2021年8月8日日曜日

4週連続のヘルスパス反対のデモ 第4波の津波 私たちは誰の治療も諦めない

   


 デモが4週連続して続いていることは、フランスでは、不思議なことではありません。

 しかし、今回は、バカンスシーズンで、本来ならば、デモは9月以降に繰り越しになるケースが多い中、やはり「ヘルスパス」「医療従事者へのワクチン接種義務化」への反発は、相当なものです。

 今回は、「ヘルスパス」が正式に決定し、実際にレストラン・カフェ・バー、交通機関等に適用されるようになる直前ということもあり、デモは先週よりもさらに拡大し、フランス全土で23万7千人の人出を記録しました。

 デモは、毎週毎週、規模が拡大し、1回目は11万4千人、2回目16万1千人、3回目20万4千人、そして今回は23万人と参加者は増加しています。

 しかし、数字が拡大しているのは、デモの参加者だけでなく、ワクチン接種の数字も拡大、同時に、感染者数、集中治療室の患者数も増加しています。

 デモに参加する人とは、反対に、マクロン大統領の「ヘルスパス」の発表以来、一時、停滞気味だったフランスのワクチン接種は、また急激に増加し始め、現在のところ、フランス人の65.69%(2回接種済は54.67%)まで上昇しています。

 にもかかわらず、デルタ変異種による感染、第4波は、地域的に「TSUNAMI」(フランスでは頻繁に「TSUNAMI」という言葉がフランス語として一気に波が押し寄せるニュアンスで使われています)を迎えており、特にマルティニーク、グアドループ、レユニオンなどの海外圏を中心にフランス本土のエクサン・プロヴァンス、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏にまで及び始めています。

 フランス全体でも、7月初旬には、2,500人前後であった新規感染者数は、約1ヶ月後の現在は、10倍の25,000人前後、これは、バカンスに出るために検査数が増加していることもあるとは思いますが、実際に感染者が増加していることに違いはありません。

 それでも、ワクチン接種が徐々に増加しているために、感染者が10倍にも膨れ上がっているにもかかわらず、重症患者数は、そこまでの増加には至っていませんが、しかし、この1週間ほどで、集中治療室の患者数は、1.5倍ほどに確実に増加しています。

 津波をもろに迎えている地域では、病床が足りないために、手当が間に合わない若い患者さんが亡くなってしまったりするケースも出てしまっているようですが、そのような事例が起こらないように、地域間の患者の移送も始まっています。

 フランスは、こうしてデモが続いて、国民も黙ってはいませんが、国のトップも「ヘルスパス」「ワクチン接種の必要性」への発信を続けています。

 先日は、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在、「TSUNAMI」が襲いかかりつつあるエクサンプロヴァンスの病院を訪問し、オーヴェルヌ・ローヌ・アルプ地域圏が、この「TSUNAMI」の波に乗りかけていることを警告しています。

 「この地域では、この8日間でコロナウィルスのために入院した患者の数は4倍になっています。集中治療室には、以前よりも若い人が増え、その大多数の人はワクチン未接種の人です。この数字は、ワクチン接種の必要性を物語っており、ワクチンを受けたがらない人への警告でもあります。」と述べ、「ヘルスパス」は国民を守るためのものであり、国民を締め付けることが目的のものではないと語っています。

 同時に彼は、「私たちは、誰の治療も諦めない!」と強く宣言しています。

 これを聞いて、すぐに私は、菅首相の「重症患者以外の自宅療養のお願い」を思い浮かべました。

 重症化すれば、後遺症やロングコビットと言われる長期コロナ感染症の危険も高まるわけで、早期の治療は必然です。長期コロナ感染症が増加すれば、おのずとパンデミックも長期化することになります。

 現在、バカンス中のマクロン大統領も、バカンス中というのに、発信を諦めることはありません。今やマクロン大統領は、インスタグラマーのようにバカンス先から、国民からの質問に答えるという形で、毎日のようにインスタグラムやTikTokを利用して、ワクチン接種の必要性、ヘルスパスの必要性を訴え続けています。

 それでも、おそらく8月から9月にかけて、デモが収まることはないと思います。

 しかし、8月のバカンスを終え、新年度が始まり、いよいよコロナウィルスが最も拡大しやすいシーズンに入った時に、一体、現在、上昇し続けている全ての数字(ワクチン接種、デモ、感染者数、重症患者数)の中で、どの数字が突出しているかで、今後のパンデミックがどれだけ続くのかが見えてくるかもしれません。


フランスデモ ヘルスパス反対


<関連記事>

「長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG」

「入院患者の3分の1は、退院後4ヶ月以内に病院に戻る 初回感染を乗り切っても安心はできないコロナウィルス」

「深刻なコロナウィルスの後遺症 求められる早期の段階の治療」

「コロナウィル感染・自宅隔離の危険性 フランスは、これで失敗した」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

0 コメント: