2021年2月14日日曜日

南アフリカ変異種による再感染患者の重症例が示しているもの

  


 ここのところ、南アフリカ変異種の拡大がモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)での感染が多数検出されたことから、不安視されていますが、この南アフリカ変異種が恐れられている理由の一つに「再感染」が可能であることが挙げられていました。

 これまでにも、イギリス、南アフリカ、ブラジルの変異種による再感染の症例はすでに科学文献に記載されていますが、ほとんどの場合、2回目の感染は最初の感染よりも重症度が低くなるというのが定説とされてきました。

 ところが、フランスで、南アフリカ変異種に再感染した58歳の患者が重症化したケースが発表され、これまで「2回目の感染は、重症化しにくい」という説が崩された結果となりました。

 喘息の病歴を持つこの男性患者は、発熱、中程度の呼吸困難を訴え、昨年9月にコロナウィルス陽性と診断されて入院しましたが、症状は、数日内におさまり、12月には、2回に渡るPCR検査の結果、陰性と診断されています。

 ところが、今年の1月に入って、彼は再び発熱と呼吸困難のため、パリ近郊のコロンブにあるルイ=ムリエ病院(AP-HP)の緊急治療室に再入院しました。

 彼のPCR検査は再び陽性であり、遺伝子配列決定は南アフリカの変異体に特徴的な突然変異の存在を示していました。

 彼の症状は再入院の7日後に急性呼吸窮迫症候群を発症し、挿管して生命維持装置に繋がれる重篤な状況に陥りました。

 彼の再入院時に行われた、血清学的検査は、過去の感染を証明する抗体の存在を検出していますが、これは、最初の感染後に免疫が変化したため、南アフリカ変異種による再感染を防ぐことができなかったことを示しています。

 パンデミックの発症から1年後、コロナウイルスに対する免疫の持続期間は依然として、はっきりとしたことがわかっていませんが、ここ数ヶ月でより伝染性の高い変異体の出現によってさらに、免疫に関する疑問は拡大しています。

 それらの変異種の中でも、南アフリカ変異種は特に懸念されています。また、この特定の遺伝的特徴のために、ワクチンの有効性を減少させる可能性も孕んでいます。(実際に南アフリカでは、アストラゼネカのワクチン接種を保留しています)

 免疫があるにもかかわらず再感染するという恐ろしい状況ですが、幸いにも現在、世界中で接種が開始されているワクチンは、免疫を作るというワクチンではなく、RNAという遺伝物質を人工合成して作られているワクチンで、体内の細胞を抗ウィルス薬を製造する細胞として利用するというものです。

 そのため、たとえ、免疫が変異種の再感染を防ぐことはできないとしても、ワクチンの有効性に影響を及ぼすとは考え難いのですが、変異種のウィルス自体がワクチンにより作られた体内の細胞を使って作られた抗ウィルス薬が太刀打ちできない強力な威力を持っているとすれば、また別問題です。

 こうしている間にも、また別の変異種が出現しないとも言えないことを考えると、まだまだこのワクチン開発とウィルスの発達や変異とのイタチごっこが続くのかもしれません。


<関連>

「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

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