2021年3月31日水曜日

集中治療室の患者5,000人突破 フランス全体でも100%超え

  



 感染の急激な悪化により、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)を始めとする16の地域でのロックダウン(実際には、ゆるゆるのロックダウンとなりましたが・・)が発表されたのが、3月18日のことでした。

 結果的には、外出許可証が複雑でわかりにくいなどの混乱を生んで、外出許可証は廃止になり、ロックダウン・ライトなどという呼ばれ方をしながら、それでも数種類の店舗が営業停止になり、10㎞以上の外出には、特別な理由がいるなどの規制が敷かれて、はや、2週間が経ちました。

 イギリス変異種が拡大する中、本当にこんなゆるゆるな規制で大丈夫なのだろうか?と心配していましたが、やはり、その心配は杞憂に終わることはなく、感染状況は、日々、確実に悪化し、1日の新規感染者数は、コンスタンスに3万5千人、多い日には、4万5千人を超える日もあり、感染者数の増加とともに、特に集中治療室の占拠状態が深刻になってきました。

 特にイル・ド・フランスの集中治療室の占拠率は、133%にまで達し、フランス全体でも100%超えの状態です。

 これまでは、ニュース番組でコメントしていた医療関係者なども、「政治的な観点から考えると一概に厳しいロックダウンは、適当であるかどうかは、わからないが、科学的、医学的な観点からは、充分に危険な状況で、何らかの手段を取るべきである・・」と、比較的、抑えた言い方をしていたものの、ここ1週間ほどの、日に日に追い詰められている状況には、政治的には・・などという前置きも取っ払われて、「もう、このままの状況が続けば、2週間以内には、取り返しがつかない状況に陥る」とハッキリ発言するようになり、追い詰められている医療現場の危機感がより伝わってくるようになりました。

 特に「クラスに一人でも感染者が出た場合は、学級閉鎖」を決定した直後に、実際に学級閉鎖を余儀なくされたクラスが激増し、学校内での学級閉鎖の割合は広がっています。

 これらの事態を受けて、水曜日には、科学評議会が開催され、今週中には、マクロン大統領は、さらなる規制の強化を決定するであろうと言われていますが、どのような決断をするにしても、選択しなければならないのは、いずれも厳しい選択だけで、まさに、ババだけでババ抜きをするような状況です。

 今や「もうすぐ、ワクチンが大量に届く」とか、「ワクチン接種を拡大する」などと、いくら力説しても、感染のスピードには、間に合わないのは、明白で、病院でのトリアージュ(患者の選別)が、もうすでに始まってしまっている状態で、これ以上、何もしないわけにはいきません。

 かといって、規制が続く生活にウンザリしている国民にこれ以上の規制を強いることや、学校閉鎖にしても、これまで、「学校の閉鎖は、最終手段」と言い続けてきた政府にとって、学校の閉鎖を決定することは、「もう最悪の危機的な状況である」と宣言するのと同じことです。

 そして、一度、厳しいロックダウンに突入すれば、容易にロックダウンを解除することも難しく、また、イースターのバカンスを目前にして、また家族で集まる機会を迎えるタイミング。かといって、現在の状況を続ければ、感染拡大は止まることはありません。

 この深刻な状況をよそに、マルセイユで大規模なカーニバルが行われたり、昨日は、リヨンで、マスクもしないで、300人以上の屋外パーティーが行われたりしているフランスです。

 「あくまでロックダウンは最終手段」という方針をとり続けてきた政府にとって、ワクチンが予定どおりに届かなくなってしまったことは、予想外の大きな誤算の一つでもありましたが、感染のスピードの速さ、重症化の多さ、そして、重症患者の治療の長期化も予想以上であったはずです。

 まったく、マクロン大統領が就任して以来、マクロン大統領の政策に対する反発から起こった大規模な黄色いベスト運動のデモに始まり、大惨事を生んだテロの発生、そして一年以上にもわたるコロナウィルスとの戦いで、次から次へとフランスには、これでもかというくらい、困難が続きます。

 以前、日本で、村山首相の政権の時に、阪神大震災に続いて、オウム真理教の地下鉄サリン事件などが続いた時に、なんと災難ばかりが起こる政権なんだろうと思ったことを思い出しました。

 しかしながら、今回のコロナウィルスは、フランスだけに起こっていることではなく、世界的なパンデミックで、それぞれの国の対応によって、大きく、その結果に差が出ています。

 今週、マクロン大統領が下す決断は、フランスの今後を左右する重大なものになることは、確実です。


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「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」

「ロックダウンの19地域では、クラスに一人でも感染者が出たら、学級閉鎖」

「フランスは完全に第3波の波に乗った」

「フランスの深刻な医療従事者へのワクチン接種の遅れ」

「ロックダウンがロックダウンではなくなった 外出証明書もいらなくなったロックダウン」



2021年3月30日火曜日

ティーンエイジャーの暴力事件が急増しているのは、ロックダウンが影響している

    


 私が初めて出産した時(最初で最後だったけど・・)、私は正直、嬉しいというよりも、「これは、大変なことをしてしまった・・」と思いました。もちろん、子供は欲しかったし、可愛かったし、嬉しかったのですが、それ以上に、私の意志で、これまで存在しなかった命を誕生させ、一人の人間が育っていくということは、大変な責任を負うことだと、あらためて、感じたのです。

 娘が生まれたのは、もう20年以上も前のことになりますが、当時は、日本でも子供・若者の犯罪(金属バット事件などの家庭内暴力や小さい子供を誘拐して殺してしまったりした犯罪など)が起こっており、もしも、自分の子供がそのような犯罪を起こす人間になってしまったら、取り返しがつかないことだ・・子供を健全に育てるのは、親である私の責任だ・・と、その責任をとても重く考えてきました。

 そうした青少年の犯罪についての本もずいぶん読みましたし、周囲の人にも、ことあるごとに話題にして、聞き回りました。

 その中で、「とにかく、小さい頃から、身体を動かすことを習慣にして、エネルギーを発散させることが大事」という話を聞きました。

 なるほど、身体を動かして、クタクタになれば、余計なことを気に病むこともありません。これは、単純ではあるけれど、なかなか必要なことなのかもしれません。

 娘は、小さい頃からエネルギーに満ち溢れ、昼寝ということをしたことがないほど、疲れを知らない子供で、保育園でも、「おたくのお嬢さんは、もう一人の女の子と一緒に、お昼寝をしないで、周りの子を起こして歩くので、お昼寝の時間は、他の部屋にいてもらいます!」とお叱りを受けたこともあったほどでした。

 もちろん、私がお休みで家にいる日などは、お稽古事や日本語の勉強、買い物などの用事などやらなければならないことが山積みで忙しかったこともありますが、昼間は、何とか身体を動かして、夜はおとなしく寝てもらうのに必死で、主人が休みの日には、グランドに連れて行って、走らせたり、私もプールに連れて行って泳がせたり、彼女を疲れさせることに一生懸命でした。

 しかし、結果的には、彼女をどんどん鍛えていくことになり、彼女は生半可なことでは疲れない強靭な体力の持ち主になりましたが、体力的だけではなく、精神的にも強い子供になり、幸いにも彼女は、横道にそれることもなく、犯罪者の仲間入りをすることもなく育ちました。

 ここのところ、フランスでは、ティーンエイジャーの事件の話題を聞かない日はないほど、未成年者の犯罪が続出しています。

 「とにかく、身体を動かして、エネルギーを発散させることが大事」と心して子供を育ててきた私は、やはり、一年以上も続いているパンデミックによる、ロックダウンや行動制限、スポーツ施設などの閉鎖などが影響している気がしてなりません。

 完全なロックダウンは、最初の2ヶ月ほどでしたが、その他の期間もジムやスポーツ施設が閉鎖されたり、思うようにバカンスに出られなかったり、今シーズンは、結局、スキー場も閉鎖のままでした。

 発散できないエネルギーが不健康に籠り、ストレスから、要らぬ方向へ向かってしまうことも大いにあり得るのです。ある程度の年齢になれば、ほどほどに感情がコントロールできるようになるのでしょうが、(そうでない人も多いけど・・)、ここのところの10代の若者の荒れ様を見ていると、長引いているロックダウンなどの制限下での生活の影響があるのだろうなと気の毒に思ったりもするのです。

 もちろん、同じ状況の中、大多数の人は、このような犯罪を犯すことはないわけで、家庭環境などの他の要因も積み重なって、この様な犯罪を犯すに至ってしまったのでしょうが、少なくとも、これだけ、事件が増加しているのを見ると、パンデミックによる影響がきっとある!と思ってしまうのです。

 犯罪は、その社会の弱者に現れ、問題を映し出すと言いますが、まさに、立て続けに起こっているティーンエイジャーの暴力事件がその一つかもしれません。

 ただでさえ、日本人と比べて血の気が多いと感じることの多いフランス人、パンデミックの中、エネルギーをいかに発散させるかは、差し迫った課題なのかもしれません。


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「フランスの保育園で・・・」

「子育ての不安」

2021年3月29日月曜日

すでにトリアージュ(命の選別)の準備はできているパリ公立病院連合(AP-HP)

            Des personnels soignants s'occupent d'un patient en soins intensifs à l'hôpital AP-HP Ambroise Pare de Boulogne-Billancourt, près de Paris, le 8 mars 2021


 先週25日の夜遅くに行われたマクロン大統領の会見は、主にヨーロッパのコロナウィルスワクチン確保対策に関するものでしたが、その会見の中で、フランスの感染対策・対応について、「1月末の段階(1月29日)でロックダウンしなかった決断は正しかった!」「なぜなら、感染爆発は起きていないのだから・・」と、自信満々の発言に、私は、大いに引っかかり、首を捻ったのでした。

 EU間の話し合い、取り決めにより、滞っていたワクチンがこれからスムーズに届くようになるから、これで私たちは乗り切れる・・ワクチン接種が拡大するまで、できるだけロックダウンを回避して、時間稼ぎをしてきた自分たちの選択は正しかったと言っているのです。

 しかし、何を持って、感染爆発が起こっていないと言っているのかが、私には、甚だ疑問です。

 すでに、現在のイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、127.7%(3月28日現在)(フランス全体でも96.3%)と、毎日毎日、増加を続け、とっくの昔に100%を超えているのです。

 これって爆発状態ではないのだろうか???そして、この数字でさえ、すでに、行われるはずの手術の予定などを40%以上組み直し、可能な限り、他の地域に患者を移送してもなお127.7%という数字なのです。フランス全体でも96.3%ということは、もう他の地域に移送することさえできなくなるのです。

 この医療現場の状況から、AP-HP(L'Assistance Publique -Hopitaux de Paris ・パリ公立病院連合)のディレクター40人以上は、すでに患者をトリアージュする準備ができており、今後、2週間以内に医療崩壊がおこり、トリアージュを余儀なくされる状況になると発表しています。

 つまり、患者を選別するということであり、助かる可能性のある患者が助からなくなるということです。デプログラミングとよばれる、行われるはずの手術が延期され始めた時点で、緩やかな、一種のトリアージュが始まっているとも言えますが、より具体的で結果がすぐに現れる形での患者の選別を行わなければならない状況になるということです。

 昨年の第1波の際には、その状況が短期間のうちに起こり、患者の選別をしなければならない状況をイカつい感じの医者が涙ながらに語っていたのを今でも強烈に覚えています。

 しかも、現在は、昨年の今頃の厳格なロックダウンとは違い、数々の制限下にあるとはいえ、街には人が溢れかえっている状況で、交通事故も凶暴な暴力事件も起こる状況です。コロナ以外の患者の搬送も決して少なくないのです。

 彼ら(AP-HP)が用意しているトリアージュの条件は、コロナウィルス、それ以外の全ての患者、特に成人患者の救命救急へのアクセスに関するものであり、昨年の最悪な状態を迎えた時以上の深刻なものであると言います。

 マクロン大統領が今なお、自信満々に、1月末にロックダウンしなかったことは、正しかったと言っている反面、多くの人がロックダウンのタイミングであったと主張し続けている今年の1月29日からこれまで(3月28日まで)のフランスのコロナウィルスによる死亡者数は、19,796人、ほぼ2万人近くの人が命を落としています。(当初からの死亡者数は、94,596人)

 どんな時にも、フランス国民はよく努力している・・経済的、精神的な負担を軽減するためにと、厳しいロックダウンをせずに甘々な対応に見えていたフランス政府ですが、実のところは、犠牲者を出すことも厭わない冷酷さが見え隠れし始めた気がしているのです。


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「ロックダウンがロックダウンではなくなった 外出証明書もいらなくなったロックダウン」

「フランス・「新型コロナウィルス変異株流行国・地域」に指定」

「新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?」

2021年3月28日日曜日

パンデミック開始以来、保護者20名が死亡している高校が閉鎖を求める悲鳴

   



 現在、最も感染状況が案じられているイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)のセーヌ・サン・ドニのドランシーにあるユージーン・デラクロワ高校の教師の一人が同校の深刻な状況を訴え、対策改善までの学校の一時閉鎖を求める手紙を大統領宛に送ったことから、この高校の深刻な状況が浮き彫りになってきています。

 この高校では、この一ヶ月間で、約60人の学生、20人の教師、3人のスタッフが感染し、パンデミック開始以来、学生の保護者20人がコロナウィルスのために死亡しています。

 経済的にも恵まれない家庭の子供が多く通うこの高校は、2,000人以上が校内で行き交い、両親も感染の危険に晒されている仕事を持っているケースが多いため、校内でも狭いアパートの家庭内でも、感染の危険が高い悪循環です。

 また、高校内の感染状況も伏せられたまま、授業が続けられており、長い間、校内でウィルスが流行していることを知らされていなかった教師もおり、また、現在の感染状況が明らかになってからは、身の危険を感じて、教師が教鞭に立つことをボイコットしたり、校内の清掃のスタッフ不足から、満足な清掃が行われていないというコロナ以前の日常レベル以前の衛生環境であったことがわかっています。

 本来ならば、現在、フランスの高校では、教室の学生の人数を半分にすることが決められていますが、その半分にする規定が明解に示されていないために、ボイコットしたり、実際に感染している教師の欠員のために、少ない教員で、多くの学生を一学級に抱える悪循環が止まりません。

 先週、発表になったとおりに、1クラスに1人でも感染者がいれば、学級閉鎖になるはずではあるのですが、この高校のように、学校全体の指揮系統が崩壊している状況では、もっと明解で、強制力のある決定を求めているのです。

 結局、弱い者たち、貧しい人たちが明らかに悲鳴をあげて、途中にあるはずのあらゆる機関をすっ飛ばして、大統領への手紙。キツい生活規制に堪えられないはずなのに、さらに具体的で強力な規制なしには、廻らなくなっている高校に悲しい現実を思い知らされます。

 今年初めに、高等教育機関の学校に通う学生がマクロン大統領に手紙を宛て、それに回答したマクロン大統領の手紙が話題になりましたが、今後、フランスでは、コロナウィルスの流行とともに、さらにマクロン大統領への手紙を書くことが流行するかもしれません。


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「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

2021年3月27日土曜日

ロックダウンの19地域では、クラスに一人でも感染者が出たら、学級閉鎖 

 

 


 ジャン・ミシェル・ブランケル教育相は3月26日金曜日に、ロックダウン?されている19の地域では、来週から、幼稚園から高校までの「すべての学校レベル」において、1クラスに一人でも陽性者が発見された場合は、学級閉鎖にすること(これまでは3名以上発見された場合だった)を発表しました。

 これは、フランスの現在の感染状況からも、今後、数日で、あっという間に学級を閉鎖せざるを得なくなるケースが続出することを意味しています。

 教育省によると、先週一週間で、新型コロナウィルスに感染した学生は、1,240万人中、21,183人、0.17%(一週間前は0.13%)にのぼり、学校スタッフの感染者数も、1,809人から2,515人へと増加しており、0.22%となっています。

 あくまでも、学校は閉鎖しない政府の方針は、変わらず、あくまでも学校閉鎖は最終手段であるとしているものの、すでに、3,256学級(一週間前は2,018学級)、148校が閉鎖されています。

 SPF(Santé publique France)(フランスの公衆衛生情報機関)は、ここ一週間の間に、15歳以下の感染が31%と急速に増加したことを発表しています。

 年少者の感染拡大の対策として、一人でも感染者が発見された場合に、学級閉鎖をすることは、有効なことであるには違いありませんが、あくまでも学校閉鎖をしない方法を考えるならば、まず、キャンティーン(給食・食堂)を閉鎖することをなぜ、考えないのか?と思います。

 フランスの学校の給食は、それぞれの教室で食事をとるわけではなく、ある程度、学年ごと等に時間をずらしてはいるものの、キャンティーン(食堂)(一つの場所)に大勢の生徒が集まって食事をするのです。

 かなり混雑する、しかも食事の場、マスクをしない空間です。

 そもそも、一般社会では、感染拡大が始まって以来、目の敵のように、ずっと閉鎖されているのがレストラン、食事をする場所なのです。

 たとえ、学校であるとはいえ、一番、感染の危険が高いとされている食事の場を閉めないのは、おかしなことです。その上、ただただ、学校は閉鎖しないと言っているのは、このまま感染者を増やして、学級閉鎖が積み重なり、結局は、学校全体が閉鎖になるのは、目に見えています。

 学校での感染対策がいくら取られても、キャンティーン(食堂)がそのままでは、対策は、ザルに等しいのです。

 多くのレストラン経営者が生活をかけて営業停止を守っていることが、学校で行われないのは、本当に理屈に合いません。

 街のレストランがダメなら、学校や職場の食事の場もダメでしょう!

