2021年2月28日日曜日

全く懲りないフランス人 ロックダウンを回避したい政府の気持ちは伝わらない

 

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  ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)とダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)では、今週末から週末のみのロックダウンが始まりました。

 平日の18時以降の夜間外出禁止に、週末のロックダウンが追加されて、完全なロックダウンにはならないまでも、この地域の人々は、かなり窮屈な生活を強いられることになりました。

 中には、「平日をロックダウンして、週末は、ロックダウンをやめろ!」なんて言っている人もいて、いかにもフランスな感じだと苦笑してしまいました。

 しかし、週末ロックダウンと正式に決まったこの地域は、さすがに人出もなく、しんとした感じでしたが、ロックダウンにはなっていないパリなどの週末は、晴天だったこともあって、うんざりするほどの人出でした。

 しかも、もうすでに昨年に多くの人出で問題になった同じ場所で、同じような人出には、この人たちは、全く学習能力がないのか?と思わせられます。

 まるで、この映像は、昨年のものを使っているのではないか?と錯覚するほどです。

 長いことフランスでは、レストランもカフェも閉鎖されているため、人が集まって、気持ちよく過ごす場所といえば・・セーヌ川沿い(セーヌ川は、パリを横断して流れているため、パリ中どこでも、セーヌ川沿いはすぐそこ・・)、サンマルタン運河、グランパレ近くの広場、あちこちに散らばっている公園などなど、晴天も手伝って、もの凄い人・人・人・・・。

 しかも、この期に及んで、マスクをしていない人が急増しています。


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 「マスクがどこでも義務化されて・・」などと、今頃、言っている人もいて、これまでも義務化されてただろうーが!!と突っ込みたくなります。

 先週は、もはやロックダウンか???と戦々恐々としていたはずの人々とは、とても思えません。しかし、この人出は、想像できなかったことでもなく、むしろ、多分、たくさんの人が外出するんだろうな・・とも思っていました。

 フランスは、ニースやダンケルク以外にも感染状態が深刻な場所は、たくさんあり、3月8日までの猶予付きで、とりあえずは、20の地域(イル・ド・フランス・パリももちろん含まれている)で取り締まりを強化すると発表されたばかり・・感染状態が悪化すれば、さらなる制限が加わり、ロックダウンになる可能性も高いのです。

 晴天の週末ともなれば、この人出も、この場所も、充分に想像の範囲内、取り締まりを強化するという発表は何だったのか? 理解に苦しみます。

 ワクチン問題にしても同じですが、どうにも政府の希望的観測と国民の意識には、大きな乖離があると思わずにはいられません。

 「喉元過ぎれば・・」と言いますが、喉元を過ぎたのは、ロックダウンの発表(しかも延期されただけ)だけで、現状の感染状況は、過ぎ去っていないどころか、現在も沸騰状態なのです。

 禁止されなければ良い・・のでは、禁止するしかない=ロックダウンするしかないのではないか?と思います。フランスは、これまでに86,332人が死亡しており(2月27日現在)、散々の惨状を経てきているのです。

 いくらなんでも、学習能力がなさすぎる!子供かよ!と腹立たしい気持ちです。

 まるで得体のしれないウィルスであった昨年の状態ならば、想像力の欠如とも言えたでしょうが、これだけの負の実績を記録してきた現在では、控えめに言って記憶力の欠如か学習能力の欠如。

 むしろ、「若者は大丈夫という間違った神話」やこれまで感染しなかった人や感染しても無症状だった人がウィルスを舐めくさっている分だけ、さらに始末が悪いかもしれません。

 経済、教育、心理的な負担を考えて、できる限りロックダウンしないと「ロックダウン回避」の方法を試行錯誤している政府の親心は、国民には全然、通じていないのです。

 むしろ、国民は、「来週から週末ロックダウンになるんだったら、今週末は出かけておこう」と、制限(ロックダウン)されることが前提の外出。

 ロックダウンを必死で回避しようとする政府とは、全く噛み合っていないのです。


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「コロナウィルス騒動の中のテロとバカンス気分のパリ・サンマルタン運河」

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「コロナウィルス・ロックダウン解除・初日のフランス パリ・サンマルタン運河は早くもアルコール禁止の措置」

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2021年2月27日土曜日

混乱状態のフランスのワクチン接種 コロナウィルスワクチン接種の申し込みをした!

   


 そろそろ、処方箋をもらって、いつも飲んでいる薬をもらっておかなければと、たまたま、私はかかりつけのお医者さんに予約をとっていました。

 もう今の家に引っ越して以来のかかりつけの女医さんなので、私の健康状態はもちろんのこと、体調の変化や我が家の歴史などを全て知っていてくれて、気心も知れているし、特に今、体調が悪くて行くわけでもないので、本当に気楽にちょっと彼女の顔を見に行くような気分でした。

 私の方もいつもお願いする薬は、リストを作っていて、血圧を測ったり、軽い診察をしてもらって、いつもどおりの処方箋をもらってくるだけのつもりでいました。

 「今日はどうしたの?」「いつもの薬の処方箋を書いてもらいに来ました」と彼女と話し始めて、彼女の目元を見ると、なんだか、老けた?いや、疲れているのかな?と思いました。

 軽い診察を受けながら、彼女は、「あなたは、いつも飲んでいる薬(血圧の薬や他数種類の薬)もあるし、ワクチン接種をしますか?」とおもむろにワクチン接種の話を始めました。

 まさか、医療従事者や高齢者優先だと聞いていたし、以前に私が、「もしかして、私は、リスクの高い人(ワクチンが優先的に受けられる)に入りますか?」と聞いた時に、「あなた程度の人はリスクの高い人には入らないわよ!」と言われていたので、私が今のフランスのワクチン接種が滞っている状況で、まさかワクチン接種の話が出るとは思ってもみませんでした。

 とにかく年明けから、ワクチン接種の遅れが大バッシングされて以来、フランス政府のワクチンへの焦りと必死さは伝わってくるものの、実際には全く、予定どおりには、進んで行かないために、どんどんワクチン接種のできる枠を広げ、終いには、オリヴィエ・ヴェラン保健相みずからがワクチン接種をしているところを報道してアピールしたりして、政府の記者会見の度に、何日までには、どれだけのワクチン接種をするとか、目標値ばかりをやたら掲げている印象がありました。

 しかし、身近なところから、聞こえてくるのは、「とにかく電話は繋がらない!」「予約サイトがダウンしてる!」「予約が取れない!」「予約が取れても、家から車がないと行けないものすごく遠いところ!」などなど、およそ政府の発表とは、全く異なるものだったので、だいぶ、混乱しているな・・私の順番が来るのは、多分、まだまだ先の話で、まあ夏頃になるのではないか?と、のんびりと構えていました。

 それが、2月の半ば頃になって、ワクチン接種の現場が回らなくなったためか、一般開業医でもワクチン接種が受けられることになったのです。もちろん、ワクチン接種をすることを受け入れている開業医に限った話ではあります。

 彼女(私がかかっているお医者さん)は、ワクチン接種をすることを受け入れて、実際に開始しようとしたところ、「一向にワクチンが届かない!」「手続きが何重にも往復するので時間がかかる!」といつもは、エレガントで冷静な彼女が見るからにやつれて、怒り心頭の様子。

 普段は、あまり感情を露わにするタイプではない彼女が「まったく、フランスはこれだからダメなのよ!」とイライラモード。

 私は、突然のワクチン接種の話に、「でも、医療従事者でも高齢者でもない私みたいなのが、ワクチン接種を受けてもいいのかしら? 私に権利あるの?」と聞くと、「あなたは、いつも飲んでいる薬もあるし、受け付けられると思う」「それに、ワクチンは1パックに10回分のワクチンが入っているから、それを時間内に使い切らないといけないから・・」と言うのです。

 なるほど、一般の開業医での接種となれば、ワクチン接種に来る人ばかりではないため、ある程度、人数をまとめて行う工夫もしなくてはならないのです。つまり、ワクチンを受け取った時にセキュリテソーシャルから許可が下りている10人のワクチン接種希望者を同じタイミングで集めなければならないのです。

 個人でやっている開業医には、その手続きや人とワクチンの調整だけでも結構な負担です。彼女は一般の診察を一人でやりながら、それをやらなければならず、届かないワクチンの問い合わせなどまでしなければならないのですから、テンパっているのも頷けます。

 「とにかく申し込みをしてから、ワクチンが来るまでは、もの凄く時間がかかるから、申し込みは、早くした方がいいわよ!」と、申し込みをするための問診を受ける予約を3月18日に入れて帰ってきました。

 この予約は、問診とともに開業医がデータを入力すると、セキュリテソーシャル(国民健康保険)がすぐに、この予約に対するコードを発行し、セキュリテソーシャルの許可が下りるとこのコードに対してワクチンが振り分けられてくるシステムになっているようです。

 このコードは、セキュリテソーシャルのナンバーとも連携しているため、その後のワクチン接種の有無の追跡(ワクチンパスポート)なども、そのコードによって、作られていくものと思われます。

 私は、急なワクチン接種の話にびっくりしていましたが、その日の夜になって、珍しく彼女から電話があり、「届くはずのワクチンが今日も届かなかったし、思っている以上に時間がかかるし、予約だけは入れられるから、明日、問診をするから、もう一度、来てくれる? 時間はかからないから・・」と彼女も少々、混乱している様子でした。

 あいにく、彼女が言う時間には、私は、すでに他の予定が入っていたため、彼女は昼休みの時間を割いてまで、少しでも早く予約を入れたかった模様。問診の内容は、簡単なもので、「薬に対して特にアレルギー反応を起こしたことがありますか?」とか、「過去、3ヶ月以内にコロナウィルスにかかりましたか?」程度のことで、後の私の体調に関するデータはすでに彼女の方が細かく記録しているので、本当に簡単で、私は、すぐにセキュリテソーシャルからのワクチン申し込みのコードを受け取りました。

 国の混乱状態から、思わぬことで、医療従事者でも高齢者でもない(若くもないけど)私が、ワクチン接種のウェイティングリストに乗ったわけです。

 ワクチン接種が開始されたのは、昨年の12月の初め、当初は、高齢者施設の老人から、高齢者へと予定が組まれていました。フランスには、当時、アンチワクチン論者の人も少なくなく、私自身もどうしようか?様子を見ながら考えようと思っていました。

 しかし、そろそろパンデミックから一年が経ち、フランスは、その間、何回も感染拡大をしては、ロックダウン、そして現在もまた、感染爆発が目前の状況。もういい加減、うんざりです。日本にだって行きたいし、友達と食事もしたいし、ビクビクしないで外出したい!

 実際に、リスクを考えるなら、ワクチン接種をしてアレルギー反応を起こす可能性よりもコロナウィルスに感染する可能性の方が遥かに高いのです。

 「もうワクチン接種をして、少しでも早く元の生活に戻りたい」というのが、私の正直な気持ちです。

 そして、ワクチン接種をするのだったら、その後にもしも具合が悪かったりしても、ワクチン接種をしてくれた彼女にすぐに相談できるのは、心強いこと、他の見ず知らずのセンター等でワクチンを受けるよりは、私にとっては、ありがたいのです。

 しかし、思いもよらず、予約を入れることができただけで、実際にいつできるのかは、まだわかりません。ワクチン接種ができたら、また報告します。

 フランス在住の方でワクチンの予約が取れない方は、地元の開業医に相談するのが意外な早道かもしれません。

 

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「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

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「フランスのコロナウィルスワクチン接種」

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「フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由」

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「今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項」

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2021年2月26日金曜日

感染悪化し続けるフランス・20の地域における監視強化で3月6日まで様子見


 

 これまで、感染悪化が続きながらも、1日の新規感染者は2万人台を行ったり来たりしていたフランスで、24日(水)には、ついに31,519人と3万人の大台を突破してしまいました。

 ロックダウンは、あくまで最終手段としていた政府の方針から、フランス国民の間では、ロックダウンの話題も少し下火になり始めていました。

 ところが、先週あたりから、ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)での記録的な発生率と前例のない集中治療室の占拠率の増加で、この地域では週末だけのロックダウンが発表され、今週の金曜日の午後6時から月曜日の午前6時まで、とりあえず2週間に渡って、週末のみのロックダウンを行うことになっていました。

 ニースでの週末ロックダウン発表の翌日には、同等の感染悪化がみられるダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)でも週末ロックダウンが発表されました。

 新規感染者数が3万人を突破したのは、またその翌日のことです。毎日毎日、迫り来る感染悪化のニュースに再び、フランス国民の脳裏には、「ロックダウン」の気配が戻り始めました。

 そのタイミングで、カステックス首相が記者会見をするというので、「これは、もしかしたら・・」という声が一気に広がりました。

 果たして、カステックス首相は、「感染状況は深刻に悪化している。特にイギリス変異種の拡大は深刻で、現在、感染者の50%は変異種による感染になってきている。しかし、我々は、現在の段階では、ロックダウンの選択はしない。特に感染状況が深刻な20地域(アルプマリティーム、イル・ド・フランス、ローヌ、ブーシュ・デュ・ローヌ、ノール、オワーズ、パ・ド・カレー、ソンム、ドローム、モーゼル、ムルト・エ・モーゼルなど)においての取り締まりを強化すること」を発表しました。

 取り締まりを強化するということは、現在以上の制限が加わるわけではありません。

 そして、同時に、もしも今後、一週間の間にさらに感染が悪化した場合には、3月6日の段階で、さらに厳しい制限を敷くことを発表しました。

 特にイル・ド・フランスは、ニース、ダンケルクに次いで感染状態が深刻ですが、なんと言っても人口の多い地域、ロックダウンをした場合の影響も甚大です。

 この感染拡大は、3〜4週間のロックダウンで、完全に収まるものではなく、ロックダウン以外の措置を講ずることで、少しでもロックダウンの時期を後送りにし、生活、教育機関、経済的にも心理的にも負担がかかる時間を少しでも減らし、また、この間にワクチン接種を少しでも広げたいというのが、昨日、発表された政府の方針です。

 とはいえ、監視を強化することで、一週間後に効果が現れるものでもなく、運よく一週間以内に更なる感染悪化がなければ・・という希望的な要素が強い現段階の措置であるとも言えます。

 しかし、この一週間、急に感染悪化がストップするなど奇跡的なこと、一週間後にさらに厳しい措置が敷かれるのは、ほぼ確実、まさに昨年と同じタイミングで感染が爆発する可能性が大です。

 日本は、緊急事態宣言により、感染も少しおさまり始め、ここ数日、1日の新規感染者は、1,000人前後、フランスは1日3万人越えということは、1日で日本の一ヶ月分の感染者が出ているわけです。しかも、フランスの人口は日本の半分であることを考えたら、二ヶ月分です。

 12月から1月にかけてのドイツやイギリスの感染爆発によるロックダウンを横目にみながら、我々は、うまくやっていると自画自賛していたフランスですが、それは、あくまでも、時期がズレただけのことで、その前の10月末から11月の1日の感染者が6万人という壊滅的な状態のためにすでに11月にロックダウンしていた効果が現れていただけのことで、何もフランスがうまくやれていたわけではありません。

 しかも、10月から11月にかけては、変異種による感染拡大ではありませんでした。

 今回の変異種による感染拡大は、2度目のパンデミックとも言われるくらい、感染拡大のパワーが異なっています。感染速度も早く、若い世代でも重症化する傾向にあるのです。

 おまけにフランスは、政府が発表しているワクチン接種の予定は、絵空事で、実際のワクチン接種は、ドイツやイギリスのように進んではいないのです。

 現在、国によっては、コロナ感染者ゼロを本気で目指し、達成しかけている国もあるようですが、少なくともヨーロッパ、ことにフランスは、そんなことを目指せる段階でも状態でもありません。

 だとしたら、少しでも制限を現段階程度で留めた状態を1日でも長く稼いで、凌いでいき、さらに制限の厳しい状態、あるいはロックダウンの期間を少しでも短くできるようにしたいと考えるのもわからないでもありません。

 しかし、実際の医療現場などは、かなり逼迫している上に、これまで1年間続いている厳しい状態に医療従事者の疲弊も激しく、また、3月の始めには、冬休みのバカンスが終わってフランス全土にわたる学校も再開されるため、さらなる感染悪化は確実で、パリ市長は、政府に対して、「もう一刻も待てない!すぐに3〜4週間の完全なロックダウンをすること」を提案しています。

 どちらにしても、まだまだ目が離せないフランス。一週間後にどうなっているのか?

