2021年6月30日水曜日

デルタ株が一週間で倍増しているにもかかわらず、ロックダウン解除最終段階に突入するフランス 

   


 フランスは、6月30日から、いよいよロックダウン解除の最終ステージに入ります。

 当初の予定では、この日から夜間外出制限が撤廃されることになっていましたが、想像以上に感染減少が早く進んでいたために、すでに夜間外出制限は解除されています。

 今後は、一般の商店、レストラン、スポーツジム、美術館、映画館など、これまで敷かれていた制限なども解除されます。

 屋内でのコンサート等のイベントは、入場が収容人数の75%までに制限されますが、屋外での制限はありません。屋内外にかかわらず、1,000人以上のコンサート・イベントに関しては、ヘルスパス(2回のワクチン接種をしているか、48時間以内にPCR検査の陰性結果、あるいは、6か月から2週間前に陽性の検査結果の証明書)が必要になります。

 コンタクトスポーツ競技は屋内で再開することができるようになります。

 スタジアムやスポーツアリーナでは、観客全員が着席している場合、収容人数の100%を収容できるようになりますが、立った状態の場合は1人あたり4m²を予約する必要があります。

 フランスのサッカーやラグビーなどのスポーツ観戦をするスタジアムなどの様子を見ていると、大人しく座って観戦している人など稀なので、これが歩き回らなければ良しとするということなのか?と、ちょっと思います。

 このタイミングに6月30日からフランスは、夏のソルド(バーゲン)も始まります。これまで最も警戒されていたディスコやナイトクラブ等の再開は、7月9日からということになっています。

 しかし、現在、世界中で猛威を振るい始めたデルタ株がフランスでも確実に広まり始めており、先週までは、感染者のうちの10%であったデルタ変異種感染者が、今週には20%にまで上昇しています。一週間で2倍に増加とは、恐ろしいことです。

 地域によっては、これが70%を超える地域もありますが、国全体としては、全体の感染者数には、変化は見られず、集中治療室の患者数も減少を続けているため、ロックダウン解除について、現在のところは、変更はせずにこのまま日常生活を取り戻す方向に進んでいくようです。

 現在のところ、このデルタ株に打ち勝つには、なんとしてもワクチン接種を拡大するしかないわけですが、5月以降、ワクチン接種の予約状況は、頭打ち状態で、地域によっては、コマーシャルセンター内にワクチン接種するコーナーを設け、予約なしで買い物のついでにワクチン接種が受けられるところもでき始めました。

 そして、さらに、ワクチン接種を拡大するために、これまでパンデミック開始以来、ずっと無料だったPCR検査を有料化するという話も出ているようですが、これはまだ検討段階、観光客向けにもPCR検査を無料にすると公表しているフランス政府が国民向けのPCR検査を有料化するなどという話は、あまり現実的ではありません。

 このデルタ変異種の拡大のために一時は、劇的に感染者が減少したイギリスも現在は、1日の新規感染者数が2万人超えという状況になり、ロックダウン解除がペンディングになっていますが、一部の専門家の間では、これまでのデータによると、フランスは、イギリスの8週間遅れでイギリスの感染状況を追っている傾向にあり、フランスに比べると格段にワクチン接種が進んでいるイギリスであの状況なのだから、フランスで同じだけ感染者が増加すれば、大変なことになると分析している人もいます。

 デルタ変異種に打ち勝つには、国民の80%が2回のワクチン接種を受けていなければ防ぎきれないと分析されており、まさにウィルスとワクチン接種の速度の競争状態です。

 それでもロックダウン解除の予定を変更しないのは、フランスが3回目のロックダウンになかなか踏み切らなかった時の状況に似ているような気がします。

 それにしても、フランスがようやく3回目のロックダウンに踏み切った時には、イギリス変異種の拡大が原因で、それが停滞してきたと思ったら、今度はデルタ変異種の出現で、世界中が再び、不穏なモードに突入しつつあります。

 次から次へと威力を増して襲いかかるコロナウィルス、イギリス変異種、インド変異種の次には、オリンピック変異種に悩まされることになるかもしれません。


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2021年6月29日火曜日

海外生活でのご近所の騒音トラブル 黙って我慢してたらダメ

   



 ある程度の地域の生活レベルなどで、住居を選ぶことはできても、選べないのが、隣人です。一軒家であれば、かなりプライベートは守られ、余程のことがない限り、騒音に悩まされるということも少ないかもしれません。

 しかし、パリ市内には、一軒家というものは、ほとんどなく、ほとんどがアパートで、旧建、新建に関わらず、上下に隣人があるため、騒音トラブルは少なくありません。

 騒音トラブルが多いだけあって、フランス政府が出しているこんなサイトもあります。(フランス語ですが・・)

ご近所との騒音トラブルについて Service Public France

 ましてやフランス人のこと、大勢が集まって夜通しのパーティーとか、その騒ぎ方も尋常ではない場合もあります。

 我が家はパリに引っ越してきてから、かれこれ20年近く経ちますが、賃貸のアパートゆえ、この20年の間に同じ建物の住民もいつの間にか、ずいぶん入れ替わっています。

 私は、隣人ゆえ、あまり近付き過ぎず、かといって、あまり無愛想なのも何なので、つかず離れずの、顔を合わせれば、少し話をする程度の、ほどほどの関係を保っています。娘と同い年の子供がいるお母さんや、夫と同じ職場の人とかとは、他の人よりは少し余計に話をするぐらい・・そんな感じです。

 フランス人は、親しくなれば、べったりですが、他人にはあまり干渉しないので、こちらがあまり立ち入らなければ、放っておいてくれるので、それはそれで助かります。

 今の住居は、地理的にもわりと便利で、そのわりには静かなところなので、なかなか気に入っているので、できるだけ長く住めるよう、ご近所とはトラブルを起こさないように、それなりに気を使って暮らしています。

 とは言っても、長く暮らしている間には、トラブルも全くなかったわけではなく、上階の住民が家の中の工事が好きらしく、よくもそこまで、いじるところがあるかと思うくらい、頻繁に工事をしていて、まさか夜中に工事をするわけではないのですが、休みの日の昼食時だったりすることが多くて、「またか・・」と、苦虫を噛み潰していました。

