2021年1月31日日曜日

ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?

 

 Manifestation contre la loi "Sécurité globale" à Paris, le 30 janvier 2021


 現時点では、ロックダウンをしない選択をしたフランス。この選択が良い選択だったと思っているのは、48%、悪い選択だった・・ロックダウンをするべきだったと考えている人は、52%という世論調査の結果が出ています。

 この数字からも規則に縛られることが大嫌いなフランス人でさえも、かなりの危機感を持ってはいるということがわかります。しかし、今となっては、ロックダウンに反対の割合もずっと増えていることも事実です。

 特に若者の間の精神的なダメージによる自殺が増加するなど、「コロナウィルス感染よりも人と関われない孤独が怖い」という若者も少なくありません。

 日曜日から営業停止となるコマーシャルセンターなどには、冬のソルド(バーゲン)のラストチャンスを狙って、かなりの人出で賑わいました。今年のソルドは、例年の予定よりも遅く始まったにも関わらず、また、このタイミングで、また、営業停止です。

 もっとも、ロックダウンせずに、さらなる制限となれば、他に手立てはありません。

 また、あいも変わらず、土曜日のデモは、フランス全土(パリ、リヨン、ナント、レンヌ、ボルドー、ストラスブールなど)で行われ、3万人以上がデモに参加し、警察との衝突で、35人が逮捕されています。

 デモは、グローバルセキュリティ法に反対するデモではありますが、デモの終盤には、こんな生活やってられない!と暴れ出す人までいて、もはや何に対して抗議しているのかわからないようなところもあります。

 デモというのは、本来は、何らかの問題に対して抗議する活動でありますが、フランスでは、一部には、デモをすること自体が目的で、ストレス発散の場のようにしている人もいるのも事実です。

 前日に「現在は、危険な状況ながら、制限を追加しつつ、衛生管理を強化して、ロックダウンは回避して様子を見る」との発表があったばかり・・より注意しなければ、ロックダウンになると言われているのに、デモに出かける人が後を経たないことは、絶望的な気持ちにさせられます。

 グローバルセキュリティー法に関して、今、このロックダウンか否かの瀬戸際の状態で抗議しなければならないことなのか? 全く理解ができません。

 また、日曜日からは、EU圏外の出入国が禁止され、EU圏内でさえも、厳しく制限されますが、感染状態がフランスよりさらに深刻なスペインでは、政府の方針の違いから、22時以降の夜間外出制限はあるものの、それ以前の時間帯には、バーから美術館、レストラン、劇場に至るまで公共施設が閉鎖されていないことから、マドリッドなどには、フランスからの観光客がかなりいるようです。

 急な国境制限とはいえ、現在、スペインにいるフランス人観光客は、急いで日曜日までに帰国するか、それ以降に帰国する場合は、入国時にPCR検査を受けなければなりません。

 現時点では、ロックダウンはしないことを決定した政府も必死であり、警察の取り締まりは、厳しくなったようで、土曜日1日だけで、営業禁止に違反しているパリのレストラン24軒が検挙されたようです。

 今回のロックダウンをしなかった判断は、選挙を控えた政治的な判断であったとの批判も少なくなく、マクロン大統領は、ツイッターで、「私は、自信を持っています。私たちが生きている時間は非常に重要な時間です。一緒に感染を止めるためにあらゆることをしましょう」と呼びかけています。

 しかし、フランスには、夜間外出禁止ならば、夜は、家で人と集い、より感染の悪化したスペインに行って、レストランなどの普通の日常に近い生活を楽しみ、ストレス発散にデモに出かける人がたくさんいるのです。

 高いレベルでの感染状態が続き、ジリジリと増加を続けるフランスは、いつ急激な感染拡大を迎えるかわからない時限爆弾を抱えているようなものです。

 実際に、昨日の新規感染者数は、24,000人を超えており、もはやイギリスの新規感染者数を上回っているフランスなのです。

 結局のところ、猶予が長引いただけで、結局、いずれ、ロックダウンになるのを待っているような中途半端なジワジワと制限が厳しくなる状況は、より一層の国民の動揺を招き、感染も封じ込められない最悪の決断だったような気がしてなりません。


<関連>「まだロックダウンしないフランスの真意」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_30.html

2021年1月30日土曜日

まだロックダウンしないフランスの真意


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 金曜日の夜18時に、マクロン大統領がエリゼ宮に防衛評議会を招集したというので、これは、いよいよロックダウンだと思いました。

 フランスのコロナウィルスの感染は、劇的な悪化はしていないものの、確実に増加しており、夜間外出禁止の時間前倒し(18時以降外出禁止)が、感染減少には繋がるほどの効果が出ていないことは明らかな状態です。

 防衛評議会は、1時間ほどで終了し、そのおよそ1時間後には、カステックス首相の会見が開かれるというので、その会見内容が注目されていました。

 なぜ、マクロン大統領が出てこないのか? なぜ、カステックス首相が会見するのか? それだけでも、ほんの短い時間にざわつきました。

 しかし、カステックス首相の会見で、今回は、マクロン大統領が出てこなかった理由がすぐにわかりました。つまり、ロックダウンではなかったのです。

 カステックス首相の会見内容は、夜間外出禁止の効果は出てはいるものの、充分ではない。しかし、今しばらく、さらに衛生管理を強化し、状況を見守る猶予期間を取るものとする。

・EU圏外からの入国禁止

・リモートワークの強化

・20,000㎡以上のスーパーマーケット、ショッピングセンターの食料品以外の店舗、コーナーの閉鎖

・夜間外出禁止、営業禁止店舗(レストランなど)の取り締まり強化

・検査・隔離の徹底

 海外からの入国禁止とコマーシャルセンター・スーパーマーケット内の一部閉鎖以外は、これまでと大して変わらない内容の発表は、ほんの5分ほどで終わりました。

 なんだか、肩透かしを食った内容でしたが、この内容の制限のみで、感染が減少するとは考えづらく、「もっと、気をつけろよ! できなければ、ロックダウンだぞ!」という、ロックダウンを決行する過程の精神的なショックや政府に対する反抗回避への1クッションであったような気がします。

 感染症専門家の多くは、今の段階で、これだけの制限に留めることには、かなりの疑問を抱いている人が多く、特に変異種の拡大は深刻であることから、特にパリの医療体制は、かなりの逼迫状態にあり、患者の移送さえも始まっている状態であるといいます。

 1週間後には、フランスでは、冬休みのバカンスに突入するので、その期間にロックダウンを重ねれば、学校を閉鎖する期間をそれに重ねることもできるのですが、その時期に制限がない場合は、逆にまた、多くの人が国内を大移動し、感染を拡大させることになります。

 賛否両論はあるにせよ、多くの人がロックダウンを信じて疑わなかった状態での今回のカステックス首相の発表内容には、やはり、内心は、一瞬、少々ホッとしたものの、しかし、依然として、いずれロックダウンになるであろうという思いには、なんの変わりもありません。

 ただ宙ぶらりんだった状況の中、現在の段階ではロックダウンしないにせよ、動揺する国民の気持ちになんらかの新しい発表が必要なタイミングであったのかもしれません。

 本来ならば、衛生管理は、まだまだ努力の余地が大いにあると思えるフランスではありますが、それができないから現在の状況に至っているわけであり、より具体的な制限や対策がない限り、ロックダウンする以外に道はないのです。

 検査と隔離の問題だけを見ても、検査は、かなり可能な状態ではありながら、肝心の隔離ができていない状態がフランスではずっと続いているのです。

 経済的なダメージや国民の精神的なダメージのために、なんとかロックダウンを回避、あるいは、先送りしようとしているのもわかりますが、危機的状況を迎えれば、結局は、ロックダウンもさらに厳しいものになり、より長いものになることは避けようもありません。

 結局は、感染が爆発的な上昇を見せない限り、ロックダウンには、踏み切れないことに憤りを感じるのです。


<関連>「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_28.html


2021年1月29日金曜日

フランス人が日本の感染対策に対してびっくりしていること



 最近、クリスマスも年末年始の行事も終わって、少し落ち着いたのか? どういうわけか?しばらく話していなかったフランス人の友人から、電話がかかってきます。思うように出歩けないので、電話ででも誰かと話したいのかもしれません。

 とはいえ、話題は、コロナ関連のことになりがちなのですが、彼らが共通して怒っているのは、ワクチンの予約が全く取れなくなってしまったことです。両親のための予約を入れようとしているのに、全く、予約ができないのだそうです。

 年が明けて、他のヨーロッパ諸国に比べて、大幅にワクチン接種が遅れていることが発覚したフランス政府は、大バッシングを受け、年が明けるとともに、これでもかというくらい、ワクチン接種の話題で持ちきりになり、政府は、今日は、どれだけワクチン接種が進んだかというニュースを大々的に発表し、かなり、ワクチン接種に躍起になってきました。

 ところが、ファイザー等のワクチン製造販売元に問題が起こり、ワクチンが届かずに、供給が間に合わなくなってきてしまったのです。これは、フランスだけで起こっている問題ではありませんが、元々、ワクチン接種に遅れを取っていて、慌てて、ワクチン接種の枠を拡大したフランスには、特に問題が深刻化しているのです。

 そもそも、このワクチンは、2回接種しなければならないもので、すでに、年初に1回ワクチン接種をした人々は、そろそろ2回目の接種をしなければならないのです。ところが、急にワクチンが届かなくなってしまったのですから、1回目の接種を希望する人の予約は受け付けられないのです。

 新たに予約を入れるどころか、これまで予約した人まで実際に、ワクチン接種を受けられずに予約がペンディングになってしまっている混乱状態なのです。

 まあ、知人やその家族がコロナウィルスに感染して、入院している・・などというニュースではなく、ワクチンが受けられないと怒っているのは、まだ幸いなのかもしれません。

 日本の様子は、どうなの?と聞かれて、「日本も感染は、悪化はしているけど、フランスよりも全然、マシだよ・・」と言うと、「じゃあ、レストランやお店もやっているの?」「時間帯に制限はあるらしいけど、やっているみたい・・」と答えると、彼らはとても、ビックリします。

 考えてみれば、日本は、フランスの2倍の人口を抱えているのに、これまでの死者数は5300人、フランスは、75,000人と日本の15倍近い犠牲者を出しています。(人口比率を考えれば、実質30倍と言うことになります)

 2倍3倍ならばまだしも、これだけの差になると、もはや比較の対象にはなりません。まさに別世界です。

 フランスは、2回のロックダウンに加えて、ほぼ、一年のうちのほとんどの期間をレストランなどは閉鎖したまま、その他に夜間の外出禁止などの日本よりもずっと厳しい措置を続けているのに、現在、再び、3回目のロックダウン間近と言われている状態です。

 私は、彼らに日本の状況を説明しながら、現在、感染が悪化してはいるものの、日本は、フランスに比べてこれだけ感染を抑えられているのだから、やっぱり、凄いな・・と改めて思うのでした。

 考えてみれば、私の父が入っていた介護施設に行った時、もう数年前のことで、コロナウィルスなど、まだ影も形もなかった頃でさえ、施設に入る前の手洗いとアルコールジェルを使用して入ってください・・と言う衛生環境への気の配り方にビックリしましたが、それを考えると、日頃からの衛生観念が全然、レベルが違うのです。

 フランスの高齢者施設に行ったことはありませんが、現在、コロナウィルスが蔓延している状況でさえも、フランスの高齢者施設が、あれほど清潔な状態であるのかどうかは、甚だ疑問、現在のような状況でさえ、日本の通常の衛生レベルに達しているかどうかもわかりません。

 そんな衛生観念の違いは、大きく感染状況にも影響しているのでしょう。

 しかし、ワクチン問題で、頭がいっぱいの彼ら・・「日本は、まだワクチン接種を始めてもいないらしいよ・・」と言うと、さらにビックリするのです。「日本のように、何事も早く進んだ国で、なんで???」と・・。

 

<関連>「コロナウィルスワクチンに対する世界と日本の温度差」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_18.html

 

 

 

 








 

2021年1月28日木曜日

なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き

   



 ロックダウンは必須だと言われながら、フランス政府はなかなかその決断を下さないまま、一週間以上が経過しています。感染状況だけでなく、経済的な逼迫状態からも、そのロックダウンの詳細を決めかねているのは、理解できます。

 政府の決断は、僅かな期待を込めて、夜間外出禁止を前倒しして、18時にした成果を見届ける2週間後の今週末まで、決定を引き延ばしていますが、残念ながら、その効果は全く現れておらず、新規感染者数も集中治療室の患者数も増加し続けています。

 もしも、この夜間外出禁止の時間帯を早めなければ、もっと急激に増加していたかもしれないので、それなりの効果はあるとも考えられますが、どちらにせよ、感染が拡大し続けている以上、更なる措置を取らざるを得ないことは誰もがわかっています。

 しかし、国民もロックダウンや多くの制限に縛られる生活に経済的にも精神的にも疲れてきていることもあり、営業停止になっているはずのレストランが痺れを切らして営業を始めたり、先日は、パリでは、いくつかのレストランが実は営業していて、ランチタイムなどは、かなりの人が入っているのに、現地の警察が見て見ぬふりをして、営業が続けられているという話を聞いたばかりです。

 昨日は、ニースにあるレストランが営業禁止を無視して、営業を再開し、テラス席は、50人ほどの客が集まり、20人の警察が踏み込み、営業終了を待って、レストランのオーナーは逮捕、お客さんには、135ユーロの罰金が課されました。

 かれこれ、最初のロックダウンから1年近く経過したフランス国民は、昨年の3月の時点では、93%がロックダウンに賛同していたものの、4月のロックダウン延長時には、83%、2回目のロックダウンの10月末には67%にまで低下し、現時点では、58%まで低下しています。

 10月末の2回目のロックダウンの際には、12月には、なんとかクリスマスを家族で迎えるためにという明確な目標もあり、まだ希望もありましたが、現在は、イギリス変異種の急激な拡大により、周囲のヨーロッパの国々も厳しい感染状況の中、次々にさらに厳しい規制が敷かれている中、終わりの見えない今回のロックダウンには、抵抗があるのは、もっともでもあります。

 しかし、この状況をこのまま放置するわけにもいかず、特に、感染力も高く、致死率も高いイギリス変異種の拡大は、深刻で、2週間前には、感染の1〜2%程度であった変異種が現在では、パリ地域では、14%まで上昇しており、2週間で10倍以上にも膨れ上がったことになります。近いうちにコロナウィルスの主流は、イギリス変異種がとって変わるのではないかとする見方をする専門家もいます。

 これらの状況を鑑みるに、現在3,100人まで膨れ上がっている集中治療室の患者数は、2週間後には、4,000人、さらに2週間後には、5,000人まで増加すると予想されています。

 集中治療室に5,000人というのは、フランスの医療システムの崩壊状態に限りなく近づく数字です。政府は、10,000床まで集中治療室は、拡大できると言っていますが、ベッドだけあっても、それをケアーする人出は足りません。

 政府の決断が遅れれば遅れるほど、感染者は増え続け、国民感情も動揺して、迷いが生じてきます。被害を少しでも少なく留め、できるだけ早く感染を収束させるためには、本当は、もう猶予できない状態なのです。

 昨日は、5月に予定されていたカンヌ映画祭が7月に延期されることが発表されました。先の予定ばかりが先行して延期になったり、中止になったりしているのに、目の前に迫っているロックダウンが決められないことをとても、私はとても、もどかしく思っています。


<関連>「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

 

 

 

2021年1月27日水曜日

夜間外出制限をめぐりオランダで暴動 オランダに比べるとフランス人は意外と従順なのはなぜか?

