2020年10月31日土曜日

フランスのロックダウン突入 営業許可と営業禁止の境界線

 

  Fnac  (Photo d'illustration)


 フランスのロックダウンが俄かに現実味を帯びて、囁かれ始めてから、一週間も経たないうちに、あっという間に、フランスは、再びロックダウン状態に突入しました。いつ、ロックダウンになってもおかしくない状況だと思いつつも、いざ、実際にロックダウンになるのは、やはり、残念なことに違いありません。

 だって、少なくとも、11月一ヶ月は、まるまるロックダウンなのですから・・。

 ロックダウン寸前の数日は、皆が買い物に走ったり、冬ごもり支度をするような動きはありましたが、ロックダウンも2回目ということで、パリでは、一部のお店が混雑したり、行列ができたりしたものの、前回のようなパニック状態にはならずに、皆、淡々と準備を進めるという感じでした。

 実際に、今回のロックダウンでは、学校も継続され、基本的には、仕事も継続されるため、家族で狭いアパートで一日中、ぎゅうぎゅうに、悶々と過ごすということもなく、何より子供が学校に行ってくれることで、家族4〜5人分の昼食を含めた一日3食の食事の支度全てを家でする必要がないので、食料品の買い物なども、大幅に違ってくると思われますし、精神的、金銭的な負担も少ないのではないかと思います。

 まだ、一日しか経っておらず、これからどんなことが起こってくるのか、わかりませんが、街の様子を眺めるに、街中は前回のようなシンとした感じはなく、意外と皆が外に出ている・・そんな印象を受けました。

 私は、ロックダウンの初日、本当は、歯医者さんの予約が入っていたのですが、出かけようとしていたら、急に電話で、今日は、閉めなくてはならなくなったから、来週に予約を変更してほしいと連絡が入り、医者には、行けるはずなのに、今日は閉鎖・・何だろう?と、ちょっと不可解でした。

 今回は、仕事や学校の継続や、公共行政機関の継続、公園の解放など、ロックダウンとはいえ、前回のロックダウンに比べると、若干、緩いロックダウンではあります。基本的に、生活必需品以外の商店は、閉鎖ということになってはいますが、これにも営業許可と営業禁止の境界線が不明瞭な点があり、ちょっとした論争が生まれています。

 Fnac・フナック(フランスの書籍、情報機器、電化製品等を扱う総合小売店)などは、店舗は営業していますが、書籍コーナーは閉めています。その他、ガーデンセンター、DIYショップなども営業を継続しています。この一見、生活必需品か否かの区別がつきにくい店舗の営業により、不公平感を抱く店主が少なからずいて、特に、特別警戒地域ではなかった地域などの市長などが、店舗の営業許可を求めて、論争を起こし始めています。

 私のところにも、さっそくメガネ屋さんからメールが届きました。「うちは、開けてますよ〜!」っていうメール。どうやらメガネ屋さんは営業できるようです。

 だいたい、フランスは、コロナの前からデモだのテロだのストライキだの、昨年末からまともに営業できないお店が多かったのです。

 とにかく黙って引き下がらないフランス人ですが、本来ならば、ノエル(クリスマス)前の一年のうちでも最も書き入れ時のシーズン、なんとか少しでも挽回しようと必死になるのもわからないではありません。

 この営業許可と営業禁止の境界線を巡っては、今後、ロックダウン中にひと騒動を迎えそうな気がしています。

 政府は、これに対して、とりあえず、ロックダウンから2週間、様子を見て、営業許可ができるような状況であれば、検討するとしていますが、先日のマクロン大統領の発表によれば、11月の半ばには、感染状況は、かなりの危機的な局面を迎えることが予想されており、現段階での営業許可範囲を拡げることは、ロックダウン自体の意味が揺るぐことにもなりかねません。

 とはいえ、一般市民としては、前回よりは、少し、慣れたこともあり、また、規制が少し緩いこともあり、少しは、凌ぎやすそうなロックダウン、一日、一時間の自宅から1km圏内の運動目的の外出も外出許可証さえ携帯すれば可能だし、また、公園に多くの人が集まって、やはり、公園は立ち入り禁止・・なんてことにならなければ、前回ほどの鬱屈した感じにはならないかもしれません。

 ただし、妙な慣れから調子に乗って、現在、許されていることが、明日には禁止事項になる可能性も高いフランス。ほどほどに息抜きしながら、なんとか、一日も早く、感染がおさまってくれるのを待ちたいと思います。


<関連>

「コロナウィルス対策の外出禁止 パリでは、日中の運動のための外出も禁止」

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2020年10月30日金曜日

ロックダウン前日 大荒れのフランス ロックダウン・テロ・デモの全てが一日に起こった日


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まるで何もなかったような、ロックダウン前日の夜のパリのカフェのテラス



 マクロン大統領のロックダウン宣言から一夜、自由に動けるのも、今日一日限り・・何かやり残したことはないか?(考えながら、なんだか我ながら、大げさだと思いました・・)と思いつつ、昨日、あまり考えることもなく、買い物に出かけて、エラい人出だったので、残りの買い物をしようと、朝、開店5分まえに近所のスーパーマーケットへ行きました。

 ロックダウンになっても、外出証明書を持っていれば、買い物には出かけられるし、外出証明書のダウンロードも大した手間ではないのですが、やはり、気が重いのは、なぜでしょうか? 

 ロックダウンになれば・・と考え始めれば、前回のロックダウンの様子などがまざまざと思い出され、スーパーマーケットなども、入場制限で、いつ行っても長蛇の列・・そんな思いが、ロックダウン前に買えるものは買っておこう・・という気持ちにさせるのです。

  

カーフール開店5分前、すでに行列が・・

 考えることは、皆、一緒のようで、 5分前には、すでに行列が出来始めている状態で、今日のところは、想像はついていたものの、やっぱりビックリ!

 そして、店内に入って、すでに平日にも関わらず、結構な人・・しかも、男性客が多く、明らかに買い貯め用の買い出しの体制。フランスでは、日常から男性が買い物に来ているのは珍しいことではありませんが、ロックダウンのための買い物となると、さらに男性の比率が高くなるような気がします。

         

ロックダウン前の買い物は男性が多い

 まだ、開店直後というのに、すでに、ガラガラの棚もあり、またまたビックリ!第一波の時には、スーパーマーケットの職員にも犠牲者が出ていたため、緊迫感が漂っていましたが、今回は、今のところ、そこまでの緊迫感はなく、ただ、皆、淡々と買い物をしていました。

               

朝から空っぽのオイルの棚

 私が、そうして買い物をしていた頃、ニースでは、大変な事件が起こっていました。ニースのノートルダム教会で、刃物を持った男が複数の人に襲いかかり、死者3名、複数の負傷者が出るカトリックの教会を狙った凶悪事件、先日のパリ近郊で起こった路上でのテロ事件に続き、イスラム過激派のテロ事件が再び起こっていました。             

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テロの起こったニースの教会前

                               

 犯人は、21歳のチュニジア国籍の男、イタリア経由でつい数週間前にフランスに入国したばかり、犯人の持ち物からは、コーランとナイフが発見されています。テロ目的で入国した可能性もありますが、警察の反撃のため、現在、犯人は重体、事情は聞けていません。

 明日には、ロックダウンというタイミングで、ロックダウンと並んで、まさかの再びイスラム過激派のテロ。トップニュースとして、扱われる驚愕のニュースとなりました。ロックダウンの詳細が発表されるとともに、フランスには、テロに対する警戒が最大レベルに引き上げられました。 

      

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明日からロックダウンとは思えない賑わいぶりのパリのレストランのテラス

       

 夜には、ロックダウンについての詳細が発表される中、パリのカフェやレストランには、最後の時間を惜しむかのごとくに集まる人々。ロックダウンされるほど、感染状況が危険な状態だとは考えずにギリギリまでカフェやレストランでの時間を過ごす人を見ながら、これだから、フランスは、ロックダウンしなければ、どうしたって、感染拡大は抑えることが出来ないんだ・・と、もはや、私には、ため息すら出ません。

             

あと数時間でロックダウンを控えてロックダウン反対のデモ


 カフェやレストランでの賑わいぶりに拍車をかけるように、あと数時間でロックダウンというのに、パリ・リパブリック広場では、ロックダウン反対のデモ。昨日のマクロン大統領のロックダウン発表の放送は、3,270万人もの人が見ていたと言われているのに、聞いていなかったのでしょうか? 

 第二波は、第一波以上の死者を出す恐れがあるということを・・。

 こんなパリの街の様子を見るにつけ、やっぱりフランスには、ロックダウン以外の道はなかったのだ・・ということを思い知らされる一日でした。

 それにしても、コロナウィルスの恐怖に加えて、デモ、テロ・・と、なんでもありの一日で、ロックダウンは気が重いながらも、どこかホッとさせられる気もするのです。


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「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」

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2020年10月29日木曜日

フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで


フランス 大統領からの発表の前に流れる映像



 この約1年あまり、この映像をどれだけ見たことかと思います。大統領からの重大な発表が行われる度に、大統領の発言が流れる前に、フランス国歌マルセイエイズとともに、威風堂々としたエリゼ宮(大統領官邸)を背景にしたこの映像が流れます。

 フランスは、今年、それだけ、重大な局面を何度も迎えているということです。

 昨夜は、前日からの予告どおり、マクロン大統領から、10月30日(金)午前0時より、少なくとも12月1日まで、再びフランスは全土にわたり、ロックダウンの措置が取られることが発表されました。

 特にここ2週間のフランスのコロナウィルスの感染拡大は、予想を遥かに超えたスピードで進み、感染者数等全てが倍以上の数に膨れ上がり、また、前回の第1波に比べると感染は、全国くまなく広がっており、パリ・イル・ド・フランスの病院の集中治療室の75%は、コロナウィルスの患者で埋まっています。

 今回の第二波で、すでに医療崩壊を起こしているオー・ド・フランスなどの地域では、すでに患者の移送が始まっており、この感染が増加し続けている状況では、他の地域の病院でも患者が増え続けている中、その患者の移送さえも困難な状況に陥るのも時間の問題です。

 現在のところ、毎日3000人前後の人が新たに入院しており、すでに3045床の集中治療室の病床が埋まっている状態。現在の感染状況から、11月半ばには、9000床の集中治療室の病床がいっぱいになる事が見込まれるため、ロックダウンは、待ったなしの状況で、約2週間前に取られた21時以降外出禁止の効果が表れるのを待つまでもなく、もう後には、引けない状況なのです。

 このロックダウンの話が具体的に上がり始めて、当初は、「金曜日の夜からロックダウン」という事であったのに、それが一日繰り上げられて、木曜日の夜からになったのには、もう一日たりとも猶予がない状態であることに他なりません。

                

店外まで行列ができるスーパーマーケット

         

 もはや誰もがロックダウンだ・・とわかっていた証拠に、昨日は、すでにスーパーマーケットには、ものスゴい人出、そういう私も、家から少し離れたところにあるアジア食材店には、ロックダウンになったら、行きにくくなるだろう・・と買い物に出かけたところ、午前中の比較的早い時間に出かけたにも関わらず、すでに店の外まで長蛇の列。

 しかし、わざわざ出かけてきたのに、買い物せずに帰るのも馬鹿らしく、列に並ぶこと15分くらい? 近所のカーフールなどのスーパーマーケットでは手に入りにくい日持ちしそうな大根やキャベツなどの野菜や調味料などを物色してきたのです。

 安全対策のために、入場制限を行なっているのかと思いきや、店内にも、ものすごい人、レジにも長蛇の列・・買い物を済ませるのにも、いつもの倍以上の時間がかかりました。

 5月にロックダウンが解除されて以来、久しぶりにロックダウンを見据えての買い物。つい忘れていましたが、ロックダウン時の買い物というのは、こんな感じ(どこでも行列・時間が異常にかかる)なのだった・・と、実感として思い出したのでした。

 今回のロックダウンは、幼稚園から高校までの学校は閉鎖せず、仕事もできる限り継続(工場や農場なども継続)、EHPAD(エパッド・老人介護施設)の面会が許可されている事が前回と違う点として挙げられています。

 全ての外出に際して、再び、外出証明書の携帯が必要になり、不携帯の場合は、135ユーロの罰金が課せられます。レストランに関しては、宅配、持ち帰りのみの営業となり、店内での飲食はできなくなります。

 詳細については、翌日発表とのことでしたが、つい一週間ほど前までは、あくまでロックダウンはせずにコロナと共に生きる、経済を回しながら、衛生管理を行う姿勢を崩さなかったマクロン大統領がロックダウンに踏切らざるを得なかったのには、フランスのあまりに急激で深刻な感染拡大があります。

  

再ロックダウンを発表するマクロン大統領

 それでも、今回の発表でも、現在の感染拡大は、ヨーロッパ全体で起こっていること・・というマクロン大統領。たしかにヨーロッパ全体で起こっていることには違いはありませんが、フランスは、他のヨーロッパ諸国とは群を抜いていることには言及しません。

 私の穿った見方かもしれませんが、あくまでヨーロッパ全体のこととしようとする不透明感からか、いつもの発表に比べて、力強さもオーラも感じられませんでした。

 しばらく自由に出かけられなくなるフランスでは、最後の一日、どこでも、大変な人出になること間違いありません。


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「ヨーロッパのコロナウィルス感染拡大 国の対策の取り方で明暗を分けた理由」

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2020年10月28日水曜日

フランスのコロナウィルスによる1日の死亡者500人突破 

 

メトロの駅で清掃・消毒している人を見かけるのは久しぶりだった

  

 毎日毎日、悪いニュースばかりのフランス。昨日は、1日のコロナウィルスによる死亡者が523人を記録しました。うち288人が病院、235人がEHPAD(エパッド・老人介護施設)における死亡者となっています。

 老人介護施設でのコロナウィルス感染については、第1波から甚大な被害を出していましたが、にも関わらず、ロックダウン解除後も、面会の家族との接触の問題などが叫ばれつつも、感染が全国的に拡大している状況下、一番リスクが高いことがわかっていた(実証済みだった)老人介護施設で再び多くの犠牲者が出ていることに憤りを感じます。

 実証済みといえば、第2波ともなれば、ほとんどのケースにおいて、実証済みなわけで、結局のところ、再びロックダウン・・という状況を招いてしまったフランスでは、全てが甘かったわけで、「ウィルスと共に生きる!」を掲げてきたものの、ウィルスとともに生きることはできなかったわけです。

 こんな年に限って、私は、滞在許可証の書き換えの年(10年に1回)、おまけに銀行のカードも今月末で期限切れで新しいものに切り替わるタイミング。今や、振り込みや送金などは、全てオンラインでできるので、滅多に銀行に行く必要もないのにこんな時に限って銀行へ。

 銀行のカードがないのは、かなり困るので、ロックダウンになる前になんとか取りに行かなければ・・と、昨日は、慌てて銀行へカードを引き取りに行ってきたのでした。銀行のサイトを見ると、現在は、午前中のみの営業になっていて、なんとか朝のうちに行かなければなりません。

 

感染防止用の手袋をしている人を見つけてちょっと感動


 何週間ぶりかで乗ったメトロは、なかなかの混雑ぶり、当然、人との距離を取るために座席に貼られていたステッカーなどは、何処へ行ってしまったのやら? しかし、マスク率はさすがに100%、メトロの中では、初めて感染防止用の手袋をしているおばさんを見つけて、こんなに気をつけている人もいるんだと妙に感激し、また、乗り換えの駅の構内では、いつになく、清掃・消毒(手すりなどをアルコールで除菌していました)をしている人を見かけて、さすがに緊迫感が増してきたことを実感しました。

