しての特別待遇は設けられてはいません。
フランスは少子化による人口減少は起こっていないにも関わらず、医者だけが高齢化を迎えているということは、医者になる人の数が減少しているということや、地域的な格差も影響していると言われています。
いずれにせよ、人口は減少していないものの、高齢者も少なくないフランスで、今後数年は、ますます介護のニーズは増加し医者不足に拍車をかけると見られています。
今後の医学部の学生数の設定などを検討しなおし、対策を始めたとしても、この結果が表れ、現在の現役医師数のレベルに回復するには、2035年頃と見られており、放置すれば、減少を続けるであろう医師をなんとかそれまでは確保しつづけるために、定年後も医者が働く特別待遇を提案し始めたわけです。
マクロン大統領は「定年後も仕事を続ける医者に対しては、年金保険料を免除し、年金をもらいながら仕事を続けることを奨励する」と発表したのです。自分が引退後に受け取ることができる年金プラス、働いた分だけ給与をもらうことができるのです。
しかし、一方では、このシステムにより、年金保険料の7.3%、つまり7300万ユーロの収入減になりかねないとも言われており、この減免措置が医師の増加につながるかどうかは定かではないばかりか、追加報酬の恩恵を受けるために退職の清算を前倒しする医師が出てくる可能性さえあるとも懸念されています。
少子化は免れてなお、顕在化してくる高齢化問題に、社会全体が高齢化を迎えている日本ではなおさらのこと、AIでは代わりが効かない職業の人材問題は、一層深刻になっていくのではないか?と思うのです。
私にとっては、もう20年以上もお世話になり続けているかかりつけのお医者さんがいますが、彼女は定年までは、まだ少し時間がありそうですが、今度、行ったら、「あなたがいなくなったら、絶対困る!ぜひ、その先も仕事を続けてほしい!」と、今度行ったら、頼んでみようと思います。
医者不足 定年後の医者の仕事継続 年金保険料免除
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