Des policiers font face à des opposants au couvre-feu à Rotterdam, aux Pays-Bas, le 25 janvier 2021. (KILLIAN LINDENBURG / ANP MAG / AFP)


 ここ数日間、オランダでの夜間外出禁止に反対するデモが暴動化している様子がフランスでも報道されています。

 オランダの首都、アムステルダムと南部アイントホーフェンをはじめとする国内10カ所以上で、コロナウィルス感染対策の夜間外出禁止に反発する無許可デモが行われ、警官隊と衝突し、石やゴルフボール、爆竹などが投げられ、車や商店にまで放火される暴動に発展しました。

 ユルク(中部フレヴォラント州)では、コロナウィルスの検査施設までが放火されています。いくらなんでも検査施設に放火は、悪質です。

 この暴動では250人が逮捕され、過去40年間で最悪の政情不安だと言われています。ルッテ首相は、暴力は、抗議ではなく「犯罪」と述べ、これらの暴力行動に対して厳しく対処することを発表しています。

 オランダでは、昨年10月からレストランやバーが閉店、12月15日からは、学校や生活必需品以外の店舗も閉鎖されています。

 今回は、それらの制限に加えて夜間外出禁止(21時〜4時半)が追加されたことに対する反発です。

 しかし、このオランダの様子を見ていて、オランダに比べれば、フランス人は、意外と従順に、ロックダウンや夜間外出制限に従っているのだな・・と、私は、妙な感心をしてしまいました。

 フランスでも、このコロナ禍に、デモは度々、起こっていますし、ブラックブロックなるデモに便乗して暴れる集団により、デモが暴動化することもありましたが、それは、コロナウィルスの行動制限に対してのものではなく、最近のデモは、もっぱら、今は、グローバルセキュリティ法に関するデモが中心で、コロナ対策に対してのものは、あまり、ありません。

 ましてや、フランスの夜間外出制限は、18時から6時まで、これに違反すれば、135ユーロの罰金が課せられます。(オランダは21時から4時半まで、罰金は、95ユーロ) オランダに比べれば、格段、厳しい制限をフランス人は、概ね受け入れています。

 この18時の門限を守るために、日頃は急がないフランス人が、帰途を急いでいる様子には、ちょっとびっくりするくらいです。

 これは、フランスの感染状況がオランダよりも深刻であることも理由の一つであるかもしれませんが、ロックダウンなど制限に対するの国民の努力ををちょいちょい褒めつつも、ギリギリのところで締めているフランス政府のやり方は、少なくとも大きな反発を生んでいないだけでも上手くいっている方なのかもしれません。

 オランダでの今回の暴動は、オランダ政府の一貫性のないメッセージが国民の信頼を形成できなかったことが、原因になっていると見られています。

 コロナウィルス流行の初期には、「オランダ人は、法を遵守する国民性で、マスク着用や外出禁止といった措置を取らない方針」としていたにもかかわらず、年末年始以来の度重なる制限の追加にこれまでの怒りが爆発したとも言われています。

 このコロナウィルス対策のための数々の行動制限に関して、政府の説得力、国民をどう納得させられるのか?も、大きな問題の一つです。

 とりあえず、物申すフランス人が度重なるロックダウンや、厳しい夜間外出制限をなんとか受け入れているのも、ある程度、フランス政府は国民を納得させることができているのだなと思ったオランダの今回の騒動でした。

 しかし、むしろ、夜間外出制限を、外出さえしなけりゃいいだろ!とばかりに、夜間は、家で人が群れているのも、フランスの現状の一つなのですが・・。


<関連>「コロナウィルスに関するマクロン大統領のテレビ放送を見て思うこと」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_13.html 

 


 


2021年1月26日火曜日

変異種による2回目のパンデミックが起こる

  


 イギリス変異種がヨーロッパで猛威を振るっています。

 イギリスでは、すでに一日1,000人以上の死亡者が出る日が何日も続き、ポルトガルでは、この変異種の影響により、40%以上も感染者が急激に増加し、政府が「限界に近い状況である」と発表する非常事態が起こっています。

 このポルトガルのような状況に陥ってしまうことにフランスは大きな危惧を抱いています。

 フランスでも、現在、新規感染者の7〜9%は、イギリス変異種による感染だと言われています。イギリス変異種は、感染速度も速く、感染率も高く、致死率もこれまでのコロナウィルスよりも30%〜40%高いことが、イギリスのボリス・ジョンソン首相からすでに発表されており、フランスの科学評議会の議長フランソワ・デルフライシー氏は、「イギリス変異種による2回目のパンデミックが起こる」「このままの状況を続ければ、(早急に、さらなる制限を設けなれば)、フランスも3月中旬には、壊滅的な状況に陥る」と警告しています。

 1回目のパンデミックも終わらないうちに2回目のパンデミックが起こるという表現を使うことから、科学技術評議会によって予想されている変異種の拡大と、その猛威への懸念の大きさがわかります。

 つまり、同じ感染者数でも、これまでのコロナウィルスとは、重症化し、死亡する比率が高いわけですから、単にこれまでと同じ推移で感染者数や入院患者数を見ていては甘いということです。

 フランス政府は、現在のところ、ロックダウンが必要であることは充分に認識しつつも、その時期や方法を計りかねています。現在の段階では、3回目のロックダウンとして、

① 店舗の営業は継続、1〜10km以内の外出に制限

② 学校も含めて、ほぼ完全な状態のロックダウン(昨年の3月〜5月のロックダウンと同等程度)

③ 学校は継続、店舗は、生活必需品を扱う店舗のみ営業(昨年11月と同等程度)

の3つの方法が検討されています。

 また、各国が必死に進めているワクチン接種も、HAS(Haute Autorité de Santé)によれば、ワクチンは、イギリス変異種の感染速度に間に合わないであろうと言われています。

 ほとんど待ったなしの現在の状況ながら、フランス政府は、夜間外出禁止前倒し(18時)の効果を今週いっぱい見たタイミングの週末にも今後の対策を決定する模様です。

 いずれにしても、現在以上の制限が敷かれることは、必須で、迫り来るロックダウンのために、準備を始める人も現れ始めています。

 コロナウィルスが出現して、そろそろ一年、感染拡大しては、ロックダウン、解除されれば、しばらくしてまたロックダウン、同じことを繰り返していて、愚かしい気もしますが、それに加えてウィルス事態がパワーアップするのですからたまりません。

 これからの数週間、いや数ヶ月、まだまだ気が抜けない日が続きそうです。


<関連>「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

「フランス全土・夜間外出禁止18時へ 入国制限も強化へ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/18.html

2021年1月25日月曜日

フランスの3回目のロックダウンは、決定的

  


 フランスの3回目のロックダウンは、もはや、するかしないかではなく、いつ、どのようにするかという段階に入っているようです。フランスの感染状況は、急激に拡大してはいませんが、週平均、1日の感染者が2万人前後という高い数字をずっと保ち続けてながら、じわじわと増加しており、集中治療室の患者数もこれにつれて、少しずつ増加し、現在は、2,965人(1月24日現在)とほぼ、3,000人のボーダーラインに限りなく迫りつつあり、これは、前回のロックダウンに踏み切った時と同じレベルにまで達しています。

 しかも、現在、最も懸念されているのは、イギリス変異種を始めとする南アフリカ、ブラジルなどの変異種の拡大で、新規感染者の20%がイギリス変異種による感染が占めているポルトガルのように、感染が急速に拡大してしまうことを恐れています。

 すでに年末年始にかけて感染拡大が深刻になり、新規感染者の増加だけでなく、多くの死者を出し、ロックダウン状況にあるイギリスやドイツなどに比べると、一見、感染の急激な拡大はみられないフランスは、この期に及んで、「フランスは、ヨーロッパの中では、最も感染対策ができている」などと、お得意の自画自賛の姿勢を崩していませんが、その実、ロックダウンの効果が表れ始めているドイツやイギリスに比べると、なかなか微妙な数字を常に保ち続けており、今のフランスの状況は、単にドイツやイギリスに比べて、早い時期に1日6万9千人という驚異的な新規感染者数を叩き出したために、ロックダウンを早い時期に行った結果であり、その後のイギリス変異種の出現から、イギリスからの入国制限を慌てて行ったものの、実際には、この変異種がかなりの割合で蔓延し始めていることは、幼少者の感染拡大などの数字を見ても明らかです。

 これからが怖いところで、この変異種による感染拡大の波を迎えるかもしれないにあたって、フランスはすでに集中治療室が3,000近く埋まっている状態で迎えてしまうことで、ここから、急激に感染拡大した場合は、間違いなく医療崩壊まっしぐらになります。

 あくまでも経済をできるだけ維持し、学校も閉鎖しない状態を保ちたいフランスは、夜間外出禁止を18時に前倒しにした効果を期待していますが、一週間たった現在もその顕著な効果は確認されていません。

 学校に関しても、どちらにしてもフランスの学校は、あと10日ほどで冬のバカンスに突入するために、その学校のバカンスのタイミングに合わせた形でのロックダウンを考えているのではないかと思われます。

 科学評議会の議長が、少なくとも3週間のロックダウンは必須であると発言しているとおり、あらゆる状況(感染状況や変異種拡大の影響等)を考えてもロックダウンは確実ですが、あとは、そのタイミングや方法(地域的なものにするか、制限の範囲、年齢等)を検討している段階です。

 現在すでに長い期間営業停止されているレストランやカフェの営業停止が先んじて少なくとも4月6日までと延長されたり、3月に予定されていたバカロレアのスペシャリテの試験が中止になり、ずっと先の予定がどんどん中止になっていることも、当然の措置であると思いつつ、政府が目先のロックダウンを一日延ばしにしつつも、2月から3月にかけての感染爆発を充分に見据えている不気味な動きであることを感じずにはいられません。

 また、イギリス変異種に関しては有効性は変わらないとされていたワクチンも、南アフリカ変異種に関しては、有効性を40%低下させるという研究結果も発表されており、世界各国が躍起になっているワクチン接種の効果も効果が危うくなり、まさにウィルスの進化と人間の戦いのいたちごっこのようで、このパンデミックがさらに長く続きそうな気配がしています。


<関連>「学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_19.html

「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

2021年1月24日日曜日

パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件 


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 1月15日(金)にパリ15区・ボーグルネルで14歳の少年が12人の集団によって殴る蹴る、終いには、バットやハンマーまで使って長時間にわたっての暴行を受ける、恐ろしい画像がツイッター上で拡散されて大問題になり、同時に彼への支援メッセージが後を絶ちません。

 少年は、複数の友人と共にいましたが、この突然の襲撃に遭遇し、友人とともに逃げる途中で、運悪く転び、彼一人がターゲットにされた模様です。

 彼は、その後、まもなく病院に運ばれ、6時間にわたる手術の後、昏睡状態に陥り、意識不明の重体です。彼は、現在も挿管状態で、頭蓋外傷、脳と頭蓋骨の間の血腫、脳挫傷、腕、指の骨折を負っています。

 パリ検察庁は、「集団による殺人未遂事件」として、捜査を開始していますが、まだ犯人は、特定されていません。

 この事件で私が驚いたのは、この事件のあまりに残酷な暴行の模様はもちろんのことですが、この事件が起こったのが、パリ市内では、特に危険と思われている地域ではなかったことです。

 パリ15区は、観光客には、あまり注目される場所ではありませんが、16区ほど地価が高いわけでもないわりには、比較的安全で、在仏日本人の多い地域でもあるのです。

 パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)などもあり、韓国レストランなどが多い地域でもあります。

 何よりボーグルネルと言えば、パリ最大級のモダンなショッピングモールで有名なところで、とてもそんな残忍な犯罪と結びつくようなイメージではないのです。

 被害者の少年の母親は、沈痛な面持ちで、しかし冷静な態度で、自らマイクを持ち、テレビのインタビューに答え、まるでレポーターのように、淡々と落ち着いて、息子の被害状況を説明し、「彼は、優等生で、敵を作るタイプの人間ではなく、とても誰かから怨みを買うようなことは考えられません。彼は、一週間昏睡状態が続いていましたが、少しだけ回復の兆しが見え始めました。警察も政府も力付けてくれていて、捜査も進行中ですが、犯人は特定されていません。この事件を目撃した方がいたら、情報を警察に連絡してください」と堂々と顔を出して、訴えかけていました。

 思っても見なかった15歳の息子の事件を堂々とテレビの前で冷静に語ることができる母親に感心したとともに、この比較的安全と思われていた地域で、このような恐ろしい事件が起こることに恐怖を感じるのです。

 事件の真相はまだわかっていませんが、これが、特に彼を狙ったものではなく、無差別に行われた暴力であったとしたら、それは余計に恐ろしいことでもあります。

 コロナウィルスによる様々な制限を強いられているストレスの多い生活が続く中、人々の心も荒れて、犯罪も増加しています。ストレスの発散をこのような暴力的な方法で発散させている一部の人間が、コロナ以外の恐怖を煽っています。


<関連>「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_12.html



 







2021年1月23日土曜日

ディエップの病院で260人感染のクラスター発生 ワクチン接種は医療従事者優先にするべき

  


 フランスでは、ディエップ(ノルマンディー地域圏)の病院で、医療従事者141人と患者123人にコロナウィルス感染が拡大するクラスターが発生しています。病院でのクラスター発生は、深刻な事態です。

 ディエップは、イギリス海峡に面した港町で、この港町の病院での急激な勢いでのクラスター発生には、イギリス変異種の影響が強いと見られています。

 この病院では、医療従事者の感染に加えて、コロナウィルスによる入院患者の増加により、緊急ではない手術の30%は、延期せざるを得ない医療逼迫状態に追い込まれています。

 なぜ、ここまで感染が拡大してしまったのか? しかも病院で、医療従事者の間で・・。

 フランスでは、これまでに96万人へのワクチン接種が行われていますが、最優先されているのは、あくまでも高齢者で、医療従事者に対しても50歳以上という制限がつけられています。

 コロナウィルスの治療の第一線で働く、感染リスクが最も高いと思われる医療従事者に対して、ワクチン接種に年齢制限が敷かれていることは、おかしな話です。医療という現場で働く人々は、たとえ感染して重症化する可能性が低かったとしても、感染を拡げてしまう可能性があるのです。

 感染拡大が進んでいる今は特に、彼らこそがワクチン接種を優先されるべきなのです。

 これに関しては、日本は、未だワクチン接種が開始されていない状況ではありますが、政府が示しているコロナウィルスワクチン接種の方針では、医療従事者へのワクチン接種を最優先にしていることは、とても賢明なことだと思っています。

 ましてや、現在、フランスは、ワクチン接種の拡大に懸命になっているものの、ワクチンの供給が間に合っていない状況で、ワクチン接種を急ぐばかりで空回りしている感が否めません。

 現在、ワクチン接種の権利がある75歳以上の一般の高齢者でさえも、予約を取るのも大変で、家から遠い場所に行かなければならなかったり、やっと予約が取れて出向くと、ワクチン切れの状態だったりするアクシデントも起こっています。

 フランスの感染状況は、劇的な感染悪化ではありませんが、徐々に、しかし、確実にじわじわと悪化している微妙で危険な状態が続いています。波が急激に高くならずに徐々に上昇している状況は、知らず知らずのうちにわかりづらい形で自覚しづらい状態で、悪化しているだけに、余計に始末が悪いとも言えます。

 とはいえ、余程のことがない限り、継続すると言っていた学校も、クラスター発生のために閉鎖される学校が増え始め、もはや3回目のロックダウンは避けられない状況であると、誰もが思っています。

 政府は、夜の外出禁止を18時に前倒しした効果が現れることに僅かな期待を抱いているようですが、現実的には、感染悪化の顕著な数字が表れるのを待っているような状態で、同時に、3回目のロックダウンをどのような形にするのか(制限の内容や地域、方法、期間など)を手探りしているようです。

 夜の外出禁止を18時に早めたことで、スーパーマーケットなどの店舗は、朝7時半からの時間前倒しの営業に切り替えたり、日曜日も営業するなどのフランスとしては、異例の対応を取り始め、必死にこの制限に対応していますが、そこまでしても感染の威力は、一向に抑えることができないことは、歯痒いばかりです。

 ワクチン接種が現在、多くの国ではリスクの高い(致死率の高い)高齢者を中心に必死で行われているのが、果たして正しかったのかどうか? と、私は思い始めています。

 感染の抑制をワクチンに頼るならば、医療従事者はもちろんのこと、仕事に出なければならない人々、感染を拡げる可能性の高い人々こそがワクチンを接種しなければならないのではないだろうか?と、チラと頭をかすめたりしているのです。

 しかし、現在のところ、ワクチンの効用性もどの程度なのかは、まだわかりません。即効性があるのかどうかもわからないし、かなりの割合でワクチン接種が進んでいるイスラエルでさえも感染の拡大は止まっていません。

 フランスの専門家は、このままの状態を続ければ、3月には、フランスは、再び、昨年同様、あるいは、昨年以上の壊滅的な状況が怒ると警告を発しています。

 人々が感染回避の努力をすれば、その形を変化させながら、威力を発揮し続けるコロナウィルスにどうしたら、人間は打ち勝つことができるのか?