 せめて、それぞれの教室で食事を取れるようにメニューを工夫するとか、サンドイッチにするとか、お弁当にするとか、人が集まらないで食事をする工夫が考えられるべきです。

 学校を閉鎖したくないならば、ただ学級を閉鎖することだけでなく、どうしたら、感染者を増やさないで済むのか? そのためには、何をしたらいいのか?を考えるべきです。

 フランスには、ごくごく普通の日常の中でも、こうしたら、もっと便利になるのに・・とか、こうしたら、もっと快適に過ごせるようになるのに・・とか、感じることが山ほどありますが、このような感染対策にも、少しでも工夫をして、改善していくということが欠けています。

 感染拡大=すぐに閉鎖、ロックダウン・・ではなく、感染を回避する工夫や方法がどんどん進んで行かないところが、フランスの日常で見られることの延長線であるようで、結局は、フランスの感染拡大が止まらない原因であると思うのです。


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2021年3月26日金曜日

フランスの新規感染者数 一気に4万5千人超えの恐怖

   


 今や定例会見となっている木曜日の夜の会見は、誰が記者会見に登場するかで、その発表内容の深刻度が測れるようになってきました。

 今回の会見には、マクロン大統領でも、カステックス首相でもなく、オリヴィエ・ヴェラン保健相一人の会見だと知らされていたので、大きな動きはないものと予想されていましたが、事実、そのとおりで、大きな発表はありませんでした。

 前日から、ニエーヴル県(ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏)、オーブ県(グラン・テスト地域圏)、ローヌ県(フランス南東部の地域・リヨンなど)など3地域の急激な感染状況の悪化が問題視され始め、この3地域が先週発表された16地域のロックダウン(10㎞以上の外出制限や一部店舗の営業停止)と同様の措置が取られることが発表されたのみ、ロックダウンとはいえ、ゆるゆるのロックダウンで大した規制にはならないことがわかっているため、定例会見にしては、全くインパクトもありませんでした。

 折しも、この会見の当日に、これまで3万人台(平均3万5千人程度)にとどまっていたフランスの1日の新規感染者数が、一気に4万5千人を突破し、感染状態が急激に悪化したことが、はっきりと数字に表れたこともあって、この状態に新たな対策を取らないことに不安の声が大きく上がり始めました。

 オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在の段階では、特に感染が悪化しているイル・ド・フランスに対しても、更なる規制を加えることや、学校のイースターのバカンス時期の前倒し等の対策を決定するのは時期尚早と発表し、今回の発表は、「何も発表することがないこと」を発表したに過ぎない、「時期尚早とは、一体、何をどこまで待てばよいのか?」と辛口の意見が出ています。

 たしかに、1日の新規感染者が4万5千人もいる状態で、「時期尚早」というのは、ちょっと納得し辛い説明です。

 今回のオリヴィエ・ヴェランの会見では、フランスにしては、珍しく、原稿を手元に置いて、それをチラチラと見ながら、下を向きがちな会見で、説得力にかける感が否めないものでした。

 「とにかく、ワクチン接種を拡大する・・3月末までには、これだけの数、4月末までには、これだけのワクチンが届き、これだけのワクチン接種が可能になる」という発表は、もはや、これまでも、ちっとも発表された数字どおりに事が運んでいないために、ほぼ、蕎麦屋の出前状態で、信憑性がありません。

 その上、大した対策の強化はないままに、ワクチン接種だけに頼っている状況では、この感染の勢いを抑えることはできないのは、明白なのです。

 でも、フランスでは、本当は、陽性者の隔離ができていないのが現状なので、ロックダウン云々よりも、陽性者の隔離を徹底すれば、かなり感染の広がりも抑えることができると思うのですが、なぜ、その肝心なところをきっちりやらないのか?不思議でなりません。

 何よりも、イギリス変異種による感染が全感染者の85%を超え、急速な感染拡大が進む中、1日の新規感染者数が4万5千人超の状況の中、これまで間違った対応でさえも、自信満々に発表していた政府が、まるで自分の意思とは違うことを言わされているような、政府内の不協和音を感じさせるような発表に、実際の感染状況とは別の、フランス政府の迷走状態、コントロール不能の恐怖を感じさせられたのでした。

 


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2021年3月25日木曜日

イル・ド・フランスは、イースターのバカンスを前倒しにすべきか?

  


 イル・ド・フランス(パリを中心とした地域)の感染状況が日々、深刻になってきています。特にイル・ド・フランスの中でも、セーヌ・サン・ドニの状況は、危機的な状況で、10万人あたりの感染者も700以上まで拡大しています。

 セーヌ・サン・ドニは、治安も悪ければ、感染状態も最悪で、これまでもできるだけ近寄らないようにしてきた地域ですが、ますます、恐ろしい場所になってしまいました。

 しかし、サン・ドニばかりではなく、イル・ド・フランス全体が危険な状態であることを示すように、昨日は、もう家にいても、ほぼ1日中、救急車のサイレンの音がBGMのように四六時中、聞こえてきて、病院の様子を目の当たりにせずとも、感染者がいかに多いかを実感させられるようになってきました。

 昨年の今頃は、完全ロックダウンの状態で、シンとした街中に絶え間なく響くサイレンの音に震撼としたのを思い出しますが、今はロックダウン中とはいえ、ほぼ、人々が好きに外出できる状態で、それでも聞こえ続ける救急車のサイレンの音には、ある意味、昨年以上に恐ろしいものを感じます。

 奇しくも、昨年の最初の感染爆発とほとんど同じ時期の感染拡大の中のロックダウンは、季節が一緒ということもありますが、もはやロックダウンと同時に恨めしいほどの晴天続き、ロックダウン→晴天というのは、ロックダウンの法則のような気がしてきます。

 言わずと知れたバカンス大国であるフランスは、学校のバカンスも多く、4月に入るとバカンス先の混雑を避けるために、地域ごとに一週間ずつ、ずらしながら2週間のバカンスに入ります。

 フランスで現在、最も感染拡大が深刻化しているイル・ド・フランス地域のバカンスは、本来ならば、4月17日からの2週間の予定になっていますが、イル・ド・フランス地域は、ロックダウンでも、あくまで学校を閉鎖しない方針のフランス政府の方針をできるだけ尊重しつつ、現在の感染を少しでも抑えるために、このイースターのバカンスを2週間早めることを提案しています。

 先週、発表になったロックダウンも、結果的には、数種類の店舗が営業停止になっただけで、この感染拡大はおさまりそうもなく、学校を閉鎖せずに、早めにバカンス時期を当てることで、感染を少しでも抑えられるのではないかという提案です。

 実際に陽性者が複数でたクラスでは学級閉鎖、さらに広まると学校閉鎖、閉鎖された学級、学校の生徒の家族は、自粛規制することが求められていますが、学校を少しでもバカンスという形でクローズすることで、子供から大人への感染拡大を抑えることができます。

 私の周りでも、子供から感染してしまったという話は、決して少なくはありません。今週末から、学校の先生もワクチン接種の対象者に加えられる予定になっていますが、子供から感染するのは、決して先生だけではなく、その家族にも感染しているのです。

 周囲のヨーロッパ諸国の対応と比べて、ロックダウンをしている国でも、学校を閉鎖しても、感染がおさまってはいないではないか?だったら、フランスは、ロックダウンも学校閉鎖もせずに我が道を行くという姿勢を取ってきましたが、考えてみれば、ロックダウンや学校閉鎖をしてさえ感染がおさまらないほどの強力なパワーをもったウィルスに対して、ロックダウンも学校閉鎖もしない状態で感染がおさまるどころか、どのような状況を招くかは、よく言って過信、普通に考えて、甘く見ていたと言わざるを得ません。

 昨日は、許可されたデモや葬儀を除き、フランス全土で、屋外での6人以上の集まりが公的に禁止されましたが、恐らくデモが許可されないことはなく、屋外での6人以上の集まりがダメでも懲りないフランス人は、それ以上に危険な屋内での6人以上の集まりをやめるわけではなく、どこか、政府の打つ手打つ手が、一つずつ、少しずつズレて、肝心なところを外しているような気がしてなりません。

 3月も残すところ、あと一週間、フランスは、この調子だと4月もさらに深刻な状態は続くことは間違いありません。


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「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

「夏にバカンスで閉めるフランスのプールとラーメンを出さないラーメン屋」

「二週間しか行かないの? フランス人のバカンス感覚」

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2021年3月24日水曜日

ロックダウン・ギリギリアウトで娘がスタージュ先から帰ってきた!

  


 そもそも昨年の9月から、本来は日本の大学の大学院に留学することになっていた娘ですが、もちろんコロナウィルスの影響でしたが、ギリギリになってのドタキャンで、急遽、留学に代わるフランスでの受け入れ先のスタージュ(インターンシップ)探しに追いまくられて、一時は焦りまくる羽目になりました。

 それでも何とか受け入れ先が見つかったはいいものの、それが、ブルターニュのしかも、かなりの田舎町で、引越し先も確定しないままに、バタバタとパリを離れたのが半年前のことでした。

 その時点では、一応、日本への留学は、4月に延期ということにしたのですが、結果的には、その半年間の間に、ますますフランスの感染具合は深刻になっていき、日本の大学の受け入れ体制もはっきりしないまま、「もし日本に来れなくても、リモートでの授業を希望しますか?」などの問い合わせはあったものの、結局、リモート対応の可否に対する回答はなく、一度、ドタキャンで苦い思いをしている娘は、もうギリギリになってから、「やっぱりダメです!」とキャンセルになることを恐れて、早々に、4月からのパリでのインターンシップを探して、受け入れ先を見つけていました。

 そして、半年間のブルターニュにある会社の研究所でのインターンシップが終わるのが3月半ばの予定で、「パリに帰ってくる時にロックダウンになってたりして・・」と冗談のように言っていたことが現実になり、タイミングぴったりに、娘が帰ってくる日から、パリはロックダウンになることになりました。

 半年間、お世話になったブルターニュの会社の人々からは、「たくさんの人がパリから逃げ出すときに、ロックダウンされに帰るんだね・・」と、冗談半分に言われてきたそうです。

 仕事や住居の都合などもあり、また、ロックダウンの発表からロックダウンまでの猶予期間もほとんどない状況で、今さら予定を変更することもできずに、ロックダウンになった当日に娘はブルターニュからパリに戻ってきました。

 30㎞以上の移動が禁止されている中、また、ロックダウン初日ということで、モンパルナス駅の取り締まりもさぞかし厳しいだろうと、外出許可証はもちろんのこと、弁明のための、それまでのアパートやインターンシップの契約書や元々のパリの住まいの証明書、4月からのインターンシップの契約書など、考えられる書類を全て携帯していたものの、びっくりすることに、モンパルナス駅でのチェックは、全くなしで、すんなりパリに戻ってきました。

 ただでさえ、ゆるゆるのロックダウンとは思っていましたが、長距離移動のチェックもなし・・、多くの人がパリから逃れていく時にパリにわざわざやってくる人もあまりいないと思いきや、パリ行きのTGVはなかなかの埋まり具合だったとか・・。

 まあ、正当な理由で家に帰ってきただけなので、警察に止められることもなく、無事に帰宅できたのは、幸いなことでしたが、逆に、まるでノーチェックでパリに入れてしまうことに、政府の言っているロックダウンは、一体、何なんだろうか?と、再び疑問を感じた娘の帰宅でした。

 パンデミックの影響で、インターンシップを採用する企業、機関もフランスでは、20%減少しているとのこと。日本への留学を断念せざるを得なくなったのは、とても残念なことではありますが、幸いにも4月から日本へ留学するはずだった期間に受け入れてくれる場所も見つかり、4月から、娘はパリにある国立の研究所で働くことになっています。

 まずは、不幸中の幸い、思い描いていた予定は変更せざるを得なくなりましたが、これで、また新しい道が広がるかもしれないと思うようにしています。

 今は、多くの人が予定を変更せざるを得ない時、フランスもまだまだ平常時に戻るには時間がかかりそうですが、どんな時にもどんな風にでも対応できるたくましさを身につけつつある娘を親として、「頑張れ!」と見守っています。


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「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

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「コロナウィルスの煽りを受けて、急遽、フランスの田舎暮らしが始まった娘」

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「娘の日本への留学・再びキャンセル 日本の国立大学は4月以降の留学生を受け付けない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/4.html


 

 

2021年3月23日火曜日

マルセイユでカーニバル もう気が狂ってるとしか思えない

 Plus de 6 000 personnes ont défilé lors du carnaval de La Plaine à Marseille ce dimanche, en dépit des restrictions sanitaires.


 21日の日曜日、マルセイユで6,500人もが集まるカーニバルが行われた衝撃的な映像がその日の夜から、マスコミに大々的に流され、大きな波乱を呼んでいます。

 「イカれている」という言葉がこれほど似合う画像があるでしょうか?

 マルセイユは、今回、政府の発表したロックダウンする16地域には、入ってはいないものの、決して油断できる感染状況ではなく、屋外とはいえ、この人混みで、マスクをしていない人がほとんど、その上、カーニバルということで、多くの人が仮装したり、ボディーペインティングをしているため、世紀末感を倍増させられます。

 この映像には、もうため息も出ません。

 このカーニバルは、およそ2週間ほど前からネット上などで呼びかけられていたようで、この大掛かりなカーニバルを予め防ぐことができなかったマルセイユ市に対しても、非難の声が上がっています。

 さすがにこのカーニバルの様子は、フランス国民にも大ひんしゅくを買っています。

 現在のフランスの感染状況で(新規感染者数1日平均3万人超えで、多くの地域で医療崩壊を起こし、患者をヘリで移送している状態)臆することなくこのようなカーニバルにマスクなしで参加する人がこれほどもいることがあらためて、ショックでもありました。

 これまで、幾度となく、フランスはもうダメだ・・と思いながら、一年以上を過ごしてきましたが、その度に何度かロックダウンをして、厳しい規制下の生活の中、国民の経済的、精神的な負担を少しでも軽減させつつも、なんとか感染拡大を防ぐような努力を続けている中、このような利己的な行動に走り、臆面もなく、何の悪気も躊躇いもなく、報道カメラの前に立って、自由な生活を訴える若者たちがこれほどまでに後を経たないことは、もうどんな対策をとっても、ザルで水を掬うような状態であることを実感せずにはいられません。

 カーニバルの群衆は、終いには興奮状態で、仮設遊園地のメリーゴーランドに登って雄叫びをあげ、車を燃やし始め、「これではサル以下、猿山の方が余程、統制が取れているだろう・・はっきり言って、もうイカれている・・」と思わずにはいられませんでした。

 自分の無責任な行動がどれだけの命を奪うことになるかも、未だに理解できない人たちを抑えるには、心理的な負担などとは、言っていられません。

 負担があろうとなんだろうと、もう完全なロックダウンをするしか、道はないのではないか!と怒りしかありません。

 これは、私が住んでいるパリで起こったことではありませんが、マルセイユは、ロックダウンになっていないため、このカーニバルに参加した人が、別の地域に移動して、感染をさらに拡大させ、フランス国内をさらに深刻な状況に陥れることは、いくらでも可能なのです。

 フランスは、国民を褒めることはあっても、決して叱ることをしない政府で、甘やかしてきたツケが現在のこのような結果を生んでいます。叱らずに統制を取ることができないならば、厳しい制限で縛ること以外に、フランスでの感染拡大を止める方法は、ないのではないか?と思い始めています。

 少なくとも、私は、自分を守るために、できるだけ感染回避をする生活を続けるとともに、もう1日も早く、ワクチン接種を受けたいと思っています。

 しかし、もういい加減にしてくれ!