 全く見当もつきません。


<関連>

「ニース・アルプ・マリティーム県 週末のみのロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_23.html


「フランスのコロナウィルス感染第二波が来るのは当然だった・・」

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/rikamama/2020/10/post-1.php

2021年2月25日木曜日

美食の街・リヨンの学校キャンティーン(給食)の肉排除メニューの波紋


 


 フランスの学校のキャンティーン(給食)のメニューは、たいてい、少なくとも2種類以上のメニューから選べるようになっています。これは、宗教上の理由や、ベジタリアンやアレルギーに対応するために、長いこと行われてきたフランスの学校のキャンティーンの方式です。

 メニューだけ見ると、前菜、メイン、デザートのコースになっていて、栄養のバランス等が一応考えられた立派なメニューになっています。

 フランスの学校は、日本のように教室で給食を食べることはなく、キャンティーン・食事の場に移動して、食事をするので、キャンティーンの混乱を避けるために、学年ごとに食事の時間がずらされて設定されています。

 フランスの学校の先生は、授業を教えることだけが仕事なので、子供たちの食事の世話をしたりすることもありません。(保育園などは別) キャンティーンには、キャンティーンで働く人がいるので、子供の食事を監督する人は、別にいるのです。

 しかし、当然、場所を移動して、それぞれにメニューを選んで食事をするのですから、時間もかかりますが、日本のように給食当番があったりして、子供たちが、食事を配ったりすることもないので、その分、時間的には、差し引きゼロというところでしょうか?

 ここに来て、リヨン市長が、コロナウィルスの感染対策のために、キャンティーンのサービスをスピードアップして、混雑状態を緩和するために、学校のキャンティーンのメニューから肉を排除し、単一メニューにすることを発表し、大きな波紋を呼んでいます。

 感染対策のために、キャンティーンのサービスのスピードアップをして、混雑を防ぐために単一メニューにする・・そこまでは、わかるのですが、それが肉排除のメニューに直結するところに不自然さを感じるのです。

 これがよりによって、フランス国内でも「美食の街」とされているリヨンでのことなので、特に波紋も大きいことなのかもしれません。

 このメニューには、卵や魚まで排除するわけではないので、ベジタリアンメニューではないことや、通常からも肉のメニューよりもより多くの子供たちに受け入れられることで、肉を排除したメニューを選択したなど、理由を連ねていますが、エコロジストのリヨン市長は、かねてより、地球温暖化の原因の一つに肉消費が重く占めていることを主張し続けており、「美食の街で、エコロジストが健康危機を利用して、協議なしにイデオロギー的措置を押し通そうとしている」と、この対応に多くの避難の声が上がっています。

 また、この「学校キャンティーンの肉排除メニュー」導入には、さっそく生産者・ブリーダーのデモも起こっており、ジェラルドダルマニン内務大臣は、ツイッターで「スキャンダラスなイデオロギー」とこの対策を非難。

 「フランスの農民や肉屋に対する容認できない侮辱に加えて、 『緑の党』の道徳的およびエリート主義的政策が下層階級を排除していることは明らかである。下層階級の多くの子供たちは肉を食べる機会はキャンティーンしかない」と抗議しています。

 少なくとも日頃、スーパーマーケットでフランス人の買い物を見ていると、どう見ても肉食の人たち、コロナ対策とはいえ、急に「肉排除のメニュー」を強引に押し通すやり方は、反発を買うのも当然です。

 たしかに、生産者からの反発もあるでしょうし、エコだのビオだのというのは、お金のかかることでもあり、ある程度の階層以上での話で、下層階級で家庭で満足な食事の取れない子供にとってのキャンティーンの食事は、理想ばかりも言っていられない現実もあります。

 少なくとも、肉を排除するか否かの問題以前に、このコロナウィルス対策に乗じて、議論もせずに市が無理矢理に押し通してしまったことが、波紋を呼んでいる原因になっている気がします。

 しかし、これは、少なくとも4月のイースターのバカンスまで続けられるということです。


<関連>

「フランスの学校のキャンティーン・給食」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_11.html

「やっぱりフランス人は、肉食だなと思わされるパリのスーパーの魚売場」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_74.html

2021年2月24日水曜日

グループ抗争による2件の乱闘事件で、中学生2名死亡 14歳は危険な年齢か?

  


 犯罪の低年齢化は、どこの国でも叫ばれていますが、ここのところ、フランスでは、「14歳」という年齢を頻繁に耳にします。

 一昨日、エソンヌ県(イル・ド・フランス地域圏)では、24時間以内に2カ所で、グループ抗争による乱闘が凶暴化し、サンシェロンに住む14歳の少女、ブシー・サンタントワンヌに住む13歳の少年が命を落とすという痛ましい事件が相次いで起こっています。

 どちらも人口5,000人、10,000人の小さな街というより村のような一見のどかな場所での出来事、しかも犠牲者が13歳、14歳のティーンエイジャーであったことに衝撃が走っています。

 最初に起こった14歳の少女の刺殺事件は、12人の若者の間で起こった激しい口論に端を発しています。黒い服を着て、フードを被ったこの集団の対立の間にいた少女は、ナイフで腹を刺され、病院に運ばれましたが、その日の夜に死亡しました。

 また、13歳の少年の事件は、約60人が巻き込まれた乱闘の末、1名死亡、他3名も重症を負っています。死亡した少年の刺し傷は、2カ所の刺し傷から喉に達しており、救急車が到着した段階ではすでに彼は心肺停止状態にあり、蘇生することはできませんでした。

 この事件に関与した少年6人はすでに逮捕されています。

 つい先日もパリ15区で14歳の少年が集団暴行により瀕死の重症を負った事件がありましたが、どうにもこの年齢、危険なお年頃なのかもしれません。

 この事件は、学校のバカンス中のことでもあり、しかも18時以降、夜間外出禁止の制限下にある状況で起こっており、未成年のティーンエイジャー、しかも中学生ということで、親の監督責任を疑問視する声も上がっています。

 フランスの学校では、学校の外で起こったことに関しては、学校は一切、感知しないという立場をとっており、以前、勤務先の近くで、学校帰りに路上で暴れて騒いでいた中学生が会社の建物の窓を壊したので、会社から、学校に苦情を申し立てたら、「学校を一歩出た生徒がやることに関しては、一切、学校は関係ありません」と突っぱねられ、謝罪の一言もなく、びっくりしたことがありました。

 そういえば、あれも中学生でした。

 娘が中学生の頃を思い起こすと、お友達のお誕生日会など、特別なことがない限り、夜に外出することなど全くなかったし、夜の外出の際は、誰かしらが、必ず送り迎えをするのが当然の環境だったので、まるで危険を感じたこともありませんでしたが、今から考えると、この年齢は、少しずつ親の干渉を逃れたい時期でもあり、難しい時期なのかもしれません。

 しかし、思い起こすに、娘が中学生の頃、夏のバカンス中のコロニー(合宿のようなもの)で、同室の女の子同士の些細な口論から、一人の女の子がナイフを取り出したという騒ぎになったことがあったことを思い出しました。

 そのコロニー(合宿)はフランス全国からいろんな地域の子供たちが集まってきているもので、普段は決して出会うことのないような、違う環境で育った子供が混ざり、いつも生活している比較的、安定した家庭の子供としか付き合いのなかった娘が、思わぬ事件に遭遇した事件でした。

 勤務先にコロニーの責任者から「おたくのお嬢さんが刺されそうになりましたが、大事には至らなかったので、ご安心ください」と電話があった時には、死ぬほどびっくりして、ツテをたどって、状況把握と、危険対策をとってもらいましたが、コロニーから戻った娘は、全くケロッとしていたのにも驚かされました。

 だいたい、夏のバカンスのコロニーにナイフを持っていく中学生というのは異常ですが、今回の事件もナイフによるもの・・このナイフという凶器を持ち歩いている中学生というのは、思っているよりもいるのかもしれません。

 しかし、今回のエソンヌの事件の犯人のうち数名は、親に付き添われて警察に出頭したとのこと・・まだまだ親の庇護の元にいる少年・少女の犯罪です。犠牲者にとってみれば、まだ13歳・14歳で刺し殺されるなどという命の落とし方、親としたら、耐えられない子供の失い方です。

 しかし、これまであまり聞かなかったこの年齢の凶暴な暴力事件が最近、立て続けに起こっていることが、このコロナウィルスによる制限の多い生活が関係しているような気がしてなりません。

 

<関連>

「おたくのお嬢さんが刺されそうになりました!?・・バカンス中のサマーキャンプでの話」

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2021年2月23日火曜日

ニース・アルプ・マリティーム県 週末のみのロックダウン

 

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 ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)での記録的な発生率と前例のない集中治療室の占拠率の増加で、急激な感染悪化が注目され始めたのが、先週末のことでした。

 それ以来、この地域をこのまま放置して良いものか? 少なくとも地域的なロックダウンが必要なのではないか? と、政府の発表を今か今かと週末の間中、皆が注目しながら待っていました。

 この地域に対する措置は、遅くとも日曜日の夜には発表されているとされていましたが、とうとう発表は、週明けにずれ込むことになってしまいました。

 週明けの正午近くに、アルプ・マリティーム県知事から発表された内容は、「今週の金曜日の午後6時から月曜日の午前6時まで、とりあえず2週間に渡って、週末のみのロックダウンを行う」「ロックダウンの形態は、10月の全国的なロックダウンの規則と同じ形態を取る」(外出は、生活必需品の買い物、通院、自宅から半径5 km以内で1時間に制限された歩行などに限る)というものでした。

 先週末の間にこの地域の現状確認に訪れていたオリヴィエ・ヴェラン保健相は、「夜間外出禁止令の強化、あるいは部分的または完全なロックダウンの形をとることができる」と示唆していました。

 週末にかけての協議の結果、このような決断に至ったわけですが、この決定は、全会一致でなされたものではありません。「感染は、主に家族内(屋内)で起こり、屋外での生活を制限する措置を講じ続けているのは、おかしい」「週末だけのロックダウンは、充分な措置ではない」など、議論は、かなり難航した模様です。

 これに対して、「ニースでの感染拡大は、主にスキー場が閉鎖されたために、なだれ込んだ観光客により持ち込まれたことが原因」としている人々もおり、週末にロックダウンすることで、これらの観光客を減少させることができるとしています。

 このニースの週末ロックダウンのニュースに、あらためて、フランス政府の「あくまでも、ロックダウンは最終手段」としていることを思い知らされた気がしました。

 この発表が、政府首脳(首相や保健相)からのものでなかったことや、ロックダウンが地域的なものであることは、まだしも、その上、「週末だけ」という、なんとも中途半端なものであったためです。

 フランスでは、度重なるロックダウン、解除、そしてまた、ロックダウンという状況を「STOP&GO」を繰り返す状態は避けなければならないとしており、一度、ロックダウンしてしまえば、その解除をするタイミングを図ることが難しく、未だロックダウンはしていなくても、さまざまな制限に関しても、感染状況が減少しない限り、この制限を緩和することは、これまでの努力が水泡に帰してしまう結果となるために、一向に緩和することはできないのです。

 奇しくも、このニース・アルプ・マリティーム県の感染爆発が発覚する寸前までは、もしかしたら、減少傾向にあるかもしれないと、美術館などの文化施設の再開が検討され始めていた矢先のことでした。

 しかし、一方では、かなり危険な状況でもロックダウンにはならないと思い始めている国民は、この程度なら大丈夫であると気を緩めている感もあります。

 ところが、深刻な感染悪化は、この地域だけではなく、フランス国内のいくつかの地域は、これに追いつけ追い越せと言わんばかりの急激な感染悪化の状況を迎えており、先日、南アフリカ・ブラジル変異種の急拡大が確認されたモゼル県(フランス北東部)を始めとする北部の地域や、ダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)などは、すでに感染率も国内平均の4倍以上、先週までは658人だった10万人あたりの発生率は一週間で901人まで上昇し、集中治療室もほぼ満床状態で、2月に入って以来、50人以上の患者が他の地域に移送されている状況なのです。

 ダンケルクの病院責任者は、敢えて集中治療室の占拠率は発表していませんが、もしかしたら、すでにニースを超えた深刻な状況を迎えている可能性もあり、一刻も現在の状態を放置しておくことはできないと語っており、何らかの措置をできるだけ早く取らなければならないとしています。

 感染が悪化しているどの地域にも共通していることは、顕著な変異種の拡大で、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)に入院しているコロナウィルスの患者の二人に一人は、変異種に感染していると発表されています。

