2020年10月22日木曜日

テロの犠牲者サミュエル・パティの国葬

 


 先週金曜日に起こったテロ事件により首を掻き切られて死亡した表現の自由を担当していた教師、サミュエル・パティの国葬が昨夜、パリソルボンヌ大学で行われました。

 イスラム過激派の犯行であったことから、テロに屈しないフランスの姿勢を明確に世間に知らしめるべく行われたセレモニーは、マクロン大統領をはじめとする政府首脳が勢揃い、故人の教え子や友人、家族なども参加しての、荘厳なものでした。


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 セレモニーの場所にソルボンヌ大学が選ばれたのも、教育の現場での授業がもとで起こった事件に対するフランスの国としての威厳と確固とした姿勢を示したと言えます。

 毎回、国単位のセレモニーを見るたびに、フランスは、本当にセレモニーの演出が上手でセンスがいいなと感心します。


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 棺が運ばれてくる際には、家族の希望で、彼の好きだったアイルランドのグループ「U2」の曲「National Tribute」が会場に流されました。1992年にリリースされたこの曲は、愛だけでなく、協調と団結についても歌われています。

 正装に身を包んだ兵士たちが棺を中央に運ぶと、棺には Légion d’honneur(彼の名誉を讃えるメダル)が置かれた赤いクッションが乗せられました。

 故人の友人、同僚、教え子が弔辞を述べた後に、マクロン大統領も弔辞を述べました。

 「サミュエル・パティは悲惨な陰謀と他者への憎悪の犠牲者になってしまいました。私たちは、あなたが教えた自由を擁護し続けていきます。彼は、フランスの顔・自由の顔として私たちの中に生き続けます。」と。


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 安全上の理由からか、故人の家族は、テレビで放映されることはありませんでしたが、あまりに大きな波紋を生んだ彼の死を家族はどう受け止めているのでしょうか? 一教師の葬儀が国葬となり、政府の首脳が首を揃える葬儀。

 家族も教え子たちも友人でさえも、身近な人が亡くなったというだけでも痛ましいことなのに、しかもテロにより殺された・・しかも、想像さえつき難い陰惨な殺され方で・・。

 私の祖父が亡くなった時には、会社をあげての、かなり大規模な葬儀で、立派な葬儀がすごいなと思った一方で、何か家族だけで祖父の死を傷めないことも少し残念に思ったことがありました。今回のサミュエル・パティの場合は、テロによる被害者ということもあり、テロリストに向けてのフランスの圧倒的な力と団結を示すという意味も大きかったと思います。

 きっと、家族にとっては何が何だかわけがわからないうちに事が進んでいく・・そんな感じかもしれません。

 事件から数日が経って、犯人の背後には、数人の協力者がいた事が発覚してきています。犯人であるとはいえ、若干18歳の青年が人をこれほど陰惨な形で人を殺すほどの恨みや怒りを持地ながら生きていたのかということがある意味、気の毒にも感じられます。

 実際に犯行に及んだ18歳の青年はその場で射殺されていますが、その背後にいた大人たちの卑劣さが空恐ろしく、彼らがどんな気持ちでこの国葬を見ていたのかと思います。

 今、フランスはコロナウィルス感染も大変な状況、世間の注目が一気にこのテロ事件に持って行かれています。

 今、フランスでは、「表現の自由を守ろう」そんなテレビコマーシャルまで流されています。


<関連>

「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html

「フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_19.html




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