最近は、ずいぶん変わってきたけれど、例えば、駅などで英語でチケットを買おうとしている観光客が、「ここはフランスなんだから、フランス語で話せ!」などと駅員が冷たくあしらわれているのを何度か見かけたことがあります。
パリなど観光で多くの収入を得ている街、どこでも英語が通じるようにならなくてどうする?と思うのですが、残念ながら、そうではありません。
英語とフランス語を比べてみると、読み方が違うだけで、同じ単語も多いので、多分、日本人が英語を学ぶよりもずっと容易いことだと思うのに、なぜか英語を話したがらない人が多いのです。
彼らは、フランス語に誇りを持っていると同時に、英語が嫌い=アメリカが嫌いなのです。フランス人のアメリカ嫌いは、英語に対する嫌悪というよりも、ある種、アメリカに対する嫉妬に似た感情ではないかと私は、思っています。
フランス人は歴史、伝統のあるものを尊ぶ傾向が強く、特にある一定の年齢以上の人は、歴史の浅いアメリカを小バカにするようなところがあります。同じ?英語を話す国民でも、フランスにとって、イギリスに対しては、これが当てはまりません。
それを象徴するように、フランス人は、イギリス王室の話題が大好きです。フランスのように愛国心が強い国民の多い国で、外国の王室の話題がニュースチャンネルで、特集まで組んで、ゴールデンタイムに長々とイギリス王室の話題を放送するのには、ビックリしてしまいます。
たしかに、お騒がせなニュースが多いイギリス王室ですが、もはやヨーロッパからも離脱した外国の王室の話を延々と報道するのは、それだけ見たい人がいるということです。
昨日、バッキンガム宮殿が、「ヘンリー王子とメーガン妃のサセックス公爵と公爵夫人などの名誉称号や慈善団体の後援者の役職などは、全てエリザベス女王に一度、返上され、これらは、今後、他の王室メンバーに、あらためて分配され、ヘンリー王子とメーガン妃は王室のメンバーには戻らない」と発表したことから、フランスのメディアは、ブレグジットをもじって、「メグジット」と発表。
つい先日、メーガン妃が第2子を妊娠したことも騒いでいましたが、さすがに今回は、本格的な王室離脱にさらにヒートアップしています。
「メグジット」などと、メーガン妃と結婚したことによって、王室を離脱することになってしまったように報道されていますが、複雑な環境で育ったヘンリー王子が、王室を離脱することになったのは、メーガン妃との結婚が拍車をかけたことは否めませんが、もともと彼の中にあった王室への反発であったような気もします。
フランスのメディアは、彼らの出会いから、結婚、そして、結婚後の王室内のいざこざなどを様々な王室周辺の側近者を証言者として取材しながら、「メグジット」までの経緯をドキュメンタリーにまとめています。
たしかに、王室のセレモニーは、いかにもフランス人が好きそうな、伝統的な美しいセレモニーで、また、王室内のメンバーは、チャールズ皇太子とカミラ夫人の不倫問題やダイアナ妃がパリで亡くなったり、世代を超えて、お騒がせでスキャンダラスな話題が尽きることがありません。
フランスには、王室はありませんが、イギリス王室のような伝統的で威厳のあるものへの畏敬の念がフランス人の中にはあるのかもしれません。
こうして見ていると、イギリスという国は、今やEUからも離脱してしまった外国でありながら、フランスにとっては、特別な国なのかもしれません。ロンドンなどに行くと、気がつくと周りにはフランス語がたくさん聞こえてきて、思わず「ここは、ロンドンだったよね・・」と確認するほど、フランス人がたくさんいることに驚かされます。
正確な数字はわかりませんが、おそらく、ロンドンにいる観光客の中でフランス人は、相当な割合を占めているのではないかと思います。
たしかにユーロスターでパリ・ロンドン間は2時間半ほどで行ける身近な外国。人気があるのも頷けますが、それは単に、距離的な問題だけではないような気がします。
自らの歴史で王室を崩壊させたフランスが、イギリス王室の話題が大好きというのも、なんとも皮肉な話ではないかと思うのです。
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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_16.html
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