 これまでも、他地域では、まだ営業されていたレストランがマルセイユなどの地域限定で営業禁止になったりしたことはありましたが、週末のみとはいえ、地域限定のロックダウンは、パンデミック以来、フランスでは初めてのことで、今後、さらに他の地域でもニースに続くロックダウンの地域が出るのは、ほぼ確実です。

 もはや、フランスは、綱渡り状態から、崖っぷち状態に移行しつつあります。

 

<関連>

「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「ニースがヤバい 国内平均の5倍の感染値」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_21.html 




2021年2月22日月曜日

マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)

  

<彼らがマクロン大統領に依頼されて作った動画><Je me souviens> (clip gèstes barrieres)


 フランス政府は、「あくまでも、ロックダウンは最後の手段」「ロックダウンを回避するために、できる限りのあらゆる努力・試みを行う」という姿勢を貫き続けています。

 それは、コマーシャルセンター内の生活必需品以外の店舗の営業停止であったり、夜間外出禁止や、日常生活においての行動制限に対する取締りの強化であったり、ワクチン接種のスピードアップであったりしてきました。

 これ以上、何ができるのか?と思っていたら、マクロン大統領は、フランスの若者の間で、最も有名なユーチューバー Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)(登録者数630万人)に若者に向けてのソーシャルディスタンスの重要性を訴えかける動画の作成するように、協力を依頼しています。

 当初、エリゼ宮のディレクターから連絡を受け取ったマクフライとカーリトは、よもや、イタズラかデマではないかと疑心暗鬼になり、ディレクターがここが私のオフィスであると、エリゼ宮内の景色を彼らに彼らとの会話中に写して見せている舞台裏の様子もユーチューブにあげられています。

 そして、さらには、その後、彼らは、マクロン大統領自らが、彼らに語りかけている動画を受け取ったのです。


「Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)・マクロンチャレンジの舞台裏暴露の動画」




 マクロン大統領は、この動画の中で、彼らが、医療介護者をサポートするために送った寄付金に感謝を述べ、彼らに対して、新しいチャレンジを提案しています。

 それは、多くの人が、ソーシャルディスタンスを尊重するように促すように訴えかける動画を作成し、その動画の再生回数が1,000万回に達した場合、彼らをエリゼ宮に招待することを約束するものです。

 彼らは、フランスのユーモリスト、ビデオグラファーとして活動していましたが、2016年からユーチューブに参入し、フランスで最も影響力の大きいユーチューバーの一人(二人)として活躍しています。

 彼らは、パンデミック以来、医療介護者をサポートする「Maradon」(マラドン)を立ち上げ、昨年4月に介護者サポートのために行ったユーチューブライブで集めた40万ユーロは、フランス国内の病院に寄付しています。

 彼らは、このマクロン大統領からのチャレンジを受け入れ、21日に公開されるビデオとストリームの収益化を通じて集められたお金を、健康状態に弱っている学生のために協会に送ることを発表しています。

 彼らの人気動画の中には、2500万回以上再生されているものもあり、マクロン大統領が提案している1,000万回再生は、彼らにとって、決して不可能な数字ではありません。

 彼らがこれから作成する動画がどのようなものになるのか、また、どれほどの効果があるのかはわかりませんが、彼らがエリゼ宮でマクロン大統領と共にいる動画もとても楽しみです。

 そして23日、動画アップから3日間で1,000万回再生、達成しました。おめでとう!


 マクロン大統領は、彼らだけではなく、ニュースをグローバルに扱っているユーチューバー HugoDécrypte の取材などにも応じて、動画に出演するなど、若者のメディアにも積極的に参加しています。

 先日のシアンスポ(行政系の特別高等教育機関・エリート養成校)の19歳の学生がマクロン大統領宛てに送った「私たちは、生きながら、死んでいるようだ・・学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙」に対してもマクロン大統領から返事を送っています。

 一学生が送った手紙に大統領が回答するなど、ちょっと想像さえしづらいことです。

 一概に比較できることではありませんが、ユーチューブに自ら呼びかけ、参加して、国民に訴えかけるようなことから、やはり大統領自身が若く、フランス政府全体も若くて、柔軟であることを感じずにはいられません。

 まさか、日本の首相がユーチューバーに呼びかけたりすることなど、ちょっと想像すらできないことです。実際に、前首相が「STAY HOME」を呼びかけようとしてあげた動画は、大バッシングを受ける見当違いのものになっています。

 結果的には、日本よりは、断然、感染状態は、深刻なフランスですが、若い人を巻き込んで国を動かしていこうとしているそんな姿勢は、やはり、好感が持てるのです。

 彼らがマクロン大統領に答えて作った動画。現在、フランス急上昇ランク1位です。

 

<関連>

「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

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2021年2月21日日曜日

ニースがヤバい 国内平均の5倍の感染値

  


 先週は、大寒波が覆っていたフランスは、氷点下の世界から、今週に入って、気温も徐々に上昇し始め、週末には、パリでさえも最高気温が18℃、ビアリッツでは24℃と、春から初夏を思わせる気候となりました。

 気温の上昇、お天気には、すぐに反応するフランス人ですが、久々にやってきたポカポカ陽気に誘われて、人出も多くなり、これまで「あったかい・・」と感じていたマスクが一気に「息苦しくて、暑くて邪魔」に感じられるようになり、マスク率も急降下している感じです。

 営業停止のままのレストランやカフェなどは、お店の前に乗り出して、ビールやワインのテイクアウトを始め、テイクアウトした飲み物を持って、人が集まるという昨年にも見かけたような光景が広がっています。

 昨年、問題になったサンマルタン運河なども川岸には、隙間なく大勢の若者が座り込み、まるで去年の映像を見ているようでした。

 また、パリ6区、サンジェルマンデプレ界隈のRue de Buci(ビュシ通り)なども、日常のような賑やかさが戻ったような人出になり、人混みの中を警察官が練り歩く異様な光景でした。

 むしろ、レストランやカフェの店内に入れない分だけ、通りには、余計に人が溜まっている気がしてしまいます。

 メガホンを持ちながら、「ソーシャルディスタンスを取ってください!マスクをして下さい!」とがなり立て、日も長くなってきて、18時にはなかなか帰宅しようとしない人々を追い立てるのも、一応の規制ではあるものの、18時になるとウィルスが登場し始めるわけでもあるまいし、日中、あれだけの人が出ていることに手が付けられないでいることに、どこか矛盾を感じるのです。

 気温の上昇が見込まれた今週末は、この人出を見込んで、警察官4,000人を動員し、警戒にあたっています。しかし、制限下にあるとはいえ、何の犯罪を犯しているわけでもなく、いつまでも続くこの状況が悲しくなります。

 気温が低下していると活発化するウィルスも気温の上昇とともに、勢いを弱めてくれるのではないかと思いますが、それ以上に人間の行動の方が活発化するので、どうにもおさまりません。

 フランスは、あいも変わらず、毎日、2万人以上の新規感染者が出続けており、依然として、危険な綱渡り状態です。全体の数字は、若干減少しているのでは??などと見る人も出てくる中、感染者のうちの変異種に感染している割合は、確実に増大しており、ほぼ50%近くまで上昇しています。

 それでも何とか、綱渡りが続いていると思っていたら、アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)では、急激な発生率と集中治療室の占拠率の上昇がこれまでの記録を遥かに上回り、ニースでは、10万人あたりの発生率が750件超えになり、(国内平均の5倍の数値)、集中治療室の97%がコロナウィルスによる患者で占められている危機的状況で、いよいよ、地域的なロックダウンが必要ではないか?という声が上がり始め、政府も本格的に検討を開始した模様です。

 とりあえず、ロックダウンか否かの決定より前に、政府は、この地域に向けて、優先的にワクチンを供給することを決定し、来週早々には、この地域の集中的なワクチン接種を強化することを決定しました。

 まさにワクチンとウィルスのイタチごっこです。

 また、さすが? ここまで悪化する地域だけあり、この陽気の良さも手伝って、この深刻な状態にも関わらず、人出が減ることはなく、むしろ、「この地域がここまでの状況になったのには、自分たちの注意が足らなかったのかもしれないけれど、ロックダウンになるかもしれないなら、最後の週末は楽しみたい・・」と外出をやめない人々には、閉口してしまいます。

 これから、3月、4月は、昨年、最も恐ろしい状況に陥ってしまった時期でもあり、変異種の拡大による急激な感染悪化が本当に心配です。

 

<関連>

「コロナウィルスと太陽の誘惑」

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2021年2月20日土曜日

メグジット ヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱 フランス人はイギリス王室の話題が大好き

  


 最近は、ずいぶん変わってきたけれど、例えば、駅などで英語でチケットを買おうとしている観光客が、「ここはフランスなんだから、フランス語で話せ!」などと駅員が冷たくあしらわれているのを何度か見かけたことがあります。

 パリなど観光で多くの収入を得ている街、どこでも英語が通じるようにならなくてどうする?と思うのですが、残念ながら、そうではありません。

 英語とフランス語を比べてみると、読み方が違うだけで、同じ単語も多いので、多分、日本人が英語を学ぶよりもずっと容易いことだと思うのに、なぜか英語を話したがらない人が多いのです。

 彼らは、フランス語に誇りを持っていると同時に、英語が嫌い=アメリカが嫌いなのです。フランス人のアメリカ嫌いは、英語に対する嫌悪というよりも、ある種、アメリカに対する嫉妬に似た感情ではないかと私は、思っています。

 フランス人は歴史、伝統のあるものを尊ぶ傾向が強く、特にある一定の年齢以上の人は、歴史の浅いアメリカを小バカにするようなところがあります。同じ?英語を話す国民でも、フランスにとって、イギリスに対しては、これが当てはまりません。

 それを象徴するように、フランス人は、イギリス王室の話題が大好きです。フランスのように愛国心が強い国民の多い国で、外国の王室の話題がニュースチャンネルで、特集まで組んで、ゴールデンタイムに長々とイギリス王室の話題を放送するのには、ビックリしてしまいます。

 たしかに、お騒がせなニュースが多いイギリス王室ですが、もはやヨーロッパからも離脱した外国の王室の話を延々と報道するのは、それだけ見たい人がいるということです。

 昨日、バッキンガム宮殿が、「ヘンリー王子とメーガン妃のサセックス公爵と公爵夫人などの名誉称号や慈善団体の後援者の役職などは、全てエリザベス女王に一度、返上され、これらは、今後、他の王室メンバーに、あらためて分配され、ヘンリー王子とメーガン妃は王室のメンバーには戻らない」と発表したことから、フランスのメディアは、ブレグジットをもじって、「メグジット」と発表。

 つい先日、メーガン妃が第2子を妊娠したことも騒いでいましたが、さすがに今回は、本格的な王室離脱にさらにヒートアップしています。

 「メグジット」などと、メーガン妃と結婚したことによって、王室を離脱することになってしまったように報道されていますが、複雑な環境で育ったヘンリー王子が、王室を離脱することになったのは、メーガン妃との結婚が拍車をかけたことは否めませんが、もともと彼の中にあった王室への反発であったような気もします。

 フランスのメディアは、彼らの出会いから、結婚、そして、結婚後の王室内のいざこざなどを様々な王室周辺の側近者を証言者として取材しながら、「メグジット」までの経緯をドキュメンタリーにまとめています。

 たしかに、王室のセレモニーは、いかにもフランス人が好きそうな、伝統的な美しいセレモニーで、また、王室内のメンバーは、チャールズ皇太子とカミラ夫人の不倫問題やダイアナ妃がパリで亡くなったり、世代を超えて、お騒がせでスキャンダラスな話題が尽きることがありません。

 フランスには、王室はありませんが、イギリス王室のような伝統的で威厳のあるものへの畏敬の念がフランス人の中にはあるのかもしれません。

 こうして見ていると、イギリスという国は、今やEUからも離脱してしまった外国でありながら、フランスにとっては、特別な国なのかもしれません。ロンドンなどに行くと、気がつくと周りにはフランス語がたくさん聞こえてきて、思わず「ここは、ロンドンだったよね・・」と確認するほど、フランス人がたくさんいることに驚かされます。

 正確な数字はわかりませんが、おそらく、ロンドンにいる観光客の中でフランス人は、相当な割合を占めているのではないかと思います。 

 たしかにユーロスターでパリ・ロンドン間は2時間半ほどで行ける身近な外国。人気があるのも頷けますが、それは単に、距離的な問題だけではないような気がします。

 自らの歴史で王室を崩壊させたフランスが、イギリス王室の話題が大好きというのも、なんとも皮肉な話ではないかと思うのです。


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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」

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2021年2月19日金曜日

長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG

   


 コロナウィルスによるパンデミックが始まり、約1年が経とうとしています。その間、感染が拡大したり、ロックダウンや夏に向かう気候にも助けられて、一時は減少したりしましたが、秋から冬にかけて、気温の低下とともにウィルスは再び活発化して、感染が拡大し、第1波、第2波、第3波と何回もアップダウンを繰り返しながら、ウィルス自体も変化しながら拡大を続け、オリジナル?のコロナウィルスから、現在、フランスは、当初のコロナウィルスよりもイギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異種が確実に拡大し始めていることに脅威を抱き、警戒を緩めることはできない状態です。

 しかし、ここへ来て、変異種の拡大とは、別に、コロナウィルスに感染した場合に症状が長期にわたって続いている症例が多く報告され、COVID LONG(長期コロナ感染症)として注目され始めました。

 フランスでは、感染者の10%〜15%がこの症状に苦しんでいると言われています。

 最近のコロナウィルス感染患者は、入院しても、当初よりも入院期間が比較的短期で退院が可能になるケースが増えてきており、軽症の場合は、2週間程度、重症でも3週間程度の入院で済む(もちろん、さらに長期入院の人もいる)とされています。

 しかしながら、ある程度、回復しても、一旦、おさまった症状が、数ヶ月後に再び現れたり、退院後も倦怠感、胸の圧迫感が続いたり、少し経ってから、再び、味覚の変化、消化器疾患、吐き気、手足のふるえ、凍った手、体の特定の部分の灼熱感、悪寒、脱毛など、人により、様々な症状があるものの、これらの症状が一時的にひいてはまた、しばらくすると、症状を繰り返す、長期コロナ感染症に苦しみながら生活している人がかなり多いことがわかり始めてきたのです。

 ある27歳の若い女性は、昨年の3月に一度感染して以来、胸部、腹部、全身の筋肉の痛みが継続しており、この約一年の間に、一部の症状が消えると他の症状が現れるという状態が続いていると言います。

