2023年4月30日日曜日

クープ・ド・フランス フランスカップの決勝戦はサッカー以外のレッドカードとホイッスル問題でゴタゴタ・・

 


 サッカーをこのうえなく愛するフランス人にとって、クープ・ド・フランス(フランスカップ)の決勝戦といえば、大変な盛り上がりを見せるところです。

 今回の決勝戦は、ナントVSトゥールーズの試合となり、おそらく大変に盛り上がっているのだとは思いますが、サッカー以外のことで、ごたごたして、試合以外のことばかりに注目が集まる妙な決勝戦となりました。

 現在のフランスは人が集まる場所には、鍋を叩いたりする抗議行動が発生することが多く、今回のこのフランスカップの決勝戦には7万8千人の観客が予想されていたために、この場で抗議行動がヒートアップすることが、かなり過剰に警戒されていたようで、当日、決勝戦が行われるスタジアムには、3,000人の警察官と憲兵隊の動員に加えて1,400人のセキュリティー要員が配置されていました。

 フランスカップの決勝戦にはマクロン大統領も夫人を同伴して選手を激励し、観戦することが予定されており、このマクロン大統領の参加がさらにこの警戒をヒートアップさせた感じがしないでもありません。

 当然、これだけの観客を動員するサッカーの試合の決勝戦、しかも、そこにはマクロン大統領まで登場し、その模様が全国に生中継される機会とあれば、現在、年金改革問題について抗議を続けている組合にとったら、多くの人に注目される絶好のステージに違いありません。

 この決勝戦に臨むにあたり、組合側は64歳引退と書かれた「レッドカード」3万枚とホイッスル1万個を用意し、試合中49分3秒(年金改革問題を国会の採決をとらずに通過する憲法49.3条にちなんで)にこのレッドカードを掲げてホイッスルを吹く抗議行動を呼び掛けていました。なかなかお金もかけて準備周到だったようです。

 当日、組合側はこのレッドカードの配布を開始しましたが、スタジアムの入口ではこれが回収されていることがわかり、どうやらこれはパリ警察長官がこの抗議行動(デモ)を禁止する命令を発令しているためであったことがわかりました。

 その後にこの命令が一時停止され、パリ行政裁判所に判断が委ねられることになり、結局、試合開始後までも、結局、良いの?ダメなの?やるの?やらないの?と情報が錯綜しており、試合そのものよりも、49分3秒に何が起こるのか?に注目が集まることになりました。

 結局、キックオフの数時間前に裁判所は組合側に有利な決定を下していたようですが、その決定が浸透していなかったようです。

 また、本来は試合前にフィールドで選手を激励したりするマクロン大統領ですが、安全のためにマクロン大統領はフィールドに登場することはなく、舞台裏の廊下で選手との対面が行われていたようです。

 結局、皆が注目していた49分3秒には、もともとの歓声と大して変わらない程度にしか、騒ぎが起こることはありませんでしたが、今後、このような大きなスポーツの試合や催し物のたびに、このような騒ぎになりかねないことには、フランスの混乱ぶりが表れています。

 そもそもスポーツの場に政治を持ち込むのはナンセンスだという意見もありますが、それに過剰に反応して、警察がビラ配り(今回の場合はレッドカード)を禁止したり、デモ行為を禁止したりするのも余計に反発を買うことにもなりかねません。

 今回のフランスカップの場合は、ナントやトゥールーズから大勢のサポーターもシンプルにサッカーの応援に来ている人も多く、抗議活動は二の次だという人も少なくなかったとも思うのですが、結果的に裁判所が警察の決定を退けたことは、さらなる反発を生まずに済んだのではないかと思っています。

 暴力的でない抗議に対して警察が過剰に抑えつけるのは、逆効果のような気がしてなりません。

 しかしながら、今後、どんな機会に国民の怒りに火が付くかは、わからない状況で、気を緩められない政府としては、火種は少しでも消しておきたいと思う気持ちもわからないではありません。

 とりあえず、公然とデモを行えるデモの祭典である5月1日のメーデーが次の抗議運動のピークとなることは間違いありません。


クープ・ド・フランス フランスカップ レッドカード ホイッスル


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2023年4月29日土曜日

メトロ6号線の死亡事故 運転手の過失致死起訴に同僚が抗議のデモとストライキ

  


 先週の土曜日に起こったパリのメトロ6号線の死亡事故は、ちょっとあり得ない、いや絶対あってはならない悲惨な事故でした。降車時にコートがドアに挟まってしまった乗客の女性がそのまま発車してしまったメトロに引きずられて身体の一部がホームと線路の間に挟まれて死亡してしまった事故でした。

 この事故直後にアルコール・薬物検査を受けた運転手は陰性の結果が出ていますが、今週末にこの運転手が「過失致死」の罪で起訴され、拘留されたことにRATP(パリ交通公団)6番線の同僚およびエージェントが怒って抗議のデモ・ストライキを行いました。

 デモの当日、メトロ6番線が止まったのは半日ほどだったようですが、彼らはこの事故を起こした運転手について「彼は10年以上にもわたって真面目に仕事に取り組んできた人間で、犯罪者ではない!この拘留は間違っている!彼が警察で夜を過ごさなければならないなどということは、あり得ないことだ!」と息巻いているそうです。

 また、「私たちは悲劇的に亡くなった女性とその家族には心からの哀悼の意を表します。しかし、私たちは年中無休の公共サービスを提供しています。私たちは暗殺者ではなく、乗客を安全に運ぶために働いているのであり、乗客を引きずり殺すために働いているわけではありません。私たちは敬意をもって扱われたいと思っています。事故を起こしたとはいえ、運転手がこのように犯罪者のように扱われるのをこれまで見たことがない!」と、FO-RATP組合の呼びかけにより、「撤回権」を行使しようとしています。

 たしかに、駅のホームや電車の構造などの安全対策にも問題はあり、この事故の責任を個人に負わせるのは酷な気がしないでもありませんが、しかし、実際に乗客が死亡してしまった電車を発車させたのは運転手で、意図的に行ったものではないとしても彼に過失がなかったとは言えないのではないかと思うのです。

 不幸な事故ではありますが、彼が起訴・拘留されるのは、何も凶悪な犯罪者であると烙印を押していることとは違って、あくまでも「過失致死」なのです。

 それを「運転手は犯罪者ではない」とか、「自分たちをもっと敬え!」などと言いだすのは、同僚としてはまことに連帯を感じる抗議であるとはいえ、なにかちょっと違うのではないか?と思ってしまいます。

 運転手本人は、事故後、相当なショックを受けていて、ケアが必要であったというような話が流れてきていたので、彼自身がこの起訴・拘留について、抗議しているかどうかは、わかりませんが、組合の同僚の運転手たちが、同じ運転手として、こんな扱いをされることは、許せない!と言っているのです。

 しかし、許せないとは、被害者とその家族が言いたいことで、責任や罪についての言及云々以前にやるせない思いに打ちひしがれているのではないかと思われます。

 パリ検察庁は、この事故に関する調査は警察だけでなく、陸上交通事故調査局が捜査を開始し、死亡事故に至ったすべての状況を分析すると発表しています。 

 いずれにしても、5分おきに発着するメトロのホームの乗客の乗降状態を監視カメラだけで運転手が一人でチェックするというのは、今回のような事故もあり得ないことではありません。

 RATPは、この運転手が犯罪者であるかどうかではなく、どうしたら、このような事故が怒らないような対策をとれるかどうかを考えてもらいたいと思います。


メトロ6号線死亡事故 運転手 過失致死起訴


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2023年4月28日金曜日

割引、おまけ、それ、あげます・・最近の私のお買い物と食生活

  

マルシェで買ったイチゴとメロンとおまけの生姜 全部で6ユーロ


 最近の私の食生活はベジタリアンというわけではありませんが、野菜や果物を多く摂るようになりました。もともと、どうしてもお肉が食べたいというタイプでもなく、家の近所にマルシェが立つようになってからは、ことさら新鮮な野菜が比較的お手頃価格で手に入るようになったことが大きいかもしれません。

 我が家の近所にはカーフールという大きなスーパーマーケットがあるのですが、インフレのためか、以前のような勢いがなくなり、また、あからさまな値上げぶりと並んでいる商品も若干減り、魅力が一段と欠けた気がして、いつもいつも同じような商品に飽き飽きしてきた感じもしているのです。

 日本に一時帰国してフランスに戻ってきた後に、日本から大量の食料を持ち帰っても、やはり生鮮食料品が必要になって、スーパーマーケットに行った時に、全ての商品が色あせて見えて、物悲しくなる感じにちょっと似ています。

 もうフランスの食料品に嫌気がさしてきて、何をする気もおこらなくなると、バゲットなどのパンを買いにいくか(買い置きができないため、普段はあまりバゲットは買いませんが・・)、ピカールの冷凍食品(といっても主には素材)などに頼ってしまいます。

 このあいだ、たまには、バゲットでも食べようかな?と思い、夕方、「ドゥミバゲット(バゲット半分)ください~」とパン屋さんに行ったら、もうすぐ閉店時間?(といっても16時半くらいだったけど)なのか? たまたま半分にしたバゲットが残っていたからかわかりませんが、半分のバゲットを袋に入れてくれて、お金を払おうとしたら、「お代は結構ですよ!」と店員さんがにっこりパンの入った袋を渡してくれました。


なぜかタダでもらったバゲット


 えっ?売れ残っちゃうからかな?と思ったけれど、普通に売ればいいものをくれちゃうあたり、そんな緩い感じがフランスのいいところだな・・と思いながら、私はバゲットの入った袋をもらって、ごきげんになって家に帰りました。

 バゲット半分でごきげんになる私もずいぶん安いもんですが、ちょっとした優しさで、人は気分が明るくなったり、ほっこりしたりするものです。

 また、その翌日、マルシェで何か目ぼしいものはないかな?と覗いていると、きれいなイチゴが目に入り、「2パックで3ユーロにしとくよ!」と威勢のいいお兄さんに声をかけられ、おもむろにプラスチックの袋を渡されました。どういうわけか、今年はやたらとイチゴを食べることになっている年らしく、ここ1ヶ月ほどで、もうイチゴを一人で何パック食べたかわからないほど食べています。

 なぜか、今年のイチゴは甘くて美味しいです。

 昨年末あたりに、お気に入りのケーキ屋さんをみつけて、ひたすらケーキ屋さん通いをして、ひととおり、そのお店のほぼ全ての種類のケーキを食べつくした後は、なんだか甘いものを食べる習慣がついてしまっていて、「血糖値高めになったかも・・?」などと、今さらのようにちょっと反省して、お菓子はやめて、せめて果物にしようと思った結果、イチゴをやたら食べているのです。

 安い!と思いつつも、いじましくもできるだけきれいなイチゴのパックを選ぼうとイチゴの品定めをしていると、今度はそのお兄さん、「これ!食べてみて!」とメロンを切ってくれたのです。

 メロンは甘すぎて(さんざんケーキを食べておきながらおかしな話ですが・・)普段はあまり食べないのですが、お兄さんが切ってくれたメロンは香りもよく、想像以上に美味しくて、ちょっとびっくりして目を丸くしていたところに、お兄さんが「メロンも2個で3ユーロにしとく!」と言うので、思わずメロンまで買ってしまいました。

 2パックのイチゴと2個のメロンを抱えて、お金を払おうとしていたところに、ちょうどよく生姜が置いてあって、そういえば、生姜が切れてた!と思って、「この生姜いくらですか?」と聞いたら、「生姜はカドー(プレゼント)にする!」と、これまた威勢よく言われて、今度は生姜をタダでもらってきました。