 一時、あまりに騒音がひどい上に、上階の家の工事のせいで、何回か続けて、下の階である我が家の電気の回線が壊れたことがあって、何度目かの時には、さすがにブチギレて、上階に駆け上がって、苦情を言いに行ったことがありました。

 その時は、「うちの工事のせいじゃない!」と言い張っていましたが、その後は、そのようなことは無くなりました。

 また、私と娘が日本に行っていて、夫が一人で留守番をしていた時に、上階の人の子供が夜、騒ぐのがうるさいと、最初は、天井を棒で突いて、下から「うるさい!」と怒鳴り、終いには、怒鳴り込んだという話も聞いたことがあります。

 我が家の寝室の天井には、今もその時の傷跡が残っています。

 その時も、「子供を繋いでおくわけにはいかない!」と言い合いになり、夫と上階のご主人とは、ちょっと険悪なムードになったこともありました。

 私たちがいる時には、そんなに気にならない子供がはしゃぎ回る音も、一人寂しく留守番をしていた夫には、必要以上に癇に障ったのではないかと私は思っていますが、それ以来、騒音に悩まされることもありません。

 一応、フランスでは、昼、夜に関わらず、特に22時〜7時までの夜間の騒音については、それなりの手段を踏んで(まずは書留で手紙を本人に送る)、訴えることができることになっています。

 また、極度の騒音などに対しては、通報することもできます。

 そして、騒音被害が認められれば、迷惑行為を犯した人は、罰金を課せられます。とはいえ、そんなことをいちいち警察などの手を借りて、皆が訴えていたら、警察はとても手が足りないのがフランスです。

 まずは自分の否を素直に認めず、謝らないフランス人ではありますが、とりあえず、黙って我慢をすることはありえないことで、往々にして、本人は、どの程度の迷惑をかけているか気がついていない場合も多いので、直接、苦情を言いに行くのが手っ取り早い方法だと思っています。

 直接、話をすれば、その時は、少々気まずくても、隣人とて、四六時中、顔を合わせるわけでもなく、時間が経てば、意外とあっさりとケロッとしていて、それなりに気をつけるようにもなってくれます。

 中には、同じアパート内で誰もが共通に使うエレベーターの中に「騒音について」や、「上からゴミを捨てないでください」「今後も続くようなら通報します!」などという住民の誰かが書いたと思われる苦情が貼られていたりすることもあります。

 我が家は、そんなに広くもないので、それほど大勢の人を家に招くこともないし、そんなに大騒ぎをすることもないので、本当にひっそりと暮らしている方だとは、思っているのですが、私が一番、気を使っているのは、私が時々、気まぐれに弾くピアノです。

 特に防音装置などのない普通のアパートなので、大してうまくもないピアノの音は、聞く人によっては、大変な騒音です。私が育った家庭では、父が幼少期に父の姉(私にとっては叔母)が音大に通っていたために、繰り返し練習していたピアノの音が嫌いになり、私がピアノの練習をしていても、父が家にいる時間は、ピアノを弾かないという決まりだったので、ピアノの音が嫌いな人がこのアパートのどこかにいるかもしれないと、ちょっとした強迫観念があるのです。

 しかし、以前、隣に住んでいたおばさんなどは、その時に隣に遊びに来ていた友人と共にベランダ越しから、私のピアノを聴いて、「ブラボー!!」などと言って、拍手してくれたり、上階の夫と仲の悪いご主人でさえも、エレベーターで会ったりすると、「最近、ピアノの音が聞こえてこないけど、どうして、ピアノ弾かないの? あなたのピアノ好きなのに・・」などと言われたりして拍子抜けしたりもします。

 それでもピアノを弾く時には、食事の時間帯は避けるなど、時間帯には特に気を使い、ましてやロックダウン中などは、みんなが家にいて、閉じ込められてのストレス生活の中なので、さぞかし迷惑ではないかとピアノは、控えていたのです。

 日本人が海外生活をする場合、一般的な日本人の生活習慣から考えれば、迷惑をかけるよりも、迷惑をかけられることの方が多いかもしれませんが、いつどんな形で迷惑をかけてしまっているかもしれないので、ただでさえ、ストレスの多い海外生活、ご近所トラブルは避けたいので、できるだけ気をつけるようにしています。

 しかし、迷惑を被る側になってしまった時も、黙って我慢はせず、まずは恐れずに面と向かって話してみるべきだと思います。「それは私ではない!」とか、「私のせいではない!」などと、その場は言い張りますが、言われた方もそう言い返しながらも、多少は響いています。

 とにかく、はっきりと言わないことには、伝わらないのです。フランスという国は、黙って我慢していることは、ありえない国なのです。

 ほんと、疲れるわ・・。


ご近所トラブル

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2021年6月28日月曜日

フランスの統一地方選挙の記録的な投票率の低下 なぜネット投票を取り入れないのか?

  



 パンデミックのために3ヶ月間延期されていたフランスの統一地方選挙の投票率が記録的に低下したことは、外国人で選挙権のない私にとっても、とても衝撃的なことでした。

 これまでフランス人は、政治の話題が好きで、小さい子供でさえも、家庭内での両親の会話の受け売りであろうとも、いっぱしに政治のことを話題にしたりするのを目の当たりにしてきたので、棄権率65%という(なぜか投票率という言い方ではなく、棄権率という言い方をする)数字に正直、驚いています。

 これは、前回の2015年の41.59%(棄権率)を大きく上回っており、35%しか投票に行っていない・・これで決めていいの?という数字です。特に大都市圏の若い世代に、棄権率が高い傾向にあるようです。

 昨日のテレビのニュース番組などは、それでも各局、一斉に選挙特集を組んで放送していましたが、この投票率の低さでは、さぞかし視聴率も低かったのではないか?などと思ってしまいます。

 フランスの統一地方選挙は、多元比例代表制がとられていて、今回は、6月20日、27日と2回にわたって行われましたが、第1ラウンドでは、投票の絶対過半数を獲得した候補者が過半数のボーナスポイントを獲得し、残りの議席は、選挙の敷居値である5%を超えたすべての候補者の中で最も高い平均のルールに従って比例配分されます。

