2021年8月2日月曜日

フランス病院連盟が政府に要求する全国民ワクチン義務化 

  


 フランスでは、ヘルスパス反対のデモが毎週のように起こり、週を追うごとにデモの規模も拡大しています。

 しかし、残念ながら、フランスの感染状況は、日々悪化しており、現在、フランス人がバカンスに出かけている地域を中心に事態は深刻になりつつあり、先日もロックダウン・夜間外出禁止が再開したマルティニークからは、集中治療室飽和状態のために、3人の重症患者がイル・ド・フランス地域に移送されました。

 医療状態が逼迫しているのは、マルティニークやレユニオンばかりではなく、フランス公衆衛生局の統計によると、フランス全体のコロナウィルス感染による入院、救命救急患者の数は増加を続け、7,500人以上の患者が入院しており、一週間で30%近く増加しています。

 7月12日のマクロン大統領によるヘルスパスの発表以来、ワクチン接種は拡大している中で、それでもなお、確実に感染が拡大しつつある状況には、デルタ変異種の強力な感染力とその感染のスピードがどれほどのものであるかを認識せざるを得ない状況です。

 このデルタ変異種の拡大に危機感を強めているのは、フランスだけではなく、中国(ここ数ヶ月でこれまでで最悪の感染拡大)、アメリカなどでも、ワクチン接種が済んでいない人の間を縫って感染が再拡大しており、世界全体を見ても、悠長に構えているわけにはいかないことを示しています。

 これらの状況を鑑み、この第4波の前例のないスピードに、フランス病院連盟は、政府に対し、「全国民に対するワクチン接種義務化」を求め始めました。

 「ヘルスパス」(ワクチン接種2回証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)でさえ、反対する人のデモが激化している状態ではありますが、8月9日から実施される、このヘルスパスも開始されるにあたって、そのチェックの複雑さは目に見えており、もっと、単純明快な方法を取るべきで、もはや、ワクチン接種は次の段階に進むべきであると説明しています。

 事実上、ワクチン接種義務化と思われるヘルスパスではありましたが、結果的には、「真の集団免疫を達成するには、充分ではなく、もはや中途半端な方策をとっている時間的な余裕はない」「至るところで、あらゆるデータとされる指標は上昇しており、中途半端な措置の限界を示している」としています。

 マクロン大統領も12日のヘルスパス発表の段階で、「状況の進展に応じて、私たちは、間違いなく全てのフランス人に対する強制ワクチン接種の問題を考えなければならないだろう」と語っていましたが、フランス病院連盟は、今がその時であると言っているのです。

 昨年の12月に最初のワクチン接種を開始するにあたって、マクロン大統領は、「ワクチン接種は、強制ではない。しかし、全てのワクチン接種を希望する人に対しては、無料でワクチン接種を供給する」と発表しています。

 あの時は、まだイギリス変異種でさえもさほど問題になっていたわけではなく、ましてやそれからさらに威力を増したデルタ変異種など影も形もなかった時の話です。

 状況に応じて、対応を変化せざるを得ないのは仕方がないことなのですが、アンチワクチン派は、「マクロン大統領は、ワクチンは義務化ではないと言った!嘘つき!」などと騒ぎ立てるのですから、これでは駄々をこねている子供と同じです。

 当時は、希望者にワクチンをすること、でなんとかなるかもしれない程度であると、ウィルスの感染力をまだまだ軽く考えていた?のかもしれませんが、ウィルスは変異を繰り返し、よりパワーアップし、ワクチンをしなければどうにもならない事態になってしまったのですから、仕方ありません。

 イタリアはすでに5月末に、ギリシャは7月末に医療従事者にワクチン接種の義務化の道を選択していますが、フランス病院連盟は、「個人主義的すぎるアプローチ」から抜け出し、「ワクチン接種義務化のパイオニア国」となることを望んでおり、「ワクチン接種義務化を支持する世界的な運動を開始する」と発表しています。

 ワクチン接種にアレルギー等のある人は別として、今や「ヘルスパス=事実上のワクチン接種義務化」というまわりくどいやり方(ヘルスパスがないと入場できない場所が増える→PCR検査が有料になる→48時間ごとに検査を受け続けることは不可能→ワクチンをするしかない)ではなく、はっきりと「全員に対してワクチン接種義務」とした方が、単純なのかもしれません。

 もはや、ワクチン接種が開始されてから8ヶ月以上が経過し、ワクチン接種の効果は、明白になってきて、さらに強力な変異種が登場し続け、迷い考える時間は、もうないということです。

 医療従事者に関しては、もちろんのことですが、ヘルスパスが求められる場所で働く人々に関しても事実上、ワクチン接種は義務化されることはほぼ決まっています。社会の中で生きていく以上、感染の危険がつきまとうのは、これらの人ばかりでは、ありません。

 ワクチンに反対する人々は、それがヘルスパスであろうとワクチン接種の完全な義務化であろうと反対し続けることは、目に見えています。

 それならば、いっそのこと、ヘルスパス=事実上のワクチン接種義務化ではなく、はっきりと「ワクチン接種義務化」してしまうこともありなのではないか?とも思えてきます。

 バカンス地を中心に感染が拡大しつつあるフランス、バカンスが終わって、みんながパリに戻ってきた時にどこまでワクチン接種が拡大しているかがこの秋以降の感染拡大の鍵を握っています。

 たしかに、もう曖昧な措置では間に合わない深刻な事態がすぐそこまで迫っているのかもしれません。

 現在のフランスのワクチン接種率は62.20%(2回済の人は51.94%)、まだまだ道のりは長いのです。


フランス ワクチン接種義務化


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