2021年11月30日火曜日

オミクロン株対策の日本の鎖国についてのフランスでの報道

   

ヨーロッパ周辺のオミクロン株感染者が確認されている国々(オレンジ)



 未だはっきりとした情報がないままに、特性がまだわかっていない新しい変種の脅威に直面して、これまでにない激しい変異が見られ、他の変異株とは非常に異なり、予想以上の大きな進化を遂げていると言われているオミクロン株は、WHO(世界保健機構)から、早々に、警戒度が最も高い分類の「懸念される変異株(VOC)」に指定され、多くの国が緊急の対策を取り始めています。

 フランスはこの情報が流れてすぐに、南アフリカをはじめとする周辺7カ国からのフライトを停止するという措置をとり、まだフランス国内で感染者が確認される前からオミクロン株感染者が確認された場合は、感染者だけではなく、感染者に接触した者に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず隔離措置をとるということを発表していました。

 これがほんの数日前のことで、最初の時点では、ベルギー、イスラエルのみだったオミクロン株感染者は、今やヨーロッパでは、かなりの国で感染者が確認され(イギリス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、ベルギー、オランダ、デンマークなど)、イギリス・スコットランドの感染者の中には、海外渡航歴のない者まで含まれており、もはや市中感染が始まっていることが確認されています。

 フランスでは、オリヴィエ・ヴェラン保健相が「すでにフランス国内にもオミクロン株感染者が存在する可能性が高い」と述べていますが、現在のところ、フランスでは、オミクロン感染が疑われる者が8人とだけ発表されており、その確認結果が発表されていないままのため、フランスでのオミクロン株感染はカウントされていません。

 すでにデルタ株の感染拡大で、第5波の大きな波を迎えているヨーロッパですが、各国のこのオミクロン株対応には、かなり注目しています。

 ヨーロッパ内での対応は、特定地域からの入国停止など、大まかには似たり寄ったりの南アフリカ対応ですが、日本の「11月30日から世界中からの外国人の新規入国をすべて禁止する」とする発表はかなり衝撃的に報道されています。

 フランスでの報道では、「日本政府は、金曜日には、南アフリカ、ボツワナ、エスワティニ、レソト、ナミビア、ジンバブエからの訪問者が日本に到着した人に対して、強制隔離施設での隔離期間を10日間に延長することを発表していましたが、週末には、マラウイ、モザンビーク、ザンビアがそれに加わったばかりでした・・」

 「日本政府は、国境の制限を緩和したわずか数週間後、さらに厳しい鎖国措置をとることになり、緩和はたった3週間しか続かなかった・・」と、まるで日本の感染状況が悪化しているかのごときの書きようには、少々、違和感を感じるものでもありました。

 「そして、日本の政府首脳はまた、アフリカ南部の9つの国、およびオミクロン変異体の確認された症例が記録されている国から帰国する日本人は、「厳格なリスクベースの隔離措置」を受ける必要があると述べている。」とも伝えています。

 他にイスラエル、モロッコ、オーストラリアなども同様の外国人旅行者との国境を閉鎖する措置を発表し、オミクロン株鎖国をする国々として、一括りにしていますが、どういうわけか、日本が必ずその筆頭に挙げられているのは、「鎖国」という形態が過去の日本の歴史からも、島国である「日本」のイメージに近いことからくるのかもしれません。

 すでに、地続きであるヨーロッパ諸国では、デルタ株の拡大とともに、オミクロン株がかなり蔓延している可能性が高い状況であり、日本が早い時点で、未知なるこの新しい変異株の侵入を必死で食い止めようとするのとは、そもそも、別次元の問題なのかもしれません。

 しかし、海外在住邦人からしてみれば、日本に入国できないわけではないとはいえ、少々隔離期間が短縮され始めていたところが、フランスからの日本入国も再び、強制隔離施設での隔離期間が設けられ、ちょっとだけ近くなりつつあった日本が再び遠のいてしまった・・そんな気持ちです。

 とはいえ、外国人であれ、日本人であれ、同じ人間、感染を日本に持ち込むリスクは同じはずで、南アフリカからとはいえ、陰性証明を持って飛行機に搭乗した人間がオランダに到着時には、多数が感染していたことを考えれば、現在の渡航は控えるべきであることは、明白です。

 想像以上に早く、なかなか衝撃的な日本のとった「鎖国」対策、これが吉と出るか否かはわかりませんが、個人的には、妥当な対応であるような気がしています。


オミクロン株 日本鎖国


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2021年11月29日月曜日

このところ感じる日本とフランスの感染対策に対する温度差

  


 ここのところ、日本の友人や親戚と電話などで話す機会があり、感染対策に対する温度差にあらためてハッとさせられています。

 私は、もうここ2年近く、日本への一時帰国はできていないので、実際に現在の日本の様子を見ているわけではないのですが、話している相手(日本にいる友人や親戚)から、漏れ伝わってくる感染対策への警戒がほとんど緩んでいないことに、そして、同時に日本と比較するのもおこがましいほどのフランスの緩み具合を照らし合わせると、あらためて、愕然とさせられるのです。

 日本の友人から、「まだ、み〜んなマスクしてるよ!」とか、「まだまだ、前のようにみんなで気軽に集まって食事したり、おしゃべりしたりする雰囲気ではない・・」などと聞かされると、フランスでは、マスクをしていない人も一段と増え、(もともとマスクをきちんとできていない人も多い)(しかし、公共の場や屋内ではマスクが義務化された)、ヘルスパスでチェックされているとはいえ、思いっきり普通にみんなで会ったり食事したり、めちゃくちゃおしゃべりしているし・・とそのあまりの温度差の違いにちょっと愕然とするのでした。

 これは、フランスでの感染が増加していくのも無理もないかとあらためて感じるのです。

 ヘルスパスがあるだけで、フランスはもうコロナなどなかったかのような日常。

 日本はいつの間にか、感染もかなりおさまり、1日の新規感染者が100人前後というパンデミック以来、フランスはそんな数字にまで抑えられたことがないであろう数字にまで到達しているというのに、未だ持って、フランスのように罰金付きの規則に縛られることもないのに、警戒を怠らない雰囲気は、やはり別世界。

 もしも、フランスで1日の新規感染者が100人などということになれば、もうパンデミックは終わったかのごとく皆が有頂天になることでしょう。

 フランスでの「ワクチン接種をしたから・・」「ヘルスパスを持っているから・・」と甚だしい気の緩みは、あらためて日本にいる人の話を聞くと、「そりゃそうだよな・・感染者が増えるわけだ・・」と思わずにはいられないのです。

 フランスも一時は、ワクチン接種の拡大とヘルスパスの起用により、1日の新規感染者もそれでも5,000人程度まで抑えられていた時期もあったのですが、最近は、ヘルスパスのチェックも緩くなってきて、飲食店などでもバタついていたりすると、「結局ノーチェックだった・・」という話もちらほら耳にするようになりました。

 ヘルスパスにより取り戻した日常に慣れすぎて、ワクチン接種をしているから・・ヘルスパスを持っているからもう何をしても大丈夫・・という感覚になってしまっていることは明白なのです。

 私自身、マスクをしないで出かけることはありませんが、ヘルスパスである程度は、守られているからとちらほらと外食をしたりもし始めていました。

 時間の経過とともにワクチンの有効性が薄れていくことを危惧して、ブースター接種を加速化しているフランス政府ですが、同時にこの気の緩みもなんとかしなくては、この冬を無事に乗り切れないかもしれません。

 これからノエルや年末年始とヘルスパスのチェックのない「家での人の集まり」が増える時期にさしかかり、すでに、先日も隣人が大勢の人を招いての大パーティーを夜から朝にかけてやっている様子が聞こえてきました。

 国民性の違いといってしまえばそれまでですが、規制されなければ、自粛できない、規制されてもその網の目をくぐってやりたい放題の人々にいい加減、うんざりしています。

 いつまでたっても終わらないどころか、新しいオミクロン変異株なるものまで登場して、ますますパンデミックは長引きそうな雲行きです。

 パンデミックの始まりは2020年の始めだったので、そろそろもう丸2年になり、この調子だと3年目に突入するのは不可避です。

 「やっぱり、ちょっと、明日、日本に行ってくるわ・・」とか、気軽に日本に帰れる日は、一体、いつ戻ってくるのでしょうか?

 

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2021年11月28日日曜日

世界中がオミクロン変異株を警戒し始めた


空港で立ち往生する人々


 話題に上がり始めて、たった数日のうちに、オミクロン変異株は、WHO(世界保健機構)から、警戒度が最も高い分類の「懸念される変異株(VOC)」に指定されました。

 これまで気付いていなかっただけで、すでに、かなり広がってしまっているのか? それとも感染速度が脅威的な速さと強さなのかはわかりませんが、世界中はこの新しい変異株に対して、異例の警戒体制を敷き始めています。

 すでに昨日の段階で、南アフリカを含む7ヶ国からの到着便を一時停止する措置をとり、現段階でオミクロン株に感染した者は確認されていないフランスですが、オリヴィエ・ヴェラン厚生相は、「このオミクロン株感染の検査で陽性となった人、及びその陽性者と接触している人は、ワクチン接種の有無にかかわらず、隔離が義務付けられること」を発表しました。

 「感染者だけではなく、感染者に接触した者に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず隔離」という制限は、フランスでは前例のないことであり、ワクチン接種が有効ではないことを前提に考えられている対応です。

 つい10日ほど前までは、ヨーロッパの周囲の国の感染拡大に警戒し、ベルギーなどの15ヶ国からのワクチン未接種者の入国には検査の陰性証明書の提示を求めるなどの措置をとったばかりのフランス、今回は、ちょっと警戒の度合いが桁違いなようです。

 先日の段階では、ベルギー、イスラエルのみでしたが、この変異株に感染している症例がイタリア、イギリス、ドイツ、チェコなどで続々と確認され始め、すでにこの変異株がかなり広範囲に渡り、広がっていることが予想されます。

 先日、南アフリカからアムステルダムに到着した便の乗客約600人のうち、61人がコロナ陽性であったというのは、衝撃的な出来事で、これがオミクロン株による感染かどうかは確認できてはいないものの、普通、飛行機に搭乗する際には、検査の陰性証明書の提示が義務付けられているはず、このチェックが南アフリカの空港で適切に行われていたかどうか、または、検査を受けた後72時間あるいは、48時間以内、または機内で感染したか?いずれにしても600人中、61人感染とは10%以上を超える感染は、どう考えても異常な数字であることに違いはありません。

 これは、オミクロン株の影響でアフリカからの渡航が制限される前の2便の飛行機からの感染者であることを考えれば、直ちに渡航制限をした措置は正しかったと言わざるを得ません。

 このオミクロン株による感染者がすでに確認されているイギリスでは、ボリス・ジョンソン首相が「我々は、この新しいオミクロン変異株対応のために「さらに一歩進んで、新しい検査体制を整える必要がある」とし、「イギリスに入国する人には、2日後にPCR検査を受け、検査結果が出るまで隔離を義務付ける」こと、また「再びマスク着用を義務化すること」などを発表しました。

 多くの国が南アフリカからの便を停止しているにもかかわらず、日本は規制を強化するのみで、入国を禁じてはいません。強制隔離施設での隔離を10日間に強化する方針のようです。もともと、フランスなどから入国する場合も強制施設隔離はなくなったものの、公共交通機関も利用できずに検査を何重にも求められ、2週間の自宅隔離。これでは来るなと言われているも同然です。しかし、これだけ注意深いはずの日本がなぜ、南アフリカからの渡航を一時でも停止しないのかは疑問です。

 現在、確認されているボツワナ、イギリス、ベルギー、ドイツ、香港、イスラエル、チェコ共和国、イタリアなどのオミクロン株感染者は、エジプトから到着したベルギー人旅行者を除いて、全てのケースは南アフリカ南部からの旅行者です。

 これは集中的に南アフリカへ渡航したものを集中的に追跡していることもあると思いますが、南アフリカでのコロナウィルス感染者はここ数週間のうちにこれまでのデルタ株よりもオミクロン株が優勢になっていることを鑑みれば、このオミクロン株の感染の威力と速度は十分に警戒すべき事態であるに違いありません。