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「フランスは、やっぱりダメだ・・と、絶望した理由 コロナウィルスは、蔓延し続ける」

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「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大 新規感染者7000人突破」

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「フェット・ド・ラ・ミュージックでまた、群衆 飲んで踊って大騒ぎのフランス人」

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2021年3月22日月曜日

並ばないフランス人が戻ってきた!

  


 昨年のロックダウン以来、フランスで見られた思わぬ好意的な現象の一つは、これまで、きちんと並んで順番を待つということが、極めて不得手だったフランス人にちゃんと並ぶという習慣ができたことでした。

 日本では、並んで順番を待つということは、当たり前のことですが、これまでフランスでは、隙をついて横入りする人がいるのは、珍しいことではありませんでした。東日本大震災の際には、震災直後の避難所の映像などが大々的にフランスでも流されましたが、非常時の皆が少しでも早く配給を受け取りたいと思うであろう避難所のような場所でさえも、日本人が争うこともなくきちんと並んでいる姿にフランス人も驚いたくらい、フランスの日常では、横入りは当たり前のことでした。

 それが昨年、急にロックダウンになった時点では、感染の恐怖もあり、スーパーマーケットなどでも入場制限があったりして、店内に入るまでに長い行列を待たなければならない日が続き、フランス人にも並ぶという習慣ができたことは、ロックダウンの思わぬ成果だと思っていました。

 ところが、最初のロックダウンから一年以上が経って、また、横入りがチラホラ見られるようになってきたことに、ちょっとガッカリするとともに、すっかり気が緩んできていることを感じているのです。

 緊張状態は、そうそう長く続くものではないことは当たり前なのですが、決して、並ぶことが習慣として植えついたわけではなかったようです。

 先日も郵便局でも、横入りする女性を見かけて、「おっ!久々に見るな・・」と思ったばかりでした。

 昨日はスーパーマーケットで、年配の女性がたくさんの商品をカゴに入れて、皆がレジに並んでいる中、ツカツカとレジの先頭に進んでいくので、「??? この人は、何をしたいんだろう?」と思っていたら、レジの人に直接、「私に先に会計させて欲しい」と申し出ている、コロナ前にもなかなか見なかった堂々たる横入りっぷり。

 あっさりと、レジの人に「ちゃんと並んでください」と言われて、諦めて、列に並ぶと思いきや、「私は、腰が痛いから、入れて・・」と言い訳しながら、列の途中に横入りしようとして、並んでいた若い女の子に「私だって、足が痛いのよ!」と断られている様子には、どっちもどっちですが、「うわ〜っ!フランスの日常が戻ってきた!」と思わされたのでした。

 終いには、その年配の女性は、列の次に並んでいた人には、高齢者カードまで提示して、頑として割り込み、順番を待っている間中、言い訳を続けていました。

 年配の女性で並んで買い物をするのが辛いのはわかるのですが、その振る舞いやもの言いや、買い物の量などやカートも持たずに買い物に来ている様子から、はなから並ばないことを前提として来ている様子があからさまで、久しぶりにうんざりしたのでした。

 現在のフランスの感染状況は、決して気を緩められる状況ではないのですが、一年が経ち、横入りが横行するくらい気が緩んでいる状況なのだろうな・・と思わされたのでした。

 パリには、さりげないおしゃれがしっくりくるような、美しい歳の取り方をしている女性も時々見かけて、素敵な歳の取り方をしているなぁ〜という人もいるのですが、それにしても、その時の高齢の女性、偽物のルイ・ヴィトンのバッグを持って、買い物に出て、横入りするために、周りの人と言い争いをして、なんという年齢の重ね方なのだ・・と、決して、あんな歳の取り方は、したくないな・・と思ったのでした。


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「コロナウィルス・ロックダウン以来、22日ぶりの買い物」

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「フランスのコロナウィルス対策・非常事態宣言 外出禁止・フランスのロックダウン」

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2021年3月21日日曜日

ロックダウンがロックダウンではなくなった 外出証明書もいらなくなったロックダウン

                                

           

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 とうとうロックダウンになってしまった・・と思っていました。

 木曜日の夜に発表されたロックダウンの知らせに、恐れおののき、パリを脱出する人でTGV(新幹線)は瞬く間に満席、道路は大渋滞になり、多くの人がロックダウンを逃れて行きました。

 しかし、実際にロックダウンの当日を迎えてみると、ロックダウンはちっともロックダウンではなく、外出許可証さえ携帯すれば、10㎞以内であれば、買い物でも散歩でも運動でもなんでも理由をつけて外出は可能なもので、天気が良かったことも手伝って、いつも問題になるセーヌ川沿いなども、なかなかな人出で、一体、この状態のどこがロックダウンだったのか?と思わざるを得ない状況でした。

 しかも、その外出許可証でさえ、「条件が複雑すぎて、わけがわからない!」という苦情が殺到し、第一日目にして、あっさり、10㎞以内の外出に関しては、外出許可証は必要ないことになり、身分証明書の提示のみで済まされることになりました。

 正直、わけがわかりません。なんだよそれ!

 営業が許可される店舗もさらに拡大され、食料品、薬局はもちろんのこと、通信機器、大型電気店、園芸用品、DIY用品、書籍、銀行、郵便局などから、美容院、花屋、靴屋、チョコレート店、不動産屋まで追加され、もはや営業禁止の店舗のみを上げた方が早そうです。

 これだけの店舗の営業許可が降りれば、当然、不公平感は高まり、これだけの店舗の営業が許可されながら、感染のリスクは同等だと思われるものの、なぜうちは営業できないのか?と訴える店舗が続出、そんな気持ちもわからないではありません。

 しかも、これまで施行されていた夜間外出禁止も18時から19時に引き伸ばされたため、外出はむしろ、しやすくなったわけで、7days/ 7 days のロックダウンとして発表されたものの、実際にはっきりと制限されたのは、30㎞以上の移動のみで、実際の外出範囲は拡大されたようなものです。

 その上、昨日は、土曜日、いつもと変わらずデモが行われ、パリのサン・ミッシェル、サンジェルマン大通りからバスティーユ広場まで、3000人〜6000人が街を練り歩くという信じられない光景が広がりました。

 イル・ド・フランスの病院はすでに満床状態で、急速に拡大するイギリス変異種の感染を抑えるためのロックダウンだったはず、ゆるゆるのロックダウンをさらにゆるゆるにしたことで、むしろ、「そんなに深刻に受け取ることでもなかったんじゃない!」というおかしな錯覚が起こりそうで、まさに国民を混乱させる逆効果。

 いくら、わかりにくいという苦情が殺到したとはいえ、その外出許可証を訂正するのでもなく、即日、撤廃してしまうという政府のぐらぐらの対応には、一体、どうしたいのかが、まるで理解できない迷走状態に陥ってしまいました。

 フランス国民の主張の強さには、つくづく閉口することも多いのですが、それにも増して、今回の政府のぐらつきは、国民の信頼を大きく失う可能性を孕んでいます。

 いみじくも、昨年のロックダウンとほぼ同じタイミングで迎えた3回目のロックダウンですが、昨年は、完全なロックダウン約2カ月間でようやく感染がおさまり始めたものの、今回の著しくゆるゆるなロックダウンと、強力な感染力を持つイギリス変異種の蔓延状態では、昨年よりもロックダウンが解除できる状態にまで達するのには、時間がかかる可能性もあります。

 しかも、望みの綱のワクチン接種もワクチンが思うように届かない上に、ワクチンの安全性をめぐって、急にワクチン接種を停止して、その3日後に再開するという不安を煽るようなことをして、ワクチン接種を躊躇う人も増えてしまいました。

 昨年末から年明けにかけて感染拡大が深刻だったイギリスやドイツなどは、ロックダウンの効果で、現在は、やっと感染状況も改善してきています。彼らのロックダウンは、こんなにゆるゆるではなかったにも関わらず、感染減少には2ヶ月近くかかっており、ドイツは、現在もロックダウン状態なのです。

 現在のフランスの感染悪化状況でこの甘々なロックダウンはあり得ません。

 何より、ワクチン問題に次いで、また二転三転するグラグラな対応の政府にこれまでにない危機感を感じているのです。


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「驚異的な数の警察・治安部隊を配置してでもデモをする権利を守るフランス」

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「日本人は、黙って我慢すると思われている」

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2021年3月20日土曜日

アストラゼネカのワクチン接種再開 首相自ら接種のデモンストレーション

 La vaccination AstraZeneca a été suspendue pendant trois jours en France.


 ヨーロッパのいくつかの国で、アストラゼネカ社のワクチンが関連している可能性がある血栓症(非定型例)の症例が確認されたことから、先週末から週明けにかけて、ヨーロッパ各国で軒並み、各国でこのワクチン接種が停止されました。

 フランスも例にもれず、急に月曜日の午後から、EMA(欧州医薬品庁)が安全性についての確認ができるまで、アストラゼネカのワクチン接種を停止しました。

 そして、木曜日の午後に、EMAは、アストラゼネカのワクチンは、現在、蔓延している新型コロナウィルス、イギリス変異種等の変異種のコロナウィルスに対しての有効性と安全性を確認したとし、問題となっている血液凝固や血栓症などの副作用との関連性は現段階では、証明されていないことを発表しました。

 これを受けて、フランスも金曜日から、イル・ド・フランス、オー・ド・フランス地域圏を始めとする16地域の3回目のロックダウンの発表と同時に、アストラゼネカ社のワクチン接種を再開することを発表しました。

 金曜日の午後には、カステックス首相自ら、マスコミを呼んで、自らがアストラゼネカのワクチン接種を受ける模様を公開し、同社のワクチンの安全性をアピールしました。

 しかし、当日になって、オリヴィエ・ヴェラン保健相が、「アストラゼネカのワクチン接種は、55歳以上の人に対して、再開します」と、再び、年齢を区切って発表したことから、再び、国民の間で不安が広がっています。

 このオリヴィエ・ヴェラン保健相の発表は、HAS(フランス高等保健機構)の勧告によるものであり、EMA(欧州医薬品庁)が55歳未満の人々における播種性血管内凝固症候群および脳血栓性静脈炎のリスク増加の可能性を特定していることが疑われています。

 まだ、開発されたばかりのワクチンに関しての安全性については、不安がつきまとうものであるのは、当然ですが、そもそもアストラゼネカのワクチンに関しては、当初は65歳以上の人には推奨しないなどと言っており、一時は危険かもしれないと接種を中断しておいて、今度は、55歳以上の人だけ・・二転三転する政府の発表に、国民は動揺するばかりです。

 ロックダウンについても、むやみにSTOP&GOを繰り返すことに対する反発が多く上がっていましたが、ワクチン接種に対するSTOP&GOも不安を煽るものであることに違いありません。

 そもそも欧州医薬品庁が、安全性を確認したとは言っても、ほんの2〜3日の間に確認し切れるものでもなく、こんなに簡単にGOサインを出すのならば、逆になぜ?ストップしたのか?と、懐疑的にもなります。

 今回のロックダウンに関しても、4週間の外出禁止としながらも、外出許可証があれば、10㎞以内であれば、時間制限なしでの買い物、散歩、スポーツのための外出もOKで、生活必需品を扱う店舗のみ営業可能の枠も、当初の食料品、薬局からどんどん広がって、通信機器、大型電気店、園芸用品、DIY用品、書籍、銀行、郵便局などから、美容院、花屋まで営業可能となり、一体、どこがロックダウンなのか?よくわかりません。

 ロックダウン発表後まもなく、これではどうしたらいいのかわからないという訴えが巻き起こっています。

 しかし、ロックダウンという言葉の衝撃は大きかったようで、発表と同時にパリを脱出するTGV(新幹線)のチケット73,000席があっという間に売り切れ、翌日には、ロックダウンを避けてパリを脱出する人で、駅も道路も大混雑という状況を生んだのです。

 政府は国民をできるだけ締め付けない方法を選んだ対策のつもりが、結局は、どうにも受け取れる緩い制限に、国民は、これでは、どうしたらわからないと迷走状態。

 しかし、1回目のロックダウンから一年、ある程度は、何がよくて、何がいけないか、どうしたら、感染を防ぐことができるかを自分で判断できるはずであり、禁止されなければ、自分の行動を規制できないことの方が疑問です。

 このパンデミックを通して、必ずしも政府が発表することは、正しいことばかりではなく、この時代、できる限り、色々な国の色々な情報を自分で得ながら、ある程度、自分で判断しながら、自分の身は自分で守らなければならないと強く思い始めています。

 3月18日の時点で、140万人の人々がすでに、アストラゼネカワクチンの初回投与を受けています。


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「アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感」

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「フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋」

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「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

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2021年3月19日金曜日

フランス・3回目のロックダウンの衝撃と実質的な制限

   

            Discours de Castex : nouveau confinement, couvre-feu à 19h... Les annonces

      

 1月末頃から、いつロックダウンになるかと思っていました。その時がとうとうやってきました。毎日毎日、感染状態を気にしながら、いよいよヤバいと思っていました。

 ロックダウン発表の前日の段階で、感染状態が特に深刻なイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)、オー・ド・フランスは、これまで以上のさらに厳しい制限が敷かれることが発表されていたので、ロックダウンもあるとは思っていました。

 しかし、ここのところの政府のやけに強気なロックダウン回避の対応に、週末のみのロックダウンかと思っていました。今年に入ってからというもの、ロックダウンは最終手段と言い続けてきたフランス政府は、とうとうその最終手段を取らなければならない状態にまでなってしまったということです。

 結局、感染状態は、想像以上に深刻で、すでに集中治療室も満床状態のイル・ド・フランスの発生率は一週間で23%も増加しており、すでに第2波のピーク時の数字を超え、イギリス変異種が感染の75%以上を占め、もう生半可な対応では済まなくなっていたのです。

 とうとう19日金曜日の夜、午前0時から、正確には20日の午前0時から4週間、イル・ド・フランス、オー・ド・フランスなどの16の地域は、最低4週間、ロックダウンされることになりました。

 いつかいつかと思ってはいたものの、実際にロックダウンとなると、やはり、ショックです。

 いみじくも、結局、昨年と同じ時期にロックダウンになってしまったわけです。

 一時は、この深刻な状況にも関わらず、4月には、レストランの営業が開始されるという噂もちらほらしていただけに、急転直下のこのロックダウンには、まだまだ先の道のりが長いことを再確認させられた形になりました。

 これで3回目のロックダウン。対象地域2000万人、23万店舗の営業がストップします。

 しかし、学校は継続され、外出証明書携帯の上、10㎞以内の明確な理由のある外出(買い物、散歩、運動)(しかも時間制限なし)は許可されます。

 よくよく考えてみれば、ロックダウンという言葉は充分に衝撃的である反面、なんだかんだと理由をつければ、かなり外出はできるわけです。

 しかも、これまで行われていた夜間外出禁止は、これまでの18時から19時に延長されます。

 昨日のカステックス首相とオリヴィエ・ヴェラン保健相の会見では、1月29日の段階で、科学評議会(Conseil scientifique)のロックダウンするべきだという警告を聞かずに進んできて、現在の状況に陥ったことは、政策の失敗だったのではないか?という質問に対しても、依然として、政府側は、失敗とは認めず、経済的、国民の心理的な負担を考えれば、決して失敗ではなかったと言い張っています。