 この間はバゲットをもらったし、今日は生姜をもらっちゃって、せこい話ではあるけど、なんか、最近、ついてるな・・などと、スーパーマーケットではありえない割引やおまけに恵まれるマルシェやお店での買い物を最近、ちょっと見直すようになった自分の単細胞ぶりに、ちょっと苦笑しながらも、今後はカーフールに行く機会はずっと減るだろうな・・となんだか、人が掛け合いをしながらする買い物が楽しくなっている今日この頃です。


パリのマルシェ おまけ


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2023年4月27日木曜日

ファミリーサイズ詐欺 大量パッケージは安いとは限らない

  


 フードウォッチ(Foodwatch)(消費者保護団体)の調査によると、ファミリーサイズなどの大きなパッケージの商品は実は既存のサイズのものよりも、割高の価格で販売されているケースが少なくないことを警告しています。

 一般的な消費者の心理としては、ファミリーサイズや大きなパッケージで同じ商品が大量に入っている場合、当然、お得で割安な印象を受けてしまうので、このファミリーパッケージは思わぬ落とし穴で、「ファミリーサイズ詐欺」などとも呼ばれています。



 これは、かなりショッキングというか、悪質なやり方で、このインフレで何もかもが値上げされている中、原料費、燃料費、人件費など全てが値上がりしているため、商品の値上げは必然だという話もよく聞きますが、このファミリーサイズ詐欺に関しては、全く違うものです。

 我が家は、大家族ではないので、ファミリーサイズなるものをほとんど買ったことはないのですが、そんな落とし穴があるとは知らずに、むしろファミリーサイズは多すぎて買えないな・・などと、ちょっと残念な気さえしていたのです。

 そもそも、スーパーマーケットなどには、他にも落とし穴があって、半額!などと書かれていても、その横に小さな文字で「2つ買うと3つ目が半額」などというのも結構あって、結局は、どの程度安くなっているんだか、すぐには、わからない感じの落とし穴もあります。

 もともと、そんなに大量に買っても仕方がないのですが、たまに買い置きをしておいても間違いなく消費するものなどの場合は、一瞬立ち止まって計算してみて、その結果、本当にお買い得の場合は買うこともありますが、迷った挙句に、結局レジでは、割引されていなかったりもするので、一応、表示してある価格の写真を撮って、レジで金額を間違えられた時のために備えたりするくらいです。(常に戦闘態勢)

 そもそも、フランスに来て以来、ほぼ全てのことに関して信用しておらず、トラブルに遭った場合に備える癖がついています。

 しかし、このファミリーサイズ詐欺は実は2020年から問題視されていて、フードウォッチが警告を続けていたそうなのですが、3年経った現在も現状は変わっていないようです。特に昨年から止まらないどころか加速を続けるインフレの中、消費者は一層、値段に対して注意深くなり、また、ファミリーサイズなどの商品を手にする大家族は、比較的、経済的にも弱い立場にある人々であることも多いことから、弱いものを獲物にした悪質な商売の仕方が非難の対象となりつつあります。

 これは食品メーカー側の卸価格によるものなのか?最終的な価格設定をしている小売店(スーパーマーケット)がやっていることなのかはわかりませんが、いずれにせよ、悪質なことにはかわりありません。

 スーパーマーケットが「アンチインフレバスケット」などと選定された商品に対して価格を値上げしない宣言をしたりしていますが、その陰でこんな詐欺まがいのことをしているとしたら、嫌悪感を感じずにはいられません。

 これは、表示している価格どおりに商品を販売しているわけで、厳密にいえば、これは違法ではありませんが、「ファミリーサイズなどの大きなパッケージは割安である」という消費者の先入観を利用した詐欺まがいの商法でこれに騙されるわけにはいきません。

 それが、しかも、あまり目にしないようなメーカーのものでもなく、むしろ、誰もが知っているようなメーカーの有名な商品であったりするのは、そんなやり方までして儲けようとするところがうんざりさせられるところです。

 そもそも、このインフレも恐らくインフレに乗じて上乗せ値上げをしている商品も少なくない感もしないではなく、こうなったら、マルシェのような売り手と買い手が直接、交渉しつつ買い物ができる場所の方がむしろ信用できるのではないか?と最近、思うようになりました。


ファミリーサイズ詐欺


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2023年4月26日水曜日

医者の予約がとれない! 病院・検査機関にインフレは関係なし

 


 加齢につれて、例にもれず、私もお医者さんにかかる機会が増えている残念な現実ですが、フランスの場合は、お医者さんと検査機関、薬の処方と全て分業体制なので、ちょっと風邪をひいたり、簡単な疾病の場合は、かかりつけのお医者さんで済むので、薬の処方箋を書いてもらって、薬局に薬を取りに行く程度のことで、大した手間ではないのですが(それでさえ、慣れるまでは面倒くさいな・・と思いましたが・・)、もう少し、厄介な病気の場合は、まずは医者に行ってから、必要な検査の処方箋を書いてもらって、それから、それぞれの検査機関に検査をしに行って、そのうえで、検査結果を持って、専門の医者にかかるということになるので、とても1日で済む話ではありません。

 私の場合は、持病のために飲んでいる薬の処方箋を書いてもらうために、定期的にかかりつけのお医者さんにはかかっているのですが、その他には怪我をした場合など以外は、あまり検査にも行かないし、専門医にかかることもありません。

 私は心臓疾患があり(そんなに深刻な状態ではありませんが・・今のところは・・)、これまでに心臓専門医には数回、行ったことがありましたが、かかりつけの主治医に、しばらく心臓専門医にかかってないから、チェックしてもらいに行った方がいいと言われて、そのためのいくつかの検査の処方箋を書いてもらっていました。

 まずは血液検査ですが、しばらく行かない間にこれまで通っていた?検査施設が閉鎖になっており、別の場所へ行くと、これがもう、こんなに健康に問題のある人がいるのか?と思うくらいに大混雑、それでも血液検査の場合は予約なしに当日受付で検査をしてくれるので、健康保険のカードを渡して、ミューチュエルの書類などを提出して受付すれば、少々、待たされるものの、その日のうちに検査してくれて、結果はその日のうちにネットで送ってくれるので、まだマシなのですが、これが別の検査となると、話はまた別で、レントゲンを撮ってくるように言われていたので、また別の場所に検査に行くと、これには予約が必要で、しかも1ヶ月くらい先になるとのことで、絶句しましたが、仕方ありません。

 最後に心臓専門医に予約を取ろうと電話したら、これがなんと約3ヶ月後になるとのことで、もしも私の病状が深刻だったりする場合は、手遅れになるだろうと思います。

 そうでなければ、もう定期的にあらかじめ予約を取っておくしかないのですが、そこまで医者に通いたくもありません。

 フランスでは、医者不足が問題になっていて、特に若い世代の医者が充分に増えていかないことから、数年後には、フランスの医者の25%は60歳以上になり、遠くない未来には、医者の数が一気に減少する状態になることから、「医者に定年後も働いてもらうためのシステム」が国会でも審議されていたりして、話には聞いていましたが、いざ、こうして自分が検査に行ったり、専門医にかかろうとしたりすると、本当にこの医者不足の現実を身に染みて感じることになります。

 私自身は、フランスの病院に入院したりするほど本格的にお世話になったことはないのですが、夫が入院した時のことや、友人が入院・手術した時のことなどを見ていると、どうにも、できれば避けたいと思うような現状でもあります。

 インフレによる消費者の買い控えなどから、経営危機を迎えて閉店してしまうお店も相次ぐなか、どんなに浪費を控えようとも、健康維持のための医療を控えることはできないようで、病院・検査機関はこんなにも混雑していることが、なんとなく悲しく感じられます。

 私自身は、両親もすでに他界し、夫にも先立たれ、娘ももう社会人として自立したので、いつ死んでもいいと思ってはいるものの、生きている間はできるだけ快適に過ごしたいために医者にかかっているのですが、これがもし、差し迫った病気で余命数ヶ月・・とかになった場合は、もう完全にアウトです。

 まあ、それも運命と受け入れるしか仕方ありませんが、来月、もう一つの検査を受けて、再来月に心臓専門医にかかるという、実際に医者にかかるころには受けていた検査結果とはまた身体の状態も変化しているかもしれない妙な診察になるわけです。

 今後、おそらく劇的にこの医療体制が改善されることはあり得ないことで、むしろ悪くなっていくに違いないのは、これからますます医者にかかることが増えるであろう私にとっては、心もとない状況なのです。


医者の予約 検査予約 医者不足


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2023年4月25日火曜日

日本人なのに日本語がほとんど話せない海外育ちの従弟の子供

 


 娘が日本で就職して、あっという間に1年が経ちました。彼女が生まれてから、私は彼女の日本語教育には、ことのほかしつこく、根気よく、かなり労力を費やしてきました。

 フランスで生活しつつ、私は彼女とは日本語だけで会話を続け、ある程度の年齢までは、家にいるときは、日本語のテレビ(ビデオやDVDなど)しか見せず、小さい時は、日本語の単語のカードを作って遊みたばせてみたり、毎晩、寝る前には、日本語の絵本の読み聞かせを続け、会話だけでなく、日本語の読み書きもできるようになってほしかったので、日本語をできるだけ億劫に感じることがないように、フランスの学校に通い始める前に、2歳になるかならないかのうちに、公文に通い始め、日本語で彼女に接してくれる私以外の人のいる環境にも定期的に身を置き、簡単な読み書きを教え始めました。

 親子だと、どうしても煮詰まってしまうこともあるので、公文には本当に助けられました。その後、結局9年くらい公文には通い、毎晩、学校が終わって家に帰宅後、私は食事の支度をしながら、公文の宿題を5枚やらせるというのが、日課になっていました。

 途中、夫が亡くなってしまったことで、正直、私も仕事と学校の送り迎えであっぷあっぷで、やはり本業?の現地校の学校での勉強を優先にしなければと思い、その時点で公文はやめてしまいましたが、その後、バカロレアのオプションに日本語を選択するとかで、高校生になってから、また別の学校に個人授業を受けに通わせたりしていました。

 小さい頃は必ず1年に一度は日本に連れていき、日本の小学校に一時的に編入させていただいたこともありました。毎年毎年、娘は日本に行くのが何よりの楽しみで、「日本語が出来ない子は日本には行けないよ!」と私に言われて、彼女には、日本行きが日本語のお勉強の大きなモチベーションになっていたと思います。

 そんなわけで、彼女は今では日本で仕事ができるほどに、日本語を習得することができたので、私としては大変、満足な結果を得ることができたのですが、もともとは、彼女に私の家族と普通に話ができるようになってほしかった・・コミュニケーションがとれるようになってほしかったというのが、一番、シンプルな私の願いでした。

 現在、日本で生活している娘は、友人もできて、小さい頃から日本に行くたびに可愛がってくれていた日本の叔父や叔母や私の従妹たちとも、時々、会ったりして、楽しく生活しているようです。

 先日、カナダに住む従妹の娘が日本に来ているというので、娘にもお声がかかって会いに行ってきたというのですが、どうにも従弟の娘は日本語がほぼ話せないようで、周囲とはほぼコミュニケーションがとれずに、「なんだか、とっても暗い雰囲気だった・・みんなもあんまり英語話さないし・・だから、私が呼ばれたのかな? あれじゃ、日本に来ても楽しくないだろうね・・」などと話していました。

 カナダに住んでいる従弟の娘のママは、もう従弟とは離婚してしまっていて、従弟は別の人と再婚して、再婚相手との間にも子供がいるので、少々、複雑な境遇でもあります。彼女のママは、日本人ではあるのですが、父親が外交官で海外を転々として育ってきたので、それこそ日本語があまり得意ではなく、子供が生まれた時点で、ほぼ、日本語を教えることを放棄していたのです。