 しかし、家に戻ってきてから、ふと、駅で清掃?消毒をしている人を見かけただけで、なんだかすごく特別なことだと感じている自分に、この程度の駅の掃除、日本だったら、平常時にもやっていること・・こんなことに驚いている自分に苦笑してしまいました。

 銀行に着いてみると、サイトには午前中のみの営業と書いてあったのに、実は一般の窓口の受付はすでに、終日、閉鎖されていました。なんのためのサイト??なんてことは、フランスでは通用しませんが、銀行から来ていた「カードの用意ができました」というレターを持っていたので、カードを受け取ることはでき、ついでに他のお願いまでしてくることができたのでした。

 ダメと言われて、あっさり引き下がっていては、フランスでは暮らしていけません。

 そんな、コロナウィルスで緊迫し始めている中、パリでは、凱旋門周辺、およびエッフェル塔付近(シャンドマルス)において、爆発物が仕掛けられたという、まさかの爆弾騒ぎまであり、近接するメトロ3線、郊外線1線の運行が一時停止するという事態が起こりました。

 先日起こったテロ事件から、いくらも時間が経っていないこともあり、不審物に対する警戒も高まっているのでしょう。先日のテロの際のマクロン大統領の「表現の自由は、断固として守る!」との声明に憤慨しているイスラム教の数カ国では、フランス製品の不買運動が起こるなど、摩擦も高まっています。

 コロナウィルス感染に加えて、テロの脅威も抱えるフランス・・フランスに平和が戻る日は遠そうです。

 一昨日あたりから、フランスのツイッターでもトレンドの上位は#confinement2(confinement=ロックダウン)(ロックダウン2)で占められ、夜に発表になるとされている再ロックダウンの詳細に国民も戦々恐々としています。


<関連> 私の予想は残念ながら当たってしまいました・・

「コロナウィルス第2波は、いつ来るか?」

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2020年10月27日火曜日

コロナウィルス感染第2波 待ったなしのフランスに残された道

 

   Des patients atteints du Covid-19 transférés depuis le CHU de Strasbourg arrivent à la gare Saint-Jean de Bordeaux, le 3 avril 2020


 一昨日のフランスの1日の新規感染者数は52,010人を記録し、この日の世界の感染者数を見ても、アメリカ 61,117人、インド 45,158人に次いで、世界第3位、いやいや、インドは超えて、世界第2位・・。しかし、人口を考えるとアメリカの人口はフランスの5倍、インドに至っては、21倍の国、実質的には、フランスは世界一とも言えます。

 この感染拡大は、フランス人の多くが本格的にバカンスに出始めた8月頃から徐々に増え始めましたが、特に、10月に入った頃(ここ1ヶ月ほど)からの上昇は、グラフの上昇曲線が斜めから縦線になるのではないかと思うほどの増加の仕方です。

 これには、Conseil Scientifique Covid-19 (コンセイユ サイエンティフィック)(フランスのコロナ対策の科学評議会・フランス政府に科学的助言を提言する機関)の議長・フランソワ・デルフレシ教授は、「フランスの1日の新規感染者数について、直近の公式発表の倍にあたる10万人程度になっている可能性がある。感染は、予想以上に早く拡大している。早急に次の対策を講じる必要がある」と発表しています。

 すでに、フランス北部を中心に医療崩壊が始まり、患者の移送も始まっています。先週の段階では、すでにオー・ド・フランス(フランス北部の地域圏)から、2人の患者がベルギーに移送され、先週末から週明けにかけて、ルーベ(フランス北部・ノール県)の病院では26人の患者が、リヨンから4名、ヌーベル・アキテーヌから8名が、飛行機やTGVを使って、国内の他地域に、移送されており、3月末から4月にかけて、フランスが必死に行なっていた国内大移動作戦が始まりました。

 今回は、感染がフランス全域に広がっているため、この移動大作戦がいつまで持つのかは、この感染の速度を考えると非常に悲観的になります。

 特別警戒地域での夜間ロックダウンが始まって、すでに、10日が経とうとしていますが、一向にこの夜間外出禁止の成果が表れず、それどころか、感染状況が悪化の一途を辿っていることから、新たな制限がここ一両日中にも発表されるようです。

 もはやフランスに残された道は、3月同様のフランス全土にわたる完全なロックダウン状態か? 地域によって夜間のみではなく終日ロックダウンを行うか、夜間の外出禁止に加えて、週末の外出禁止、もしくは、外出禁止時間帯を夜21時からではなく、19時からとか17時からにするという案も出ているようです。

 いずれにしても、もはや現在の夜間のみの外出禁止だけでは、フランスの感染は止められる状況ではなく、テレビのニュースなどでも、フランスはコントロールできていない状況になっていることを憚らずに述べるようになり、(当然だけど・・)、恐らく、ロックダウンしない限り、フランスで感染がおさまることはないかもしれない・・と多くの人が思い始めていると思います。

 検査で陽性になった人の隔離も、フランスのような観光大国にはホテルの空き部屋は山ほどあるので、それを利用すれば良かったと思いますが、感染者が1日、5万人も出ている状況では、もはや、その人たちを毎日毎日、隔離することも不可能で、家にいろと言っても、何かと理由をつけては出歩く陽性者を管理できないのであれば、ロックダウンしかないのではないか? と思ってしまうのです。

 前回のマクロン大統領の会見では、フランスはコントロールできている状態だと言い張っていましたが、コントロールできている状況で今の事態はありえないのです。

 ロックダウンが感染状態の最も深刻な地域のみだとしても、パリ(イル・ド・フランス)は、オー・ド・フランス(フランス北部)に次いで深刻な地域。私もロックダウン生活突入を覚悟して、今日もこれから銀行の用事を済ませに行ってきます。

 フランスでは、「国民のショックを考えて・・」という政府の発言をよく聞きますが、ロックダウンは、ショッキングなことではあっても、もはや、誰も驚かないと思います。


<関連>

「パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/21.html

 

2020年10月26日月曜日

新規感染者数5万人突破・2日で1万人増加 サマータイムも終わり 本格的な冬支度


Les chrysanthèmes "pompon" reviennent en force cette année. En forme de boule, ils donnent beaucoup de couleurs pour peu de feuillage apparent.


 秋休みとも言えるトゥーサン(万聖節・諸聖人の祝日)のバカンスが終わり、サマータイムも終わり、一段と冬の様相が深まっていく季節です。トゥーサンのバカンスというのは、カトリックの行事によるバカンスでフランスでは、皆が故郷に帰省して、お墓まいりに行く習慣があります。

 この季節のフランスのお墓は、なかなか華やかで、お墓一面に備えられたお花の様子から、この時期は、皆が意外と真面目にお墓参りに来ていることがわかります。日本で言うお盆のお墓まいりのような感じでしょうか? 家族が集まってお墓まいりをしたり一緒に食事をしたりします。

 家から歩いて行けるところにありながら、あまりお墓まいりをしない我が家でさえも、さすがにこの時期にお花がないのはかわいそうな気もして、一年のこの時期には、必ずお墓まいりをしています。

 このトゥーサンのバカンスが終わると、街は、さっそく、ノエル(クリスマス)の飾り付けに入ります。あらゆることがグズグズと遅いフランスで、唯一、早くから準備にかかるのがノエルです。

 サマータイムが終わって一時間、時間がずれたことに身体が慣れ始めると、あとは、グングン日も短くなり、朝は、遅くまで暗く、夜も早くに暗くなり、憂鬱な長い冬に入ります。

 そんな時期にフランスのコロナウィルス感染状況は最悪の一途を辿り、これで4日連続、一日の新規感染者数は新記録を更新し続け、5万人を突破、昨日は、52,010人を記録しています。4万人を突破してから3日目のことです。

 たった2日後に1万人増加するとは、感染の速度が尋常ではありません。1日5万人を超える感染が、実際に、さらに、病院での治療、病室の占拠状態に大きく関わってくるのは、その1〜2週間後のことです。そして、一度、入院すれば、滞在が長くなるのもコロナウィルス治療の特徴で、病院でのコロナ患者数はこうして堆積してくるのです。

 現在のイル・ド・フランスの集中治療室のコロナ患者の占拠率は67%、アルプ・オーベルローヌ地域では74%にまで上昇しています。満床になるのは、時間の問題です。

 1日に5万人の感染者が出ている状態では、もう、「犬も歩けば棒に当たる・・」ような状況で感染者に遭遇する感じがします。だいたい、検査で陽性になった人でも、フランスでは、隔離されることもなく、マスクさえすれば、外出していいような風潮で、これでは、いつどこで感染者に遭遇しているか? かなりのその確率も高くなっていることでしょう。

 娘がスタージュに通っている会社でも、感染者が出たということで、ミーティングが開かれたということでしたが、感染自体は会社で起こったものではないと判断されたようで、さらに、注意して、生活するようにという注意喚起や社内のキャンティーン(食堂)や休憩室などの衛生環境の改善(プラスチックのバリアが貼られたり、席の間隔がさらにあけられたり・・)に留まり、会社が閉鎖になったりすることはないようです。

 これだけ、感染が蔓延してしまっては、逆に感染者が出たくらいでは、誰もひるむこともなく、皆が感染に対して、衝撃を受けなくなっているのです。

 サマータイムの夏の時期と冬時刻の季節の差がやたらと大きいヨーロッパでは、夏は夜も10時くらいまでは明るく、開放的ですが、冬は、夜が長くなります。3月〜4月のロックダウンの際には、どんどん日も長くなり、明るくなる季節にどれだけ救われていたかわかりません。

 これから暖かくなっていく季節にと、私は、ベランダで日本から持ってきた野菜のタネを撒き、せっせと野菜を育て、明るい日差しのもとにどんどん育っていく野菜の成長を楽しんだりしていました。

 それが、今回は、どんどん日も短くなり、暗くなりがちな季節に向かっていく時期であることに何か一層、憂鬱な気分です。今では、寒くてベランダに出るのも躊躇われます。

 前回のロックダウンでは、家に閉じ込め状態の中、DVも大きな問題になりましたが、この冬の鬱屈した時期でのロックダウンともなれば、DV被害は、春のロックダウン以上に問題になりそうな気がしてなりません。


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「コロナウィルス監禁生活でのストレスの矛先 DV・暴動」

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2020年10月25日日曜日

新規感染者数4万5千人突破のフランス 取締りの警察もさらに強硬化

 

                                                      パリ市内を取り締まっているBRAVM


 昨日のフランスの一日の新規感染者数は、45,4222人。フランスは3日連続で、新記録を更新し続けています。当然のごとく、あらゆる数字が悪化しています。

 それでも、ロックダウンではなく、日中は街には人が往き交い、レストランなども全て営業していることもあり、週末ともなれば、気が緩みがちな街中を、一般の警察だけではなく、通常では、あまり目にすることのないBRAVM(Brigades de répression de l'action violente motorisées・暴力行動抑止団)がパリ市内を取り締まっています。

 このBRAVMは、通常は、テロやデモなどの暴動や暴力行為などの緊急事態に編成されるバイクで移動する憲兵隊のような性質をもつ連隊で彼らが身を包んでいる防護を兼ねたヘルメットを含めた制服も黒づくめで威圧感があり、退去の求め方なども警察よりもさらに容赦のない雰囲気が漂っています。

        

               歩いているだけで物騒な感じ漂うBRAVM


 土曜日の午後、パリのあるレストランのテラスでは、賑やかにグラスを傾ける人々のもとに現れた彼らは、歓談するお客さんたちに向かって、「ソーシャルディスタンスが取れていませんから、今すぐに退去してください!」と退去命令。

 突然の彼らの登場に動揺しつつも、彼らの威圧的で有無を言わさない強硬な態度に、慌てて立ち去るお客さんたちは、支払いをする間さえも与えられません。

 お客さんにとっても、あまりに突然の彼らの登場に動揺してのことなのか? ビールを片手に、「マスクは、ここに持ってきている・・」とか、ビール片手に席だけ移動して居座ろうとしたりしていましたが、お金を払わないで済んだこともあってか? 彼らの威圧感からか? 一応、文句を言い返しつつも、わりとあっさり退散。

 レストランの店主でさえも料金を回収できなかったにも関わらず、すごすごとテーブルを片付け、店内に消えて行きました。

 本来ならば、レストラン側が衛生管理の基準に満たない状況での営業を違反と見なされて罰金、あるいは営業停止となっても致し方ない状況でもありますが、直接、お客さんを退散させることで、直ちに人が集まっている状態を有無を言わさずに、とにかく即座に解散させるやり方は、フランスの取り締まりには必要なのかもしれません。

                   

             環状線で車を止めて外出証明書のチェックをする警察
      

 21時以降の外出禁止の取締りは、車での移動の取締りも強化。パリ市内を通る環状線は午後9時になると、警察が一台一台、車を止めてチェックを行なっています。もちろん、外出証明書がない場合は、一人につき、135ユーロの罰金です。

 もちろん、渋滞に巻き込まれたなどの言い訳も一切、通用しません。

 それでも出かける若者たちは、一応、門限に間に合うように、まるでシンデレラのように必死な様子で、21時近くになると、バスやメトロに乗るために、普段は決して急いで走ることのない彼らが走っている様子が見かけられるそうです。

 また、パリで若者に大人気の有名な大きなレストランなどは、夜8時半ごろになると、彼らが読んでいるUber(タクシー)の長蛇の列ができるそうです。

 21時門限では、はなから楽しめないと、家に集まり食事をしている人たちも少なくないようですが、それでも外に出たい!外で楽しみたい!と思う若者たちが、普段の生活ではありえない門限に間に合うように必死になっている姿には、滅多に見られるものではありません。(単に罰金を払いたくないのだと思いますが・・)

 そんな彼らに、ただただ、集まるな!戯れるな!と怒るには忍びない気もするのですが、そこは、今のフランスの状況を考えれば、今しばらくは、辛抱してもらいたい・・と、思うのです。


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「決死のお迎えで、ある日、気付いたこと・・フランス人は、走らない」

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2020年10月24日土曜日

フランスのコロナウィルス感染 第2波は第1波よりも深刻かもしれない

 


 フランスの1日の新規感染者数は、連続で新記録を更新中、一昨日には、初めて4万人を突破して41,622人を記録したと思ったら、昨日は、さらにそれを上回る 43,032人を記録しました。もう何と言ったらいいのやら・・。

 また、Santé publique France (フランス衛生局)は、初めて、地方自治体レベルの細かい地域にわたるコロナウィルス発生率を記した地図を発表しました。

 この地図で見える様子が、今回のフランスがまさに直面しているコロナウィルス感染第2波が実は、第1波よりも悲惨な状況に陥るかもしれないとささやかれ始めている所以です。

 というのも、この色分けされた地図から見えるように、ほとんど白い地域(発生率の低い地域)がなく、感染が全国的にくまなく広がっていることから、第1波の際には、満床状態に陥った地域から、病床に余裕のある地域への患者の搬送をヘリコプターやTGVを使って、少しでも犠牲者を散らし、減らしていく努力ができたのですが、今回の第2波の感染が全国的にまんべんなく広がり、どこの地域でも病院が逼迫し続けている状況では、それが不可能となってしまうのです。

 毎日、4万人以上の新規感染者がいるのですから、当然といえば、当然でもあるのですが、恐ろしいことに、病院の逼迫は、日々、深刻な状態に陥っており、イル・ド・フランスのコロナウィルス患者の集中治療室の占拠率は、62%を超えています。

 ARS(Agence Régionale de Santé)(地方保健機関)の発表によれば、昨日、すでに、オー・ド・フランス(フランス北部の地域圏)から、2人の患者がベルギーに搬送されました。

 つまり、オー・ド・フランスの病院では、すでに医療崩壊が起こっており、患者の治療が抱え切れない状態になっており、しかも、その患者の搬送先がベルギーだということも国内に余裕がないという状況を示しています。

 たしかに上の地図を見るところ、フランス北部は、ブルーの色も濃く(発生率が高い)、ほとんど濃紺の状態、北部から3分の1くらいまでは、真っ青状態、フランス国内のかろうじて青の薄い地域に患者を搬送するよりもベルギーの方が近かったということもあるのかもしれません。

 とはいえ、余裕さえあれば、ベルギーは外国、自国内で何とかなるのであれば、フランス国内に搬送するのが普通だと思われます。

 テレビの報道などでも、あちこちの病院の逼迫状態、医療従事者が悲鳴をあげている様子が報道されています。なかでも、患者をベルギーへ搬送したというオー・ド・フランスの病院の医師は、「現在、我々は、3月25日頃のレベルの集中治療を受ける患者を抱えています」と語っています。

 3月25日頃といえば、第1波の際に、ロックダウンされてまもなくの、犠牲者のグラフが急上昇した時期です。今、1日の新規感染者数4万人の状態があの3月25日のグラフの波のポイントにいると考えると、これは、ほんの入り口のようなもので、それは、恐ろしいことです。

 そして、現在、21時以降の外出禁止(夜間ロックダウン)等の措置が取られ始めたのが17日、まだ、一週間しか経っていません。この効果を期待している間に感染はどんどん拡大していき、夜間ロックダウンの地域も拡大されましたが、どうやら、感染の速度が上回っているようです。

 マクロン大統領は、この逼迫した状況について、「今後、さらなる夜間ロックダウンの地域を広げるか? それとも地域的な全日にわたる再ロックダウンを行うかどうかの検討は現時点では時期尚早、少なくとも来週半ばまで様子を見る」としています。

 このコロナウィルス対応において、これまでことごとく、打つ手が後手後手に回っている感が拭えないマクロン大統領、フランスは、夜間だけのロックダウンで乗り切ることができるのでしょうか?

