2020年10月19日月曜日

フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ

                                                                                                                                

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 サミュエル・パティは、今やフランスで最も有名な教師になりました。

 この週末は、パリ、マルセイユ、ボルドー、リール、リヨンなどの多くの都市で、金曜日の夕方に路上で首を掻き切られるという衝撃的な殺され方をした教師サミュエル・パティの追悼デモが行われました。このデモは、フランス全土で数万人規模のデモになり、その衝撃の大きさを物語っています。

 彼が行った表現の自由についての講義が物議を醸し、結果、テロリストの標的になったことから、全国から、多くの教師や教師を志している人々が参加し、追悼デモということもありますが、いつものデモとは、少々異なるものでした。

 コロナウィルス感染の第二波を迎えているフランスで、また・・デモ・・と憂鬱な気分になりましたが、様子を見ると、暴れる人もおらず、何よりマスク率が高くて、行儀が良い・・さすがに教育者が多いデモなのだと変なところに感心しました。

 パリのリパブリック広場には、ジャン・カステックス首相、パリ・アン・イダルゴ市長なども参加し、テロに屈しないと声明を発表しました。

 表現の自由の講義を担当していたこの教師が殺されたのは、いくつかの誤解も重なっているようで、彼が惨殺された原因となったマホメットの風刺画を表現の自由の講義で使用した際に、イスラム教徒の生徒には、「ショックが大きいかもしれないので、退席してもよい」と言ったことが、「イスラム教徒は教室から出て行け!」と言ったとSNSで拡散されており、実際の犯人も実際の授業に参加していたわけではなく、この間違った情報により、この凶行に及んだと思われます。

 しかも、犯人は、標的であった教師を自分で確認することができず(それほどよく知らない相手だということ)、同校の学生に300ユーロを現金で支払い、ビデオを撮りたいから、彼が出てきたら、教えてほしいと頼んでいます。

 教えた生徒も、知らなかったとはいえ、まさか、このような殺人事件の片棒を担いでしまったことにさぞかし後味の悪い思いをしていることでしょう。 

 それにしても、反抗したり、話し合ったりするわけでもなく、いきなり首を掻き切られるのですから、恐ろしいことです。

 このデモには、イスラム教徒も参加しており、これはイスラム教がやらせた凶行ではない、これはテロリストの犯行だ!と訴えているグループもありました。

 私の周りにも、娘の元同級生で、敬虔なイスラム教徒のママ友家族がいますが、パパ、ママともにお医者さんで、至極、真っ当で、本当に親切で勤勉な優しい家族です。あの人たちがこれらのテロリストと同じに見られることには、とても納得がいきません。

 確かに過激派とされるイスラム教徒がいるのは確かですが、イスラム教全体をアンチとすることには、注意しなければなりません。

 宗教の話題は、なかなかセンシティブで、誰とでも気軽に宗教の話ができるわけではありませんが、表現の自由を教えるならば、違う宗教、違う意見の人それぞれを認め、話し合うことができるということを教えて欲しいと思うのです。

 フランス人は、一般的に数人が集まって話していても、それぞれが自分の言いたいことを言って、話全体としては、収集がつかなくなっていることが多いのですが、それは、それで良いのです。それぞれが自分の言いたいことを言って、スッキリ、討論になっても根に持つことはあまりありません。

 そんな一般的なフランス人の討論会のようなことにはならずに、意見をぶつけあうこともなく、いきなり凶行に及ぶのがテロだと思うのですが、やはり、彼らの社会的な居心地の悪さが鬱屈した結果なのではないかと思うのです。

 犯人の18歳の青年は、射殺されてしまいましたが、関係者と見られる周囲の人11人が拘留されています。実際に亡くなった犯人よりも周囲の人の方が危険人物としてマークされていた人が多かったようで、周囲に洗脳されて犯行に及んだのか?煽られて犯行に及んだのか? どちらにしても、一人の犯行ではなさそうで、さらなる追求が待たれます。

 この手の事件に関しては、事件そのものは大々的に報道されるのですが、その後に発覚したであろう犯行の背景にあるものなどを報道してくれないので、すぐに事件も忘れられていきます。本当は、そこのところまで、しっかり報道して世間に疑問を投げかける・・そんな風に報道してほしいものです。


<関連>

「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html  


 





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