 最初の感染での治療終了後は、症状が変化するたびに、PCR検査を受けても、検査結果は陰性なのです。

 もちろん、これらの症状が再感染によるものである場合もあるのですが、彼女のように、検査を行っても陰性であるケースも多く、これは、感染時に身体そのものにダメージを負ってしまっているケースに見られているもので、コロナウィルスが呼吸器、脳、心臓・心臓血管系、腎臓、腸、肝臓、皮膚など、身体のあらゆる部分に影響を及ぼしている結果であるということがわかってきています。

 これは、感染した際に重症化した場合だけでなく、軽症で済んだと思われていた人にも、同じように起こる可能性があることがわかり始めており、あらためて、コロナウィルスの恐ろしさを突きつけられている感じです。

 この長期コロナ感染症は、長期間にわたる後遺症とも言える症状ではありますが、後遺症が一定の症状が継続する一方、この長期コロナ感染症は、症状が治ったり、数ヶ月後に再び現れる波のような症状を繰り返し、軽症者にも見られる症状だけに、ますますタチの悪いものであるとも言えます。

 感染が増加したり、減少したりしながら、パンデミックが長期化していることから、表面化し始めた、この「長期コロナ感染症」へのケアについて、フランス国会は政府に対し、「適応ケアパス」を開発し、職業(仕事)にも影響する病気としての治療の可能性を拡大することにより、深刻で長い形態のコロナウィルスへの対応を強化するように求めています。

 それにしても、次から次へと恐ろしい威力を発揮し、進化し続けるコロナウィルス。軽症とて、決して侮ることはできず、とにかく、かからないに越したことはないようです。


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「深刻なコロナウィルスの後遺症 求められる早期の段階の治療」

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2021年2月18日木曜日

フランス人は想像以上に日本を知らない


Poulet karaage, riz et légumes cuisinés
フランスの冷凍食品PICARD(ピカール)で売っているどう見てもフライな鳥の唐揚げ


 まさか、さすがにフランス人で「日本」という国を知らない人はいません。しかしながら、日本はアジアにある国の一つの島国で、ある程度、豊かな国であり、なんとなくのそれなりのイメージがあるだけで、実のところは、フランス人は一部の人(アニメ・漫画・YouTubeなどで日本の魅力に取り憑かれている人など)を除いて、日本のことは、よく知らないのが実際のところで、思った以上に日本のことは、知られていないんだな・・と思うことがよくあります。

 最近は、コロナウィルスのおかげで、「みんながマスクをする習慣がある国・・」という印象が強いようです。

 この間、銀行に行った時に、担当をしてくれた女の子に、「バカンスには、行かないの?」と聞いたら、「行きたくても、どこへも行けないし・・」と言うので、「私も日本でさえ、自分の国なのに、もうずっと行けていない・・」と言ったら、「日本は、コロナウィルスはどうなの?」と聞くので、「フランスよりは、全然、感染者も少ないよ・・」と答えたら、「そうよね・・日本は、コロナウィルスの前から、みんながマスクをしてる国だもんね・・」と言われてびっくりしました。

 マスクの有効性が語られる時、フランスのメディアは、日本を始めとして、マスクをする習慣のある国々は、感染拡大が抑えられていると日本を例に挙げて話したりするので、それが拡大解釈されている模様です。

 私自身が初めてヨーロッパに来たときは、やはり実際に生活してみて驚いた発見もたくさんありましたが、きっとフランス人が初めて日本に行った時の衝撃の方が大きいと思うのです。

 今は、知ろうと思えば、ネットでいくらでも情報は収集できますが、日本人がフランスに来る以上に、実際の日本の風景や日本人の生活は、フランス人の想像を超える異文化、異次元の世界なのだろうと思います。

 今は特に、あの清潔な環境が日本では日常であることを、私は、全てのフランス人に知ってもらいたい気持ちでいっぱいです。

 私自身、たまに帰国する度に、空港から家に向かう車から見えるぎっしりと建っているビルや人混みに目がまわりそうな気分になることもあります。

 パリはフランスの中では大都会ではありますが、所詮、東京などに比べれば、山手線のなかに入ってしまうほどの小さい街、すっかり田舎者になったものだと実感させられます。

 身近なところでは、最近、一段と増えたフランスでの日本食は、誤解に満ちたものも多く、時として、「えっ???」と思わされるものもなかなかあります。

 TEMPURA(天ぷら)と書かれたものが、実は、エビフライであったり、TEPPANYAKI(鉄板焼き)と言うものが、焼きそばだったり、冷凍食品のコーナーで、日本食を見つけたりすると、そのあまりにすぐわかる間違い探しが面白かったりします。

 しかし、日本人としては、間違った日本の文化がそのままフランスに伝わっていくのかと思うと微妙な気分でもあります。

 とはいえ、ここ数年(といってもここ一年は除く)は、日本へ観光に行くフランス人は、驚くほど増え、日本へ行くたびに日本行きの飛行機はほぼフランス人で埋まっていて、身近な人でも、友達で日本へ行った人がいて、ものすごく日本人は親切で、どこに行っても綺麗で、ぜひ、自分も日本に行ってみたい!という人が大勢いて、私が日本人だということもあって、日本を褒めてくれることもあるのでしょうが、よく知らないとはいえ、概ね日本のイメージはすこぶる良いことに気を良くしているのであります。

 以前に会社にいた若くてかわいい中国人の女の子が、フランス人に声をかけられると、「日本人じゃないの?とガッカリされるけど、どうしてだろう?」と素直に聞かれたことがあって、ちょっと答えに困ったけれど、内心、中国よりも日本の方が印象がいいのだな・・と思ったりもしました。

 反面、日本人もやたらとフランスを美化して誤解している点もままあるので、結局はお互い様かもしれません。

 いずれにせよ、早くコロナウィルスが収束して、またたくさんのフランス人が日本へ行けるようになって、本当の日本に触れて、もっとフランス人が日本を知ってくれる日が来ることを祈っています。


<関連>

「日本はフランス人になぜ愛されるのか? フランス人は日本をどう見ているのか?」

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2021年2月17日水曜日

緊急事態宣言で感染が減少する日本と、より厳しい制限下でも変わらないフランス

      


 はじめから、桁違いと言えば、それまでですが、日本も年末年始にかけて、感染状況が悪化し始めて、日本での2度目の緊急事態宣言が敷かれたのが、1月7日でした。

 それからもしばらく感染状態は悪化していたものの、1月19日前後にピーク?を迎え、それ以降は順調に感染状況も減少し、ほぼ一ヶ月で、12月上旬程度の感染状況にまで戻っています。

 それに比べてフランスは・・日本よりもずっと厳しい規制が続いているというのに一向に感染者は減りません。

 減らないどころか、変異種がどんどん拡大し、先日、一週間で500件近くも南アフリカ・ブラジル変異種が検出されて、危機感が高まっているモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、今や感染者の50%は変異種によるものに拡大しています。

 日本の緊急事態宣言は、飲食店の営業時間の短縮(午後8時まで)、不要不急の外出自粛、イベントは最大5000人かつ、収容率50%以下に制限という今のフランスから見たら、夢のような世界です。

 フランスは、営業時間短縮どころか飲食店は、もう何ヶ月も閉店(テイクアウトのみ)、美術館や劇場、映画館でさえも、ずっと閉鎖状態、コマーシャルセンター内などは、生活必需品以外の店舗は全て営業禁止です。

 外出も午後6時まで、6時までに家に帰ればければ、正当な理由(外出証明書)がなければ、135ユーロ(約17,500円)の罰金です。

 こんな日本よりもずっと厳しい制限下にありながら、フランスの感染者は一向に減らないのです。

 おかしなことに、感染者が減少しないことよりも、ロックダウンをせずに爆発的な感染に至っていないことをフランスは、誇りに思っているようなところがあります。(実際には、もうすでに充分、爆発状態だと思うけど・・)

 私は日本人なので、ついつい日本の状態と比べて、フランスは、ホントにだめだな・・とため息が出てしまうのですが、もともと、レベルが全く違い、比較するのもおこがましいのです。

 わかりやすく言えば、以前、麻生太郎氏が「おたくらの国とは民度が違う」と発言して、炎上したことがありましたが、まさにそれ・・彼の言い方や言うタイミングなどは、問題もありますが、彼の言っていたことは正しい・・まさに民度が違うのです。

 自分を律することができず、衛生に気を配り、他人を思いやり生活することができない人が多すぎるのです。ことに衛生観念のレベルの低さは、致命的です。さすがにマスクこそ今では、定着していますが、ちょっと興奮した状態に陥れば、途端にマスクをしない人もチラホラし始めます。

 また、悪いことに先週は、フランス全体を大寒波が襲い、一週間、日中でさえもマイナス6℃〜7℃という氷点下の世界・ウィルスの活性化する気温の低下です。その上、雨や雪が続く天候で、セーヌ川を始めとする、川の氾濫による洪水の被害に見舞われ、避難生活を強いられる人々が続出しました。

 フランスは、もうすでに長引いている厳しい制限下の生活にも慣れ始め(嫌気がさしているともいう)、なんとか厳しい制限の目をかいくぐって、旅行したり、移動したりする人がここ数週間で倍増しています。

 同じ人間なんだから、日本のような制限で感染は減少させることはできるはずなのに・・それができないフランス・・比べても仕方ないと思いつつ、緊急事態宣言の成果がきっちり現れてくる日本はやっぱりスゴいな・・と思うのです。


<関連>

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

「フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_13.html

 






2021年2月16日火曜日

パリ17区での塩酸による日本人襲撃事件に対するフランスの扱い

  


 先週、パリ17区で在仏日本人が塩酸をかけられた事件は、フランスで起こったことなのに、大きく報道されることもなく、疑問に感じていました。

 それが日本人だと知って狙われたものだったのか? アジア人だと思って狙われたものなのか? 個人的な恨みによるものだったのか? それとも無差別テロのようなものだったのか?は、わかりませんが、いきなり不審な人が近付いてきて、顔に塩酸をかけるというのは、いくら治安が悪化してきているパリとて、そうそうあることではなく、一般市民にとっても、恐ろしい事件であることに変わりはありません。

 そんな事件がなぜ?騒ぎにならないのか不思議でなりませんでした。

 それが、ようやく今になって、仏・フィガロ紙の一部に掲載されたのですが、その掲載の仕方が事件そのものよりも、見出しからして、「パリ・日本大使館が在仏日本国民に対して、日本人が受けた塩酸襲撃事件を警告」というもので、事件そのものを追求したものではなく、日本大使館が在仏日本人に対して警告メールを送ったこと、そして、そのメールの内容を紹介しただけの内容が主でした。

 また、この被害者家族が警察に被害を申し立てたところ、本人不在のため、被害届は提出できず、幸いなことに被害者は軽傷を負っただけであり、更なる法的手続きは望んでいないと記されていました。

 また、このフィガロ紙の報道に対して、パリ17区の区長はツイッター上で、「あれは、特別アジア人を攻撃したものではない。被害者本人が軽傷であるため、警察に訴えることを望んでいない。警察は捜査を続ける。」とコメントを発表しています。

 フィガロ紙の取材に対して、日本大使館は被害者側が事件の詳細な説明を望んでいないために、彼らの意思を尊重して詳細は公表しないとしていますが、一度は被害届を出しに行ったのに、結局は、被害届が正式に出されていないことは、警察側に軽傷だからとまともに扱われなかったか? それとも、被害者が事件が公になって、犯人側の報復行動を恐れたのか? しかし、日本大使館には、報告されている・・どうなっているのか、不可解です。

 17区の市長のコメントも、犯人が捕まったわけでもないのに、なぜ?「特別にアジア人を攻撃したものではない」と言い切れるのか? 全く納得が行きません。

 また、「被害者本人が軽傷であるため、警察に訴える事を望んでいない」と言葉どおりに受け取ることも、軽傷で済んだ事を傘に、曖昧に流して、事を済ませようとしているという印象が否めません。

 どちらかというと、家族が訴えを出しに行ったものの、軽傷であったために、警察がまともに受け取ってくれなかった・・そんな気がしてなりません。

 日本人は大人しく、あっさり引き下がったり、黙って我慢すると思われがちですが、被害はしっかり訴えるべきです。

 言葉の問題や、押し出しがどうしても弱い日本人からしたら、警察に、あっさりと被害を受け付けてもらえない場合にゴリ押しがしにくいのもわかりますが、そんな時は、身近なフランス人に付き添ってもらったりすることが必要な時もあります。

 フランス社会では、トラブルに対しては特に、フランス人対フランス人の場合は、コロッと対応が違うことも多いのです。

 今回は幸いにも軽傷で済んだだけであって、タイミングが少しでもズレていたら、大惨事となっていたのです。

 そして、その犯人は、今もパリの街のどこかに平然と生活しているのです。このままでは、第2、第3の事件が起こる可能性が潜んでいるのです。

 先日、パリの15区で起こった14歳の少年への過激な暴行事件の際には、フランス人の母親が堂々とテレビのインタビューに答えて、自らマイクを握って、被害を訴えたのはとても印象的でした。

 ところが、アジア人に対する事件に関しては、この曖昧な感じで、事件が風化されて終わってしまうことが多いのです。

 被害にあって弱っている時に、辛いことではありますが、このような凶悪犯罪に対しては、少なくとも警察にしっかり訴えを出すことは絶対にしなくてはなりません。強く出なければ、フランスでは、警察でさえも味方になってはもらえないのです。

 日本大使館の注意喚起も、ただ、「周囲の環境に注意を払ってください」というだけでなく、被害に遭った場合は、被害届をしっかり出すこと・・というのを付け加えて欲しいです。


<関連>

「パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/17.html

「日本人は、黙って我慢すると思われている」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_4.html


 


2021年2月15日月曜日

フランス保健省 各病院に危機管理体制通告

  


 年が明けて、クリスマス・年末年始の人が集まった結果を警戒していたフランスは、ビクビク怯えながら、年明け早々には、ワクチン接種が周囲の国々に比べて極端に遅れていることが発覚して以来、ワクチン問題で大騒ぎになっていました。

 ワクチン問題とともに、感染の爆発状態には、ならないものの、毎日毎日の新規感染者は、25,000人前後、集中治療室の患者数は、3,300人前後とジワジワと増加を続け、政府からの会見があるたびに、いよいよ3度目のロックダウンか?とドキドキしながら過ごしてきました。

