2021年2月16日火曜日

パリ17区での塩酸による日本人襲撃事件に対するフランスの扱い

  


 先週、パリ17区で在仏日本人が塩酸をかけられた事件は、フランスで起こったことなのに、大きく報道されることもなく、疑問に感じていました。

 それが日本人だと知って狙われたものだったのか? アジア人だと思って狙われたものなのか? 個人的な恨みによるものだったのか? それとも無差別テロのようなものだったのか?は、わかりませんが、いきなり不審な人が近付いてきて、顔に塩酸をかけるというのは、いくら治安が悪化してきているパリとて、そうそうあることではなく、一般市民にとっても、恐ろしい事件であることに変わりはありません。

 そんな事件がなぜ?騒ぎにならないのか不思議でなりませんでした。

 それが、ようやく今になって、仏・フィガロ紙の一部に掲載されたのですが、その掲載の仕方が事件そのものよりも、見出しからして、「パリ・日本大使館が在仏日本国民に対して、日本人が受けた塩酸襲撃事件を警告」というもので、事件そのものを追求したものではなく、日本大使館が在仏日本人に対して警告メールを送ったこと、そして、そのメールの内容を紹介しただけの内容が主でした。

 また、この被害者家族が警察に被害を申し立てたところ、本人不在のため、被害届は提出できず、幸いなことに被害者は軽傷を負っただけであり、更なる法的手続きは望んでいないと記されていました。

 また、このフィガロ紙の報道に対して、パリ17区の区長はツイッター上で、「あれは、特別アジア人を攻撃したものではない。被害者本人が軽傷であるため、警察に訴えることを望んでいない。警察は捜査を続ける。」とコメントを発表しています。

 フィガロ紙の取材に対して、日本大使館は被害者側が事件の詳細な説明を望んでいないために、彼らの意思を尊重して詳細は公表しないとしていますが、一度は被害届を出しに行ったのに、結局は、被害届が正式に出されていないことは、警察側に軽傷だからとまともに扱われなかったか? それとも、被害者が事件が公になって、犯人側の報復行動を恐れたのか? しかし、日本大使館には、報告されている・・どうなっているのか、不可解です。

 17区の市長のコメントも、犯人が捕まったわけでもないのに、なぜ?「特別にアジア人を攻撃したものではない」と言い切れるのか? 全く納得が行きません。

 また、「被害者本人が軽傷であるため、警察に訴える事を望んでいない」と言葉どおりに受け取ることも、軽傷で済んだ事を傘に、曖昧に流して、事を済ませようとしているという印象が否めません。

 どちらかというと、家族が訴えを出しに行ったものの、軽傷であったために、警察がまともに受け取ってくれなかった・・そんな気がしてなりません。

 日本人は大人しく、あっさり引き下がったり、黙って我慢すると思われがちですが、被害はしっかり訴えるべきです。

 言葉の問題や、押し出しがどうしても弱い日本人からしたら、警察に、あっさりと被害を受け付けてもらえない場合にゴリ押しがしにくいのもわかりますが、そんな時は、身近なフランス人に付き添ってもらったりすることが必要な時もあります。

 フランス社会では、トラブルに対しては特に、フランス人対フランス人の場合は、コロッと対応が違うことも多いのです。

 今回は幸いにも軽傷で済んだだけであって、タイミングが少しでもズレていたら、大惨事となっていたのです。

 そして、その犯人は、今もパリの街のどこかに平然と生活しているのです。このままでは、第2、第3の事件が起こる可能性が潜んでいるのです。

 先日、パリの15区で起こった14歳の少年への過激な暴行事件の際には、フランス人の母親が堂々とテレビのインタビューに答えて、自らマイクを握って、被害を訴えたのはとても印象的でした。

 ところが、アジア人に対する事件に関しては、この曖昧な感じで、事件が風化されて終わってしまうことが多いのです。

 被害にあって弱っている時に、辛いことではありますが、このような凶悪犯罪に対しては、少なくとも警察にしっかり訴えを出すことは絶対にしなくてはなりません。強く出なければ、フランスでは、警察でさえも味方になってはもらえないのです。

 日本大使館の注意喚起も、ただ、「周囲の環境に注意を払ってください」というだけでなく、被害に遭った場合は、被害届をしっかり出すこと・・というのを付け加えて欲しいです。


<関連>

「パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/17.html

「日本人は、黙って我慢すると思われている」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_4.html


 


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