 しかし、今年に入ってから亡くなっている27,000人以上の人の命、家族の悲嘆を考えると、これが失敗ではなかったとあっさり片付けられてしまうことには、かなり疑問が残ります。

「ウィルスと共に生きる」とスローガンを掲げながら、生きられなかった人がこんなにいるのです。

 外出したところで、生活必需品以外のお店は閉店しているわけですが、この生活必需品として認められている範囲は、想像以上に広く、食料品、薬局はもちろんのこと、本屋、通信機器、大型電気店、園芸用品店、DIY用品店、眼鏡屋、銀行、郵便局、保険屋等・・・これでは、閉店しなければならない店舗をあげた方が早いのでは?と思ってしまうくらいです。

 結局のところ、ロックダウンという衝撃的な言葉とはうらはらに、10㎞以内であれば、これらの買い物のためという理由だけでも、外出証明書さえ携帯すれば、外出し放題です。

 どんな状況になっても、全く懲りないフランス人、ロックダウンも3回目で、ウィルスの回避の仕方以上にロックダウン等の制限の網の目をかいくぐることにも慣れてきています。

 最も、あくまでもロックダウンを回避してきたフランス政府からしたら、ある程度、国民の心理的なダメージを考えて、ある程度、緩いロックダウンに変化させているとは思うものの、実質的なロックダウンの効果を考えれば、蓋を開けてみれば、これで、本当に大丈夫なのだろうか?と思う結果になりそうな気配です。

 少なくとも、昨日の首相の会見は、ここ数週間の会見とは明らかにテンションが違い、危機感は伝わってきたものの、結局のところ、いくらでもかいくぐることのできるゆるゆるなもので、結局のところ、国民の意識との乖離を感じずにはいられないのです。

 考えれば考えるほど、これは、本当にロックダウンなのだろうか?という気がしています。

 それでもやはり縛られることを嫌い、パリを逃れたい人がいっぱいで、ロックダウン発表翌日のTGVは、ギリギリのタイミングでパリを脱出したい人で、あっという間に満席になりました。


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「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

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「まだロックダウンしないフランスの真意」

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「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

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「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」

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「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

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2021年3月18日木曜日

フランスは完全に第3波の波に乗った

  


 もういつロックダウンになっても仕方ない状態がずっと続いていたフランスは、これまで、あくまでもロックダウンは、最終手段であるとし、ロックダウン回避の姿勢をとってきました。

 ロックダウン回避のためにできることは、全てやると言って、人気YouTuberにまで協力を呼びかけたりしてきた政府も、結局のところ、年明けから変わったことと言えば、警備が多少、強化された程度で、今から考えると、直接、感染を減少させる追加対策は、取られていなかったような気がします。

 10月末に迎えた第2波によるロックダウン以来、レストランやバーなどは、ずっと閉店したまま、18時以降の夜間外出禁止も続いたままにも関わらず、感染は一向に減少しないどころか、イギリス変異種の拡大により、ジワジワと感染は増加してきました。

 ジワジワとはいえ、すでに年明けの段階で、1日の感染者数が2万人超えの状態でのジワジワですから、毎日2万人以上も増えている感染者から感染がさらに広がっていくのは、当然です。

 つい先日のテレビのニュース番組に長時間のインタビューに答えたカステックス首相が言っていたように、第3波を迎えつつある状態で、「フランスは、予防のためにロックダウンはしない」という対策、つまり、最悪の状態になった場合にだけロックダウンということです。

 そして、その最悪の時が来つつあります。

 最終的なロックダウンの決定をするのは、マクロン大統領ですが、マクロン大統領があくまでもロックダウン回避の方針に大きく舵取りを始めたのは、高等教育機関(大学以上)の学生からのマクロン大統領への手紙のやりとりが話題になった頃からで、この学生を始めとする若者の声の高まりが彼を動かしたような気もしています。

 これを機に、学校はとにかく継続、貧窮する学生への食事の援助(1ユーロで供給されるキャンティーンなど)も始まりました。

 医療崩壊さえ起こらなければ、ロックダウンはしないという言葉どおり、集中治療室の占拠率が90%を超えて、逼迫し始めた段階で、できる限り、集中治療室の空きを作るために、まだ少し余裕のある病院への患者の移送をすることを発表しました。

 少しずつ患者の移送が始まりはしたものの、実際のところは、リスクも伴う移送に患者や患者の家族が同意しない場合も多く、政府の算段どおりには、移送は進まず、逆にそれ以上の集中治療室に入る患者数が大きく上回り、問題となっていたイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、患者の移送を開始してすぐに、100%を超えてしまいました。

 さらに、1日の新規感染者数もこれまで2万人台に止まっていたものが、昨日(17日)には一気に38,501人までに跳ね上がり、これまで高い数字とはいえ、なんとか微増の状態で持ち堪えていた状態が、一気に第3波の波に乗ってしまった感じです。

 第2波がおさまらないまま続いているのだから、これは第3波ではないと失笑してしまうコメントを出している人もいましたが、大きな波に乗ってしまったことは間違いありません。

 失笑するコメントには、「悪いのはフランス人じゃない!マスクの性能が悪いんだ!」なんていうのもあって、ずっこけました。

 ここへきて、悪いことにアストラゼネカのワクチンの安全性をめぐって、ワクチン接種もほとんどストップしている状態で、まさに待ったなし、崖っぷちの最終手段を取らなければならない状態です。

 とはいえ、フランス全土がこの危機的な状況であるわけではなく、これまですでに週末のみのロックダウンが施行されているニース・アルプマリティーム県やダンケルクに加えて、オード・フランス、イル・ド・フランスが今後、週末のみ、あるいは、2回目のロックダウンと同様の制限(学校は継続)になることは、確実です。

 フランスの現在の感染拡大は、イギリス変異種が全感染の70%まで達して、猛威をふるっていることが、大きな原因ですが、そもそもイギリス変異種が警告されて、慌てて、イギリスとの国境を閉鎖したのが、昨年のクリスマス直前のことでした。

 あまりの急な国境閉鎖にたくさんのトラックが国境付近で足止めを食い、PCR検査をしないと入国できなくなったトラックの運転手がクリスマスどころか、トラックで数日間、寝泊まりする事態にも陥りました。

 イギリス変異種の感染の勢いと重症化から、マスクがこれまでのサージカルマスクでは充分ではなく、FFPマスクでなければイギリス変異種の感染は避けられないのではないか?などとFFPマスクについても話題にもなりました。

 しかし、年が明けてから、何回も、もうこれはヤバいのではないか?という状態でも、あくまでもロックダウンはしないという政府の姿勢から、イギリス変異種への危機感も何となく、認識が薄れてきてしまったのが現実です。

 実際に、1月半ばの段階で、Inserm (Institut national de la santé et de la recherche médicale) (国立保健医療研究所)は、イギリス変異種が本格的に拡大・急増するのは、3月半ばすぎであると発表しており、それまでに少しでも感染を減少させて、病床を空けて備えなければならない」と警告していました。

 最初のロックダウンが始まってから一年、経済的にも、国民の精神的な疲弊も考慮しつつ、ロックダウンはできる限り避け、ワクチン接種が拡大するまで、何とか凌ごうとしていたフランスですが、結果的には、さらに感染は拡大し、この拡大してしまった感染を抑えるのは、さらに長い時間がかかることになります。

 昨日の病院の現場を視察に出たマクロン大統領が、「この厳しい状況は、4月半ばまで続くだろう」と語ったことが話題になっていますが、今、すぐにロックダウンをしても、すぐに感染がおさまるものでもなく、ロックダウン後もしばらく上昇を続けて、下降し始めるのは、少なくとも2週間後、4月の半ばではとても済む状況ではありません。

 ここまで拡大した状況になると、もはや、ロックダウンする日が1日でも遅れれば、それだけ、感染は拡大し、回復するまでには、さらに時間がかかります。

 結局のところ、もっと早くロックダウンしていれば、こんなに酷いことにはならなかったのではないか?と、やっぱり思ってしまいます。

 今年に入ってからだけでも、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は26,805人、1日平均350人が亡くなっています。

 もはやロックダウンか?というニュースとともに、世界一ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、外出の際のマスクは義務付けられているものの、全てのお店がオープンし、ほぼ日常の生活を取り戻し始めているというニュースが流れています。

 国の対応の違いで、こんなに変わるものなのか?と楽しそうにしているイスラエルの光景をフランス人はどんな思いで見ているのだろうか?と、ちょっと切なくなりました。


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「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

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「マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)」

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「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

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「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

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「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」

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「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

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2021年3月17日水曜日

PCR検査で検出できないブルターニュ変異種の出現

    

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 フランス保健総局は、15日、コロナウイルスの新しい変異種がブルターニュのクラスターに出現し、少なくともこの変異種に8人が感染していることを発表しました。

 これは、2月22日に確認されたブルターニュのコートダモールの病院内のクラスターから特定された79例の感染のうち、3週間後に8例の新しい変異種が発見されたものです。この新しい変異種は典型的な新型コロナウィルスの症状を示していますが、厄介なことは、鼻咽頭サンプルによるPCR検査では陰性を示していた点です。つまり、PCR検査では、検出ができなかったわけです。

 現在の段階で発見されている、この新しい変異種の感染者は、すでに死亡しているため、この変異種の変化については、確認が容易ではありません。

 この新しい変異種の危険性(感染性や重症化のリスク)については、現在、調査が進められています。

 PCR検査で発見できなかったのは、ウィルスが上気道で検出されなかったということで、これは、ウィルスが急速に肺に移動したと考えられ、エアロゾルを介した感染経路が減少するため、伝染性が低いと考えることもできますが、一方、急激な病状悪化の可能性が高いとも言えます。

 ましてや、PCR検査で検出できないとなれば、感染の回避は困難になるため、結果として、感染性が高いことになります。

 ウィルスの突然変異は、ウィルス自体が生き残るために、時間の経過とともに変異を続ける自然なプロセスとは言うものの、これまでのPCR検査を逃れるように変異するとは、なかなかな変異ぶりです。

 この新しいブルターニュ変異体が、より感染しやすいものなのか? 免疫を逃れるものであるかどうか? より重症化するものなのか? ブルターニュで2月末に起こったクラスターの追跡が続いています。

 これまでもイギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異種が出現し、パンデミックを長引かせています。日本変異種も一時、話題に上がりましたが、すっかり、なりを潜めているので、新しい変異種と言えども、必ずしも脅威的な存在になるとは限りません。

 しかし、今やイギリス変異種の感染者が全体の感染者の70%以上にとってかわり、1日の新規感染者数が3万人にものぼる勢いで、医療状態も逼迫し、今にもロックダウンかもしれない現在のフランスの状況を考えると、新しい変異種の出現は、フランス国内ということもあり、見逃すことはできない、新しい変異種の出現です。

 悲観的に考えれば、現在は、亡くなっている人からしか確認されていないということは、致死率100%なわけで、それ以外は、PCR検査で検出できないのですから、発見のしようがありません。

 次から次へとトラブル続きのフランス。

 集中治療室の満床を防ぐための患者の移送も思うように進まず、頼みの綱のワクチン接種も中断したと思ったら、今度は、新しい変異種出現で、春がまた遠くなった気がしているのです。


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「イル・ド・フランス 崖っぷちの政府の対応策は患者の他地域への移送」

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「アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感」

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「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

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2021年3月16日火曜日

アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感

 

  Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 アストラゼネカ社のワクチンについては、先週、すでにその安全性が確認できるまで使用を中断することをデンマーク、ノルウェー、アイスランド、ブルガリア、アイルランド、オランダ、スペインが発表していました。

 いずれの国も同社ワクチンによる副反応(血栓症)への懸念によるものです。

 今週になって、ドイツが血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできないとして、ポール・エーリッヒ研究所(PEI)の助言に従い、アストラゼネカのワクチン接種を中止することを発表しました。

 このドイツの発表から雪崩式に、フランス・マクロン大統領が欧州医薬品庁(EMA)によるアストラゼネカ製ワクチンの精査が16日に完了するまで、予防措置として、同ワクチンの接種を停止することを発表しました。

 イタリアも同様の決断を下しています。

 フランスでは、つい数日前に、オリヴィエ・ヴェラン保健相が「アストラゼネカのワクチンについては、リスクは大きいものではなく、ワクチン接種を中断する理由はない」と記者会見で発表したばかりです。

 多くの医療従事者は、副反応のリスクについてはゼロではないものの、特に事例が急増したわけでもなく、今回のマクロン大統領のワクチン接種中断の発表は大いに政治的な発言であると遺憾の意を示しています。

 あくまで「予防措置」として中断するという発表ではあったものの、この急なアストラゼネカワクチン接種中断の発表は、その中断という内容だけでなく、数日前まで、かなり強い調子で言っていたことを否定するもので、政府の発表、決定に対する不信感と混乱を招いています。

 タイミングも悪く、先週の保健相の発表の舌の根も乾かないうちのこの発表は、ただでさえ、感染状況も深刻に悪化しているフランスの現在の状況には、さらなる混乱を招き、かなりのマイナスポイントです。

 ドイツのように、血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできない以上、使用は中止するというはっきりした決定ならば、いざ知らず、数日前まであれだけ勧めておいて、精査ができるまで一応、中断するというどっちつかずの発表は、不安と不信感を募らせます。

 すでにワクチン接種をしてしまった人も微妙な気持ちでしょうし、していない人も動揺します。

 開発されたばかりのワクチンが急激に広まるのですから、この種のトラブルが起こることは、充分に考えられることです。政府は、これに対するもう少し慎重な対応が必要でした。

 ただでさえ、ロックダウンを回避し続けながら、感染はすごい勢いで拡大し続ける中、アストラゼネカのワクチン接種を中断することで、頼みの綱であるワクチン接種が大幅に遅れていくのは、大きな痛手であるに違いありません。

 特にフランスで現在、最も出回っていたアストラゼネカのワクチンです。

 フランスでは、曖昧な態度でお茶を濁すような発表や対応では国民は納得しません。中断するにしても、それなりの明解な説明が必要です。

 ただでさえ、感染拡大、感染悪化は、政府のせいだ!と言い張る人が多いフランスです。明瞭な説明がなされない限り、政府に対する反発はさらに大きくなります。

 すでに一回目のワクチン接種を済ませている人(アストラゼネカワクチンで)は、二回目の接種に足止めを食い、この混乱から宙ぶらりんな状況に置かれ、不安な状況に陥っています。

 ただでさえ、今にも再びロックダウンかもしれない・・すでに多くの制限下で不安な状態に置かれているフランス人にとって、このアストラゼネカワクチンの可否、是非についての混乱は、不安をさらに募らせることになってしまいました。

 マクロン大統領は、このワクチン接種の中断とともに、欧州医薬品庁(EMA)の再審査の結果、許可がおり次第、ワクチン接種は再開すると発表していますが、このバタバタでさらに募った国民の不信感を回復するのは、大変です。

 早くも一晩にして、アストラゼネカのワクチンに対する国民の不信感は激増し、世論調査によれば、アストラゼネカのワクチンを信頼していると答えた人は、20%のみ、52%がアストラゼネカのワクチンを拒否し始めました。

 これでは、たとえEMAのOKが出て、政府がワクチン接種を再開させても、スムーズにワクチン接種が進むとは思えない状況です。このワクチン再開には、まずこのワクチンの安全性に対する信頼を取り戻すことから始めなければなりません。

 ちなみにフランスでこれまで接種されたアストラゼネカワクチンは、1,344,118件、ヨーロッパ全体では500万件中、血栓症が報告されているのは、30件だそうです。

 私もワクチン接種の予約をしていましたが、今週あたり、もう一度、お医者さんに電話して聞いてみようと思っていたのですが、これでは、当分、無理そうです。


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「フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/03/blog-post_14.html





2021年3月15日月曜日

コロナウィルス セルフ検査キット発売開始

    


 今週から、フランスの薬局やスーパーマーケットでは、コロナウィルス感染を自宅で自分でチェックできる検査キット(Auto Test Covid)の発売が解禁になります。