 実際に感染症の専門家達は、ロックダウンの必要性を叫び続ける中、フランス政府は、頑として「あくまでもロックダウンは最後の手段」「ロックダウンをせずにできることは全てやる」という姿勢を崩さないまま、夜間外出制限を18時に前倒しにしたり、コマーシャルセンター内の生活必需品以外の店舗を営業停止にしたり、それらの取り締まりを強化することで、爆発的な感染拡大を現在までは、何とか回避してきました。

 2月に入ったあたりから、イギリス変異種を始めとする南アフリカやブラジル変異種の拡大が顕著になり始め、綱渡り状態の綱がだんだん細く、貧弱になっている感があります。

 ここへきて、今のところ、すぐにロックダウンには、ならないものの、フランス保健省が全国の各病院、クリニック宛に、「危機管理体制」への準備を2月18日(木)までにするようにという通達を出したことが明らかになっています。

 「危機管理体制」とは、具体的には、病院においての急激なコロナウィルスによる患者の増加に備えて、病床を増やすことや、以前から予定している緊急を要する手術以外の手術予定の組み直しをして、感染爆発状態の病院受け入れ体制を取り始めたということです。

 このところ、毎週木曜日に行われる政府からの会見では、依然として大変深刻な状態であることが発表され続けていますが、いつでもロックダウンする準備はあるとしつつも、制限が少しずつ強化されたり、検査を拡大したり、ワクチン接種をさらに急ぐというような対応策の発表のみで、最近は、世間も一時のように今すぐにでもロックダウンになるかもしれないといった気配が薄れつつありました。

 しかし、政府が病院宛に具体的な日付指定でこのような通達を出すということは、この綱渡りの状況が、さらに深刻な状態に陥っているということに他ならない事実です。

 私の母は拡張型心筋症という病気で亡くなりましたが、死後、解剖した結果、想像以上に心臓が肥大しており、「普通の人がいきなりこの心臓の状態になった場合は窒息するほどの苦しさであったでしょう」と言われて、驚いたことを思い出しました。

 母の場合は、病気が発症してから10年をかけて、徐々に悪化していったので、心臓の苦しさに少しずつ慣れていったので、恐らく母はその窒息するような苦しさにも慣れながら生活してきたのであろう・・と。

 今のフランスの状態は、それと似たような状況ではないかと、ふと思ったのです。爆発的ではないとはいえ、徐々に悪化している感染状況も、考えてみれば1日2万5千人の感染者が出て、一週間に2,500人近くの人が亡くなっている状況は、すでに、充分に爆発状態であるのです。

 具体的な危機的な状況全てが、公になることはありませんが、政府が分析している数字は、病人の大量増加に備えての病院の体制を組み替えることを通達するほどの状況になっているのです。

 ロックダウンにならずとも、今のフランスは、綱渡りの綱が切れそうな状況であることを自覚しておかなければなりません。

 昨年3月、4月の悲劇が、同じ時期に、繰り返されるかもしれません。


<関連>

「コロナウィルスによる医療崩壊の事実と社会の崩壊の危機に直面するフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_23.html

 

2021年2月14日日曜日

南アフリカ変異種による再感染患者の重症例が示しているもの

  


 ここのところ、南アフリカ変異種の拡大がモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)での感染が多数検出されたことから、不安視されていますが、この南アフリカ変異種が恐れられている理由の一つに「再感染」が可能であることが挙げられていました。

 これまでにも、イギリス、南アフリカ、ブラジルの変異種による再感染の症例はすでに科学文献に記載されていますが、ほとんどの場合、2回目の感染は最初の感染よりも重症度が低くなるというのが定説とされてきました。

 ところが、フランスで、南アフリカ変異種に再感染した58歳の患者が重症化したケースが発表され、これまで「2回目の感染は、重症化しにくい」という説が崩された結果となりました。

 喘息の病歴を持つこの男性患者は、発熱、中程度の呼吸困難を訴え、昨年9月にコロナウィルス陽性と診断されて入院しましたが、症状は、数日内におさまり、12月には、2回に渡るPCR検査の結果、陰性と診断されています。

 ところが、今年の1月に入って、彼は再び発熱と呼吸困難のため、パリ近郊のコロンブにあるルイ=ムリエ病院(AP-HP)の緊急治療室に再入院しました。

 彼のPCR検査は再び陽性であり、遺伝子配列決定は南アフリカの変異体に特徴的な突然変異の存在を示していました。

 彼の症状は再入院の7日後に急性呼吸窮迫症候群を発症し、挿管して生命維持装置に繋がれる重篤な状況に陥りました。

 彼の再入院時に行われた、血清学的検査は、過去の感染を証明する抗体の存在を検出していますが、これは、最初の感染後に免疫が変化したため、南アフリカ変異種による再感染を防ぐことができなかったことを示しています。

 パンデミックの発症から1年後、コロナウイルスに対する免疫の持続期間は依然として、はっきりとしたことがわかっていませんが、ここ数ヶ月でより伝染性の高い変異体の出現によってさらに、免疫に関する疑問は拡大しています。

 それらの変異種の中でも、南アフリカ変異種は特に懸念されています。また、この特定の遺伝的特徴のために、ワクチンの有効性を減少させる可能性も孕んでいます。(実際に南アフリカでは、アストラゼネカのワクチン接種を保留しています)

 免疫があるにもかかわらず再感染するという恐ろしい状況ですが、幸いにも現在、世界中で接種が開始されているワクチンは、免疫を作るというワクチンではなく、RNAという遺伝物質を人工合成して作られているワクチンで、体内の細胞を抗ウィルス薬を製造する細胞として利用するというものです。

 そのため、たとえ、免疫が変異種の再感染を防ぐことはできないとしても、ワクチンの有効性に影響を及ぼすとは考え難いのですが、変異種のウィルス自体がワクチンにより作られた体内の細胞を使って作られた抗ウィルス薬が太刀打ちできない強力な威力を持っているとすれば、また別問題です。

 こうしている間にも、また別の変異種が出現しないとも言えないことを考えると、まだまだこのワクチン開発とウィルスの発達や変異とのイタチごっこが続くのかもしれません。


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「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

2021年2月13日土曜日

パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生 

   

  

 「2月10日(水)夕刻、パリ17区の公共空間において、邦人被害者が友人と3人でいたところ、フードをかぶり、下を向いて歩いてきた3人組(男女不明)から、いきなり顔に向けて液体強酸をかけられるという傷害事件が発生しています」というメールが在仏日本大使館から届きました。

 この事件は、現在のところ、フランスの一般メディアでは一切報じられていないので、詳細やその後の捜査については、わかりませんが、つい先日もパリ15区のボーグルネル(特に危険だと見られていなかった地域)で14歳の少年が10人前後の暴漢から酷い暴行を受けて重症を負うという事件が起こったばかりだったため、パリの治安の悪化を再び思い知らされた気がしました。

 この被害者は、近くに見えた不審なグループに警戒をしていたものの、グループのうちの一人が液体の入ったボトル(工具店などで普通に購入できるもの)を取り出した瞬間に危険を察知し、手で顔をガード。幸にして顔には液体はかからなかったものの、掌に火傷を負ったため、すぐにその場を避難した後に医者の診断を受けたところ、火傷は塩酸によるものであることが判明。もしも、塩酸が目に入っていたら、失明などの取り返しのつかないことになっていました。

 怖い!怖すぎます!

 これが、無差別テロのようなものなのか、個人的な恨みによるものなのか、アジア人狩りとも言われるアジア人を狙っての襲撃なのかわかりませんが、いずれにしても同じ日本人の被害にとてもショッキングな事件です。

 いきなり見ず知らずの人に塩酸を顔にかけられるのですから、こんなに恐ろしいことは、ありません。なぜか、ちょっと危険な雰囲気を醸し出して歩いている人は、必ずヨットパーカーやトレーナーのフードをかぶって歩いているのです。

 この事件で、これから以前にもまして、フードを被っている人を警戒するようになります。ところが、こういう人、結構、多いのです。しかも、最近は、皆マスクまでしているので、怪しいと思えば、ますます怪しく見えてきます。

 コロナウィルスが発生し始めた昨年2月頃から、ウィルスが発生した震源地の中国を疎ましく思う気持ちからか、フランスでは、アジア人差別や「アジア人狩り」なる動きが起こっており、一時は、「全ての中国人を攻撃せよ!」などという呼びかけがSNSで出回り、中国人だけでなくアジア人全体が攻撃対象になり、街中でコロナウィルス扱いを受けて、暴言を吐かれたり、暴力を振われたりした事件が相次いだのです。

 この恐ろしい「アジア人狩り」の動きには、パリ検察庁なども捜査に乗り出し、沈静化したように思われていたのですが、決して根絶したわけではありません。

 もしかしたら、今回のこのパリ17区で起こった傷害事件もこの「アジア人狩り」の一端であった可能性もないわけではありません。

 2019年2月には、メトロ11号線で、2日後には、1号線内において、乗客が硫酸をかけられて重症を負うという事件が起こっていますが、この手の犯罪は、あまり多い事件ではありません。

 とはいえ、現在は、長引くパンデミックによるたくさんの制限の中で生活を続けなければならないストレスから、精神的に不安定になっている人も多いため、攻撃的な暴力を伴う犯罪は増加しています。

 しかし、なぜ、このような危険な事件をフランスのマスコミが取り上げないのか?公にならないのか?は疑問です。日々、犯罪が多発しているフランス、マスコミが事件を追い切れていないのかもしれません。

 もしも、被害に遭った場合、恐れずに声をあげることも必要です。ツイッターでもインスタでもいいから、SNSを使って、被害を受けたことを世間に訴えることが必要です。これにより、犯罪が公になり、警察・検察がようやく本格的に捜査を真剣に進めてくれることにも繋がります。

 犯罪が多発するフランスで、よほどの犯罪でなければ、徹底的に捜査されることはなく、多くの犯罪に埋もれていってしまうのです。そのことが犯罪をのさばらせる悪循環となっています。

 とはいえ、日本大使館がこのような事件を知らせてくれるのは、とても心強いことです。大使館は、このような事件に関することだけでなく、フランス国内での日々、更新される生活制限・渡航制限などに関するニュースなども、オンタイムですぐにメールで知らせてくれるので、とても助かっています。

 在留届を出して、登録すれば、このようなニュースが自動的に送られてくるので、海外で生活されている方は、登録されることをおススメします。

https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/zairyutodoke.html

 この場を借りて、日本大使館のメールを送ってくださる方、いつもありがとうございます。


パリ・日本人塩酸襲撃事件 

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「コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post.html

「災害に免疫のないフランス人がパニックになり、アジア人全体を傷つけている」




2021年2月12日金曜日

フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大

  


 フランスでは、イギリス変異種に引き続き、南アフリカ・ブラジル変異種の感染拡大が心配され始めています。

 イギリス変異種は、その威力を拡大し続け、先週は、感染者全体の15%程度であったものが、今週には、20〜25%にまで拡大しています。

 そして、さらにモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、ここ4日間に南アフリカ、ブラジル変異種が300件も検出されており、さらに過去を遡れば、これに加えて200件(つまり合計500件以上)が検出されています。

 このモゼル県での変異種拡大については、ことに心配されているのは、この感染拡大が、海外旅行によるもの、あるいは旅行者からの感染でもなく、クラスターによる感染でもないことで、感染経路が全く不明の状態で、これだけ拡大してしまっていることです。

 南アフリカ・ブラジル変異種に関して、フランス政府がことさら心配しているのは、この変異種は伝染性がこれまでのウィルスに比べて、より伝染性が高く、再感染が可能なことです。しかも、ワクチンの有効性が低いというのですから、余計にたちが悪いウィルスです。

 また、このモゼル県の例を見てもわかるように、感染拡大の経路がわからないことからも、感染のシステムが掴めないことも、この変異種の不気味なところです。

 どこから来たかわからない・・でも、急に湧き出したように、気がついてみたら、こんなに感染者がいた・・そんな感じです。

 これらの変異種の特徴の一つが比較的、年少者・若い世代の間で感染が広まりやすいということから、モゼル県では、小学校、中学校、高校、大学など、全ての学校が12日(金)から閉鎖されることになりました。

 また、全国的にも地域ごとにバカンス明けを迎える全ての小学校において、唾液検査を大規模に展開し、一般化していき、週20万件のテストを行っていく方針を発表しています。

 これまでの鼻咽頭検査と違い、小さな子供にとっても不快感が少なく、受け入れやすく、検査の整合性もこれまでの検査と比較的遜色がないため(実際には、3%〜13%低下)に採用された模様です。

 いずれにしても、今後の感染拡大で最も心配されるのは、イギリス、南アフリカ、ブラジル変異種の感染拡大で、これまでも、昨年末から年明けにかけて、深刻な感染爆発を起こしている3カ国(イギリス、アイルランド、ポルトガル)は、いずれも変異種の影響を大きく受けている国であることがわかっています。

 すでに、年末から厳しいロックダウン状態が続いているヨーロッパの国々も次々とロックダウンの延長を発表しており、昨日もドイツが3月7日までのロックダウンを延長しましたが、ドイツが1日の新規感染者がかなり減少し、1万人を切った状態の現在でさえもロックダウンを延長するのは、このいくつかの変異種の感染拡大を恐れてのことだと言われています。

 ドイツは、昨年の3月から、コロナウィルス感染対策に対して、常にフランスでは注目されている存在ですが、現在は、非常に危険な状態を続けながらも、極力ロックダウンを避ける方針を取っているフランスとは、全く違う「厳しいロックダウンを続けて、感染をとことん減少させていく」体制を取っています。

 一度ロックダウンしてしまえば、下手に解除をすれば、これまでの努力が一瞬にして水の泡となってしまう可能性があり、ロックダウンせずに高い感染状態のまま綱渡りしていれば、ひとたび感染爆発が起これば、危機的な状況を生む可能性を孕んでいます。どちらにしても究極の選択です。

 ロックダウンを行っている周囲のヨーロッパ諸国は、当然のことながら、新規感染者はかなり減少してきており、昨日の段階では、ロックダウンをしないフランスは、新規感染者数は相変わらず、2万人以上というヨーロッパでトップの座を奪還しています。

 感染が減少してきている国々でさえ恐れている変異種に、この状況でフランスが再感染も可能であるという変異種の拡大を特別に警戒するのは当然のことです。

「ロックダウン回避するためにできることは全てやる!」と必死に頑張っているフランス。この危なっかしいギリギリの綱渡り状態で、いいかげん、よくねばるなぁ〜と半ば感心しつつも、次から次へと登場する変異種問題にハラハラさせられっぱなしです。