 3度目のロックダウンで3度目の正直・・感染を止めることができるのか? オリヴィエ・ヴェラン保健相は、今年の8月末までにフランス人全体のワクチン接種を終える予定であることを発表しています。

 あくまでも予定ですが・・。


<関連>「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html

 

 

2021年1月22日金曜日

滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所

 


 私のフランスの滞在許可証は、10年ごとに更新するもので、昨年のロックダウン中にその更新手続きの時期が重なってしまったことが、そもそもの不運の始まりでした。

 いつもなら、滞在許可証の期限が切れる数ヶ月前に、更新のための必要書類と、この日に書類を提出しに来てくださいという通知が届くのですが、今回は、それが届きませんでした。

 何回か電話しましたが、「サイトを見てください!」とだけ言われて、電話は切られ、仕方なくメールで問い合わせると、しばらくして、「今は、手続きが滞っているから、そのうちレターが届くまで、そのままで良いです」との回答。

 なんとも落ち着かない状態が続いていましたが、それから一週間くらいして、更新手続きの呼び出し状が届きました。

 3月から5月にかけての最初のロックダウンでは、ほぼ、全ての人が外出できなかったし、お役所も閉まっていたので、その間の手続き分が滞っているので、仕方なかったとも思いますが、指定された日時に出向くと、もの凄い人。

 日時が決められているのになぜこの状況? しかも、いつものことながら、すこぶる感じが悪いのです。まるで、犯罪者を追いやるような人の整理の仕方にウンザリでした。

 しかし、長時間を要したものの、その日は、書類を提出し、「新しいカードができたら、SNSで連絡します。」と言われて、とりあえずの仮のカードをもらいました。

 その仮のカードの期間が6ヶ月間と異様に長かった時に、嫌な予感はしましたが、まあ、さぞかし、手続きをする人が溜まっているのだろう・・さすがに6ヶ月もあれば、大丈夫だろう・・くらいに思っていたのが甘かったのです。

 私の仮のカードの期限は今年の1月5日までで、なかなか連絡が来ないと思ってはいましたが、この間には、再び、2回目のロックダウンまで挟まったので、また遅れているのだろうと思っていました。

 しかし、この仮のカードの期限の1ヶ月前になっても連絡が来ない状態に、さすがに、私は、焦り始めました。12月は、クリスマス、年末年始と、ただでさえ働かないお役所は、ますます働かなくなり、機能が著しく低下するからです。

 それからは、何回電話しても、「サイトでアクセスしてください!」と言われて、ガチャンと切られ、何回メールを送っても、何の返答もありません。

 これはどうにもならない!と、役所宛に書留で手紙を送りましたが、それでも返事はないままに、とうとう年を越してしまい、ついに期限が切れてしまいました。

 今回は、仮のカードの期限が多少切れても大丈夫・・などという確認も取れない状態で、電話もダメ、メールもダメ、手紙もダメで、全く、アクセス不能です。

 直接、出向いても、予約以外は受け付けないと言われることは承知していましたが、周囲の人に相談しても、「とにかく、直接、行ってみるしかないよ!」と言われて、入れてもらえなかった時は、せめて、渡して来ようと、一度、提出した書類を再び全て、揃えて、手紙も添えた一揃えを持って役所にも再び出向きましたが、役所前には、警官が立ちはだかり、どうしても入れてもらえません。

 警備の警官の方も自分の言われた「予約のない人を入れない」という仕事をしているだけなので、彼らには、それ以外の人を通す権限もありません。

 せめて、受付に用意した手紙と書類を置いてこようと、受付だけにでも行かせて欲しいと頼んでも、受付さえも、コロナ対策のために閉鎖されているとのこと。持って行った書類を渡してくることさえできませんでした。

 このままでは、私は、不法滞在者です。

 絶望的な気持ちで私は、家に帰り、フランス人に相談すると、この種のトラブルの相談に乗ってくれる機関に問い合わせてくれました。

 その機関は、すぐにメールに返信をしてくれて、すぐに弁護士を紹介してくれました。こうなったら、法に訴えるしかないということです。彼女もフランス人だけあって、「満足に働かない役所の人のために、絶対に引き下がってはいけない!諦めちゃいけない!」と落ち込んでいる私を励ましてくれました。

 彼女は、他の色々なケースも調べ上げ、滞在許可証の申請、更新手続きに関して、多くのトラブルが起こっていること、そのためのデモまで起こっていることを教えてくれました。

 しかし、どれだけ多くのトラブルが起こっていようと、それが許容できるものでも、安心できることでもありません。

 年末年始にかけて、いくらこちらが問い合わせても、アクセス不能の状態に、私は、不安が募り、「こんな思いをするくらいなら、もう日本に帰ろうか? いや、滞在許可証がないならば、帰るしかないのではないか?」などと鬱々と夜もよく眠れない日々でした。

 そして、弁護士に送る書類も手紙も全て揃えて、明日には送る・・と思っていた時に、まるで、何事もなかったように、役所から、「あなたの滞在許可証は、すでにできています。このナンバーでサイトで予約をとって、225ユーロの収入印紙とこれまでの滞在許可証、仮のカードを持って、取りに来てください」とメールが入りました。

 全く、何というタイミングなのだろうか? このタイミングで、12月に私が送った手紙を彼らがようやく目にしたということなのでしょうか? 朗報ではありましたが、どうにも狐につままれたような、俄には信じがたい気持ちでした。

 そして、昨日、滞在許可証の受け取りに行くと、あいも変わらず、役所の前には、凄い行列、予約は、人が溜まる前の朝一番に入れたのに、長い行列に怒声を浴びせる警官。

 もうここ一ヶ月のことで、疑心暗鬼になっていた私は、カードを受け取って、しっかり内容を確認するまでは、安心できないと緊張していました。

 しかし、中に入ると、さすがに朝一のこと、大して待たされることなく、あっさりカードを受け取りました。記載されている内容に誤りがあったら、この場ですぐに言わなければ・・と思っていた私は、カードの内容もその場でチェックしてまたビックリ!特別に申請したわけでもないのに、カードは、CARTE RESIDENT PERMANENT(永住)になっていました。

 別に文句をつけることでもないので、そのまま受け取りましたが、この永住になった経緯はよくわかりません。調べてみると、10年の滞在許可証を2回以上更新した場合は申請可能だとなっているのですが、特にそのための申請をしなくても自動的に変更されることは知りませんでした。

 とはいえ、10年後の書き換えがないわけではなく、これは、フランス人のIDの書き換えも15年に一度はしなくてはならないので、同じと言えば、同じです。

 私が何度となく送ったメールにも、手紙にも、結局のところ、返事はないままに、突然の「カードができてます」のメールでおしまい。ここ数ヶ月のゴタゴタは、何だか責任の所在がわからないままに、まるで何もなかったように消えていきます。

 結局のところ、カードの更新は済んだので、良いと言えば良いのですが、役所の不備が全くなかったことのようになってしまうこの状態。

 問題が表面化しないのですから、改善されることは、なさそうです。


<関連>「やっぱりウンザリする10年に一度の滞在許可証の更新」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_7.html

 

2021年1月21日木曜日

FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利

  


 どうやら、イギリス変異種がフランスにも拡大し始めていることを受け、フランスでは、マスク論争が再び再燃しつつあります。

 コロナウィルス感染が始まって以来、マスクに関しては、フランスは、紆余曲折を重ねてきました。

 昨年3月の最初の感染爆発の際は、本来は、パンデミック対策としてストックされているはずのマスクが大幅に削減されていた状態で、また、マスクの有効性に関しても、政府は「一般人にはマスクは必要ない」などと臆面もなく発表しており、医療従事者以外は、マスクを買えない状況がしばらく続いていました。

 その後、マスクが国宝級の待遇で輸入され始め、5月のロックダウンに向けて、マスクが一般人に対しても推奨されるようになりました。

 それでも、当初、フランス人にとって、マスクへの嫌悪感は強く、マスクが浸透するには、それなりの時間がかかりましたが、パリ全域でマスクが義務化されたのは、人々がバカンスへ出かけ、第2波を迎え始めた8月末のことです。

 マスクをするしないで、バスの運転手が殴り殺された事件も起こりました。

 秋から冬にかけて、フランスは、感染者が1日6万人強という、立派な第2波を迎え、周囲の国々もフランスへの渡航を禁止する国が続出しました。

 10月末から11月の約1ヶ月間の2回目のロックダウンで、フランスの感染は1日1万人前後にまで減少しましたが、クリスマス、年末年始を過ぎて、イギリス変異種の影響もあるのか、現在のフランスの新規感染者数は、2万5千人前後にまで上昇し、現在は、18時以降の夜間ロックダウン状態です。

 特に現在は、イギリス変異種の驚異で、その感染力の強さから、義務化されているマスクも、ただの布マスクやサージカルマスクでは充分ではないと言われ始め、ドイツの一部の地域などは、FFPマスク着用が義務化されていることから、フランスでもFFPマスク(よりフィルタリング効果の高いマスク)着用が必要なのではないかという意見が出始めています。

 最初にロックダウンが解除になる際には、「マスクが推奨される」という義務ではない状況にも関わらず、ほとんどの市町村から、ロックダウンに間に合うように、国民にマスクが配布されました。

 しかし、今回のFFPマスクは、サージカルマスクや洗って何度も使える布マスクとは違い、価格もサージカルマスクの何倍もかかります。毎日、使うものゆえ、それを抱えるのが国であろうと国民であろうと負担は大きくなります。

 また、医療従事者を優先とするのは、必須ですが、FFPマスクの供給が間に合うとも思えず、当初のマスク問題のように、政府は、このFFPマスクについて、「現在のフランスの感染状態では、一般人には、必要ない。」と発表しています。

 まるで、あの時と同じではないか・・と私は、思ってしまいます。した方が良いマスクを供給できないことから(補償も含めて)、「必要ない」と言うところが・・。

 義務化する以上、何らかの補償を要求するのは、フランス人の最も得意とするところ、コロナウィルス感染対策のために国による規制で営業ができない店舗等に対しては、前年度の実績に対するパーセンテージで補償が支払われています。

 前回のマスク義務化の前には、ロックダウン解除の段階で、一応、マスクが配布されました。思えば、これも補償の一部でした。

 FFPマスク義務化には、そのマスク配布は、補償という面でも、かなりハードルが高いのです。しかし、義務化に伴う補償をフランス人は要求します。

 この危うい感染状況の中で、フランスでは、完全なロックダウンにならない限り、何らかの抗議をするデモやストライキをする権利が常に認められており、また、今週は、RER(イル・ド・フランス圏急行鉄道網)の交通機関のストライキが予定されています。

 この状況の中、ストライキによって起こる交通機関の更なる混雑状況をわざわざ起こすストライキが認められていることは、マスクをサージカルマスクにするかFFPマスクにするか以前のフランスの悪循環の大きな要因の一つです。

 毎週のように土曜日に行われるデモもまた同じです。

 人の行動を大きく制限しながら、主張する権利は決して侵害しないのがフランスです。

 今は、特にコロナ禍ゆえ、そんな悪循環が際立って見えますが、思えば、通常時もこのフランス人の権利を主張するデモやストライキは、常に大きな混乱をもたらしているのです。

 それでも、フランス人は、この権利の主張を誇りに思い、フランスのフランスたる重要な一面であると大切にしているのです。

 

<関連>

「コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_19.html

「マスク着用を注意したバスの運転手が暴行を受けた末に脳死状態 フランスの治安」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_8.html

 

 

 

 













2021年1月20日水曜日

ハードルが高いコロナ禍の日本への一時帰国

  


 

 ここのところ、頻繁に日本のJALやANAなどの日本の航空会社から、日本への一時帰国に関する案内のメールが頻繁に入ります。航空業界の業績が著しく悪化しているため、少しでも巻き返しのために必死なのだろうな・・と思いながら、メールを覗いてみました。

 私は、日本へ一時帰国をする際に特に航空会社を決めて使っているわけでもないので、この20年以上の間に直行便、経由便と様々な航空会社を使ってきました。

 しかし、ここ数年は、日本から帰ってくる時は特に、あまりの荷物の多さに(99%食料品)、直行便を使うようになって、しかもエールフランスは、ストライキで何度か、急に帰りの便が勝手に変更されたりして、大変な思いをしたために、すっかり懲りて、必然的にANAかJALを利用することが多くなっていました。

 今は、日本へ行くつもりはないのですが、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールを見て、いかに日本への一時帰国のハードルが高いかを再確認しました。

 まず、日本入国時には、72時間以内の新型コロナウィルス検査陰性の証明書を含む、コロナウィルス感染対策に関する誓約書を提出しなければならず、誓約書には、日本到着後の公共交通機関を使用しないこと、14日間の隔離生活を行うこと、スマホに厚生労働省が指定する接触確認アプリを導入し、14日間アプリを利用することなどが記載されています。

 自宅がある場合は、まだ良いとしても、直行便のない地域に住んでいる人などは、日本国内線は14日間利用できないことから、宿泊施設を利用せざるをえないことになります。

 そこで、「ご帰国あんしんサービス」の「ホテル」の蘭を見てみると、まず、「14日間の待機要請」を満たすためには、15泊16日の宿泊手配が必要となります・・」という説明がど〜んと出てきます。

 ただ隔離のための「15泊の宿泊施設の予約」、これは、なかなか高いハードルです。

 だいたい、日本に滞在したい日数プラス2週間の時間を取らなければならないだけでも、なかなか大変なことです。一ヶ月、二ヶ月と滞在するならばともかく、せいぜい数週間の滞在のために2週間の隔離は、あまりに勿体ないことです。