 せっかくバイリンガルにできる機会なのにもったいないな・・と思ったものの、私が強制するのもおかしな話なので黙っていましたが、結果的に日本にいる家族とはろくにコミュニケーションが取れないという事態になってしまっているようです。それでも、英語なので、周囲とて、なんとか話ができないわけではないのですが、やはり、日常的に話つけていないと会話は弾まないのです。

 私は、娘がこんな状況に陥ることをとても恐れていましたし、また、我が家の場合はフランス語・・日本だとフランス語を話す人となると、英語以上にハードルが高くなるので、これはもう日本語ができなかった場合は絶望的な状態になり、結局、疎遠になってしまいがちでもあります。

 娘は、幸いにもそんなことにはならず、周囲の叔父や叔母や従妹たちとも普通に接することができていて、そんな親戚の集まりにも、ごちそうにつられて時々、顔を出しているようです。

 唯一の私の誤算といえば、一番、彼女を可愛がってくれていた私の両親が思っていたよりも早くに亡くなってしまったことで、今、両親が生きていてくれたら、彼女が日本で生活していることをどんなに喜んでくれたかと思うと残念ではあります。

 しかし、海外で普通に生活しているまま、そのまま放置していれば、両親が日本人だろうが、日本語はしっかり身につかないということは、忘れてはなりません。そして、それは日本の家族とのコミュニケーションがとれなくなるということで、疎遠になってしまうということに他ならないのです。


バイリンガル教育 日本語教育


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2023年4月24日月曜日

パリのメトロ6号線でコートがドアに挟まって死亡事故 

 


 私が初めてパリのメトロに乗ったのは、はっきりと記憶にはありませんが、ずっと昔に旅行でパリに来た時のことだったと思います。あの時はフランス語も全くわからなかったし、外国の地下鉄だし、治安も悪いというし、なんか、やたらと緊張した覚えがあります。

 あれから数十年経って、パリのメトロもずいぶん進化し、特にここ数年はオリンピックの準備なのか、やけに工事も多く、きれいになった駅も多く、車両も新車になったりしてずいぶん様変わりした感じがしていました。

 しかし、実際には、路線によって、整備のされ方はずいぶんと差があることも事実で、駅のホームと車両の間にドーム型のガードやそれと同様のガード(もう一つのドアみたいな感じのものなど)がつけられていたり、ピカピカの新車の車内に次の駅の表示が出るようになったり、冷房車が増えたり、中には携帯の充電までできる車両もあったりして驚かされるのですが、一方では相変わらず、ハンドルを手動で回して自分でドアを開ける車両が今でも使われていたり、ついこの間も車両とホームの間がやけに広く空いていて(多分、4号線だったと思う)、ボーッとしておりたら、足を踏み外してしまったり、間に挟まってしまったりしそうで危ないな・・と思ったばかりでした。

 パリのメトロは、「次は○○駅~~」というようなアナウンスもなく、なので、大げさな言い方をすれば、電車は勝手に来て、勝手に去っていくという感じなので、うっかりすると乗り過ごしてしまいかねません。

 また、一応、ホーム全体を監視するカメラが数か所には備え付けられているものの、日本のように電車の発着時の安全の確認をする駅員さんもいません。

 こんな感じに慣れてしまうと、日本に行ったときは、なにもそんなに言わなくてもいいのに・・などと、至れり尽くせりの日本のサービスをちょっとうるさいように感じてしまうことすらあったのですが、やっぱりあれは必要なことなんだな・・と、今回のような事故を聞くと、今、あらためて感じています。 

 事故が起こったのは、土曜日の午後4時頃のことで、パリのメトロ6号線がベル・エア駅(パリ12区)を出発しようとした時に起こりました。家族連れの45歳の女性がメトロを下りようとした際にコートがメトロのドアに挟まり、それに気が付かないままに発車したメトロに引きずられて身体の一部が車両の下敷きになり、死亡してしまったという大変、悲惨な事故でした。

 この女性はこの時、夫と子供が一緒だったそうなので、ごくごく普通の土曜日のお休みの日に家族で出かけた先の思ってもみなかった事故により、一瞬のうちに死亡してしまったのですから、一緒にいた家族は呆然自失だったことでしょう。

 パリのメトロは、現在のところ、1番線と14番線だけが運転手のいない自動運転になっていますが、この6番線には運転手がいて、事故を起こしたメトロの運転手さんは、当然のことながら強いショックを受けているそうです。

 6号線は地下鉄とはいえ、地上に出ている部分もあったりで、セーヌ川を渡る陸橋の上を走る部分もあり、エッフェル塔が見えたり、パリの街を眺められたりもする線でもあるのですが、それだけに駅も車両とホームのガードなどがない駅も多く、このような事故が起こってみれば、危険と言えば危険でもあります。

 メトロの車両のドアがコートを挟んで人を引きずるくらい強力に閉じるということには、改めて驚きですが、コートと言わないまでも、慌てて乗ったり降りたりする際にバッグが挟まってしまって周囲の人が手でこじ開けている様子は、そういえば、時々、みかけることはあります。

 バッグが挟まった場合などなら、逆にドアがきっちりと閉まらないために、その隙間に手を突っ込んでこじ開けるということも可能なのですが、コートの場合は、周囲の人もそのことに気付かなかった可能性も考えられます。

 どちらにしても、ちょっと信じられない悲劇的な事故ですが、発車の際の安全確認を十分にしていないという意味では、このような事故はいつでも起こりうる話なのかもしれません。

 一応、警察は運転手に対して、薬物、アルコールの検査を行ったそうですが、陰性だったようです。

 メトロといえば、スリやひったくりなどに注意しなければいけないと思ってきましたが、ドアに挟まれないようにも気を付けなければなりません。

 こういう事故が起こると実はこんなこともあった・・という話が出てくるのが常ではありますが、1週間前にもRER(パリ郊外線) B線で若い女性が線路に落ちて死亡するという事故があったばかりだそうです。

 駅の整備や拡張なども、ありがたいことですが、RATP(パリ交通公団)は、まずは根本的な安全対策を徹底してもらいたいと思った出来事でした。


パリ メトロ6号線 死亡事故


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2023年4月23日日曜日

フランス人はどんな権利も主張する 驚愕の「失踪する権利」

  


 フランス人は、ことごとく権利を主張する場面が多いような気がしますが、なにかにつけて、権利があるとか、権利がないとか言う言い方をするし、かと思うと、「それは私の仕事じゃない!」「それは私のミスじゃない!」とこの言い方をするというか・・そんな彼らの姿勢に慣れるまでは、「この人たち、最悪だ・・何かというと、権利を主張するくせに、いざとなると、責任逃れだ・・」とウンザリしていました。

 しかし、「まぁ、そんなもんだ・・また出たよ・・」とか思うようになってからは、合理的といえば合理的?はっきりしていてわかりやすいということもでき、また、このようなことをいう傾向にある人というのも、ある程度、カテゴライズできる気がしてきました。

 今、大騒動を起こしている年金改革問題にしてみたら、全国民に共通する62歳で退職する権利を脅かされているわけですから、それに抵抗しているのも、権利の主張の一端でもあります。

 先週末にパリ郊外で20歳の女性が早朝にジョギングに出かけたまま行方不明になったという事件があり、100名近い憲兵隊に加えて300名以上のボランティアが捜索を始め、同時に彼女の写真や身長、目の色、髪の色、体格、その日の服装など詳しい情報が公開され、目撃者を募っていました。

 彼女が行方不明になった当日の午前6時過ぎには、防犯カメラには彼女が走っている様子が映っていて、その後、ぱったりと消息がわからなくなってしまったのですから、これはよからぬことが起こったと思うのは普通のことです。

 全国展開される行方不明者の情報が出る場合は、高い確率で残念な結果に終わることが多く、また若い女性が襲われたんだ・・などと私は勝手に思っていました。

 ところが、翌日の夜になって、彼女が生きているのが発見されたというので、「どういうこと?」と思っていたら、これは彼女自身の意思で失踪しようとしていたということで、彼女は元カレと一緒にいるところを発見されたのだそうです。

 これが計画的なものであったかは別として、彼女自身は家を出るときに自分の携帯を家に置いて出ていたために、彼女自身が家と連絡を絶ちたいという意思をうかがうこともできますが、いざ、行方不明となれば、事件性を疑うのも無理はありません。

 結局、発見された時点で、彼女は自分の意思で失踪したことを認めたため、一緒にいた男性も、彼女自身も拘留されることはなかったそうですが、多くの人を巻き込んでの大騒動に、どうおさまりがつくのかと思いきや、「彼女はもう成人だし、彼女には、消える権利(失踪する権利)がある!」とのことで、「彼女の事情を追求する権利はない」そうで、彼女の権利を尊重することで、この事件は一件落着となったようです。

 今まで、色々なフランス人の権利の主張を聞いてきましたが、今回の「消える権利」、「失踪する権利」といういのは、初めて聞いたとびっくりした次第です。

 よくよく考えてみれば、成人した大人がどこに住もうとどこで生活しようと自由なわけで、あとは家族間の問題ではあると思うのですが、これだけたくさんの人を騒がせて、それこそ、いい大人?が周囲に知らせずにいなくなったら、どんな騒ぎになるかは、言わずと知れたこと、この先、この家族がどうするのかわかりませんが、権利は権利でも、やっぱり他人に迷惑かけちゃいけないよな・・とごくごくあたりまえのことを思うのでした。


失踪 権利の主張


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2023年4月22日土曜日

黄色いベストの次は鍋 フランスで起こっている鍋騒動

  


 今回の年金改革問題に関する抗議運動は、なにかと前回の大きな社会的な騒動となった黄色いベスト運動と比べられることが多く、あの時は、もっと期間も長く、暴力的で破壊行為が過激だったなどとも言われていますが、今回の年金改革問題も、大きな動きになり始めてから早や3ヶ月以上が経過し、強引なカタチではありましたが、法案が交付されてなお、抗議運動は止むことはありません。

 今週に入って、マクロン大統領が実際に地方の街を廻り始めたことから、今のところ、逆にこの問題を盛り上げている感もあります。

 このマクロン大統領の地方行脚の際に、群衆が抗議の意味を込めて鍋を叩きながら集まり、詰め寄った人々に向けて、マクロン大統領が「フランスを前進させるのは鍋ではない」と言ったことから、どうやら今回の抗議運動のシンボルが「鍋」になりつつあり、早くも「鍋革命」とか・・・と言われ始めています。

 エロー県では、マクロン大統領の訪問を考慮して、当日、鍋を持って集まることが禁止され、知らずに鍋を持ってきた人々は鍋を没収されるという憂き目にあい、さらに彼らの怒りを増長させています。

 問題にされているのが、「鍋」というものだけに、どこか牧歌的というか滑稽な印象もあるのですが、それくらい暴力的ではない抗議方法であるとも思うので、こんなことまで禁止してしまうのもどうかと思わないでもありません。

 黄色いベスト運動の時は、そもそもは燃料税に関する問題で、フランスの家庭ならどこの家庭にも1つや2つはあると思われる黄色いベストが抗議運動のシンボルとなり、目立つこともあり、黄色いベストというシンボルは大いに前回の抗議運動に貢献したと思われます。

 前回の黄色いベストのように、このような運動にはシンボル的なものの存在は大きな力を発揮するので、今回の「鍋」は、視覚的には目立つものではありませんが、「強力な音」を発することでその存在感と抗議する者たちの連帯感を生むものになるかもしれません。


 鍋はフランス語でキャセロールと言いますが、このキャセロールをもじっているのか?「キャセロラード」なる聞きなれない言葉が出てきて、鍋を持っての集会まで呼びかけられています。

 また、この鍋騒動に乗じて、IKEA(イケア)フランス(スウェーデンの家具・家庭用品メーカー)は、「たったの12.99 ユーロで音を立てることができます!」と広告を張って、そんなちょっとブラックユーモアチックな宣伝も話題を呼んでいます。