 何よりも南アフリカからアムステルダムへの便での600人中61人感染の事実は、特に詳しく検証する必要があり、それがたとえオミクロン株ではないにせよ、異常事態。搭乗時には陰性とされていたはずの人々がいつのタイミングで感染したのか?また陰性証明がどの程度、信頼されるべきものであるか?これらについては、搭乗前の検査のタイミングなども見直す必要があるかもしれません。


オミクロン変異株 南アフリカ


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2021年11月27日土曜日

南アフリカで新たな変異株(オミクロン)検出の波紋 すでにヨーロッパでも検出

   


 南アフリカで新型コロナウィルスの新たな変異株が検出されたという衝撃的なニュースがヨーロッパにも届いています。そして、届いたのはニュースだけではなく、すでにベルギーでこの新しい変異種が検出され、ウィルス自体も届いていることが確認されています。

 この新たな変異株には、これまでで最も激しい変異が見られ、ある科学者は「これまでに見た中で最悪の変異株(B.1.1.529)には信じられないほどの激しい変異が見られ、これまでに流行した他の変異株とは非常に異なり、予想以上の大きな進化を遂げている」と述べています。

 この変異株にはさっそく、「オミクロン」という名前がつけられたようです。

 しかし、必ずしも悪い状況かどうかはまだ確認できていませんが、従来株を想定して開発されているワクチンが新たな変異株に有効かどうかの懸念を消すことはできません。

 現在の段階では、この新しい変異種が強い伝染性を持っており、急速に広がる可能性があると言われています。

 このベルギーで検出された新しい変異種の感染者は海外から入国したワクチン未接種者(エジプト→トルコからベルギーへ入国した30代の女性)であったことが発表されたため、フランスでは、急遽、南アフリカの7カ国からの到着便を直ちに停止することを発表しました。

 また、イスラエルでも、このオミクロン変異株の最初の症例が検出されたことを発表。マラウイから帰国した旅行者で、他にも海外から帰国した2人が現在監禁中になっていると述べ、これらの3人はワクチン接種済みであるという事も恐ろしい事実です。

 この即急な措置は「最低48時間」適用され、レソト、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、ナミビア、エスワティニからの旅行者にも該当します。また、フランス政府は、これらの国に過去14日間の間に旅行した人は、できるだけ早い時点でPCR検査を実施することを呼びかけています。

 WHOは、緊急委員会の一時的な勧告に従って、旅行対策を実施する際に、各国が科学的かつリスクベースのアプローチを引き続き適用することを推奨し、旅行者の制限に対しては積極的な対応を求めることを控えてはいますが、懸念事項として分類はしています。

 万が一、この判断が遅れ、ただでさえ、すでに感染が急拡大しているヨーロッパが致命的な更なる打撃を受けることを考えれば、後になってから、「なんだ・・そんなに大騒ぎするほどのことでもなかったじゃない・・」と思える方が賢明である気がしてなりません。

 この南アフリカからのフライトを禁止したのは、フランスだけではなく、イギリス、オランダ、ドイツなど、また、アジアの数カ国もこれと同様の措置を取り始めています。

 ワクチンを開発したファイザー・ビオンテック社は、このオミクロン変異株の出現に際し、この変異株がワクチン保護を逃れるものかどうかを判断するための研究の最初の結果を「遅くとも2週間以内」に期待していると発表しています。

 また、モデルナ社もほぼ同時にこのオミクロン変異株に対処するための戦略を発表しています。


 現在、ヨーロッパで再び猛威を振るっている状況に2回のワクチン接種、ならびにブースター接種を急拡大する方針に乗り出したフランスですが、もしもこの新しい変異種にワクチンの有効性が認められない場合は、また振り出しに戻ることになってしまいます。

 また、現在、ユナイテッドラグビー選手権(URC)のために南アフリカ滞在中のウェールズ、イタリア、アイルランドなどの選手団は、この新しい変異種の発表から、パニック状態になり、南アフリカをできるだけ早くに離れることを要求しています。

 この他、ゴルフ、クリケットなどの選手らもフライトが閉鎖される前に本国へ帰国するため、途中で試合を撤退しています。

 南アフリカでは、アフリカ大陸でウイルスの影響を最も受けている国の一つであり、これまでに290万人の症例、89,600人の死者が出ています。

 ヨーロッパ全体が大きな第5波に飲み込まれようとしている真っ最中に、さらに強力かもしれない新しい変異種の出現には、まったくもって、「また???」とうんざりするばかりです。


南アフリカ変異株 オミクロン


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2021年11月26日金曜日

2022年1月15日以降、2回目のワクチン接種7ヶ月後までに追加接種なしのヘルスパスは無効になる

 


 

 ドイツ、オーストリア、ベルギーなどの感染拡大をよそに、どうにか持ち堪えてきた感があったフランスでもここ数週間での新規感染者数が急増、毎週、1万人ずつ増えている感じで、とうとう3万人超え(11月24日の時点で32,591人)を記録する日が続いていています。

 いくらワクチン接種の効果で、ある程度の重症化を防いでいたとしても、これだけ感染者が増加すれば、地域によっては医療対応が逼迫し始めているところも生じ始めています。

 フランス政府(オリヴィエ・ヴェラン保健相)はこの感染が急増している第5波を、夏に発生した第4波よりも強く、長くなっていることに言及し、新たな対策を講じることを発表しました。

 まず、国民のショックを鑑みて、ロックダウン、夜間外出禁止、店舗営業の時間短縮、旅行等の移動制限はしないとした上で、「自由と責任を調和させる」方法を選択したと述べました。

 9月からはすでに65歳以上の人に対して開始されているブースター接種(3回目のワクチン接種)は、18歳以上のすべての国民に対して行われます。また、これまで2回目の接種から6ヶ月以上経過した場合に限られていたブースター接種は5ヶ月以降に短縮されます。

 これは2500万人のフランス人に該当するもので、そのうち600万人はすでにブースター接種が終了しています。

 また、一定の期間が経過した場合に確実にワクチン接種の有効性が減少するために、2022年1月15日の時点で、2回目のワクチン接種から7ヶ月以内にブースター接種が行われなかった場合、ヘルスパスは無効となります。

 この日はワクチン接種予約のためにDoctolib(病院や医者などの医療関係施設予約サイト)は、1日中、長時間待ちの状態に・・。政府からの発表はやはり効果絶大、みなヘルスパスで日常生活を普通に送れることに味をしめているため、それが取り上げられるとなれば、必死になるのです。

 これは、時間の経過とともにワクチン接種の有効性が薄れることが明白になってきている以上、ヘルスパスで安全なスペースを保つことを考えれば、至極、当然のことです。

 また、11月29日(月)からは、ヘルスパスの一部であった検査の陰性証明書はこれまで72時間以内の証明書で有効であったものが24時間以内の証明書に短縮されます。

 従って、2回のワクチン接種および、2回のワクチン接種から7ヶ月以上の時間が経過した場合は、24時間以内の陰性証明書を提示する必要があります。

 これらの検査の費用は、現行どおり、症状があり医師の処方箋を提示するか、接触症例として指定されていない限り、検査を受ける本人負担です。

 また、ヘルスパスの対象となる場所も含め、閉鎖された全ての公共の場所でのマスク着用が再び義務化されます。

 そして、ノエルに向けて、始まったクリスマスマーケット(Marché de Noel)についても、ヘルスパスの提示が求められます。

 学校に関しては、これまでの感染者が出た場合の自動的な学級閉鎖を終了し、感染者が出た場合には、クラスの生徒全員に検査を行い、陽性であった生徒のみが自宅隔離となります。この措置は、11月29日(月)から開始されます。

 これは、これまでのクラス内感染者が発生した場合には即、学級閉鎖という措置のために、すでに、かなりのクラスが学級閉鎖になり(現在、8500のクラスが閉鎖されている)、多くの子どもたちが隔離状態で学校に行けていない状況からあくまでもクラスは閉鎖せずに安全に授業を行い続けるという目的から措置を変更したものです。

 従って、学校での感染者の症例に対して、体系的な学級閉鎖は廃止され、閉鎖する代わりにすべての生徒に対して検査を行い、陽性者だけが家で隔離状態になります。(子どもの検査は無料)

 また、子どものワクチン接種に関しては、現在、フランスでは12歳からのワクチン接種が認可されていますが、25日(木)、欧州医薬品庁は5歳から11歳のファイザーワクチンの使用を承認しています。

 しかし、依然として子ども(5歳〜11歳)のワクチン接種に対しては慎重な態度をとっており、少なくとも2022年のはじめまでは、開始されないとされています。

 時間の経過とともにワクチン接種の有効性が薄れるとともにヘルスパスで守られていた状況が脅かされている現在、ブースター接種を拡大させる方針を軸に感染対策を強化する方針です。

 時間の経過とともに薄れているのはワクチン接種の効果だけではなく、人々の感染予防に対する意識でもあり、街に出るとマスクをしていない人も多く、していたとしても此の期に及んで鼻マスクだったり・・路上に捨てられたマスクを見かけることも多くなりました。

 夜の飲食店街などの様子を見る限り、まるでコロナ前の光景となんら変わりはないくらいで、みんなコロナのことなど忘れているかのように人生を謳歌しています。

 現在のフランスでの感染拡大は、これまである程度、ヘルスパスにより守られてきたとはいえ、原因は一つではなく、中でも、やはり、「ワクチン打っているから、ヘルスパスをもっているから大丈夫でしょ!」というきの緩みが大きな原因ではないかと思われます。

 最悪の場合は、ヘルスパスのチェックもしっかり行われていない場合すら(先日、TGVに乗った際、帰りのTGVではヘルスパスのチェックはありませんでした)あるのです。

 現段階では、ロックダウンや夜間外出禁止、店舗の時短営業、旅行などの移動禁止などはしないとしていますが、これがさらに悪化すれば、そういった措置をとるのも致し方ない状況になる可能性もあるのです。

 こんな状況で、どうして、平気でいられるのか?日本人の感覚?である私には、全く理解できないところではありますが、現在の全世界での新規感染症例の約70%は欧州で起こっているという衝撃的な発表もあり、11月初旬に、「ヨーロッパが再び感染の震源地になる」とWHOが発表したとおりになっていることに、なぜヨーロッパばかりが・・と恨めしく思いながら、ブースター接種(予約済み)の日を待っているのです。


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2021年11月25日木曜日

ボルドーのおススメフレンチレストラン メロディー Melodie

  


  

 娘の卒業式のために約3年ぶりに訪れたボルドーで、おそらく、今後、そうそう来る機会はないであろうボルドーでなんとか美味しいものを食べて帰りたいとボルドーへ行く前から、卒業式の準備以上にレストラン探しをしていました。

 日頃、半分はフランス人のくせに、フレンチが苦手な娘も「美味しいフレンチならば・・」と珍しくフレンチのお店探し・・。

 そして、滞在期間(といっても一泊二日なので、せいぜい3食)のお店を探した結果、まず一つ目で行ったお店が大当たりでした。

 今は、サイトで探して、お店のメニューやお料理や店内の写真や評価などで、だいたい見当がつけられるので、美味しいお店も探しやすくなりました。

 この際、ミシュランの星付きとか、超高級なお店は排除しました。すると、わりとどこのレストランもメニューが似ていて、フォアグラや鴨がかなりの確率でメニューに含まれており、値段も似たり寄ったりで、あとはお店の雰囲気などで、なんとなくの感で「ここへ行ってみたい!」となったのです。

 当日、昼、少し前にボルドーに着いた私たちは、レストランの開店時間まで、少し街を歩き、開店時間直後に入店。どこにしようか?ギリギリまで迷っていたために、予約はしていませんでした。

 石がはめ込まれた壁に覆われた趣ある店内はそれほど大きなスペースではないものの、そこそこの席数。私たちが入ってすぐにほぼ満席になりました。

  



 アントレにはフォアグラとクルージュのオーブン焼きをチョイス。

  