 これには、偽陰性、偽陽性の科学的な信頼性への懸念もあり、また、陽性の場合のフォローアップが難しいために、長いことフランス政府では、この発売許可を保留、検討し続けてきましたが、最近、これと同種の市販のデバイスが、スイス、スロベニア、オーストリア、イギリスなどの他のヨーロッパの近隣諸国で採用され、数日間、子供たちの学校への復帰などをサポートしている実績も踏まえ、フランスもこの検査キットの販売許可に踏み切ることになりました。

 この自宅に買い置きもできるテストにより、感染の疑いをもった瞬間に、すぐ検査(鼻腔検査)ができ、結果が15分後に出ることから、より早く隔離ができる有効性を期待しています。 価格は、5つのパッケージで21ユーロから25ユーロと見込まれています。

 しかし、セキュリテソーシャル(国民健康保険)のカードさえあれば、検査施設、薬局などでは、PCR検査が無料でできるフランスで、一般的に広まるかどうかは、甚だ疑問でもあります。

 また、陽性者の隔離についても、検査機関で行った検査でさえも、隔離がきっちりされていないフランスでは、検査キットを発売したところで、隔離問題は、さらに曖昧になります。

 フランスの感染状態は、日々、勢いをあげて、深刻さを増しており、現在、最も問題になっているイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)の集中治療室の占拠率は、98.9%にまで上昇しており、病院のプログラムを40%組み直し、さらに患者の他地域への大掛かりな移送まで開始しているにもかかわらず、上昇し続ける集中治療室の占拠状態は、もうすでにパンク状態を通り越しているのです。

 もしも、東京中の全ての病院が満床になり、患者をヘリコプターや飛行機、新幹線で移送する状態を想像できますか? フランスでは、昨年にも同じことが起こっているので、もはや、珍しい光景ではなくなってしまっているのですが、やはり、何度見ても、衝撃的です。

 そんな状態ですから、感染しても、病院では余程、重症でなければ、扱ってももらえず、陽性になって、多少の症状があるくらいでは、ドリプラン(フランスで最も一般的な解熱・鎮痛薬・パラセタモール)を飲んで、様子を見るように言われて帰された・・という話をいくつも聞いています。

 今や集中治療室は、ほぼ満床、重症になっても、たらい回しになる可能性大です。

 検査場、薬局における最大限の検査の拡大に加えて、検査キットの発売と、そしてワクチン接種の拡大と、できる限りのことはなんでもやっているフランスですが、残念ながら、イギリス変異種の感染拡大のスピードは、それを上回り、新しい対策も虚しい感じが拭えません。

 とはいえ、家庭内に体温計を常備しているように、コロナウィルス検査キットを常備するようになる日が来るとは、なんということでしょうか?

 「えっ?もしかしたら・・」と感じた時に、とりあえず検査ができるのは、安心かもしれません。とりあえず家で検査してみてから・・なんだか、妊娠検査薬みたいだな・・とも思ってしまったのです。


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「フランスのPCR検査 感染者を責めないフランス人のラテン気質」

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「フランスのロックダウンは遅すぎた コロナウィルスと戦う大移動作戦」

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2021年3月14日日曜日

フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋

 Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 デンマーク、ノルウェー、アイスランドの3ヶ国は、アストラゼネカのワクチンが血栓を形成する懸念があることから、このワクチン接種を当面の間、停止することを発表しました。

 まだ、開発されて間もないワクチンで、疑心暗鬼になりやすい中、いくつかの副反応例が報告されていましたが、オーストリアでの49歳の看護師がワクチン接種後に重篤な出血性疾患を起こして死亡したことがワクチン接種の停止決定の引き金を引いたようです。

 しかし、同様の問題が起こったイタリアでの症例等も合わせて調査した結果、この問題が、アストラゼネカの同じロットから起こっていることが判明し、同じロットから配送されたワクチンを使用していた、他の4つのヨーロッパ諸国、エストニア、リトアニア、ラトビア、ルクセンブルグは、このロットからのワクチン接種を直ちに停止しました。

 欧州医薬品庁(EMA)による調査によると、その地域(欧州連合、ノルウェー、アイスランド)でワクチン接種を受けた300万人以上の血栓症が報告されたのは22例のみ、これまでのところ、ワクチン接種を受けた人々の血液凝固が高いリスクを示すものはないことを明らかにし、アストラゼネカのワクチンとオーストリアでの死亡事故?との間に関連性はないことを強調しています。

 デンマーク、ノルウェー、アイスランドのアストラゼネカのワクチン接種停止の発表後、ロンドンは、スウェーデンとイギリスの研究所とオックスフォード大学によって開発されたこのワクチンを擁護し、「安全で効果的」であるとし、全世界で使用され続けることを保証しました。

 イギリスでは、これまでにファイザー、ビオンテック、アストラゼネカのワクチンのみを使用して、2200万人以上に初回接種を行っています。

 アストラゼネカのスポークスマンは、「ワクチンの安全性は第3相臨床試験で広範囲に研究されており、レビューされたデータはワクチンが一般的に十分に許容されることを確認している」と保証しました。

 このアストラゼネカのワクチンへの波紋が広がり始めるのに対して、フランス保健相オリヴィエ・ヴェランは、即刻「フランスで、アストラゼネカのワクチン接種を中断する理由はありません。ドイツもイギリスもこのワクチン接種を継続しています。ワクチン接種の利点は、この段階でのリスクよりも大きいと考えられています。」と発表しました。

 都合よく、ドイツやイギリスを引き合いに出すあたり、なかなかだな・・とも思いました。 

 ようやく、ワクチン接種の拡大にアクセルがかかってきたフランスですが、まだまだ感染が拡大する速度に追いつく数のワクチン接種の進行には至っていないのです。

 ところが、アストラゼネカは、生産体制の遅れから、ワクチンの配達がさらに遅れることを発表し、当初予定されていた1億2,000万回分のワクチンのうち、第一四半期にEU加盟国に提供できるのは、その三分の一の4,000万回分であると報告してきています。

 私は、ひょんなことから、ワクチン接種の予約をしてありますが、予約の際にどこのメーカーのワクチンなのか尋ねたところ、「今は、アストラゼネカしか入らない」とのことでした。

 今のところ、ワクチン接種ができる知らせは来ていませんが、この調子だといつやってくるのかは、わかりませんし、ワクチンを自分で選べる状況でもありません。

 ワクチンをするリスクもしないリスクもありますが、現在のフランスの状況では、私は、ワクチン接種をしないで感染するリスクの方が圧倒的に高いと思うので、アストラゼネカだろうとワクチン接種は受けようと思っています。

 4月中旬には、フランスで4つ目に認可されたジョンソン&ジョンソンのワクチン接種が開始されるようで、このワクチンは1回の投与で済むようで、もしかしたら、4月以降まで待って、こちらにした方が結局は早道なのかも??と思ったりもします。


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「混乱状態のフランスのワクチン接種 コロナウィルスワクチン接種の申し込みをした!」

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2021年3月13日土曜日

フランスのコロナウィルスによる死亡者数9万人突破

  


 マクロン大統領によるコロナウィルス感染対策の最初のスピーチがあったのは、昨年の3月12日、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とフランスの全ての学校を閉鎖するという内容のものでした。

 生まれて初めての経験で、私は、その頃は、まだまだパンデミックという状況をはっきりとは自覚していませんでした。

 しかし、それから数日後、生活必需品の買い物以外は、一切、外出禁止という厳しいロックダウンが発表され、しかも、発表の翌日の正午から・・という急転直下の展開でした。

 人々は、買いだめに走り、街には、「ソーシャルディスタンスを取れ!」とがなり立てる警察が闊歩し、軍用車が走り、マクロン大統領が「我々は、今、戦争状態にある」と言った、その通りの状況に国中が一変しました。

 あの頃は、ウィルスに関する情報も充分ではなく、厚生相が堂々と公の場面で、「一般の人には、マスクは必要ではない」などと言っていたのでした。今から考えれば、なんと恐ろしい情報発信だったことでしょう。

 少なくとも今の時点では、マスクなしの生活は、考えられません。

 それから2ヶ月ほどのロックダウンを経て、感染が減少し始め、夏のバカンスシーズンには、まさかの結構な人数の人がバカンスに出かけ、秋になると案の定、感染は再び増加し始め、10月末には、再び、ロックダウンでした。

 2回目のロックダウンは、学校は閉鎖せず、工場なども稼働したままのロックダウンで、最初のロックダウンほど厳しいものではありませんでしたが、1ヶ月のロックダウンで、ある程度、感染は減少したため、フランス人が命とバカンスの次に大切にしているノエルを家族と過ごすことは許されました。

 しかし、ノエルの時期を前後して登場したイギリス変異種を始めとする変異種の拡大により、再び、フランスは危機的な状況を迎えています。

 いみじくも、最初のマクロン大統領のスピーチから、ちょうど一年のこの日、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は9万人の王台を突破(90,146人)、集中治療室の患者数は、4,000人を突破(4,033人)、これまでの総感染者数が400万人を突破(4,015,560人)しました。

 一年間で9万人の死亡者(ちなみに日本は8,451人です)とは、あらためて、恐ろしい数字です。そして、これは、まだまだ終わってはいないのです。

 特にイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の感染状況は深刻で、すでに90%以上は埋まっている集中治療室の患者を100人以上、週末の間に他の地域に移送することが決まり、大移送作戦が始まっていますが、想像以上の混乱状態で、移送するそばから、新たに入ってくる患者の対応におおわらわです。

 それもそのはず、ただでさえ、人員不足の病院で、患者の移送には、一人に対して数名のスタッフが付き添わなければならず、新たに入ってくる患者と交差する状況が混乱を生むのも当然のことです。

 また、これは、イギリス変異種による感染の特徴として、入院=ただちに集中治療室へ直行という重症化へのスピードが早いため、病床、しかも集中治療室の占拠率が必然的に高くなるわけです。

 そして、イギリス変異種感染のもう一つの特徴は、これまでの感染者よりも低年齢化しているということです。比較的、若い世代の急激な病状の悪化は、最低でも2週間は集中治療室での治療が必要なだけでなく、一旦、症状が治っても、症状の満ち引きを繰り返す長期コロナ感染症(COVID LONG)を引き起こすケースが多いということです。

 今、ヨーロッパは、この変異種(特にイギリス変異種)の猛威に襲われており、来週からイタリアも3度目のロックダウンに入ることが決定しています。

 周囲のロックダウンしている国でも感染はなくならないのだから・・とロックダウン回避の道をとっているフランスですが、感染はとどまることを知らず、ちょうど最初のロックダウンから一年が経とうとしているこのタイミングで、再び、危機的な状況を迎えています。

 ワクチン接種も開始され、フランスでは480万人に対して、少なくとも1回目のワクチン接種が済んでいますが、感染拡大の大きな波を抑えられる数には、到底達してはいません。

 一年が経過して、ある程度の情報が蓄積されている一方で、医療従事者も国民も、長引く制限下での生活に経済的にも精神的な疲弊も蓄積されて、二次災害のような事件も続出しています。

 一年前には、思ってもみなかったことが起こったと思いましたが、一年経ってもまだまだ終わりが見えないどころか、再びかなり深刻な状況にいることも、一年前には、思ってもみなかったことでした。

 


<関連>

「長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/covid-long.html


「フランスのコロナウィルス対策・非常事態宣言 外出禁止・フランスのロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_18.html

2021年3月12日金曜日

イル・ド・フランス 崖っぷちの政府の対応策は患者の他地域への移送

 

 


 フランスのコロナウィルスの感染状況は、夜間外出禁止、ニースやダンケルクなどの地域的な週末ロックダウンの対策をとりながらも、急激な感染増加は避けられているものの、確実に悪化を続けています。

 急激な感染増加はしていないとはいえ、すでに先日も1日の新規感染者数が3万人を突破し、年明けには、2,634人だった集中治療室の患者数も約50%増加し、3,918人にまで達しています。

 すでに、フランスは、ヨーロッパ内で、最も感染が悪化している国になっています。

 中でも、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠状態は、最も深刻な状況で、すでに90%以上が埋まっている状況、現在(3月11日現在)1,056人が集中治療を受けています。イル・ド・フランスだけで、全国の集中治療室の患者数の約4分の1を占めているのです。

 現在のイル・ド・フランスの集中治療室の占拠状況の悪化は、イギリス変異種の拡大によるものです。今や感染者の67%がイギリス変異種による感染に置き換わっています。

 イギリス変異種の重症化、致死率は1月の段階でイギリスの首相が発表した内容(感染率、重症率、致死率が高い)を裏付ける実際のデータが発表され始めています。

 最近は、政府の感染対策に対する記者会見があることで、もう木曜日か・・と思うくらいになっていますが、昨日のその会見で、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、この深刻なイル・ド・フランスの状況に対する対策として、イル・ド・フランスから、他の余裕がまだある地域への患者の移送で、医療崩壊を避ける方針を発表しました。

 また、ヘリコプターやTGVによる物々しい患者の移送が大量に始まるわけです。

 昨年の3月末には、ロックダウン状態の中、すでに医療崩壊を起こして患者の移送が盛んに行われていました。嫌なことに、また同じ時期に患者の大移動です。

 昨年の今頃、ロックダウンして、家の中に閉じ込められた状態で、家の窓から、やけに青い空の上をヘリコプターが飛んでいくのを見るたびに、あのヘリコプターも患者を運んでいるのだろうか?などと不安に感じたのを覚えています。

 単に患者の移送というには、それは、あまりに物々しく、一人の患者に何人ものスタッフが付き添い、呼吸器を装着したまま、しかも感染を防ぐための防御をしながら、移送するのですから、かなりの大掛かりなもので、人出も費用も半端なくかかります。

 TGVなども車内を患者の移送用に改造されたものが使われていました。

 患者の移送以前にも、すでに、それまでに予定されていた手術の予定などをできる限り(40%)キャンセルし、集中治療室に隙間を作っていたはずでした。これだけでも、すでに助かるはずの患者が手遅れとなって助からなくなっている可能性も大きいのです。

 しかし、現在、一番、深刻な状態になっているイル・ド・フランスは、一時はあわやロックダウンか?と俄に震え上がり始めた時期もあったにも関わらず、その時よりも感染が悪化しているにも関わらず、週末のみのロックダウンという対策も、あまり話題にも上がらなくなりました。

 ギリギリの状態にも関わらず、敢えてロックダウンを回避しているという状況を世間は、ロックダウンは必要ないまだ安心な状態と勘違いしている感もあり、世間の状況を見ていると、逆にリモートワークでさえ、減っているのではないか?と思われるような、交通機関や街の人出です。

 本来ならば、ロックダウンをせずとも、個々が充分に注意すれば、かなりの感染は、減らせるはずなのですが、それができないのがフランスです。

 今回の政府が発表した対策「イル・ド・フランスの集中治療室の患者の他地域への移送」は、感染を減少させていく対策ではありません。ひたすら、全国の集中治療室をくまなく埋めていくのです。

 ワクチン接種が広まるまでの時間稼ぎなのでしょうが、頼みの綱のワクチン接種も感染の速度には、間に合うほどには、進んでいません。

 何もしなければ、イル・ド・フランスの集中治療室の患者数は、3月末には1,500人を突破する見込みだそうですが、感染者の増加を減少させる状態が取られない以上、感染者は他の地域の病床占拠率をも圧迫していくだけです。

 それでも、「ロックダウン措置をとっている他のヨーロッパ諸国でも感染は悪化している」として、ロックダウンを回避しながら、過ごしているフランスの強気がいつまで続くものやら、本当に心配しています。

 コロナウィルス感染が始まって約1年、対策が後手後手に回って多くの犠牲者を出してきたフランスは、敢えて、ロックダウンを避けて、さらに犠牲者を増やし続けていることが、もどかしくてならないのです。

 

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「フランスのロックダウンは遅すぎた コロナウィルスと戦う大移動作戦」

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2021年3月11日木曜日

東日本大震災から10年・マクロン大統領の日本へのメッセージ

 


 

 東日本大震災から10年、「FUKUSHIMA」は、世界中に知られる有名な場所になり、フランスでも、おそらく「FUKUSHIMA」を知らない人はいないでしょう。

 あの日、朝、起きて、習慣のようになっていたテレビの朝のニュース番組をつけると、まだ、ぼんやりとした頭に「ジャポン・TSUNAMI・・」という声が聞こえてきて、「えっ?」と思って、画面に目を向けると、流されていく車や家の映像に、思わず二度見して、果たしてこれは、現実の映像であるのだろうか?と、座り直して、テレビに釘付けになったのを覚えています。

 「TSUNAMI」という言葉は、あれ以来、フランスにもしっかりと定着し、今回コロナウィルスの感染状況を表すにあたっても、「TSUNAMI」がやってきた・・などの言い方をしているのを時々耳にします。

 フランスでは、現地のニュースで日本のニュースが流れることはあまりありませんが、あの時ばかりは、連日連夜、FUKUSHIMA・・FUKUSHIMA・・と、何日も特番が組まれ、荒れ果てた被災地の様子や被災者が避難所でもきちんと並んで配給を受けている様子なども逐一、報道されていました。

 その頃、通っていたスポーツジムなどでも、居合わせたフランス人に、「あなた、日本人でしょ、あなたのご家族は大丈夫だった? 大変だったわね・・日本人は、あんなに大変なことがあっても、慌てず、礼儀正しく、我慢強くて、きちんと並んで・・スゴいわね・・フランスであんなことがあったら、みんな殺し合いになるわよ・・」などと話しかけられることが何回もありました。

 あの時は、「なるほど、フランスであんなことがあったら、みんなパニックになって、さぞかし大変なことになるだろうな・・本人たちもちゃんとわかっているのだな・・」などと、心の中でこっそりと思ったりしていたものです。

 そして、形は違いえども、昨年から、コロナウィルスによるパンデミックというなかなかな困難な局面に世界中、ほぼ同時に直面している今、震災などの危機をくぐり抜けてきた日本とフランスはやっぱり違うんだな・・とあらためて感じています。

 それをどこまで実感しているかは別として、抜かりのないマクロン大統領は、3月11日、ツイッター上で震災から10年に際しての日本へのメッセージを発表しています。(以下全文)

 「Mon message au peuple japonais. Au nom de l'amitié qui nous unit.

