2021年7月13日火曜日

フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化


 


 マクロン大統領のスピーチは、3月末に、4月から学校を閉鎖することを発表して以来の久しぶりのスピーチでした。

 ここのところの、フランスでのデルタ変異種の急拡大により、これまで減少し続けていた感染者数が増加に転じ始めたことから、世界中でも再び、感染拡大が深刻化してきていることを述べ、東京オリンピックでさえも無観客で行われることになったことなどを例に挙げ、第4波が始まりかけている状況を説明し、これまで以上の注意を喚起し、とにかく1日でも早く、ワクチン接種をしてほしいと訴えました。

 続いて、このワクチン接種の拡大において、これまで一番、問題視されていた医療従事者のワクチン接種が義務付けられることになり、医療、介護に関わる全ての人々は、ワクチン接種を9月15日までにしなければならないことになりました。

 これには、病院、介護施設等で働く全ての人々、救急隊員、訪問看護士など、かなり広範囲の人が該当します。

 罰則なしには、なかなか規則が徹底しないフランスのこと、しない場合はどうなるのかな?と思ったら、9月15日以降にワクチン接種をしていない場合は、罰金??と思いきや、給料が支払われないというかなり厳しい規定です。

 これは大変なこと、モノ申すフランス人が黙っているはずはありません。国立病院組合は、その直後に、「ワクチン接種は、あくまで任意であるべき」という声明を発表しています。

 また、一般市民に対してのワクチン接種の義務化はさらにハードルが高いためか、外堀を埋めていくような縛りが段階的に取られていきます。

 7月21日(来週)からは、これまで1,000人以上が集まるイベントにのみ提示が求められていたヘルスパスが50人を超える全てのイベントにおいて求められ、これがない場合は入場できなくなります。

※<ヘルスパス(Pass Sanitaire)> 2回のワクチン接種の証明書か48時間以内のPCR検査の陰性証明書、または、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書

 これは、あらゆる文化施設(美術館など)、娯楽施設(映画館、遊園地など)にも適用されます。

 そして、8月からは、レストラン、カフェ、電車(長距離)、飛行機、コマーシャルセンターなどへのアクセスもこのヘルスパスなしには、不可能になります。(12歳以上の国民全て)

 レストラン・カフェ等に関しては、テラス席、店内の座席に関わらず・・というものなので、お店側のお客さんの管理にも大変、ややこしい問題になりそうです。

 2回のワクチン接種が済んでいない場合は、レストランに行くのにも、コマーシャルセンターに買い物に行くためにも検査が必要なわけで、ワクチン接種なしには、せっかく取り戻し始めた日常がスムーズに送れなくなるのです。

 また、レストラン側においても、義務化されていないとはいえ、お客さんにヘルスパスを求めるということは、従業員でさえも、ヘルスパスが必要ということで、毎日、検査を行うことも非現実的なために、事実上、ワクチン接種が義務化されたような状態になります。

 このバカンス時期で、フランス国内を旅行中の人、これから旅行する予定の人も、ヘルスパスなしには、身動きができないことになり、すでにバカンス中の人でワクチン接種が済んでいない人は、緊急にワクチン接種をしても、今月中に2回を済ませることは難しいので、なかなか大変なことになります。

 兎にも角にもワクチンをしなければ、バカンス後の生活とて、思うように送ることはできません。

 そして、さらに、フランスではパンデミック開始以来、これまでずっと無料だったPCR検査・抗原検査が10月からは処方箋がない限り、全て有料(50€)になります。ワクチンをせずにレストランに行きたい、コマーシャルセンターに買い物に行きたい場合は、その度に、食事代、買い物代プラス50€がかかることになります。

 ワクチンをしない状態で、度々、PCR検査を受けてヘルスパスとして利用していくことも、10月以降は、無理になるということです。

 これは、一般の人に対しては、ワクチン接種はあくまで任意ではありながら、事実上、できる限りの圧力をかけた状態で、このマクロン大統領のスピーチの直後のワクチン接種予約サイトは、パンク寸前になるほどに予約が殺到したようです。