 どうにも、強制的に規制しようとしたりするから、余計に反発を生むことになるわけで、今回の年金改革問題に関しては、強制的に抑えつけようとする政府と強行手段ゆえに余計に反発する国民の図式がこんな鍋問題にまで一貫してあらわれているような気もします。

 エロー県は、マクロン大統領訪問への忖度?で、鍋禁止令を発令したのであって、これは全国的に鍋が禁止されたわけではありませんが、鍋くらい叩きたい人には叩かせておけ・・くらいの余裕がないと、反発がより強くなり、今度は鍋くらいでは済まなくなるかもしれません。

 4月ももう後半に入り、1年の3分の1が過ぎたばかりではありますが、もしかしたら、今年のフランスの流行語大賞は、「鍋」かもしれません。


鍋革命 鍋騒動


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2023年4月21日金曜日

険しい道を歩むマクロン大統領 それでも彼のハートは折れない

  


 年金改革法案が交付された数日後、国民の前で演説を行ったマクロン大統領はその翌日から、アルザスを皮切りに地方行脚を始めています。意を決して?行われた今回の彼の演説も、「一方的な停戦要求」ととられた感が強く、あまり好意的に受け取られはしませんでした。

 リベラシオン(仏・日刊紙)が最近発表した世論調査によると、質問された人の 4 分の 3 が、主に選出された役人が現実から切り離されていること (74%) と、マクロン大統領の権力行使があまりにも権威主義的であること (54%) のために、民主主義は不健康であるという結果を発表しています。

 これまで3ヶ月以上、ほとんど表舞台には、現れなかったマクロン大統領には、行く先々で、停電をおこされたり、これでもかというブーイングがあがって、国民はお鍋を叩きながら、「マクロン大統領辞めろ!」の大合唱。

 マクロン大統領を迎える地域は大変な警戒ぶりではあるものの、全く一般市民を遮断して護衛するというわけでもなく、集まってきた人が直接、話をできる場面もあるところが、フランスなのだな・・と思うものの、その大部分は、ブーイングでマクロン大統領にとっては、なかなか厳しい状況であることは明白です。

 それでも、マクロン大統領は、「このようなバッシングは初めてのことではない・・黄色いベスト運動のときは、むしろもっと酷かった・・」なと矮小化しようとする発言もみられ、これだけ嫌われても折れないハートは凄いな・・などと妙な感心をしてしまいます。普通の人なら、こんなにたくさんの人に嫌われるのは、耐えられません。

 行く先々でマクロン大統領と一般市民の言い合い・せめぎあいの様子が流されたりしていますが、苦し紛れ?に彼が発言したことを抜粋されて流されているので、そんな会話ばかりではないと思うのですが、鍋を叩きながらブーイングの意を伝える国民に対して「フランスを前進させるのは鍋ではない!・・私がやろうとしていることは、フランス人がより良い生活を送り、子供たちの未来を築くことで、 私にはそれを止める権利はない!」と言ったとか、また「フランスには、憲法があり、それを決めるのは、大統領だ!単純なことだ!」と言ったとか、「大統領選に勝てなかったことを乗り越えられない人がたくさんいる!」とか、彼が国民との対話で言葉にしたことが、一つ一つ取り上げられて、あーでもない、こーでもないと論じられています。

 これだけ嫌われても決して折れることがないマクロン大統領は、逆にあっぱれな気もしますが、彼の周囲はやはり穏やかではないようで、政府のスポークスマンが「今、フランスに起こっているのは民主主義の危機はなく、信頼の危機である!」などと説明してみたり、マクロン大統領夫人のブリジット・マクロンがインタビューに答えて「マクロン大統領は孤立してはいない!」と熱弁したり、どうにも彼の歩く道が険しいことが周囲の言動からも垣間見えます。

 彼が孤立しているかどうかは別として、民主主義の危機ではなく信頼の危機であることは、全くのプラスな状況にはならないことを熱弁しているのも気になります。

 それでも、マクロン大統領は「私たちは、あなたの話を聞かない政府ではなく、人々を納得させることができることを確信している!」という姿勢を崩さずにいます。

 彼は抗議行動を続ける人々に対して、「彼らが話そうとしているとは思えません。 彼らは騒ぎ立てようとしています。 言葉をごまかすために騒ぎ立てようとする人々の話を聞くだけの社会にいるとしたら、そこから抜け出すことはできない!」と話しています。

 しかし、インタビューに答えてのことではあるでしょうが、「辞任するつもりはないし、そんなことは起こらないだろう」と述べたことがニュースになっているので、彼の進退にかかわる騒動になりつつあることも見逃すことはできません。

 そんな中、政府は、毎日、交通違反の罰則を減刑したり、教師の給与を月額100ユーロ~230ユーロ上げることを発表したり、歩み寄り?の政策を公表しています。

 年金改革法案交付の少し前に中国を公式訪問していたマクロン大統領、この際の発言もかなり世界的には非難の対象になっているものの、中国政府や中国の国民からは熱烈歓迎を受けていました。

 しかし、肝心の自国では、当分、彼の行く先々では、鍋によるコンサートが開かれるものと思われます。


マクロン大統領


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2023年4月20日木曜日

派手にぶざまに転んだら、周りの人たちが、とっても優しかった・・

  


 以前、会社で階段から落ちて、数ヶ月も仕事を休むハメになって以来、私には階段が少し怖くなって、特に階段は、気を付けて下りるようになっていました。そうでなくとも、日頃の運動不足のせいもあるのか、はたまた年齢のせいもあるのか、転んだり、怪我をすることが増えています。

 何よりも痛い思いをするのは嫌なので、自分でも、ちょっとカッコ悪いな・・と思うくらい注意深くなっているのです。だからといって、動かないでいると、ますます弱っていくので、できるだけ歩くように、そして少しでも運動をして鍛えるように心がけているのですが、鍛えるつもりでやっていた縄跳びで、転んだわけでも何でもないのにもかかわらず、いつのまにか骨折していたという、目も当てられない結果を招いたこともありました。

 それでも、ロックダウンを機に始めた家の中でもできる簡単なエアロビやストレッチを毎日の日課とし、週1は必ずプールで1キロ泳ぐことにしているのですが、それでも転ぶ時は転ぶのです。

 先日、仕事でパリ近郊の行ったことのない場所に行かなければならず、携帯を頼りに約束の場所を探しながら歩いていた時のことです。パリを少しでも出ると駅の様子もガラッと違って、どこか広々としていて、また、行き交う人もちょっと違った感じで、ちょっとガラの悪い感じの人もいたりして、なんとなく、治安悪いのかも?・・などと、正直、ちょっと腰の引ける思いでいたのです。

 何より土地勘が全くないことから、ちょっと警戒しながら、携帯を見つめて「えっ?こっちでいいのかな?」などと思いながら歩いていた時のことです。

 そんな私は携帯の中の地図と、自分が今、歩いている道に気をとられて、歩道と車道の段差に気付かずに、うっかり転んでしまったのです。そんなに人通りがある道でもなかったのですが、痛~い!と思いながらも、携帯を持ったまま、あまりに無様な転び方をしたために、恥ずかしいのが先にたって、かえって平気な顔をして、立ち上がったのです。

 すると、すぐに近くに止まっていた車に乗っていた男性二人が「大丈夫?」と駆け降りてきてくれて、また、ちょっと離れたところを歩いていた女性までが、「大丈夫ですか?」と走り寄ってきてくれました。

 私自身は、客観的に自分の転び方を見ていないので、どの程度、派手な転び方だったかはわからないのですが、もしもこれがパリだったら、もっと人通りが多くても、わざわざ車から降りてきて声をかけてくれるなんてことはないような気がするし、あったとしても、何か盗られるんじゃないか?などと警戒してしまうような気もします。

 どこかほのぼのとした空間で、ちょっと、おっとりした感じの中年の男性二人が、この会社の中で応急処置ができるから、少し休んで行ったら?などと、言って下さり、痛さと恥ずかしさで口ごもっていた私を見て、フランス語わからなかったら、英語で話そうか?などとまで言ってくれて、駅を降りてから、ちょっとガラが悪いかも・・とか、治安悪いかも・・などと思っていたことが申し訳なかったような気持ちになりました。

 痛いは痛かったのですが、そこまでの怪我ではなかったし、約束の時間があったので、それに遅れてはいけないと思い、彼らに道を尋ねると、私は見当違いの方向へ歩いていたようでした。

 彼らには、丁重にお礼を言って、教わった道を痛い足を引きずりながら、妙にバツの悪い思いと、「やっぱり郊外に住んでいる人って優しいんだな・・」などと思いながら歩き、幸い約束の時間に遅れることはありませんでした。

 それにしても、地図に気を取られて転ぶほど道を見ていたはずなのに、GoogleMapを持ちながらも迷う私の方向音痴にもつくづく嫌になると同時に、階段ばかり気を付けて、歩道と車道の段差もこれからは気を付けなければ・・と心に誓ったのでした。

 夜になると足の痛みは増してきて、慌てて湿布をしながら、痛みが出てくるのさえも鈍くなっていることが情けなくなりました。

  

パリ郊外


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2023年4月19日水曜日

史上最悪と言われるブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件の賠償には守秘義務が課せられている

  


 史上最悪の食品スキャンダルと言われた2名の死亡者を含む75名の犠牲者を出したブイトーニの冷凍ピザ食中毒事件から約1年、事件の被害者家族(63家族)とネスレ・フランス(ブイトーニのピザ工場の親会社)との間でようやく合意に達し、ネスレ・フランスは、被害者に対して相応の賠償金を支払うことで合意に達しています。

 63家族全体の弁護を請け負っている弁護士は、この事件の賠償金として、2億5千万ユーロの支払いをネスレ・フランスに対して要求していました。

 この賠償金の支払いは、医学的評価に従い、公平な方法で、損害の深刻さとそれぞれの状況を考慮に入れ算定されていると言われており、被害に応じて中には数十万ユーロに達するものもあると言われています。

 しかし、この金額については、メディアを含めて絶対的な守秘義務が課せられており、この同意に関しての内容や金額については公表されないということです。

 死亡した子供2人の人生はもとより、重度の溶血性尿毒症症候群(HUS)に感染した数十人が生涯にわたる障害を負ってしまったのですから、とりかえしがつかないこととでもあり、相応の賠償金の金額は生半可なものですまされるものではありません。

 しかし、未だ一部の家族は同意を拒否しているそうで、完全な合意に至ったわけではありません。

 この事件後に、以前に工場で働いていた職員が公開した大腸菌入りピザを生産していた工場の不潔な映像が流出しましたが、ちょっと信じがたいレベルの不潔さで、この工場の生産ラインはストップされ、一旦、再開したものの、長くは続かずに工場は閉鎖に追い込まれています。




 私自身も、たまに冷凍ピザを購入することもありますが、あの映像を見た後は、ブイトーニのピザだけは手がのびることはありません。

 しかし、一応、一段落がついたのは、民事訴訟の部分で、ネスレ・フランスには、まだ刑事訴訟が控えており、パリ検察庁が、「不随意殺人」と「不随意傷害」について司法捜査を継続しているものの、まだ起訴されてはいません。

 当のネスレ・フランスの広報は、「民事訴訟では、友好的な合意が通常であり、刑事訴訟を回避することなく民事訴訟を終わらせる」、今回の事件も「そのプロセスに従っている」「妥当な時間内に犠牲者とその家族の宥和に貢献するために、友好的な補償プロセスをとることを決定した」とかなり事務的な発表をしているあたりは、あまり好印象は持てません。

 これだけの事件を起こしておいて、好印象もないとは思うのですが、当初からネスレ・フランスの対応には、誠意というものが感じられず、食品会社における食中毒という致命的な危機対応は明らかに充分なものではありませんでした。