 絶対過半数を獲得した候補者がいない場合、第2ラウンドは、第1ラウンドで投じられた票の少なくとも10%を獲得したすべての候補者間で編成されます。

 今回の選挙では、例年とは、時期も違い、バカンス間近であることや、ロックダウンから解放されてまもない人々が投票に行くよりも、レジャーや買い物などに流れてしまったことなどが理由に挙げられていますが、若者の政治離れもその一因として挙げられています。

 少なくとも現在のフランスの街の様子を見る限り、コロナウィルス感染を恐れて投票に行かないということは、全く考えられません。

 これには、フランスの若者の政治離れという一面も確かにあるとは思いますが、若者のライフスタイルの変化にも起因しているような気がするのです。

 つまり、ネットです。現代の若者は、何をするのもネットで、買い物から銀行の口座の管理、医者などのあらゆる予約も全てネットで済ませてしまいます。

 我が家の娘などを見ていても、昭和の時代に生まれ育った私などからしたら、娘が鮮やかにネットを使いこなすのに呆気に取られるほどで、そのスピードと有効性を間近に見せつけられて、ついていくのがやっとという感じです。

 それが、選挙の投票となれば、わざわざ指定の場所に出向いて、紙を使って投票という前時代的な方法が若者には、受け入れられていないのだと思うのです。なぜ、なんでもネットの時代に選挙の投票手段にこれが使われないのかが甚だ疑問です。

 若者でなくとも、わざわざ出向かなくて済むネット投票は、多くの人が助かると思うのです。

 マクロン大統領は、来年の大統領選挙に向けての方策もあり、若い世代を取り込もうと、色々な呼びかけをSNSを使って発信しています。

 ソーシャルディスタンスを呼びかけるために、フランスで大人気のユーチューバーに依頼して、自身も彼らとユーチューブで共演したり、先日のカルチャーパスの発表をTikTokで行ったりして、一部からは、「大統領がYouTubeなんかに登場するなんて・・」などと批判を受けたりもしていますが、国全体、政府も、これからますます増えていく若い世代にも受け入れられるように、変化していかなければなりません。

 だいたい、選挙と言えば、莫大な金額がかかり、それに使われる人件費や使われる膨大な紙(選挙前には、候補者のプロフィールなどが書かれたチラシが数回にわたって送られてきます)など、環境問題の観点からしても、全く前進していません。

 無駄な紙の消費を減らすために、一方では、スーパーマーケットのレシートを無くすなどと言っているのに、この選挙に関わる無駄な物資と労力は、全く前時代的です。

 ネット投票にすれば、若い世代の投票率は、格段に上がるでしょうし、それによって選挙の結果も違うものになってくるかもしれません。

 技術的には、決して不可能ではないであろうことなのに、なぜ、投票にネットを使わないのか? ネットを使えない人には、一部、現在の方法は残すとしても、この投票率の低さを機に、ネット投票という方法も可能にしていくようにしたらいいのに・・と、思っています。

 フランスも日本も・・。


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2021年6月27日日曜日

世界中が警戒し始めたデルタ変異種

  


 フランスは、日々、確実に感染者数も減少し続け、今では、ほぼ日本と同レベルの数値にまで達しています。一時は、フランスの感染者数は日本の20倍以上もあったことを考えれば、飛躍的な回復です。

 そんな上向きの状況にフランスは、すっかりウキウキモードです。サッカーのヨーロッパ選手権の試合に熱狂し、昨日は、ラグビーの試合がスタッド・ド・フランス(スタジアム)で行われ、試合開始前には、マクロン大統領まで現れ、マスクはしているものの、選手一人一人と言葉を交わしながら握手。

 これまでは、握手は避けて、肘と肘を付き合わせる挨拶をしていたのに、握手???と、大統領もすっかりリラックスモードになっていることを感じずにはいられませんでした。

 しかし、そんなウキウキモードに忍びよってきているのが、デルタ変異種で、今やフランスの感染者の10%はデルタ変異種によるものに移行しており、フランスでも、とうとうデルタ変異種による2名の死亡者が確認されました。

 デルタ変異種により死亡した42歳と60歳の2人には、感染した場合に悪化するリスクが高いと言われる既往症があり、ワクチン接種は受けていなかったということです。

 この2名が死亡したジェール県や近辺のランド県(フランス南西部)では、デルタ変異種の感染者が大幅に増加していることが確認されています。

 「本格的なバカンスシーズンで多くの人が国内外を行き来し始める前に、この感染性も強く、威力も強いデルタ変異種の感染拡大を止めなければならない」とこの地域の保険機構は、行動制限の強化とスクリーニングとワクチン接種を急ピッチで拡大していくことを発表しています。

 そして、このデルタ変異種を警戒する世界各地のデルタ株対応のニュースが日々、新しく舞い込んできます。

 インドはもちろんのこと、イギリス、ポルトガル、南アフリカ、ロシア、オーストラリア、イスラエルなど、デルタ変異種は、これまでのイギリス変異種に置き換わって、威力を拡大しています。

 南アフリカでは、1日に18,000件を超える新規感染者が報告されており、第3波が第2波のピークを超える可能性が高いと発表しています。

 また、ポルトガルでは新規感染者の51%以上がこのデルタ株によるものになっており、完全なリバウンド状態を起こしています。ポルトガルでは(スペインも)検疫なしでのイギリスとの国境を解放しはじめていたのです。

 そして、これまでのところ、かなりコロナウィルス感染を封じ込めてきたオーストラリア・シドニーでは、このデルタ変異種による感染者が80名以上も発見され、デルタ変異種を封じ込めるために、週末から2週間の再ロックダウンの措置を取ることを発表しました。

 また、ロックダウンです!