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「世界中が警戒しているイギリス変異種」

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「他国の感染悪化を余裕で語るフランスに唖然とする」

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2021年2月11日木曜日

娘の日本への留学・再びキャンセル 日本の国立大学は4月以降の留学生を受け付けない

  


 本当なら、我が家の娘は、昨年の9月から、日本の国立大学の大学院に半年間、留学する予定になっていました。

 彼女の通うグランゼコールの最後の1年間は、ほぼ、海外でのスタージュや留学での予定で埋められていました。ところが、このコロナウィルスによるパンデミックにより、予定は、大幅に狂ってしまいました。

 海外留学を予定していた人の多くは、ここ1年間の世界の変わり様で、予定を変更せざるを得なくなった人が多いと思います。

 留学といえば、人生においてのなかなかの重大イベントです。留学する決断をするということも、なかなか勇気のいる決断ですが、それを諦めなければならないというのも、なかなかショッキングなことでもあります。

 前回の9月からの留学のキャンセルは、本当にギリギリまで返事を待って、「到着便、時間を知らせてください」という連絡をもらって、慌ててチケットをとってから出発2週間前になってのまさかのドタキャンで、せっかく取ったチケットもパーになり、その対応の悪さに怒りまくりました。

 その際に、9月からの留学はキャンセルになりましたが、一応、延期という形になり、4月からの留学ということに変更してもらっていたのです。

 ところが、1週間ほど前に、4月からの海外からの留学生は、受け付けませんという連絡が入り、娘の日本への留学は、キャンセルになってしまいました。

 現在の世界の感染状況や感染対策の仕方を見ていると、仕方ないとも思うのですが、彼女は日本人でもあり、72時間前までのPCR検査をして、2週間の隔離生活を過ごせば、普通に日本で生活している人とは、同じ条件になるのに、何で受け入れてくれないのだろう?と、日本の大学側の判断をとても残念に思っています。

 今回は、早めに知らせてくれただけ、まだマシですが、オリンピックの開催中止は決まっていないのに、留学生の受け入れ中止は早々に決めてしまうことも、少々、恨めしく思います。

 彼女は、日本人でありながら、日本には何回も行ったことはあっても、日本で生活したことはなく、長年に渡って、日本への留学やスタージュ(インターンシップ)の機会を探ってきていましたが、どうにも日本の大学も企業も、留学生やスタージュの受け入れに対して、あまり積極的ではありません。(特に企業でのスタージュ・インターンシップに関しては、その位置付けもヨーロッパとは、どうも観念的に違う印象)

 私は、フランスに留学したことはないので、詳しいことはわかりませんが、周囲の人から聞こえてくる話からは、奨学金、健康保険、住宅費援助など、海外からの留学生に対して、フランス政府は、とても寛大です。

 娘は、昨年、夏は、3ヶ月間、イギリスの大学の研究室でスタージュの予定にしていましたが、これも現地には行くことができませんでした。しかし、イギリスの大学は、リモートワークを受け入れてくださり、内容には、多少、変更があったものの有意義な3ヶ月を過ごすことができています。

 日本の大学は、リモートさえも受け入れてくれない模様で、とてもがっかりしています。

 このパンデミックによって、学業、就職などのタイミングに直面していた人の多くは、人生の重大な局面で、色々なことを断念せざるを得なくなってしまった人、予定が狂ってしまった人が大勢いると思います。

 特に人生の重大な転換期にこのパンデミックに遭遇してしまった人々はどれだけ悔しい思い、また不安な思いをしているかと思うと、単に気の毒という言葉では片付けられない気持ちです。

 娘にとっての学生の期間での最後のタイミングに控えていた彼女の念願であった日本への留学も、もうこれ以上先には延期することもできずに、完全に断念して、他の道を考えなければなりません。

 しかし、これも自分ではどうにも変えようのない現実で、これを機に彼女が日本への留学の代わりに選ぶ道が、「結局は、日本へ行くより良かったじゃない!」と言えるような道が開かれることを親バカな私は、ひたすら祈っているのであります。


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「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

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2021年2月10日水曜日

このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか? コロナウィルスによる死亡者8万人突破


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ワクチン接種よりも肉体美が話題を呼んだオリヴィエ・ヴェラン保健相


 昨日のテレビ番組のインタビューに応じたオリヴィエ・ヴェラン保健相が、現在のフランスの感染状況や感染対策について、「現在も非常に危険な状況にあることに変わりはないが、現在は、コントロールが不可能な感染拡大や医療崩壊は起こっていない」「このまま、ロックダウンしないまま、乗り切れる可能性もある」と発言したことが、大変な反響を生んでいます。

 また、ようやく承認され、接種が開始されたアストラゼネカのワクチンが南アフリカ変異種に対応しないために、南アフリカでのアストラゼネカのワクチン使用を停止になった騒ぎに対しては、自らがアストラゼネカのワクチン接種を行っているところを公開し、フランスでのワクチン戦略は変更しないことを明言しました。

 しかし、この大臣のワクチン接種は、アストラゼネカのワクチンの有効性云々以上に、ワイシャツを左半身脱いで、また、半身を隠した様子が妙に色っぽいとか、なかなか鍛えられた美しい肉体だとか、ワクチンそのもの以外の思わぬ方向で話題をさらっています。

 政府ができることなら、ロックダウンを回避して、このパンデミックを乗り切りたいと思っているということは、わかっていましたが、実際にテレビカメラの前で、「ロックダウンせずに乗り切る可能性もある」と公言することは、意味が違います。

 すでに数週間にわたり、感染者のうちのイギリス変異種の割合が増加しており(一週間で50%ずつ割合が増えている)、科学者、医師、労働組合等は、厳格なロックダウンを要求するために、もう何週間も声をあげ続けているのです。

 奇しくも、彼がこの発言をした日には、フランスのコロナウィルスによる死亡者数が、8万人を突破しました。死亡者数7万人を突破したのが、1月16日、1万人の増加に一ヶ月もかかっていない状況です。

 また、変異ウィルスは重症化する割合(集中治療室に入る割合)が高く、感染者自体は、目に見えて増加している状況ではないにも関わらず、集中治療室に入る人数は増加しています。

 オリヴィエ・ヴェランは、このインタビューの中で、感染状況、医療対応はもちろんのこと、社会的、経済的なバランスを大事に考えていると語っていますが、もはや、着々と増加しつつある死亡者数よりも医療崩壊が起こるかどうかに焦点が当てられています。

 現在の医療対応の状況は、新規感染者数こそ、10月末のような爆発的な上昇にはなってはいないものの、毎日の入院者数、集中治療室の患者数は、ほぼ2回目のロックダウン時と同程度にまで悪化している状態です。

 もっとも、ロックダウンという言葉の定義自体がもはや、疑問で、現在もロックダウンという言葉を使っていないだけで、実質的には、かなりの制限下にあり、レストランやカフェは当然、ずっと営業停止の状態で、一般の小規模の店舗の営業が認められてはいるものの、大規模なコマーシャルセンター等は、2回目のロックダウンでは営業が認められていた通信機器や電気製品店なども休業状態、部分的にはロックダウン時以上に厳しい状態が続いています。

 ロックダウン時には、外出許可が必要でしたが、それもほぼ、外出許可を携帯するかどうかだけのことで、実際には、外出できないわけでもありません。(距離の制限等はありましたが・・)

 こうして考えると、最初のロックダウン時のような、学校から役所などの全てが閉鎖されたロックダウンは別として、国民のショックを抑えるために「ロックダウン」というショッキングな言葉を使わずに、実は、ほぼロックダウンのような制限下のまま、なんとか爆発的な感染拡大を防ぎながら、時間稼ぎをしています。

 その間にワクチン接種を着々と進めながら、2月、3月の寒い時期を乗り切りさえすれば、それ以降は気候の変化の助けも借りることもでき、夏の終わりまでにはワクチン接種も終わらせ、次の秋のシーズンを迎えられることを目指しています。

 「ロックダウンせずに乗り切る」ということは、実は、「ロックダウン」という言葉は使わないというだけのような気もしてきました。


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「フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで」

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2021年2月9日火曜日

パリで、たまに見かける子供に日本語を教えようとしない日本人の親 バイリンガル教育

  



 娘が生まれて以来、私は、何の疑問もなく、娘に日本語を教えることを自分の使命のように思っていました。日常では、私以外には、日本語を使う人がいない環境で、私が娘に日本語を教えることを諦めてしまえば、絶対に娘は日本語を話すことはできなくなってしまいます。

 日本語ができないということは、日本の私の家族や親戚、友人たちとも関わりを持てない、日本人でありながら、日本人ではないような、日本から一枚の壁を隔てた存在になってしまうということです。

 そして、私が娘にできる教育の中で、日本語を教えるということは、とりあえずは、私にしかできない、私ができることの中で、最も有意義な教育だとも思っていたのです。

 私自身は、やはり日本が大好きですし、海外に出てみれば、余計に、日本の良いところも優れているところも実感し、日本人であることを誇りに思っています。

 言語の習得には、適した年齢というものもあり、言葉を覚えていくときに、それを日常の言語として、自然に覚えていくことができれば、本人にとっては、こんなに楽に言語を習得する機会は、なかなかありません。

 そんな機会をみすみす逃す手はありません。

 それでも、一歩、家を出れば、100%フランス語の世界で、日本語を自然に話すことができるようにするのは、親の側からすると、なかなか根気のいることでもあります。

 私との会話は、日本語のみ、娘が小さい時は、家でのテレビは、ビデオやDVDでの日本の番組のみ、2歳になった頃から公文に通い、フランスの学校に行って、フランス語の読み書きを始める前から日本語の読み書きを始めました。

 毎日、仕事が終わって娘を迎えに行って、帰宅してから、食事の支度をしながら、公文の宿題を5枚ずつやらせるのが、日課でした。大変でしたが、公文をやらない子は日本には、行けない・・と、日本行きを餌にして、ずっと続けてさせてきました。

 そんな娘への日本語教育は、ほとんど私の執念に近いものでもありました。

 娘自身は、日本語を苦労して覚えたという感覚は全くなく、今では、ほぼ普通の日本人と遜色ないほどに日本語を話し、読み書きもできるようになりました。

 結果から見れば、当たり前のことが当たり前にできるようになっただけなのですが、海外在住の場合、子供を放置しておいては、あっさりと日本語ができない子になってしまいます。だって、日常生活には、必要ないのですから・・。

 それでも私は、自分の子供に日本語を教えることは、当然のことだし、私の義務であると思っていました。

 ところが、パリの街中では、たまに、小さい子供連れの日本人で、子供にフランス語で話している人を見かけます。日本語は、教えないとはっきりと言い切る人もいてびっくりすることもあります。

 自分の家族が日本にいながら、子供と自分の家族との繋がりを断ち切ってしまうのでしょうか? それぞれに事情はあるので、一概に否定もできませんが、子供の可能性を奪ってしまっているようで、どうにも残念に思います。

 子供が自然に言語を覚えるには、ある一定の期間しかないのです。もちろん、ある程度の年齢になってから、自分で勉強して語学を習得することはできますが、より楽に確実にできる機会を逃してしまっているのです。

 パリには、日本人でありながら、日本が嫌いな人もいるのも確かですが、海外で生まれ育った自分の子供を自ら、日本から隔離してしまうような状況に追い込むことには、不自然な気もします。何より、自分の生まれ育った国をそこまで嫌うのは、気の毒な気さえしてしまいます。

 また、科学的なデータに基づくものではありませんが、日本語のみに関わらず、複数言語を話す子供には、優秀な子供が多い気もします。これは、私の周りの外国人とその子供を見ていて感じることです。

 それだけ、親が子供の教育に対して熱心であるということもあるかもしれませんが、かなりの割合で概して学校の成績も良い子が多いのです。脳の発達などとも関係があるのかもしれません。

 パリの街中で、自分の子供にフランス語で話しかけている日本人を見かけるたびに、私は、もったいないなぁ〜と思ってしまうのです。


バイリンガル教育

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「バイリンガルに育てる方法」

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「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ①」

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「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ②」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_8.html

「バイリンガルになった娘の日本語 複数言語を使う生活」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_30.html

「夏の帰国時の日本の学校への編入体験 バイリンガル教育の生体験」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

2021年2月8日月曜日

冬休みのバカンスでスペインに出かけるフランス人

  


 先週の冬休みのバカンス突入前のカステックス首相の会見では、バカンスに全く制限が敷かれなかったことには、私もとても、心配していました。

 しかし、もともと、冬休みのバカンスは、クリスマスや夏のバカンスとは違って、バカンスに行かない人も多いため、わざわざ制限するまでもなかったのかな? とも思っていました。

 ましてや、このシーズンのバカンスの一番人気であるスキー場も閉鎖されているままなので、例年に比べれば、格段にバカンスに出かける人は、少ないはずなのです。

 実際にSNCF(フランス国鉄)は、バカンス突入時のタイミングで、例年のような混雑はなく、混乱もないことを発表していました。

 フランス国内は、どこへ行っても18時の夜間外出禁止であり、レストランも、ほとんどの観光施設も閉鎖されているので、バカンスに出かけたところで、思うように楽しむことができず、移動でさえも、宿泊先に18時までに到着しなければならないわけで、制限が多くて、ハードルが高いのです。

 ところが、そのハードルを超えて、スペインやイタリアへバカンスに出かけているフランス人が多いことが、問題となっています。本当は閉鎖されているはずの国境を超えてです。

 スペインは、政府の方針の違いから、マドリッドなどは、レストランやバー、美術館等も営業していて、夜間外出禁止も21時までというフランスと比べると格段に緩い規制です。

 前回、一回目のロックダウンの際もイースターのバカンスの時に国境を超えてスペインのリゾート地に出かけるフランス人が後を絶たずに問題となり、当時、スペインもロックダウン状態だったことから、スペイン人からのひんしゅくを買ったこともありました。

 しかし、今回は、スペインでは、比較的、規制の緩い、自由な生活が許されており、普通の日常を求めてフランス人がやってくると言って、取り立ててスペインで問題になることはありません。

 フランス人は、フランスでは長い期間営業されていないレストランやバーなどで普通に人と食事をする、かつて、当たり前であったはずの日常生活を楽しむためにスペインやイタリアに出かけているのです。

 中でも、マドリッドのレストランなどは、お客さんのうちのかなりの割合はフランス人だと言います。

 すでにEU圏内とはいえ、仕事や特別な理由以外で国外への出入国は禁止されているはずなのですが、公共交通機関を使わずに行ける地続きの国へ、車などでの国境突破は、最初のロックダウンの際にも問題になっていましたが、懲りずにバカンスに出かける人が後を絶ちません。