 チェコとアイルランド、ウェールズは、22日から再ロックダウンに突入しています。


<関連>

「コロナウィルスの感染は、明らかに気温が影響している ドイツの食肉処理工場で1500人感染」https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/1500.html

「パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/21.html






2020年10月23日金曜日

新規感染者数4万人突破のフランス 夜間ロックダウン54地域に拡大

 

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 ヨーロッパのコロナウィルス感染第2波が叫ばれ始めていますが、やはり、フランスは、他のヨーロッパ諸国の追随を許さないことを示すかのごとく、また新記録を更新し、とうとう昨日の1日の新規感染者数は、41,622人。4万人を軽々と超えてしまいました。

 この一週間のフランスの新規感染者数は189,359人、約19万人もの感染者が出ているのです。もう数字の感覚が麻痺してきて、何の数字だかよくわからなくなります。

 ヨーロッパ全体の感染状況が悪化しているのは事実ですが、同日の、ヨーロッパ諸国の新規感染者数は、スペイン20,986人、イタリア16,079人、イギリス 21,242人、ドイツ 5,780人と、フランスの4万人とは比べものになりません。

 ほんとうに、フランスは、一体、どこまでいくの? か 不安です。

 現在のフランスでは、1日に200件以上のクラスターが発見され、過去7日間で10,166人がコロナウィルスのために入院し、そのうちの1,627人が ICUでの集中治療を受けています。

 現在、集中治療を受けている患者の総数は2,248人、集中治療室での平均滞在期間は8週間近いため、このまま患者数が増え続ければ、患者が積もり重なって、パンク状態になる日もそう遠くはありません。

 この一週間のフランスのコロナウィルスによる死者は1,085人、一日150人近くが亡くなっている計算です。

 ジャン・カステックス首相は、会見で、「コロナウィルス感染の流通は非常に高いレベルに達し、15日間で症例数は2倍、65歳以上の症例数は3倍になっている。事態は深刻です」と発表し、パリ・イル・ド・フランスなどで、すでに開始されている9時以降の外出禁止(夜間ロックダウン)を前回指定された地域に、さらに38地域を加えた、合計54の地域に拡大することを発表しました。フランスの地図が再び真っ赤に染まり始めました。

 すでに先週から夜間外出禁止の措置が始まっているイル・ド・フランスを含む8つの大都市圏では、毎晩12,000人の警察と憲兵隊が動員されチェックが行われていますが、すでに一週間で、4,777人が違反として切符を切られており、それぞれ135ユーロの罰金が課せられています。

 これだけの深刻な状況にも関わらず、深刻な状況を認識せずに、一週間でこれだけの違反が摘発されることがさすがフランスだなと思います。

 この一週間のフランスの新規感染者数は189,359人、約19万人の感染者が出ているのです。

 これだけの感染者がいるということは、もう夜間の外出を禁止したところで、日中でさえ、普通に感染のリスクが高まっているということ・・そりゃ、やらないよりはやったほうがいいに決まっていますが、この感染者上昇の波がそれだけで抑えられる状態なのかは疑問が残ります。

 イル・ド・フランスの病床のコロナウィルス患者の占拠率は60%を超えている状態です。

 しかも、此の期に及んで、地域間の移動に関しては、放置されたままです。

 感染者追跡については、開発したにも関わらず、わずか3.5%しかダウンロードされることなく失敗に終わったアプリ「STOP COVID」に変わって、新しいアプリ「TOUS ANTI COVID」が新しく開発されたことを発表し、ダウンロードを呼びかけています。

 しかし、フランスのこと、少なくとも検査で陽性となった人には、アプリのダウンロードを義務化するなどの措置を取らなければ、ただでさえ縛られることを嫌う彼らに、いくらアプリが新しくなったとて、ただ、普通にダウンロードを呼びかけるだけでは、それが浸透するのは難しいのではないかと思っています。

 義務化するか(罰金を課すか)、何らかの利点がなければ自らを締め付けるようなことをフランス人が積極的にするはずがありません。

 このところ、1日の感染者数が一週間ごとに1万人単位で増えているフランス。

 夜間外出禁止の効果がいつ表れて、これが減少してくれるのか? それとも、もはやそれを上回る勢いに乗ってしまったのか? 今後の新記録更新がさらに心配されます。


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「フランスの新規感染者3万人超えの中の医療介護者のデモ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_16.html

2020年10月22日木曜日

テロの犠牲者サミュエル・パティの国葬

 


 先週金曜日に起こったテロ事件により首を掻き切られて死亡した表現の自由を担当していた教師、サミュエル・パティの国葬が昨夜、パリソルボンヌ大学で行われました。

 イスラム過激派の犯行であったことから、テロに屈しないフランスの姿勢を明確に世間に知らしめるべく行われたセレモニーは、マクロン大統領をはじめとする政府首脳が勢揃い、故人の教え子や友人、家族なども参加しての、荘厳なものでした。


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 セレモニーの場所にソルボンヌ大学が選ばれたのも、教育の現場での授業がもとで起こった事件に対するフランスの国としての威厳と確固とした姿勢を示したと言えます。

 毎回、国単位のセレモニーを見るたびに、フランスは、本当にセレモニーの演出が上手でセンスがいいなと感心します。


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 棺が運ばれてくる際には、家族の希望で、彼の好きだったアイルランドのグループ「U2」の曲「National Tribute」が会場に流されました。1992年にリリースされたこの曲は、愛だけでなく、協調と団結についても歌われています。

 正装に身を包んだ兵士たちが棺を中央に運ぶと、棺には Légion d’honneur(彼の名誉を讃えるメダル)が置かれた赤いクッションが乗せられました。

 故人の友人、同僚、教え子が弔辞を述べた後に、マクロン大統領も弔辞を述べました。

 「サミュエル・パティは悲惨な陰謀と他者への憎悪の犠牲者になってしまいました。私たちは、あなたが教えた自由を擁護し続けていきます。彼は、フランスの顔・自由の顔として私たちの中に生き続けます。」と。


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 安全上の理由からか、故人の家族は、テレビで放映されることはありませんでしたが、あまりに大きな波紋を生んだ彼の死を家族はどう受け止めているのでしょうか? 一教師の葬儀が国葬となり、政府の首脳が首を揃える葬儀。

 家族も教え子たちも友人でさえも、身近な人が亡くなったというだけでも痛ましいことなのに、しかもテロにより殺された・・しかも、想像さえつき難い陰惨な殺され方で・・。

 私の祖父が亡くなった時には、会社をあげての、かなり大規模な葬儀で、立派な葬儀がすごいなと思った一方で、何か家族だけで祖父の死を傷めないことも少し残念に思ったことがありました。今回のサミュエル・パティの場合は、テロによる被害者ということもあり、テロリストに向けてのフランスの圧倒的な力と団結を示すという意味も大きかったと思います。

 きっと、家族にとっては何が何だかわけがわからないうちに事が進んでいく・・そんな感じかもしれません。

 事件から数日が経って、犯人の背後には、数人の協力者がいた事が発覚してきています。犯人であるとはいえ、若干18歳の青年が人をこれほど陰惨な形で人を殺すほどの恨みや怒りを持地ながら生きていたのかということがある意味、気の毒にも感じられます。

 実際に犯行に及んだ18歳の青年はその場で射殺されていますが、その背後にいた大人たちの卑劣さが空恐ろしく、彼らがどんな気持ちでこの国葬を見ていたのかと思います。

 今、フランスはコロナウィルス感染も大変な状況、世間の注目が一気にこのテロ事件に持って行かれています。

 今、フランスでは、「表現の自由を守ろう」そんなテレビコマーシャルまで流されています。


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「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html

「フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_19.html




2020年10月21日水曜日

好きと嫌い 感覚的なものに頼る選択

 


 例えば、好きな人ができたとして、どこが好きかと言われると、なんとなく、ぼんやりとしたものであることが多い一方で、嫌いになる場合は、かなり事細かに詳しく述べることができるような気がします。

 たまたま、カーペンターズの曲が流れてきて、なんとなく英語の音がきれいだ・・と思いながら、母を思い出しながら、好きと嫌いということについて考えていました。

 母は、英語が好きで、大学でも英語の勉強をし、しばらくお勤めをしていましたが、その後、結婚して、専業主婦になりましたが、(まあ、母の時代は、専業主婦が当たり前の日本でしたから・・)私が生まれて、物心つく頃には、私に英語を教えてくれていました。

 私は、小さい時から、寝る前には、英語の物語のテープを子守唄がわりに聴きながら、寝ていました。絵本も付いているそのお話は、「ぐるんぱのようちえん」や、「たろうのおでかけ」など、いくつかありましたが、子供の頃ですから、吸収も良く、今となっては、すっかり忘れてしまいましたが、当時は、暗唱できるほど、物語を英語で記憶していました。

 単語一つ一つの意味や、文法などはわからなくても、歌を覚えるように、文章を覚えてしまうのですから、子供の時の記憶力というのは、すごいものです。

 母は、その後、私だけでなく、私と同じ年頃の近所の子供を集めて家で英語を教えるようになりました。それはそれは、熱心で、丁寧で、楽しそうで、母が亡くなる数年前まで、母は、家で英語を教えるとともに、子供に英語を教えるための教材を作ったりして、その教材のための講演なども時々やっていました。

 私が成人してからは、そんな母の教材のテープの録音に付いて行ったり、講演会の時は、手伝いに行ったりしていましたが、母のその楽しそうな感じは、ちょっと羨ましいほどでしたし、講演会などとなると、もう止まらない・・といった勢いで話し続けるので、私は、母に聞いたことがありました。

 「英語のどこがそんなに好きなの?」と・・。

 すると、母から帰ってきたのは、意外な答えでした。「英語の音が好き・・」と・・。

 そんな感覚的な理由が母の口から出てきたことは、その時は、とても意外でしたが、そもそも「好き」ということは、感覚的なことに根ざしているのかもしれません。そして、その感覚的なものというのは、なかなか根強く、あながちバカにできないものだということも、過去のいくつもの場面を振り返ると思いあたります。

 音楽などでも英語の歌詞は、きれいにメロディーにのって響くように私自身も感じますし、そして、何よりも私自身も英語の音が好きだな〜と、いつの間にか思うようになっていたのです。

 私が子供の頃は、我が家の車の中は、母が好きだったパットブーンの曲がよく流れていました。英語の音がきれいだ・・心地よい・・と、最近、時々、音楽を聴いていると思うのは、そんな風に知らず知らずのうちに、私の中で慣れ親しんでいた音だからなのかもしれません。

 音が好き、心地よい・・そんな感覚的なものは、友人、恋人、仕事、職場など・・何かを選択するうえでも、一見、漠然としているようでも、結構、大事なポイントだったりするかもしれません。

 娘の幼少期、(2歳くらいの頃)彼女は、出会った人を一瞬で見抜く力がありました。もう動物的といってもいいくらいな反応でした。

 初めて日本に行った時、初めて会うたくさんの親戚の中から、一目で信頼できる人を見つけてベッタリ・・また、逆にフランスで、家族で散歩に出かけた時に、たまたまローラースケートで遊びに来ていた少年たちと写真を撮ってもらおうと主人がその少年の一人に抱っこを頼んだら、火がついたように泣き出し、困ってしまったこともありました。その泣き方の強烈さは、ちょっと周りの人も驚くほどでした。

 海外生活をしていると、日本では、決して出会うことがなかったであろう色々な人に遭遇します。そんな時、「ん???なんか、変だな・・この人・・何かどこか妙な感じがする・・」と、思うことがたまにありますが、ちょっと話してみると、慣れてくることもあって、違和感が薄れるのですが、よくよく知っていくうちに、やっぱり、あの時の違和感は、こういうことだったんだ・・と思うことがあります。

 直感とか、なんとなく感じることは、あながち、間違いでもないのです。直感だけで動くというのは何ですが、こういう感覚的に感じるものは、長い目で見てみると、あながちバカにしたものでもないかもしれません。

 ちなみに私は、フランスに住んで20年以上になりますが、フランス語の音がきれいだとか、好きだとか思ったことは、今のところ、ありません。


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「母の英語教育

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2020年10月20日火曜日

コロナ禍中のフランスの歯医者 ② インプラントと入れ歯

 


 前回、コロナ禍中に感染が怖くて行くのをためらっていた歯医者さんに、どうしても行かざるを得なくなって、渋々、出かけたら、思いの外、衛生管理がなされていて、(体温チェックやプラスチックのガウンとハットの着用や荷物のお預かりなどなど・・)めんどくさいな〜と思いつつも、やっぱり、この方が安心かな?と、思いなおして、着ていたガウンとハットを返して、帰ろうとしたら、次の患者さんがやってきて、なんの躊躇いもなしに私がさっきまで着ていたガウンとハットを次の患者さんに着るように促したのには、絶句しました。

 感染回避のために着用するガウンって普通、使い捨てだろ!あまりに唖然として、その場で言葉が出てこなかったのですが、あれから家に戻ってからも、モヤモヤして・・やはり、違うよな・・と思いながら、着ていたものを洗濯したり、シャワーを浴びたり・・今度、行った時には、あのガウンについて、確認しなければ・・と強く心に決めていました。

