2021年7月22日木曜日

いよいよヘルスパスがスタートしたものの問題は山積み

   


 7月21日から、フランスは、かなりの範囲(文化施設、娯楽施設、ジム、コマーシャルセンター、長距離移動の交通機関などなど)でヘルスパス(ワクチン接種2回証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)が必要になりました。

 しかし、私が昨日、ヘルスパスが必要とされていたはずのコマーシャルセンターに買い物に行ったところ、全くのノーチェック、友人とバカンスに出た娘は、 TGVに乗車というのに、これまたノーチェック・・まぁまだ初日だから・・とも思うのですが、初日に準備できなくて開始できなくても良いなら、日付を設定する意味があったのか? まあ、フランスなら不思議ではないことではありますが、今さらのように思うのは、最初のロックダウン時の衝撃的なシャットダウンをフランスで行えたことは、スゴいことだったのです。

 しかも今は、バカンスシーズンで、多くの人がバカンスに出ていて、どこも人員不足、それでも、しっかりヘルスパスのチェックを行っていたところもあるようで、ジムや映画館、美術館などで、ヘルスパス不携帯で入場できない人の様子がテレビのニュースでは報道されていました。

 当日になって、カステックス首相は、昼過ぎの国営放送のニュース番組に登場し、このヘルスパスのチェックを機能させるまでに1週間のテスト期間を設けることを発表しています。

 つまり、ヘルスパスの本格的な始動は、8月からということになります。

 また、現在のところは、ヘルスパスのチェックにIDカード(身分証明書)の提示、つまり本人確認が必要ないとのことで、これでは、また新しい商売(ワクチン接種証明書のレンタルや偽証明書の販売など)が発生しそうです。

 なにせ、このヘルスパスのチェックを身分証明書と照らし合わせて本人確認をするとなれば、手間も時間も人出もいることになるのですが、本人のものでなくても良いなら、意味はありません。しかし、一般市民が身分証明書のチェックというのは、いささかお門違いの感もあります。

 現在のところは、それぞれの施設がチェックするのは、ヘルスパスだけで、合間を縫って警察がランダムに身分証明書との照合のチェック(抜き打ち検査)をすることになっています。

 しかし、第4波に突入したフランスには、本当はそんな猶予はなく、急増している1日の新規感染者数は、あっという間に2万1千人超え(一週間で2.4倍)と同様に入院患者数も1週間前と比較すると33%増になっており、ここのところ、家から聞こえる救急車のサイレンの音がまた増えてきたような気がする・・と思っていた私の感覚は、間違いではなかったようです。

 街に出てみると、ちらほら観光客も見られるようになり、美術館を訪れようとしていたアメリカ人観光客がこのヘルスパスのルールを知らずに、「2回のワクチン接種は済ませているのに、観光するのにワクチン接種証明書は持ってきていなかったので、入れてもらえなかった・・」とボヤいている人などもいました。

 エッフェル塔などは、こういう人々のために、エッフェル塔の隣に、PCR検査場を設けて、観光客対応をしているようです。

 しかし、人出不足は、こういった文化施設、娯楽施設、レストランだけではなく、病院でさえも、現在は、バカンスのためにスタッフがフルに待機しているわけではありません。

 スタッフがいなければ、たとえ、病床が空いている状態でも患者を受け入れることはできずに、このまま、入院患者、重症患者が急増していく状況が続けば、あっという間に医療崩壊を起こしてしまいます。まだまだ1ヶ月以上続くバカンスシーズンには、そんな危惧も孕んでいます。

 感染状況が特に悪化している場所では、再び、屋外でのマスクが義務化されたり、23時以降のレストラン・カフェ等の営業が禁止される事態になっていますが、今後、さらに感染が悪化する地域が現れれば、当面は、自治体ごとに対応すると発表されています。

 娘は、現在、パリ市内の病院併設の研究所でスタージュをしていますが、このヘルスパスの発表以来、看護士が退職してしまうケースが出始めていると医者が嘆いていたそうで、自分の職を辞してまで、どうしてもワクチンをしないと言っている頑強な信念を貫こうとしている人も一定数いるようです。

 この種のアンチワクチン派の人は、病院だけでなく、様々な業界にもいるようで、8月30日以降は、病院にかかわらず、入場者にヘルスパスの提示が求められる全ての施設の雇用主は、従業員のヘルスパスをコントロールする義務があり、不携帯を続ける場合は、制裁として無給、事実上の解雇になるのです。

 「労働者(組合)の権利」が甚大であるフランスでは、従業員を解雇するにも、雇用主側にとっては、大変な出費でもあり、レストラン・ホテル業界などは、「ヘルスパスには、反対しないが、このヘルスパス不携帯の(ワクチン接種をしない)従業員の解雇のための補償金に関しては、負担することを拒否する」=「国が払ってくれ!」と発表しています。

 現在、フランスのワクチン接種率は70代以上で80%、60代で77%、50代で73%と、開始のタイミングのズレにより、比較的、高齢の人には、かなり進んでいますが、一番、後回しになってしまった12歳から17歳の年少者に対してのワクチン接種期限を8月30日としていたものを9月30日まで延期するとし、9月の年度初めから、全国の中学校・高校にワクチン接種制度を設置することを発表しました。

 とにかく、政府の提案しているヘルスパスは、人々を解雇することでも締め付けることでもなく、感染をなんとか抑えるためにワクチン接種を拡大するためのものなのです。

 ロックダウンが解除になり、人々がバカンスに出ていることも感染拡大の原因でもありますが、昨年の今頃存在していたウィルスと、現在のデルタ変異種は威力が全然違い、真夏の今でさえも、しかもワクチン接種がかなり進み出しても感染が急増してしまうのですから、ウィルスがさらに活性化すると思われる秋までに、少しでもワクチン接種を進めなければ、大変なことになってしまいます。

 現在、フランスの感染者の96%は、ワクチン接種を受けていなかったことが確認されています。

 自由を守るためにワクチンを拡大しようとしている政府と自由を保持するために、ワクチンに反対する人々に接点を見出すことはできるのでしょうか?


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