 あくまで推測ではありますが、一部の家族の同意が得られていないというのは、このあたりも影響しているのではないか? もっとも甚大な被害を被った家族からしてみれば、賠償金の金額だけでなく、このような姿勢もまた納得がいっていなのではないか?と思ってしまいます。

 一般大衆からしてみれば、喉元過ぎれば・・となってしまうかもしれませんが、消費者側からしたら、あのような不潔な食品工場が存在しえたということも恐怖であり、冷凍ピザにかかわらず、食品を扱う場所での衛生検査なども徹底する方向に進んでほしいものです。


ブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件 賠償金 守秘義務


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2023年4月18日火曜日

マクロン大統領の演説がどうにも、しっくり響かなかった理由

 


 ここ3ヶ月以上、揉めに揉めている年金改革法案が憲法評議会の審査を通過て、ついに決定した後、マクロン大統領が月曜日の夜8時(20時)に国民に向けての演説を行うことが発表されていました。

 彼の演説は、パンデミックや戦争問題の時などは、比較的頻繁に行われていましたが、こと年金改革問題に関しては、これだけ国中が混乱しているにもかかわらず、長い間、彼はこのような演説の機会を持つことはありませんでした。

 3月に一度、ジャーナリストをエリゼ宮に招いてインタビューに答えるという形で話をしたことがありましたが、時間帯も午後1時(13時)と多くの人がオンタイムで見られる時間帯ではなく、また、インタビューに答えるとしながらも、ジャーナリストの質問を遮って自分が言いたいことだけを言うという・・「だったら、何でインタビュー形式をとったの?」と言いたくなるような不快な気分になりました。

 このインタビューの放送でマクロン大統領は国民の怒りの火に油を注ぎ、この直後のデモを一段と盛り上げてしまった感じになりました。

 今回の演説に関しては、もうすでに法案が決定してしまった今、前日から、「マクロン大統領は一体、何を話すのだろうか?」という話でもちきりでしたが、「今にいたって彼が言えることはないだろう・・これ以上に国民の怒りを増長させることを言いかねないのではないか?」と期待というよりも心配されていました。

 果たして、彼は演説の中で、「今回の年金改革が国民に受け入れられていないことは、招致していますが、この改革は国民全体の退職後の生活を守るためにはどうしても必要なことでした」と述べました。

 「何カ月にもわたる協議にもかかわらず、組合との合意を見つけることができなかったことに関しては後悔している、これらの教訓から学ばなければならない」と話し、「あまりにも多くのフランス人にとって、物価の上昇に直面して、もはや十分な生活を送ることができない仕事に直面した怒りや、特に若者によって表明された社会正義と民主的な生活の刷新に対する要求に耳を傾けないままでいることはできない」と語りました。

 このへんまでは、まだ、なんとなく聞けていたのですが、この先、「なので、フランス人がよりよい生活を送ることができるためのプロジェクトを立ち上げたい・・」と話し始めてからは、「協和秩序の改革」、「不法移民の取り締まり強化」、「公共サービスの改善(病院の救急サービスなど)」などについての取り組みを始めるとし、話し合いのための扉は開かれているとし、7月14日(革命記念日・パリ祭)を目途に最初の評価を下してほしいと話しはじめ、途中からは、なんだか煙に巻かれた感じでわけがわからない感じになりました。

 言っていること、ひとつひとつは、間違っている話ではないとはいえ、どうにも腑に落ちない、今、国民が聞きたかった話ではなかっただろうに・・と思いました。

 実際には、すでに、この演説を聞く耳も持たずにパリの街には火があがりはじめていたことには、この暴力行為に走る人々は、火をつけたり、破壊行動そのものが目的なのではないか?と思ってしまう側面もありますが、同時に彼らは「もう、今さら何を言おうとおまえのことは信用していない」と考えていると見ることもできます。

 つまり、全てが決まった後になって、「扉は開かれている」などと言われても、それは順序が違う話で、これまでマクロン大統領自身は直接、話し合いの場に応じることはなく、国民議会も通すことなく、強引に法案を決定して、圧倒的に優位な立場にたってから、ようやく話し合いを始める・・(しかも年金問題そのものではない)というのは、簡単に言えば、ずるいやり方という印象をもってしまいます。

 挙句の果てに年金問題以外のプロジェクトを掲げて、とりあえずの評価の期限を7月14日に設定するというのは、時間稼ぎをしていると思う見方もされています。

 どちらにしても、マクロン大統領にとっては、年金改革法案はすでに決まったものであり、それ以外の問題について滔々と話すあたりは、どうにも国民との認識のズレを感じてしまいます。

 年金改革をしなければ成り立たないので、その代わりのところで国民の生活が少しでも改善されていくように取り組むという点では、なんらおかしな話ではないのに、どうにもスッキリしないのは、なぜなんだろうか?と思ってしまいます。

 マクロン大統領の側からしたら、どうしても年金改革が譲れないとしたら、他のことを改善することくらいしか言いようがないのに、ストレートに説得力をもって伝わってこないのは、言うべき肝心な何かを言っていないという気がします。

 ここ数ヶ月、国内外を問わず、言うべきことを言わず、言わざるべきことばかりを言っている気がするマクロン大統領ですが、時間稼ぎをしているとすれば、まず、国民が話を聞いてくれるようになるまで、なんとか別のきっかけをみつけるしかないような気がしてしまうくらい、マクロン大統領の話からは説得力がなくなっているような気がしています。


マクロン大統領演説


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2023年4月17日月曜日

パリのメトロの中は日本よりも携帯を眺めている人が少ない気がする

  


 日本に一時帰国して、地下鉄など電車に乗ってびっくりするのは、まず電車自体がピカピカできれいで清潔なことです。パリのメトロも最近、オリンピックに向けてお色直しをしているのか、ずいぶんきれいになったり、新車になったりして、かなり近代化された車両を使っている線もあるのですが、清掃の仕方が雑なのか、それを清潔に保てないので、新車でも、すぐにピカピカな感じは失せてしまうような気がします。

 そんなメトロに慣れてしまっていると、日本の電車は眩しく感じられるほどです。

 そして、もうひとつ、日本で驚くのは、電車に乗っている、ほぼ全ての人が携帯電話を見ていることです。日本に行く時には、通勤時間帯は避けて移動するので、あまり混雑している電車に乗ることがないせいもあるのかもしれませんが、概して、みんながお行儀がよく、おとなしく、人の迷惑にならないように同じように下を向いて携帯を眺めているので、視線をあげていると、ちょっと戸惑いを感じる気がしないでもありません。

 正直なところ、最近、私は少々、携帯に疲れており、無ければ不便だし、なんとなく不安な気にさえなるのですが、四六時中、Twitterを覗いたり、ニュースを見たり、LINEをしたりして、画面を眺めていることに疲れてきたのです。

 自分が携帯を眺めているときには、気が付かなかったのですが、いざ携帯を眺めるのをやめてみると、パリのメトロの中は、日本の電車の中ほど携帯を覗いている人が多くはないことに気が付いたのです。

 そうやって周りを見回していると、色々な人が色々なことをしていて、それを観察しているのは、なんだか楽しいのです。バスなどになれば、窓の外の景色を見ている方がなんだかずっと楽しくて、携帯なんか覗いているのがもったいない気さえしてきて、精神衛生上も良いような気がするのです。

 そもそも、パリ市内でメトロやバスに乗っても、そんなに長距離を移動するわけではないので(郊外線だとまた違うのかもしれませんが・・)、すぐに乗り降りするのに、携帯を覗いている間もないこともあるかもしれませんし、パリのメトロの車内は、日本の電車よりも狭く、座席の配置の仕方なども違って、効率よく人を詰め込めるようにはなっていないので、ちょっと混んでくると携帯を見ているのも邪魔になりそうな気もします。

 そもそも、数年前(といっても7~8年前くらい?)までは、携帯をメトロやバスなどで取り出すのは危険だと言われていた時期もあり、「車内での携帯の扱いには盗難事件を引き起こす原因となるので注意しましょう」などと張り紙がしてあったくらいです。

 実際に、会社の同僚などには、メトロの中で携帯を見ていたら、下車していく人にいきなりひったくられたり、道を歩いていて殴られて携帯を取られたなんてこともあったくらいで、もしかしたら、なんとなく、そのころの名残りもあるのかもしれません。

 私自身は、危険だというより、ただ、なんとなく携帯を持っていれば、つい覗いてしまうような、携帯に縛られている感じに疲れて、周囲の人や景色をあらためて眺めてみたら、意外に楽しいという発見をして、なんだか感受性を生に刺激してくれるシンプルなことをこれまで携帯によって、失っていたような気がしているのです。

 それでも、この間、メトロの中に携帯の充電用のプラグがついている車両をみつけて、「すごい!便利になってる!」と感激したものの、そんなに長い線でもないのに、どれだけ充電できるのかな? これ本当に役にたつのかな?とも思うのです。

 もしかしたら、一見、便利そうでも、そうでもないかな?などと思いながら、ちゃんと充電できるかどうか、試してみたりしたのです。(ちゃんと充電できました)

 考えてみれば、以前は電車の中ではずっと本ばかり読んでいた私ですが、そのころは、そんなに疲れると感じることはなかったので、どうやら私はあのスクリーン、そもそも携帯というものが苦手なのかもしれません。


携帯中毒 メトロ 地下鉄


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2023年4月16日日曜日

年金改革交付後 ストライキ・デモの次はオリンピックを盾にする動き

  


 嵐のような国民の反対をよそに憲法評議会が年金改革を承認(一部を除いて)したその日の夜のうちに、マクロン大統領は年金改革を正式に交付しています。

 もちろん国民の怒りが鎮まるはずもなく、当日は無許可のデモがフランス中で起こり、次なるデモの予定やストライキの予定が次々と予告、発表され続けています。

 この国民の怒りをどのように鎮めるつもりなのか? 現段階では鎮めるというより、沈めるという印象が強いのですが、マクロン大統領は月曜日の夜に、久しぶりに夜8時(20時)にテレビで国民に向けて、今一度、この年金改革の必要性について演説する予定になっています。

 そもそも憲法49.3条に則り、国民議会の採決なしに首相の権限で通した年金改革に加えて、たった9名のメンバーによって構成されている憲法評議会で決定されてしまった憤りと怒りは、法律に則っているから・・ということでは、国民を納得させられるものではありません。

 一つの節目を迎えると思われていた、この憲法評議会の決定は、ストライキやデモや暴動を鎮めるものとはならずに、これまでの抗議運動だけでは立ち行かなくなっていると見たのか、今度は、SNS上で、ハッシュタグ「#PasDeRetraitePasDeJO」(引退なしオリンピックなし)が拡散しはじめ、トレンドの上位に上がってきています。

 つまり、今度は日常生活だけでなく、約1年後に迫ってきた2024年のパリオリンピックの妨害を企て始めたのです。

 数年前からパリは、オリンピックに向けて、あちこち工事が続いていて、その工事も、これからの1年で工事も大詰めを迎えようとしていますが、この工事の建設現場などにも大規模な封鎖とストライキを呼び掛けています。



 また、年金改革反対者に対して、4万5千人と言われるオリンピックボランティアに登録することを促し、結局はボランティアには行かない選択をさせ、すべてを混乱させることを呼び掛けています。まことに悪質ですが、今度はいわば、パリオリンピックを盾にする(人質にする)動きのようです。

 1年後まで待てないと急いている人々は、その前にローランギャロス(全仏オープンテニス)、ツールドフランス、ラグビーワールドカップなどを妨害することを提案している人々もいるそうです。