 そして、2回目の診察の日がやってきました。「絶対にガウンが新品かどうか確認しなきゃ! 」もしかして、使い回しのものを出されたら、「それは、おかしいでしょ!・・とちゃんと言わなきゃ!」と思いながら行くと、あっさり、新品のプラスチックのガウンがダンボールの中に雑に置かれており、「あっ!今日は、大丈夫だ〜」と、肩すかしを食ったのでした。

 前回は、もう土台もダメになってしまった歯を抜かれたので、さて、今日は、どうするのか?と思っていると、前回、歯を抜いた箇所をちょっとイジって終わり・・しばらく、傷が塞がるまで待たなければいけないとのこと・・。

 いつまでも、治療が進まず、見通しが立たないのも、嫌なので、このまま放っておくわけには行かないし、この先、どういう選択肢があるのか、恐る恐る聞いてみました。

 歯医者といえば、なかなかな金額を請求されるので、予め、見積もりを出してもらって、それから、その見積もりをミューチュエル(健康保険でカバーされない分をカバーしてくれる保険)の会社に送って、どのくらい保証されるのかを聞いてみてから、どの程度の治療にしてもらうのかを決めるのです。

 結局のところ、インプラントにするか、つけ外しのきく器具にするか?どちらかだと言うのです。つけ外しのきく器具???よくよく考えてみれば、それって入れ歯のこと???入れ歯って入れ歯??・・ショックでした。

 インプラントが高いのだけは知っていたので、はなから、「インプラント???ムリムリムリムリ!!!お金ないもん!」と言うと、「それだと、入れ歯になるけど・・取り外しのきく入れ歯ならセキュリテソーシャルも一部はきくけど、インプラントは、セキュリテソーシャルは効かない・・」と、絶望的な回答。

 つけ外しができると言うと、なんだか、一見、便利そうな気もしてしまうのですが、考えてみれば、歯など、本来、つけ外しの必要がないもので、エラく面倒に違いありません。

 そして、私は、何より「入れ歯??」というものについて悩む日が来たことがショックでなりませんでした。

 金額は、インプラントで1本、2000ユーロ(約25万円)、入れ歯で1200ユーロ(約15万円)、どちらにしても、なかなかな出費ですが、正直、インプラントと入れ歯の値段は、もっともっと違うのかと思っていました。

 まだ、保険会社に見積もりを送っていないので、どのくらいカバーされるかはわかりませんが、保険会社の回答を待つまでもなく、毎日毎日、面倒な思いをすることを考えれば、1000ユーロの違いは、目を瞑るべきかと思い始めています。

 それにしても、入れ歯について悩む日が来たことに、何よりショックを受けている私なのであります。

 動物は、歯が弱り始めることで、衰弱していくと言いますが、まさに私もそんな年齢に達しているのかと思うと「ガウンを使い回すな!」と息巻いていた私も、入れ歯ショックで、しょぼんとして帰ってきたのです。

 そして、家に帰ってきてから、思い返してみると、そういえば、体温チェックがなかった!と、また後になってから、思い出すのでした。

 一つのことが気になると、その他には、注意が行かなくなる・・これも老化の一部です。


<関連>「コロナ禍中のフランスの歯医者 ①」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_9.html



2020年10月19日月曜日

フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ

                                                                                                                                

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 サミュエル・パティは、今やフランスで最も有名な教師になりました。

 この週末は、パリ、マルセイユ、ボルドー、リール、リヨンなどの多くの都市で、金曜日の夕方に路上で首を掻き切られるという衝撃的な殺され方をした教師サミュエル・パティの追悼デモが行われました。このデモは、フランス全土で数万人規模のデモになり、その衝撃の大きさを物語っています。

 彼が行った表現の自由についての講義が物議を醸し、結果、テロリストの標的になったことから、全国から、多くの教師や教師を志している人々が参加し、追悼デモということもありますが、いつものデモとは、少々異なるものでした。

 コロナウィルス感染の第二波を迎えているフランスで、また・・デモ・・と憂鬱な気分になりましたが、様子を見ると、暴れる人もおらず、何よりマスク率が高くて、行儀が良い・・さすがに教育者が多いデモなのだと変なところに感心しました。

 パリのリパブリック広場には、ジャン・カステックス首相、パリ・アン・イダルゴ市長なども参加し、テロに屈しないと声明を発表しました。

 表現の自由の講義を担当していたこの教師が殺されたのは、いくつかの誤解も重なっているようで、彼が惨殺された原因となったマホメットの風刺画を表現の自由の講義で使用した際に、イスラム教徒の生徒には、「ショックが大きいかもしれないので、退席してもよい」と言ったことが、「イスラム教徒は教室から出て行け!」と言ったとSNSで拡散されており、実際の犯人も実際の授業に参加していたわけではなく、この間違った情報により、この凶行に及んだと思われます。

 しかも、犯人は、標的であった教師を自分で確認することができず(それほどよく知らない相手だということ)、同校の学生に300ユーロを現金で支払い、ビデオを撮りたいから、彼が出てきたら、教えてほしいと頼んでいます。

 教えた生徒も、知らなかったとはいえ、まさか、このような殺人事件の片棒を担いでしまったことにさぞかし後味の悪い思いをしていることでしょう。 

 それにしても、反抗したり、話し合ったりするわけでもなく、いきなり首を掻き切られるのですから、恐ろしいことです。

 このデモには、イスラム教徒も参加しており、これはイスラム教がやらせた凶行ではない、これはテロリストの犯行だ!と訴えているグループもありました。

 私の周りにも、娘の元同級生で、敬虔なイスラム教徒のママ友家族がいますが、パパ、ママともにお医者さんで、至極、真っ当で、本当に親切で勤勉な優しい家族です。あの人たちがこれらのテロリストと同じに見られることには、とても納得がいきません。

 確かに過激派とされるイスラム教徒がいるのは確かですが、イスラム教全体をアンチとすることには、注意しなければなりません。

 宗教の話題は、なかなかセンシティブで、誰とでも気軽に宗教の話ができるわけではありませんが、表現の自由を教えるならば、違う宗教、違う意見の人それぞれを認め、話し合うことができるということを教えて欲しいと思うのです。

 フランス人は、一般的に数人が集まって話していても、それぞれが自分の言いたいことを言って、話全体としては、収集がつかなくなっていることが多いのですが、それは、それで良いのです。それぞれが自分の言いたいことを言って、スッキリ、討論になっても根に持つことはあまりありません。

 そんな一般的なフランス人の討論会のようなことにはならずに、意見をぶつけあうこともなく、いきなり凶行に及ぶのがテロだと思うのですが、やはり、彼らの社会的な居心地の悪さが鬱屈した結果なのではないかと思うのです。

 犯人の18歳の青年は、射殺されてしまいましたが、関係者と見られる周囲の人11人が拘留されています。実際に亡くなった犯人よりも周囲の人の方が危険人物としてマークされていた人が多かったようで、周囲に洗脳されて犯行に及んだのか?煽られて犯行に及んだのか? どちらにしても、一人の犯行ではなさそうで、さらなる追求が待たれます。

 この手の事件に関しては、事件そのものは大々的に報道されるのですが、その後に発覚したであろう犯行の背景にあるものなどを報道してくれないので、すぐに事件も忘れられていきます。本当は、そこのところまで、しっかり報道して世間に疑問を投げかける・・そんな風に報道してほしいものです。


<関連>

「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html  


 





2020年10月18日日曜日

もうカーフールで魚は買わない

    


 我が家の近くにはマルシェがないので、食料品の買い物は、ほぼカーフールで済ませています。

 フランス人は、圧倒的に肉食で、スーパーマーケットで買える魚は一年を通して、ほぼ季節感のない、いつもいつも同じ魚ばかり、サーモン、スズキ、舌平目、鯛、アンコウ、イワシ、マグロ、見事にオレンジ色に茹で上がったエビ、プラスチックのような肉厚のイカなどなど、結構な値段がするにも関わらず、そのクォリティには、今まで、ほとほと散々な目にあってきました。

 いつか、たまには、ちょっと贅沢に舌平目のムニエルでも・・と思って、高いな・・と思いつつも買ったのに、身はコチコチ、味は、なぜか牛タンの味というショッキングなことがありました。

 それ以来、カーフールでは、滅多に魚を買うことはなく、魚といえば、もっぱらPICARD(ピカール)の冷凍のサバを食べています。このPICARDのサバばかりは、本当にいつ買っても安定のクォリティで、間違いがないのです。

 それでも、日本人、魚好きの私としては、買い物に行けば、いじましく、一応、魚売り場を確認し、もしかしたら、美味しい魚があるかもしれないと儚い希望を捨てきれないのです。

 昨日、いつも通り、魚売り場をのぞいてみると、なんと、珍しいことにアジを売っていたのです。なぜか、フランスでは、アジという魚が売っていることは、稀で、しばらくアジの目の前であれこれと考え、パックになっているものだと量が多すぎるので、売り場で直接おじさんに頼んで、アジを2匹だけ買ったのです。

 「え??2匹??って言った?」と聞き返されましたが、「ハイ、2匹だけ・・生で食べても大丈夫?」と確認して、一匹は、アジのタタキに、もう一匹は、焼いて食べようと、いそいそと家に帰って来ました。

 さっそく、買ってきたアジの一匹を開き、皮を剥ぎ、細かく刻んで、生姜をすり、ネギと紫蘇の葉を刻んで、アジのタタキを作りました。カーフールで買ったとは思えないほど、身はプリプリしていて、まことに美味しいアジでした。

 思わず、2匹しか買わな買ったことを悔いて、追加に買いに走ろうと思ったくらいでした。

 しかし、その日は、アパートの排気口の点検の人が来ることになっていたので、外出はできずに思い留まったていたのです。こんなに美味しいならば、アジの干物も作ろうかな?アジフライもいいな・・小ぶりのものなら、南蛮漬けもいいなと、アジを使ったお料理をぐるぐると考え始めていたのです。

 しかし、とりあえず、あともう一匹あるのだし、欲張るのは止めようと、デザートを食べながら、最近、また一人暮らしを始めた娘に「ちょー美味しい!食べさせてあげられなくて、残念!」などと、アジのタタキの写真を送ったりしていたのです。

 ところが、食事が終わって3時間後くらいに、急にムカムカ、気持ちが悪くなってきて、ちょっと吐いたら、楽になるかな?と思って一度、吐いたのを機に、もうそれからは吐き気が止まらなくなり、トイレに駆け込むことになったのです。

 強烈な胃の痛みと、吐き気と下痢に、アブラ汗が止まらず、もはやトイレに座っているのも辛い状態になりました。身体を支えるために、トイレにスーツケースを引っ張り込んで、バケツ片手にぐったり身体をスーツケースにうつ伏せて、ひたすら耐え続けたのです。

 これまで何かを食べて食あたりしたりしたことはまるでない私です。いつもと違うもので、食べたといえば、間違いなくアジ・・あんなに美味しかったアジを今では、恨めしく、もう二度とカーフールでお魚を買うものか!!と思いながら、なんとか、ベッドに這っていける状態になって、ひたすら、水を飲みながら、ベッドに横たわりました。

 もはや、ipadでYouTubeを見たりする元気もなく、あぶら汗をかいていたと思ったら、今度は、強烈な寒気に襲われ、手足が冷たくなってくるのを震えながら、いつの間にか眠ってしまったのでした。

 夜中に目を覚ますと、少し、症状はおさまっていましたが、さすがに何かを食べる勇気はなく、また、ひたすら水を飲んで、今日はもうダメだ・・寝よう!と思いましたが、こんなに昼間に寝てしまって、また眠れるか?と心配でしたが、身体はぐったりしていて、横になると、たちまち、グッスリ眠りました。

 こんな状態では、一人で医者に出かけることもできない・・ひたすら、おさまるのを祈るように待ち、翌日、冷蔵庫に残っていたもう一匹のアジを再び、顔を見るのも怖いくらいで、そのまま捨てました。

 食あたりのあまりに暴力的な痛みと恐ろしさに今後、二度とカーフールで魚を買うものか!!と私は、固く心に誓ったのでした。


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「やっぱりフランス人は、肉食だなと思わされるパリのスーパーの魚売場」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_74.html

2020年10月17日土曜日

閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト


         Neuf personnes interpellées dans le cadre de l'enquête sur l'assassinat d'un professeur d'histoire vendredi à Conflans-Sainte-Honorine dans les Yvelines.


 閑静な住宅街で突如起こった陰惨な事件にフランスは、震撼としました。金曜日の午後5時頃、パリ近郊のイブリンにあるコンフラン-サンテ-ホノリンで中学校の歴史の教師が路上で首を掻き切られて殺されたのです。

 犯人は犯行に使った長さ数十センチのナイフを手に、通りすがりの通行人を人質にとり、逃げようとしていたところを数分後、ヴァルドワーズの隣の町エラニーで警官に射殺されました。

 殺された教師は、表現の自由に関する講義を行っており、授業中にモハメッドの風刺画などを引用したことから、その講義がイスラム教徒の生徒やその家族などの間で、物議を醸しており、その様子などがSNSで取り上げられていたようです。

 授業には、イスラム教徒には、特に出席を促されており、かなり挑発的であったことも確認されています。だからと言って、殺す理由には、なりませんが・・。

 この授業に関しては、教育顧問(CPE)と校長との話し合いの時間が持たれたりしましたが、今週初めに喧騒は落ち着いたように見られていました。 

 犯人の18歳の青年は、その教師の講義を直接に受けていたではなく、さっそく、彼がこの凶行に及んだ経緯の捜査が始まり、関係したと見られる9名(犯人の家族が中心)が拘留されました。

 この青年は、警察も全くノーマークだった人物で、新たな背景が調査されています。

 政府はこの事件をテロと認定し、当日、ベルギーに出かけていたマクロン大統領もその日の夜のうちに現場に駆けつけ、現場から非常に厳しい面持ちで、国民に向けて、「このようなテロ行為を放ってはおかない 国民の安全を守る」と宣言しました。

 フランスでは、今年に入ってからのテロ事件は5回目で、つい3週間前もパリ11区にあるシャルリー・エブド(風刺週刊紙)の元本社前で、休憩中であった数名がナイフで襲われ、うち2名が重傷を負うテロと思われる事件が起こり、パリ11区は俄かにロックダウン状態になりました。

 あの時も凶器はナイフで、被害者は、顔を切りつけられており、数時間のうちに逮捕されています。

 共通するのは、18歳という年齢と、前回の犯人もパキスタン出身だったり、アルジェリア出身だったりの移民で、今回の犯人もロシア出身のチェチェン国籍、彼ら個人だけの犯行とは考え難く、背後にいる人間の存在が認められることです。

 フランスでは、18歳は成人ではありますが、まだほんの大人の入り口に立っている若者、前回の犯人たちは、逮捕されていますが、今回の青年は、命を落としています。

 まだ、人生において、経験も少なく、未来があったはずの18歳の青年たちが、自分の人生を台無しにしてまで、人を傷つけ、命を奪うほどの怒りや恨みにかられて凶行に及んでしまう背景は何なのでしょう?