   日本人へのメッセージ 私たちを結びつける友情の名において」. 

 「ちょうど10年前の2011年3月11日、日本はかつてない規模の大地震と津波に襲われました。今日、私は当然、何よりもまず、この恐ろしい震災の犠牲者と家族、全てを残してただちに避難しなければならなかった数十万人の被災者に思いを寄せます。

 フランスと世界中の多くの人びとと同様、私もこの日、これらの恐ろしい映像を通して、家族、町や村、すべての人々に想像を絶する苦しみを与えた荒れ狂う自然の驚異を思い知らされました。

 この悲劇に加え、原発事故と人々への影響に対する懸念が追い討ちをかけました。

 しかし、私はすべてのフランス人と同様に試練に見舞われた人々の勇気と尊厳、私たちも含め世界中に大きく広がった連帯と支援の輪、私たちを結ぶ友情の表れも目にすることができました。

 フランスの各都市、地方自治体、市民団体、企業、個人、日本在住のフランス人も含めフランス全体が被災者を支援しようと立ち上がりました。

 世界がパンデミックに直面している今、この場をお借りして日本国民の皆さんの抵抗する力、復元する力に敬意を表します。10年間、被災した地域を復興させ、活気を取り戻すために惜しみない努力が注がれてきました。

 今日、この希望のメッセージはフランス人と日本人、私たち皆にウィルスの試練を乗り越える力を与えてくれます。

 この希望のメッセージは、皆さんの国と皆さん一人一人が、この10年間、私たちに与えてくれたものです。

 「さあ、一緒に未来に目を向けましょう!」

 「MINASAN TO ISSYO NI MIRAI WO !」

https://twitter.com/EmmanuelMacron/status/1369887308854550531


 フランスは、たしかに困っている国を支援しようとする姿勢が強く、実際に行動も早いので、東日本大震災の時はもちろん、最近でも、私が覚えているだけでも、このコロナ禍の中、レバノンの湾岸地帯で大爆発が起こった後に暴動の様な状態になった時も、モーリシャス沖合で日本の貨物船が座礁して、大量の重油が流出した時も、すぐに声明を発表して、翌日には、救援隊を派遣しています。

 ちょっと、外面が良すぎる感は、ありますが、そのスピードと連帯の姿勢はスゴいなと思わされることも多いのです。

 しかし、このマクロン大統領の全編フランス語のメッセージ。

 日本人として、マクロン大統領が日本に向けてメッセージを発信してくれたことは、正直、嬉しかったのですが、なんだか、スッキリと響いてはきませんでした。

 日本へのメッセージというよりは、フランス国民、そして、世界に向けてのポーズであるようで、どこか空々しく、素直に私に伝わってこないのは、私が捻くれているせいでしょうか?

 日本語で語った最後の一言、「MINASAN TO ISSYO NI MIRAI WO」が虚しく響く気がしたのです。


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「モーリシャス沖合での日本貨物船座礁事故にだんまりを決める日本政府」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/blog-post_15.html

「100年に一度くらいのことが立て続けに起こる年 レバノンでの湾岸倉庫爆発事件」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/100.html

2021年3月10日水曜日

嫉妬による嫌がらせから起こった14歳の殺人事件 セーヌ川に捨てられた少女

  


 このところ、フランス各地で、10代の半ばのティーンエイジャーの事件が続発しています。

 その多くが地域のグループ同士による抗争がエスカレートした乱闘から、ナイフなどの凶器による傷害事件や殺人事件です。

 昨日もパリ16区の高校前で数十名が関与するグループ間の乱闘から3人が負傷し、1人が刺されるという事件が起こっています。ここのところ、このような傷害事件が続いているので、正直、またか・・という気持ちもありますが、これがパリ16区という高級住宅街で起こっていることはショッキングなことでした。

 この事件がこの高校の生徒が関係しているものかどうかはわかっていませんが、この高校(Lycée Jean de la fontaine)は、公立高校でありながら、日本語セクションがあり、正課で日本語が学べる高校で、一時は娘もその高校へ進学させようかと考えていたこともあったので、余計にショックが大きいです。

 先日もパリ15区で、14歳の少年が集団による凶暴な暴力を受けて、殺人未遂事件として扱われていますが、今度は、その隣の16区での事件、今や、この手の事件が必ずしも貧困する地域にばかり起こる事件ではなくなっていることがうかがえます。

 そして、同じ日に、14歳の少女が1人の少年を挟んだ三角関係から派生したトラブルから、セーヌ川で死体で発見されるという痛ましい事件が起こっています。

 彼らは、アルジャントゥイユ(ヴァルドワーズ・イル・ド・フランス)にある同じ高校に通う生徒でした。

 この事件は、血塗れになって交際中の彼女と共に帰宅した息子を不審に思った母親が少年に問いただしたところ、少年が母親に犯行を告白したため、母親は現場に行って確認したところ、血痕と髪の毛の付いた手袋を発見して、家に戻ったところ、彼らはすでに姿を消しており、取り乱した母親が隣人に相談、警察に通報しました。

 すぐに警察は、友人宅に隠れていた彼らを逮捕するとともに、すぐに遺体の捜索が行われました。

 具体的な犯行の動機はわかっていませんが、殺された少女は、数ヶ月にわたる嫌がらせを受け続けており、下着姿の写真をスナップチャットにあげられたり、一週間前には、この少年の交際相手の少女と激しい口論になっていたことを被害者の母親が語っています。

 この少女は顔や頭などを殴られた後に、橋の上からセーヌ川に落とされ(捨てられ)ており、この犯行が計画的なものであったのかどうかはわかっていません。

 しかしながら、この少年の交際相手の少女の嫉妬の感情が嫌がらせだけに留まることがなく、このような凶悪な暴力から殺人にまで至ってしまうことに震撼とさせられます。

 また、日本なら考えられないことですが、その日のうちに、被害者の両親と加害者の少年の母親が(別々にですが)、テレビのインタビューに答えて、顔を出して、彼らの思いをそれぞれに語っています。

 これまでも被害者の親が目撃証言などを求めて、テレビのインタビューに答えているのを見たことがありましたが、加害者の親がインタビューに顔を出して語っているのを見るのは稀なことです。

 彼の母親によれば、「昨年の9月に今の彼女と付き合い出してから、彼はすっかり変わってしまった。それまでは、どちらかといえば、内気でずっとパソコンに向かっているような子だったのに、彼に何が起こったのか、さっぱりわからない・・」と語っています。

 暗に、この事件は彼女にそそのかされたものであることを言いたかったのかどうかは、わかりませんが、彼自身がやったことを否定できるものではありません。

 しかし、ある日、息子が血塗れになって帰宅し、殺人を告白、夜中に殺人現場に確認に行かなければならなかった母親の苦悩も伝わってきます。

 14歳〜15歳といえば、感情をコントロールするのが難しい繊細な年頃でもありますが、それにしても、ここのところ耳にする暴力事件のほとんどは、この年頃のティーンエイジャーばかりです。

 娘が小さい頃(小学校低学年)に、日本で頂いてきたハローキティーの付いた帽子を学校にかぶって行ったら、嫉妬されて、その日のうちに、帽子を引きちぎられて帰ってきたことがあり、こちらの子供の嫉妬感情は激しいな・・と驚いたことがありましたが、中高校生、しかも恋愛感情が絡まれば、帽子を引きちぎる程度のことではすまないのかもしれません。

 しかし、普通、一般的には、健全な恋愛をしている年頃でもあり、加害者となった少年と少女には、何らかの精神的な問題があったかもしれません。

 彼らが通っていたのは、私立の学校で、今のところ、学校からのコメントは何も発表されていません。一般的にフランスの学校では、学校外で起こったことに関しては、感知しないとするケースが多いのですが、このように大々的で衝撃的に報道されてしまっている事件の加害者、被害者ともが通っていた学校としては、今後も知らない顔をして通すわけにもいかず、少なくとも、他の生徒の保護者に対しては、何らかの説明があると思われます。

 しかし、以前から、当事者同士で揉めごとになっており、スナップチャットに写真があげられるような嫌がらせを受けていたことがわかっていながら、このような深刻な事態にエスカレートする前に何とかならなかったものなのか?と周囲の人は悔やんでいるに違いありません。

 フランスでは、年間70万件の学校でのいじめ(嫌がらせ)の犠牲が報告されており、いじめに対する目撃証言や被害申告などを受け付ける無料電話サービス☎️3020が設けられています。


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「パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件」

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2021年3月9日火曜日

フランスの労働者保護の悪循環

   


 私は、長いこと、フランスで働いてきましたが、その間、良い意味でも悪い意味でも、日本にいたら、決して出会うことはなかったであろう人にずいぶん会ってきました。

 厳しい職場で、会社に言いたいこともたくさんありましたし、結構、言ってもきましたが、フランスで会社を良くしていくのは、大変なことで、特にできるスタッフの確保は大変なこと、話し合いをしても、結局、経営者に同情してしまう面も少なくありませんでした。

 というのも、フランスでは、法律で労働者が手厚く守られていて、一度、採用したら最後、社内で働かない人を解雇するのは、容易なことではないからです。

 雇用形態にもよるのですが、CDD(Contrat à Durée Déterminée )有期契約の場合はともかく、CDI(Contrat à Durée Indéterminée)(無期限契約)になると、会社の業績が悪化して、人員整理をしたい場合なども、勤続年数と給料を計算した法律による規定どおりの退職金を払わなければなりません。

 会社にとったら、有期契約を繰り返すのが、一番リスクが少ないのですが、同じ人との有期契約は、数回後の更新の際には無期限契約に切り替えなければなりません。

 ですから、フランスで人を雇うのは、大変なリスクで、たとえ、碌に働かない人がいても、解雇するのは、大変、難しいのです。また、フランス人の場合、その可能性も高いのです。

 だいたい、試用期間の間は、後に問題となる人も、大抵は、おとなしく、勤勉に働いたりしているのですが、その期間が終了し、契約が切り替わった時点で、人が変わったように、正体を表し始めるのです。

 そういう人は、大体、口だけは達者で、平気で嘘をつき、始末の悪いことに本人には、もはや嘘をついている自覚もありません。

「私のせいじゃない」「それは私の仕事ではない」は、フランスでとてもよく聞くセリフです。その上、時間にルーズ、おしゃべり、頑固、横柄、言い訳、責任転嫁・・フランス人にとても、多いタイプです。

 当然、その人のするはずの仕事が周囲の人に回っていくことになり、他の人の手柄を横取りし、周囲は、「やってられない・・」と、普通に仕事をしていた人までもが、士気が失せていきます。

 しかし、明白な背信行為や犯罪、余程の過失がない限り、経営者がその人を解雇するのは、大変、難しいことなのです。ですから、経営者は、試用期間中にその人の本性を見抜かなければなりません。

 それでも、解雇するには、その人の業務上の過失を正式な書面にして、本人に警告する手紙を送り、それが度重なる状態になって、初めて、解雇する話し合いに臨むことができます。

 大変な労力です。

 当然のことですが、勤続年数が長くなればなるほど、退職の際に支払う金額が跳ね上がるわけですから、経営者側は長く働いている人をやめさせることは、余程のことがなければ考えないわけで、逆に、勤続年数が長くなるほど、辞めさせられるリスクは減っていくわけで、長い人ほど、どんどん働かなくなっていき、終いには、会社に来ても、自分の退職後の年金の計算しかしなくなります。

 そうでなくとも、フランスでは、一週間の労働時間は、一週間35時間、バカンスは最低5週間と決められています。その上、税金、雇用保険、交通費補助、食事補助などのもろもろを含めて、経営者は、従業員の手取りの倍近くの金額を支払わなければなりません。

 立派な経歴や資格などが、必ずしもその人が、会社のためになる指標であるとは限りません。

 どこの世界でも、一度雇った人を解雇するのは、簡単なことではないとは思いますが、フランスの場合は、労働者を守る法律や労働者の権利の主張があまりに強く、また、黙って引き下がる人々でもないため、人を雇うということは、大変なリスクであるという気がしてなりません。

 逆に言えば、雇われている立場の方が余程、割り切ってしまえば、働かなくても、大きな顔をしていられるわけです。

 この労働者ファーストの労働者を異常に守るフランスの法律が、企業の足を引っ張る結果にもなっています。

 先日、起こったブリヂストンのべチューン工場閉鎖にまつわる労働組合の反発と国がかりの工場撤退への抵抗には、ここまでするのか?と、空恐ろしい感じさえしたものです。

 業績悪化に伴う工場閉鎖に対して、ブリヂストンは、正規の対応(くにの規定通りの退職金の支払い等)の段取りを踏んでいるにも関わらず、国がかりで、それは認めないなどと言い出すのですから、一度、フランスで工場など作ったら最後、撤退もままならない恐ろしい事態に陥るのです。

 ブリヂストンの話は、少し話が大きすぎる話ですが、しかし、この大きな話が小さな会社でも、基本的には、同じ理屈で作用しています。

 それは、フランスの格差社会とも関係があり、優秀な人が開発する素晴らしい技術などをこの労働者ファーストの制度を逆手にとって働かない人々が、せっかくの技術を使いきれないフランス社会の矛盾のようなものに繋がっているのです。


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ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

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「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」

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フランスの雇用問題」

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2021年3月8日月曜日

海外在住者の本人確認はパスポートではできない不思議




 私が日本に一時帰国するのは、家族や親戚、友人に会うためだったり、大量の日本食材の調達だったり、銀行などの用事だったり、その時々で色々あるのですが、その一つに、運転免許証の更新手続きがあります。

 もはや、たまに日本に行った時もほとんど日本で運転することはないのですが、私がどうしても日本の運転免許証を更新し続けなければならないのは、日本に行った時の身分証明書代わりに運転免許証が必要だからです。

 おかしなことに日本では、日本のパスポートを持っているのに、「パスポートでは本人確認ができません」と言われることが多いのです。

 パスポートを作る時には、戸籍謄本やそれなりの書類が必要で、その上で発行されているものでありながら、本人確認がその書類でできないというのは、どうにも意味がわかりません。