 しかし、現在、高まっている動きは、オリンピック妨害で、この妨害の企てが高まれば、オリンピックの準備に支障がでてくることも十分に考えられ、フランスとしては、世界に向けて恥をさらすことになりかねない事態となっています。


こんなブラックジョークも・・


 どうにもこじれてしまった年金改革問題、一時、首相の口からは「宥和」という言葉が出ていたものの、結果としては、全く宥和しておらず、事態は全く収束がついてはいません。

 パンデミックの時も、一体、いつになったら、終息するのかと思いましたが、今回もまた、まったく先の見通しが立たない状況になっています。


ハッシュタグ 引退なしオリンピックなし #PasDeRetraitPasDeJO


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2023年4月15日土曜日

年金改革法案が憲法評議会通過 パリだけでも1万人の警察・憲兵隊配備 パリの街の警戒ぶりが凄かった・・

  


 49.3条により、国会で採決をとらずに採択された年金改革について、憲法評議会の決定が4月14日に下されることになっていたので、もしも、これが正式に決定されれば、また大変なことになるだろうと思っていました。

 この憲法評議会の決定次第とはいえ、後になって考えれば、憲法評議会を通過することは、ほぼ確実なことではあったのです。

 結果はこの日の夕方に発表されることになっていたので、夕方から夜にかけては、また大変なデモが起こることは容易に想像できることでした。

 私はその日、日本食材の買い物に出かけて、ランチをしてから、また別の場所に行くつもりでいました。日本食材店の多くは、問題の憲法評議会の近辺にあるのですが、まだお昼すぎくらいの時間帯であったし、まさかそんなに人が集まっているとも思えず、ついでに昨夜は、ものものしく警察や憲兵隊が立ちはだかっていたので、その変貌ぶりをちょっと横目で見ていこうかな・・とも思っていたのです。



 憲法評議会の門の前には、頑丈なバリケードができていて、それを取り囲むように、午後の早い時間から、報道陣が取り囲んでいました。憲法評議会の建物は間口もそんなに広くもなく、通常だとあまり目立たない建物でうっかりすると見過ごしてしまうような感じでもあるし、そもそも日常的には、憲法評議会など、そんなに注目される場所でもありません。

 しかし、その日の主役級に注目されていた憲法評議会以上に驚いたのは、もう、すごい人数の警察や憲兵隊がうろうろしていて、紺色の警察車両があちこちに縦列駐車してあり、そして、それは車だけではなく、車をのぞき込むと中にはぎっしり警察官が待機しているのでした。



 また、すぐ近くに消防署があるにも関わらず、消防車までが通りに出て待機しているのには、まさか!何かが燃やされる前から出動しているとは・・と、その警戒ぶりの凄さを見せつけられた感じでした。

 私は、そのまま次の用事を済ませるためにの移動で、メトロの入口まで行ったところ、パレ・ロワイヤルの駅は閉鎖されており呆然。「駅が閉鎖とは・・これは迂闊だった・・」と、天気も悪く、そのまま迂回して行くのも、大変だ・・と、あっさり断念して帰宅しました。

メトロの駅・パレ・ロワイヤルは閉鎖・・


 その後、別の場所で買い物をして帰ると、なんだか疲れて、少し休んでいたら、外から警察車両のサイレンの音が聞こえてきて、年金改革が決定したことを知りました。

 テレビをつけると、その時はすでにもう、パリの街を練り歩く大勢の人の姿が映し出されており、この日の最初の集結場所は、パリ市庁舎であったようです。

 公式発表では、この日、パリだけでも1万人の警察官が出動していたそうで、だいたい警察官だけで1万人とは、驚きです。

 この警察・憲兵隊は、パリ市庁舎、バスティーユ広場と次々にすごい人数のデモ隊が移動する場所を次々と閉鎖していったようで、ゴミ箱を燃やしたり、Velib(パリの貸し出し自転車)を燃やしたり、場所によっては、溜まっているゴミを道路にばら撒いてトラムウェイを止めたとか、最近では珍しくなくなっている光景に、テレビの解説でも、今のところは「セ・パ・トレ・グラーブ(そんなに深刻でもない)」などと言っているのには、「一体、どうなったら、深刻なんだ??」と突っ込みを入れたくなりました。

 しかし、こんな状態はパリだけではなく、フランス全土で多くの国民が大声をあげているのですから、やはり穏やかではありません。この日はレンヌで警察署や教会の扉に火がつけられ、火災が起こっています。

 一方、この日、マクロン大統領は火災から4周年を迎える前日ということで、工事中のパリ・ノートルダム大聖堂を視察し、建設工事に携わっている人々と対面し、「何があっても引き下がらず自分の選択を突き進む大統領である」と自己紹介したとか・・。また、「不人気を受け入れる準備はできている」などと話したとか・・。

 また、ボルヌ首相は、この日は「インフレによる消費低迷のための視察」として、スーパーマーケットを訪れていたというのですから、どうやら憲法評議会が年金改革を決定することは、事前に承知しており、この結果による対応は、警察や憲兵隊に任せて、日常の仕事にまい進している様子は、余計に国民の怒りを増すだけでなく、その距離を痛切に感じさせられる気もしてなりません。

 CGT(全国組合連合)は、次回のデモを5月1日と発表していますが、そもそも5月1日(メーデー)は、フランスでは特別な日。その特別な日は、今年はさらに、「特に特別な日」になりそうです。


年金改革決定 憲法評議会 パリ特別警戒


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2023年4月14日金曜日

パリでお花見 緑の芝生の中にあるソー公園の八重桜(Le parc de Sceaux)

  


 パリ(正確にはパリ近郊)でお花見といえば、ソー公園(Le parc de Sceaux)が有名だという話はよく聞いていましたが、この時期、日本人をはじめ、アジア人がおしかけるというので、あまりの人混みを思い浮かべていて、これまで20年以上もパリに住んでいるのにソー公園のお花見には行ったことがありませんでした。

 昨年のお花見の季節は久しぶりに日本にいたので、日本の桜を楽しむことができたのですが、日本の場合はこんなに街の中に桜ってあったかしら?と思うほど、特にお花見のために公園などに出かけなくとも、桜の木は東京の街の中、あちこちに存在し、また、ほんの短い桜の季節の桜の花が組み込まれることを計算にいれてデザインされているかのごとく作られている東京の街に、やっぱり街に溶け込んでいる桜は美しい・・日本の桜はいいな・・と感じ入ってきたのでした。

 パリはお花の多い街ではありますが、日本のような桜は少なく、あまり街中では桜を楽しむという感じではありません。

 これまで公園のお花見というと、どうも日本の「桜の木の下で宴会」というイメージがあったのも、これまでソー公園のお花見に行かなかった理由の一つでもありました。

 しかし、昨日はパリの街中はまたデモで、どこで足止めを食うかもわからない感じで街中には出たくないと思っていたところ、たまたま Instagramでソー公園の桜を見かけて、「今が桜の時期なんだ!今日はソー公園に行こう!」と出かけたのでした。



 ソー公園は181haもあるけっこう広い公園で、中にお城まである壮大な公園で、樹木なども美しく剪定されている見事な公園です。公園内(西部)には100本以上の八重桜の木が植えられており、この時期、公園入口には「hanami」の看板が立っています。






 緑の芝生の中に咲く桜の花というのも、また別の趣がありますが、それに加えて、日本をイメージしているのか?八重桜が固まって咲いている場所の入口には鳥居がたっており、ちょうちんがかかっています。



 また、日本の桜について、説明しているパネルがいくつか立っており、日本人から見たら、こんなことを紹介するんだ(100円玉に桜の花が刻印されている・・とか、なぜか昨年の日本の桜予報など)と思うような日本における桜の位置づけなどについて、説明しています。


 また、見ている方も「ウ~ラ!セ・マニフィック!モン・フジ!」(ワォ!素晴らしい!富士山!)などと感激して写真を眺めているので、「ん??富士山のカタチとちょっと違うような・・」と思って、写真を覗くと、桜島だったりしましたが、別にいきってそれを訂正する必要もなく、そのくらい緩い感じで日本の桜を楽しんでくれているのは悪くないかな・・と思ったりもしたのです。

 平日にもかかわらず、けっこうな盛況ぶりで、日本人は全くみかけませんでしたが、けっこう観光客も来ているようでした。年金改革問題で荒れている現在のフランスとは思えない、平和で美しい風景でした。





 サンドイッチなどを持ってきて、ピクニックをしている人もいましたが、宴会のような雰囲気ではありません。また、公園は朝7時からで夜20時30分には閉まってしまうため、夜桜見物はできません。



 犬の散歩に来ている人も多いし、この一画以外は、ヨーロッパの公園の風景であることも面白いし、何よりも、ただ日本の桜を植えてあるだけでなく、ちょっと見当違いの鳥居や個人的にはない方がいいかも?と思われるちょうちんを飾ったり、日本の桜を紹介するパネルを立ててくれていたり、なんだか日本文化に対する尊敬の気持ちが見えるようでうれしい気がしたのでした。

 駐車場もあり、車で行くのが楽だとは思いますが、電車(RER B線)でも、パリからそんなに時間がかからずに行けるので、この時期にパリを訪れることがあれば、ちょっとお花見を楽しむのもいいかもしれません。

 なお、電車(RER B線)で行く場合は、Parc de Sceaux駅よりも、La Croix de Berny駅の方が八重桜の一画に近いです。


hanami  ソー公園のお花見 八重桜 Le parc de Sceaux


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2023年4月13日木曜日

噂話好きな知人にうんざりしている・・

 


 1ヶ月くらい前に、買い物に行った際に偶然、昔の同僚二人にばったり会いました。彼女たちは、私よりも一回り以上?年齢が上で、ちょっと世代も違う感じで特に親しくしていたわけではありませんでしたが、職場で顔を合わせれば、普通に話はするくらいの感じで、私がその会社に在職していた間に彼女たちは同時にではありませんでしたが、それぞれ、時間差で定年退職していきました。

 とはいえ、こちらの学校のこととか、子供の教育のことなど、すでに子育てがほぼ終わっていた彼女たちには、色々と教えてもらったりもしましたし、彼女たちにとっては、娘は、孫のような存在で、会社に娘を連れて行ったりすると、娘を散歩に連れ出して遊んでくれたり、これ〇〇ちゃんにあげて・・などとプレゼントをいただいたり、娘のことを心にかけてくださったり、お世話にもなったし、なにせ、けっこう長いつきあいではあったので、それなりに懐かしくはあったのです。

 私の方は、まったく誰かに会うなどとは思っておらず、声をかけられてびっくりしましたが、「あっちに彼女もいるのよ・・」と言われて、二人とは、かれこれ7~8年ぶり、いや10年ぶりくらいの再会でした。

 私に声をかけてくれた彼女はそんなに変わってはいなかったのですが、もう一人は明らかに変わっていて、びっくりするほど痩せていました。「うわぁ~久しぶり!あれっ?なんかすごく痩せたね・・」と言ったら、「うん、ちょっと体調崩してね・・」と、痩せた原因についてはあまり話したくなさそうだったので、それ以上、聞くこともなく、「相変わらず、一緒につるんでるんだね・・」と言って、少しだけ話をして、そのまま別れました。

 それから数日後、今度はまた、別の元同僚の一人からメールが来て、「あの2人に偶然、会ったそうですね・・」と書いてあって、彼女たちや、その他の元同僚などの近況がつづられていたのですが、主な内容は、すごく痩せてしまっていた彼女の病状について、事細かに詳しく書いてありました。