 フォアグラなど滅多に食べないのですが、火の入り具合が絶妙で、添えられたオニオンのジャムがフォアグラをまろやかに引き立ててくれます。

 クルージュのオーブン焼きにはフェタチーズが散りばめられ、バルサミコベースのソースがよいアクセントになっています。



 後から入ってきたお客さんの中には外国人のお客さんもいて、しっかりメニューを英語で説明している声が聞こえてきました・・ので、英語でもOKのようです。

 そうそう・・お料理とは関係のない話ですが、ここに着いた時点で携帯のバッテリー切れだった私は、「携帯の充電をしてもらえませんか?」と図々しいお願いをしたところ、快諾、「帰りに忘れないようにちゃんと言ってね!」とすこぶる感じよく親切でした。

 メインには、サーロインステーキとサーモンのパルメザンリゾット、ホワイトバターソース。

  



 お肉の焼き具合もピッタリで、添えられた赤ワインソースが絶妙のマッチング(ソースはいくつかの種類から選ぶことができます。リゾットのホワイトバターソースも比較的さっぱりめで、サーモンの皮はカリッと、身はふっくらとしたメリハリの効いた食感です。

  


 最後のデザートには、いちごのシロップ漬けとクレームシャンティ、コーヒーのティラミス。

 いちごの方は正直、全然、期待していなかったのですが、シロップが最高に爽やかで絶品、シロップ漬けなのに甘すぎないのに、いちごの酸味も和らいでいて、お皿に添えられたナッツもトッピングすると最強。

 ティラミスもたっぷり目なのに、フワッと軽く、あっという間に楽勝で平らげてしまいました。

 隣の席にいた女の子がいつまでも名残惜しそうにティラミスのお皿をスプーンですくい続けていたのには、思わず笑ってしまいました。

  


 日によって、多少、メニューは変わるようですが、アントレ、メイン、デザートとだいたい4種類の中から選ぶことができます。

 このコース(アントレ・メイン・デザート)で一人20ユーロには、大変満足です。

 パリだったら、どれか一品の値段です。

 難を言えば、グラスワインのワインが少なかったことで(といっても普通の一杯・・私がいつも、なみなみとついで飲む習慣から少ないと感じただけだと思います)、早起きしたうえに、午後まだ動き回るためには、一杯だけと決めていたので、ちょっと物足りなかっただけです。

 これだけ食べたのだから、歩かなければ・・と午後中、ボルドーの街を歩き回り、ホテルにチェックインしてからしばらくして、また夕食に・・夕食はここぞと目をつけていたお店がまさかの満員。もう一つのお店に行って、またフレンチ。

 このお店も十分に満足するお味でしたが、2食連続フレンチに、さすがに二人揃って、ノックダウン。「すごく美味しかったのに、もう当分、フレンチいいわ・・」となり、翌日はアジア系のお料理屋さんに行きました。

 しかし、パリに戻って、おうちごはんで一息ついて、あの日の食事を思い出すに、あの値段、あの味、あのサービスはやっぱり凄かった・・と思うのでした。

 ボルドーへいらっしゃる機会があれば、「Melodie」はおススメです!

「Melodieサイト」


ボルドーのおススメのレストラン(フレンチ) Melodie


○Restaurant Melodie   6 Rue des Faussets 33000 Bordeaux  

  12:00~14:30, 19:00~22:30



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2021年11月24日水曜日

娘の卒業式

   


 これまでずっと入学式も卒業式もなかったフランスの学校で、最後の最後のグランゼコールには、卒業式がありました。卒業式といっても日本のような式典とは違い、ディプロムの贈呈式のようなものです。

 娘が10歳の時に主人が亡くなり、その直後は、「到底、フランスで一人で子育てなど無理・・もう日本へ帰ろう!」と思ったのですが、周囲の方々の支えもあり、結局、娘の教育を考えてフランスに残ることにしてから13年間、娘は当時、通っていた、こちら(フランス)の私立の学校に高校まで通い、その後、プレパー(グランゼコール進学のための準備学校)、グランゼコールへと進み、晴れて卒業致しました。

 娘が通っていたグランゼコールは、ボルドーにあり、ボルドーで2年間生活した後の一年間は、イギリス、日本へと留学予定にしておりましたが、パンデミックの煽りをもろに受け、それでもイギリス留学はリモートで授業を受けることができましたが、日本の国立大学への留学は延期された挙句に結局、キャンセルになり、その間、フランス国内の会社や研究所でのスタージュに切り替えた過程を終了し、ついに卒業式の日を迎えました。

 卒業式が11月という話を聞いて、フランスの学校事情に疎い私は、「なぜ?11月?」と思いましたが、家族も参加する場合は予め人数を申告する必要があったため、「ママ、行く? 私、自分自身も行っても、行かなくてもどっちでもいいと思ってるんだけど、どうしようかな??」などと言うので、「卒業式に行かないなんて、そんな・・ママも絶対行くよ!」と出席予定にしていたのでした。

 卒業式の日程が決まったのは数ヶ月前で、娘もそんな具合で、えらく冷めた感じだったので、なんとなく、今ひとつ、気持ちが盛り上がることもないまま参加した卒業式でした。

 日本の卒業式のようなセレモニーとは違いましたが、40人前後の卒業生が一人一人、呼び上げられながら、一人一人壇上でディプロムと卒業記念の四角いフサのついた帽子をもらい、サインしていく様子には、派手な演出がない分、余計にじんとくるものでした。

 娘のスライドが流され、ディプロムを受け取っている様子を見ながら、娘が生まれてからこれまでのこと、特に主人が亡くなってからの様々な出来事が走馬灯のように蘇り、「よくぞ、ここまで頑張ってくれた。本当によく頑張ったね。えらかったね・・。」とこれほど感慨深いこともなかなかなく、座席から見ていた私は、感極まって、溢れてくる涙を止めるばかりか、号泣しそうになるのをこらえるのが大変なくらいでした。

 ごくごく普通のフランス人の家庭で育った人でさえ、そう簡単には取得できないエンジニアのディプロムです。我が家のように、フランス人の父親を亡くし、私のような頼りない日本人(外国人)の母親のもとで育った娘にとっては、どれだけのハンディがあったかと思うと、感慨も一入(ひとしお)でした。

 グランゼコールを卒業し、この大層なディプロムを取得するこの卒業式には、卒業生以上にその家族総動員で参加している人も少なくなく、卒業生以上にその家族の人数の方が多く、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、兄弟姉妹たちまで来ていて、しかも、他の家族同士が他の生徒でさえも、暖かく見守って、讃えあうような暖かい卒業式でした。

 娘の晴れ姿を誰よりも見たかったであろう彼女の父親も、娘の成長を何よりも楽しみにしていた私の両親も全てもうこの世にはおらず、誰一人、この卒業式には参加することができなかったのは、返す返すも残念で、その一人一人が遠くから、彼女を見ていてくれたのではないかと遠い空を見上げる私の目からは涙が止まらなかったのです。

 こちらの大学・グランゼコールならではの、四角い帽子を被った卒業生、そして、映画で見るような、みんなで一斉に帽子を投げるシーンなどは、まことに晴れやかな光景でした。

 その後、校内の一角での簡単なカクテルパーティーでは、ふんだんに用意されたシャンパンやプティフール(一口サイズのスイーツやおつまみ)、ボルドーならではのカヌレなどが用意され、卒業生やその家族との会話は永遠に続くのではないかと思われるほどの盛り上がりぶりでした。 


 最後の日になって、校内がその家族にも公開され、おそらく値段を聞いたら驚愕するであろう研究設備など(娘の専攻は生命工学)が揃っているいくつもの部屋を見学し、フランスがどれだけ国費を投じて学生を教育しているのかを目の当たりにし、あらためてフランス恐るべし・・と実感させられました。

 娘にとっては、卒業式は、これまでの学生生活の締めくくりであるとともに、あらたな人生のスタート地点でもあります。

 ここまで私たちが無事にフランスで生活してこれたのは、周囲の方々の支えがあってのことで、私たちだけでは、とてもここまでくることはできませんでした。

 特に主人が亡くなった時点での周囲のフランス人のママ友やパパ友たちは、それまで漠然と勝手にこっそり抱いていた「フランス人は冷たい・・」という印象を私から見事に拭い去り、想像以上に結束して私たちを暖かく支えてくれました。

 今はいない私の両親も日本にいる叔父、叔母たち、従姉妹たち、友人たちも遠くからいつも応援してくれていました。

 この場をお借りして、これまでお世話になってきた方々には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。そして、これからもどうぞ娘を暖かく見守ってやってください。

 このブログを読んでくださっている、私たちを直接、ご存じない方々にも、いつも、私のつたない文章をお読みくださり、ありがとうございます。


グランゼコール 卒業式 ディプロム


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2021年11月23日火曜日

ヨーロッパ感染再拡大による締め付けへの反発

   

抗議運動から発展した暴動で荒れているグアドループ


 ヨーロッパでのコロナウィルス感染が急速に再拡大している中、各国が続々とロックダウンや制限の強化を急ぎ出した中、拡大しているのはウィルスだけではありません。

 特にオーストリアでは、急激な感染拡大のために、先週、発表したワクチン未接種者のみのロックダウンから、さらに大々的なロックダウンの措置(一般の店舗、レストラン、クリスマスマーケット、コンサート、美容院などの営業停止)を取ることに加え、2022年2月には、全国民(成人)へのワクチン接種義務化を発表しました。

 ほんの数週間前までは、現在のようなシナリオなど想像もつかなかった状況で、元保守党首相のセバスティアン・クルツは、「少なくともワクチン接種を受けた人々にとって、パンデミックは終わった」と宣言していました。

 この急激な状況の変化に伴う制限の強化は国民感情からすれば、余計に反発を感じるのも無理からぬことに違いありません。クリスマスシーズンに向け、スタートを切ったばかりのクリスマスマーケットなども全て閉鎖になりました。

 オーストリアをはじめとするオランダ、ベルギーなどの国々では、この急激な行動制限等に敵対するデモや集会が激化し、暴力行為が拡大しています。フランスでもグアドループでは、ヘルスパスや医療従事者へのワクチン接種の義務化に敵対する集団が、暴力行為に走り、店舗を襲ったり、車を燃やしたりする大騒ぎになっています。

 もっとも、グアドループでの暴動に関しては、全ての抗議運動は、パンデミック対応に関する理由だけではなく、暴動を起こす口実に過ぎないとも言われており、これはより深刻な社会的危機の表れであり、政府の決定に対する疑念と高い失業率(17%)が社会的な不安を起こしているとも考えられます。

 オランダでは、3夜連続で暴力行為により、警察の銃撃により、4名が負傷、週末の暴動に介入した145人が逮捕、サッカーの試合場での過激な暴力行為、小学校放火、その他、物的損害を引き起こす花火まで、次々と暴力的な破壊行為が続きました。

 オーストリア・ウィーンでは、抗議のデモに40,000人が集結し、ブリュッセルでは、35,000人のデモ参加者と警察が衝突しています。

 これらの抗議運動は、明らかにワクチン接種により、取り戻し始めていた日常を再び奪われること、政府の急な感染対策の変更が原因であることは明白です。
 
 フランスは、すでに7月の段階でヘルスパスが適用され、当初はその反発により、大規模なデモが起こったりしていましたが、ヘルスパスのおかげで現在のところは周囲のヨーロッパ諸国よりは感染拡大の波は比較的低い状態です。

 とはいえ、フランスでの感染拡大も確実に速度を早めており、もしも、現在以上の規制を敷かなくてはならなくなった場合は、フランスでも同じような抗議運動が拡大する可能性は大です。

 ヨーロッパは感染の拡大だけでなく、その急激な感染対策に抗議するデモやその暴徒化の拡大も心配される困った状況です。

 フランスでは、グアドループでの暴力的な行為に、カステックス首相が国民に向けて緊急演説、落ち着きと責任を訴えかけ、暴力・破壊行為は決して許されないことであるとし、秩序を回復するためのあらゆる手段をとることを発表しました。

 ところが、そのカステックス首相がなんとコロナ陽性であったことが、その直後に発表され、首相自身が感染したニュースのインパクトが大きく、演説が霞んでしまいました。
 しかし、現在のタイミングで、首相までも陽性とは・・感染拡大がどんどん広まっていることを感じずにはいられないのでした。

ヨーロッパ感染再拡大 抗議運動暴徒化


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2021年11月22日月曜日

久しぶりにボルドーに行って驚いたこと

 


 私はパンデミック以来、全く旅行というものをせずに過ごしてきました。もともと国内(フランス)を旅行することも滅多になく、海外(といってもヨーロッパの中か日本)に行くことの方が多かった私は、何も今、行かなくてもいいか・・と、もうちょっとスッキリとした気持ちで出かけられるようになったら・・もういい加減、コロナもおさまるだろう・・と思いつつ、気がつけば、もう2年近くなるというのに、ずっと長距離の移動は避けてきました。

 といっても、普段、パリ市内では普通に(ヘルスパスのもとにですが・・)買い物に行ったり、食事に出かけたり、友人に会ったりはしていたので、まるっきり自粛していたわけでもありません。

 しかし、今回は、娘の卒業式がボルドーであり、これが最後であろうし、これが娘の学生生活の締めくくり、これまで小・中・高校・プレパーと、どれも卒業式というものはなかったので、最初で最後の卒業式、これは見届けねば・・せっかく行くなら、一泊ぐらいしてボルドーの街を歩いて来ようと久しぶりにTGV(新幹線)に乗って、久しぶりにボルドーへ行ってきました。

 実にボルドーへ行くのは、娘が入学時に引っ越しの際に大荷物を抱えて、彼女が初めての一人暮らしをする場所の様子を見に行った時以来、モンパルナスの駅に行くのも久しぶりのことで、いつの間にか駅がすっかりきれいになっていることにもビックリ!