 今回の犯人は、射殺されてしまいましたが、彼がどのように育ち、何を考えていたのか?なぜ、このような凶行に及んだのかを知ることができないのは、とても残念です。

 18歳という年齢は、血気盛んな年齢ということもあるのかもしれませんが、ある意味、純粋に思い込む年齢と考えることもでき、また、移民ということで、その虐げられた生い立ちなどにも原因があるかもしれません。

 彼らは、加害者ではありますが、別の観点からすれば、被害者でもあるかもしれません。特に、イスラム教という宗教がらみだと、闇はなおさら深いのです。テロ行為が宗教のもとでは、正当化されるのも恐ろしい現実です。

 そして、しかも、実際に凶行に及ぶのが、まだ大人になりきっていない若者であることにやり切れなさを感じるのです。

 今回のテロは、到底、事件とは、無縁と思われている住宅街で起こったことがさらに衝撃を大きくしていますが、National Antiterrorist Prosecutor's Office(PNAT)は、「テロに関連する暗殺」と「刑事テロ協会」のために開設された調査を直ちに開始したと発表しました。

 しかし、この事件をテロと認定して抑えつけるだけでは、この種の事件は、永遠に続きます。彼らが犯行に及ぶ背景を詳しく知ること、そして、これを正しく報道することも何らかの解決の糸口になるのではないかと思っています。


<関連>

「シャルリー・エブド元本社前でのテロ事件でパリ11区、俄かロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/11.html












2020年10月16日金曜日

フランスの新規感染者3万人超えの中の医療介護者のデモ

    Manifestation des personnels de santé, du social et du médico-social à Avignon ce jeudi 15 octobre pour demander des moyens et de meilleurs salaires


 とうとうフランスの1日の新規感染者数が3万人を超え、30621人を記録してしまいました。そんな中、この状況下に、最も深刻なデモが行われています。

 さすが、デモの国、フランス・・夜の外出禁止令が敷かれ、夜間ロックダウンの状態になるという時に、しかも、感染拡大を一番、身近に感じている医療介護者によるデモが起こり始めています。しかし、さすがに全員がマスクをしています。

 フランスでは、デモは日常茶飯事で、中には、理解できないデモも少なくありませんが、この医療介護者の訴えは、気持ちは十分に理解できます。

 3月のロックダウン時から、非常事態を迎えているフランスの医療機関で働く人々は、まさに命がけで働き続け、慢性的な人出不足、医療物資不足、低待遇に身体的にも精神的にも疲労や不満がマックス状態に達しています。

 そして、今、コロナウィルス感染の第2波を迎え、再び、医療崩壊が心配されるような状況で、黙っていられないのも当然です。

 コロナ以前から、問題になっていた病院の労働環境や労働条件の悪さは、コロナウィルス感染拡大によって、さらに深刻化し、介護者の57%が燃え尽き症候群、40%が転職を希望していると報告されています。

 人手不足や医療物資不足は、犠牲者も出しながら、さらに感染しても症状のない人は働き続けなければならない悲惨な状況を生んでいるのです。

 フランスの介護者の賃金は、ヨーロッパの中でも、数ある国々の中でも平均以下、介護者の賃金の低さは悪名高く、物価との対比を考えても、納得がいかないのも当然です。

 しかも、労働条件のキツさやリスクを考えれば、リスクが少なく、割のいい仕事に転職したいと思うのもわかります。それなりの志を持って勉強し、介護士という仕事を選択し、経験を積みながら、働いてきた人々が離職しようとしているのは、とても残念なことです。

 実際に離職してしまった人も少なくありません。

 政府は、医療介護士の訴えに対し、昇給のために82億ユーロを割り当て、15,000人の追加雇用を提示していますが、これでも到底、ヨーロッパの平均賃金には及ばず、また多くの人が離職したい職に新たにこれだけの人がこの仕事に着くことは、考えにくい状況です。

 また、政府は、病床は、まだまだ増やす余裕があると言っていますが、実際に、慢性的な人手不足のために現在すでにある病床も常に5%は使用できていない状況だと言われています。どうにも、政府の見解と現実には、隔たりがあるようです。

 現在のところは、それでもまだデモだけで?済んでいますが、これがさらにエスカレートして、ストライキ・・なんていうことも、フランスではあり得ない話ではありません。

 フランスは、デモだけでなく、ストライキの国でもあるのです。

 コロナウィルス感染の第2波をまっしぐらに突き進んでいるフランスで、ただでさえ医療崩壊か?というところに、医療介護者のストライキ・・なんてことになったら、目も当てられません。


<関連>

「ストライキ大国・フランス」

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2020年10月15日木曜日

パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止

                      

          Emmanuel Macron lors de son interview télévisée, dimanche 15 octobre sur TF1.


 フランスのコロナウィルス感染が爆発的に拡大していることを受け、さらに厳しい制限を敷かなければならないと発表していたマクロン大統領が、水曜日の夜に記者会見を行うというので、一体、どんな制限が敷かれるのだろうか?と、ここ数日、フランスのマスコミは、ああでもないこうでもないと大騒ぎでした。

 結果から言えば、感染状況の最も深刻な状況のパリ・イル・ド・フランスをはじめとするグルノーブル、リール、リヨン、エクサンプロバンス・マルセイユ、モンペリエ、ルーアン、サンテティエンヌ、トゥールーズなどの8都市での夜21時以降の外出禁止が発表されました。

 この措置は、10月17日(土)午前0時から最低でも4週間施行されます。

 つまり、夜間のみのロックダウンです。これに違反した場合は、135ユーロ(約1万7千円)の罰金が課せられます。(2回目200ユーロ・約2万5千円、4回目以降は3750ユーロ・約47万円及び6ヶ月以下の禁固刑)

 この取り締まりには、1万2千人の警察官が動員されます。

 可能な限り、経済を止めず、多くの人が仕事を続け、学生生活を送る社会生活を続けるために取れる措置には、選択肢がたくさんあるわけではありません。

 夜9時からの外出禁止となれば、レストランの夜の営業は、絶望的、(フランス人の夕食の時間は、20時あたりが普通で夕食の時間は遅いのです)、その他、映画館、劇場なども夜の営業ができなくなります。

 フランス人の食事は、(特に夕食、特に外食の場合は、)さっと食べるだけ食べて帰るというものではないのです。

 この夜間外出禁止によって、打撃を受けるレストラン等の損失に関しては、政府が保証することも同時に発表しています。

 しかし、このマクロン大統領の会見は、どうにもスッキリしないもので、現在のコロナウィルス感染の第2波は、ヨーロッパ全体で起こっているものだとし、その中でも特にフランスの状態が悪いことにも言及しないばかりか、「ドイツなどもさらなる厳しい制限を取っている」などと説明し、これでは、他の子を引き合いにして言い訳をする子供のような言いようで、しかも、感染状態が悪化しているとはいえ、フランスよりは、圧倒的にマシな状況のドイツのような国を引き合いに出す意味がわかりません。

 しかも、驚くことに、「週末から始まるトゥーサンのバカンスでの地域間の移動は禁止はしないので、節度を持って行動してほしい・・」「学生に対する特別な指導はしない、ただでさえ、困難な状況が続いているのに、これ以上、厳しいことは酷だ・・」と無駄に物分かりがいい発言。

 行動制限をしなければ、バカンス中は、パリを脱出して、夜間外出ができる地域に移動する人たちが絶対に現れ、また別の地域で感染を拡大させるのです。フランス人に節度を持って行動してほしい・・などという呼びかけは通用しません。

 コロナウィルス対策に対して、政府がコントロール不能の状態になっているのでは?というジャーナリストからの質問にも、妙にきっぱり、「我々は、コントロールを失ってはいない」と断言しています。

 コントロールできなかったから、今の状態になっているのではないのでしょうか? 国民が節度を持って行動できないから、制限をしなければならないのではないのでしょうか? 現実をハッキリとは認めずに夜間のみのロックダウンを行う、なんともスッキリしない会見です。

 コロナウィルス感染が長引き、少なくとも来年まで持ち越しそうなことから、コロナウィルスと共に生活しなければならないと強調し、テレワークもできる限りとは言わず、週に2〜3回、家族や友人の集まりも6人までなどと言っていますが、特に現在は、一日の感染者が2万人〜3万人近い状態、ウィルスと共に生きるなどと言っている時期は過ぎています。

 夜間の外出禁止をすることで、一時的に、感染は減るとは思いますが、今、フランスで最も肝心なのは、検査と隔離の問題です。

 政府は、検査をしてから検査結果が出るまでの2日間の期間を問題にしているようですが、これに対して、数分で結果が出る検査が使われるようになるとし、問題が解決されたように話していますが、実際には、検査結果が出た後、陽性であることがわかった人に対しての隔離ができておらず、パリ在住の日本人で、検査の結果、陽性と診断された人が、検査機関の人から、「マスクをすれば外出していい」と言われて、逆に困惑した・・という話も聞いています。

 陽性患者が出歩いているのでは、なんのための検査かわかりません。

 一先ず、この夜間の外出禁止措置を最低でも4週間、もしくは6週間を行い、感染状況が改善されれば、元に戻すとしていますが、このままでは、この外出禁止と解除を繰り返すのみです。

 今回のマクロン大統領の会見は、夜間のロックダウンという厳しめの発表をしたにも関わらず、フランスの現状を明確に認めず、負けず嫌いでプライドばかりが高い、いかにもフランス人なところ、しかし実のところは、あまあまなところが全面に表れている先行き不透明な印象が残る会見でした。

 

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「フランス人のプライド」

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2020年10月14日水曜日

無料で受けられるフランスのインフルエンザのワクチン

  


 数日前に、セキュリテ・ソーシャル(Sécurité Sociale・国民健康保険)から、インフルエンザのワクチンへのご招待の通知が届きました。これは、いつ頃からだったか? 毎年、送られてくる「インフルエンザのワクチンを受けましょう」という案内です。

 フランスでは、この案内状を薬局に持っていけば、無料でインフルエンザのワクチンを受けることができます。

 毎年、フランスでは、200万から600万人がインフルエンザウィルスの影響を受けており、特に肺炎を発症したり、既存の慢性疾患が悪化する可能性の高い虚弱体質の人々は、インフルエンザは深刻な病状に陥るケースが多いのです。

 昨年のインフルエンザのシーズン中に、フランス公衆衛生局が重症インフルエンザの症例の統計をとったところ、集中治療を受けた人の4分の3がリスク要因(年齢、慢性疾患、妊婦、肥満)に当てはまる人であり、そのうちワクチンを受けていたのは、3分の1未満でした。

 ワクチンが推奨され、優先されるのは、65歳以上の人、慢性的な疾患(呼吸不全、心不全、糖尿病、腎不全、喘息、閉塞性肺疾患など)を持つ人(大人と子供)、肥満の人、妊娠中の女性、6か月未満の乳児および免疫力の低い人々の側近としています。

 今年は、コロナウィルスの感染状況が悪化していることもあり、昨日、インフルエンザのワクチンのサービスが始まるとともに、薬局には、ワクチン希望者が例年より多く、殺到し、薬局では、ワクチンの再注文に追われています。

 私のところにも、この案内状は、毎年、欠かさず送られてきていますが、私は、これまでワクチンを受けたことはありませんでした。

 私は、以前、アフリカに行く前に、アフリカに行くために義務化されていた黄熱病のワクチンを打った際に、死ぬほど怠く、辛い思いをしたために、それ以来、ワクチンというものが恐ろしくて、ずっと避けて通ってきたのです。

 あのいいようもない、身の置き場のないだるさは、忘れられません。

 しかし、今年は、一応、私には、心疾患もあり、さすがにちょっと打っておいた方が良いかもしれないと迷っています。

 さすがに黄熱病のワクチンとインフルエンザのワクチンとでは、違うとは思いつつ、私にとっては、ちょっとしたトラウマです。

 現在のパリでは、集中治療室の40%以上がコロナウィルス患者で占められている状況、この上、インフルエンザにかかって、重症化した場合にインフルエンザ用の病床が残っている保証はありません。

 今年は、感染に気をつけた生活を送っているために、いつも以上にインフルエンザも回避できている可能性も大きいのですが、万が一、かかってしまった場合のことを考えると、ワクチンを打っておいた方がいいのかも・・とも思っています。

 政府もこのインフルエンザの季節を迎えるにあたって、コロナウィルスの患者に加えて、インフルエンザの患者が医療崩壊を起こすことを恐れ、ワクチンも例年の20%増の生産体制を敷いていますが、早くも生産が間に合わない状態が起こっています。

 今年ばかりは、10人に4人が希望していると言われているインフルエンザのワクチン、コロナウィルスの恐怖がインフルエンザへの恐怖をも煽っています。

 我関せずで、相変わらず感染対策をリスペクトせずにいる人々も多数いるフランスには、同時に、コロナ禍の中、両方のウィルスを恐れて、インフルエンザのワクチンに群がる人もいることに、なんともわりきれない、もどかしい思いがするのです。


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「絶対に入院したくないフランスの病院」 

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2020年10月13日火曜日

フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由



 

 ここ1ヶ月ほどで、コロナウィルスが急激に感染拡大しているフランス、もはや、一部では、コロナウィルスの話題は、流行遅れ・・とでも言いたげな風潮もあります。「いつまで、コロナウィルスのニュースを一喜一憂して見ているのか?・・」「まあ、頑張ってみてれば・・」みたいな感じです。

 新規感染者が1万人〜2万人といっても、もはや、その数字に慣れてしまったのか? まるで、その驚異的な数字がほとんど彼らには、響いていないことを街の人の様子に感じます。

 一体、どこからそんな、余裕が生まれるのか? 余裕と言うよりは、現実から目を逸らしたいのかもしれません。

 バーやジムが閉鎖されたとはいえ、マスク着用が義務化されているだけで、ほぼほぼ、普通の生活を送ることができていることから、緊張感がまるで感じられません。(マスク着用の取り締まりもほとんど見かけることはありません・・次々と他に起こる凶悪事件などで、警察もそれほど暇ではないのです)

 検査数も拡大され、検査の陽性率が11%を超えたとはいえ、その11%の人々には、症状のない人も多く、陽性者の隔離生活が徹底されておらず、「マスクさえしていれば、いいでしょ!」とばかりに検査で陽性になった人も普通に外出している例が少なくありません。

 これでは、何のための検査なのか?わけがわかりません。フランスで感染が拡大するのも当然です。マスクを嫌悪しているくせに、マスクさえしていれば、それで全てが解決するかのような安直なご都合主義には、閉口してしまいます。

 マスクさえしていれば、外出してよい・・と自分で判断して、そのとおりに行動してしまうところが怖いところですが、これには、フランス人の仕事に対する認識の仕方にも起因していると思われます。

 例えば、フランスでは、学校の先生の仕事は、学校で勉強を教えること、それ以外の私生活の指導などは、しません。学校を一歩出れば、あとは、生徒が何をしようと先生は知ったことではない・・と言うのが、フランス人の仕事に対する認識です。つまり、フランスには、金八先生は、いないのです。

 生徒にも掃除当番や給食当番なるものもなく、学校の掃除には、掃除の人がおり、学校のキャンティーンには、給仕の人がいるので、生徒が掃除をしたり、食事を配ったりすることもありません。

 それと同じように、検査機関の人は、検査をして、検査結果を通知しますが、その結果によって陽性となった人に対しても、その後の生活に関する特別な指導はしないのです。検査機関の仕事は、検査をして、結果を通知するまでなのです。

 陽性者の隔離生活を管理、指導するのであれば、それは、また別の人の仕事で、検査機関の関知することではないということです。検査後の陽性者の管理が今のフランスのコロナウィルス対策には、抜けているのです。

 普通の仕事をしていても、フランス人はよく、「それは私の仕事ではない」と言います。ですから、余計な仕事を抱え込むことはありません。

 せっかく検査をしているのに、これではザルで水をすくうような状態で、マスクさえしていればいいと、陽性になった人も街を出歩いているのです。

 現在、海外在住者の多くが、日本に一時帰国するのを断念しているのは、日本に入国後、公共交通機関を利用することもできず、その上、2週間の隔離生活を強いられることから、滞在予定プラス2週間の予定を取らなければならないことを考えると、二の足を踏んでしまうのです。