 スペインのレストランなどで、インタビューを受けているフランス人は、悪びれることもなく、「これが本来の日常生活だ!」と満面の笑みで答えている様子にやるせない気持ちになります。

 その多くは若者ですが、この期に及んで、まだ、「若者は大丈夫」という神話が根強いことを思い知らされます。

 スペインは、フランスのような制限がないからとはいえ、感染自体は、実はフランスよりもさらに深刻な状況なのです。1日の新規感染者数は、ヨーロッパで一番多い状況がもう数週間も続いているのです。

 もともと、フランス人にとって、スペインはバカンスに出かける場所としては、人気の国で、ちょっと余裕のある人などは、セカンドハウスをスペインに持っているという人も多いのです。

 もっとも、スペイン側は、これらの観光客からの収入も含めての経済効果を見込んでの緩い制限を押し通しているわけですから、フランスからの観光客とてウェルカムなのです。

 年末年始の制限に失敗した結果と言われているポルトガルの現在の悲惨な医療崩壊の状況が、この制限の甘いスペインに、果たしてはフランスまでやってきてしまう危険は、すぐそこにあるのです。

 これらの束の間の、以前のような日常を求める気持ちはわかりますが、今、束の間の楽しみのために、どれだけの犠牲者を生み、今後、さらに長い制限下の生活が続くことになるのかを考えると許せない気持ちです。

 バカンスが終わる2月後半から3月にかけての感染拡大が心配されています。

 このタイミングは、まさに一年間、まるまるコロナ禍に飲み込まれ、ちょうど一周して、また元の1回目のロックダウンの時のような感染爆発が起こった時期と重なります。

 

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「バカンス好きにもほどがある!フランス人の国をまたぐコロナウィルス外出禁止違反」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_96.html

「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_12.html

2021年2月7日日曜日

フランスの銀行と日本の銀行

  


 

 私がフランスに来て以来、フランスの銀行口座は、フランスに到着してすぐに作った口座が一つのみで、ずっと20年以上、過ごしてきました。

 私など、大してお金を持っているわけでもなく、いくつもの銀行にばらばらと口座を持っていても、私が死んだ時にできるだけ、面倒をかけないように、シンプルにしておこうと思っていたのです。

 私がこれまで使っていた銀行は、いわゆるフランス大手の銀行ではなく、主人の仕事の関係で、外務省関係の人が多く使うという、ちょっと特殊な銀行で、パリにも店舗が一店舗しかなく、用があれば、そこまでわざわざ出向かなければならないので、ちょっと不便だな・・とは思っていたのですが、これまで長いこと、フランスにありがちなトラブルらしいトラブルもほとんどなく、これがフランス人かと思うくらい、対応も早く、いつも感じがよく、なんとなく、そのままにしていたのです。

 わざわざ銀行に行くのは、面倒だとはいっても、振り込みや支払いもオンラインやカードで済むようになったし、フランスでは、最近、随分と下火にはなったとはいえ、振り込みの代わりに小切手で支払うことも多かったので(特に払った払わないといういざこざ対応のために、小切手の番号で、これで払ったという証明にすることが簡単なので、これまで私は、結構、小切手も使っていました)、実際に銀行に出向くというのは、クレジットカードの期限が切れて新しいカードを受け取りに行く時か、小切手が切れた際に受け取りに行くくらいしか、銀行に行くことは、ありませんでした。

 それが一昨年あたりから、口座管理料(日本の銀行には、ないようですが、フランスでは、口座を持っているだけでお金がかかります)の値段がグングン上がり出したことが、気になり始め、わずかではありますが、一年分の利息が入った時点で、口座管理料がもっと安く、近所にも支店がある銀行に切り替えようと思っていたのです。

 ところが、昨年から半年以上続いていた私のビザ(滞在許可証)書き換えがすんなり進まなかったことから、(ビザがないと公的な手続きは何もできない)銀行口座のことも伸ばし伸ばしになっていました。

 今年に入って、銀行から送られてきた口座管理料は、年間で200ユーロ以上(約25,000円)、(クレジットカードの手数料等は別)大した金額を管理してもらっているわけでもないのに、こんなに取られるのか!と憤慨し、そこまでお金のかからない新しい銀行の口座開設を申し込んだところです。

 そういえば、フランスの銀行には、通帳というものもありません。

 クレジットカードにしても、フランスのカードは、日本のようにポイントを貯めるとか、買い物をした分でマイレージが貯まるとか、そんなお得なシステムもないのは、日本のシステムが恨めしい限りです。

 日本の銀行も金利は、定期預金でも、普通預金でもほぼ変わらないほどの本当にほぼないに等しいくらいの金利ですが、(フランスの銀行の普通預金には、もともと金利というものは、ありません)フランスも金利がここ数年でグングン下り、比較的金利が良いと言われていたLivret A(リブレA)でさえも0.5%にまで下がっています。

 口座開設にあたっては、ネットで手続きを済ませたのですが、銀行から電話があり、予約をとって、足りない書類を持って来てくださいと言われて、久しぶりに銀行に行って、改めて日本の銀行とは違うなぁと思ったのは、人が極端に少ないことや完全予約制であることです。

 予約制は結構なのですが、手続きが一度で完了しないところは、さすがのフランス、最低でもあと一度は行かなければならないようです。

 私は、日本の口座もそのままにしているので、日本に帰国する度になんだかんだと銀行に出向く用事もあるのですが、ここ数年は、帰国する度にこの支店はここに統合されました・・と店舗が減っていきますが、銀行には、お客さんももちろんのこと案内をする人などの数の多いこと・・。

 日本はサービスが至れり尽くせりなので、それなりに人出もいるのかもしれないので、一概に、同じように語ることはできませんが、フランスの銀行と日本の銀行を客観的に見たら、まるで別の機関を運営しているように感じます。

 私は、金融機関については、詳しくないので、どういうわけでこの違いが起こるのかはわかりませんが、考えてみれば、とても不思議なことです。

 たまたま、私の使っている銀行(日本の)だけのことなのかもしれませんが、まず、銀行に入るといる案内係って必要なのか?と思うのです。そして、聞きたいことがあっても、案内係が役に立ったためしがないのです。

 驚いたのは、前回、帰国した際に必要に迫られて、口座を開く羽目になった銀行から、口座開設後に書留親展で封書が届き、何事だろうか?と中を確認すると、担当の行員からの手書きの挨拶状でした。

 口座を新規に開設してくれた人には、手書きの挨拶状を送るというのが、その銀行のマニュアルなのかもしれませんが、いかにも昔の日本の年配の世代の人が言いそうなしきたり?が、今の日本でも、続いているのかということにちょっと唖然としたのでした。

 それとも、私がフランスの生活に慣れてしまって、ドライになってしまったのでしょうか?

 あまり用をなさない案内係や手書きの挨拶状を書留で送るような余分な人を雇うくらいなら、もう少し利息がなんとかならないものか?と思ってしまいます。

 これまで、色々と口座引き落としや自動振り込みにしているものを変更するのも面倒なこともあって、放ったらかしにしていたフランスの銀行の乗り換えも、手続きは、銀行側が全てやってくれるということで(ちゃんとやってくれるか、できるかは、また別問題)、口座管理料やカードの手数料など、結構、差があるので、たまには、見直しするべきかもしれません。

 現在、外出制限で、バカンスにも行けない中、この際、こういう作業を少しずつやって行くのに、良いタイミングなのかもしれません。


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2021年2月6日土曜日

オー・ド・フランスの高齢者施設で111人中106人感染のクラスターを起こした新しい変異種の出現

    


 オー・ド・フランス、エーヌ県にある高齢者施設でクラスターが発生していたことが公表され、その感染率等のあまりの数字の高さから、心配する声が上がっています。

 1月の初旬に最初の感染が確認されたこの高齢者施設では、すぐに衛生管理を強化し、隔離等の措置と取ったにもかかわらず、111人の居住者のうち106人が感染し、うち27人が死亡するという悲惨な状況を生んでいます。

 この感染に関するサンプルを検査した結果、これまでにあまり普及していない変異種の存在が明らかになっています。この変異種は、昨年12月末から中東、アメリカで、1月からはスイス、フランス(ブルゴーニュ)で検出されているものと同種のものであると判明しています。

 現在のところは、この新たな変異種がこれまでのコロナウィルス(オリジナル)と比べて、より伝染性、死亡率が高いものかどうかは確認されていません。

 CNR Institut Pasteur(パスツール研究所・国立生物学・医学研究所)は、イギリス、南アフリカ、ブラジルで発見された変異種と同じように、「懸念される変異種」としては、その新変異種を考慮していませんが、このクラスターの発生により、この変異種に関する再調査が行われることになっています。

 しかしながら、111名中106人感染、27名死亡という事実は見過ごすことはできず、これが、高齢者施設というリスクの高い環境であったことが原因であったのか? また、この施設の衛生管理に問題があったのか? 確認はできていません。

 フランスでは、昨年3月からのロックダウン時には、禁止されていた高齢者施設の面会は、以後、解禁されており、外部からの感染も充分に考えられるところです。

 また、開始されているワクチン接種も高齢者施設を最優先にすでに開始しているにもかかわらず、高齢者施設において、このような極度の割合での感染が起こり、クラスターが発生しているということは、ワクチンの有効性にも疑問が生じてきてしまいます。

 もっとも、この高齢者施設の住民のどの程度がワクチン接種を済ましていたのかどうかは、わかりません。

 どちらにしても、少しでも気が緩み、衛生管理が疎かになれば、このようなクラスターは、あっという間に起こる状況にあり、特に高齢者施設のようなリスクの高い場所での面会の制限などは、あって然るべきではないかと思っています。

 ただし、この地域の保健庁は、ここ一週間、職員の間に新しい感染は起こっていないと明言しています。

 フランス人は、もともと日常を清潔に保つ習慣がない人たちなのです。日本人が普通の日常生活送っている状況がおそらく、フランス人が現在、感染にすごく気をつけて生活している状況なのではないかと思うことがあります。

 フランスは、家の中を土足で歩き回り、一度使ったティッシュは再度使わずに捨てましょうと厚生省が呼びかけなくてはならない国なのです。

 ウィルスは、変異していく性質を持っているものですが、また、このクラスターの発生により、新しい変異種の懸念がフランスでは起こり始めているのです。


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2021年2月5日金曜日

ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見

        

   Discours de Castex : vacances de février, vaccins... Les annonces


 昨夜、カステックス首相の記者会見が行われるというので、多くのフランス国民が注目していました。とはいえ、先週のような緊急会見ではなく、数日前から予定されていた会見、しかもカステックス首相の会見と聞いていたので、この会見がロックダウンに踏み切る会見とは思っていませんでした。

 しかし、今週末から冬休みのバカンスに入るフランスは、バカンスに際して、何らかの制限が加わるのではないかとは思っていました。

 18時という約束どおり、きっちり18時に始まった会見にカステックス首相は、なぜか、満面の笑みをたたえて登場し、依然として危険な状態ではあるものの極度の感染爆発は迎えておらず、現在の制限内容に変更はなく、さらに衛生管理、検査、隔離を強化しつつ、現在の時点では、ロックダウンをせずにできることで、感染拡大を回避していく方針を発表しました。

 ロックダウンは、あらゆる事業、教育機関を止め、国民を経済的にも精神的にも追い詰めてしまうものであり、あくまでも、最終手段として考えるのは、当然といえば、当然のことです。

 夜間外出制限を始めとする、あらゆる制限に関する取り締まりを一層、強化することで、現在の制限内に留め、リモートワークを全くしていない企業に対しての指導も行っていくとしています。

 すでに一週間で39%の取り締まり体制の強化により、罰金を徴収された数は、53%増加しています。

 若干の増加はしているものの、ほぼ数値は横這い状態を保っている段階で、確かに現在の制限でさえ、まだ引き締める余地があるフランスでは確かにロックダウンの前にまだまだできることがあるのかもしれません。これでロックダウンが避けられるなら、こんなに良いことはありません。

 私がこんな風に感じたのも、その記者会見の見事さで、会見は、首相をはじめとして、厚生大臣、労働大臣、内務大臣、産業大臣が同行し、あらゆる角度から、理路整然とそれぞれの管轄に関わる現状と対策を述べ、質問に応じて、微塵も淀むことなく回答する、どっからでもかかってこいという確固としたものであったたこともあるのかもしれません。

 どんなものでも跳ね返す鉄のバリアって感じだったかな?

 質問に応じて首相が各担当大臣に回答を振り分け、首相がほどよいタイミングで纏めるその会見は、充分にトップ内で話を練り込んでいる証拠であり、またそれぞれがきちんと話すことができる、フランス人の話す能力を感じます。(口ばかりが達者というところもありますが・・)

 特に、政治家の話す能力は、大事だなぁ・・とこの会見であらためて、感じたのでした。

 とはいえ、今週末から始まるバカンスに関しては、移動制限は設けないとしており、(クリスマスの時ほどの移動は見込まれていないが・・)その点に関しては、不安が残ります。

 横這い状態とはいえ、非常に高い数値での横這い状態、いつでもロックダウンになる可能性があり、バカンス期間の途中で突然、ロックダウンになった場合には、自宅に戻る長距離移動は、許可されるという妙に具体的な内容も含まれていました。

 ヨーロッパ内では、現在はスペインが一番、1日の新規感染者が多く(スペインは制限が一番緩い)、次いでフランスが2位という高い感染者数を維持?し続けており、フランスは、もはや、一時、驚異的な感染者数を叩き出していたイギリス(現在も死者数は多い)やドイツを追い越しています。

 ロックダウンを望んでいる国民が半数以上を占めているフランスは、国民の危機感も高くなっていて、今日、買い物に行ったら、入り口のアルコールジェルの消毒のスペースには、人が並んでいたのには、びっくりしました。

 なんとか、国民の危機意識を保ちつつ、ロックダウンをせずに乗り越えられれば良いのですが、今にも爆発しそうな状態に少しも気は緩められないのです。


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「コロナウィルスに関するマクロン大統領のテレビ放送を見て思うこと」

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「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

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2021年2月4日木曜日

「コロナがどういう形であろうと東京オリンピックは開催する」とは何と思いやりのない言葉なのか?

