2021年1月16日土曜日

フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙


Coronavirus : "Il va falloir encore tenir", Macron répond à une étudiante en détresse


 ストラスブール(フランス北東部・グラン・テスト圏の首府)のシアンスポ(Sciences-Po)(行政系の特別高等教育機関・エリート養成校)の19歳の学生がマクロン大統領宛てに送った「学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙」がフェイスブックに公開され、彼女の意見に賛同する声が多くの学生によって、拡散されたことから、マクロン大統領が彼女に返答する形で彼女宛てに出した手紙とともに、大学以上の高等教育機関の授業体制について、最注目されています。

 多くの教育機関、特に、保育園、幼稚園、小・中学校、高校に関しては、現在、フランス全土が18時以降の夜間外出禁止や様々な生活制限が強いられることになっても、余程の緊急事態にならない限り、学校は閉鎖しない(高校に関しては、一部制限あり)とする態度を貫いているフランス政府も、大学以上の高等教育機関については、ほぼリモートワークが続いているケースが多く、登校が許されない状態が続いています。

 彼女は、大統領宛ての手紙の中で、大学から締め出された形の現在の状況から、「私は生きながら、死んでいるような気がする」「希望がない、自分の人生が無いような気がする」「多くの学生が社会から隔絶された状況から忘れられている」「このコロナウィルス感染の危機、経済危機から、孤独に陥り、精神的にも追い詰められ、大学教育を諦め、中退してしまう人もいる」などを綴り、「授業に戻ることは、多くの学生にとって有益なこと」と対面授業を求める高等教育機関の授業体制の見直しを求めています。

 このパンデミックの中、苦しい環境は、全ての人に共通するものではありますが、人生の重大局面を迎えている将来的に繋がる大切な教育を受け、将来を見据えるタイミングに局面している年頃の学生にとっての苦悩は、計り知れないものであると思われます。

 実際に我が家にも同じ年頃の娘がいるだけに、他人事ではなく、先日、普段は、あまり感情を激さない彼女がこのパンデミックによる若者が被っている困難を家で叫んでいたことを思いました。

 今の時代を生きている人には、それぞれが大なり小なり人生が狂ってしまった人も多いと思いますが、我が家の娘もまた、イギリスの大学の研究室でスタージュするはずだった予定は、全てリモートになり、日本への留学も断念(しかもドタキャン)(一応、延期ということになっている)し、代わりに思っても見なかった会社でスタージュをすることになり(それでもスタージュ先が見つかっただけマシ、多くの人が失業している中、スタージュの機会を得られない学生も多い)、今後の予定も、いくつもの可能性を探りながらも、先が見えない状態です。


 シアンスポの19歳の学生がSNSで社会に呼びかけた訴えにより、マクロン大統領が彼女に宛てて書いた手紙も公開されています。

 マクロン大統領は、「親愛なるハイディ、私は、あなたの怒りがわかります。2020年に19歳という年齢を迎えていることは、どれだけ困難に直面しているか、私は、とても深く考えています。このパンデミックはあなた方から多くのものを奪ってしまっていることも理解しています。それでも、率直に言って、私たちは、まだ頑張らなくてはなりません。これは、単純な公式には、当てはまりません。私は、あなたにもう一度、数週間、努力することをお願いします。あなたを駆り立てる勇気を示すために頑張ってください」という内容の手紙を送っています。

 私は、この19歳の女の子が自分の怒りを大統領宛の手紙を綴り、SNSで世論に訴えかけ、それが拡散されてマスコミを巻き込んで、ついには、大統領からの手紙を受け取ったことにちょっと感心しています。実際に、高等教育機関の授業体制が即座に変更されるかは疑問ではありますが、再検討されるきっかけには、なったのではないかと思っています。

 この深刻な感染状況の中、デモなどという手段ではなく、手紙やSNSを利用した彼女の抗議の仕方は、いかにも現代に生きる若者の賢明なものであったと思います。彼女が起こしたこのようなアクトに、「生きながら死んでいる」と綴っている彼女が、少なくとも困難の中でも賢明に生きていることを感じるのです。

 そんな学生をよそに、土曜日は、また、パリ市内及び、フランス全土で総合治安法案に対する抗議デモをはじめ複数のデモが実施される予定になっています。

 これ以上、デモなどで、感染をさらに拡大し、若者の将来を奪うことを許せない気持ちでいます。


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「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

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