 たとえ、検査で陽性にならなくとも海外から入国した人は、外出できない日本と比べたら、陽性になっても大腕を振って普通に外出するフランスのコロナ対策は、ザルです。

 夏の間と比べるとコロナウィルスが活発に動き、一度付着したコロナウィルスが生存する期間も長くなっています。

 CSILO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation)の研究結果では、携帯電話に付着したコロナウィルスの生存期間が気温30℃の状態では、7日間だったのが、気温20℃に下がると、少なくとも28日間は生存し続けるという研究結果を発表しています。

 今朝、出かけたら、もう吐く息も白く、気温もどんどん下がっているフランスです。フランスの病院関係者は、10月末には、かなり深刻な状況になることを危惧しています。

 今週半ばには、新たな感染対策がマクロン大統領から発表されることになっているそうですが、この陽性者が自由に動ける状態をなんとかしなければ、それはザル対策に違いありません。


<関連>「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

2020年10月12日月曜日

マスクの功罪 マスクのおかげでハンサムな男の子が増えた

 

                北斎柄の生地のマスクをしている女性


 フランス人の挨拶には、スキンシップが伴うことが多くて、見ず知らずの人はともかく、少し親しい人とは、ビズーといって、左右の頰を相互に合わせて、チュッチュッと挨拶をします。ビズーの習慣には、いつまでも慣れなくて、今もあまり好きではないものの、親しみを表す挨拶であることには違いなく、ある程度、その人との距離感の判断基準の一つにもなっています。

 また、仕事で人に会う時などでも、初めて会う人などでも、ビズーとまではいかなくとも、少なくとも握手をしたりすることで、少し打ち解けるアクセルになったりもするので、私は、まず最初の挨拶をするのに握手をすることが多いです。

 背筋を伸ばして、握手をしながら挨拶をしている人の様子は、なかなかスマートで、私は、フランス人の習慣の中で、なかなか気に入っている習慣のひとつです。

 ところが、現在は、ビズーどころか握手もできず、おまけにマスクをしているために、相手の表情を見るのが難しく、自ずと相手の目をしっかりと見て会話をすることが増えました。

 目は口ほどにものを言いと言いますが、相手の眼差しだけで表情を読み取り、また目だけで感情を表現するのですから、日頃、スキンシップや、ともすると、フランス人の大げさとも思える表情に助けられていた人との関わりが希薄になった気がして少し寂しい気がするくらいです。

 今は、あまり初めて会う人と接する機会もないのですが、スタージュを始めて、新しい職場で働き始めた娘は、初めて会った時からマスク姿の人ばかりで、逆にマスクを外すと誰だかわからなくなる、人と親しくなりにくい、という少々、新しい環境に打ち解けるのに難しい状況を余儀なくされています。

 マスクを忌み嫌っていたフランス人も、現在は、さすがに公の場では、ほとんどの人がマスクをするようになりましたが、基本的にマスク嫌いであることに変わりはありません。フランス人にとっては、マスクは病気を予防するものというより、病気そのものを連想させるイメージをもつもので、いわゆる普通の白いサージカルマスクではなく、別の色の布のマスクをしている人も少なくありません。

 むしろ、マスクを利用して、今の季節は、コートやマフラーの色と上手に合わせて、おしゃれを楽しんでいる人もいます。

        

               マスクも洋服とコーディネート


 しかし、このマスクも悪い事ばかりではありません。

 ここのところ、メトロに乗っていると、何やら最近は、ハンサムな若い子が増えたな・・とぼんやりと思っていたら、それは、どうやらマスクのおかげ?だったことに気がつきました。鼻から下が隠されただけで、人の印象がこれほど変わるのには、ビックリです。

 フランスに来た日本人観光客の人と接する機会があると、「ご主人は、フランス人ですか? えっ??フランス人!!ステキ!!」などと言われることが多いのですが、決してステキでも何でもなく、正直言って、私は、フランスに来て、20年以上、「うわっ!ステキ!ハンサム!」と思った人に出会ったのは、たった1度だけ・・(これは、私の生活環境が恵まれていないこともあるかもしれませんが・・)、通勤途中に、ほんの一瞬すれ違った人だけで、その後、その人とも二度とすれ違うこともありませんでした。

 フランスでも、ステキな人は、なかなかいないものなのです。

 それが、ここのところマスクのおかげで、ハンサムな男の子を結構な頻度で見かけるようになったのです。実際のところは、別として、なかなかその場、その瞬間は、楽しめるもので、最近のメトロの中では、新しい密かな楽しみになっているのです。

 いい年をして、ハンサムな男の子を見てニコニコしている私の表情は、マスクに隠れて、私のこの密かな楽しみは、バレることがありません。


<関連>「・・・フランス・マスク論争ふたたび」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html 

2020年10月11日日曜日

1日の新規感染者数2万6千人突破 感染拡大が止まらないフランス


 ここ数日、夜に発表される1日の新規感染者数は、毎晩、想像を上回る数字で、これでもかというくらい驚かされます。まさに思わず息を呑んでしまう・・そんな感じです。

 もう1万人を超えたあたりから、だんだん、もう驚かないな・・などと思っていたのですが、先週の水曜日に1万8千人を超えて、さすがにビックリしたと思ったら、みるみる数字は上がっていき、一昨日は、とうとう2万人を突破・・と思ったら、昨日は、26896 人と、ほぼ2万7千人です。

 もはや数字に対して麻痺してきたと思いつつも、これが1日(24時間)の感染者数ですから、もう、ちょっとどう受け止めたらいいかわかりません。

 他の国と見比べてみても、ヨーロッパでは、もちろん、ダントツ1位、フランスの上を行くのは、もはや、インド(60686人)とアメリカ(31990人)だけです。(1日の感染者数)

 しかし、実際には、アメリカの人口は、フランスの5倍もあり、インドにあたっては、20倍の人口を抱える国で、人口に対する1日の感染者数を見れば、フランスは、事実上、世界一、感染が拡大している国なのです。

 こうして見ると、私は、なんて恐ろしい国に住んでいるんだろうと思います。

 先週から、フランスでは、パリをはじめとする数都市が最大警戒地域に指定され、バーやスポーツジムの閉鎖や大学などに対する制限を強化していますが、そんなそばから、60平米のアパートで若者150人がパーティーで大騒ぎしているニュースが流れたり、バーを閉店しただけでは、追いつかない意識の低い人々の存在が感染を拡大させているのです。

 しかも、こんなに深刻な状況にも関わらず、まだまだ政府の対応も国民の意識も低く、逼迫してきている病院の状況にも、ICU(集中治療室)は、1万床以上拡大できる準備があるなどと発表しています。

 しかし、実際の病院の状況は、すでに入っていた手術の予定を延期するなどの措置を取りながら、病床を開け始めている状況で、他の病気の人を押し退けなければ、病床を増やせない事態。

 昔の日本の映画で、「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というセリフがありましたが、政府と病院の実態のズレは、まさに、そんな感じなのではないか?と思います。

 実際に、ベッドや機械だけが用意できても、それを活用するには、人手が必要であり、3月から続いているこのコロナの対応で、医療従事者の疲労も不満も募りまくり、慢性的な人手不足の状態。

 その上、日本に住んでおられる方は、「また??」と呆れ返るかもしれませんが、フランスは、あと一週間もすれば、またバカンス(Vacance de la Toussaint)に突入し、現在のところ、政府からは、都市間移動制限の話は、出ていません。

 制限しなければ、必ず、バカンスに出かけるフランス人。何も制限をせずにいれば、今後も感染者記録を3万人、4万人と増やしていくことになりかねません。

 同時に、フランスで、感染回避のために行なっていると思われることでも、間違っていると思われることも、生活のあちこちで見当たります。

 先日、行った歯医者さんでも、診察の際に身につけさせられたプラスチックのガウンや頭につけるキャップが使いまわしだったり、手を洗った後に使うハンドドライヤーが未だに使用されていたり(菌の拡散に繋がる)、地べたに座り込んだり、荷物を平気で地べたに置いたり・・日頃の衛生観念の欠如と緊張感のなさが目につきます。

 今回の感染拡大は、間違いなく、すでに感染拡大の第二波に乗ってしまい、波は上昇を続けていますが、第一波と違って、対処の方法がある程度、わかっているから第一波のような悲惨な状況に陥るとは考えにくい、と政府は発表しています。

 しかし、逆に、第一波がある程度、限定した地域のみの感染拡大であったために、比較的余裕のある地域から応援部隊が飛んで行ったり、患者を移送したりすることが可能だったのに比べて、今回の感染拡大は、広範囲に渡っているため、他の地域から応援に行くということも不可能で、呼吸器等の機械があっても、人手不足のために稼動できません。

 最大警戒地域などを指定しても、実際のところ、社会が動いている状態でのロックダウン時のような緊張感をフランス国民が感じるのは、とても難しいことで、今から思えば、フランスは、ロックダウン解除の仕方を大きく間違えていたと思います。

 今となっては、一度、緩んでしまった緊張感がフランスに戻ってくるのは、本当に医療崩壊を起こすような状況になるか、軍でも出動して、再び取り締まりを行うか、罰則をもっと厳しくするか・・どちらにしても、当分、明るい兆しは難しそうなフランスの雲行きです。


<関連>「コロナ禍中のフランスの歯医者」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_9.html






2020年10月10日土曜日

フランスの税金 住民税廃止

                                                                                                                                    



 数年前から、郵便受けというのは、まったくもって、何かが入っていることが、まるでありがたくないことばかりで、入っているものと言えば、何かの請求書か、何やら面倒な書類を提出しなければいけないという通知がほとんどで、家に帰ってきて、郵便受けを覗いて、何も入っていないことがホッとするようになっていました。

 今どき、家族や友人で手紙をくれる人はほとんどおらず、連絡は、全てメールかラインやメッセンジャーなので、郵便受けから嬉しい楽しい便りは、ほとんどと言っていいくらいないのです。

 それでも最近は、そんな通知も大方、メールに移行しています。

 フランスでは、税金に関しても、今は、全てメールでお知らせが来て、オンラインで税金の申告をして、必要事項を入力すると、その場で、概算が出てきて、正式な通知は、後日やってくるので、そのとおりにオンラインで支払うことができます。

 もちろん、希望者は、自分で手書きで記入して、税務署に届け出ても良いのですが、圧倒的に時間と労力がかかる上、ヘタに人の手を介するよりは、間違いが少ないので、私は、もうここ数年は、全てオンラインでの申請に切り替えています。

 以前は、全て手書きで記入して、期限までに税務署に提出することになっていたので、いつまでも、ぐずぐずしている人たちが、山のようにいて、期日前日の夜中、午前0時前には、税務署に多くの人が殺到する様子を、これもフランスの社会の風物詩だとか言って、主人と夜中に税務署に書類を出しがてら、そんな様子を見に行ったこともありました。

 一年に一度は、所得税の申告、そして、もう一度は、住民税ですが、住民税の方は、引越しでもしない限り、特に申告をすることはなく、所得税の申告を元にダイレクトに通知書が送られてきます。

 一度、駐車場を解約した時に、解約したはずの駐車場の分まで住民税が加算されていることを訂正してもらうために、税務署に行ったことがありましたが、それ以降は、ずっとオンラインでの支払いです。一度、メールで通知が来ていたのを見過ごしていて、住民税を払い忘れて、後に、再度、通知が来て、追徴金まで払わされたこともありました。

 全てにおいて、ぐずぐずしていて、トラブルも多いフランスですが、この税金の支払いに関してだけは、まず、漏れなく通知がやってくるのには、どうして税務署だけは、しっかりしているんだろう?と思います。

 そして、今年は、一週間ほど前、国から、「住民税についてのお知らせ」というメールが届きました。

 内容は、「ご存知のように、政府は共和国大統領の要請により、特に主要な住宅に対する住宅税の段階的な廃止により、地方税を大幅に改革しました。具体的には、世帯の80%が、2018年に本拠地の住宅税を30%削減し、2019年に65%削減したことで恩恵を受けました。2020年には、人口の80%が本拠地の住宅税を完全に廃止し、あなたもその恩恵を受けています。この強力な政府の措置を通じて、共和国大統領は世帯の購買力を促進したいと考えていました。マダム、私たちの最高の配慮の保証を受け入れてください。」というものでした。

 何年か前から、住民税が廃止されるという話は、聞いていましたが、いつになることやら、毎年、「え〜??まだ、なくならないんだ〜〜」と思いながら、昨年までは、住民税を払っていました。そして、今年、このメールで、とうとう住民税を払わなくてもいいんだ!とにんまり・・・。

 私の住んでいる地域は、なぜか、住民税は、結構な金額だったのです。(住民税の計算の仕方というのは、詳しくは、わかりませんが、住んでいる地域、また、アパートの広さや窓の数で決められるとのことでしたが・・)

 そして、またさらに昨日、住民税の通知書がメールで届いたので、「へへ〜〜ん!ゼロだよ〜ん!」と思いながら、それでも、色々な手続きに税金の通知が必要になることも多いので、一応、届いた通知書をダウンロードして、パソコンに保存しようとしてファイルを開いて、ビックリ!住民税の通知は、ゼロではありませんでした。

 そこには、金額138ユーロが記載されており、11月16日までに払ってください・・と書いてあります。ゼロだと思っていたのに何??また、何かトラブル?間違い??と思って、ウンザリしながら、よくよく見ると、それは、オーディオビジュアル(いわゆるテレビの受信料)の料金でした。

 数年前からなぜか、テレビの受信料は、住民税に追加されて請求されていて、住民税は、なくなったものの、テレビの受信料だけは、据え置きだったのです。

 フランスでは、テレビを買った時点で、このテレビの受信料請求のために、自動的に税務署に通知が行くようになっていて、この受信料を逃れるために、家族や友人の住所を使ってテレビを買う人もいると聞いたことがあります。

 コロナ以来、やはり、色々な状況が心配で、テレビでニュースを見るようになりましたが、それまでの何年もの間、テレビというものは、ほとんど見ることはなく、ひたすらDVDを見るための機械としてしか使っていなかった我が家では、安くはないこの受信料を支払うことを苦々しく思っていたのです。

 まあ、ともあれ、住民税が今年はなくなって、大変、助かりました。国が言ってきたようにその分を消費に回してください・・と、回したいのも山々ですが、大好きな旅行も今のところ、できそうもなく、外食もできれば避けたいような状況で、家でちょっと贅沢なものを食べるくらいしか思いつきません。

 そして、一見ありがたいこの住民税の撤廃ですが、もともと、決して税金は安くないフランス。この住民税の税収がなくなる分がどこかに加算されていると思うとそうそう気安く消費というわけにもいきません。素直に住民税の撤廃も喜びきれません。

 今回の住民税の廃止は、全体の80%だそうですが、残りの20%については、2023年までに廃止される予定です。


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「フランス人の金銭感覚 フランス人は、何にお金を使うのか?」


  

2020年10月9日金曜日

コロナ禍中のフランスの歯医者 ①

 


 以前に治療してもらった歯がぐらぐらしているのが、ず〜っと気になっていました。しかし、ロックダウンから・・、ロックダウンが解除された後も、このコロナ渦中、他の病院はもちろんのことですが、口の中を扱う?場所である歯医者さんに行くことは、なんだかちょっと腰が引けていたのです。