 シドニーでは、これまでに感染はほぼ抑えられており、普通の日常生活が戻ってきていただけに、500万人以上のシドニー市民にとって、このデルタ変異種の拡大と再度のロックダウンは、衝撃的なものでした。

 あれだけ飛躍的なワクチン接種率を誇っていたイスラエルでさえも、このデルタ変異種の感染拡大を警戒し、一度は、外されたマスクが屋内の公共施設やオフィス内で義務化が復活されることになりました。

 EU圏内でも、バカンスシーズンが本格的に突入する前に、デルタ変異種をはじめとする衛生対策、制限措置を共有・調整することが決定され、「未だ薄い氷の上を歩いている状態である」とし、共通の認識の上に検疫等の一定の制限措置を置きつつ解放し、パンデミックが再び拡大した場合には、「緊急ブレーキ」をかけるという同意を確認しています。

 世界保険機構(WHO)は、「デルタ変異種は、これまでに特定された変異体の中で最も伝染性が高く、現在少なくとも85か国に広がっている」と警告しています。

 それにつけても、世界中がこんな状態なのに、「東京オリンピック・・・」想像するのも恐ろしくなってきました。


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2021年6月26日土曜日

フランスの家庭内性暴力の犠牲者が起こした殺人事件 ヴァレリー・バコの裁判

 


 フランスでは、今、2016年3月に起こった殺人事件の裁判が大きな話題を呼んでいます。

 この殺人事件を簡単に言えば、夫を銃で撃ち殺して、子供にも遺体を埋めるのを手伝わせたという陰惨な事件でしたが、この殺人に及ぶに至った、それまでの彼女の生い立ちに、世間は震撼とさせられています。

 彼女が殺害した夫というのは、もともと彼女の義父であり、彼女が14歳の時から、この義父による暴力的なレイプが始まり、この事件により、義父は2年半投獄されます。

 しかし、2年半後に釈放されると、この義父は、再び家に戻り、また同じことが繰り返され、彼女が17歳で義父の子供を妊娠、子供ができた時点から、彼の支配的な関係はさらにエスカレートし、彼女は彼の子供を合計4人産んでいます。

 もともとは母親のパートナーであったはずの義父とどのような経緯で彼女が義父と婚姻に至ったのか? 母親は何をしていたのか? その間の確執は明らかにはされていませんが、この性的倒錯者による支配的な家族関係が全ての原因であったと思われます。

 彼女は、夫との婚姻に関して、振り返って、子供には父親が必要だと思ったと語っています。

 それから四半世紀にわたって、彼女は、暴力、レイプに加えて、武器で脅されながら、アルコール依存症で暴力的な夫が用意したライトバンの中で、売春を強要され続け、この夫の食指が彼女の娘に及び始めようとしていたのを察し、この恐ろしい連鎖が永久に続くことを恐れて、犯行(夫を殺害すること)を決意したと語っています。

 彼女の弁護側は、「被害者は、彼女の方だ!」と彼女が約25年間にわたって、性暴力の被害を受け続けてきた経緯を説明し、情状酌量を求めました。

 結果的に、裁判所は、「明らかに彼女は犠牲者である」ことを認め、彼女が危険人物ではないこと、これまでの彼女が受けてきた連続的な暴力などを鑑み、5年の禁固刑、執行猶予4年を求刑、実際には、すでに1年を刑務所で過ごしている彼女は、自由の身となりました。

 自由の身となった彼女は、とにかく虚脱感しかないと語っていました。

 どんなに寛大な判決が下りたとしても、彼女の25年間は、戻ってこないだけでなく、彼女が多感な少女の頃から受けた心身ともに及ぶ傷は消えることはありません。

 最初にこの男が投獄され、2年半後に釈放された後に家に戻ることが可能であったことが何よりも問題です。

 先日、起こったDV男が一度は投獄されたものの、釈放後に元妻を何度となく訪れ、終いには彼女を起きかけまわし、路上で焼き殺したという陰惨な事件が起こっています。

 なぜ、このような危険な人物を釈放し、野に放ち、第2の悲劇を生むことになるのか?フランスの司法は、問題を抱えています。

 DVや性的倒錯者などは、投獄されたからといって、過ちを悔い改めるケースは少なく、たとえ釈放されても、長い間の監察が必要ですが、実際には、フランスにある犯罪者追跡のためのブレスレットは、ほとんど使用されていません。

 フランスでは、毎年13万人の少女がレイプの被害に遭い、そのうちの1万人以上が妊娠しているという調査結果が出ています。

 その中でも、なかなか表面化しにくくもありますが、家庭内のレイプも決して少なくないのです。DV(性的被害も含めて)は、心的外傷を受けた子供が大人になって同じことを行うという連鎖も悲しい事実です。


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2021年6月25日金曜日

フランスでのインプラントの手術

   


 パンデミックのために、のびのびになっていたインプラントの手術が本当は、今週の始めに行われる予定でした。それが、手術のために取り寄せているものがまだ届かないからと日程がずれ、ようやく第一段階の手術の日がやってきました。

 これまでも、その前段階の周囲の歯の治療や検査も、ロックダウンのために何度となく延期になったりしていたので、今回の手術の延期も「またか!」とは思っていました。

 しかし、今回は、もう1ヶ月以上も前に予約を入れていたのに、(それでさえ、途中にワクチン接種の予定などが入ったために、ワクチンをしてから、少なくとも2週間は間隔をおいた方がいいというので、その予定も込みでかなり先にずらして予約を入れた)「なのに、必要なものがまだ届かないなんて、どういうこと??」と、ちょっとムッとしていました。

 「1ヶ月以上も猶予があったのに、間に合わないってどういうことよ!」と家でボヤいていたら、あっさり娘に「ママ、それは、フランスだからだよ!」と言われて、イラついていた私も、「そうだった・・ここはフランスなんだった・・私としたことが、こんなことで腹をたてるなんて・・」と反省。

 しかし、初めてのインプラントの手術、インプラントをやったことのある友人から少々、話は、聞いていたものの、普通の歯の治療とは、ちょっとレベルが違って、下準備や検査にも散々、時間がかかり、2日前から、抗生物質の薬を飲んで・・などと言われていたので、未知の経験にちょっとナーバスになっていたのでした。

 手術の予約をした時点で、いつもの歯の治療とは違って、手術ということで、同意書にサインが必要だったりしたので、余計に身構えていたのです。

 抗生物質の薬を飲み始めた翌日に、その歯医者さんから電話が入ったので、「またか?」と一瞬、うんざりしたものの、それは、「手術の予定と薬をちゃんと飲みましたね!手術当日の朝はしっかり朝食をとって来てください」という確認の電話でした。

 当日、歯医者さんに行くと、コロナ禍だからか、いつもの歯の治療にも増して、厳戒な衛生体制、手術前の麻酔は別室で、麻酔を打っている間に、手術をする部屋には床にまでシートが敷かれ、頭から履いている靴にまでカバーをするという見たことのない光景に少々、ビビりました。