  

すっかりきれいになっていたパリ・モンパルナス駅

 TGVの駅の改札では、ヘルスパスのチェックが行われ、チェック済みの人は、ブルーの紙のブレスレットをつけるようになっています。

 

TGV乗車の際のヘルスパスチェック後の紙のブレスレット

 現在、ヨーロッパは感染再拡大の震源地とされ、周囲の国々が再びロックダウン⁉︎騒ぎのタイミング、フランスはヨーロッパの中ではマシな方とはいえ、感染は確実に増加しており、1日の新規感染者数は余裕で2万人超えの状態。

 パンデミック以来、全く長距離移動をしてこなかった私にとっては、どの程度の人々が国内を移動しているのか想像することもありませんでしたが、平日の朝というのに、TGVは満席で、あらためて、こんなたくさんの人が国内を移動しているのかとびっくりしました。

  

一応、ソーシャルディスタンスをとるマークがつけられている


 ボルドーの街の中心部は、外でもマスク着用が義務付けられて、罰金135ユーロと書かれた看板が掲げられていましたが、取り締まりをしている様子もなく、マスクをしていない人もけっこういました。

 概してパリに比べると、警察官を見かける機会が少なく、それだけパリよりも治安がよいのだろうか?と思いましたが、やはり、罰金付きの規則があっても取り締まりがなければ、守らない・・これがフランスなのだ・・とあらためて思いました。

  

 この地域ではマスク義務化の表示 

 日頃、パリでは食事に出かけるといっても大抵は、昼間のことで、夜に出かけることは滅多にないので、夜に人で賑わう様子を見ることもないのですが、夜は夜で結構な人出。(これは多分パリも同じかそれ以上だと思いますが・・)

 一般の商店は夜には閉店するために、テラスを含め、飲食のために外出している人が中心のためにマスク率は一層下がります。気温が下がり始めた現在ではテラス席には、暖房の灯りがともり、まるでコロナなどなかったかのような光景です。

 テラス席の暖房は禁止(環境問題対策のため)になったのではなかったか?と思って調べたら、テラス席の暖房禁止は2022年に延期されていました。

 こうなると、現在の状況でテラス席の暖房が継続され、店内に入らなければならないはずのお客さんたちがテラス席に留まれることは感染対策には、幸いなことです。そして、何より、一応、テラス席とはいえ、来客にはヘルスパスのチェックがなされていることは、救いです。

 そういう私たちも旅行中ゆえ、ボルドー滞在中は外食オンリーでしたが、レストランでは、お客さんに英語で対応している店員さんを見かけたりもしたので、観光客も結構いる模様。

 外食も旅行も悪いわけではありませんが、いい加減、パンデミックが始まって以来、そろそろ2年。いい加減、いちいち政府に禁止されたり、監視されたりしなくとも、自分でどうすべきかを学んでもよさそうに・・と思います。

 ロックダウンやヘルスパス、限りなくワクチン接種義務化に近いような対策など、政府があらゆる手段をとっても、どうしても感染の拡大は抑えることはできないのは、自分で考えて感染対策をできない人が多いからなのです。(もちろんきちんとしている人もいますが・・)

 はっきり言って、規則を守るのは感染回避というよりも、罰金回避のためです。

 翌日、ボルドーからパリに帰るTGVは、まさかのヘルスパスのチェックもノーチェック。当然、チェックがあるものと、改札の際に携帯のヘルスパスを開けていた私は肩透かしを食いました。

 電車が発車してすぐに、乗務員の人が「ボンソワール・ボンソワール」と車内を挨拶して歩いていましたが、これは、どうやら、マスクをしているかのチェックをしていた模様・・。

 ヘルスパスにより、かなり守られていると思っていたヘルスパスのチェックもどうやらゆるゆるの状況に不安を覚えたのでした。

 パリ・モンパルナスの駅に着いて、乗り換えのためのメトロのホームに行くと、いきなり4〜5人の犬を連れたイカつい警察官がぞろぞろ練り歩く光景に、「あ〜パリに帰ってきた・・」と感じるこれはこれで微妙な気分なのでした。


ボルドー


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2021年11月21日日曜日

古き良きパリを体感できる庶民派フレンチレストラン シャルティエ

   


 パリの外食は高いです。パリにいる時は、外食の値段を日本円に換算しようものなら、バカバカしくて、本当に嫌になるので、しないようにしていますが、逆に日本に行って、外食の値段をユーロに換算して考えると、たちまち目が輝いてしまいます。

 日本でもそれなりに高級なレストランならば、これまたなかなかなお値段ではありますが、一般的に言って、日本での外食は、恐ろしく安くて、嬉しくはあるものの、これでどうやってやっていけるの?とそれはそれで、このしわ寄せが必ずどこかに行っている(正当な対価が支払われていない部分がある)ところが、現代の日本の別の問題の一面であるような気もします。

 例えば、パリでランチを食べようと思えば、安くて15ユーロ程度(約2,000円程度)は、余裕でかかります。パリでまずまずのフレンチを食べようと思ったら、なかなかな値段なわけです。

 そんな中、パリのこのシャルティエ(Chartier)というレストランは、なかなか庶民的なお値段で、凝ったメニューではありませんが、ごくごく一般的なフレンチを楽しめるお店で、前菜、メイン、サイドメニュー、デザートなどが細かく注文でき、ちょい飲みしようと思ったら、サイドメニューを数品頼んで後は飲む(飲むことばかり考えている)ようなこともできます。

  

この日、前菜に頼んだロゼットとセルリレムーラード

 お値段もとてもお手頃で、テリーヌ3.5€、キャロットラペ(人参サラダ)1€、セルリレムーラード(セロリアック・セルリラブ根セロリのサラダ)2.7€、フライドポテト2.5€、ニシンのフィレのオイル漬け3.8€、エスカルゴ(12個)14.8€、などなど、ごくごく一般的にどこの家庭でも食べているようなものでありながら、本格的な味を楽しめます。

 ビール・カクテル類も3.5€前後、ワインもハーフボトルで6〜10€程度です。

 メインはお魚のメニューは少ないですが、お肉料理はステーキからローストチキン、鴨のコンフィ、シュークルート(アルザスの名物料理でキャベツなどの野菜と肉類を煮合わせたもの)、豚足料理、ビーフブルギニヨン(牛肉の煮込み料理)などなど、ガッツリと食べることができます。(こちらも6.5€から11€程度)

シャルティエのメニューのサイト


             スズキのグリルとビーフブルギニヨン



 そして、何よりもこのお店が楽しいのは、1896年創業という歴史ある店内の作りで、入り口の回転扉から一歩、足を踏み入れると、当時にタイムスリップしたような、まるで映画のセットかと思ってしまうような当時と同じ雰囲気の空間が楽しめることです。
  


お店の入り口は回転扉 もちろん手動

 白いシャツと黒いベストに身を包んだウェイター(女性も少数ですがいます)がお出迎え、席に案内してくれます。テーブルには、白い紙のテーブルクロスが敷かれ、席に着くと、メニューとグラスとパンが運ばれてきます。

 メニューは一応、日替わりとなっていて、日によって多少、違いますが、レギュラーの人気メニューはほぼ不動です。このお店の面白いところは、オーダーをその紙のテーブルクロスにボールペンで書いていくことで、自分が何を注文しているのか、確認することができます。(もっとも、字が汚いので、解読不能な場合も多い)合理的といえば、合理的なこのシステム、パリでは他のお店では見たことがありません。

  

オーダーは紙のテーブルクロスに手書き

 フランスのレストランでは、パンは水のような扱いなので、頼めばもっと持ってきてくれますが、まあほぼ充分過ぎる量なので、パンのおかわりをしたことはありません。

 天井の高い広いお店で一部、一階席を見渡せる2階席部分もありますが、大変な人気店のため、食事時には、お店の前に行列ができ、常時、行列用の赤い太いロープが用意されています。

   

行列前提で、並ぶためのロープが常設されている

 大混雑していて、かなりざわざわした感じながら、閉塞感がないのは、この広いホールのような高い天井のせいかもしれません。

 地元のパリジャン・パリジェンヌはもちろんのこと、ヨーロッパからの観光客にも人気のお店のようで、先日、行った時はドイツ人のご夫婦と相席でした。

 気取らずに、どこか大衆食堂のようでありながら、しかし、どこか格調高い雰囲気もある古き良きパリの空間がそこだけ現代に残っているようなそんな気分を料理と共に味わうことができます。

トイレの前の駅のような看板

 パリにいらした際には、星付きの高級レストランも良いですが、こんな感じのレトロな雰囲気を味わえる庶民派レストランも地元の民の雰囲気が味わえて楽しいです。


レストラン シャルティエ パリ


⭐️BOUILLON CHARTIER Grands Boulvards

   7 Rue du Faubourg Montmartre 75009 Paris 

   11:00~23:00(月〜金)、11:00~00:00(土・日)

 メトロ8・9号線 Grandes Boulvardsから徒歩1分



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2021年11月20日土曜日

海外在住邦人の日本での国民年金の支払いと受給について

   


 海外に長く住んでいると、別に仲違いしたわけではなくとも、自然と連絡しそびれたりしているうちに、友人と音信不通になることはよくあることで、そんな音信が途絶えていた学生時代の友人から、ひょっこりと連絡をもらって、ほぼ10年ぶりくらいに話をしました。

 その間、お互いの私生活にはそれぞれ色々なことがあって、意図的ではなかったにせよ、彼女と連絡をとらなくなったのには、その間、彼女にも私にも色々なことが起こっていたことがわかったのですが、それでも、その間の隙間を飛び越えて、昔の二人の感覚があという間に蘇ったのが嬉しくて、時差があることも忘れて話し込んでしまいました。

 私も海外に出て長くなりますが、もともと最初に海外に出ていたのは彼女の方で、私が海外に出ることになったことは、彼女の影響がないとは言えません。その後、彼女は日本に戻って生活していますが、相変わらず、彼女のユニークさは変わることはありませんでした。

 そんな彼女が紆余曲折を経て、現在は日本で年金事務所に勤務しているので、さらにビックリ! しかもその事務所が移転のために私の実家のすぐ近くに引っ越すとかで、またまた奇妙な縁というか繋がりに驚いたりもしたのでした。

