昨年末、フランス全土に拡大した黄色いベスト運動(gilets jaunnes ジレ・ジョンヌ)と呼ばれるデモが世間を騒がせ、一部は、暴徒化し、大問題となりました。
もともとは、自動車燃料税の引き上げに反対するものでしたが、次第に反政府デモへの様相を呈したデモへと変貌していきました。
失業率の高い事でも有名なフランスですが、特に、若者の失業率が高いのもまた、特徴的で、このデモの暴徒化の中心となっていったのも、その若年層であるとも言われています。
フランスでは、雇用形態や労働者の処遇、賃金、労働時間、解雇に至るまで、厳しい労働法の規制があります。
この厳しい労働法の規制から、アルバイトのような職でさえ、安易に得ることも、また、賃金と物価の兼ね合いも、若者同様、外国人である私たちにとっても、とても厳しいものであることに違いありません。
また、職を得ることが難しい反面、一旦、正規雇用として、雇われてしまえば、その労働者の権利というものも、その法律によって、大きく守られていることも現実なのです。
公務員などは、その最たるものです。
私は、フランスで、雇用主になったことはありませんが、自分の処遇に関しても、少なからず不満があったものの、同時に、同じ会社にいる、長くいることで、高給を取りつつも、ロクに働かずに、年金の計算ばかりしている人間を容易に解雇することもできずに、高給を払い続けなければならない、雇用主側の現実にも、憤りを感じたものです。
雇用主は雇用主で、税金や保険料などで、労働者が実際に受け取る額を遥かに上回る金額を支払わなければならず、うっかり解雇しようものなら、たちまち訴えられて、その多くは、労働者側の勝訴になるのです。
つまり、正当に働く権利を守るはずの労働法は、現実は、働かない労働者をも守る労働法になってしまっているのです。
すでに職を得ている労働者が、法律に守られて、気に入らないことがあると、デモだ、ストライキだ、裁判だ!と、のうのうと暮らしている一方で、新規に参入してくる若者や、弱い立場の人たちが、その分のしわ寄せをまともに受けているのです。
フランスの場合、新卒者を採用すると同時に、あくまで個人の能力や職務経験によって採用される即戦力重視の採用方法にも重きを置いています。
しかし、そう事は、単純ではありません。
弱い立場の人々が、職務経験を重ねて、キャリアを積んでいく一方で、高学歴の人は、それを何段も飛び越して、卒業して、いきなり管理職に着くのもフランスの超学歴社会の現実でもあります。
高学歴の人には、それはそれで、一般のフランス人には、想像もつかない努力をして勝ち得た学歴でもあるので、その格差に歩み寄る気持ちが、本当は、ないのが正直なところだという現実が、今回のデモのような摩擦に繋がるのでしょう。
何れにせよ、外人の私から見ても、フランスの労働法、雇用形態が社会全体を上向きにするために、うまく機能しているとは、到底、思えないのであります。
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