 メールをくれた彼女は、以前からとかく噂話好きな人で、私としては、ちょっと苦手なタイプの人でした。夫が倒れた時なども、かなり深刻な病状をあまり会社の人には話をしたくなかったのですが、たまたま彼女が家に電話をくれたりしたので、うっかり少し話をしてしまって、「騒ぎにしたくないから、他の人には黙っておいてね・・」と念を押したにもかかわらず、彼女の取り巻きだけには、「ここだけの話なんだけど・・」と彼女が吹聴してしまったことで、他の人からは、「なぜ?私には知らせてくれなかったの?」などと責められたりして、面倒な思いをしたこともありました。

 今回の彼女の病気についても、結構、深刻な病状のようなのですが、なにせ、本人はあまり話したくない様子だったのを知っているだけに、またそれを吹聴するようなメールを受け取って、ウンザリした思いでした。

 なんか、嫌なメールだな・・と思って、返信するのを躊躇っていたら、数日後に再び、「先日、メールを送ったのですが、届いていますか?」と確認するようなメールが再び届いて、ますますウンザリして、そのまま放置していたのでした。

 たまたま、別の用事で、共通の知り合いの結構、仲良くさせていただいている友人が別の用事で電話をくれた時に、そういえば、「彼女から電話があって、彼女があなたに連絡をとろうとしているけど、メールの返事もないし、家の電話も繋がらないって言ってたよ・・」と。

 そうそう、私は、もう1年くらい家の固定電話を切ってしまったので、携帯電話の番号を知らない彼女は家に電話をかけ続けていたようなのです。

 「なんで、そこまでして・・?」とその執拗さにますます、ウンザリしていると、また別の友人から電話で、「うちにも、あなたに連絡が取れないって電話があった・・」と。

 付き合いの途絶えている人間の近況を仕入れて、また噂話の種にするのは、見え見えで、また、彼女が話す噂話に付き合うのも苦痛です。

 彼女の今の最大のトピックは、彼女の仲良くしているはずの友人の病状なのには違いないのですが、本人が話したくないことを日常の付き合いのない人間にまで吹聴して歩くのは、悪趣味以外のなにものでもありません。また、それに乗じて、また噂話のネタを仕入れようとしていることも見え見えで、今は本当に固定電話を切っておいてよかった・・と思っているのです。


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2023年4月12日水曜日

自分はやっぱり日本人だなぁと思うこと・・

  


 妙なもので、自分が日本に住んでいる時には、自分が日本人だと意識することはほとんどありませんでした。しかし、おかしなもので、海外に住んでいれば、あらためて自分は日本人なんだなぁ・・と感じることは少なくありません。

 海外にいると、一般的にアジア人はわりと一括りにされる感じもあり、日本と中国の区別があいまいな人もいるし、圧倒的に中国人が多いせいかもしれませんが、マルシェなどのお兄さんなどには、「ニイハオ!」などと声をかけられて(相手にしてみれば、決して悪気はないとは思うのですが・・)、思わずムッとして、「私、日本人です!」などと、わざわざ訂正してしまったりすることもあります。

 やはり、とりわけ、食事などは、私が一番、自分が日本人だと感じる部分で、パリの街を食べ歩きしたりするのも楽しいし、とても美味しいのですが、しばらく続くと、どんなに美味しいものを食べていても、次第にゲッソリしてきてしまいます。

 高価な星付きレストランが美味しいのはあたりまえだし、肩が凝るし、予算オーバーになるので、私は、手ごろな値段で美味しいレストランを食べ歩くのが好きで(おまけに雰囲気が良ければ言うことないのですが)、これは!と思ったレストランにはできるだけ行ってみるようにしているのですが、しばらくこれを続けていると、結局、家で食事がしたくなって、「もう、本当に簡単にごはんとお味噌汁とお漬物にふりかけだけでもいい・・どんな外食よりも、本当はこれが一番美味しいんだな・・」などとしみじみしてしまうのです。

 最近、よく食べ歩きをするようになったのは、一時、ロックダウンなどで、ほとんど外食できなかったりした反動もあり、また、この間にお店もずいぶん、入れ替わったりもしているので、それも楽しかったりもするのです。

 しかし、結局は家で食べる白いご飯とお漬物・・みたいなものが私にとっての最高のごちそうであるのです。

 長年、海外生活を続けているうちに、こちらで手に入る食材を工夫して作る和食っぽい食事に彩りを添えるために、最低限の薬味のような野菜、紫蘇や三つ葉、小葱、山椒などはベランダで育てるようになり、また、これらは、前年にこぼれた種が春になると芽が出て育ってくれるようになっているのは大変うれしいことです。

 今は山椒の新しい芽が出てきている時で、ちょっと触ってみたら、それはそれは強烈な香りで、思わず鰻が食べたくなりました。しかし、家には鰻はなし・・。しかし、摘んでも摘んでも出てくる春の香り、これはもったいないと、急な思いつきで、自己流でおいなりさんの酢飯に山椒の新芽を混ぜてみたりして、今日は、それはそれは満足したランチになりました。

 こんなささやかなことですごく満足するあたり、私はやっぱり日本人だなと思う瞬間です。

 また、最近、日本食ブームのフランスで、冷凍食品や日本食などがスーパーでも見られるようになり、それなりにアレンジされて作られて、パッケージの写真には、その食品にお箸が添えられていたりするのですが、かっこつけているつもりか、丼の上に置かれたお箸は交差しておかれていたりします。

 


 そんなお箸の置き方が妙に気になって仕方がなかったり、どことなくおさまり悪い気持ちが拭えなかったりするのにも、日本人だな・・と思う瞬間です。

 おまけに上に添付した怪しげな Udon(うどん)なるものも、極めつけには、「中国の味・・」などとご丁寧に書かれており、中国と日本がごちゃ混ぜにされているのをここでも感じます。

 とはいえ、そこそこの外食を楽しみつつも、やっぱり家で作るごはんが一番いいと思ってしまいがちな私は、つい先日、天気の良い日に、ワクワクした気持ちで春菊、水菜、コカブ、ニラなどの種まきをしたのでした。


日本人の実感


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2023年4月11日火曜日

マルセイユでの大規模な爆発事故 夜中にこんなことあり得る?

 


 土曜日から日曜日の夜の午前 12 時 46 分、マルセイユ市内中心部で激しい爆発事故が起こり、この爆発のあった建物1棟は完全に崩壊したとともに、がれきの下で火災が発生し、その両隣にあった建物が午前7時頃になって、引きずり倒されるようにして倒壊するという大惨事が起こっています。

 爆撃でも受けたのかと思うほどのちょっと目を疑うくらいの惨事です。

 近隣住民の証言によると、爆発当時から朝にかけて、強いガスの臭いがしたという声が多数あがっており、少なからずガスが起因しているとは考えられているものの、爆発の具体的な原因については、現段階では不明と発表されています。

 この事故がおこった地域は、旧市街で、建物自体も老朽化の監視対象になっていた建物ではなく、一体、なぜ、こんなに悲惨な事故が起こったのか疑問でもあります。

 今回の事故では、消防隊、救急隊が非常に迅速に駆けつけて、救助作業にあたり、それからは昼夜たがわずに救出作業が継続されていますが、少なくとも、おおもとの爆発が起こった建物は、映像を見るにつけても、もうほとんど粉々の状態で、がれきをさらに崩さないように、警察犬を使いながら、下に人がいないかどうか確認してからの作業になっているとのことで、非常に時間がかかっているということです。

 この事故が起こった時間帯(午前1時近く)からしても、爆発から建物が倒壊するまでの時間がどの程度あったかわかりませんが、いずれにしても、寝ていた人も多いであろうし、迅速に避難することが可能であったとは思えません。

 月曜日の夜の段階までで、遺体は6体発見されていると報告されてはいますが、この惨状を見ても犠牲者が6人で済んでいるとは、とても思えないほどの倒壊ぶりです。

 しかし、実際の爆発から、朝になって隣の建物が倒壊するという長時間にわたる事故は、考えるだけでも恐ろしく、近隣の200人が学校や体育館などに避難している状況です。

 結局、爆発のあった建物と両隣の建物がほぼ、全壊しているわけで、パック(イースター)の祝日のまっさ中のこの悲惨な事故はマルセイユ市民を震え上がらせています。

 このような救出作業は1時間遅れるごとに、生存者を発見する可能性が低下するといわれていますが、2日経った現在は、どうやら犠牲者を探す段階に入っているようです。

 遺体の身元確認も簡単なことではなく、どうにか命からがら避難した人でさえも、自分を証明するIDカードも何もない状態で、生きていても、自分の証明ができないとパニック状態に陥っている人もいます。

 また、倒壊した建物の中には、Airbnbとして貸し出されていた部屋もあったと言われており、犠牲者が外国人の場合は、その身元確認は一層、困難になると言われています。

 この手の災害になると、必ず引き合いに出されるのが日本の災害に対する対応で、このような事故は、長いことトラウマを引きずることになり得る、日本の災害対応に学ぶことがたくさんあるなどと述べているジャーナリストもいます。

 また、悲惨な現場の状況や救出作業、避難状況などが多く伝えられているものの、その原因については、深く掘り下げられてはいませんが、この皆が寝静まっている時間帯になぜこんな爆発事故が起こるのかは、とても疑問であり、この事故がテロのような、故意におこされたものであったのか、全く不慮の事故であったのかどうかの検証には至っていませんが、一応、検察は「故意ではない傷害事件」として捜査を開始しているようです。



 先週は、麻薬密売がらみの銃撃事件で3名死亡という事件が起こったばかりのマルセイユには、どうにも穏やかではない事件続きです。マルセイユの教会の追悼ミサには300名が集まり、犠牲者に祈りを捧げ、マルセイユ市庁舎には、3日間、半旗が掲げられています。

 私自身も地震のない国に住むようになって、避難する場合は・・などと考えることがなくなっていたのですが、いざと言うときに避難する際に持ちだすものを用意しておかなければ・・などと思ったのでした。


マルセイユ爆発事故


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2023年4月10日月曜日

12歳の少女を襲ったパリのメトロの痴漢は、あっさり釈放

  


 もうずいぶん前の話になりますが、日本の電車では、痴漢に遭ったことがありました。日本で通勤していた頃の話で、あの日本のギューギュー詰めの満員電車の中では、身をかわすのも大変で非常に嫌な思いをした覚えがあります。

 それに比べれば、パリのメトロで日本ほどの満員電車というのは、非常時(ストライキで間引き運転になったりしている時など)を除いて、経験したことがなく、きっとパリのメトロには、そんなに痴漢行為に及ぶ人はいないんじゃないかな?と勝手に思っていました。

 それほどギューギュー詰めに混んでいるわけでもなかったら、周知される可能性も高く、痴漢行為に及ぶ側もハードルが高いわけで、また、こちらの女性は、黙って我慢しているとも思えないし、周囲の人々も気付いたら、黙っていなさそうです。

 それでもなお、痴漢行為に及ぶ場合は、もっと暴力的になってしまうのではないかという気がして、さらに恐ろしい気もしていました。

 それが、最近、たまに耳にする痴漢の被害者は未成年、しかも12歳~13歳とかの少女に対しての痴漢行為で、つい最近も被害者の母親の訴えにより、犯人が捕まったと聞いて、また、さらに、その逮捕後の措置などを聞いて驚いているところです。

 パリの地下鉄内で太もも、臀部、胸を触られたという被害者の母親の訴えにより、容疑者(55歳男性)がパリ北駅で逮捕されたのまでは、よかったのですが、一度、容疑者は警察に拘留されたものの、その後、精神状態に障害がある(状況の認識ができない)として、病院に収容され、数日間の入院後、容疑者の精神状態を考慮して、パリ検察庁はそれ以上の措置を講じることなく事件を終結させたと伝えられています。

 つまり、あっさり釈放です。

 ところが、この容疑者、数日の間に再犯を繰り返していたようで、彼が逮捕されたのは、少なくとも3回目の犯行だったようです。

 にもかかわらず、精神障害のために、再び彼は罪を逃れ、野に放たれてしまっているわけです。性犯罪者というものは、とかく再犯率が高いと言われていますが、特に彼のような場合、再び、犯行に及ぶであろうことは、ほぼ確実で、なぜ捕まえてくれないのか?と思います。

 大人の女性ではなく、12歳の少女であったからこそ、その場で声をあげられなかったということも十分に考えられることで、彼女にとっては、恐ろしいトラウマになってしまった可能性も考えられます。

 以前、買い物中に万引き集団の逮捕劇に遭遇したことがあり、抵抗する容疑者たちとのけっこうな捕り物長の末、警察は仰々しく、後ろ手に手錠をかけたりして、逮捕していたのですが、「この人たち、どうなるの?」と警察官に聞いたら、「調書をとったら、家に帰す・・」と言われて、目を丸くしたら、「それ以上、どうしてほしいの?」と聞かれて逆にもっと驚いたことがありました。

 痴漢行為が軽犯罪かどうかはわかりませんが、とかく軽犯罪に関しては、一旦、逮捕するとはいえ、意外と簡単に釈放してしまうフランス。再犯確実な容疑者たちが街に容易に戻されている事実がパリの犯罪の多さに加担していることもあるかもしれません。

 犯罪が多すぎて、犯罪者の面倒を見きれない・・のかもしれませんが、みすみす再犯が確実視される相手をなんだかんだと理由をつけては野放しにしてしまうのには、勘弁してもらいたいなと思うのです。

 しかし、この男の55歳という年齢と相手が12歳の少女という気味悪さ・・そういえば、つい最近、「12歳の娘を70歳の老人に売る親」の話が話題になったばかり、変質者のターゲットは、低年齢化しているのでしょうか?