 日本の年金については、気にかかってはいたものの、どうせ、年金の受給などは大した金額にはならないであろうし、まだまだ先のこと、色々と調べたところで、どんどん条件は変わるし、今から考えても仕方がないし・・と放りっぱなしにしていたので、これはよい機会だと、年金について彼女に少し教えてもらったのです。

 私は日本でも結構な期間、日本の企業で働いていたこともあったので、その会社を辞めた時点で厚生年金から国民年金に切り替えて、本格的に海外生活を始めるにあたって、当時、今までの分が掛け捨てになってしまうのはもったいないから、続けて払っておいた方がよいと母が強く言うので、「まあ、それもそうだな・・」と深く考えもせずに日本での住民票を抜いたにもかかわらず、国民年金は自動引き落としにして、払い続けてきました。

 当時は国民年金の支払いは義務化されてはいなかったと思いますが今では20歳以上の日本に住んでいる国民にとって、国民年金(あるいは厚生年金)の支払いは国民の義務だとかで、支払わない人には、催告状・督促状・呼び出し状などの取り立てが行われ、しまいには強制徴収として、国税局預かりになるのだとか・・。

 支払いができない場合は、免除申請(4分の1〜4分の4、全額免除)を申請することもできるそうです。

 私のような海外在住者に対しては、住民票を抜いている限り、国民年金の支払い義務はないのですが、受給するためには最低でも10年以上の加入期間が必要なので、中途半端に日本で国民(厚生)年金を支払っていた経緯のある場合はそれを無駄にしたくないならば、海外任意加入の手続きをして、少なくとも10年に達するまでは支払う必要があるようです。

 それでも、私が国民年金を自動引き落としにして海外に出た頃は、年間10万円前後(1年間分一括払いだと若干割引になる)だったので、なんとなくそんなつもりで放ったらかしていたら、気がついたら、それがいつの間にか20万円近くになっていてギョッとしましたが、これまで長々としはらってきたことを考えると今さら引くに引けない感じで、まあ父が年金で生活しているのだし(現在は亡くなっていますが)、父のためにその一部を払っていると思うことにしようと思って払い続けてきました。

 国民年金は現在1ヶ月16,610円、1年分一括払いだと少しお得に、2年一括払いだとさらにお得になるそうです。国民年金の支払いは60歳の誕生日の1ヶ月前に終了。しかし、受給できるのは65歳以降、ただし、厚生年金に加入していた期間がある人に関しては、その比例報酬部分は前倒しに63歳から受給が可能な場合もあります。(生まれた年によって少しずつズレるそうです)

 しかし、日本の会社からの海外駐在員なら別ですが、普通、一般的には海外で生活していて、たとえ働いていても収入があるのは海外で、日本での収入がないのが普通ですから、収入がない中、日本での年金を支払い続けるのはなかなか厳しいことでもあります。

 ただし、日本と社会保障協定を結んでいる国(ドイツ、イギリス、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルグ、フィリピン、スロバキア、中国など)との間には、年金の計算を相互どちらか選んで加算してもらうことができるそうなので、それはそれで別の手続きが必要になるそうです。

 国民年金に限って言えば、20歳から60歳までの満了期間を支払って1年間の支給額は78万円。月々6万5千円が受給できます。現在の国民年金の支払い金額で換算すると480ヶ月として7,972,800円支払うことになります。合計すると相当な金額です。

 私が今まで支払ってきた金額を計算したことはありませんが、これは、国民年金を継続しておいた方がよかったのか? 10年で受給資格を満たしていたならば、もっと早くに辞めて、その分は貯金しておいた方がよかったのかな?などとちらっと思うこともありますが、これまであまり真剣に考えてこなかったので、私の場合、時すでに遅しです。

 海外在住者の場合は移住先の国との関わり等もあるようなので、一時帰国した際は一度、確認してみるとよいかもしれません。厚生年金、国民年金ともに個人個人は「基礎年金番号」というもので管理されているそうです。現在のところ、マイナンバーでの確認には必要書類がさらに倍増するとかで、この「基礎年金番号」をまず確認することが必要なようです。

 ひょんなことから、急に年金のことが気になり始めた私ですが、いくら先のこととはいえ、知っていれば、それなりに対処することもできたのでは・・と今になって思います。

 フランス人が、しばしば年金問題でデモやストライキをおこしたりするのを「まったく仕方ない人たちだな・・」などと横目に見てきましたが、実際のところ、私はこれまで自分の年金問題については、ほぼ考えることもなく、ただ漠然と過ごしてきてしまいましたが、友人からの話で急に「いやいや・・私も放置しておいてはいけない!」と遅ればせながら、思い始めた次第です。

 次回、日本に帰国した際には、一度、年金事務所に行って、色々と詳しい手続きを聞いてこようと思っています。

 また日本はこの年金の問題もどう考えてももらう人と払う人のバランスが悪すぎで、半ば諦めている人も少なくないのかもしれませんが、少々、話が飛躍しますが、やはり、海外からでも選挙には投票に行かなければ・・などとも思うのです。そういえば、在外選挙人登録をしたのに、まだ、通知が来ていません。

 

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2021年11月19日金曜日

ボジョレー・ヌーボーは、あまり注目されなくなった・・

   



 私が日本に住んでいた頃は、もう20年以上も前のことになりますが、ボジョレー・ヌーボー解禁の日は、メディアでも大きく取り上げられ、なかなかのお祭り騒ぎでした。

 フランスに来たばかりの頃は、それでも、フランスでもボジョレーは一応、フランスでも解禁日には、職場で買ってきてみんなで飲み比べをしたりもしたり、スーパーマーケットなどでも特別なコーナーが大きく設けられていたりしたので、今よりはもう少し、盛り上がりを見せていたような気がします。

 それが、年々、スーパーマーケットなどでも扱われ方が小さく、雑になり、また、あまり人が群がるようなこともなくなったのには、少々、寂しい気がしています。

 昨日、「そういえば、今日はボジョレー解禁日だった!」と思い出して、近所のスーパーマーケットを覗いてみると、寂しい限りのボジョレーコーナー、しかも周囲に興味のありそうな人もおらずにひっそりと5〜6種類のボジョレーが積み上げられていました。

 昨年もすでにずいぶんとボジョレーも衰退したな・・という感がありましたが、今年はますますその感が強くなった印象です。そうでなくとも、最近ではフランスの若者のワイン離れが伝えられ、ビールやウォッカ、モヒートなどのカクテルや、逆にウィスキーなどの人気が高まり、スーパーマーケットにあった大きなワインカーブが縮小され、代わりにビール売り場が拡大して、ビールも多くの種類がおかれるようになりました。

 それでも、フランス料理には欠かせないワインは、やはりフランスでは大きな位置を占めていることに、かわりがないのですが、もともとあまり長い期間の保存が効かない(最大6ヶ月保管可能)若いボジョレーは季節限定であるがゆえにその時だけ、一瞬、注目されるだけのもの、たまにボジョレーを手にとっている人も年齢層が比較的高めで「今年のボジョレーを味見してみよう」といった感じのまさに年中行事を変更することのない人々といった印象です。

 昨年から続くパンデミックはさらにこのボジョレー解禁のお祭り行事から、一層、人を遠ざけているのかもしれません。

 今年は、春先にワイン畑に霜が降りたりした気候もワインに大きな影響を与えたと言われていますが、このボジョレー地方も少なからずその影響を受けており、メーカー側は今年のボジョレーは、「アルコール分が少なめで、より軽く、よりフルーティーで飲みやすい」と、「物は言いようだ・・」と思われるような宣伝の仕方をしています。

 1980年代に、この特別に早くに解禁日を迎えることを利用して、盛り上げる商業戦略にのったボジョレー・ヌーボーは、本来のブラックガメイ種の葡萄の本来の風味を際立たせる、より自然で伝統的なプロセスから、アルコールの少ない控えめな飲み物から、赤い果実の香りを引き出すことを目的として、イチゴやラズベリーやスミレの味を際立たせるために人工酵母の使用、発酵前の浸軟(ワインの着色と風味付け)、補糖(砂糖を加えてアルコールレベルを上げるプロセス)する製造方法が体系的になりつつあり、本来の風味とは異なったものとなってしまっている可能性があります。

 それでもフランスワインの中での一定の割合でのマーケットになっているボジョレー・ヌーボーは、フランスだけでなく、海外でも110カ国以上で4000万本以上のボトルが販売されており、その生産の40%は海外に輸出されています。

  

ボジョレーヌーボーの輸出先

 中でも日本はその4分の1を占める世界で最も大きなボジョレー・ヌーボーのマーケットになっています。

 時差の関係で、この11月の第3木曜日をフランスよりも早く迎える日本は、その解禁のタイミングを上手く盛り上げて、このボジョレー・ヌーボーをより広く販売することに成功したのです。

 今年のボジョレーの葡萄の収穫は9月の中旬に始まり、2週間程度で終了、もともとボジョレー・ヌーボーは、製造過程に4日間しかかからないという製造プロセスであるために、価格も安く、フランスでは4.5ユーロ(約580円)から7ユーロ(約900円)程度で売られています。

 値段は安くても、ワインならば、一年中を通して、それほど高価なものでなくても、そこそこのクォリティーのものが楽しめるフランスで、わざわざボジョレーでなくとも良い・・そこまで感動しない・・というのが私の正直な印象です。

 それでも、おススメのボジョレーが掲載されていましたので、ご紹介しておきます。

 一般的に売られている物よりは少しお値段は高めではありますが、ワイン通でボジョレーを楽しもうとなさる方には、元来のボジョレーの味と風味を楽しめるものかもしれません。


○Frédéric Berne - Beaujolais Nouveau Gamay Noir 2021(フレデリック・ベルン-ボージョレヌーボーガメイノワール2021)・Prix conseillé : 11€

○Château de Lavernette - Le Jeune 2021・Prix départ au caveau : 9,50€

○Domaine Jean-Gilles Chasselay - Beaujolais Nouveau «Cuvée Classique» 2021・Prix départ cave : 9€

○Kévin Descombes - Cuvée Kéké 2021・Prix : 12€

○Domaine des Terres Dorées - L’Ancien 2021 ・Prix : 9€ la bouteille de 75 cl et 42€ le BIB de 3L


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2021年11月18日木曜日

フランスは本格的に第5波に乗り始めた!

   



 現在、周囲のヨーロッパの感染拡大の急増が顕著な中、フランスの感染状況は増加傾向にあるとはいえ、比較的、安定している状況に見えていました。

 フランスでの1日の新規感染者数が1万人を突破したのが、11月3日(10,050人)、そして、その2週間後の11月17日には、あっという間にその2倍の2万人を突破(20,294人)してしまいました。

 いくら他のヨーロッパの国よりはワクチン接種率があがっているとはいえ、依然として4人に1人はワクチン接種をしていない状態。感染者数が増加すれば、感染のリスクが増加するのは当然のことです。

 ヘルスパスのシステムが導入されたことで、フランスのワクチン接種率は急激に上昇し、感染のリスクが高いレストランやカフェ、娯楽施設、文化施設、人の集まる場所はワクチン接種済みであるか、検査陰性証明書がある人のみがアクセスできる空間になることで、ある程度、守られた状況になってきたことで、これまではフランスの感染拡大はある程度、抑えられてきました。

 他のヨーロッパの国々は急増する感染状態に対応措置として、急遽、部分的なロックダウンやワクチン接種をしていない人に対してのみ、ロックダウンをしたり、フランスのヘルスパスに似通った措置を取り始めているのを見て、フランスは、もうとっくにそのような措置はしてきている・・フランスは大丈夫だろう・・というか、これ以上、どうしろというのだ?と正直、思ってきました。

 しかし、初期にワクチン接種をした人々のワクチンの効力は落ち始め、そもそも一度もワクチンをしていない人も国民の4分の1程度はいる中、政府は高齢者から3回目のワクチン接種を進める方針を打ち出しましたが、どうやら、あまりのんびり構えてもいられない状況になってきてしまったようです。

 現在、フランスでコロナウィルスのために入院している患者数は7,663人、一週間で22%も増加しています。

 そして、何よりもこの1日の新規感染者数も実際の数字とはかけ離れている可能性もあります。というのも、10月15日からコロナウィルスの検査が有料化になって以来、この検査数が少なくとも45%は減少しているという事実があります。