 また、自宅があっても、迎えに来てくれる家族がいない場合は、帰国者用ハイヤー送迎サービスなるものがあるようなのですが、その料金表を見てビックリ!羽田から都内で安いところでも、16,800円、羽田から遠くなれば、2万円以上です。

 日本へ行っても2週間は、誰にも会えず、どこにも出かけられず、ただ引きこもって2週間過ごし、しかも宿泊施設に滞在となれば、大変な費用がかかります。家族数人でなど、とんでもない話です。

 もしも、緊急の用事ができて、日本に行こうとしても、14日間、どこにも外出できず、誰にも会えないのであれば、緊急の意味がありません。

 例えば、もし、親が危篤であっても、たとえ、訃報があったとしても、日本へ行くのはとても難しい話です。

 私は、すでに両親ともに他界してしまっていますが、母の時には、危篤の際に知らせがあって、翌日の飛行機をとって、ギリギリ最後に母に会うことができました。それこそ、成田(その頃は羽田便がなかった)から病院にタクシーで直行でした。

 父の時は、こちらに知らされたのは、訃報でしたが、それでも、なんとか火葬は待って欲しいと親戚に電話で頼んで、慌てて帰り、葬儀には出席できました。その時も「やっぱり、間に合わなかった・・」という気持ちはありましたが、今だったら、それさえも、きっと叶いません。

 海外に住んでいる人は、親の死に目に会えないこともあるかもしれないと誰もが、思っていると思いますが、今は、とりわけ難しそうです。

 私の親戚、叔父・叔母などは、軒並み高齢者ばかり、この状況では、日本に帰っても気安く彼らに会うこともできません。

 このコロナ禍中、なんとか、みんなが無事に生き延びて、また日本で会えるように、いつも言っている「元気でいてね!」という言葉は、いつにも増して切実です。

 せっかく、JALやANAが送ってくれた、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールは、残念ながら、「やっぱり、当分、日本へは行けない」ことを再確認をすることになりました。


<関連>

「海外在住者が母を看取る時」

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「死ぬ覚悟と死なせる覚悟」

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「日本にいる親の介護問題」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_17.html

「海外生活はお金がかかる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_26.html


2021年1月19日火曜日

学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加

  



 先週の初めから、週末にかけて、3クラスにまたがって、27人の感染者(生徒22人、教師5人)が確認されていたオワーズ県(パリから30㎞ほどの地域)の小学校が18日から26日までの8日間、学校を閉鎖することを発表しました。

 すでに先週から感染が確認されていたために、週の初めに1学級が閉鎖され、キャンティーン(給食)が閉鎖され、週の終わりにさらにもう1学級閉鎖され、それでも次の対策に踏み切らない学校に対して、保護者からは、学校閉鎖の要請が出されており、週明けには、290人の生徒のうち、登校したのは、20人のみとなっていました。

 そもそも5000人しかいない村で、1つの学校での27人の感染は大きなものでしたが、できる限り学校は閉鎖しないという政府の方針や学校閉鎖に踏み切る明確な規則がないことから、学校を閉鎖する決定が保護者が誘導する異例な形となりました。

 年が明けてからというもの、フランスでは、わずか10日間で、10歳未満の陽性率が3%から10%と3倍以上、増加しており、学校の衛生環境やキャンティーン(給食)施設の衛生対策の改善が求められています。

 この年少者の感染の急激な増加の原因は、より年少者に感染が広がりやすいというイギリス変異種の性質が疑われており、この変異種がフランス国内に想像以上に拡大していることが懸念されています。

 政府は、フランスにおけるイギリス変異種は、陽性検査結果の1%と発表していますが、この年少者の急激な感染拡大から、実際には、それ以上に存在している可能性が指摘されています。

 あくまでも、学校閉鎖は、最終的な措置としていたフランス政府ですが、学校閉鎖に関する規定を学級内3人以上の陽性者がでた場合には、学級閉鎖、同学年で複数のクラスにまたがった場合は学校閉鎖を考えるといった基準(今回の場合は、この基準)が必要となってきました。

 現在、フランスでは、ワクチン接種は、リスクの高い高齢者を中心に進められていますが、それを嘲笑うかのような年少者の感染拡大に、ため息が出てしまいます。

 まさに、最も今、恐れられているイギリス変異種は、細胞に直に侵入するために感染力が強いと言われており、ドイツなどは、2月中旬までのロックダウン延長や在宅勤務の厳格化に加えて、特定地域での高性能FFPマスクの着用義務を検討しています。

 フランスでも、一般に広まっているサージカルマスクや布マスクでは、充分に感染が防げないのではないか?という声が上がり始めています。

 クリスマス、年末年始から2週間以上が経過した今、急激な感染爆発は起こっていないものの、1日の新規感染者数が2万人強という高い状態を徐々に増加しながら保っている(集中治療室の患者は2800人突破、1日の死者数は11月末以来の400人突破を記録)フランスは、まだまだ、依然として爆弾を抱えている状態なのです。


<関連>

「世界中が警戒しているイギリス変異種  日本変異種の出現も・・」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

 




2021年1月18日月曜日

コロナウィルスワクチンに対する世界と日本の温度差

  



 フランスでは、1月18日(月)から75歳以上の希望者には、コロナウィルスのワクチン接種が可能になりました。一週間ほど前から始まった電話やネットでのワクチン接種の予約は、アクセスするだけでも大変なようで、あっという間に来月末までいっぱいになっています。

 ワクチン接種に関しては、ヨーロッパで大幅な遅れをとったことが年明けに発覚して以来、フランス政府は、大バッシングを受け、政府は当初のワクチン接種のスケジュールを見直し、この18日からの75歳以上へのワクチン接種が始まることになったのです。

 フランスでワクチン接種が思うように進まなかったのは、ワクチンの保管に必要な特別な温度を保つ冷凍庫の確保やワクチン接種場所の設置などの段取りの悪さはもちろんのこと、ワクチン接種を高齢者施設の居住者を優先にしたことから同意書を確保することが想像以上に手間取ったことや、ワクチンに対して慎重かつ懐疑的な国民性のためでもあったと言われています。

 しかし、年末から多くの国でワクチン接種が始まり、周囲のヨーロッパ諸国とのあまりのワクチン接種の進行状況の違いが露見するとフランスは、一気に危機感を強めて、ワクチン接種の強化対策に乗り出したのです。

 ワクチン接種に関しては、現在のところ、イスラエルが圧倒的に世界一を独走しており、1日、15万人がワクチン接種を受けており、100人あたりの接種率は11.55%に達しています。(それに次ぐイギリスが1.47%です)

 イスラエルは、パンデミックの初期段階から、ワクチン確保の交渉を始めており、ファイザー・ビオンテックのワクチンを確保し、現在、ファイザーからのワクチンの供給が滞っているヨーロッパと比べても安定した供給を確保しています。

 多くの国でのワクチン接種が進み始め、実際の効果は目に見えない状況ではあるにしろ、特に際立った副作用もあまり見られていない(全くないわけではない)ことから、ワクチン接種に対して、当初は、懐疑的であったフランス国民もワクチンを受けたいと言っている人が56%にまで上昇し(+14%)、ワクチン接種を希望する人がアンチワクチン論者を上回り、65歳以上に限れば、77%がワクチン接種を希望するように変化してきています。

 ロックダウン寸前の多くの制限を強いられている生活に嫌気がさしてきていることも理由の一つであると思いますし、また、通常の日常生活を取り戻すためのワクチンパスポートの計画も水面下では、ヨーロッパ各国で進んでいると言われています。

 そんな中、日本人の私としては、気になるのは、日本のワクチン接種の状況です。

 日本は、あくまでも慎重な態度をとっているのか、あまりワクチン接種に関する進行状況は聞こえてきません。

 日本も感染状況が悪化し、緊急事態宣言が発令されたりしているとはいえ、やはり、ヨーロッパでの感染状況は日本とは桁違いであることから、ヨーロッパは、ワクチンによって日常生活を取り戻したい意向が強く、国の方針も違うのかもしれません。

 とはいえ、ヨーロッパでこれほど躍起になり、多くの国がワクチン接種を進めている中、日本では、2月の下旬からと、のんびり構えていることを私はとても不思議に感じています。

 日本は、これに加えて、絶望的とはいえ、オリンピック開催問題も抱えているのに、ワクチンを急がないのは、やはり、オリンピックは諦めているのかとも思いきや、18日の国会で、菅首相は、「人類が新型コロナに打ち勝った証」として、「世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するために準備を進める」と語ったようで、どうにもこのチグハグな感じに不安を覚えるのです。


<関連>

「今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_8.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html


















2021年1月17日日曜日

雪でもコロナでもデモはやる でも、18時以降の外出禁止を守るために急ぐフランス人

  

サクレクール寺院の前でスキーをする人まで登場


 土曜日の朝、私が起きるのを待ち構えていた猫のポニョが、いつもは、食事の時以外は、気ままに過ごしているのに、ピッタリと私にくっついて離れず、ずっと私に寄り添ってくれていたので、「どうしたのかな?」と思っていました。

 気がついてみたら、窓の外は、結構な量の雪が舞っていて、「初雪だ〜!」と、私は、のんびり構えていました。

 パリは、寒い所ではありますが、雪が降ることはあまりなく、降ってもすぐにやんでしまうので、滅多に雪が積もることもありません。

 ところが、今回は、すぐに雪がやむことはなく、昼過ぎになる頃には、雪はうっすらと積もり、一面が雪景色になるくらいになっていました。

 雪といえば、子供ばかりではなく、どこか華やいだ気分も湧いてくるのですが、パリでは珍しい雪にサクレクール寺院の前の丘には、スキーをする人まで現れました。

 フランスの1日の新規感染者は、ここのところ、スタンダードに2万人を超える状態になっており、この土曜日から、夜間外出禁止がフランス全土で18時に前倒しになるという規制が強化される状態でありながら、日中のデモは許可されているという不思議な状態なのです。

 雪の中にも関わらず、いつもほどの勢いではありませんでしたが、バスティーユ、レピュブリック広場で、結構な人数がデモに参加。雪でもコロナでもデモは決行です。

 ここまで来ると、あくまでも抗議の姿勢を崩さない意志の貫き方は、ある意味、スゴいなと感心してしまいます。

 それでも、土曜日は、18時以降夜間外出禁止の初日。どの程度、守られるのか?と半信半疑でもありましたが、警察の警戒も厳しく、また店舗も18時には、閉店、消灯、お客さんの方も18時までに家に帰らなければならないというリズムに慣れておらず、普段、時間を守らないことが当たり前のフランス人が時間を守ろうと急いで慌てている様子から、考えてみれば、時間を守るという点においてだけでも、フランス人にとっては、大変なことなのだろうな・・と思ったりもしました。

 これまでも20時以降は外出禁止という規則はあったのですが、夜のこの時間の2時間の前倒しは、かなり厳しいものです。ましてや土曜日という多くの人が休日の一日、来週、仕事や学校が始まってからのこの規制は、やはり、かなり厳しいものになるに違いありません。

 しかし、やはり、罰金付きの規則というのは、スゴいもので、18時を過ぎたパリの街は、ほぼ夜中のような景色。1日、パリには珍しい雪やデモで高揚した街はシンとして、寒いピンとした空気も手伝ってか、思わず、昨年の2月のロックダウン時を思い出してしまいました。

 そこで、ビクビクしてばかりでは終わらないフランス人、さっそく、我が家のアパートの上の階では、どうやら、ガヤガヤと人が集まっている気配。

 全く懲りない、どうしても群れたいこの人たち、罰金を払わずに、なんとか人と集うことを決して諦めはしないのです。


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「決死のお迎えで、ある日、気付いたこと・・フランス人は、走らない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_58.html

2021年1月16日土曜日

フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙


Coronavirus : "Il va falloir encore tenir", Macron répond à une étudiante en détresse


 ストラスブール(フランス北東部・グラン・テスト圏の首府)のシアンスポ(Sciences-Po)(行政系の特別高等教育機関・エリート養成校)の19歳の学生がマクロン大統領宛てに送った「学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙」がフェイスブックに公開され、彼女の意見に賛同する声が多くの学生によって、拡散されたことから、マクロン大統領が彼女に返答する形で彼女宛てに出した手紙とともに、大学以上の高等教育機関の授業体制について、最注目されています。

 多くの教育機関、特に、保育園、幼稚園、小・中学校、高校に関しては、現在、フランス全土が18時以降の夜間外出禁止や様々な生活制限が強いられることになっても、余程の緊急事態にならない限り、学校は閉鎖しない(高校に関しては、一部制限あり)とする態度を貫いているフランス政府も、大学以上の高等教育機関については、ほぼリモートワークが続いているケースが多く、登校が許されない状態が続いています。

 彼女は、大統領宛ての手紙の中で、大学から締め出された形の現在の状況から、「私は生きながら、死んでいるような気がする」「希望がない、自分の人生が無いような気がする」「多くの学生が社会から隔絶された状況から忘れられている」「このコロナウィルス感染の危機、経済危機から、孤独に陥り、精神的にも追い詰められ、大学教育を諦め、中退してしまう人もいる」などを綴り、「授業に戻ることは、多くの学生にとって有益なこと」と対面授業を求める高等教育機関の授業体制の見直しを求めています。

 このパンデミックの中、苦しい環境は、全ての人に共通するものではありますが、人生の重大局面を迎えている将来的に繋がる大切な教育を受け、将来を見据えるタイミングに局面している年頃の学生にとっての苦悩は、計り知れないものであると思われます。

 実際に我が家にも同じ年頃の娘がいるだけに、他人事ではなく、先日、普段は、あまり感情を激さない彼女がこのパンデミックによる若者が被っている困難を家で叫んでいたことを思いました。

 今の時代を生きている人には、それぞれが大なり小なり人生が狂ってしまった人も多いと思いますが、我が家の娘もまた、イギリスの大学の研究室でスタージュするはずだった予定は、全てリモートになり、日本への留学も断念(しかもドタキャン)(一応、延期ということになっている)し、代わりに思っても見なかった会社でスタージュをすることになり(それでもスタージュ先が見つかっただけマシ、多くの人が失業している中、スタージュの機会を得られない学生も多い)、今後の予定も、いくつもの可能性を探りながらも、先が見えない状態です。


 シアンスポの19歳の学生がSNSで社会に呼びかけた訴えにより、マクロン大統領が彼女に宛てて書いた手紙も公開されています。

 マクロン大統領は、「親愛なるハイディ、私は、あなたの怒りがわかります。2020年に19歳という年齢を迎えていることは、どれだけ困難に直面しているか、私は、とても深く考えています。このパンデミックはあなた方から多くのものを奪ってしまっていることも理解しています。それでも、率直に言って、私たちは、まだ頑張らなくてはなりません。これは、単純な公式には、当てはまりません。私は、あなたにもう一度、数週間、努力することをお願いします。あなたを駆り立てる勇気を示すために頑張ってください」という内容の手紙を送っています。

 私は、この19歳の女の子が自分の怒りを大統領宛の手紙を綴り、SNSで世論に訴えかけ、それが拡散されてマスコミを巻き込んで、ついには、大統領からの手紙を受け取ったことにちょっと感心しています。実際に、高等教育機関の授業体制が即座に変更されるかは疑問ではありますが、再検討されるきっかけには、なったのではないかと思っています。