 もう今の家に引っ越して以来、15年以上通い続けている近所の気心の知れたサバサバしている素敵な女性の歯医者さんですが、やはり、歯医者さんであることには、変わりなく、まあ、せいぜいお世話になるのも2〜3年に一度くらいで、できればお世話になりたくない歯の治療・・おまけに歯の治療は、なかなかの出費、保険である程度カバーされるものの、結構な金額になることを思うと、ますます足は遠のきがちになり、いつも、どうしようもなくならないと行かないのです。

 ぐらぐらしていた歯がなんとか持ちこたえてくれていたのに、この感染拡大の第2波の波がグングン大きくなってきてしまった今になって、とうとうポロっと落ちてしまったのです。

 奥歯なので、目立ちはしませんが、奥歯が一本ないだけで、口の中は、荒れ始め、食べることが大好きな私にとっては、口の中の不具合は、この上なく不快でたまりません。

 仕方なく、意を決して、予約を入れて、とうとう歯医者さんに行ってきました。



 入り口には、もはや見慣れたマスク着用義務のステッカーがドーンと貼られ、歯医者さんも助手の人も重装備、マスクにフェイスシールドをしています。(考えてみれば、歯医者さんはいつもマスクをしていますが、フェイスシールドが追加されています)

 室内に入るとすぐに非接触式の体温計で体温のチェックをされて、待合室に入りました。いつもは備え付けられているミネラルウォーターやゴミ箱、雑誌類などは、全て撤廃されていて、待合室で人と出会わすこともありませんでした。

 少しして、診察室へ案内されると、プラスチックの身体を覆うガウンと頭にかぶるキャップをつけてくださいと言われ、マスク、セキュリテソーシャル(健康保険)のカード、支払い用のカード、携帯電話以外の荷物は、お預かりしますということで取り上げられ、少々、心もとない気分で治療が始まりました。

 面倒なことをと思いつつも、これだけ衛生管理に気を配っていてくれることは、やはり安心でもあります。

 しかし、いつも思うのですが、歯医者さんというのは、治療中で、こちらが口を開けているというのに、なぜ話しかけるのか?と思います。こちらは、口を開けたままで、おまけに麻酔を打たれて、口が腫れたような感じで、痛みに耐えながら、もう、おしゃべりどころではないのです。

 顔をライトに照らされて、時々、薄眼を開けながら、痛みに耐え、あの歯の治療独特のギ〜んという音をなんて嫌な音なんだろうと思いながら(あの音がしない機械ができないものかといつも思います)身を硬くして、意識は、半分、遠い感じで、ライトに照らされている歯医者さんの腕に光るブレスレットがキラキラ光って、キレイだな・・などと、ぼんやり思いながら、ひたすら早く治療が終わるのを待っているのです。

 レントゲンを撮ったり、歯の一部を削ったりして、1回目の治療は終わり、全身ぐったり・・支払いのカードの機械の調子が悪く、午後に支払いに来てくれないか?と言われましたが、そのためにまた、出向くことはあまりにバカらしく、こちらの不備でもない事から、次回に今回の分も合わせて払うことにしてもらいました。

 治療が終わって、次回の予約を入れるときに、お医者さんに「ロックダウン中はどうしていたの?」と聞くと、3月半ばから2ヶ月間くらいは、閉めていた・・と、しかし、彼女は、たたみかけるように、「でも、今度、ロックダウンになっても、もう、うちは、閉めないわよ!なぜなら、今は、もう、どうやって、感染回避をできるかがわかっているから・・」と、強めに宣言していました。

 たしかに、病院だってやっているんだから、感染対策さえ万全にすれば、営業は可能なのです。

 そして、私は、着せられていたプラスチックのガウンと頭に被っていたカバーを外して、それを返して診察室を出ると、ちょうど、次の患者さんがやってきたところでした。そこで、私は、思わず、絶句、ちょっと前まで私が来ていたガウンと頭にしていたカバーを次の患者さんに身に着けるように促したのです。

 もしかして、感染回避のために着せられていたプラスチックのガウンと頭のカバーは使いまわしだったのでしょうか??? こういうものは、普通、使い捨てではないのでしょうか??

 最後の最後に不安にかられながら、家路に付き、帰ってからも、それが気になって仕方ありませんでした。念の為、歯医者さんに着て行った服は全て洗濯しながら、次回に行った際に、ガウンを着るように言われたときには、それが使い回しではないかどうか、しっかり確認しなければ・・と、強く思ったのでした。

 これだから嫌だ・・フランス人の衛生観念・・全く、気が抜けません。


<関連>「ロックダウン解除・約5ヶ月ぶりで、かかりつけの医者へ」

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2020年10月8日木曜日

災難続きのフランス アルプ・マリティーム県の大洪水の大被害

 

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 先週末に起こった暴風雨の被害により、フランスのアルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏)は、55の市町村が壊滅的な被害を受けています。

 これまでに4名の死亡者が発見されており、行方不明者も多数いる模様です。

 家が崩壊し、住居を失い、停電状態が48時間続き、水や食料の供給も滞り、地域の人々は、不安に震える日々を過ごしています。

 大規模な洪水が起こり、家が崩壊したり、流されただけでなく、墓地までが決壊し、暮石だけでなく、壊れた棺までが流されてきた光景に、これまでの人生で見たことのない光景だったと村の人々は恐怖の体験を語っています。

 フランスは、土葬の文化のため、遺体の入った棺が流れてくる光景は、衝撃的なものに違いありません。この洪水により、墓地に埋葬されていた150体が流されました。

 家が流され、電気も食料もない中、棺までもが流れてくる光景、もはや、コロナウィルスだマスクだなどとは、言っていられない壮絶な状況です。

 昨日は、マクロン大統領も被害を受けた地域の中で最も壊滅的な状態にある3つの市町村を訪れ、被害に遭った人々と直に接し、地元の住民の話を受け止めていました。

 マクロン大統領に間近で対面し、「家も財産も何もかも失った人の気持ちがわかりますか?私たちを見捨てないで・・」と、半泣き状態で訴える女性に、マクロン大統領は、「私たちは、絶対にあなたたちを見捨てません。救済に当たってくれている全ての人々の連帯に感謝します」と語りかけていました。

 コロナウィルスだけでも、精神的にも疲弊している状況に加えて、この自然の大災害。このような自然の大災害を見るたびに、底知れぬ自然の力に脅威を感じます。フランスには、地震はありませんが、洪水の被害は、度々、起こります。とはいえ、これほどまでの大洪水は、なかなかありません。しかもコロナの蔓延する状況下で・・。

 山に囲まれたこの地域は鉄道も道路も分断され、食料などの物資の支給もヘリコプター、電気もなく、食料が運ばれてくるヘリコプターをひたすら待ち、配給を列に並んで待たなければならない生活を強いられることになったこの地域の人々。

 いつか、東日本大震災が起こった時に、周りのフランス人がフランスでこんなことが起こったら殺し合いが起こるかもしれないと言っていたことを思い出しました。災害には、あまり免疫がなく、ストレスに弱い、我慢が苦手な人々の精神状態も心配です。

 マクロン大統領は、同時にこの地域の復興に1億ユーロを用意することを発表しました。このコロナウィルスで逼迫している経済状況の中、追い討ちをかけるような大出費です。

 今や、フランスのコロナウィルスの感染拡大は、誰もがこれが第2波であると認めることを躊躇わない感染状況、昨日の新規感染者数は、とうとう1万8千人を超え(18746人)、もはや、数字の感覚がマヒしてくるような数です。

 イル・ド・フランス(パリ近郊地域)の病院の病床の40%以上はコロナウィルスの患者で占められている状況、検査陽性率は9.1%にまで上昇しています。つい数日前にパリが最大警戒地域に指定され、さらに厳しい規制が敷かれたばかり、この規制の効果が表れるのには、少なくとも2週間は様子を見なければなりませんが、それを待たずして、さらに厳しい規制が追加される可能性も出てきました。

 コロナ、火災、テロ、デモ、大洪水と、人災も天災も含めて、これでもかというくらい災難続きのフランス、本当に大丈夫だろうか?と不安が募ります。


<関連>

「災害に免疫のないフランス人がパニックになり、アジア人全体を傷つけている」

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2020年10月7日水曜日

OSHIBORI - 日本のおしぼり文化がフランスにやってきた!

 

   


 コロナウィルス感染による経済の停滞が著しい中、明らかにコロナをターゲットにした商売も登場しています。

 ここ数日前からフランスのテレビコマーシャルに登場し始めた「OSHIBORI CONCEPT(おしぼりコンセプト)」のCMには、突如、テレビから聞こえてきた「おしぼり」という言葉に、「ん・・???」「なに・・???」「今、おしぼりって言ったよね・・聞き違い?? いやいや、おしぼりだ・・」と、思わず、二度見してしまいました。

 ゴールド、シルバー、ブラック、ホワイトのパッケージに香水の香りづけのされた高級イメージのおしぼり・・(いやいや実際に高級、高価です)おまけにコマーシャルの最後には、なぜか、made in france というナレーションが入ります。

 これを、フランスのテレビでコマーシャルを流して、一体、誰向けのコマーシャルなのだろうか?と思います。

 このおしぼりは、99.9%以上の細菌やウィルスを除去する抗菌性を売りにしており、現在、消毒といえば、もっぱらアルコールジェルが使われているフランスで、日本で言うところの除菌シートをすっ飛ばして、いきなりこの高級路線の OSHIBORI には、ちょっと驚きますが、おそらくターゲットは、一般大衆向けではなく、サイズやパッケージなどもカスタマイズができるとしているので、高級ホテルやレストランなど向け、あるいはフランスでもブルジョア階級向けと思われます。(この会社もパリ16区にあります)

 お値段も、1パック(50包入り)90ユーロ(約12000円)となかなかなもので、現在、厳しい営業制限が敷かれて、売り上げが激減している一般のレストランなどで、アルコールジェル以上に経費のかかる OSHIBORI (おしぼり)が使用されるとは思えません。

 また、この製品に、OSHIBORI という日本語が使われていることもとても興味深く、なんだか日本人の私としては、ちょっと嬉しい気持ちです。

 日本のレストランでのおしぼりは珍しいことではありませんが、ここへ来て、改めて、日本には、おしぼりという日本独特の文化があったんだ・・これも日本人の身を清潔に保つ衛生的な習慣の一つだったことを思い出しました。

 「おしぼり」という日本語を使ったネーミングがフランス人に覚えやすいネーミングであるかどうかは疑問ですが、日本に対するリスペクトが感じられるこのフランスの OSHIBORI の行方が気になります。

 いっそのこと、この  高級な OSHIBORI made in france は、日本へ輸出した方が売れたりするかもしれません。

 しかし、一般的には、ケチなフランス人にこのおしぼりが浸透するとは考えづらく、今ではあちこちに設置されているアルコールジェルを使うことはあっても、ポケットティッシュなどのティッシュペーパーでさえも、一度、鼻をかんでも、ポケットにしまって、再び使うフランス人が、このおしぼりを有効に使えるとは信じ難いのです。

 

<関連>「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

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2020年10月6日火曜日

最大警戒地域に指定されたパリ レストランは新しい衛生基準で営業する



 とうとうパリ市及び、周囲3県(オー・ド・セーヌ、セーヌ・サン・ドニ、ヴァル・ド・マルヌ)が最大警戒地域に指定されました。むしろ、先週の段階でマルセイユやグアドループが最大警戒地域に指定された時点で、なぜ、パリが指定されないのか? 疑問なくらいだったので、パリの住民も、恐らく、そのこと自体に驚いた人はいないと思います。

 これにより、1000人以上のイベントが禁止となり、公道、公園等における10人以上の集会の禁止、スポーツジム、プール、カフェ、バー、ディスコの閉鎖されます。(展示会、見本市、サロンなども禁止)

 今回のパリの様々な制限措置の特徴の一つは、大学、大学生についての措置です。これは、現在のイル・ド・フランス(パリ近郊)の 203件のクラスターの40%が学校、及び大学が起源となっていることによります。これにより、大学の授業の参加は、50%に制限されます。(これまでにリモート授業になっていなかったことが驚きですが・・)

 パリの住民10万人あたりの発生率は200を超えていますが、ウイルスが最も活発に循環しているカテゴリーである20〜30歳の年齢層では500を超えています。若者がいかに感染を広げているかがわかります。この数字を受けて、今回は、これまでの規制の上に、特に若者に対しての規制(大学生のパーティー、夜の外出禁止など)が加えられています。

 夜22時以降のアルコールの販売、路上での飲酒も禁止です。夜、若者が飲んで歌って大騒ぎしていましたが、それも禁止されます。当然です。

 恐らく、今回の規制の中で、一番、注目されていたレストランの営業については、前回、一足先に最大警戒地域に指定され、営業禁止(レストラン・バー)となったマルセイユで大反発が起こったこともあり、今回の規制では、パリでは、最大警戒地域となっても、1テーブル最大6人、客の連絡先記録、席での支払い、立食い禁止等の衛生基準を満たしていれば、レストランは営業が許可されることになりました。

 これがもし、前段階でのマルセイユの営業停止の措置がなければ、パリのレストランでのこれらの衛生管理に関する規制には、もっと反発があっただろうと思います。マルセイユの例を見て、よもやパリのレストランも営業停止では・・と多くの人が案じていたところに条件付きではあれ、営業許可が出て、もはや、営業停止よりはマシ・・と、思っているのか、今のところ、それほどの反発も聞こえてきません。

 特に客の連絡先の記録に関しては、フランスでは、客の側もスンナリと受け入れる人ばかりではなさそうですが、そこは、レストラン側もそれをやらなければ営業できないとなれば、何らかの対策をとって、何としてでもやっていくと思います。

 そもそも、ヨーロッパの中でも、ドイツやベルギーなどでは、レストランの利用客の連絡先の記録は、すでに行われていることで、それほど難しいことではないように思いますが、フランス人の国民性から、今のこの逼迫した感染状況にまでならなければ、受け入れられにくいことだったかもしれないとも思います。

 何かにつけて、とりあえず反抗する、この連絡先の明記にしても、プライバシーだの何だのと文句をつけるフランス人が目に浮かぶようです。しかし、今回ばかりは、レストラン側も後には引けないので、ゴネる客がいても、何とか説得するでしょう。

 フランス人は、何か新しいこと、例えば、こうすれば、もっと便利になるのに・・とか、もう少し工夫してみれば・・などと新しいことを提案したりしても、すぐに、「セ・コンプリケ!(ややっこしい!)」と却下しがちです。そんなに複雑だと思えないことでも、すぐに、「セ・コンプリケ!」・・。

 彼らは、習慣を変えることが嫌いで、いちいち抵抗します。とにかく自己主張することを美徳とするフランス人にとっては、抵抗することが彼らのプライドを支えているかのようです。

 今回のコロナ対策では、習慣を変えなくてはならないことがたくさんで、フランス人には、新しく対応しなければならないことがたくさんあって、(別にフランス人だけに限ったことではなく、どこの国でも新しい生活を強いられているのですが・・)、一見、言いたいことを言って、ダイナミックに見えても、基本、保守的なフランス人には、ことのほか厳しい事なのかもしれません。

 しかし、ロックダウンまでして、せっかくおさまりかけていたコロナウィルスの感染をまた、悪化させてしまったのも彼ら自身、ダメな学校の校則がやたらと厳しくなるように、フランスでの規制もどんどん厳しくなっていきます。

 しかしながら、感染が悪化すれば営業停止、少し改善すれば、また営業・・を繰り返していれば、このサイクルは永久に続いてしまいます。なんとか、この厳しくなった規制に順応して、この悪循環を断ち切ってほしいものです。

 現在のところは、本来なら、特別に規制しなくても、自主規制ができるはずのことですが、規制されなければできない、ちょっとデキの悪い子供のようです。

 この新しい規制のもと、フランス人もこれからコロナと生きる新しい生活に少しは慣れるようになって、「やれば、できる子なのよね・・」と言えることができるようになってくれればいいなと思っています。

 それでも、この感染下で、経済活動が少しでも止まらないように、会社はリモートワーク推奨に留められています。

 これらの規制は5日から、とりあえず15日間、10月19日まで続けられます。

 

<関連>「フランス人のプライド」

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2020年10月5日月曜日

どんなことがあっても、東京オリンピックやるの???