 身分証明するものは、「保険証」か、「運転免許証」あるいは、「マイナンバーカード」なのだそうです。

 長期間、日本にいない場合は、住民票を抜いているため、普通「保険証」はありませんし、「マイナンバーカード」を持っている人もあまりいないのが現実です。

 私自身も、「保険証」も「マイナンバーカード」も持っていないので、必然的に「運転免許証」が必要になるのです。

 パスポートではダメだと言われることはわかっているので、そこで無駄な押し問答をするのも嫌なので、「運転免許証」を更新し続け、身分証明書代わりに使っているのです。

 しかも、運転免許更新の期日間近のタイミングに必ずしも帰国できるとも限らないので、更新する必要のある年に帰る時には、期日前、半年くらい期限が残っていても、早めに更新してしまうので、その分は無駄にしてしまいます。だから、積算すれば、日本に住んでいる人よりも私は、多く免許証の更新をしていることになります。

 パスポートは、大使館でも更新できますが、運転免許証は更新できないので、えらく高くつく更新になりますが、仕方ありません。

 今は、簡単に日本に行くこともできず、免許証を更新できずにいる海外在住者もきっといるのではないかと思います。一度、失効すると手続きも面倒になってしまいます。

 しかし、私など日本で運転免許証を取っていたからまだ良いようなもので、免許証を持っていない人はどうしているのだろうか?と思います。一時的にでも、住民票を戻して保険証をもらうか? マイナンバーを登録してカードをもらうかしかありません。

 戸籍謄本まで提出して作られていて、おまけに写真までついていて、そもそも本人確認をするために存在するはずのパスポートです。しかも、日本のパスポートは世界一のパスポートなどと言われているのです。しかし、そのパスポートでは、日本国内では、本人確認ができないのですから、日本というのは不可思議な国です。

 フランスでは、全国民、また私のような外国人でさえも、IDカード(Carte d'identité)を持っているので、ほぼ全ての身分証明は、そのカードで済みます。逆にこれがないと大変です。

 カードには、それぞれナンバーがついているので、これが、日本でいうマイナンバーと同じ役割を果たしていると思われます。

 しかし、先日、娘がTGVの中でお財布を取られた際に、IDカードを一緒に取られて紛失した場合もフランスでは、パスポートで身分証明は可能でした。

 ついでに言わせてもらえれば、運転免許証などの和暦表示は、いいかげん、西暦表示にして欲しいものです。私の運転免許証の期限は、「平成36年1月」までとなっています。私がこの免許証を書き換えた時は、もうすでにその年には、平成が終わることになっていたのに、平成36年などとあり得ない記載をされて、すでに、今が令和何年であったかも危うくなっているのに、しかも平成・・。

 せめて、公的書類、証明書等は、西暦に変えて欲しいと思います。


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「思ってもみなかった娘のクリスマスイブの悲劇」

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「滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所」

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2021年3月7日日曜日

フランスで生活していく術 トラブル満載の日常を生き抜くために・・

  


 ひとくちに文化の違いと言ってしまえば、それまでですが、フランスで生活していくには、忍耐と粘り強さと押しの強さが必要です。旅行ならばともかく、生活していくとなれば、生活に関わる色々なトラブルに遭遇します。

 生活していくために必要最低限のビザので続きや、銀行、保険、税金等の手続きから、ネット、電気・ガス料金、家賃、交通機関、日常の買い物や配送など生活のあらゆる場面において、あらゆる場面で、トラブルがつきまといます。

 この上、フランスで仕事をしていくとなれば、さらなるトラブルは、計り知れません。

 これまで、私が20年以上フランスで生活してきた中で、とりあえず、漏れなく、ひととおりの場面でのトラブルに、遭遇してきました。

 ビザの手続きがなかなか進まなかったり、電気料金が桁を間違えて引き落とされたり、その返金がなかなかなされなかったり、買い物をして値段が違っていたり、荷物が届かなかったり、届いた荷物が破損していたり、例をあげれば、キリがありません。

 そのトラブルの原因は、彼らがきっちりと働かないことから起こるミスが原因にもかかわらず、彼らは、決して謝らない、言い訳をする、責任転嫁する、終いには、これは私の仕事ではないなどと言い出します。その上、態度は、横柄で感じが悪く、常に上から目線です。

 フランスに来たばかりの頃は、それらの一つ一つに目くじらをたて、腹を立ててばかりいましたが、怒ってばかりでは解決するわけでもなく、これらの人々に余計な腹を立てないように、なんとか上手く説明したり、教えたり、忍耐強く事を進めていくしかないことを学びました。いちいち、これが日本だったらあり得ない・・などと比べて考えるのは、厳禁です。

 ましてや、一緒に仕事をしていく同僚ともなれば、この人はダメだな・・と思ったら、余計なこと、難しいことは頼まない・・その度に聞かされるスゴい圧での言い訳や責任逃れを聞くのもストレスになるからです。

 何より、全て、期待をしないこと、スムーズに行かないことを前提にして、こんなもんだ・・と思っていることで、かなり腹も立たなくなりました。つまり、トラブルをトラブルとして、とらえない=トラブルがあっても、これが普通だ・・と思うような、一種、諦めの境地です。

 しかし、同時に「言うべきことは、はっきり言わなければならない」と言うのも鉄則です。なんでも黙って我慢すると思われたらば、何も解決せず、生活していけません。

 「言わずとも察する」とか、「人の気持ちを慮る」とかいう、いわゆる日本人の美徳は通用しません。

 「謙遜する」より、「自画自賛」。よく言えば、おおらかですが、良いことも悪いことも、黙ってはいません。自分のミスを自己弁護するための言い訳や責任転嫁はもちろん、逆に、喜んだり、人を褒めるのも大げさとも見えるほどに表現します。

 彼らがはっきりと口に出して言わないことと言えば、「差別感情」かもしれません。

 しかし、なんといっても、私がフランスで生活するようになって以来の最大のトラブルは、今回のパンデミックです。日頃から、衛生的とはとても言い難いフランスで、この期に及んでも、彼らの衛生観念には、閉口することが多いし、また罰金のない規則はないも同然のモラルの低さでフランスの感染拡大はおさまることがありません。

 これまでのフランス政府の対応で、いくつもの場面で間違っていた場面はありましたが、政府も決して謝ることはなく、少しでも感染が減少すれば、たちまち「俺たちはよくやった!」と自画自賛。

 これに対して、感染回避対策を尊重せずとも、感染拡大は、政府のせいだと言う国民。

 そのどちらにも、また、トラブルにまつわる周囲の雑音も、いちいち全て真っ向から、受け止めていては、まったくやっていられないのも現実です。

 トラブルにあっても、忍耐強く、粘り強く立ち向かう常に戦闘態勢とともに、適当に流すことも必要なのです。

 しかし、この日頃、フランスでの生活モードから、たまに日本に帰った時に日本モードに切り替えるのも、なかなか厄介なことで、昔、「帰国子女は性格がキツいな・・」と感じた状態に自分もなっているのではないか?と、思ったりもするのです。


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「基本、信用しないことで成り立つフランスでの生活」

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「海外生活も長くなると性格がキツくなる!?」

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「「さすがフランス!」の意味が逆転する日 日本人は、なぜフランスを美化するのか?」

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「表示価格があてにならないフランスのスーパーマーケット」

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「銀行乗り換えで久々に遭遇した典型的な嫌なフランス人」

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「滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所」

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2021年3月6日土曜日

フランスの深刻な医療従事者へのワクチン接種の遅れ

   


 「ロックダウン回避のためにできるあらゆることをする」「ロックダウンは、あくまでも最終手段」という姿勢を取り続けているフランス政府は、取り締まりを強化したり、人気ユーチューバーにソーシャルディスタンスを呼びかける動画作成を依頼したり、様々な試みをしていますが、これ以上の感染拡大を止めるためには、なんと言ってもワクチン接種です。

 ヨーロッパ各国では、昨年12月からワクチン接種が開始していますが、フランスは、第一波で最も多くの死亡者を出した「高齢者施設の住民」を最優先としたことで、スタートから、大きく、つまずき、年明けに周囲のヨーロッパ諸国からフランスが桁外れにワクチン接種で遅れをとっていることが発覚してからというもの、急激にワクチン接種の対象者を拡大し、躍起になってワクチン接種を進めてきました。

 アクセルがかかり始めてまもなく、今度は、ワクチン製造会社側の問題から、ワクチン供給が間に合わなくなり始め、再び、二の足を踏むことになりましたが、問題は、それだけではなく、ワクチンを接種するにあたっての予約の問題やワクチンの保管や輸送の問題、ワクチン接種場所の問題など、次から次へと問題が取り上げられてきました。

 それでも、2月に入って以来、少しずつワクチン接種は拡大していく気配が見え始め、昨日は、1日で25万人のワクチン接種を行い、ワクチン接種開始以来の最多接種数を記録しました。

 実に政府は、このワクチン接種が進んでいることをアピールすることにも必死なのです。

 そもそも、昨年、ワクチン接種が始まる段階で、マクロン大統領は、国民に対して「ワクチン接種は義務化はしない」と発表しており、フランスでは、ワクチン接種は義務ではありません。 フランスには、アンチワクチン論者も少なくないのです。

 それが、昨日のコロナウィルス感染対策に関するカステックス首相の会見の中で、「医療従事者(介護者も含めて)の3人に1人しかワクチン接種が行われていないこと」が明らかになり、この事実が波紋を呼んでいます。

 年明けからの2カ月間、医療従事者を優先にしてきたにも関わらず、その30%しか、ワクチン接種が行われていないことは、パンデミック以来、フランスで起こってきたコロナウィルスの院内感染が医療従事者が原因でもあることを見ても、見過ごせない事実です。

 これまでにフランスでは、院内感染は27,000人、院内感染による死亡者は186人、確認されています。

 これには、ワクチン供給の問題以前に、医療従事者の中に、単なる段取りの悪さだけではなく、一定数のアンチワクチン論者がいるということにも起因しています。

 首相がこの事実を発表したことから、マスコミもこの問題に注目し始めたのを機に、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、医療従事者向けに手紙を送っています。

「もし、あなたがまだワクチン接種を受けていないのならば、1日も早く医療従事者はワクチン接種を受けてほしい。私たちの集団安全保障が危機に瀕しているのです。感染の更なる拡大が懸念されている中、医療従事者のワクチン接種が進まないのでは、私たちはウィルスと効果的に戦うことができません。私たちの医療制度が持ち堪えるために、何よりも必要なことなのです。」

 この呼びかけでも効果がない場合に、「医療従事者に対するワクチン接種の義務化」も検討され始めています。

 実際に、医療従事者向けにストックされているワクチンが消費されずに、在庫として、残されているのです。

  現在のフランスのワクチン接種強化キャンペーンの中での医療従事者のワクチン接種率の低さは衝撃的です。一般(高齢者やリスクの高い人)向けへのワクチン接種は、加速しており、ワクチン接種センターでは、日曜日も休まず接種を行うように通達がなされています。

 フランス人に日曜日も休まずに・・という通達が出されるというだけでも、政府の必死さが伝わってきます。

 もう一度、原点に戻って肝に命じなければならないことは、感染するということは、周囲を感染させることに直結することなのです。

 現在のフランスの状況では、残念ながら、ワクチンによるリスクよりもコロナウィルスに感染するリスクの方が遥かに高いのです。

 しかしながら、ワクチン接種の速度が上がってきたことで、少しずつ明るい見通しのニュースも聞こえ始めました。

 昨年から、営業停止が続いているレストランやカフェなども夏前には、2段階に分けて、まずは昼の営業から再開できるのではないかとオリヴィエ・ヴェラン首相は発言しています。

 それもこれもワクチンの進捗状況にかかっており、恐らく彼の夏前には・・という発言は、夏前までには、ある程度のワクチン接種進行のスケジュールに基づいているのでしょう。

 ある程度、ウィルスが気候の影響も受けることが昨年の経過からわかっていますが、昨年、2ヶ月間のロックダウンをして、気温が上昇してもなお、ウィルスがなくなることはなく、終いには、変異種まで登場してしまったのですから、ワクチンだけに頼って安心することはできないかもしれませんが、少なくとも、現在、できることは、まず、ワクチン接種を拡大していくこと、そして、少なくとも医療従事者には、ワクチン接種をしてほしい・・と切に思います。

 ちなみに私のかかりつけのお医者さんは、とっくにワクチンは受けたそうで、「ワクチン接種しないで、こんなことやってられないわよ・・」と言っていました。

 普通、そうだよね・・。


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「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

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「フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由」

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「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

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「今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項」

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2021年3月5日金曜日

変異種61%に拡大・感染悪化もまだまだ粘るフランス 週末ロックダウン1県追加・特別警戒地域23カ所に拡大 

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 もはや、ここ数週間、首相の定例会見になっている木曜日の夜、新たにフランスでは、パ・ド・カレー県(オー・ド・フランス地域圏)での週末ロックダウン(ニース、ダンケルクに続いて3県目)と、これまでの20地域に加えて3地域(エーヌ県、オーブ県、オー・ド・アルプ県)を特別警戒地域に追加することが発表されました。

 今回、週末ロックダウン地域に加えられたパ・ド・カレー県では、感染率はもちろん、集中治療室の占拠率が102%と医療崩壊を起こしています。

 国内の感染状況については、毎日のニュースで伝えられており、今週末には、パ・ド・カレー県と並んで、イル・ド・フランスも週末ロックダウンになるのではないかと言われていました。

 しかし、イル・ド・フランス(特にセーヌ・サン・ドニ県)では、感染率は、今回、週末ロックダウンに加えられたパ・ド・カレー県とほぼ同等の感染率ではあるものの、集中治療室の占拠率は75%とされているため、また、人口も多く、影響も甚大なイル・ド・フランスを週末ロックダウンにすることは敢えて回避したとも見られます。

 これに対して、セーヌ・サン・ドニ県(イル・ド・フランス)の医療従事者は、「75%の占拠率とは、コロナウィルスによる患者だけをカウントした数字で、他の患者も大勢いる中、この75%という数字は、現実的な数字ではなく、もうとっくに100%を超えている状態なのだ!週末だけでもロックダウンをして欲しい!」

と訴えています。

 しかし、フランス政府は、あくまでも、できる限り、ロックダウンは回避するという方針は頑として崩さず、カステックス首相は、「ロックダウンは不可能なことではないが、必然でもない」としています。

 しかしながら、フランスの感染状態が、悪化している状況は続いており、先週には、50%を超えてしまったと言っていたイギリス変異種の割合も、今週には、61%まで増加しています。

 変異種が確実に拡大している中、これまで2地域の週末ロックダウンが加わったのみで、他の地域は、取り締まりが厳しくなったというだけで、制限自体は強化されたわけでもなく、感染が減少する理由は一つもありません。

 ただ一つの朗報は、ここ2週間ほどで、全ての年齢層での感染が増加している中(平均14%増)、80歳以上の感染率だけが17%減少しており、これは、80代以上の人口の28%がワクチン接種が済んでいる結果として、ワクチン接種の効果が具体的な数字に現れ始めたとしています。

 ロックダウンをしない以上、頼みの綱はワクチン接種しかないわけで、ワクチン接種の拡大の一手段として、ワクチン接種の条件を満たしている人に対しては、3月15日から、薬局でのワクチン接種が可能になります。

 また数日前に政府報道官の一人であるガブリエル・アタルが、「4月中旬には、コロナ以前の日常に近い生活を取り戻すことができる」と発言したことから、この発言に対しての質問が上がりましたが、これは、4月中旬までには、ワクチン接種がかなり進むであろうことからの希望的観測で、現段階で、日程を指定しての予測は、不可能であるとしています。

 当然です。

 また、感染が悪化しているのにも関わらず、ロックダウンをしない、むしろ感染悪化の更なる悪化を待っているような状況について、厚生相オリヴィエ・ヴェランは、「周囲のヨーロッパの国々で厳しいロックダウンをして、もう2カ月間も学校も閉鎖し、お店も営業しないでいる国でも、感染は、一時、減少しても、また増加したりしている。ましてや、現段階で、ゼロコロナは不可能で、これだけ長期間に及ぶのであれば、何とかロックダウンせずにワクチン接種が進んでいくまで、乗り切るべきだ。」と説明しています。