 この深刻な感染状況の中、デモなどという手段ではなく、手紙やSNSを利用した彼女の抗議の仕方は、いかにも現代に生きる若者の賢明なものであったと思います。彼女が起こしたこのようなアクトに、「生きながら死んでいる」と綴っている彼女が、少なくとも困難の中でも賢明に生きていることを感じるのです。

 そんな学生をよそに、土曜日は、また、パリ市内及び、フランス全土で総合治安法案に対する抗議デモをはじめ複数のデモが実施される予定になっています。

 これ以上、デモなどで、感染をさらに拡大し、若者の将来を奪うことを許せない気持ちでいます。


<関連>

「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_20.html

 












2021年1月15日金曜日

フランス全土・夜間外出禁止18時へ 入国制限も強化へ

    


 今週の土曜日(1月16日)から、フランスの18時以降の夜間外出禁止がフランス全土に広がることになりました。18時門限となれば、通勤して仕事をしている人にとっては、なかなか厳しい制限となります。

 この制限は、少なくとも15日間続けられるということです。

 子供を預けて仕事をしている人(フランスでは、ほとんどの人がそうなのですが・・)にとっては、仕事を終えて、子供を迎えに行って、18時までに家に帰るというのは、なかなか大変なことです。

 とはいえ、18時に子供を迎えに行けば、家に着くのも18時を過ぎてしまうわけですが、それに関しては、許可証を携帯すれば許可されることになっています。

 今回のコロナウィルス対策強化に関しては、店舗の営業も18時までということで、日曜日営業に踏み切った店舗などは、この18時以降の外出禁止が全土に渡ることを見越しての対応であったと思われます。

 もっとも、フランスは、共働きが多いので、日用品の買い物は、土曜日にまとめてしている人が多いので、土曜日の混雑具合が増すくらいでしょうか? しかも、日曜にまで買い物ができるとなれば、それも土日に分散されることになるので、買い物問題は、ハードルは低いかもしれません。

 それでも、幼稚園や学校は、閉鎖することはありませんが、学校内、室内でのスポーツ等は禁止され、キャンティーンは、衛生管理、環境をさらに工夫、強化し、お弁当を持ってくることも推奨されるようになるとか・・高校に関しては、クラスを半分の数に規制する条件で開校、学校内では、週30万件のPCR検査を強化することを発表しています。

 また、フランス入国に関しても入国条件を大幅に強化し、EU圏外からの入国者については、入国時に72時間以内の検査による陰性を提示することが必要となり、入国後も1週間の隔離が求められるようになります。

 日本などに比べると、「まだやってなかったんかい!」と思われると同時にEU圏内からの入国者にこれを適用しないのは、ヨーロッパ中が感染の渦の中にいることを考えると、どうにも納得がいかないことでもあります。

 また、多くのことが禁止されている中、高齢者施設への面会が「衛生管理に充分に気を配った上で」という条件は付くものの許可されていることや、18時以降に許可されることの中に動物の散歩という項目があることも(人間の散歩はダメでも動物の散歩はOK)少々、不思議というか、フランスらしいところでもあります。

 特に、最もリスクが高い高齢者施設を最優先にワクチン接種を進めているとはいえ、まだ、充分にワクチン接種が進んでいない中、外部からの人との接触は、避けるべきではないかと思うのです。実際に、再び、高齢者施設でのクラスターも起こり始めているのです。

 高齢者と動物には優しいフランスです。

 18時以降の外出禁止となれば、かなり厳しい生活になりますが、感染症専門家の中には、これでは不十分としている人も少なくありません。

 また、逆に18時以降の外出禁止は、17時から18時の時間帯に余計に混雑状態になると警告を発している人もいます。

 しかし、完全なロックダウンになることを思えば、まだまだ全然、威圧感は違います。

 とはいえ、夜間外出禁止が全国に広まるには、それなりの感染悪化の状況があるわけで、とりわけ、イギリス変異種の広がりは、脅威で、これは、従来のウィルスよりも30%から70%は感染力が強いとされ、潜在的に子供に対する感染力も強く、現在、フランスでは、100件の感染のうち、1〜1.5件がイギリス変異種によるものであり、毎日200件から300件の感染が確認されていることを思えば、これが今まで以上に広がる危険性は充分に考えられます。

 現在の段階で、少しでも感染を抑えるためになんらかの措置を取ることは、やはり必須。

 なんとか、この18時以降の夜間外出禁止で、感染状態が好転し、完全なロックダウン状態だけは、避けられますように・・。

 しかし、ドイツが「少なくとも4月までのロックダウン」を発表していることを考えれば、淡い期待なのかもしれません。


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「夜間外出禁止に対応する営業時間変更から日曜営業するフランス」

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「フランス人の男性のお買い物」

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「フランス人のダンナはよく働く」

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2021年1月14日木曜日

世界中が警戒しているイギリス変異種   

  


 

 昨年の12月に入った頃からの感染拡大にヨーロッパの多くの国は、非常に警戒し、ロックダウンを始めとした非常に厳しい制限をとっている国が多いのです。12月の段階では、まさかのドイツまでもが感染状況が深刻化し、学校閉鎖や店舗の閉鎖など、クリスマス前にも関わらず、かなり厳しい体制をとってきました。

 その後、イギリスで変異種が検出され、変異種の感染力の速さ、強力さが発表され、実際にイギリスの感染状況も日に日に新規感染者数、重症化するケースの多さ、死亡者数などは、記録を更新し続け、一ヶ月間に4倍以上も膨れ上がってしまったイギリスの医療崩壊の様子がフランスでも毎日のように報道されています。

 フランスでは、2度目の感染拡大のピークを昨年10月に驚異的な数字を記録して以来、10月末からの約1ヶ月間のロックダウンにより、1日の新規感染者数が6万人から1万人近くまでに減少したこともあり、(他のヨーロッパ諸国とは、感染の波の時期がずれている)、充分に危険な状況にも関わらず、どこか余裕で、他国の厳しい制限について語っている奇妙な状況が続いています。

 とはいえ、フランスの12月初旬からのロックダウンの緩和以来、1万人近くまで減少した1日の感染者数は、現在は、2万人を超えています。フランスの感染者の増加は、比較的緩やかではあるものの、結果的に数字から見れば、1カ月間で倍以上に膨れ上がっているのです。

 現在、多くの国が警戒しているのは、元来のコロナウィルス感染はもちろんのこと、イギリスの変異種の威力に警戒している状況が見て取れます。

 イギリスからの入国禁止は、もちろんのこと、イギリスの変異種の特徴の一つである子供の感染率の高さから、イギリスはもちろんのこと、デンマーク、オーストリアー、ドイツ、オランダなどの国は、学校を閉鎖しています。

 フランスでは、あくまで学校閉鎖に踏み切るのは、最終段階としており、現在の制限は、夜間外出禁止、レストラン、映画館、劇場、スポーツジム等の営業停止で感染の悪化している25カ所の地域に関しては、夜間外出禁止が20時から、18時に前倒しになる程度で、他国のようなより厳しい制限には至っていません。

 しかし、フランスの状況は、ある程度、緩やかな上昇とはいえ、確実に悪化していることに変わりはなく、今後、フランス全土で夜間外出禁止が18時になるとか、週末だけロックダウンになるとか、色々、噂が飛び交っています。

 現在、公になっている変異種といえば、イギリスでの危機的状況から、圧倒的にイギリスの変異種が注目されていますが、フランスで変異種についての話題になれば、南アフリカの変異種に加えて、最近は日本の変異種も必ず話題に上がります。

 日本での変異種の検出は、ブラジルからの旅行者から検出されたとのことなので、その変異種を確認し、WHOなどに日本が報告したことから、日本変異種という呼ばれ方をしてしまっていますが、その日本変異種については、世界が注目しているにも関わらず、日本では、大々的には、報道されていない(騒がれていない)ことが、なんだか少し妙な気もします。

 しかし、後に、日本変異種については、イギリス変異種、南アフリカ変異種、ブラジル変異種にかき消されつつあります。

 いずれにせよ、感染拡大の波を10月という他のヨーロッパ諸国とはずれた時期に一度迎えてロックダウンし、一度は、波の高さを抑えたことから、現在のフランスでは、他のヨーロッパ諸国とは一線を画し、どこか余裕の対応を続けていることが、今後、かえって悲惨な状況を生むのではないかと心配しています。

 もともとフランスは、愛国心からか?根拠のないことに関しても、どこか他国を下に見る傾向があり、そんな感じが現在のコロナウィルス対応に現れているような気がします。

 今のフランスは、とても、そんな余裕をこいている場合じゃないんですけどね・・。


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「他国の感染悪化を余裕で語るフランスに唖然とする」

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2021年1月13日水曜日

夜間外出禁止に対応する営業時間変更から日曜営業するフランス

     

お客様のために2月7日から毎週日曜日午前中営業しますというお知らせ


 コロナウィルス感染対策の一つとして、フランスでは、現在、夜間外出禁止(20時以降禁止・25カ所の地域では、18時以降禁止)の措置が取られています。この夜間外出禁止は、12月のロックダウンの段階的な解除が始まった時点で再開されましたが、夜間外出禁止ということは、事実上、営業時間の短縮ということなのです。

 この夜間外出禁止が開始された直後に、このスーパーマーケットなどは、開店時間を通常の9時から8時に前倒しにしたのには、ビックリしました。さすがのフランスもノエル前のかきいれ時には、頑張るんだな・・度重なるロックダウンにやはり必死に取り返しにかかっているな・・などと思っていたのです。

  

20時に閉店するため、8時開店にしますというお知らせ

 しかし、これは、ノエル前だけでなく、年が明けた現在も、夜間外出禁止の制限が続いているため、開店時間前倒し営業は続いています。

 そして、現在は、イル・ド・フランス(パリ近郊地域)は、夜間外出制限の時間は、20時のままですが、18時に前倒しになっている地域は、どんどん拡大しており、全国的に18時になるのでは・・?という話もちらほら出てきています。

 そんな状況に対応してか、日曜日は休みだった店舗が日曜営業への扉を開き始めました。

 私がフランスに来て、とても不便だと思ったことの一つに日曜・祭日は、基本的にお店はお休みで、買い物に行けないということでした。今では、慣れましたが、多くの人がお休みで買い物に行きやすい日になぜ?営業しないのか?すごく疑問でした。

 パリ市内には、通りによって、日曜日の営業許可が下りる場所と許可が下りない場所があり、場所によっては、日曜営業が不可能な場所もあります。

 また、大規模な店舗などは、組合が強く、従業員が日曜日に働くことを受け入れない会社もありますし、それなら、失業者も多いことだし、日曜日だけ働く人を雇っても良さそうなものですが、フランスの組合は、「自分たちの領域が侵される」という理由で、これさえも受け入れないのが現状です。

 フランスの労働組合の強さは、驚異的です。

 日曜日の営業許可を持っている店舗は、日曜日に出勤する従業員には、ドゥーブル・ペイエ(ダブルペイ)と言って、日曜出勤には、日割り計算で倍近い賃金を支払わなければなりません。(契約時にこのダブルペイはなし(アルバイトなど)としている会社もあり)

 クリスマス前の時期やバーゲンの最初の週だけは日曜営業をしているところもありますが、そんなわけで、フランスの日曜営業は、なかなか広まらないのです。

 しかし、今回は、多分、コロナウィルス感染対策の一環である事実上の営業時間短縮のための特別対策と思われますが、なんとか、これが定着してはもらえないものか?と密かに思っています。

 とはいえ、このスーパーマーケットの日曜営業は午前中だけ、コロナ以前から日曜の午前中だけは営業しているというスーパーマーケットは、ちらほらあったので、その仲間入りをしただけですが、カーフールといえば、フランスでは最大手のスーパーマーケット。他店に与える影響は少なくないと思っています。

 年中無休、深夜営業も珍しくないコンビニのたくさんある日本と比べたら、あまりに次元が違う話で、意味不明かもしれませんが、フランスは、こんな国なのです。


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「フランスの雇用問題」

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「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

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2021年1月12日火曜日

フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由

  


 コロナウィルスのワクチン接種に関して、始動時からつまずいて、同時期に開始したヨーロッパ諸国からも大きく遅れをとったフランス。

 フランス政府は大バッシングを受け、巻き返しに躍起になり、ワクチン接種の拡大を今年のコロナウィルス対策の最優先事項に据えています。

 高齢者施設の居住者を最優先としたことが、(家族の同意書等が必要なことから)想像以上にワクチン接種の拡大にブレーキをかけていたことから、フランス政府は、ワクチン接種を受けることができる人の枠を50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーまでに拡大、来週からは、高齢者施設居住者以外の75歳以上の人もワクチン接種が可能になります。

 このワクチン接種優先範囲の拡大により、昨日、フランスは、ようやく10万人にワクチンを接種したこと、月末までには、100万人を達成することを発表しました。とはいえ、先を行くヨーロッパ諸国も前進を続け、ドイツなどは、1月末までに400万人に対しての投与を予定しており、フランスの数字は、遥かに及びません。

 そもそもフランスは、ファションなどの流行の発信地であるようなイメージがあるものの、実のところは、とても保守的な人々で、新しいものになかなか手を出さない傾向があります。

 食べ物などでも、次から次へと新製品が出回る日本と違って、新しいものは、なかなか登場せず、たまに出てきても定着しづらく、また、国民があまりそれを求めていないところもあります。

 全く、いつもいつも同じものをずっと食べていて、よく飽きないな・・と思うのですが、そこがフランス人のプライドとも言える「フランスのものが一番!」という意識が新しい製品、海外からの異なる文化の食べ物が進出しにくい所以でもあります。

 そんな中、フランスで日本食ブームが到来し、特にお寿司がほぼ市民権を得たのは凄いことです。

 ワクチンに関しては、昨年、急に発生した新型コロナウィルス。そんなウィルスに有効であるとされ、治験は済んでいるとはいえ、まだまだ登場して数ヶ月しか経っていない薬に対する懐疑心の強さは、特にフランス人ならば、不思議なことではありません。

 大体、考えて見れば、マスクでさえ、その着用義務化が定着するには、時間がかかったフランスです。未だにマスク着用義務に反抗している人も少なくありません。未だに、公共交通機関等でマスクを着用しないと言い張る乗客と乗務員の間にいざこざが起こったり、マスク義務化反対のデモが起こったりするのです。

 現在は、ワクチン接種は義務化ではなく、そこまで広範囲に拡大していないので、波紋を呼ぶほどの騒動には至っていませんが、これから、広範囲に拡大するとともに、ワクチン接種に関する論争は、激しくなることが考えられます。

 そもそも高齢者施設でのワクチン接種がなかなか思うように進まなかったのも、認知症等で本人が同意書にサインできないケースに関わってくる家族の反対が想像以上に多かったためで、ネット上でもワクチンの安全性を説明するサイトと同時にワクチンの危険性を説明するサイトも多く出回っており、アンチワクチン波の意見や動向は、テレビなどでは報道されませんが、この種のサイトは特に若者を中心に広まっています。

 当初から根強く広まっている「若者安全神話」は、このワクチン接種の拡大にも災いしているようです。しかし、この「若者安全神話」が災いして、絶対的に感染を拡大させているのは、若者であることも事実なのです。

 ただ、他国のワクチン接種が拡大していく様子を見て、ワクチンを受けないと言っていた人のパーセンテージが60%から50%に減少しているという話もあり、今後、他国の様子を見て、また、生活を制限される不自由な生活が長引くに連れて、「やっぱりワクチンを受ける・・」と、世論も変化していく可能性もあります。