 これは、それまでは、ヘルスパスを72時間以内の陰性証明書で乗り切ってきた人々をワクチン接種に向かわせるため(もちろん財政的な問題もあったでしょうが・・)という政府の思惑があってのことだったと思いますが、現実には、仕方なくそれでワクチン接種をした人々もいるとはいえ、多くの人々が検査をしなくなり、結果、陽性の人がそれに気付かずに野に放たれてしまったとも言えます。

 有料になったコロナ検査は、場所によっても異なりますが、PCR検査の場合は約43.89ユーロ、抗原検査の場合、22.02ユーロから45.11ユーロです。これをこまめに検査し続けることはなかなか困難なことで、検査数が減少するのも無理はなく、政府の思惑とは反対の意味で、感染を再拡大させてしまう要因の一つになってしまったとも考えられます。

 コロナウィルス感染が拡大し始めた頃は、とにかく検査・隔離が最重要案件であったにも関わらず、ワクチン接種にばかり焦点が行き過ぎて、この肝心な検査と隔離がないがしろにされてきてしまったかもしれません。

 コロナウィルスが絶滅するか、ワクチン接種がさらに拡大しない限り、この検査と隔離は常に続けていかなければならない問題なのです。

 とにかくワクチン接種を!ソーシャルディスタンスを!マスクを!とひたすら叫んでいる今のフランス政府に欠けていることは、再び検査を拡大し、感染してしまった人を見つけ出し、隔離することです。

 またヘルスパスに慣れきってしまっている状況のフランスではそのヘルスパスのチェック自体も緩くなってきてしまっていることもあります。

 あと1ヶ月ほどするとフランス人にとって、バカンスの次の一大イベントであるノエルの季節がやってきます。クリスマスマーケットや家族での集まりなど、感染拡大とともにノエルがぶち壊しになってしまうのか?と案ずる声が上がり始めています。

 フランスでもワクチン未接種者のみのロックダウンという方法もないことはありませんが、政府のやり方が気に入らないとワクチン接種を拒否している人もいる中で、この人々に対してさらなる締め付けは、来年に、大統領選挙を控えている現在、政府にとっても躊躇われることでもあるのでしょう。

 私は、さらに感染が拡大していってしまう前に、検査を再び無料化し、検査を拡大し陽性者が隔離状態に留め置かれる状態に戻すことが、とりあえず、現在のフランスがこの第5波を少しでも小さくできる方法ではないかと思っているのです。


フランス第5波突入


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2021年11月17日水曜日

ご近所との常識の違いに戸惑う出来事

 

狭いコントロールルームに詰め込まれていた荷物


 私たちの住まいは、パリのあまり大きくないアパートで、1フロアに2世帯が住んでいます。ですから、同じ階のお隣の世帯と共有?のスペースはエレベーター前の小さなスペースと電気や水道のメーターなどのコントロール機器が入っている小さな小部屋(コントロールルーム)のような場所が共有といえば、共有のスペースになっています。

 先日、午後の時間にアパートの呼び鈴が鳴ったので、不審に思って(普通、外からの来客は、まず地上階にあるドアフォンを鳴らして、それに応えてから、まず地上階にあるドアの鍵を解除して、それから上がってくるので、いきなり玄関のベルを鳴らされることはほとんどありません)、ドアの覗き窓から外を見ると、アパートの管理人さんの女性でした。

 彼女はアパートの見回り中に我が家の階にある小さなコントロールルームの中にたくさんの荷物が山積みになっているのを見つけて、私をその部屋に連れていき、「これ、おたくのですか?」と聞きに来たのです。

 その部屋には、ドアはあるものの、鍵はありません。しかし、そんな電気系統の機器などが入っている場所は日頃は用がなく、私は工事の人が来た時などに、案内する程度で、ほとんど入ったことはありませんでした。

 通りかかった時に、時々、そのドアがきっちり閉まっていないことがわりと頻繁にあるので、「閉まっていないということは誰かが開けたに違いない・・誰だろう?」とちょっと気味が悪いな・・と思いつつも、わざわざドアを開けて中を確認することもなく、ドアをきっちり閉め直すだけで、なんとなく過ごしてきたのです。

 ところが、管理人さんに言われて、その部屋を覗きに行くと、そこには、山積みにされた荷物が・・それはもちろん、私のものではありません。正直、唖然としました。

 隣の家は留守で、確認がとれずに、「ここに物を置くのは禁止なのよね・・」と言いながら、彼女はアパートの大元の管理会社に連絡し、荷物は撤去することに・・。彼女が一人で撤去するには、大きすぎる子供用にしては、なかなか大きな赤い車まで・・。

 彼女は方々に連絡をとりながら隣人の携帯ナンバーを手に入れると、隣人に電話。幸い隣人は電話に応答、すぐにその荷物は隣人のものであることが判明しました。

 さらに知らない人の荷物よりはマシだとしても、自分勝手に共有の場をまるで自分の場所のように使う隣人の正体が垣間みれてしまったことに、言いようのない嫌悪感。

 管理人と話している隣人の電話の声は私にも聞こえるほどの大きな声で、「それは、私の友人が今日引き取りに来る荷物だから・・」と言っている彼女が言い訳をしている声が聞こえます。

 管理人さんは、「これが最後よ!ここに物を置くのは禁止なの!明日、また見にきて、またあったら容赦なく廃棄するから・・」ときつく言う彼女と「はいはい、わかってる!わかってる!」の会話は、いかにも注意し慣れている人と注意され慣れている人という感じ。

 これでは、できの悪い学生と先生の会話のようだ・・と思いながら、「管理人さんには、こんな仕事もあるのだ・・」とちょっと気の毒になりました。

 私が、「時々、ドアがちゃんと閉まっていないことがあったから、ちょっと気にはなっていたんだけど、中を開けてみることはしなかったから・・まさか、こんな荷物が入れられて、知らない人が出入りしていたなんて・・と言ったら、「これは、ここの階だけじゃなくて、上の階もそうなのよ・・」と・・。

 時々、その扉が開けられていた形跡があったことは、一度や二度ではないことから、彼女の言っていることは嘘であることは明白です。

 公私の区別がつかない、どうにも常識的な感覚が違うということは、やはり要注意であることに違いありません。

 先日もアパート内の二重に鍵がかかる自転車置き場で盗難事件が起こったばかり、なんだかいつの間にか、近辺も物騒になってきました。

 私はご近所とはなるたけ穏便に過ごしていたいので、よほどのことがない限り、つかず離れずで親しくなり過ぎないようにしていますが、今の隣人が隣に越してきてからは、顔を合わせれば挨拶はするものの、ほぼ話をしたことはありません。

 何より、一番、隣人を警戒しているのは猫のポニョで、それまで前の隣人が住んでいた時には、まるで自分の別宅のようにベランダをつたってポニョ一人で隣の家と我が家とを行き来していたのに、現在の隣人が引っ越してきて以来、同じ隣の家に全く行かないどころか、ポニョはベランダにさえ出なくなってしまっていたのでした。

 動物の感とでも言うのでしょうか? ポニョが警戒することで、たまに顔を合わせた時の立ち振る舞いや服装の感じ、時々、聞こえてくるベランダや廊下での大声での電話の声などなどもあり、私自身も警戒はしていました。

 これでさらに嫌な印象は強まってしまいました。

  

夜になって家の前に積み上げられていた荷物


 夜になって、荷物が撤去されたかどうか確認に行こうとドアを開けると、隣人の家の前にはその小部屋の中にあったものが積み上げられていました。小部屋の中がダメだと言われたからと言って、家の前なら良いというものでもありません。

 せめて、家の中に荷物を入れるくらいの配慮が、できないのだろうか? 規則を守らないということに何の負い目も躊躇いも感じていない隣人に、あまりの常識の違いにさらにうんざりさせられたのでした。

 しかし、どこへ引っ越そうとも、場所は選べても、隣人は選べないのです。


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2021年11月16日火曜日

フランス国旗の色が変えられた理由

   


 青、白、赤のトリコロールカラーはフランスのシンボルでもあり、当然、フランスの国旗もこのトリコロールカラーで彩られています。

 祝祭日はもちろんのこと、このトリコロールの国旗は、パリの街中でもよく見かけるもので、あまり多くの派手な色合いが使われていないパリのシックな街並みや歴史ある建築物には上手く調和し、またアクセントとして映える国旗でもあります。

 マクロン大統領をはじめとする政治家が国民に向けて演説をする際などには、必ずこの国旗が側に掲げられています。

 そのフランス国旗の色が実は1年前から変えられていたことが、今、フランスでは話題になっています。

 マクロン大統領はこの色の変更を公表しなかったことから、ほとんどの人が気付かずに1年以上も過ごしてきたのです。

 1年前まで使われていたフランス国旗の色は1976年に、当時の大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領によって、それまで使われていたブルーと赤よりもより明るいブルーと赤に変更されたもので、マクロン大統領は、昨年の7月14日(パリ祭・革命記念日)から、以前に使われていたダークブルーの青に戻しました。

  

現在、公式に使われているフランス国旗

 現在トリコロールに使われている青は、フランス海軍で使用されている青であり、1794年の条約で選択されたものです。

 この色の変化は非常に僅かなものですが、フランス革命のシンボルと再接続するものであると説明する者もいます。

 マクロン大統領の真意はわかりませんが、この僅かな色の変更は、マクロン大統領が舞台美術家のArnaud Jolens(アルノー・ジョレンス)の助言に基づいて決定したと言われています。

 現在では、エリゼ宮をはじめとする国会、内務省などの国の公式の建物に掲げられているものは、このダークブルーを使用した国旗に変えられています。公式発表も何もなかったことから、多くの人が気付かなかったこともあり、フランス中の国旗がこの色に変えられているわけではありません。

 この国旗の色の変更の一番の理由は、フランス国旗が現在、多くのシーンにおいて、ヨーロッパの旗と共にかかげられるため、そのヨーロッパの旗(同じくブルー(明るいブルー))と並んだ時によりひきたち、映える色にするためであったといわれています。

 パリ祭のパレードをはじめ、フランス国家が行うセレモニーは大変、美しいものであることが多いのですが、これらのいくつもの場面を彩るフランス国旗がいかに映えるかを考慮している、ことにヨーロッパの旗のブルーとのより美しい調和を考慮しているあたり、なかなかの演出ではないかと驚かされたのです。

 日本の国旗の日の丸の赤は変わっていませんか?