 しかし、今年に入ってからのフランスのコロナウィルスによる死亡者は、23,203人。一ヶ月に1万人以上の命が失われています。パンデミック以来、フランスの死亡者総数は、87,835人(3月4日現在)。今年に入ってからの人数は、この全体の26%にも及んでいます。

 ワクチン接種の効果が見えてきたとはいえ、ワクチンの供給も接種も政府の理想どおりには、進んでいないフランスです。医療従事者に対してのワクチン接種も現段階では3人に1人しか済んでいません。一番危険な現場で働いてくれている医療現場での、このワクチン接種の現状は、深刻です。

 これまでに接種が進められているファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンに加えて、3月中旬には、1回の接種で済むと言われているジョンソンアンドジョンソンのワクチンが認可され、4月中旬には、このワクチンでの接種も開始される予定になっています。

 感染拡大のスピードとワクチン接種の拡大のスピード、このどちらが勝つかが、フランスの今後の鍵を握っています。

 しかし、私の印象では、一時、「ロックダウンをする用意はいつでもある」としながら、踏ん張ろうと揺れていた時期もありましたが、そのころに比べて感染は悪化しているにも関わらず、政府には、ロックダウン回避の方向で進むさらに強い意志が感じられます。

 この選択が良かったか悪かったかは、ずっと後にならなければわかりませんが、これまでもいくつもの場面で失敗しているはずのフランス、でも終わってみれば、「俺たちは、よくやった!」となるところもフランスなのです。

 


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「全く懲りないフランス人 ロックダウンを回避したい政府の気持ちは伝わらない」

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「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

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「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

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2021年3月4日木曜日

久々にメディアに堂々登場 カルロス・ゴーン テレビ生出演

                              

   Carlos Ghosn sur LCI : son évasion lui a rappelé "Midnight Express"


 カルロス・ゴーンがフランスのニュースチャンネルLCIの19時からのニュースのインタビューに答えるために生出演するというので、彼が今、何のために、何を話すのか? 注目していました。

 カルロス・ゴーンが日本から信じられない逃亡をしたのは、2019年の大晦日のこと、それから、すでに一年以上が経過しています。

 逃亡中の身でありながら、公共のテレビに出演するなど、なんと太々しいことかと思いますが、逃亡先のレバノンに到着の数日後には、全世界からメディアを集めて記者会見まで行ったのですから、今さら、中継とはいえ、フランスのニュース番組に生でインタビューを受けることなど彼にとっては、何のことはないことかもしれません。

 とはいえ、インタビューということもあったのでしょうが、いつもの饒舌な彼の印象とはちょっと違い、かなり気をつけて話している印象で、あまり、フランス語が流暢とも言えない彼の妻が話す場面も多かったのです。

 というのも、彼にとっては、これは、最近、彼が妻との共著という形で出版した、彼の逮捕から逃亡劇、その後の様子を綴った内容の本(「Ensemble Toujours」(いつも一緒に))の宣伝であり、インタビューもその本の内容に沿ったものであったためです。

 彼は、このインタビューの中で、すでに聞いたことのある逮捕時の話や、日産やルノーには失望したこと、調べれば、調べるほど自分の逮捕が計画的に図られた陰謀、裏切りであったこと、裁判を待ち続けて日本に滞在し続けることは、彼にとって「死」を意味することであり、当時、自分には、死ぬか生きるかの選択肢があり、生きることを選んだ。そのことに躊躇もなかったし、後悔もないと語りました。

 また、彼は、日本の司法制度に対して、「これは策略であり、自分のケースは多くのケースの一つでしかなく、私と同じ経験をしている人が何千人もいることを忘れないでください」と述べています。

 しかし、多くの人が興味を持っている逃亡劇の詳細については、その時の自分の心情、まるで大手術を受ける医者に身を任せる麻酔を打った患者のように恐る気持ちはなかったことや、映画「ミッドナイトエクスプレス」のようだと思ったことなどを語りましたが、具体的な方法について、また容疑にあげられているお金の流れについては、ルノーや日産とのそれぞれの会社の事情もあるために話せないとかわしました。

 日産やルノーに対しても、「失望した」とこの期に及んで、どこか、上から目線。さすがというか、「失望した」のは、どっちがどっちへ?という話です。

 また、彼の逃亡のために、すでに5人が逮捕されていることについても、自分が今、彼らに対して何かを語れる言葉を持ち合わせていないと述べたのみで、すぐに話をすり替えてしまいました。

 結局、都合の悪いことに関しては、話をすりかえて、はぐらかす、いつもの手法です。

 そして、フランス国籍も持っている彼に対して、フランスに戻ることは考えていないのか?という問に対して、日本の司法のやり方はわかっている、リスクは冒さないと答えました。

 彼の日本での逮捕後に彼の妻がエリゼ宮に大統領宛てに助けを求めて、手紙を送ったにも関わらず、全く返事もなく、対応がなされなかったことも話しています。当然ですが・・。

 そもそも、彼は、日本からだけでなく、フランスでも、ルノーでのお金の流れや、彼の資産に関して、税金逃れのための工作に目をつけられており、すでにフランスの税務当局が追徴課税金として、カルロス・ゴーン夫妻の資産、約1300万ユーロ(約16億4000万円)を差し押さえていると伝えられています。

 これは、彼が税法上の住居を2012年にオランダに移してたことが、税金回避のためのもので、日本とフランスを行き来していた彼の生活の本拠はフランスにあったとフランスの税務当局が判断したことによるものです。

 彼は、日本の司法のために、フランスに入国するリスクは取らないとフランスに入国できないのは日本のせいのように語っていますが、実のところ、フランスでも、いくつもの容疑がかけられているためにフランスに容易に入国することはできないのです。

 彼は、「国や企業に太刀打ちができるものではない」としながらも、「自分は無実であり、あくまでも真実を回復する」と述べ、現在は、今までにない自由な時間の中で自分の人生を再構築するための生活を送っている」と説明しました。

 そのインタビューの3時間後に、彼はまた、別のニュースチャンネル(BFMTV)に、出演、これまでの彼の逮捕から、逃亡、逃亡後の記者会見、逃亡を手伝った人々の逮捕の様子までがまとめられたショートビデオが流された後に登場しました。

 同時にこの一連のビデオを彼自身も見ていたはずです。4分ほどにまとめられたこのビデオ、とてもわかりやすく上手くできていましたが、これを同時に見ていた彼が、何を考えていたのか? インタビューの内容以上に気になりました。

https://twitter.com/BFMTV/status/1367237699485261827



 彼が逃亡直後に行った記者会見から、一ヶ月ほどで、世界はコロナウィルスによるパンデミックに襲われ、衝撃的な彼の逃亡劇は、あっという間に影を潜めてしまいましたが、そんな期間にも着々と本まで出版するカルロス・ゴーン。

 レバノンを出国するリスクは冒さないと言っていますが、まさか、正直に○○へ行きますとは公言するわけもなく、また、別の計画を着々と練っているのではないか?と思ったりもするのです。

 いずれにせよ、まんまと逃げられて、一年以上、治外法権とはいえ、手が出せないのをいいことに、堂々と会見を行ったり、本を出版したり、その宣伝のためにテレビ出演したり、常人では理解できない精神構造と執念。

 しかし、フランスでも、彼が潔白であると思っている人はいません。


 <カルロス・ゴーンが最近出版した本>               


カルロスゴーン

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「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

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「フランス税務当局、カルロス・ゴーンに追徴課税金と財産差し押さえ」

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2021年3月3日水曜日

フランス・「新型コロナウィルス変異株流行国・地域」に指定

  


 フランスは、日本から「新型コロナウィルス変異株流行国・地域」に指定され、3月5日午前0時以降にフランスから日本に入国する場合は、到着後、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設)に3日間隔離、3日後に改めて検査を行い、陰性と判断された場合は、入国後14日間の残りの期間を公共交通機関の利用を避けて、自宅等、別の場所で待機することが求められることになりました。

 さすがに、これまでヨーロッパのようには感染が拡大していない日本だけあって、非常に厳しいです。

 これまでの14日間の隔離だけでも、充分にハードルは高かったのですが、ここまででは、「はいはい、もう帰りませんよ・・」と、ちょっと不貞腐れる気分ですが、日本の措置は賢明です。

 実は、私が知らなかっただけで、これまでも、すでに「新型コロナウィルス変異種流行国・地域」に指定されていたイギリス、南アフリカなどの変異種先進国?からの入国に関しては、すでにこの措置が取られていたようです。

 今回、フランスが仲間入りさせていただいたようですが、イタリア、オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギーなど、ヨーロッパのほとんどの地域からの入国に対して、同じ措置が取られるようです。

 出発前72時間以内の検査証明書に加えて、入国時の検査、その上、3日間の完全隔離、プラス14日間の自宅(あるいはホテル)隔離とその間の健康状態のチェック(SNSや電話による追跡確認)までですから、もうこれ以上はできないだろうと思うくらいの徹底ぶりには、ただただ、脱帽です。

 これは、日本が島国であるため、可能であるとも言えるのですが、肝心の「新型コロナウィルス変異株流行国・地域」本国であるフランスでは、未だ、充分な隔離対策はされていません。

 そもそも、特にこの「変異種流行国」の巣窟であるようなヨーロッパでは、陸続きのために、国境を超えて通勤している人も少なくなく、先日から出入国制限を儲けたドイツ⇄モゼル県(フランス北東部)の往来には、48時間以内の検査証明書が求められたことで、毎日通勤している人にとって、2日に一度の検査はやっていられないと悲鳴が上がっています。

 モゼル県(フランス北東部)では、2月に入って以来、南アフリカ変異種の感染拡大が深刻になっており、年末からロックダウンまでして、感染を抑えてきているドイツにとっては、充分に警戒すべき地域、ドイツの言い分は最もなところです。

 しかし、たとえ地続きの越境に関してのフランス入国に関しては、日本のような隔離は無理としても、空路による入国、空港でのチェックと隔離に関しては、不可能なことではありません。

 実のところ、フランスの感染対策は、ほぼ一年にわたるパンデミックにも関わらず、この隔離問題が実に甘く、海外からの入国に関しても、日本のような強制隔離はなく、日常の検査に関しても陽性者の隔離を徹底する動きもほとんど無いのです。

 一年近くも同じ問題に取り組みながら、ロックダウンや夜間外出禁止などを繰り返しながら、肝心な隔離問題は、一向に改善されず、検査で陽性になってもマスクさえすれば出かけて良いとか、まるで甘々な状況が続いているのです。

 せっかく検査を拡大しても、その効果は激減です。

 もっとも、フランスの場合、検査結果が陽性ならばともかく、検査の結果が陰性にも関わらず、「強制隔離」などと言えば、また、「人権問題だ!」とか言って、騒ぎ出す人もいそうです。

 どうにも、いつもフランスでは、何かにつけて、問題になったり、ことがスムーズに運ばなかったり、騒動になるのは、いつもこの「権利」と「自由」の問題で、だったら、まずちゃんとしてから言えよ!と思うのですが、とにかく「とりあえずは言うことは言う国民」。

 一先ず、この隔離問題に関しては、現在は、それよりも「ロックダウンか否か」ばかりが争点で、あまり話題にはなっていないのです。

 もっとも、感染拡大が深刻で、もはやロックダウン??に話題が集中するのも仕方ないかもしれません。ロックダウンになれば、全員否応なしに隔離状態ですから・・。

 昨日もフランスの新規感染者数は22,857人、集中治療室の患者数3,586人とヨーロッパの中でも堂々1位です。


<関連>

「ハードルが高いコロナ禍の日本への一時帰国」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_20.html


「コロナウィルスで日本が遠くなった」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/blog-post_3.html

2021年3月2日火曜日

ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない

  


   フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はありません。滅多に箱を潰して、ゴミを出している場面は見かけることはありません。

 商店などで、大量の段ボールを捨てる場合は、箱を潰している場面を見かけることもありますが、これは、上の写真のようなゴミ収集の箱一つあたりで、ゴミ収集の料金が設定されている場合があるためです。

 私の住んでいるアパートでは、地下にゴミの収集場所があり、ゴミは、ビン類、資源ごみ、燃えるゴミの3種類に分けられていますが、それぞれに違う大きなごみ収集箱が置かれているだけで、特にゴミの捨て方に対する指導はなく、住民は、その箱の中に一応、それなりにゴミを分別して捨てています。

 しかし、資源ごみに関しては、細かく分類されることもなく、ダンボールなどの箱も潰されることなく、そのままガッサリと捨てられています。ダンボールもアルミ缶もプラスチックボトルも一緒です。とてもざっくりとした分別です。

 「箱は崩して捨てましょう」という呼びかけや張り紙なども見たことはありません。

 それでも、資源ごみと燃えるゴミを分別しているだけ、また、ゴミをゴミ箱に捨てるだけ、まだマシなのかもしれませんが、地球環境についての厳しい対応を始め、「スーパーマーケットでは、プラスチックの袋を使わない」などの試みを始めた国が、このゴミ問題を放置しているのは、よくわかりません。

 多分、このゴミ処理については、あまり問題だとも思っておらず、疑問さえ抱かない人が多いのだと思います。

 以前、娘がシェアハウスに住んでいた時に、同じシェアハウス内の共有スペース(キッチンなど)での、周りの住民がゴミを分別しない!箱を崩して捨てない!など、ゴミの捨て方がなっていないと、彼女より年上の他の住民にゴミの分別や捨て方などを指導しなければならなかった・・とこぼしていて、あっという間に彼女はシェアハウスの寮長のようになっていて、苦笑してしまったことがありましたが、たしかに同じ生活空間で生活する場合は、結構、煩わしい話かもしれません。

 だいたい、箱を潰してゴミ箱がすぐにいっぱいにならないようにしようとか、他の人の迷惑にならないようにしようとか、そういう観念がフランス人には、ないのです。

 むしろ、ゴミ処理の仕事、分別の仕事をしている人がいるのだから、その人たちの仕事を奪ってはいけないなどと言い出しかねないのがフランス人です。

 一方、最近、私が日本へ行くと、まずチェックするのがゴミ出しの曜日の確認です。日本のゴミ出しは、非常に厳しく、複雑?で、燃えるゴミ、資源ごみ、ビン、缶、ペットボトル、ダンボール、新聞紙など、細かくて、日頃、フランスで大雑把なゴミ捨てに慣れている私にとっては、大変な注意が必要です。ダンボールや新聞紙など、きっちり縛られていなければ、持って行ってくれません。

 また、前の日にゴミを出しておくということもできないし、ゴミの種類によっては、やけに朝早く収集にやってくる場合もあるので、大変、気を使います。スーパーマーケットに行けば、きちんと洗われ、ラベルを外し、キャップをとったペットボトルや、食料品などに使われたトレイまでもがきれいに洗われて捨てられています。考えてみれば、こんなにきれいにゴミを捨てられる国もそうそうないと思います。

 ゴミ一つをとっても、こんなにレベルが違うのです。人の迷惑にならないように・・とか、周りの人が快適に過ごせるように・・とか、一人一人が少しずつ努力を積み重ねることで、環境問題に取り組もうとか、日頃から、そういう心くばりをしながら生活している日本は、コロナ対策に関しても同じく、人の迷惑をかけないように、周囲の人も感染が避けられるように対応できていて、それは、感染の被害の拡大の仕方にも現れているのだと思います。

 死亡者だけを比べても、フランスは日本の11倍、フランスの人口は日本の約半分なので、人口との比率を考えれば、22倍です。もはや、むしろ、2倍3倍、という方がピンとくるぐらい、10倍以上だと逆に響かないような非現実的な差です。

 フランスでの生活も長くなって、もはや、当たり前のように見過ごしていた山積みになっているゴミ箱を、「さすがに、これって、やっぱり酷いよな〜・・」と思って眺めながら、同時に「日本ってやっぱり、スゴイよな〜・・」とも思うのです。



<関連>

「フランスのシェアハウスでいつの間にか寮長のようになっていた娘」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_64.html


「フランスのシェアハウスで二年目を迎えた娘は、今年も寮長を続けているのか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/11/blog-post_8.html


「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_6.html


「枯れ葉舞うパリのゴミ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_12.html