   Les Jeux Olympiques de Tokyo doivent débuter le 23 juillet prochain


 これまで、東京オリンピックに関しては、これまでフランスでは話題に上ることもありませんでしたが、先日、ちらっとニュースでオリンピックに関するニュースをさらっているのを見かけました。

 フランスのラジオ局RTLなどが実施した世論調査によると、今年夏のオリンピックの開催を望まない・開催されないだろうとの回答が多数を占めています。

 当然です。世界はオリンピックどころではないのです。

 つい先日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が「私たちはコロナがどういう形であろうと必ずオリンピックを開催する」「やるかやらないか?という議論を超えて、どうやってやるのか、新しいオリンピックを考えよう」などと発言していることが、伝えられています。

 「コロナがどういう形であろうと・・」とは、どういうことなのでしょうか?

 「やるかやらないか?どうやってやるか?」ではなく、どうやってやめるか?でしょう。

 オリンピックが開催されないことは、残念なことではありますが、それ以上に残念なのは、多くの人々がコロナウィルスで苦しむ状況の中での、このような思いやりのない発言です。

 幸いなことは、これが日本の総意として伝えられてはおらずに、開催か否かについて、日本国内でも意見が分裂していると伝えられていることです。

 現在のヨーロッパは、ほぼ昨年のコロナウィルス発生時のような、またそれ以上と思われるピークを再び迎えつつあり、一日何千人もの人が亡くなっているのです。

 躍起になって進めているワクチン接種も供給が間に合わずに難航しています。

 世界は、オリンピックよりも何よりも、まずこの感染を抑え、ワクチンによって、なんとか日常を取り戻したいと思っているのです。多くの人が、オリンピックを開催するために選手らのワクチン接種が優先されるべきではないと考えています。

 フランスも今、ロックダウンか否かで日々、ニュースは持ちきりです。森会長の発言が取り上げられるほどニュースに余裕もないことは幸いです。

 昨日は、現在、危機的な状況を迎えているポルトガルで、病院の前で救急車の渋滞が起こり、埋葬の間に合わない棺が冷蔵室で山積みになっている映像が繰り返し流されています。

 このような近隣諸国の危機的な状況を見て、あらためてコロナウィルス感染の恐ろしさを再認識し始め、フランス人の55%は、昨年3月のような厳しいロックダウンを自ら望んでいる状況なのです。

 夏までこの状態が続くとは思えないし、思いたくはありませんが、昨年と同じサイクルで感染が続いているということは、昨年、オリンピックを断念した時と、同じ状況にあるということです。

 ワクチンは開発されましたが、ワクチン接種には、時間もかかり、また、変異種に対しての有効性は、減少するとも言われています。

 フランスでは、東京オリンピックを2024年に延期してパリオリンピックを2028年に開催することが最も良い解決策だとも言われています。

 

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「世界は、オリンピックどころではない 日本人は、世界のニュースを見るべき」

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「どんなことがあっても、東京オリンピックやるの???」

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2021年2月3日水曜日

コマーシャルセンターのロックダウンとバカンス容認のチグハグ

   

コマーシャルセンター内の通信関係の店舗も今回の制限で営業停止


 滞在許可証の更新のいざこざで、印刷をしなければならない書類が立て込み、印刷用の用紙が一気になくなっていたことに気付いて、慌てて買いに行こうとして、「これは、食料品でもないし、生活必需品でもないから、スーパーマーケットの中の文具類を置いているコーナーも閉鎖になっているはずだから、もしかして、買えない??」と、ちょっとギョッとしながらも、前回のロックダウンの際も、閉鎖とはいえ、ゆるゆるにテープが張られているだけで、きっと買えるな・・と目論んで、近所のコマーシャルセンターに入っているスーパーマーケットに出かけました。

 果たして、私の予想を超えて、スーパーマーケット内は、ゆるゆるのテープが張られることもなく、全く何の制限もされておらず、無事に?買い物はできたのです。恐らく、スーパーマーケット側も先週末に発表されたばかりの制限に、急ぐこともないと思っているのか? 注意されたら、テープを貼ればいいくらいに考えているのかもしれません。

 しかし、目的の買い物を済ませて、スーパーマーケットを出て、あらためて、コマーシャルセンターの中を見回すと、ほとんどの店がシャッターをおろし、電気も消えてガランとしています。

 10月末のロックダウンの時には、生活必需品を扱う店舗の枠には、通信機器を扱う店舗や電気製品を扱う店舗が含まれていたのですが、今回の制限では、それらの店舗は、コマーシャルセンター内では、営業許可になっておらず、全店閉店です。

 ロックダウンをしない方向でとしていた政府の発表から、このコマーシャルセンター内の様子を見ると、これは、前回のロックダウン以上だと愕然としました。開いているのは、スーパーマーケットと薬局だけです。これでは、昨年3月の最初のロックダウンの時のようです。

 もっともこれは、コマーシャルセンターのことで、一般の小規模の店舗は午後6時までは営業しているわけなので、ロックダウンとは違いますが、コマーシャルセンター内の光景は、ちょっとショッキングでした。

 考えてみれば、政府の発表のとおりなのですが、この状況は、私の中で具体的にイメージできていませんでした。

 今回の制限は、ロックダウンをしないで感染を抑えるということで、夜間外出禁止の取り締まりも、これまでの3割以上の人数を動員しての厳しいもので、取り締まりにより発生する18時前後の渋滞は、かなりのものです。

 ロックダウンをしないとはいえ、かなり厳しい制限下になってきた感じがひしひしとしてきたフランスですが、どうにも解せないのが、今週末から始まる冬休みのバカンス中の制限が今のところ、全くなしで、「どうぞバカンスには、お出かけください」という姿勢です。

 海外からの出入国に関しては、EU圏内の例外を除いては、禁止になっているものの、多くの店舗を営業停止にしながら、ここでまた、バカンスにより国内での感染を流通させてしまうことに歯止めをかけないのは、理解不能です。

 まったく、フランス人のどこまでもバカンスファーストには、閉口してしまいます。

 コマーシャルセンター内のメガネ屋さん(チェーン展開のお店)からは、「現在、コマーシャルセンター内の店舗は営業できませんが、店内には、係のものが待機しているので、営業している店舗との連携をご紹介できますので、お気軽にご相談ください」とSNSでメッセージが入っています。

 こんな風に商売熱心なのは、フランスにしたら珍しいことで、度重なる営業停止による必死さが伝わってきます。こんな思いをして、店舗を閉鎖しているのに、「バカンスには、どうぞお出かけください」とするチグハグさには、甚だおさまりのつかない気分です。

 昨夜、マクロン大統領は、テレビのインタビューで、夏の終わりまでには、希望者全員にワクチン接種が終了することを約束し、「現在の対応については、毎日、感染者数、病床占拠率(特に集中治療室)、感染率、変異種の拡大推移等を毎日分析して、その時に最も適した対応をしているので、現在の措置に関しては、自信を持っている」と語りました。

 その、あまりに自信満々の様子に私は、呆気に取られた気分で、この自信満々でいられるところも一種の才能だと妙な感心をしてしまいました。

 しかしながら、心配されるイギリス変異種は、1月1週目には、感染者の7%程度だったものが、現在は、20%にまで上昇しています。

 ウィルスが活発になる気候も合間って、このままの感染状況が続けば、一歩でも間違えば、昨年の感染爆発と同じタイミングで2月末から3月にかけて、再び同じ時期に同じことが起こります。今やウィルスが気候の影響を大きく受けているということは、明白ではありますが、しかし、同じことを再び繰り返すのは、あまりに愚かしい気がするのです。


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「フランス人の金銭感覚 フランス人は、何にお金を使うのか?」

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「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

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「コロナウィルスの感染は、明らかに気温が影響している ドイツの食肉処理工場で1500人感染」

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2021年2月2日火曜日

フランスの文化チャンネル カルチャーボックス Culturebox


Raphäl Yem&nbsp;et&nbsp;Daphné Bürk (France  Télévisions)


 フランステレビジョン(国営)は、2月1日から、文化チャンネル・カルチャーボックス(Culturebox)を開設し、コロナウィルス感染対策で文化施設が閉鎖されているため活動ができない状態のアーティストと一般の人々とのつながりを再構築するため、500万ユーロ(約6億4千万円)の予算を投入し、一般家庭の地上波テレビ・チャンネル19で、フランスのあらゆる文化的なプログラムを無料で見ることができるサービスを開始しました。

 この無料チャンネルは、文化施設が再開されるまでの期間限定とされていますが、ひとまず、3ヶ月間は、24時間アクセス可能です。

 月曜日は、劇場でのミュージカルや演劇など、火曜日は、クラッシック、バレエ、オペラなど、オランジュ音楽祭で歌われるカンタータ「カルミナブラナ」で始まり、レンヌのオペラハウスで行われた「白い貴婦人」なども見ることができます。水曜日はコンサートです。

 このように曜日によってプログラムが組まれており、金曜の夜には、コメディの舞台、週末には、ドキュメンタリーや航空ショー、日曜日には、美術館などが見られるようになっています。

 また、来週には、学校のバカンスが控えていることもあり、バカンス期間には、「私の最初の白鳥の湖」、「ピーターと狼」、「海中の20,000のリーグ」、「勝者を愛する」などの若者向け、家族向けのプログラムも用意されています。

       


 驚くべきは、このチャンネル開設の動きのスピードの速さで、これは、1月12日、ヴァイオリニストのルノー・カピュソンがツイッターでフランスの文化のためのチャンネルを作ることを呼びかけたことから、始まっています。この呼びかけが、崩壊の危機に瀕している文化部門のための公共サービス側の強い連帯を構築し、一気に実現化しました。

 また、これに対する文化省の動きも早く、この呼びかけからまもなく、フランステレビジョンの仕様を変更する法令を採択し、新しいチャンネルが放送できるようになりました。

 このチャンネルは、現在、活動の場所を奪われているアートとエンターテイメントの世界が健在であることを強調することを目的として始まったことではありますが、日頃、行きたいと思いつつ、行こうと思えばいつでも行けるにも関わらず、バレエやオペラ、コンサートなどには、滅多に足を運ばない私などには、家にいながら、無料で舞台芸術を見ることができる思わぬ僥倖です。

 もちろん、劇場で見るような臨場感は味わえないものの、フランスの芸術に触れることができるチャンスです。

 また、国がかりで、これらのフランスの芸術、文化を守ろうとしているところが、いかにもフランスらしいところで、嬉しくもあり、頼もしくもあります。

 この外出もままならぬ時期の思わぬサービス、家で楽しめることが増えて、感染回避の一端をになってくれることになるとさらに嬉しいです。

 この時期にテレビで触れた舞台芸術に、いつの日か、直に触れられる日には、今までには、いなかった層の人々が劇場に足を運んでくれるようになることを期待しています。

 私も自由な日常が戻ったら、ちょっとおしゃれをして、劇場に足を運びたいです。

 日本の素晴らしい芸術や文化も国は守ってくれているのかな? とふと思います。

 日本の芸術や文化は世界に誇れるものです。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大」

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2021年2月1日月曜日

コロナ禍で、日本では可能でもフランスでは不可能なこと フランス人に黙食はあり得ない

  


 3月からのパンデミックで、フランスで、一番、営業停止期間が長く、割りを食っている業種の一つは、レストラン業界です。3月から5月にかけてのロックダウン期間はもちろんのこと、ロックダウンが解除されても、レストランの営業は、すぐには許可されませんでした。

 夏の間の数ヶ月は、営業できたものの、秋からはまた営業停止、昨年以来、営業できたのは、ほんの数ヶ月のみ、今後の営業再開の見込みも全く立っていない状態です。

 本当にどうやって、乗り切っているのか、姿を消してしまう店舗もチラホラ目立ち始め、残念で、心が痛みます。

 食事の際には、マスクを外さなければならないことから、一番、感染の危険性が高いとされ、食事の際にどれだけ飛沫が飛んでいるのかという検証をしているNHKの映像が、一時、フランスのテレビでも頻繁に流されていました。

 先日、フランスのテレビ番組のインタビューに答えて、パリのレストランのオーナーが長きに渡って営業できない現状を訴え、「自分たちも衛生管理に気を配り、営業することは充分に可能だ!」「日本なんて、ずっとレストランも営業を続けている!」と言っているのを聞いて、「日本を引き合いに出すとは・・と、ちょっとな〜〜」と思ったのです。

 それは、フランス人にとっての外食というものが、日本とは、全く違うものであるからです。フランス人にとって、外食するということは、食事そのものよりも、人と会うことであり、人と喋ることであるからです。

 日本では、「黙食」を呼びかけるレストランが登場して、この呼びかけが広がりつつあるというニュースを見ましたが、フランスで、「黙食」は、あり得ません。レストランで黙って食事をしているフランス人などは、滅多に見かけることはありませんし、むしろ、「本当によく喋る人たちだな〜」と思うことの方が多いです。

 食事中の彼らの会話の様子は、まさに最も危険とされる「口角泡を飛ばして」喋る印象があります。日頃から、身振り手振りのジェスチャーを加えながら、大袈裟に喋るフランス人は、仲の良い友人同士の食事中などは、特に勢いよく喋っています。

 科学的な根拠はわかりませんが、なんだか、日本語の発音というのは、フランス語に比べて、飛沫が飛びにくい言語であるような気もしています。

 フランスでは、感染対策とはいえ、もしもレストランが営業しても、「黙食」を呼びかけるレストランもないでしょうし、それをお客さんが受け入れるとも思えません。たとえ、お店側がどんなに衛生管理に気を配っても、座席の間隔をあけるとか、アルコールジェルを設置するとか、その程度のことで、お客さんに「喋るな!」とは、言えないだろうし、言わないと思います。

 これがフランスの日常生活の文化であり、習慣であると言えばそれまでなのですが、フランスでは、「黙食」が受け入れられる文化ではないのです。

 「日本ではレストランもずっと営業している!」と訴えていたパリのレストランのオーナーは、日本のレストランの「黙食」の話を聞いたら、どんな反応をするのか? 逆に聞いてみたい気がします。

 しかしながら、あれほどフランス人が忌み嫌っていたマスクをする習慣ができただけでも、フランスでは、一年前までには、考えられなかった日常の変化です。それでも、最近ようやくマスクをするようになったフランス人には、くしゃみをする時にマスクをずらしたり、大声で叫びたい時にはマスクを外したり、意味不明の行動が目につきます。

 無意識にやっていることなのでしょうが、日常の生活習慣、ことに細かな衛生に関わる習慣というものは一朝一夕には、培えるものではなく、つくづくフランス人の日常の生活習慣というものは、悉く、何から何まで、ウィルス感染に最適なものなんだなぁ〜と、思うのです。


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「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

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