2021年8月20日金曜日

8月30日からヘルスパスがないと働けなくなる

   


 フランスでは、美術館、映画館、劇場を始めとした文化施設に始まり、スポーツ施設、レジャー施設、レストラン、カフェ、ナイトクラブからコマーシャルセンターまで、ほぼ、ありとあらゆるアクセスにヘルスパス(ワクチン2回接種証明書・72時間以内のPCR検査陰性証明書・6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)の提示が必要になり、すでに、今やヘルスパスを持たない限り、かなり行動範囲を制限される状態になっています。

 とはいえ、ここまでの状態ならば、これらの施設に入場する際には、ワクチン接種を受けていなくても、PCR検査を受けさえすれば、とりあえず、これらの施設を利用するのも可能なわけで、手間はかかるものの、全く身動きが取れなくなるわけではありませんでした。

 しかし、8月30日からは、これらの施設で働く全ての従業員・ボランティア・臨時労働者・下請け業者に対して、ヘルスパスが求められることになりました。こちらの方は、毎日のことなので、どちらかといえば、よりワクチン接種の義務化に近いニュアンスがあります。

 具体的には、上記の施設に加えて、スポーツ・音楽・見本市などのあらゆるイベントに関わる人々、図書館(大学およびフランス国立図書館などの専門図書館を除く)、長距離交通機関、お祭りなどなど、これらに関わる全ての従業員が対象となります。

 ただし、これらの対象施設においても、一般の人がアクセスできない場所や、営業時間外に働くスタッフはヘルスパスの義務の対象ではありません。

 これまではお客さんのみに強制されていたヘルスパスの提示義務がそれらの場所で働く従業員に対して義務化されることになるわけです。お客さん側からしたら、嫌なら行かなければ良いだけの話ですが、そこで働く従業員にとっては、嫌だから行かないというわけにもいきません。

 また、PCR検査で凌いでいこうとすれば、72時間以内の結果が継続的に必要になるわけですから、3日に1回、PCR検査を受け続けることを強いられることになります。

 しかし、同じ施設内で、お客さんには必要で、従業員は不要というのもおかしな話で、ヘルスパスがスタートした時点で、本来ならば同時に必要であったものが、一応、2回のワクチン接種を受けること前提で、猶予期間が設けられていたに過ぎません。

 つまり8月30日には、その猶予期間が切れるということになります。

 ヘルスパスを提示する限り、雇用契約はこれまでどおり継続されますが、ヘルスパスの提示ができない場合は、一定期間は、雇用主との合意に基づき、従業員は労働協約で定められた有給休暇を使用することができます。

 しかし、雇用主との合意が成立しない場合は、雇用主は従業員に対して、雇用契約が直ちに停止されることを通知し、給与の支払いは停止されます。

 ヘルスパスの提示がない場合は、雇用契約は一時停止されますが、ヘルスパスを提示した時点で雇用契約は再開されます。

 雇用契約の一時停止が3日以上続く場合、雇用主は従業員に面接を求め、状況を正規化する方法について話し合います。雇用主は、特に、ヘルスパスを提示する義務の対象とならない別のポジションへの会社内の一時的な再分類の可能性、および活動がこの作業モードに移行可能な場合の在宅勤務の可能性について話し合うことができます。

 仕事場として仕事をするために求められるヘルスパスは、ほとんどワクチン接種の義務化を意味しています。

 ヘルスパスは、社会的対話の枠組みの中で展開されることを前提とし、ヘルスパス提示義務が会社の一般的な組織に影響を与える場合は、社会経済委員会(CSE)に通知し、相談する必要があります。相談はパス設定後、遅くとも1ヶ月以内に行えるとされています。

 徐々にヘルスパスによるワクチン接種への追い込みが厳しくなっていきます。生活がかかっている仕事場においてのヘルスパスの義務化は、否応なしにワクチン接種を突きつけられているのと同じことになります。

 しかし、アンチヘルスパス・アンチワクチンのデモに参加している人の中には、頑なにワクチン接種を拒否し続ける人も少なくありません。「ワクチン接種しなければ、仕事を続けられないならば、仕事はやめる!」と喚いている人も少なくありません。

 職を辞してまで、ヘルスパス、ワクチン接種に抵抗する人々たちは、今後はさらに追い詰められた状況になっていくわけで、デモが激化していくのも必須だと思われますが、それでも政府も後に引くわけにもいきません。

 バカンスの終盤にかかり、人々がバカンスに出かけている地域を中心に、すでに感染が急激に悪化し始めており、医療崩壊寸前の状態に追い込まれ始めています。感染悪化が加速しているのは、見事に海沿いの人気のバカンススポットに集中しています。

 しかも患者の大半はワクチン未接種の30歳〜45歳が中心となってきており、行動範囲も広ければ、バリバリ仕事をする年代でもあります。

 フランスの第4波の波は、上昇を続け、一向にとどまる気配はありません。


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