フランス国旗の色変更


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2021年11月15日月曜日

フランス・ベルギー他15ヶ国からのワクチン未接種者の入国に陰性証明書提示義務化

  


 現在のヨーロッパの感染拡大に接し、フランスはベルギーをはじめとした約15ヶ国からのワクチン未接種者のフランス入国の際にPCR検査または抗原検査で陰性の証明書の提示を求めることを発表しました。

 ベルギーやヨーロッパの多くの国で感染状況が急速に悪化するにつれて、フランスは自国を守るためにこの新しい措置を講じることを決定しました。

 11月13日以降、ワクチン未接種者がフランスに入国するために24時間以内のPCR検査または抗原検査で陰性でなければなりません。要はヘルスパスがフランス入国の際にも必要になるようなものですが、ヘルスパスの場合は72時間以内の検査陰性の証明書であったものが、24時間に短縮されているので、かなりギリギリのタイミングでの検査が必要なため、少々厄介でもあります。

 これはベルギーの他、ドイツ、オーストリア、ブルガリア、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ラトビア、リトアニア、オランダ、チェコ共和国、ルーマニア、クロアチア、スロベニア、スロバキアからの入国の際に課せられることになります。

 これは、ほぼ、先日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が発表した非常に危険であると指定した欧州連合の中の10ヶ国に数カ国が追加されているものです。

 昨年末にイギリスで変異種が発見された際に、この変異種の流入を恐れて、この発表の翌日には、イギリスからの入国を完全にストップした時、多くの流通が止まり、国境付近にトラックが立ち往生する大混乱が起こったことがありました。

 それはちょうど、ノエルのタイミングでもあり、多くのトラックの運転手さんたちが家族と過ごすはずのノエルをトラックの中で過ごすという悲惨な状態にも陥りました。

 今回は、その際の混乱も踏まえて、例外措置を設け、トラックの運転手などの輸送・運搬に関わる仕事に携わる人々、フロンティアワーカー、居住地の周囲30㎞半径の境界内での24時間未満の陸路による旅行、12歳未満の子供に関しては除外されることになっています。

 そもそも常日頃は国境がありながら、国境ではないような、パスポートのチェックも何もなしに気が付いたら、違う国に入国していた・・車などで移動中は携帯のメッセージに、「ようこそベルギーへ!」とか、「ようこそスペインへ!」などというメッセージが入ったりして、ああ、ここはもうフランスではないんだと気付くなどということが多いヨーロッパでは、このチェック、管理だけでも大変な作業であると思われます。

 空路での入国ならば、空港でのチェックは比較的容易であると思いますが、電車での移動は、駅?あるいは列車内でのチェックでしょうか? 最も困難なのは、車での移動、入国に対するチェックがどのように行われるのか?大変な人員が必要となります。

 幸いにも現在は、トゥーサン(ハロウィン)のバカンスも終わって、比較的、旅行者も少ない時期、この措置が長く続くようであれば、次のノエルのバカンスまでになんとか、この入国制限への対策の配置や準備にかからなければなりません。

 しかし、そもそも入国する側からしてみれば、昨年末と違って、ワクチン接種さえしていれば、問題はない話、日本入国の際のような大変な書類を揃えなければならないわけでもありません。

 この陰性証明書提示義務がどの程度の効果をあげることができるのかわかりませんが、野放しにするのもどうかと思うので、一般の旅行者に対しては必要なことかもしれません。

 もっとも、旅行者の場合、フランスに入国したところで、ワクチン未接種の場合は、検査の陰性証明書がなければ、レストランやカフェに行くことも、美術館や映画館、娯楽施設に行くこともできないので、やはりどちらにしてもPCR検査や抗原検査は必要なのです。


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2021年11月14日日曜日

「電気料金滞納しても、電気は止められなくなる」措置は電気料金値上げのための布石か?

   


 フランスでは、エネルギー供給業者(電気やガス)が11月1日から3月31日までの間に、主たる住居に関連する請求書の未払いのためにサービスを中断することを法律で禁じています。

 11月1日から5ヶ月間は、料金がたとえ未払いであっても、電気やガスを止められることはありません。昨年は、ロックダウンのためにこの期間は3ヶ月間延長され、約30万世帯がこの影響を受けたと言われています。

 そして、先日、EDF(フランス電力)は、4月以降も、料金を支払わないユーザーに対して、の電力供給をストップしないことを発表しました。その代わり?に料金未払いの人への電力供給は必要最低限の1,000ワット相当に制限されます。

 これにより、すべての人々が最低限の基本的な生活を維持することが可能になります。

 これは、エネルギー価格の高騰を背景に講じられた措置とされています。

 我が家は、もう10年以上前のことになりますが、電気料金を支払い忘れていて、急に電気を止められたことがありました。夏の間のことだったので、家に帰ってすぐに電気をつけることもなく、すぐには気がつかなかったのですが、さて夕食の支度・・と始めた時に電気がつかないことに気がついたのです。

 我が家には、ガスはなく、すべて電気のため、電気を止められると何もできなくなります。

 その時は、停電?と思って、「仕方ない・・停電が復旧するまで、今日は、外に食事に行こう」と呑気に外食に出て、帰ってきても、まだ電気がつかないことで、はたと、電気料金を払い忘れていたことに気づいたのでした。

 そもそも、今どき電気料金を自動引き落としにしていないのには、嫌な思い出があってのことで、以前は自動引き落としにしていた電気料金で、二桁間違えて引き落とされ、それを返金してもらうのに、一言の謝罪もないどころか、「返金の手続きをやってあげます・・でも、時間はかかるわよ・・」といった感じで高飛車に出られて、ダブルで嫌な思いをしたせいで、EDF(フランス電力)の自動引き落としをやめたのでした。

 未だにEDFだけは、請求書を確認して、自分の手でネットで振込をしています。

 EDFの請求書がくるのは2ヶ月に一度なので、もともと常日頃から忘れた頃にやってくるので、忘れた頃にすぐに払っておかないとそのまま忘れたままになってしまうのです。

 ですから、我が家のようにうっかりしている場合は、余計に気が付くのが遅くなるかもしれません。

 しかし、今回の措置は我が家のように、うっかり支払いを忘れているというような場合のための措置ではなく、エネルギー価格の高騰に関連して、最も不安定な家庭の電力への最小限のアクセスする権利を尊重した国家エネルギー供給者としての措置(EDFは84%が国所有の会社)です。

 「電気がなければ、光も暖房もインターネットも電話もありません。フランスのような国では、世帯がこのような不安定さと頻員の状況に陥ることは容認できない」としています。

 フランス政府は最近、ヨーロッパ全体に影響を与えるエネルギー価格の上昇による措置で不安定な世帯のための追加の100ユーロ分配。ガス価格の上昇の凍結、および電力の関税の制限を発表しています。

 規制された電気料金は来年初めに約4%引き上げられる予定ですが、今後、さらなる介入がなければ約12%も跳ね上がる可能性があります。

 ですから、この措置は決して安心できるものではなく、うがった見方をすれば、電気料金値上げのための外堀を固めている措置とも考えることができます。

 電気料金は彼らの言うように基本的な生活に必要な費用であり、それを急に12%以上も跳ね上げることは、財源が不安定な家庭にとっては大変な打撃です。とても一時的に100ユーロ支給されたところで、埋められるものでもなく、ましてや支払いが滞っても電気を止められないとはいえ、料金の滞納は蓄積されていくのみです。

 これまでの冬の期間のみの電気料金滞納可能(冬は家にいる時間も長くなり、暖房費等もかかるために料金が跳ね上がる傾向にあります)ではなく、年間通して、未払いでも最低の電力は供給するという建前のもと値上がりが容認されかねないとも考えられます。

 現にEDF側は、「他の手段を使用して債務を返済するという点で、ほぼ同じくらい良い結果が得られる」としています。他の手段には料金の値上げも換算されているのではないか?と疑いをもってしまうのです。

 とはいえ、居住者の権利というものが、強く認められているフランスでのさらに強力な居住者の権利の一部になるとも考えられます。そもそも、冬の間に滞納が認められているのは、電気料金だけではなく、家賃滞納の場合も、この期間の立ち退きは要求できません。(住居の不法占拠者は除く)

 これがまかり通れば、電気料金は払わずに生活し続ける強者が現れ始めます。

 こうなってくると、どっちもどっちという感じになってきますが、結局は、税金と同じで、払い続けるものと貰い続けるものに分かれる、そんなフランス社会構造の縮図のような気さえしてしまうのです。


電気料金滞納でも電気は止められない EDF


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2021年11月13日土曜日

ヨーロッパの感染再拡大と再ロックダウンの波

 

 

 ヨーロッパでコロナウィルス感染が再拡大し始めている現在の状況から、欧州連合は、ストックホルムを拠点とする欧州疾病予防管理センター(ECDC)を通じて、最新のリスク評価により、27の欧州加盟国の中で、ベルギー、ポーランド、オランダ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、スロベニアなどの10カ国が非常に懸念される状況にあることを発表しました。

 しかし、ここに挙げられていない国々も決して安心できる状況ではなく、ドイツやオーストリア・オランダなども、緊急の対応を取り始めています。

 中でも、オーストリアは、感染率が最も高いオーバーエスターライヒ州とザルツブルクではすでに、月曜日からのワクチン接種を受けていない人々のロックダウン(封じ込め)を決定していますが、14日の議会で、これを全国的に拡大する決議を取ることを発表しています。

 またこれと同時に、医療従事者の強制予防接種も行われる予定です。

 オーストリアのワクチン接種率は64%と、欧州全体のワクチン接種率(67%)を下回っており、オーストリアのアレクサンダー・シャレンバーグ首相は、「これは恥ずべきほど低い数字である」と語っています。

 また、オランダは、昨年12月の新規感染者数(12,997件)を上回る数字(16,364件)を記録し、この感染急増に直面したオランダ政府は、レストラン・バー、スーパーマーケット等(生活必需品を扱う店舗)の営業は午後8時まで、否必需品を扱う店舗の営業は午後6時までとし、学校は閉鎖せず、外出は許可されるものの、可能な限り自宅に4人以上を収容せず、在宅勤務をするように求める「部分的ロックダウン」の措置を少なくとも3週間取ることを発表しました。

 オランダ政府は、3週間後には、食事及びレジャー施設へのアクセスを「ワクチン接種済みの人々には制限しない状態」にする準備をしています。おそらく、フランスのヘルスパスのような制度の準備にかかるものと思われます。

 オランダのワクチン接種率は82%と比較的高く、それでも感染を避けきれずにこのような部分的ロックダウンの措置を取らざるを得ないことに反発も生じ始めています。

 また、これらのヨーロッパの感染拡大の再開に直面し、ノルウェーは自治体レベルでヘルスパスの使用を許可することにより、新たな制限を再導入することを発表しています。また、9月末に、すべての制限を解除したスカンジナビアの国はまた、18歳以上にワクチンの3回目の投与を提供する予定であることが発表されています。

 こうして、ヨーロッパの感染再拡大への各国の対応を見ていると、7月の時点でヘルスパスの規制を導入したフランスの措置を周囲のヨーロッパ諸国が追随しはじめたように思います。

 特に、オランダの例を見ると、現在蔓延しているウィルスは、決してワクチン接種だけで回避できるものではなく、感染リスクのある場所を中心に人の流れを制限する重要性が表れています。

 ちなみに昨年の今頃のフランスは1日の新規感染者数が4万人・5万人・6万人と急増していた時期です。現在、周囲の国が取り出した感染対策措置はすでにとっているフランスで、昨年の記録を上回るような状況はちょっと考え難いことではあります。(昨年が酷すぎたということもありますが・・)

 しかし、フランスも感染者は増加傾向、この波を低い波で抑えることはできるのでしょうか?

 それにしても、ヘルスパスも使わず、ワクチン接種率もヨーロッパをあっという間に追い越し、ロックダウンもせずに感染を抑えている日本を考えると、ヨーロッパはこれで2度目の感染爆発の気配・・やはり、国民性や生活習慣など、つくづくヨーロッパは感染拡大に最適な何かを備え持っている気がしてなりません。

 フランスでは相も変わらず、ヘルスパス反対、義務的ワクチン強制反対、黄色いベスト運動などの土曜日のデモが続いています。


ヨーロッパ感染拡大


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2021年11月12日金曜日

ドイツの急激な感染拡大から見えるワクチン接種とヘルスパスの効果

  


 パンデミックが始まって以来、ヨーロッパの中では、常に優等生であったドイツが1日の新規感染者数5万人突破(50,196件)するという、これまでにない感染拡大の局面を迎えています。

 フランスと比べれば、これまで常に感染を抑え続け、被害も桁違いに少なく、周囲のヨーロッパ諸国が相次いで医療崩壊を起こしていた時も、常にドイツは医療崩壊を起こすこともなく、周囲の国を助ける(フランスもずいぶんと助けられてきました)役割を果たしてきたドイツのこの急激な感染悪化には、フランスでも驚きと警戒を強めています。

  

2021年以来のドイツの感染状況


 私もこれまでは、さすがにドイツ人、しばしば日本人と気質が似ていると言われることもあるように規律正しく、きっちりしているんだ・・と思っていたのです。

 しかし、やはりこのウィルス、生半可なことでは太刀打ちできないようです。

 ドイツ政府のスポークスマンは、「パンデミックは再び劇的に広がっている」とし、特に影響を受けたいくつかの地域でワクチン未接種の人々を対象とした新たな対策を講じることを発表しています。