12歳を襲うパリのメトロの痴漢


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2023年4月9日日曜日

フリマサイトVinted(ヴィンテッド)(フランス版メルカリ)でコカインの転売をしていた男逮捕

  


 インフレが続く中、フランスでは、ディスカウントショップが急成長し、ともに業績を伸ばしているのは、Vinted(ヴィンテッド)というフリマサイト(日本でいうメルカリのようなサイト)で、ここ数年、フランス国内だけでなく、利用者はベルギー、スペイン、イタリアなどの国の人々とも取引ができるようになり、ますます業績を伸ばしています。

 例にもれず、私もこのサイトをもう数年にわたって、利用しており(私の場合、もっぱら家の不用品を売るだけで買いませんが・・)、以前は提携店に荷物を届けに行っていたものが、多くの場合は、人を介することなく、指定のロッカーで、バーコードを読み込んで、荷物を置いてくるだけで済むようになり、より簡単で便利になりました。

 私にしてみれば、断捨離の一環で、それを写真に撮って、載せておくだけで、売れたと通知が来れば、梱包して送るだけで、ちょっとしたお小遣い稼ぎになるので、大変、喜ばしいサービスで、日本のメルカリのように手数料なども取られないので、メルカリよりも割が良い気がしています。

 もともと、中古品に対してあまり抵抗がなく、倹約家(ケチともいう)でもあるフランス人の間では、このようなサービスにはもともとポテンシャルがあり、ルボンカンというサイトも有名ですが、最近は、ヴィンテッドのサイトの方がサイト自体が簡潔で便利にできているので、こちらの方が圧倒的に人気になってきている気がしていました。

 このように、時代の潮流にのって、利用者が拡大していけば、必ずよからぬことに利用する人が出てくるものですが、案の定、このヴィンテッドのサイトを利用して、コカインを販売していた男が逮捕されたというニュースを聞いて、なるほど・・と思ってしまいました。

 たしかに直接、人と会って荷物を渡すわけでもなく、しかも広範囲の人に物が売れ、料金は、自動的に自分の口座に振り込まれるのですから、他のものとセットにして転売すれば、かなり発見されるリスクは少ないわけです。

 どのようにして、この男の犯行に目がつけられたのかはわかりませんが、逮捕後の家宅捜索では、様々な薬物(コカイン300g、大麻樹脂315gなど)が押収されたほか、4,300ユーロの現金、拳銃、ライフル、12個のカートリッジが押収されたと言われています。

 この男は、1年半にわたってVinted(ヴィンテッド)でコカインの転売を行っていたと自供しているようですが、自宅で発見された薬物に加えて、普通、家に置いておくにしては、高額の現金や拳銃やライフルなどの武器まで発見されたということは、Vintedでの販売は彼の商売の一端に過ぎなかったような気もしています。

 それにしても、薬物と武器は、ここでもセットで、薬物の密売には武器が不可欠なものとなっていることを認めざるを得ないような気がしています。

 当然、現在、彼のサイトはすでにクローズされていますが、他のものに紛れて、コカインの販売を行っていたことは間違いなく、現段階では、サイト上で彼と取引のあった10人が尋問を受けたと言われています。

 1年半にわたる販売履歴はサイトでは確認できるものの、そのどれにコカインが含まれていたのかを特定するのには、かなり時間がかかることになりそうです。

 Vintedには、一応、取引の際に相互に評価をつけるシステムになっていて、自分が取引する相手が信用に足る人であるかどうかの判断基準の参考にできるようにはなっていますが、顧客側とて、まさかこの評価にコカインのことを明記するはずもなく、たとえ他のものを買ったとしても、他にヤバいものを売っている人だった場合は、大変なことになってしまうこともあり得るということです。

 まあ、特別なケースだとは思いますが、買い物をする場合は、注意しなければならないかもしれません。

 便利になると、何かそれを利用して悪事を働く人がでてくるのは、これに限ったことではありませんが、私としては、けっこう身近に利用しているサービスなだけに、(今日もいらないTシャツが売れてロッカーに置きに行ったばかり)なんだか、ざわざわする感じがしたのです。


Vinted(ヴィンテッド)コカイン販売


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2023年4月8日土曜日

マクロン大統領とボルヌ首相の不協和音

  


 年金改革問題は一向にけりがつかないどころか、迷走状態のまま、反発がやまない状態の中、マクロン大統領は、中国を訪問するため、3日間フランスを離れていました。出発前に、彼はマスコミの取材の前に側近を通じて「フランスの民主主義の危機」を否定し、年金改革には、明確な権限があることを強調し、止まない暴力行為に懸念の意を表していました。

 引き続き、高圧的な態度を全く崩さないうえに、相対する国民の暴力を非難するという最悪のシナリオです。

 もはや、彼の発する言葉にいちいち腹を立てるというよりは、もうすでに怒りは頂点に達している感じで、彼の発する一言一句に怒らないまでも、どうにも彼の発言はいちいち神経を逆なでするようなことばかりで、あれだけ「口が上手い」というか、お話が上手だった以前の彼からしたら、最近の彼から出る発言は、まるでシナリオライターが変わったのではないか?と思ってしまうほどです。

 それに対して、マクロン大統領の留守を守るボルヌ首相は、ここにきて、「物事を急がないように細心の注意を払う必要があり、物事を休ませる必要があり、組合の面目を潰すべきではなく、 国は宥和する姿勢を必要としています・・」と、語り始めました。

 とかく、今回の問題では、損な役割を被って、矢面に立たされてきたボルヌ首相ですが、このマクロン大統領とは全く異なったトーンの発言に、二人(大統領と首相)の間に不協和音が流れ始めたのではないかという噂まで流れ出しました。

 首相の軟化した発言に対して、組合側は、「彼女はおそらく、この国で何かが起こっていること、社会的危機があること、それが市民の感情であるということを認識している・・」、そして、現在は、宥和の言葉を言う方が良いことを認識している・・」と彼女の言葉を歓迎し、同時に、「国民感情を全く理解せずに高圧的な言葉を浴びせ、国民を非難する言葉を浴びせる大統領とは大違い!」と付け加えました。

 首相に対して「過半数を拡大し、国民議会でのテキストを前進させ続けるよう指示して    中国に出かけたマクロン大統領とは、溝を感じるところですが、彼女は「大統領とは頻繁に話をしており、マクロン大統領とは完全に意見が一致している」と強調しています。

 しかし、訪中先での報道陣の問いに答えたマクロン大統領は、「もしも人々が60歳で引退したいのなら、大統領に選出されるべきなのは私ではなかった・・」などと、述べており、大統領を辞めるつもりはなかろうに、自分に投票したかぎりは、自分のやり方に」従え!とでも言いたいのか?、ちょっと理解に苦しむような言葉を発しており、苦しい状況ゆえ、発言に余裕がなくなることはわからないではありませんが、最近は、ことごとく、言うべきことを言わず、言わない方が良いことしか言わない最近のマクロン大統領。

 訪問先の中国では、中国の外交問題について、「対立よりも協力を進める考えを強調」していたそうですが、フランス国内の問題に関しても、同じように考えてはもらえないだろうか?と思ったのでした。


マクロン大統領とボルヌ首相


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2023年4月7日金曜日

マクロン大統領ゆかりのレストランが燃やされる! 11回目の年金改革反対デモ

 


 今年に入ってから、公式には11回目のデモが、色々な意味で盛大に行われました。CGT(全国組合連合)の発表によると 200 万人、当局の発表によると 74万人の人がデモに参加しました。

 パリだけでも、少なくとも11,500人の警察、憲兵隊がデモの警備にあたる中、今回はプラスイタリー(イタリア広場)が集結場所として選ばれました。集結場所はプラスイタリーでも、そこに到達するまでにデモ隊は、抗議の声を挙げながら、パリ市内をあちこち行進していくわけで、その途中で、様々な摩擦が生まれるのは毎度のことです。

 今回は、パリ6区にある有名なブラスリー「ラ・ロトンド」付近でデモ隊の一部と警察の衝突が起こり、レストランの赤いテントに発火筒が投げつけられ、赤いテントが燃え上がる火災が発生しました。



 火災が起こったのは午後15時半から16時頃のことで、昼時の混雑時間帯ではなかったにせよ、観光客の多い場所、お店にはお客さんも少なからずいたはずで、負傷者が出なかったことは、不幸中の幸いでした。

 消防隊の介入により、比較的早い段階で鎮火しましたが、レストランにとったら、大変な惨事に違いありません。

 このブラスリーは、2017年にマクロン大統領が大統領選挙に最初に当選した際に祝勝会に使われた、いわば彼のお気に入りのお店、いわば大統領御用達のお店で、そのために標的にされたものと見られています。

 レストランに行くと、有名人がここを訪れましたとばかりにその人がお店で撮った写真やサインなどが飾られていることがありますし、このブラスリーも2017年マクロン大統領当選直後は、大統領が祝勝会に使ったお店として、誇らしい出来事として捉えていたに違いありません

 しかし、それから6年後、年金改革問題により、反マクロンの勢いが強烈になり、とうとう攻撃の標的にまでされてしまうとは、このブラスリーにとっては、とんだもらい火に違いありません。

 これから先にマクロン大統領が外の場所で祝勝会を行うようなことや一般のレストランで食事をする機会があるかどうかはわかりませんが、こんなことが起こるのでは、彼は招かれざる客になってしまったことに違いありません。

 パリだけでなく、あらゆる街での破壊行動は止まることはなく、次回のデモは憲法評議会の決定が下される日の前日4月13日であると発表されています。

 恐らく、次回の山場は、この法案に対する「憲法評議会の決定」であることは間違いなく、どうにか少し回収され始めたパリ市内のゴミの山が復活しそうな気配で、ゴミ収集業者の組合が4月13日から、ゴミ収集ストライキ・シーズン2を予告しており、今度は「この年金改革が撤回されるまで、パリの街中を公共のゴミ捨て場に変える!」と宣言しており、憲法評議会の決定がGOサインを出せば、また、パリの街は手が付けられない状態になることは必須のようです。


ブラスリー レストラン ラ・ロトンド火災


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