バカンス突入で旅行に出始めた人々 |
フランスは約半年間にわたり、レストラン・カフェ等の飲食店は閉鎖されたまま、美術館、映画館、劇場などもずっと閉ざされたままでした。
半年ぶりにテラス席のみとはいえ、レストラン・カフェの営業が許可されたのは、5月19日のことで、同時に美術館、映画館、劇場等も、一斉に再開しました。(入場者数制限等はあり)
気候も良くなり、日も長くなったことも相まって、人々が一斉に街に出始めました。こんなに一気に人が街に繰り出して、大丈夫かな?と思っていましたが、ワクチン接種もどんどん進んでいったこともあって、ロックダウンが段階的に解除されていっても、フランスは、感染がグングン減少し続けていました。
そしてその3週間後の6月9日、いよいよ、レストラン・カフェは屋内営業も許可され、どんどんコロナ前の日常に近づいてきました。
しかし、5月末には、イギリスでのデルタ株の感染拡大のため、感染者が上昇し始め、フランスもイギリスからの入国者に入国後の隔離期間を強制するなどの感染対策を取り始めていました。
それでも、フランスは、デルタ株に対して常に警戒はしながら、全感染者のうちのデルタ株感染者はせいぜい5%未満という状態が続いていました。
それが、ここへ来て、一週間ごとにデルタ株の感染者が一週間ごとに10%、20%と倍々に増加し始め、ずっと感染減少を続けていた数値が、ついには下げ止まりになり、一転して増加傾向に切り替わりました。
Depuis 5j, le virus ne baisse plus, il réaugmente. A cause du variant delta qui est très contagieux. L'exemple anglais montre qu'une vague est possible dès la fin Juillet. Nous pouvons la limiter et en limiter l'impact sanitaire: gestes barrières, vaccin, tester/alerter/protéger
— Olivier Véran (@olivierveran) July 4, 2021
昨日、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、「これまで減少してきた感染が、ここ5日間で、下げ止まりになり、ついには、感染増加に転じました。これはデルタ株の猛威によるもので、イギリスでの例を参考にするならば、7月末には、第4波を迎える危険があります。しかし、これらはワクチン接種の大規模な拡大とソーシャルディスタンスの尊重により、避けることができます。」
「ワクチンは、デルタ変異体を含め、重症化のリスクを軽減します。ワクチン接種を受けると、感染は顕著に減少し、ストレス下で生活することがなくなります。集合免疫を達成することはフランス全体の挑戦です。一緒に挑戦に挑みましょう!」と発表しています。
これまでフランス政府は、秋にはやってくるかもしれない第4波を避けるために、夏の終わりまでには、なんとか第4波を避けるべくレベルのワクチン接種の拡大を達成すると公言してきました。
ところが、デルタ株の猛威は想像以上に早く、フランスは一転して、感染者増加に転換してしまいました。
フランスの感染症専門家の中には、フランスの感染状況は、イギリスの8週間後を追っていると分析している人がいましたが、まさにイギリスでのデルタ株による感染増加から約8週間後にフランスも増加に転じたことは驚くべき現実です。
5月1日には、1日の新規感染者数が1,800人台まで下がっていたイギリスは、7月1日には、27,000人までに感染が増加しています。2ヶ月間で15倍です。しかし、ワクチン接種がかなり進んでいるイギリスでは、感染者はかなり増加しているものの、重症患者や死亡者は、それほどには、増加してはいません。
現在、イギリスのワクチン接種率は、国民全体の66.49%(うち2回接種率は50.01%)、フランスは、50.69%(34.05%)です。このワクチン接種の遅れは、このままでは、フランスがイギリスほどには、デルタ株の拡大から守りきれないことを示しています。
フランスは感染状況が下げ止まりなだけでなく、ワクチン接種もスピードダウンしつつあります。その上、ロックダウンは、ほぼ解除され、バカンスシーズンに突入し、多くの人が大規模に国内移動を始めています。
これでは現在の感染状況が悪化する要因ばかりが積み重なっていきます。
ここのところ、フランスでは、高齢者施設の介護者のワクチン接種率が低いことを憂慮して、医療従事者、介護者へのワクチン接種義務化の必要性が論じられるようになってきていましたが、この問題は、さらに深刻になります。
たとえ、ワクチン接種をしている人でも、発症、重症化するリスクは軽減されても、感染するリスクは常にあり、感染したら、他人を感染させることができる現実は、恐ろしいことです。
それにつけても、これだけ、デルタ株が蔓延し始めたヨーロッパから、多くの人がオリンピックのために日本を訪れ、世界中の人が交わるオリンピックを開催する日本のリスクは、さらに増加しています。
しかも、現在、急ピッチで進められているとはいえ、日本のワクチン接種率は、24.5%(2回接種率は13.5%)と、桁違いに少ないのです。
これまで奇跡的に感染を驚異的に抑えてきた日本は衛生対策にも優れ、恐らく世界中のどこの国よりも素晴らしい衛生対策を取ると思っていますが、オリンピックに参加するのは、(関係者や報道陣も含めて)その多くが外国人なのです。
規則をきっちり守る日本人とは違い、規則をどう掻い潜って自分のやりたいことをするかと考えている人たちが多く日本に入国するのです。
私は、現在の世界的なデルタ株の蔓延事情を見ると、どう考えても、オリンピックが安全だとは、思えないのです。
フランスでの7月末の第4波以上に、私は日本が心配でならないのです。
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