 どちらにしても、まだ、大多数の人にワクチン接種が可能ではない状態。幸か不幸か、ワクチン接種に関しては、もう少し考える猶予がありそうです。


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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」

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2021年1月11日月曜日

日本の2度目の緊急事態宣言とフランスの2度目のロックダウンの共通する緩さ


 日本の感染悪化が進み始めて、1都3県にわたる2度目の緊急事態宣言が発令されて、緊迫している状況の日本の報道をフランスから見ていました。正直、実際には、フランスの方がよほど深刻な状態なのに、何だか日本は、フランスよりもずっと深刻なような感じを受けていました。

 私が知ることができる日本の状況は、日本の報道やツイッターなどで見る情報だけなので、実際の状況とは乖離があるのかもしれませんが、どうやら、今回の緊急事態宣言は、前回のものよりもなぜか緩いという一面があるようです。

 国民が一回目の緊急事態宣言の経験から、この程度なら大丈夫というような、ある程度、その対処法を身につけているために、最初の緊急事態宣言よりもずっと人出が多く、これで大丈夫なのだろうかという意見も少なくないとか・・。

 また、学校なども閉鎖されないことから、やはり、よりこれまでの生活に近い感覚にもなるだろうし、何より、長引く感染回避への対応から経済が逼迫して、生活自体にもどこか必死になっていることから外に出ざるを得ないような状況もあいまっているのかもしれません。

 そんな様子を見て、これは、フランスの2回目のロックダウンの時と似ているな・・(きっと国民の緊迫感や危機感のレベルは桁違いに違うとは思いますが・・)と思ったのです。

 フランスの2回目のロックダウンも10月末には新規感染者数が6万人強、一時は7万人に迫る勢いで、もはや2度目のロックダウンも仕方ないだろうと多くの国民が感じている中での再度のロックダウンでした。

 しかし、いざ、2度目のロックダウンが始まってみると、前回のロックダウンとは、制限の内容も異なり、学校や工場などの職場は閉鎖されることもなく、リモートワークは可能な限り、営業が許可されるお店の範囲も通信機器や家電などにも広げられたこともあり、外出許可証さえ持っていれば、外出は制限時間内、距離も制限範囲内という縛りはありましたが、街中は、何だかいつもとは、変わりないような人出に「これがロックダウンか?」「こんなんで大丈夫なんだろうか?」と不安に感じたのを覚えています。

 それでも日本の緊急事態宣言と違って、一回目のロックダウンより緩くなったとはいえ、大多数の店舗やレストラン、美術館、劇場、映画館は営業時間短縮などではなく営業停止でしたから、その違いは大きいと思いますが、とにかく日中の人出などは、クリスマスを控えていたということもあるのでしょうが、街中は、結構な人出でした。

 これには、国民がこのロックダウンという状況に慣れて、上手く対処する方法を良くも悪くも心得てしまったからで、長く続くロックダウン、ロックダウン解除、そして再びロックダウンという緊張状態とそれぞれに順応していっていることが原因だと思います。

 そもそも人間の極度の緊張状態というものもそうそう長く続くものでもなく、ある程度の緩さは仕方ないのかもしれません。

 ただ、日本の場合は、きっとフランス以上に世間の規範も厳しく、長引くコロナウィルス感染に再び感染悪化のためのロックダウンとはいえ、国の決めた緊急事態宣言以前から、厳しい生活を続け、仕事の上でもプレッシャーも大きく、そこそこの対応を取るしかないのかもしれません。

 何より、日本の営業時間短縮などに対する政府の補償への配慮も国民の不安をさらに大きくしているような気もしています。フランスの営業停止などに対する補償も必ずしも充分とは言えませんが、フランスのロックダウンと補償は常にセットで、前年の売り上げに対するパーセンテージで支払われているので、ある程度は納得しやすいかもしれません。

 そして、ゆるゆるだと思われていた2回目のロックダウンは、約1ヶ月間で驚くほど1日の感染者が減少したので、ある程度緩くはあっても、効果はあるものだ・・とビックリしました。

 日本もこれから緊急事態宣言が拡大される見込みのようですが、緩い緊急事態宣言でも、きっと効果は現れるよ!頑張れ!日本!とそんなことを思ったのです。

 とはいえ、フランスの状況は、日本よりもずっと深刻な状況・・フランスは、下手をすると、現在の夜間外出禁止やレストラン等の営業停止だけでは済まない本格的なロックダウンになる可能性も心配されています。

 昨日、マルセイユでは、イギリスの変異種感染者が50人以上確認されたとか・・しかも、感染経路不明の場合が多く、感染率が高いと言われているだけにとても心配しています。

 また、北東部の他国との国境沿いの地域から感染拡大が広がって、夜間外出禁止前倒し16時に制限される地域も日々、拡大していることから、全く気を許せない状況が続いています。

 今回の日本の緊急事態宣言も緩いと言われながらも、何もせずにはいれない状況のはず。日本は厳しいな・・と思う反面、その厳しさが感染が拡大していると言われている現在でさえ、フランスやヨーロッパに比べては、格段に抑えられている状態なのです。

 この時点で緊急事態で対処する日本は、結局のところ、フランスとは比べものにならないほど、きっちりしているのだと思うのです。

 頑張れ!日本!


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「海外から見る日本の緊急事態宣言」

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2021年1月10日日曜日

フランスのお役所仕事のいい加減さから、娘の帰省の悲劇再び・・

  


 娘のクリスマスの帰省の際に起こった悲劇・・TGV内でスリ被害にあい、お財布を取られたことから、クリスマスイブの思っても見なかった大ハプニングに心穏やかではないクリスマスを過ごすこととなった我が家です。

 お金は大して入っていなかったものの、最も面倒な被害は、IDカードやクレジットカードをもろとも盗られたことで、すぐさま、クレジットカードは、電話でストップし、再発行をしてくれることになり、年末年始のバカンスの時期にも関わらず、10日間ほどで、新しいカードは準備ができましたという連絡が来て、彼女は、これに懲りて、もう一つの海外の銀行の口座を早々に開き、携帯がカード代わりにできる、しかも口座手数料等もかからないシステムを追加したのでした。

 ところが、ことIDカードの再発行に関しては、そう簡単には行きません。まあ、本人を証明するカードですから、本人が自分で申請に行かなければならないのは仕方がありませんが、その書類を提出するには、予約が必要で、その予約も現在、彼女は、ブルターニュでスタージュの真っ最中ゆえ、元来の住所には、住んではいないため、簡単なことではありません。

 平日には、仕事ゆえ、予約が取れるのは、かろうじて、土曜日の午前中のみ。彼女は金曜日の夜にこの予約のためにわざわざ、またTGVに乗って帰省したのでした。

 下手をすると先になればなるほど、もしかしたら、またロックダウンで身動きが取れなくなることも考えられることから、クリスマス(被害直後)から2週間後の土曜日に予約を取っていたのです。

 「どちらにしても、再発行の申請をして、また出来上がった時には、受け取りに来なくちゃいけないね・・」などと、話しながら、彼女は、土曜日の予約の時間、朝9時に市役所に出かけて行ったのでした。

 ついでに銀行に寄って、出来上がっているカードを受け取り、市役所に行くと、「あなたの予約は、今日ではないから、受け付けられない」と言われたそうで、どうやら、電話で予約した日にちが間違って記録されていたようで、先方の落ち度にも関わらず、冷たくあしらわれたそうで・・わざわざ、ブルターニュのど田舎から、そのために来ている娘は、呆気に取られ、また、忙しそうに人が押し寄せているならともかく、暇そうなのに、予約は予約だからと頑として受け付けない様子に彼女から怒りのオーラが湧き出ていたのを察したのか?「一応、書類を見せて・・」と言った担当者。

 しかし、今度は、提出した書類の写真が前回のカードと同じものでは受け付けられないと冷たく却下されて、同じカードを再発行するのになぜ同じ写真ではいけないのか?それならちゃんと書いとけよ!と、結局、また2週間後に予約を取り直して、渋々、彼女は家に帰ってきたのでした。

 そもそも市役所は、自分の住んでいる界隈にあるものなので、足を運ぶこともそれほどの負担ではないのかもしれませんが、(彼女の現在の状況は、特別で、数ヶ月のスタージュのために住所変更するまでもない)それにしても、2度手間、3度手間になることは、気分の良いものではありません。

 フランスは、何かとトラブルの多い、一度で済むはずのことが、何度もの手間がかかることも少なくないのですが、やはり、お役所などの公的機関に関しては、悉く、この種のトラブルが多いような気がします。しかも、感じ悪いことこの上ない!

 何のつもりか知りませんが、人を二度手間、三度手間に追いやることをお役所仕事に携わる人々は何の躊躇いもなく、むしろ、横柄な態度で応対します。ことに公務員、国の組織の場合は、その傾向が強いのです。だって、銀行等はフランスとて、ちゃんとできるのですから・・。

 サービスが悪くても、感じ悪くても、絶対に潰れないお役所、自分は痛くも痒くもない、こんなお役所仕事や国の息のかかった企業がフランスがいつまでも改善されない状況を作っていることをまたまた感じた1日でした。

 しかし、何かと高くつくIDカードの再発行です。

 パリから帰りのTGVでは、マスクをしないと言い張る人と鉄道職員でいざこざが起こり、TGVは、大幅に遅れたそうです。


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「思ってもみなかった娘のクリスマスイブの悲劇」

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2021年1月9日土曜日

ロンドン重大インシデント宣言 英国変異種の脅威

 


 昨年末からイギリスでコロナウィルスの変異種が検出されたことが発表されて以来、その変異種の感染率の高さと悪化の速度の速さの驚異から、多くの国がイギリスからの入国禁止等の制限を取り始めていました。

 フランスも翌日には、イギリスからの入国を禁止し、英国とは、人の流れだけでなく、物流も多いフランスは、配送のトラックがクリスマス直前に足止めを食い、多くのトラックが国境付近で何日も夜明かしを余儀なくされる異常な事態が発生しました。

 その時点では、イギリスの変異種の威力がどの程度であるのかは、具体的には、わかりにくい状況でした。

 しかし、ここ数日のイギリスの感染状況は、かなり深刻な状況になっており、感染拡大が止まらない状況のようです。

 イギリスの感染状況は、日々、記録を更新しており、昨日は、1日の死者が1,325人、新規感染者数は、68,053人を記録し、ロンドンでは、病院での医療体制が崩壊寸前であることから、「重大インシデント宣言」が発令されました。

 すでにロックダウン状態のイギリスで、さらに強い宣言が出されるのですから、その被害状況がいかばかりであるかがわかります。

 フランスでもこのイギリスからの変異種の感染者は出ているようですが、現在のところは、この変異種によるクラスターは、2件。しかし、この変異種がイギリスで発生してから、現在の感染拡大に至るまでは、2ヶ月間かかっており、フランスの場合も決して安心ができる状態ではありません。

 すでに、フランスでのこの変異種の感染者は、イギリスに行ったわけでも、イギリスから来た人に関わったわけでもない感染経路不明の人が多いのです。ということは、すでにフランスにこの変異種がかなり広まっているということなのです。

 フランスの感染状況も数字的には、新規感染者2万人前後のまま、横這い状態ではありますが、北東部を中心に悪化している地域は拡大しており、夜間外出禁止が午後6時に前倒しになる10地域が追加されています。

 フランス全体を見ても、新規感染者数の横這い状態をよそに、昨年の11月23日以来、フランス全土にわたり、感染警戒アラート値を超えてしまいました。

 この不釣り合いな数値(新規感染者が横這い状態なのに警戒アラート値が増加する状態)は、ノエル前に比べて、検査を受けている人数が圧倒的に減少していることから来ているのではないかと私は、思っています。

 12月の感染者数は、ノエル前には、家族との集まりの前になんとか安全にクリスマスを過ごそうと考えていた人たちが最大限検査を受けた結果の数値であり、現在は、一先ず、バカンスにも出かけないし、家族との集まりもないために、検査を受ける人も大幅に減っているわけで、実際の感染者が検査を受けないままに感染者にカウントされていない極めて危険な状況であるような気がしてならないのです。

 現在は、ワクチン接種も急加速して進められる中、ファイザー社やモデルナ社は、イギリスや南アフリカでの変異種に関してもワクチンの有効性は変わらないことを発表しています。

 すでに世界に蔓延しているコロナウィルス、そしてイギリスの変異種の感染拡大、それらを追いかけるように進められているワクチン。次から次へと現れる脅威にワクチンが打ち勝つことができる日は、まだまだ遠い気がしています。


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「イギリスからの入国禁止に踏み切るフランス コロナウィルス変異種警戒」

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「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_24.html

2021年1月8日金曜日

今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項

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 昨年のロックダウンの段階的な解除の発表にあったとおり、7日、今後のフランスのコロナウィルス対策についてのカステックス首相の会見が行われました。

 年明けの感染状況次第で、これまでの制限に関する再検討を行い、感染状況が改善していた場合は、映画館・劇場などについての営業再開などについての可能性もあり得るとしていました。

 しかし、これは、当初から、ノエルや年末年始の人が集う機会を控えていた12月の後半を過ごした直後には、ちょっと考えづらいことで、予想どおり、11月のロックダウン解除発表時よりも感染状況は、悪化しており、映画館・劇場等の再開は、延期されることになり、1月20日前後には再開か?と見られていたレストランの再開も2月半ばすぎまで延期となりました。

 現在のフランスの感染状況は、1日の新規感染者が2万人強の状態、現在、2万5千人がコロナウィルスのために入院しており、集中治療室の約半分がコロナウィルス患者で占拠されている状態が続いています。

 クリスマスから約2週間が経ちますが、1日の新規感染者が2万人超えとはいえ、ノエルによる極度の感染爆発が起こっている兆候はありません。しかし、年末年始の影響が確認できるのは、来週以降であり、依然としてフランスは、厳しい状況にあり、感染が上昇していることには、変わりなく、今後、数日の感染状況によっては、さらに厳しい制限が追加される可能性があることも示しています。

 実際に現在の15地域での午後6時以降の夜間外出禁止地域に加えて、さらに10地域が追加されることが発表されています。

 イギリスで広がっている変異種も、イギリスとの国境閉鎖をしたにもかかわらず、すでにフランスに広がり始めているという話もあり、また、年末年始影響がまだ、影を潜めていることもあり、今後の感染拡大は、依然として心配される状況であることには変わりありません。

 しかし、今回のカステックス首相の会見では、今年のフランスは、とにかくワクチン接種の拡大を第一目標にしていくことが発表され、この5日間で4万5千件のワクチン接種が行われたことを報告し、さらに、1月18日からは、75歳以上(高齢者施設居住者以外も可能)の人はワクチン接種が受けられるようになり、(65歳以上の人は、3月から可能になる)予約システムが完成し、現在、1月末までには、100万人にワクチン接種が行える準備ができたことを発表しました。

 これまでワクチン接種をするかしないかは、本人の自由選択によるものとしてきたフランスですが、基本的には、その姿勢は、変わらないものの、「ワクチン接種を受けてください!あなたの愛する人がワクチン接種を受けるのを手伝ってあげてください!」と積極的にワクチン接種を呼びかけるようになりました。

 年末からワクチン接種の進行状況が周囲のヨーロッパ諸国に比べて極端に遅れていたことを大バッシングされたフランス政府は、その巻き返しに加えて、今後、ワクチン接種を広げることに一気にアクセルがかかった形となりました。

