年金改革問題で荒れに荒れているフランスは公式に宣言されているデモの10回目を迎えた現在も国民の怒りが鎮まる兆しは全く見えていません。
年明けから続いているデモの間隔は最初は2週間おきくらいで、ある程度、政府が回答する猶予期間を設けたような日程であったものの、ここのところは、毎週になり、(今回は中4日)、また、49.3条が発令された3月16日以来、俄然、暴力的なものに変化し、無許可のデモも含めて、ほぼ毎日のようにデモという名の暴動が起こり続けています。
なので、10回目といわれても、全然、10回目という感じはせず、100回目くらいの気分です。
これだけの国民の抗議を受けながらも、政府の態度には、まるで柔軟性というものがなく、昨日、組合から政府に向けて提出された、正式な「年金改革を数ヶ月中断する提案」をあっさり却下しています。
これは、マクロン大統領にとって、改革を中断することは、黄色いベスト運動の際の燃料税に関しての失敗体験もあり、中断することは断念することを意味しているためとも言われていますが、「改革か破綻か?」と主張してきた政府にとって、これを断念したらしたで、無責任と責められる後にも先にも進めない状況であるともいえます。
しかし、49.3条という政治的なチカラで国民を抑えつけようとしている政府は、このようなデモに対して、これ以上、政治的なチカラで国民の抗議の声を抑えつけることは不可能で、このままでは、この暴動が半永久的に続けられることになります。
これだけの騒ぎになれば、マクロン大統領へのフランス国民の反発は世界中の注目を集めはじめ、世界の中でのマクロン大統領のポジションも変わってきそうな気がします。
世界中のマスコミ(アメリカ、イギリス、スペイン、インド、ロシアなどなど・・)が、もはやこれが「年金改革問題」にとどまらず、むしろ、憲法49.3条の強行行使への国民の反発であることを伝え、パリの通りで燃えているゴミの山、炎に包まれたボルドーの市庁舎の門の映像を流しながら、大統領制の危機とまで報じています。
また、これに加えて、後を絶たない過激な暴力行為に対しての警察・憲兵隊が国民に加える残虐行為などまでも取り沙汰されています。
国王との約束をドタキャンされたイギリスの日刊紙には、「英国王の訪仏をキャンセルすることでマクロン大統領は屈辱を受け、その時にやっとフランスが火山の上で踊っている状態であることを初めて認識した・・」などと書かれているそうです。
世界中のマスコミの中でも、最も痛烈な報道をしているのは、ロシアの国営放送だそうで、国営テレビ放送の中で、ジャーナリストがマクロンをナチスと呼び、彼に辞任を求め、ロシアは自由と人権の尊重が支配する唯一の国であると視聴者に伝えたとBBCのジャーナリストが伝えています。
自由と人権について、ロシアから辱められる現在のフランスにマクロン大統領は何を思うのでしょうか?
年金改革は遅れれば遅れるほど、取り返しがつかないと言っていたマクロン大統領ですが、その前に、この国民の怒りへの対応も遅れれば遅れるほど、取り返しがつかなくなりそうです。
しかし、マクロン大統領は、「我々は、パンデミックの健康危機に際して、最もお金を払った政府なのに、フランス国民は恩知らずだ!」と言っているそうで、「それ、今、言っちゃいけないんじゃない?」と思うことしか伝わってこないマクロン大統領の言動に、なぜ?こんなにも国民感情を逆なですることしか言えないのか?と、今までの彼らしくない、ちょっと我を失っているような気さえしてしまうのです。
フランス年金改革問題デモ マクロン大統領 49.3条 暴動
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