 手術は、いつもの歯医者さん以外にもう一人の医者とアシスタントという3人がかりの体制で始まりました。私の顔には、口だけが開いたシートが貼り付けられ、私には、全く見えない状態で、声だけが聞こえてくるという怖さが軽減されたような、不安が掻き立てられるような奇妙な感じでした。

 しかし、麻酔をしているために、手術中はあまり痛みは感じられませんでしたが、後でチェックのために撮られたレントゲン写真を見たら、「うわっ!」と思いました。

  



 抜いた歯の後の部分の歯茎を切って、歯の根っこの部分となるネジのようなビスが埋め込まれ、切った後は糸で縫われているのです。話には聞いてはいたものの、これが私の歯茎に埋め込まれたんだ・・とちょっとギョッとしました。

 ついつい身構えて、身を硬くしてしまうところを何度も「力を抜いて!」と言われ続けて、耐え続け、「もう少しで終わるから・・」と言われて、ホッとしたのも束の間、それからがまた長く、結局、手術は、1時間半ほどで終わりました。

 「今日は、熱いものは食べないで!運動もしないように!アルコールもだめ!当分の間は、固いものも食べないように!」と言われて、口内消毒液と痛み止めの鎮痛剤の処方箋をもらって、術後のチェックのために3日後に予約を入れて、薬局に寄って、薬をもらって帰って来ました。

 家に戻ってしばらくは、麻酔もまだ効いているために痛みもなく、「ようやく、半年以上も待った手術が進んだ・・」とちょっと放心状態でしたが、そのうち麻酔が切れてくると、これは痛い!!痛みというものは、この上なく不快で想像以上に疲れるものだったことを思い出しました。その上、歯だけではなく、頭痛もしてきて、なんだか微熱まで出てきます。

「痛み止めも1日3錠までね!」と言われていたので、そうそう頻繁に飲むわけにも行きません。正直、どちらかといえば、先日受けたコロナウィルスのワクチン接種の副反応の方を恐れていましたが、そちらの方は、ほとんど何もなく、まさかのインプラントの手術で、この痛みと発熱、だるさ・・。

 結構な費用がかかるものの、美味しいものを美味しく食べたいという私の食い意地からやることにしたインプラント。しかし、当面の間は、美味しいものどころか、満足なものも食べられないという試練の日がしばらくは、続きそうです。


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2021年6月24日木曜日

イル・ド・フランスの洪水被害 セーヌ川の排水網は、なぜ改善されないのか?

  



 フランスには、地震というものがないからか? フランス人は、災害というものに対して、少々、弱いのかな?と思うことがあります。今回のパンデミックは、災害と言ってもよいような規模のものでしたが、これは、ちょっと例外的な出来事で、一般的な災害とは少し違っています。

 それでも、最近のフランスでの災害といえば、洪水で、しかも、街中が水浸しになるような、かなりの被害です。

 私がフランスに来たばかりの頃(20年以上前)は、大雨が続いたりすると、セーヌ川の水位が上がり、水位が上がるとバトームーシュ(パリ市内のセーヌ川の遊覧船)が橋の下を通れなくなって、欠航になっている・・などという話は時々、耳にすることはあったのですが、街中が水浸しになるなどということはありませんでした。

 しかし、ここ5〜6年は特に、洪水の被害の話を頻繁に聞くようになり、すぐにセーヌ川が溢れ、こんなに度々、川の水が溢れ出すのに、なぜ対策を取らないのか不思議に思ってきました。

 しかも、街中が水浸しになったり、床上浸水するほどの被害が出ているにもかかわらずです。山の中でもあるまいし、都会の街中での話です。

 つい先日もイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)のウイユ(イブリーヌ)という街が集中豪雨のために、通りが浸水し、排水網が水を捌き切れずに、街ごと水浸し状態になり、消防隊要請の電話が600件以上にも上り、終いには、「命の危険がない場合は電話しないでください」とまで言い出す始末に・・。

 セーヌ川はパリの真ん中をジグザグしながら、パリの北と南を分けるように約8㎞にわたって流れているので、パリの中心は、どこへ行ってもセーヌ川にぶち当たるような感じもあり、また、この街中を流れる水のある景色がこの街に風情を加えています。   

 RATP(パリ交通公団)のマークに入っているこのブルーのラインは、パリとパリに流れるセーヌ川を表したものであると言われています。

             

 パリの街に趣を与えてくれるセーヌ川は貴重な存在で、1991年には、世界文化遺産としても登録されています。逆に世界遺産などになると、余計に手を加えにくいところもあるのかもしれませんが、洪水被害がこう頻繁に起きては、このまま放置するわけにも行きません。

 以前は、6月にこんなに気温が上がることもなかったし、真夏の猛暑もパリにはありませんでしたが、ここ数年は、夏には40℃を超える異常気象。かと思うとアフリカのような豪雨。

 明らかに地球温暖化による気候の変化だと思われますが、フランスでは、対策として、自動車の規制やスーパーマーケットのレジ袋の廃止などのプラスチック問題や、冬場のカフェのテラス席に使われていた暖房器具の禁止や外気が30℃以上の場合の冷房使用時には、ドアを閉めるなどの規制も敷かれています。

 しかし、2014年、2015年に制定された地方分権法により、コミュニティ間(大都市圏、都市コミュニティ、自治体)が環境の管理と洪水の防止対策を取ることができるようになっているにもかかわらず、たくさん起こっている洪水被害に対する直接的な対策は何も取られていません。

 こう頻繁に水害のニュースが上がってくる映像を見ていたりすると、発展途上国でもないのに、なんでこんなことに??と思わずにはいられません。

 さらに被害が深刻になると予想される将来のための壮大な小さな一歩一歩的な対策は、進んでいても、すでに起こっている現実の被害に対する対策が取られていない状態です。

 2024年のオリンピックはパリだそうですが、夏場の異常気象とともに、オリンピック開催中に、大雨で洪水・・なんてことにならないように、これを機に何か対策を講じてくれることを願ってやみません。


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2021年6月23日水曜日

フランスが秋には第4波を迎えるリスク 政府から送られてきたSMSのメッセージ

  