 これが上手く運んでいけば、まさに災いをアクセルにして、ワクチン接種は、当初の予定よりも早く進むことになります。

 しかし、世論調査によれば、現在のところ、ワクチンを受けると言っている人は、全体の38%、フランス人の45%は、ワクチンを受けたくないと言う人が上回っています。

 この世論を踏まえてか?カステックス首相は、会見の中で、ワクチンは安全なものであり、副作用が起こるのは、10万人に1人の極めて稀なことであることも説明しています。

  ワクチン接種の拡大とともに、次に心配されるのは、2月半ばの冬のバカンスです。スキー場の閉鎖は、とりあえず、2月半ばまで延長されることになったものの、また、冬のバカンスの直前になれば、一悶着あることは、必須です。

 現在、直面している感染の増加への対応とワクチン接種の拡大、それでもカステックス首相の会見は、圧倒的に自信に満ちたワクチン拡大による今年の希望が中心で、本来ならば、延期されるレストランや劇場などの再開問題は、あまり注目されませんでした。

 実際に動向が好転するかどうかはわかりませんが、先日の日本の首相の緊急事態宣言を見たばかり、フランス政府の堂々とした力強い牽引力を余計に感じたのでした。


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「フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由」

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「スキー場オープンか否かで統一が取れないヨーロッパ フランスがダメならフランス人は隣国へスキーに行く」


2021年1月7日木曜日

海外から見る日本の緊急事態宣言

  

 

 ここ数日前から、日本で緊急事態宣言を要請、検討・・というニュースを耳にしてきました。「緊急事態宣言」というのは、「緊急」なのではないのか? 何日、検討しているのだろうか?と思いながら・・。 

 昨年の3月にヨーロッパでのコロナウィルスの感染拡大が始まって以来、コロナウィルスが蔓延し始めたことが公になって、フランスは、あっという間にロックダウンになりました。(フランス政府では、どうやら、これは危険な状態であるということは、2週間ほど前からわかっていたそうですが・・)

 1回目のロックダウンは、衝撃的で、突然、生活必需以外の外出は一切できず、学校も閉鎖というほぼ経済が止まってしまうようなロックダウンでした。なぜ、フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まるのか? フランス人は、マスクをしないし、不潔だし、フランスは、これだからいけないんだ・・などと、色々と感じ、考えながら、この一年を過ごしてきました。

 当初は、ウィルスについても、まるで未知のものであったので、どのように感染が広まっていくのかもわからずに、「日本は大丈夫だろうか?」「日本もコロナウィルスを甘く見てはいけないよ!・・」などと思ったりもしていました。

 しかし、これまで日本は、世界一の高齢化社会であり、人口の過密具合もフランスの比ではないにもかかわらず、フランスのような極端なロックダウンの措置を取ることもなく、自粛要請、緊急事態宣言とあくまでも、国民の規律に頼る形で感染を抑えてきたことは、フランスにおいても、日本の事例や感染症対策を参考に挙げられることも多く、奇跡的なこととして見られてきました。

 そして、私も、このまま日本は、何とかこのコロナウィルスの危機を乗り越えて行くものだろうと思っていました。現在でも1日の新規感染者数を見れば、日本が緊急事態宣言か否かと危機感を高めている数字は、もしも、それがフランスの数字であったならば、もうコロナウィルスはフランスから消滅したとでも言いかねないほどの数字なのですが、どうも日本の報道の様子を見ていると、かなりの緊迫状態のようで、驚いています。

 フランスは、毎日、数万人単位の新規感染者が出ることにももう慣れてしまっていることもあるのですが、日本の医療環境や検査環境の不備の状態には、これが日本なのか?と驚いてしまうこともいくつか聞こえてきます。

 感染拡大を回避するには、日常生活をいかに注意しながら送るかということも大切ですが、注意して生活していても、感染してしまうことも少なくないことから、検査をいかに拡大し、病状が悪化することを防ぐことはもちろんのこと、無症状の感染者が感染を広げることを防ぐことも重要です。

 日頃、フランスで生活していれば、日本では当たり前のことが当たり前にいかないことが多く、大抵のことは、日本の方が数段、便利に合理的にできるので、「ここは日本じゃないんだし、フランスだから仕方ない・・」と諦めることも多く、私の中には、日本の方が優れているという気持ちがあるのです。

 日本の感染者に対するホテル隔離の話なども聞いて、すごいなと思っていたのです。フランスは、陽性になっても自主隔離1週間が普通ですから・・。

 しかし、例えば、肝心のPCR検査に関してなどは、今やフランスでは、薬局でも、誰もが無料で、容易に受けられるものになっていますが、日本は、検査も容易ではない様子。「フランスにできることがなぜ?日本にできない?」と信じ難い気持ちです。

 また、何より、政府の、いつまでも、一方的に国民の善意に頼り続けるはっきりしない曖昧な態度には、やるせなさを感じます。営業時間短縮、営業自粛などを呼びかけ、自粛要請に応じない店舗の店名を公表するなど、強い立場の側から弱い立場の人を吊し上げるなど、脅迫行為、そんなことをフランス政府がしたら、クーデターでも起こりかねません。

 ましてや自粛警察が厳しすぎるほど厳しい日本社会において、そのような店名の公開をすれば、致命的な痛手となることは間違いありません。たまたま日本の友人からのメールに、「フランスは感染者を責める空気がなくて良いですね・・」と書いてあり、なるほど・・と思ったばかりでした。

 みんなが真面目に規則を当たり前のように守っている日本は、素晴らしいなと思う反面、その規則を守ることを皆が見張り合うようなキツキツな感じ、そして、挙げ句の果てには、政府が名前を公表して吊し上げるという緊張状態では、コロナが怖いのか、そんな社会が怖いのかわからなくなってきます。

 これまで、日本が世界から見たら、奇跡的と言えるほどに感染を抑えてこれたのは、ひとえに日本国民の真面目さのおかげであり、この厳しさこそが感染ここまで抑えてこれたのですが、それは日本政府の手柄ではありません。

 緊急と言いながら、ずるずると国民の不安を煽り、国民にお願いばかりの政府は、具体的に1日の感染者数が何人まで下がれば、またコロナ対応のできる病床がどこまで空きがある状態になればなどの目標数値を示し、ここまでになるまで、一緒に頑張ろうと国民に寄り添う熱意ある態度を示さなければ、日本人の緊張状態もそうそう続くものではありません。

 昨日のフランスの新規感染者数は、25,379人、日本は、4,357人、感染が一度波に乗ってしまえば、現在のイギリスのようにしばらくは手が付けられない状態になってしまうので、日本のような狭い土地に莫大な数の人口、しかも多くの高齢者を抱える国で、同じことが起こったら、それこそ大変なことになると思いますが、それにしても、1日、2万5千人以上の感染者を出しながら、日本に比べたら、ずっとのびのびと暮らしているようなフランスに、困ったもんだ・・と思いながらも、どこかホッとしたりもしてしまうのでした。


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「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

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「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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2021年1月6日水曜日

ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス

  


 コロナウィルスのワクチン接種が極端に遅れていることが問題になって以来、政府もワクチン対応に躍起になって、混乱状態の様相を呈してきています。

 明らかに初動態勢に抜かりがあり、華々しくフランスでの最初のワクチン接種の様子を報道したりしたものの、その実、うまく事は運んでいなかったのです。

 まずは、高齢者施設から、1月末までは、100万人、2月からは・・などと、目標数値やスローガンを立派に掲げたものの、実際の接種に際しての準備が追いついていなかったのです。

 このワクチン接種の数字が各国から具体的に上がってきて、フランスの初動失敗の様子が報じられると、政府は、あたふたと昨日は、「5,000人の接種を行った」ことを報道し、その上、ワクチン接種の最優先の縛りを、これまでの高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーもワクチン接種が受けられるようになったことを発表しました。

 高齢者施設でのワクチン接種が思ったよりもスムーズに運んでいないこともあり、今、より多くの人に少しでもワクチン接種を行っていくことは必要なことでもありますが、これには、とりあえずの数字稼ぎのような気がしないでもありません。

 なぜ、高齢者施設の居住者を最優先にしたか? それがスムーズに行っていないなら、そのための解決策を、まず、取らなければなりません。

 目標とするスローガンや数字を大々的にアピールすることは、フランスの得意とするところではありますが、論理的には可能なことが、スムーズには運ばないのがフランスなのです。そんなフランスの理想と現実がこのワクチン接種では顕著に露呈した一例であったような気がしています。

 また、スムーズに運ばなかったワクチン接種のこれまでの結果から、貴重なワクチンを無駄にしてしまっているかもしれない可能性まで露見し始めています。

 このワクチンは、ー70℃という冷凍状態で輸送、保存する必要があり、投与前に5日間冷蔵庫に保管、準備ができて5時間以内に使用する必要があります。一度、解凍したワクチンは、食品同様、再度、冷凍することは不可能です。

 そして、現在、使われているファイザー、バイオンテックのワクチンは、6回分のワクチンがまとめてパッケージングされており、ある程度、纏まったワクチン接種が行われない場合、解凍されたままのワクチンを無駄にすることになってしまいます。

 これまで実際にワクチン接種が行われた数字と開封されたワクチンから、すでに少なくとも20%のワクチンが無駄になってしまっていることが問題になっています。

 また、このワクチンがさらにややこしいことには、最初のワクチン接種から2〜3週間以内に2回目のワクチン接種を行わなくてはならないところです。ですから、これからワクチン接種が進むに従って、1回目の接種と2回目の接種の人を同時にこなしていかなくてはならないのです。このまま、急激にワクチン接種を増やしていくということは、自ずと2倍3倍の数をこなしていかなければならないわけです。

 そもそもワクチンに関しては、フランスの最大手製薬会社サノフィのワクチン開発が昨年末になって、高齢者への有効性が低いことから、フランスで製造できるワクチンの完成は2021年の年末にずれ込むことが発表された時点から、雲行きが怪しくなってきていました。

 現在は、ワクチンを100%輸入しているフランスは、そのワクチンの確保も容易いことではなく、現在は、50万回分のストックが確保できているとしていますが、現在、認可されているファイザーとバイオンテックに加えて、数日中には、急遽、モデルナ社のワクチンが認可されるようです。

 バカンス後の感染拡大も大いに心配される中、ワクチン問題ばかりに問題が集中していることがかえって不安に思います。

 負けず嫌いでプライドの高いフランスが、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなど各国と比較されて、極端に劣っているなどとされることは耐えられないことでもあるかもしれませんが、ここは慌てずに、フランスの実情を踏まえて、ワクチンの有効性をできるだけ保てるように慌てず、確実に進めて欲しいと思っています。


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「フランス人のプライド」

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「フランス人は、イタリアを下に見ている」

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2021年1月5日火曜日

フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由



 ノエルのバカンスも終わって、現在のフランスは、このクリスマスから年末年始の休暇をどの程度、感染回避ができて過ごしてこれたかの成績を恐る恐る待っているような状態です。

 漏れ聞こえてくる若者のパーティーの様子などを見る限り、あまり良い成績は期待できないのですが、にわかに人々の関心は、コロナウィルスのワクチン接種に移行しつつあります。もはや頼みの綱はワクチンしかないと思い始めたのでしょうか?

 というのも、ヨーロッパの多くの国では、昨年末からコロナウィルスワクチン接種が始まっており、イギリスやドイツが着々とワクチン接種の数を増やしているのに比べて、フランスのワクチン接種の数が極端に少ないことに、疑問を持ち始めたからです。

 イギリスではすでに95万人に対してのワクチン接種が行われており、ドイツもほぼ、これに続いている数字です。ところが、フランスは、年明けの段階で、まだ数百件という桁違いの少なさに政府に対する避難が高まっているのです。

 私も、当初は、フランスは、慎重を期しているのかと思っていましたが、このあまりの数字の違いは、どうやら、単なる段取りの悪さが原因のようで、ワクチン接種の極端な遅さに対するあまりの非難に、政府も4日の午後にはエリゼ宮でワクチン接種に関するフォローアップ会議が午後中行われ、6日に行われる予定の防衛評議会もワクチン接種が最優先事項となっているようです。

 フランスでワクチン接種が遅れているのは、もしやワクチンがまだフランスに到着していないのでは?と思いきや、少なくとも12月26日には、19,500回分のワクチンはフランスに到着しているのです。これがまだ、数百件のみのワクチン接種とは・・・。

 フランスでは、高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者を最優先にしていますが、高齢者施設の居住者に対しては、同意書が必須とされており、この同意書作成がノエルのバカンスに中断したために、他国に比べて大幅に遅れをとった理由の一つにあげられています。

 またしても、あくまでもノエル優先のフランスのお国柄が裏目に出てしまったわけです。

 とはいえ、計画では、2月末までには、第1段階の最優先対象者100万人へのワクチン接種を行うことになっています。つまり、1日あたり、1万9000人にワクチン接種を行わなければなりません。しかし、これまでにワクチン接種を行うことができたのは、たった20カ所の施設だけだったようで、これを1月末までに100カ所にまで拡大するそうです。(このあたりにも、これまでの段取りの悪さが垣間見えます)

 これだけの急激な量のワクチン接種には、保存が難しいワクチン(ー70℃以下での保存)の管理の問題もあります。ワクチン接種にかかる人出の問題もあります。問題は山積みです。

 フランスで現在、投与されているワクチンは、ファイザーとバイオンテックの2種ですが、医師との相談により、自分で選択することができるそうです。また、他社のワクチンについての早急な認可も求められています。

 ワクチン接種に関しては、「自由選択」という姿勢をとっているフランスで、アンチワクチン論者も少なくないために進まないのかと思いきや(現在のワクチン接種対象者には、アンチは少ない)、現在、ワクチン接種が滞っているとなれば、大バッシングになるのですから、ややこしいことです。

 このワクチン接種の遅さに対する大バッシングには、マクロン大統領も「不当に遅れることを防ぐ」ことを約束し、オリヴィエ・ヴェラン厚生相なども、必死に弁明しています。

 どちらにしても「物申す」フランス人。主張も結構、目標数値を堂々と掲げるのは、得意ですが、まず、やるべきことを着々と進めてもらいたいものです。

 フランスのコロナウィルスワクチン接種に関する情報は、「CovidVaccine」(コヴィッドワクチン)と呼ばれるワクチン接種監視情報システムに入力されます。 ワクチン接種を希望する人、またはワクチン接種を受けていない人の名前、名、性別、生年月日、住所、電話番号などの個人情報を収集することが、12月末の法令で認可されています。

 ワクチン接種によるコロナウィルスの流行を抑える効果が見えるまでには、少なくとも3月末までに1000万人がワクチン接種を受ける必要があり、まだまだ時間がかかりそうです。

 現在のフランスのコロナウィルスによる入院患者は24,995人(昨日1日で1,258人増加)、ワクチン接種のスピードはコロナウィルスの感染速度に追いつくようになることは、当分、先の状況のようです。


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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

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「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」

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2021年1月4日月曜日

ノエルのバカンス終わり 学校も再開 日常生活が再開する

  


 フランスには、お正月の三ヶ日(さんがにち)という観念はありません。例年ならば、年末年始は、クリスマスの日(25日)は祝日ですが、それ以外は、カレンダーどおり、年末の御用納めというものもありません。