 

 「とにかく、どんなことがあっても来年は必ずやります」IOCとの共通の認識の上での発言なのかどうかは、わかりませんが、日本のオリンピック組織委員会は、来年に延期された東京オリンピックを是が非でもやろうとしているのには、思わず失笑してしまいます。

 少なくとも、今のフランスの状況、世界の状況から考えたら、あり得ないことです。フランスでは、毎日、1万人以上の新規感染者を記録し、経済に余裕があれば、ロックダウンをするであろう状態、ニューヨークのブルックリンやクィーンズの一部地域では、再び学校閉鎖や一般企業の営業停止の措置が取られているそうです。

 こんな世界の状況で、おそらく、多くの日本人も来年のオリンピックは無理だと思っていると思います。オリンピックを絶対にやる!と言っているのは、JOCの一部でしょう。

 ワクチンが開発されたとしても、その安全性の確保には時間がかかり、来年の夏のオリンピックには、有効とも思えません。

 日本の今のコロナウィルスの感染状況がここまで抑えられているのは、日本の日頃からの衛生観念の高さや独特な国民性によるところが大きいのです。もしも、日本だけでオリンピックを開催するならば、それは、可能なことかもしれませんが、それは、オリンピックではありません・・つまり無理です。

 衛生管理を日本人が担うとしても、どう考えても日本人レベルの衛生観念を外国からの観客やマスコミに向けて強制して統制管理を敷くことは、生半可なことではありません。

 外国人をなめてはいけません。

 以前、父が介護施設に入居する際に、日本で施設を下見に行った時にはすでに、入り口では、必ず手を洗い、アルコールジェルでの消毒が義務付けられていて、職員のほとんどの人はマスクをしていて、施設内は、ピカピカに掃除されていて、「そこまでするの??」とびっくりしたことがありました。コロナウィルスの影も形もないずっと以前のことです。

 今から思い返すに、現在のコロナウィルスが蔓延している状況でさえ、恐らくフランスの介護施設などは、あそこまで清潔な感じはないと思います。

 日本に行くと、どこも清潔で、駅も地下鉄もピカピカで、眩しく感じられるほどです。日頃、駅によってはアンモニア臭の漂うような国で暮らしていると、日本の清潔さが眩しくさえ感じられるのです。

 そのうえ、その悪臭漂うところを歩いた土足のままで家に上がったり、地べたに座り込んだりするのが当たり前の日常で、考えてみれば、コロナで衛生管理がされている今でさえ、フランスでは、日本の通常の(コロナ以前の)衛生状態以下かもしれません。

 おまけに規則があっても、罰則、罰金がなければ、多くの人は守りません。興奮すると手がつけられず、すぐにお祭り騒ぎになるラテン気質爆発で、飛沫を飛ばしまくります。

 ヨーロッパの中でもフランスは、特に感染状況が最悪ですが、衛生観念の欠如は、日本のそれとは、大きく隔たりがあることではヨーロッパは大概、共通しています。そんな外国人が大量に日本になだれ込み、世界中の人が集うオリンピックは、今の段階では、大きなクラスターになる可能性を含んでいます。

 現在の感染状況で、オリンピックのために入国する大量の外国人の統制は、簡単なことではありません。

 逆に言えば、日常から皆が清潔で、マスクをし、除菌シートを持ち歩き、皆が規則をきっちり守り、しかもお互いが監視しあう日本は、まさにコロナウィルス感染回避に最高の習慣をもち、同時に、かなり特殊な国であるとも言えます。

 今年のオリンピックを延期するときに、思い切って、なぜ4年後に延期しなかったのか? 安全性を確保するためには、4年に1回のオリンピックの1回分をすっ飛ばして、4年後の開催でギリギリなのではないか?と私は思っています。

 むしろ、海外では・・少なくともフランスでは、オリンピックの話題などは微塵も上がっておらず、こんなときに、何が何でも来年はオリンピックをやる!などと言っているのは、世界の状況が見えていないようで、恥ずかしい気がしています。



<関連>

「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_28.html


「世界は、オリンピックどころではない 日本人は、世界のニュースを見るべき」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_21.html


 

2020年10月4日日曜日

フランスのコロナウィルス感染に関するCNNのニュース

 


 昨日、「仏パリの感染状況が悪化、来週初めにも全面封鎖の恐れ」というCNNのニュースが流れてきて、「・・・???なんだ?これ???」と、思ったのです。

 そのニュースには、「フランス政府は、 首都パリで新型コロナウィルスの感染状況が悪化しているとの認識を示し、来週初めにも再びロックダウン(都市封鎖)の措置が講じられる可能性がある」と書いてありました。

 フランスの感染状況が悪化しており、特にパリの状況の悪化が著しいことも事実で、感染者が10万人あたり250人に達すれば、最高警戒レベルと定めた基準や、パリがその基準値を超えてしまったのも事実です。

 しかし、そのニュースで最もインパクトのある「来週初めにも全面封鎖の恐れ」というのは、違います。保健相であるオリヴィエ・ヴェランからは、感染状況が、深刻な状況であることは、発表されていましたが、むしろ、最高警戒レベルに定めた場合に営業禁止としていたレストランやバーなどを、より厳格な衛生管理規制を敷くことで、一部あるいは、全面営業できるような方法を検討中であるという内容でした。

 しかし、週末の感染状況を踏まえて、来週からパリをはじめとした感染の悪化している地域に対して最高警戒レベルとして規制をどう敷くかについては、慎重に検討するとして、後日、発表されることになっていました。

 この発表の内容から、なぜ?「全面封鎖」とか、「ロックダウン」という報道になるのか?どうして、そんなに飛躍した記事になるのか? 全くわかりません。

 CNNといえば、誰もが知っているアメリカのメディアで、影響力の大きなメディア。まさか、このような、いい加減な報道が流れていることに驚いたのです。

 今回のニュースに関しては、たまたまフランスに関してのニュースで、私は、こちらの報道で、オリヴィエ・ヴェラン保健相の記者会見も見ていたので、その報道がおかしいことに気づきましたが、全く知らない人がこのCNNのニュースを見たら、「えっ??そうなの・・」と思ってしまいます。

 マスコミには、フェイクニュースもたくさんあり、全て信用できるものだとは、思っていませんが、これまで、ある程度のビッグネームの媒体からのニュースならば、ある程度は、信用できるものだと思ってきましたが、今回のこの報道で、このニュースソースの信憑性が私の中では、ガタ落ちです。

 来週からのパリは、取り敢えずは、レストランやバーが営業停止、あるいは、営業制限がかかることはあっても、全面封鎖、ロックダウンになることは、あり得ないと思います。

 しかしながら、フランスの感染状況は深刻で、昨日の新規感染者は、16972人、過去最高を記録し、PCR検査の陽性率は、7.9% 、一週間で4087人が入院し、そのうちの849人が集中治療を受けています。

 この数字だけ見たら、よもや「全面封鎖」「ロックダウン」と思っても不思議ではないとは思いますが、そう単純には、いかないのがフランスの現状です。


<関連>迷走するフランスのコロナウィルス対応」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_2.html

2020年10月3日土曜日

コロナウィルスの死亡者数にカウントされないコロナの犠牲者

 


 フランスもここまでコロナウィルスの感染者が増えると、さすがに身近なところでも誰かしらコロナウィルスに感染したという話をよく聞くようになりました。本人でなくとも、家族や親戚、友人など、どこかしらに感染者がおり、犠牲者の話も聞きます。

 しかし、犠牲者は、コロナウィルス感染者だけではないという話を身近な友人から聞きました。

 友人の連れ合いの妹さんが亡くなったというので、この時節柄?もしかして、コロナウィルスで?と聞くと、癌だったのだそうです。

 ところが、この彼女の場合は、コロナウィルスとあながち関係ない話でもなく、コロナウィルスのために手遅れになった話です。

 彼女は2年前に癌の手術を受けていました。その後、仕事にも復帰し、旅行をしたり、日常どおりの生活を送っていましたが、同時に不安の残る、首から鎖骨にかけての部分的な放射線、抗がん剤等の治療も続けていました。

 コロナウィルスが蔓延し出してからは、彼女は、2年前に手術を受けたり、放射線治療を受けたりしていたことから、かなり感染に注意した生活を送っていたそうです。

 しかし、彼女は、ロックダウン中に発熱し、その状態が数日、続いたためにコロナウィルス感染が疑われ、PCR検査を受けました。しかし、結果は陰性で、コロナウィルスには感染していないことがわかりました。

 病院では、コロナウィルスで手一杯な状態で、コロナウィルスに感染していなければ、まるで病気ではないような扱いで、ただの発熱など問題にされず、彼女の発熱の原因を追求するための検査は、行われず、そのまま彼女の容態も一進一退を繰り返していました。

 実際に、具合が悪い中、あの医療崩壊を起こしていた病院に出向くことも躊躇われただろうし、病院の方でも、とても他の検査など受けられられる状況ではなかったのです。

 いつまでも、スッキリしないどころか、彼女の体調は、どんどん悪化していき、体重も減少し始めて、再度、医者にかかった時には、「余命は、あと一週間です」という状態。

 彼女はあっけなく、一週間後に亡くなりました。55歳でした。彼女の娘はバカロレアの試験を控えた年齢、今年はバカロレアの試験は行われませんでしたが、わけのわからないうちにあっという間に母親を亡くしたショックは計り知れません。

 これは、マスコミのニュースには、上がって来ない話ですが、このような例は、きっと、たくさん起こっている話なのだと思います。どこにも持って行きようのないこの憤りに遺族は、未だに打ちひしがれています。

 コロナウィルスで亡くなった場合は、葬儀も不可能な状態でしたが、彼女の場合は、大々的にではないにせよ、葬儀はひっそりと執り行われたそうです。まだ現役で、しかもエネルギッシュに仕事以外の活動にも幅広く顔を出していた彼女の葬儀は、およそ彼女に似つかわしくない寂しいものだったそうです。

 毎日、コロナウィルスでの死亡者数は、公に発表されていますが、実のところは、その数字には、カウントされない、本来ならば、助かるはずだった命が失われていることを忘れてはなりません。


<関連>

「コロナウィルスによる医療崩壊の事実と社会の崩壊の危機に直面するフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_23.html

2020年10月2日金曜日

迷走するフランスのコロナウィルス対応


  Et si les restaurants pouvaient rester ouverts, même en zone d'alerte maximale ?


 コロナウィルスの急激な感染拡大が続いていることから、昨夜、厚生大臣のオリヴィエ・ヴェランが記者会見を行うというので、当然、パリが最大特別警戒地域に加えられるものだとばかり思っていました。

 今週に入ってからのパリの感染悪化は著しく、マルセイユの現状を上回ってしまったのですから、当然のことだと思っていたのです。

 しかし、記者会見での発表では、パリを最大特別警戒地域に指定するかどうかは、再度、今週末の数値を検討し、必要ならば来週月曜日からとしています。

 先週の感染地域の区分けの段階では、マルセイユとグアドループが最大特別警戒地域に指定され、マルセイユでのレストランやバーの営業は禁止となっていましたが、レストラン業界からの突き上げを食って、感染予防対策を強化する条件で、部分的、もしくは完全な営業継続を可能にするための規則を検討するとし、最大特別警戒地域に指定されても、レストランを営業可能とする措置を取ろうとしていることを匂わせています。

 あくまでも、週末に出る感染状況の数字を見て判断するとしていますが、この段階で、このようなことを発表するということは、最大特別警戒地域に指定されても、レストランは営業可能にする方向で進めていると思われます。仮に、数字が悪化しているからとやはり営業停止ということになれば、期待を抱かせた分だけ、反発は、余計に強くなります。

 レストラン営業への道を模索することは、悪くはないのですが、これまで悉く失敗しているフランスでは、かなり具体的で細かい衛生管理が必要であり、何よりもお客さん側の自覚の問題が大きいので、フランスにおいては、なかなかハードルが高そうです。

 また、PCR検査についても、これまでに1300万件以上の検査を行っており、検査結果も48時間以内に出るようになったことを発表しています。

 しかし、この政府の方策では、肝心な検査後の感染者の追跡や隔離については、何も改善策が取られていません。せっかく、多くの検査をしても、陽性患者の追跡や隔離がしっかりとできていなければ、意味がありません。自主隔離を命じられても、特に監視や罰則なしに、それが厳密に守られているかどうかは甚だ疑問なのです。

 だいたい、自主隔離の期間が長すぎると守れないからと隔離期間を1週間にしてしまったフランスです。どこまで甘々なのでしょうか?

 確固とした決定ができずに、最大特別警戒地域指定をあと伸ばしにしている政府は、おそらくこの数日の間にレストラン営業への規則を煮詰めて、その規則制定の上での営業許可とともに最大特別警戒地域にパリを加えるのだと思いますが、レストラン営業に注意が偏りすぎて、肝心な隔離の問題を据え置きにしています。

 これまでも、少しずつの対応の遅れと甘さで、被害を大きくしてきたことを半年以上経った今も学習していません。

 一日の感染者数が余裕で1万人を超えているのですから、1日の遅れがどれだけ感染を広げるのか考えたらわかりそうなものです。

 そして、相も変わらず、政府は国民を甘く見過ぎています。いい加減に目を覚ませ!と、私はいつも思っています。残念ながら、フランスは国民の自覚に頼れる国ではありません。色々な規制を敷くに当たって、此の期に及んで「問題なのは、フランスは自由の国であることだ・・」などと、言っている人がいるのには、もはや、ため息も出ません。

 何より始末に悪いのは、国民の自覚が足りないことです。現在、パリのレストランでは、22時までの営業が認められていますが、場所によっては、22時の閉店をカウントダウンして大騒ぎ・・などというところもあり、なんのための22時閉店なのか?理解していないようです。

 また、自分だけは大丈夫、家族同士なら大丈夫とでも思っているのか? 家族の集まりをやめません。これでは、いくらレストランを閉めても仕方ありません。

 国際結婚をして、フランスにいる日仏家族で、夫の(あるいは妻の)家族の集まりに呼ばれて困惑している日本人は少なくありません。

 我が家も類にもれず、親戚が家に来たがったりするのを「なんで、今?」と思いながら、丁重にお断りしています。

 今年もすでに10月に入り、冬はもうすぐそこに来ています。パリ(イル・ド・フランス)の病院では、かなりの手術の予定が春に延期される事態が起こり始めています。

 国民のご機嫌を伺いながら、確固とした決定を下せない政府の対応の遅れが感染をますます広げていきます。

 自由の国も結構ですが、自由には責任が伴うものです。

 フランスのコロナウィルスによる死亡者は、3万2千人(32019人)を突破しています。


<関連>

「フランスは、やっぱりダメだ・・と、絶望した理由 コロナウィルスは、蔓延し続ける」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_26.html