 現在のところ、フランスのコロナウィルスの感染状況は、確実に減少してきています。これは、これまでのロックダウン等の数々の日常生活における規制とワクチン接種の拡大、気温の上昇によるものと思われます。

 しかし、フランス政府は、9月から10月にかけて、コロナウィルス感染の第4波に襲われることを非常に懸念し続けています。

 政府の科学評議会の議長ジャン・フランソワ・デルフラシーは、秋にかけてフランスに第4波が到来することを警告しています。

 第一に懸念されているのは、インドで爆発的に感染拡大したデルタ株の存在で、ワクチン接種の拡大に成功したイギリスが、一度は、すごい勢いでロックダウンを解除し始めたにも関わらず、この変異株による感染拡大のために、日常生活に関わる全ての規制を解除することを延期したほどで、フランスにとってもこの感染力がこれまでのイギリス変異種などに比べて格段に感染力が強力な変異種をどれだけ抑えることができるのか?を非常に警戒しています。

 現在のところ、フランスでは、1日50〜150例のデルタ株による感染者が発見されていますが、実のところ、現在の一気に開放的になっているフランスでは、検査を受ける人もかなり減っていると考えられ、また、その検査で陽性になった人がどの変異種による感染なのかをきっちりと検査しきれているのかは、甚だ疑問です。

 昨年、一度、春から夏に向けて、感染が減少した段階で、一気にフランス人は、バカンスに出かけ、秋には、感染が再拡大したという苦い経験を持っています。昨年と大きく異なるのは、ワクチン接種が始まっているということで、これは大きな違いです。

 しかし、フランスにしては、かなり頑張って、これまで凄い勢いで進んできたワクチン接種もここへきて、予約が大幅に減少し始めており、一時は、1日35万人の予約が入っていたものの、現在の予約は、1日20万人ほどまでに減ってきており、当然、これまでにワクチン接種が済んでいる人は、予約しないわけですから、減少するのは、あたりまえといえば、あたりまえなのですが、それでもまだ、フランスでは、ワクチン接種を1回でもした人の割合は、全国民の半数には、至っておらず、まだまだワクチン接種をしなければならない人は、これまで以上に残っているのです。

 逆に以前のペースでワクチン接種が進んでいれば、現在は1回目と2回目のワクチン接種をする人が重なって、ワクチン接種の予約は、さらに混雑状態になっていたはずなのです。

 ここから先のワクチン接種が滞るのは、ワクチン接種を未だにためらっている人や、アンチワクチン論者の人たちで、この先のワクチン接種の拡大は、これまで以上の難題になります。

 そして、最も不安視されているのは、6月30日に再開する1000人以上のコンサートや7月9日に15ヶ月ぶりに再開されるナイトクラブやディスコでの感染拡大です。

 一応、コンサートやナイトクラブ・ディスコの再開に関しては、ワクチン接種証明書、あるいはPCR検査の陰性証明書、過去6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書のいずれかの提示が求められることにはなっていますが、収容人数の75%、マスク着用は推奨されますが、義務ではありません。

 コンサートやナイトクラブ、ディスコに行くような層のフランス人が義務化されてもいないマスクをするわけはなく、ある程度の実験データに基づく措置ではあるものの、実際にこの場が解放されることは、やはり、かなりリスキーなことであるに違いありません。

 現在、フランスで、ここまで感染が減少してきたのには、ワクチン接種の拡大と、かなりの生活制限や気温の上昇からの恩恵によるもので、日常生活がすっかり解放され、人々はバカンスに出かけ、ワクチンの接種もストップすれば、気温が下がり、ウィルスがより活発に飛び回る季節になり、ある一定数の人々がガンとしてワクチンを拒否し続ける状態であれば、再び感染が拡大することも充分に考えられるのです。

 昨日、政府からと思われるSMS(メッセージ)が私の携帯に入ってきました。政府からのメッセージが私個人の携帯に入るのは、昨年の3月に最初にロックダウンになった時以来のことです。

 「もしも、あなたがまだワクチン接種をしておらず、まだ予約もとっていないなら、こちらのサイトから予約してください。電話予約の場合は、0800730956(8時〜20時)、もしくは、かかりつけのお医者さんに相談してください。」

 最初のロックダウンの時にSMSが来た時は、「何で私の電話番号、知ってるんだろう?」とちょっと嫌な気分にもなったのですが、考えてみれば、税金の申告や健康保険証の登録などにも携帯の番号は記載してあるので、いくらでも政府側が持っている個人情報はあるわけです。

 それよりも一斉に全国民宛にメッセージを送るという大々的なことをフランス政府がやるということにその深刻さを感じたのです。

 ですから、今回のメッセージは、マクロン大統領が「私たちは、今、戦争状態にある」と宣言した後のあの緊張感に満ちた時以来、政府が第4波回避のためのワクチン接種の拡大をどれだけ真剣に取り組んでいるのかをまざまざと感じさせられるものだったのです。



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2021年6月22日火曜日

フランスで衰退しない商売の一つ フランスのメガネ屋 久しぶりにメガネを作りました

 

来るたびに綺麗になっている気がするメガネ屋さん


 私の生まれ故郷は東京で、2〜3年、行かないでいると、久しぶりに行った時には、何だかガラッと景色が変わってしまっていたりするところもあるのに比べて、パリはあまり変わらないなぁ〜と思ったりもするのですが、それでも、テロやデモや黄色いベスト運動などで騒々しくなり始めて以来、ダブルチョップで、パンデミックが覆い被さるように経済にも大きな被害を与え、街並み全体は変わることはなくとも、閉店に追い込まれた商店も少なくはなく、ロックダウン解除され、街が動き出すとともに、店舗の入れ替わりもなかなか激しく、もしかしたら、パリのガイドブックなどは、大幅な修正を強いられるのでは??などと思っていました。

 そんな中、ここ数年来、これだけは衰えないな・・と思うのがメガネ屋さんです。

 これは、フランスの保険のシステムとも関係があり、国民健康保険でもかなりカバーされる上に、ミューチュエルという国民健康保険ではカバーできない部分をカバーしてくれる保険の存在が大きいのです。

