2021年2月23日火曜日

ニース・アルプ・マリティーム県 週末のみのロックダウン

 

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 ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)での記録的な発生率と前例のない集中治療室の占拠率の増加で、急激な感染悪化が注目され始めたのが、先週末のことでした。

 それ以来、この地域をこのまま放置して良いものか? 少なくとも地域的なロックダウンが必要なのではないか? と、政府の発表を今か今かと週末の間中、皆が注目しながら待っていました。

 この地域に対する措置は、遅くとも日曜日の夜には発表されているとされていましたが、とうとう発表は、週明けにずれ込むことになってしまいました。

 週明けの正午近くに、アルプ・マリティーム県知事から発表された内容は、「今週の金曜日の午後6時から月曜日の午前6時まで、とりあえず2週間に渡って、週末のみのロックダウンを行う」「ロックダウンの形態は、10月の全国的なロックダウンの規則と同じ形態を取る」(外出は、生活必需品の買い物、通院、自宅から半径5 km以内で1時間に制限された歩行などに限る)というものでした。

 先週末の間にこの地域の現状確認に訪れていたオリヴィエ・ヴェラン保健相は、「夜間外出禁止令の強化、あるいは部分的または完全なロックダウンの形をとることができる」と示唆していました。

 週末にかけての協議の結果、このような決断に至ったわけですが、この決定は、全会一致でなされたものではありません。「感染は、主に家族内(屋内)で起こり、屋外での生活を制限する措置を講じ続けているのは、おかしい」「週末だけのロックダウンは、充分な措置ではない」など、議論は、かなり難航した模様です。

 これに対して、「ニースでの感染拡大は、主にスキー場が閉鎖されたために、なだれ込んだ観光客により持ち込まれたことが原因」としている人々もおり、週末にロックダウンすることで、これらの観光客を減少させることができるとしています。

 このニースの週末ロックダウンのニュースに、あらためて、フランス政府の「あくまでも、ロックダウンは最終手段」としていることを思い知らされた気がしました。

 この発表が、政府首脳(首相や保健相)からのものでなかったことや、ロックダウンが地域的なものであることは、まだしも、その上、「週末だけ」という、なんとも中途半端なものであったためです。

 フランスでは、度重なるロックダウン、解除、そしてまた、ロックダウンという状況を「STOP&GO」を繰り返す状態は避けなければならないとしており、一度、ロックダウンしてしまえば、その解除をするタイミングを図ることが難しく、未だロックダウンはしていなくても、さまざまな制限に関しても、感染状況が減少しない限り、この制限を緩和することは、これまでの努力が水泡に帰してしまう結果となるために、一向に緩和することはできないのです。

 奇しくも、このニース・アルプ・マリティーム県の感染爆発が発覚する寸前までは、もしかしたら、減少傾向にあるかもしれないと、美術館などの文化施設の再開が検討され始めていた矢先のことでした。

 しかし、一方では、かなり危険な状況でもロックダウンにはならないと思い始めている国民は、この程度なら大丈夫であると気を緩めている感もあります。

 ところが、深刻な感染悪化は、この地域だけではなく、フランス国内のいくつかの地域は、これに追いつけ追い越せと言わんばかりの急激な感染悪化の状況を迎えており、先日、南アフリカ・ブラジル変異種の急拡大が確認されたモゼル県(フランス北東部)を始めとする北部の地域や、ダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)などは、すでに感染率も国内平均の4倍以上、先週までは658人だった10万人あたりの発生率は一週間で901人まで上昇し、集中治療室もほぼ満床状態で、2月に入って以来、50人以上の患者が他の地域に移送されている状況なのです。

 ダンケルクの病院責任者は、敢えて集中治療室の占拠率は発表していませんが、もしかしたら、すでにニースを超えた深刻な状況を迎えている可能性もあり、一刻も現在の状態を放置しておくことはできないと語っており、何らかの措置をできるだけ早く取らなければならないとしています。

 感染が悪化しているどの地域にも共通していることは、顕著な変異種の拡大で、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)に入院しているコロナウィルスの患者の二人に一人は、変異種に感染していると発表されています。

 これまでも、他地域では、まだ営業されていたレストランがマルセイユなどの地域限定で営業禁止になったりしたことはありましたが、週末のみとはいえ、地域限定のロックダウンは、パンデミック以来、フランスでは初めてのことで、今後、さらに他の地域でもニースに続くロックダウンの地域が出るのは、ほぼ確実です。

 もはや、フランスは、綱渡り状態から、崖っぷち状態に移行しつつあります。

 

<関連>

「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「ニースがヤバい 国内平均の5倍の感染値」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_21.html 




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