 しかし、ノエルの前から学校がバカンスに入るし、ノエルは、フランス人にとっての大イベントでもあるために、お休みを取る人も少なくありません。とはいえ、年末は31日まで働き、元旦は祝日で休みでも2日からは、仕事に戻るのが普通です。

 ところが、今年は、元旦が金曜日に当たったことから、土日がお休みである一般的な仕事についている人にとっては、珍しく、お正月の三ヶ日をゆっくり過ごせるフランスにいるにしては、珍しい年周りでした。

 学校のノエルのバカンスも終わって、4日からは、学校も再開します。ヨーロッパのいくつかの国(ドイツ、オランダ、ポーランド、ギリシャなど)では、コロナウィルス感染のために学校は再開されないそうです。

 フランスでは、現在のところ、予定どおり、学校は再開されるようです。現在のところは、ノエルや大晦日で多くの人が行き来して、広げてしまっているはずの感染拡大の結果は、まだ顕著にはなってきていないので、学校も、行ける時には、行っておいた方が良いのかもしれません。

 どちらにしても、フランスは学校も、年がら年中バカンスで、2月の半ばになれば、また冬休みでバカンスに入ります。最初に娘がフランスで学校に生き始めた時には、このバカンスの多さには、仕事を持っている私にとっては、四六時中、学校のバカンスに追い回される感じで、学校は水・土日と休み、おまけに一ヶ月おきくらいにバカンスで、「どんだけ休むの?フランスの学校? こうして働かないフランス人が作られるんだ・・」などと思って、学校の休みの日を数えたことがあります。

 結果、フランスの学校は、一年の3分の1は休みで、ビックリしたのを覚えています。

 話はそれましたが、去年から引き続き、今は、コロナ禍中の特別な時、1回目のロックダウンの時点で、リモート等の授業が続いていたものの、学力の差はいつも以上に広がり、6人に一人の若者が学業を放棄している状態だと言います。

 将来のある子供や若者の未来を考えれば、このコロナウィルスによる学校閉鎖は、思わぬつまづきになってしまうきっかけにもなりかねないので、できるだけ学校は継続すべきであると思っています。

 娘が小さい時には、学校に傘を持っていくことは禁止になっていました。傘が危険であるということからだったのですが、(送り迎えが必須であるため必要ないといえば無いのですが・・)そこを傘を禁止するのではなく、傘を安全に使うことを覚えることも必要なのではないか?と思った記憶があります。

 今回のコロナウィルスに関しても、学校は、どうやって感染を回避するかを教える場所であっても良いと思うのです。

 また、1月2日から、フランスの15の地域(フランスの北東部中心の地域)では、夜間外出禁止が午後8時だったものが午後6時に前倒しになっており、実際の社会生活が始まれば、問題も多々起こってくるとは思いますが、完全なロックダウンにならないだけでも、まだマシだと考えるべきなのかもしれません。

 この夜間外出禁止は、現在のところは、1月20日まで、そして、2度目のロックダウンの段階的な解除の計画によると、1月7日頃に映画館、劇場等の再開を再検討することになっていましたが、年末年始の人の動きや現在の感染状況を見る限り、映画館、劇場等の再開は絶望的と見られています。

 もはや頼みの綱であるワクチン接種もフランスは、他のヨーロッパ諸国に比べて格段に遅れており、国民の70%はワクチン接種をしなければ、通常の日常は戻ってこないと言われている現在、暗い冬を迎えそうであることは、ほぼ確実のようです。


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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

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2021年1月3日日曜日

年末から年を超えて引き続くフランスの犯罪 車を燃やす競争??



 まだ、年が明けて何日も経っていないと言うのに、ニュースは犯罪に関するものが目白押しで、あらためて、フランスは、なんて恐ろしいところなんだと思わずにはいられません。

 大晦日の夜から元旦にかけて、フランスで燃やされた車は861台だと言います。しかも今は、コロナウィルスの蔓延するコロナ禍中、夜間外出禁止で、特に大晦日の夜には、年越しのカウントダウンを祝うためにバカ騒ぎをする人を警戒して10万人の警察官が警備にあたっていたにも関わらず起こったことです。

 そう思って調べたら、なんと、これでも例年よりは、大晦日に燃やされた車の数はずっと少ないそうで、一昨年末の大晦日に燃やされた車は1,457台だったそうで、昨年よりは、40%減少していることになります。

 今年のこの数字は、大晦日の事件報告に関する内務長官のプレスリリースには載っておらず、内務大臣のジェラルド・ダーマナンの指示で、「各地の競争(車を燃やす競争?)を避けるために、これらの数字が地元で伝えられないように」伏せられたと後に発表されています。

 一体、このコロナ禍中、何の競争をしているのだ?と思います。この種の破壊行動を繰り返す人々の心理はわかりませんが、あり得ないことではないのかもしれません。 

 また、大晦日の夜から36時間も続き、ブルターニュで2,500人を集めたパーティーを主催した人物が特定され、逮捕されました。このパーティーでは、単なるレイブパーティーだけではなく、麻薬などの薬物までもが横行していました。

 何より感染拡大のクラスターになった危険が高いことから、参加者には、7日間の隔離生活が要請されていますが、あくまでも要請、監禁されるわけでもないので、このようなパーティーに参加する人々ゆえ、一週間の隔離生活の要請が守られるとは考えにくいのが実情です。

 このパーティーでも、憲兵隊の車が燃やされたり、警察に抵抗して攻撃したりしたことなどで、すでに、662人が逮捕、407人が勾留され、参加者のうち1,600人以上が罰金を課せられています。

 このパーティー主催の中心人物2名を含む運営に関わっていた8名は2日の夕刻には特定され逮捕・勾留されましたが、これらの中心人物は、単なる参加者とは別格の犯罪であり、10年の投獄と750万ユーロの罰金の可能性があると言われています。

 このパーティーがクラスターになっていることは確実であり、それがどれだけの人々の命を奪うことになるのか?また、このために拡大した感染により、さらに国民の生活に制限がかかり、経済活動が低迷するのかを考えれば、重罪です。

 日頃から、フランスの刑務所は、満員で、ちょっとやそっとのことでは捕まえてもらえず、簡単な調書を取られただけで、すぐに帰されてしまうことを遺憾に思っていましたが、年明け早々、まだ数日しか経っていないのに、これだけの犯罪や逮捕者の数を聞けば、フランスの警察が犯罪者をいつまでも拘留し続けるのは無理な話です。


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「パリの盗難被害 パリの泥棒は、なかなか捕まえてもらえない」

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2021年1月2日土曜日

大晦日から続くブルターニュ地方で開かれた2,500人が集まるレイブパーティー 

 



 10万人の警察官を動員して大晦日の夜の外出禁止の警戒をしていたフランス。大晦日のシャンゼリゼは、静まりかえり、取り締まりの警官のみが練り歩く異様な光景で都会の街は空っぽになったように映っていました。

 しかし、それは、都会の目立つ場所のみのことで、大晦日以来、ブルターニュ地方のレンヌ南部・リューロンでは、2,500人が集まるレイブパーティー(ダンス音楽を一番中流すパーティー)が行われていました。

 パーティーの場所に選ばれたリューロンの倉庫のようなスペースには、31日の夕方から数百台の車が集まり始め、夜通しのパーティーが始まりました。パーティーの参加者は、フランス国内だけではなく、イタリアやスペイン、ベルギーなどの隣国からも人が集まっていました。

 警察が介入した時には、すでに簡単に解散させることができないほどの人数になっており、憲兵隊が発砲する事態にまで発展し、警察官25人が負傷しましたが、参加者を傷つけることはできないことから、警察も憲兵隊も手がつけられない状態が続き、一昼夜以上、続いていました。

 若者が夜間外出禁止(特に大晦日)に反発して、躊躇なく、屋内でのパーティーをしようとしていることは知っていましたが、まさか、これほどの人数の、しかも国境を超えてまで人が集まるパーティーが行われるなどとは、思ってもみませんでした。

 今や、大勢の人が集まっている光景を見かけると、それがたとえ、映画やドラマの中のことであっても、思わずギョッとしてしまう私です。

 このレイブパーティーの映像を見る限り、皆、屈託なく、音楽に合わせて楽しそうに踊り、マスクをしている人などほとんどおらず、たまにマスクが見えても顎マスク。ビールなどのアルコールを口に含んで、人に吹きかけている人までいます。これでは、飛沫が飛ぶどころの騒ぎではありません。

 このパーティーが行われた地域は、現在、フランスの中で特に感染が悪化している場所には、指定されてはいませんが、この屋内での光景には、思わず第1波が全国に拡大する根源となったミュールーズの教会の集会が頭をよぎります。

 この教会の集会もフランス全土だけでなく、海外からも人が集まり、集会の終了後、全国にウィルスを持ち帰って感染をフランス全土に拡散させたのです。

 このパーティーが警察や憲兵隊までが容易に踏み込めないことが理解できません。しかし、少なくとも、このパーティーで662人が逮捕、407人が勾留されています。

 ただでさえ、ノエルで人が国内大移動し、家族で集い、感染者数も2万人台に増加しているフランスです。このパーティーが解散させられたとしても、全国から集まった人々が、何食わぬ顔をして、それぞれ、自分の地域に散っていくことを思うと恐怖でしかありません。

 いみじくも、ブルターニュは、現在、娘がスタージュのためにここ半年間、滞在している地域です。娘がこのパーティーに参加してはいなくとも、この地域でクラスターが起これば、危険も高まります。他人事ではありません。

 ロックダウンや夜間外出禁止に反抗する気持ちはわからないではありませんが、今は、それが許されない状況なのです。結果として、自分たちの行動がさらに厳しい制限やロックダウンを招いていることをわからないバカが大勢いることに憤りを感じます。

 なぜ、いつまでもレストランが営業できないのか? 映画館や劇場も営業できないのか? こんなことをしていては、いつまでも、フランスに日常は、戻ってきません。

 年末は、よく日本語でも、「年忘れ○○」などと言いますが、昨年起こったコロナウィルス感染の惨状は、まだ、忘れてはいけない出来事なのです。このパーティーでは、1200人以上が罰金を課せられましたが、お金を払って済む問題ではありません。

 2日の夜には、このパーティーの主催者は逮捕。10年の投獄と750万ユーロの罰金の可能性があるそうです。しかし、このパーティーがもたらした被害はあまりにも大きいのです。

 やっぱり、フランスは、大晦日の1日だけでも、夜間外出禁止ではなく、ロックダウンにすべきでした。


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「フランスはどこまで甘いのか? 年越しに関する制限は、現状どおり」















 

2021年1月1日金曜日

2020年〜2021年 年越しのフランスの夜

  

大晦日のシャンゼリゼ 夜間外出禁止の厳重な警戒体制


 2020年は、思っても見なかった大変な年になりました。たまたま、用事で2月に日本に帰国した際の飛行機に乗った時に、ここ数年、日本行きの飛行機の9割方の乗客がフランス人になっていたはずの、そのフランス人の乗客が消えていました。

 2月の時点では、フランスでは、まだまだコロナウィルスは、アジアで起こっている感染症という認識で、ダイヤモンドプリンセスでの感染が盛んに騒がれていた頃です。

 私が日本から帰国した2月末には、フランスに無事に入国させてもらえるかどうかを心配していたくらいです。しかし、フランス入国に際しては、ノーチェック、いつもと何ら変わりはありませんでした。

 そのフランスの水際対策の甘さは、現在は、一応、検査場などは用意されてはいるものの、あまり進展は、ありません。(現在は、イギリスからの入国は厳しいようですが・・)

 それが3月に入った頃から、あっという間に立場は逆転し、3月半ばには、フランスは、ロックダウンになりました。街には、警察や憲兵隊が控え、「家から出てはいけない」などという状況が、自分の人生のうちに起こるなどとは、夢にも思ってはいませんでした。

 長年生活しているとはいえ、異国の地で、よく正体のわからない恐ろしいウィルスが蔓延している状況で、不安でニュースをテレビで毎日、一生懸命見る習慣ができました。当初、フランスでは、マスクが圧倒的に不足しており、日常生活を普通に送る分には、一般人(医療従事者等以外)は、マスクは必要ないなどと言われていました。

 実際に一般人がマスクを買うこともできませんでした。

 しかし、そんなことはあり得ない!しないよりはした方が良いに決まっています。私は、家の中のどこかにはあるはずのマスクを探し出し、政府が何と言おうとマスクはすることにしていました。情報は得つつも、その情報を元に自分で判断することが必要だと実感しました。

 といっても、最初のロックダウン中は、買い物に2回出たのみで、それ以外は外出することはありませんでした。5月に1度目のロックダウンが解除される頃になって、どうやらマスクは必要だということになり、市役所からマスクが配布され、高価ではありましたが、一般人もマスクが買えるようになりました。

 5月から徐々に感染は、減少しましたが、ウィルスが消えることはなく、人々は日常のデモを再開し、多くの人が夏のバカンスに出かけるのをハラハラする思いで見ていました。案の定、フランス人がバカンスから戻り、気温が低下するとともに、フランスには、第2波がやってきて、10月には、1日の感染者が6万人までにも膨れ上がり、10月末には、再びロックダウンになりました。

 ノエルを目前に控えたロックダウン、しかし、その頃の感染状況には、さすがのフランス人も「この状況では、ロックダウンも仕方ない、今、我慢して、何とかノエルを家族とともに祝いたい・・」との思いから、約1ヶ月のロックダウンで、奇跡的に1日の感染者は、1万人台までに減少しました。

 とはいえ、それでも1日1万人以上の感染者が出ている状況で、ロックダウンを解除し、ノエルを家族と過ごすことを禁じきれないフランスを遺憾に思っていましたが、年越しに関しては、20時以降の夜間外出禁止が敷かれました。

 いつもは、大晦日には、人で溢れかえるシャンゼリゼも人影がなく、街路樹の赤いイルミネーションと警備にあたる警察官のみの静かで、しかし異様な光景が広がっていました。

  

街路樹のイルミネーションがなければシャンゼリゼに見えない

 大晦日の夜は、フランス国内では、10万人の警察官が動員され、この夜間外出禁止を取り締まりにあたりました。

 しかし、外出さえしなければ良いと考えている若者は多く、夜20時までに友人宅に集まり、一晩中、皆で家で過ごせば良いのです。この日に備えて、寝袋や簡易ベッドがあっという間に完売状態、若者は、外出しない、年越しのパーティーの準備をしていました。

 地域によっては、31日の16時からアルコール販売禁止などの措置をとったところもあるようですが、焼石に水です。

 街の中が静かな分、屋内では、どれだけの人がパーティーを開いているかと思うとその皮肉な状況が恨めしく思えてならないのです。実際に、リヨンやレンヌでは、1000人、2000人規模の違法パーティーが行われていた模様です。

 2020年のフランスのコロナウィルスによる死亡者は、64,632人でした。これだけの犠牲者を出してもなお、今の状況が理解できていない人がいることを悲しく思います。

 それでも、2021年はノエルも年越しも心おきなく過ごせるようになるように・・というよりも、普通の生活が普通に送れるようになるといいなと祈るような気持ちでいます。

 もはやフランスを救うのは、ワクチンだけなのでしょうか? ワクチンを一般人が受けられるようになるのは、春以降になるようです。

 今年は、シャンゼリゼもエッフェル塔も花火はなし。ベルサイユ宮殿の庭園で花火が上がりました。


 

 

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「心配の種は尽きないフランス ノエルの後は、年越し」

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