 若い世代は、あまり健康に不安もなく、このミューチュエルという保険に入っていない人も結構いることにびっくりしたくらいですが、まあ、かなりの割合で、フランス人は、このミューチュエルの保険に加入しています。

 私もフランスに来て以来、日頃は特に問題があるわけではなくとも、もしかして、入院・・手術・・なんてことになったら・・と不安に思って、ずっとこの保険に入ってきました。

 このミューチュエルは、契約の内容によってカバーされる金額や内容が変わってくるのですが、この保険の中には、メガネを作る補償が含まれており、契約内容にもよりますが、1年あるいは、2年に1回はその保険でメガネを作ることができるのです。

 私は、もともと視力が悪い方ではなかったのですが、加齢とともに視力が落ちて、近くを見るメガネが必要になってからは、定期的にメガネを作ってきました。

 まず眼科に行って、視力のチェックをしてもらって、処方箋のようなものを作ってもらい、それを持ってメガネ屋さんに行けば、メガネ屋さんの方で保険でカバーされる分を計算して、見積もってくれます。

 もう10年以上も毎年のようにメガネを作ってきたので、そんなにメガネばかりいらないか・・と思ってしばらく行かなかった時期もあったのですが、視力は衰える一方で、微妙に、メガネも合わなくなってきてしまうので致し方ないところもあります。

 私が長いこと通っていた近所の眼科は、予約をとっても予約が予約ではないように時間がかかるので、正直、うんざりしていたのですが、最近になって、娘がチェーン展開のPOINT VISION(ポアン・ヴィジョン)という眼科を見つけてきて、Doctolib(ドクトリブ)というネットのサイトで簡単に予約が取れ、スムーズにすむ眼科を見つけてきてくれて、ロックダウンが解除になった時点で、その眼科に行って処方箋はもらってきてあったのです。


パリ市内にあるチェーン展開の眼科


 その眼科では、予約の時間も予約どおり(本当は、あたりまえのことなんですが・・)システマティックに検査が進むようになっており、今までよりもずっと細かい検査もしてくれて、実に満足のいく内容でした。

 そして、その後、いつも行くメガネ屋さんから、「営業再開しました!」のお知らせは度々、メールが来ていたのですが、何かと後回しになっていて、昨日、ようやく久しぶりにメガネ屋さんに行ってきたのでした。

 いつ行っても光り輝くような店内で、行くたびに設備が整って綺麗になるような印象のメガネ屋さんも、その店舗はコマーシャルセンターの中に入っていたために、ずっと営業ができずに閉店状態が続いていたのです。

 メガネを色々と試しながら、フレームを選んでから、色々な手続きをしてもらっている間に店員さんと世間話などしながら、メガネを数年ぶりに注文してきました。

 「ロックダウン中は、どうしてたの?」と聞くと、「1回目のロックダウンの時は、全く仕事はしてなかったけど、その後は、フルタイムではないけど、少しは仕事をしてたわ!」とのこと。

 「でも、国からの補償が出てたから、大丈夫だったんでしょ?」と聞いてみると、「全然、働けなかった時でも通常のお給料の80%はもらっていたから、全然、大丈夫。フランスってほんと、良い国だわ!」と言っていました。

 平日の昼間にもかかわらず、これまで来れなかった人が多いのか、意外とお客さんがいることにも驚きました。

 ミューチュエルの保険料は、使っても使わなくても定額を支払っているために、私のようになんか、ただでメガネを作れるのにメガネを作らないのは、なんだか損しちゃう気分・・なんとか、少しでも取り戻さなきゃ・・と思う人は少なくないのです。

 メガネにも、微妙に流行りすたりがあり、毎年、見ていると、なんとなく今年は、こんな感じのものが流行りなのかな?という印象も受けます。今年は、どうやら、少し丸みのある若干大きめのフレームが多いようでした。

  

今年のメガネのモードがなんとなくわかる

 今では、保険云々以上に、メガネがなければ、読み書きはできない状態の私。メガネをしないで済むのならばそれに越したことはないのですが、それには、レーシックの手術を受けなければなりません。それはそれでまたちょっとハードルが高いです。


メガネ屋さんの店内にも視力チェックの機械は設置されている


 新しいメガネを注文したのは、メガネが合わなくなってきたこともあるのですが、今年いっぱいでミューチュエルの保険の乗り換えをしようかと考えていて、保険を乗り換える前に今まで支払った分を少しでも取り返そうというケチな根性もあるのです。

 いずれにせよ、この保険制度のおかげで、定期的にメガネを作り変える人が少なくないために、フランスではメガネ屋は比較的、パンデミックの影響も少なく、潰れるお店もあまりないのです。

 それにしても、最近、思うのですが、お店で店員さんに何か頼む時、若い人の方が断然、感じがいいな・・と。


●POINT VISION PARIS Centre Médical Ophtalmologique

   13-15 boulevard de la Madeleine 75001 Paris (tel.01.84.16.39.44)

POINT VISION PARIS RDV


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2021年6月21日月曜日

海外から見ると日本人の食卓はとてもレベルが高い

  


 以前、会社の同僚が子供が小さい頃に日本に子供を連れて行ったら、実家で出てきた朝食を見て、「お母さん、晩御飯みたいな朝ごはんだね・・」と言ったという話を聞いて、「さもありなん」な話だな・・と思ったことがありました。

 現在の日本の家庭の食事というものは、よくわかりませんが、いわゆる、よくありそうな日本の朝ごはんというものは、フランス人から見たら、朝から信じられないような食事です。

 一般的なフランス人の朝食は、パンにバター、ジャム、チョコレートペーストのようなものにコーヒーかカフェオレ、または、シリアル、せいぜいフルーツぐらいですから、日本のようにご飯にお味噌汁、焼き魚に副菜、漬物などの食事など、ちょっとあり得ないほどの手のかかり方です。

 日本だったら、洋食にしても、サラダや卵、ハムなど彩り豊かな食事が目に浮かびます。

 我が家も例にもれず、フランスでの朝食は、シリアルかパンで済ませてきましたが、仕事が休みの日だけは、日本のような和食の朝食を食べるようにしていました。

 しかし、海外生活を続けていれば、日本にいたら、きっと自分で作ることは決してなかっただろうな・・と思うようなものまで、手作りをしたりもしています。

 例えば、小さなベランダで日本の野菜を育てたり、パンとビールでぬか床を作ってみたり、納豆を作ってみたり、スポンジケーキやロールケーキを焼いてみたり、お団子を作ってみたり、・・こちらで何とか手に入る食品で、簡単には買えないものを何とか作ろうと暮らしています。