 10月以来のこの変化は顕著であり、特にザクセン州、バイエルン州、ごく最近ではベルリンなどの地域では著しく影響を受けています。

 今週に入って、ベルリンは、ワクチン未接種の人々が、特にテラス席のないレストラン、バー、スポーツホール、美容院へアクセスすることが禁じられました。ワクチン接種済みであるか、感染から回復したことを証明できない場合、これらの公共の場所へのアクセスは許可されなくなります。

 これを聞いて、「えっ?ドイツでは、今まではOKだったの?ドイツではフランスでのヘルスパスのような規制をしていなかったの?」と驚いた次第です。

 そして、現在のドイツの感染急拡大は、意外にもドイツのワクチン接種率が比較的低いことにも起因していると言われています。

 現在のフランスのワクチン接種率(2回接種済み)は約75%、これに対してドイツは67%とかなり低いのです。もともとドイツの人口はフランスの1.3倍程度ですから、ワクチン接種を行なっていない33%の人口は、フランスよりもかなり多い計算になります。

 ドイツ病院協会によると、10日の時点でコロナウィルスによる入院患者は1週間で40%増加し、集中治療室の患者は15%増加し、1日の死亡者が200人を突破していることを発表し、感染拡大は、ワクチン接種がより少ない地域で高い発生率を示していることも併せて報告しています。

 

ドイツの地域ごとの感染状況


 ワクチン接種率が最も低いザクセン州(ワクチン接種率57%)は、国内で最も高い感染発生率を記録し、10万人中 483.7人という高い陽性率を記録しています。

 ヨーロッパの中でも高齢者が比較的多いドイツでは、ワクチン接種をすでに行なっている人々でも、時間が経過すれば、その効果が薄れ始めることで、この感染拡大の影響が多くの高齢者にも及ぶことを懸念しています。

 昨年末から年明けにかけて、ドイツはフランスと比べるとかなり厳しく手綱を緩めない印象がありましたが、ワクチン接種が開始され、ある程度、広まり始めてからは、途中でヘルスパスを起用したフランスとは、いつの間にか、逆転状況にあったようです。

 こう考えてみると、フランスはヘルスパスの起用により、ワクチン接種率も大幅に上昇し、レストランやカフェ、娯楽施設、文化施設、スポーツジムなどのあらゆる場所はワクチン接種をしていない人はシャットダウンされ、守られている状況にあったことがこのドイツの状況を見てわかります。

 きっと、ヘルスパスによる規制がなければ、フランスはドイツ以上の被害を出していたことは間違いありません。

 こうしてドイツが現在、劇的な感染拡大の局面を迎えていることを目の当たりにすると、フランスがとってきたヘルスパスの起用は、発表当初はかなり衝撃的で強引な印象ではありましたが、結果的には、非常に有効な政策であったと思わずにはいられません。

 とはいえ、フランスの新規感染者数もここのところ、余裕で1万人超えの状況、決して気を緩めることはできません。このため、つい先日、マクロン大統領が演説を行い、3回目のワクチン接種を強いる方針を示し、ヘルスパスの効力(3回目のワクチン接種の拡大とヘルスパスによる公共の場所での安全性を維持する)を持続させる努力をしています。

 しかし、フランスとて、未だワクチン接種をしていない人々は25%もいるのです。

 急激な感染拡大が見られるドイツとの出入国制限に対する規制が何もないのは、不思議でなりません。

 そこへいくと、日本への入国はいつまでも厳しく、一時帰国がなかなかできない身からすると歯がゆいのですが、それが日本を守っていることに繋がっていると思わせられもするのです。


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2021年11月11日木曜日

全ての小学校でのマスク着用義務化が復活

 


 先日のマクロン大統領の演説のメイントピックは、65歳以上を始めとする3回目のワクチン接種の必要性についての話でしたが、その中には、子供たちの学校でのマスク着用が再び義務化されるという内容も含まれていました。

 夏のバカンス突入とほぼ同時に発令されたヘルスパスによる規制のために、フランスでは、夏のバカンスを心置きなく過ごそうとする人々が一気にワクチン接種に走り、ワクチンの接種率も上がり、レストランやカフェ、映画館や美術館、遊園地などの娯楽施設・文化施設、スポーツジムなどがヘルスパスによって入場制限されたことにより、感染状況も小康状態を保ち続けていたため、9月に新年度を迎えてまもなく、10月4日からは、感染発生率が住民10万人あたり50例未満である47地域の小学校でのマスク着用義務が撤廃されていました。

 マスク着用が子供たちの学習、理解、集中力に影響を及ぼしている可能性、マスクによる苦痛を考慮し、感染の状況が許す限り、マスク着用義務を撤廃する方針をとったようです。

 しかし、残念ながら、10月の半ば過ぎから、フランスの感染状況は再び上昇モードに転じ、また、近隣のヨーロッパ諸国での深刻な感染拡大の状況から、大人の3回目のワクチン接種の強化を始め、フランス全土にわたる全ての小学校でのマスク着用の義務化で、再び、警戒体制に入るということに他なりません。

 もともと、小学生といえば、12歳以下の子供で、まだワクチン接種が不可能な年代の子供たち(フランスでは12歳以下のワクチン接種に門戸を開いてはいません)の学校内(学級内)でのマスク義務化の撤廃には、疑問の声も上がっていました。

 大人ですら、1日中、マスクをして生活をすることは苦痛を感じるところですが、この際、子供がワクチン接種を受けずに感染のリスクを減らすのは、基本的なソーシャルディスタンスやこまめな手洗いなどの衛生管理とマスク着用に頼るしかないのです。

 12歳以下の子供たちはワクチン接種をしていないことから、ヘルスパスにより守られることもなく、非常に無防備な状態であると言えるのです。

 マクロン大統領の演説の翌日、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、TF1のインタビューで、「1週間で感染者数が40%増加しているフランスの現在の状況は、明らかに第5波の始まりのようだ」と述べています。

 各々、ワクチン接種時期がずれていることによって、ワクチンによって保護され、ヘルスパスによって守られている人口が多いことでまだ救われていますが、再び感染拡大の顕著な数字があらわれ始めた今、大人が3回目のワクチン接種をしなければならないのと同様にワクチン接種のできない子供はマスクをしなければならないのは、致し方ないことなのかもしれません。

 3回目のワクチン接種とそれに伴うヘルスパス有効期限の設定と小学生のマスク着用義務、どうやら第5波の波がきているフランスのこの波をどうにか小さな波として越えられるための政策の一貫なのです。


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2021年11月10日水曜日

パンデミック以来、9回目のマクロン大統領の演説 65歳以上の3回目のワクチン接種

   



 今週、「マクロン大統領が演説をする」というアナウンスがあったのは、日曜日のこと。マクロン大統領がじきじきに、演説を行うというだけで、内容は、ほぼ、3回目のワクチン接種についての話であることは想像がついていました。

 それ以来、フランスのツイッターのトレンドには、「マクロン演説」、「ロックダウン」などのワードがトレンド入りする騒ぎになっており、それだけで(まだ内容の詳細が定かではないうちから)、ワクチン接種の予約が急増し、1日の予約が97,000件を突破するという絶大な影響力を示していました。

 特にWHOが第5波の震源地が再びヨーロッパであり、感染拡大の深刻な影響が考えられると発表したこともあり、(主には東欧とドイツ・イギリスなど)フランスでも徐々にではありますが、感染状態が悪化に転じていることからも、このままの状態を放置するわけにはいかないことは、皆、わかっているのです。

 特にリスクが最も高いと言われる高齢者(65歳以上)の人は、早くに2回のワクチン接種が終了していることもあり、その効果が薄れ始める時期も早くに迎えることから、その対応は急がなければなりません。

 マクロン大統領は、「2020年12月の初回予防接種以来、10ヶ月で1億回以上の接種が行われており、5,100万人が2回のワクチン接種が終了しており、ヘルスパスのおかげでコロナウィルスの流行をなんとかコントロールすることができてきました」と、演説を始めました。

 「しかし、私たちはパンデミックに終止符を打つことができず、何万人もの人がCOVID LONG(長期コロナ感染症)の影響を受けており、味覚の喪失や持続する倦怠感、精神的な痛手などの症状に苦しみ続けています。」

 マクロン大統領は、まだ1度もワクチン接種をうけていない600万人に連帯の精神を求め、「自分自身を自分の周囲の人を守るためにワクチン接種を受けてください!」と訴え、現在、ワクチン接種は12歳未満の子供を除いて誰にでも門戸は開かれており、ワクチン接種を受けた人は、重症化して病院に入院する可能性が11倍少ないと説明しています。

 そして、「ワクチン接種は普通に生活できるためのものであり、フランスのような国で自由であることは責任があることを意味します」と語りました。

 「新たな流行に直面している今の解決策は、3回目のワクチン接種であると判断し、65歳以上で最もリスクの高い人々を保護するために、これらの人々に対して、2回目のワクチン接種から6ヶ月以上経過している場合は、今すぐに予約を入れてください。」と言い、2回目のワクチン接種から6ヶ月以上経過している場合には、3回目のワクチン接種をできるだけ早くに済ませ、12月15日からは、ヘルスパスの有効期限を延長する必要があることを発表しました。

 つまり、とりあえずは、65歳以上の人々のヘルスパスは2回目の接種から6ヶ月経過した場合は12月15日から、ヘルスパスが無効になるということです。

 そして、12月初旬からは、50歳から64歳の3回目のワクチン接種キャンペーンが開始されます。つまり、現段階では、3回目のワクチン接種をしないと12月15日からはとりあえず65歳以上のヘルスパスは失効するということですが、これは、最初の2回のワクチン接種を高齢者を優先に始めて行ったのと同じ順番で、徐々に年齢を下げて、最終的には、全ての年齢枠において、ヘルスパスは3回のワクチン接種をしていなければ失効することになるということだと思います。

 そもそもヘルスパスは、私たちが公共の場所(カフェやレストラン、娯楽施設や文化施設など)において、少しでも感染のリスクを減らすためのもの、ワクチンの効果が薄れている人が同じ場所に集うのでは、ヘルスパスの意味がなくなります。

 マクロン大統領は、ヘルスパス適用の管理は今後も強化されるとしています。また、このおかげで、私たちは、日常生活を封じることなく生き続けることができると説明しています。

 今、私たちが所有しているヘルスパスには、名前とワクチン接種をした日付、ワクチンの種類と生年月日のみが記載されています。つまり、このワクチン接種の日付と年齢でヘルスパスの失効を整理していくということなのだと思います。

 マクロン大統領はこれまでのフランスの歴史を振り返っても連帯によって、多くの危機を乗り越えてきたと語り、「我々を、自分自身を、そしてフランスを信じてほしい」と国民にむけて熱く語りかけました。

 7月12日のヘルスパス施行の発表の時もなかなかの衝撃で、これにより、多くの人がワクチン接種を急ぎ始めましたが、今回の「3回目のワクチン接種をしないとヘルスパスが失効する」という発表もまた、大きな影響を及ぼしたようで、マクロン大統領のこの演説から1時間以内に10万件以上のワクチン接種の予約が入ったということで、フランス人も意外と従順?なのかも・・と思ったりもしましたが、結局のところ、今回の場合は、2回のワクチン接種を浸透させるためのヘルスパスによる効果にある程度、国民は納得しているということもあり、また、何よりも自由な生活を勝ち取るためのワクチン接種というように国民がとらえていると考えることもできます。

 ヨーロッパでの感染拡大が深刻化している中、フランスが現段階ではそこまで深刻な状況に陥ってはいないことは、どう考えてもヘルスパスのおかげであり、フランスのヘルスパスのような確固とした規制がなくとも、ワクチン接種があっという間に進み、感染も落ち着いてきた日本とは違うのだとつくづく思うのです。

 ですから、このワクチン接種の効果が減少していく6ヶ月後というタイミングでフランスがあらためて、3回目のワクチン接種を進めるためには、マクロン大統領の新たな政策は、必要なことであったと思っています。

 今回のマクロン大統領の演説は27分間(ワクチン接種の話は正味半分)、この27分間で1時間の間に10万人を動かすのですから、彼の演説効果は凄まじいものです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス失効

 

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