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 と、同時に、フランスのツイッターでは、瞬く間に、ハッシュタグ#ジレジョンヌ(黄色いベスト)がトレンド入りし、このマクロン大統領の発表に憤りを覚えているアンチワクチン派の人々の強烈な反対デモが起こるのは、必須です。

 しかし、フランス人は、おかしなもので、7月〜8月のバカンス期間中は、デモも行わないのが通例なので、デモが起こることは避けられないとしても、それを見越して、バカンスシーズンに入った直後にこれを発表し、デモが始まるであろう9月までに少しでもワクチン接種を拡大したいという目論見なのだと思います。

 現在のフランスには、ワクチンは希望者には、直ちにワクチン接種を行えるだけの潤沢なストックがあり、今後も引き続き、ワクチンが届き続けることになっており、バカンス期間中で2回目のワクチン接種との間隔をうまく取れずに、ワクチン接種を思いとどまっていた人も少なくないのですが、バカンス先(フランス国内)でも、予約なしにワクチン接種ができる場所で、慌ててワクチン接種に走る人も今後、増えるのではないかと思われます。

 しかし、海外からフランスに来られる観光客の方も8月からは、ワクチン接種をしていないと、検査に追われる毎日になります。

 最近は、ロックダウンも解除され、夜間外出禁止もなくなり、取り締まりの警察官が街を練り歩く光景もすっかり見かけなくなっていたのですが、今回のヘルスパスに関する取り決めで、街には、再び、取り締まりの警官が戻ってくるものと思われます。

 しかしながら、この感染悪化状態でバカンスシーズンを迎え、人々が国内を移動しまくり、ワクチン接種以外に感染を抑える手段がないだけに、このままでは、フランスは、8月の初め頃には、再び1日の感染者数が2万人に及ぶだろうとも言われています。

 ようやく落ち着いてきたと思いきや、この厳しいヘルスパス縛りの生活が再開します。しかし、こうしている間にもデルタ変異種に次ぐ新しい強力な変異種がいつ誕生するかもわからず、よもや第4波・第5波が訪れ、再びロックダウンになるよりは、全然マシです。

 マクロン大統領は、スピーチの中で、「残念ながら、ウィルスとの戦いは、まだまだ続き、2022年になってもまだ続いているだろう」と語っています。そして、10月以降は、今年の始めにワクチン接種をした人に対して、3回目のワクチン接種もできるようになると発表しています。

 このこれまでよりも3倍も感染力が強いと言われているデルタ変異種への警戒・深刻さがこのフランスらしくない締め付けのようなワクチン接種に国民を追い込む、かなり強引なやり方に現れています。

 国民もこのパンデミックにも、ロックダウンにもいい加減、うんざりしていますが、国民を支援し続けているフランス政府こそ、もういい加減、こんなことをダラダラと続けてはいけないわけで、どんなことをしてでも、感染者を増やすわけにはいかないのです。

 重症化しなければ、医療崩壊を起こさなければ、まずは良いのかもしれませんが、感染者が拡大していけば、新しい変異種が出現する危険もあるのです。

 いつもは、国民に甘々なフランス政府ですが、今回ばかりは、なかなかな強気なワクチンへの追い込み作戦。これがバカンス中に発表され、すぐに国民の怒りが爆発して、大変なデモ・暴動とはならないことが救いです。

 現在、フランスのワクチン接種率は、1回でもワクチンを受けた人が53.06%、2回接種すみの人が40.06%、この強めの規制に踏み込むにはある程度、ワクチン接種が進んだからこそ可能なこと。ワクチンの供給が間に合っているのに進んでいない状況にならなければ、できなかったことです。

 しかも、バカンス中、バカンスを楽しみたい人は是が非でもワクチンを受けようとします。

 ワクチン接種拡大作戦決行のこのタイミングをフランス政府は、待っていたのかもしれません。これからは、ロックダウンによって、人の行動を制限するのではなく、ワクチン接種による制限に切り替わっていくのかもしれません。


フランス ヘルスパス


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