通常、朝の出勤時には、警備上、二人以上で鍵を開けることになっていました。私は、時間に遅れるのが、とても嫌いなので、パリのメトロなどの交通事情を信用していないこともあり、だいたい、20分前には、到着して、もう一人がやってくるのを待っていました。
会社の鍵を開ける時には、まず、1枚目のドアを鍵で開けると、内側にもう一つの扉があり、暗証コードを入れて、もう一つの鍵を開けるようになっていました。
暗証コードを間違えて、鍵を開けようとすると、サイレンのような、警報機が響き渡り、すぐに、警備会社から電話がかかってきます。私も一度、バカンス明けで、ボケっとしていて、間違えて、自分の銀行の暗証ナンバーを押してしまい、サイレンを鳴らしてしまったことがありました。
警備会社からの電話では、合言葉のようなものが決められていて、どうして、サイレンが鳴ってしまったのかを話して、合言葉を言えば、警備会社の方で、すぐにサイレンを止めてくれるようになっていました。
その日は、たまたま、会社の鍵を開ける時に、3〜4人いたでしょうか? はっきりとは、覚えていませんが、2枚目のドアを開けたところで、ものものしい4〜5人の制服姿の銃を持った一団がドーッとなだれ込んできて、” Police Financiere (金融警察)です。みなさん、すぐに、IDカードを出してください。” と、周りを取り囲まれました。
鍵を開けている時には、まるで、その存在にも気付かなかった、ものものしい一団の突然の登場に、その場にいた者たちは、皆、騒然となりました。
言われるままに、それぞれが、IDカードを提示して、それぞれの役職などを聞かれました。何の目的でその人たちが突然、やってきたのかは、わかりません。会社の責任者は誰か?と尋ねられましたが、ちょうど、その週は、社長も出張中で、パリを不在にしていたので、代わりに、社長の直属であったフランス人の女性が同行を求められ、一緒に出かけて行きました。
映画のような、衝撃的なシーンに一同、何ごとだろうかとざわつきましたが、結局、その日は、彼女は、会社に戻ることなく、皆、彼女も直接、自宅に戻ったのだろうと思っていて、会社の業務は、通常どおりで、一日が終わりました。
翌朝になって、出勤すると、連れていかれた彼女のパートナーの男性が、彼女が昨晩、帰って来なかった。連絡も全く取れない・・と、会社に駆け込んできました。携帯も持っているはずなのに、外と連絡を一切とらせてもらえないなんて・・怖い・・。
結局、翌日になって、彼女は、げっそりとした顔をして、出勤してきましたが、何を聞かれたのかは、一切、口にすることは、ありませんでした。
その翌週になって、社長がパリに戻った頃には、すっかり騒ぎは、落ち着いたようで、まるで、何もなかったかのように、金融警察の突入事件は、忘れ去られて行きました。
私たち、下々の者には、結局のところ、何だったのかは、わかりませんでしたが、あの金融警察の突入の様子は、未だに忘れることはできません。
普段、街で見かけるスリや泥棒を捕まえる警察とは違う、もっと、威圧的な感じの圧倒的な存在感のある警察もあるのだと、日常では、なかなか見ることのないフランスの一面を見た思いでした。
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