 フランスでは、女性も働いている人がほとんどなので、日本人とて、フランスに住んでいれば、仕事に家事に育児にと忙しくしていると思いますが、皆、色々、工夫して、まめに色々なものを作っています。

 我が家は、餃子が好きで、よく作るのですが、ニラも自分で育てて、餃子の皮とて、どこにでも売っているわけではないので、餃子の皮を買いに行くのが面倒な時は、皮から自分で作ります。

 考えてみれば、日本では餃子を家で作る家庭は多いと思いますが、キャベツや白菜、ニラ、ニンニクなどを細かく刻んで、具を寝かして、一つ一つ包んで焼くというなかなか面倒なお料理です。これを日常的に自分の家で何のことはなしにやってのける日本の主婦はすごいと思うのです。

 今では、フランスでも餃子は脚光を浴びて、一般の普通のスーパーマーケットで買えるようにはなりましたが、フランス人がこれを上手に焼けるのだろうか?と甚だ疑問でもあります。

 その餃子をフランス人が自分で家庭で作るようになるとまでは思いませんが、それにしても、フランス料理とて、ここまで手のかかる食事を日常的にフランス人が作っているとも思えません。

 たいていのフランス人の家庭の食事は、簡単なもので、夕食とて、パンとスープにハム、肉をちょっと焼くか、簡単な茹で野菜などの副菜、デザートにチーズやヨーグルト、ムースなどの乳製品程度で、そこまで食事に手をかけません。美食の国と言われるフランスの実際の日常の食事は、なかなか質素なものです。

 そこへ行くと、日本人の食卓は、健康に留意し、バランスよく、何品目もあり、季節の食材とともに、まことにレベルの高いものだと思います。

 フランスでも、最近、健康志向で、5 fruits et légumes par jour(1日5種類の野菜と果物を食べましょう)などと呼びかけられていたり、Bio(オーガニック)の食品がやたらと増えたりはしていますが、だからと言って、家で手間暇かけた料理をしているというイメージはありません。

 時間をかけるといえば、ポトフのような煮込み料理か、何かオーブンに放り込んで焼くか、時間はかけてもさほど手はかけない・・そんな感じです。

 日本には、「医食同源」という言葉があるように、少しでも身体に良い食品を取ろうという意識が並外れて高いような気がします。テレビ番組である食品が身体に良いと放送されると、その食品がたちまち売り切れになったり、1日350g30品目の野菜が推奨されているとおりに、これ1本飲めば、1日に必要な野菜を摂取できるという野菜ジュースなどが、大ヒット商品になっていたりします。

 それに比べて、フランスは、野菜を少しでも食べようという気持ちはわかっても、日本人の私からしたら、その味覚を疑いたくなるような、茹でたグリンピースや人参の瓶詰め、缶詰などが結構、売れているのです。

 華麗なおフランスのイメージを持っていらっしゃる方には、誠にその夢を壊すようで申し訳ないのですが、実際のフランス人の食生活は、そんなものです。

 フランスでは、外食に関しては、非常にコスパが悪いものが多く、大したものでなくとも日本円に換算するとバカらしいほど高いものが多いのですが、うちの娘などは、「フランス人は、家で大した料理をしないからだよ・・」などと言います。

 実際に、フランス人にとっての外食は、そのお店の雰囲気を楽しみ、人と話し、集うことにも大きな意味があるので、また別のエッセンスが加わるので、単にその食事そのもののみの値段に換算することはできないのかもしれません。

 とはいえ、フランスにもたくさん美味しいものがありますが、日常的に手間暇かけて食事を作っているかといえば、それは日本のレベルには到底及びません。

 海外に出て、日本ではあたりまえだと思っていたことが、あたりまえではなかったと思うことはたくさんありますが、日常の食事も日本のレベルは、決して当たり前ではない、なかなかなレベルのものなのです。

 2013年に和食が世界遺産に登録されましたが、それも海外(フランス人)の食生活を見ていると、頷けるような気もするのです。

 にもかかわらず、フランスは、少子高齢化の国ではないために、あまり目立ちませんが、なかなかな長寿国でもあるのです。日本に比べると、決して健康的とは思えない彼らの食生活で、なぜ、彼らは長寿なのか?と、時々、不思議に思います。

 思い当たることがあるとすれば、彼らはストレスをためずに発散していることか? りんごをよく食べるということでしょうか?


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2021年6月20日日曜日

高齢者施設の介護者へのワクチン接種がびっくりするほど進んでいない!ワクチン接種義務化の是非

  


 フランスでの新型コロナウィルスのワクチン接種は、現在、全国民の47.40%が少なくとも1回は、ワクチン接種を受けている状態にまで進んできており(2回の接種が済んでいるのは、26.70%)、国民の約半数がワクチン接種を受けた状態になるまで、あともう一歩となりました。

 1回目のワクチンを受けたと言うことは、2回目も受けることを受け入れているのがまずは、前提で、現在は、1回目を受けた時点で2回目のワクチン接種の予約を入れることになっているので、少なくとも50%以上の人のワクチン接種は、ここ1ヶ月くらいの間に2回目も完了することになると思われます。

 しかし、ここへきて、EHPAD(エパッド)と呼ばれる高齢者施設の介護者のワクチン接種率があまりに低い事実が浮上し、高齢者施設で働く介護者に対するワクチン接種を義務化するべきではないか?という話題が持ち上がっています。

 一般の病院、医療施設でのワクチン接種率が85%にまで達しているにもかかわらず、高齢者施設で働く介護者のワクチン接種率は50%程度で、感染した場合に重症化するリスクの高い高齢者施設においては、非常に危険なことです。

 ワクチン接種開始にあたって、当初、マクロン大統領は、「ワクチン接種を希望する者に対しては、全て無料でワクチン接種を行う」と発表していましたが、この「希望する者」という文言が入っていたということは、義務ではないということでもあります。

 当初はワクチンに対して懐疑的であった人もかなり多かったフランスですが、世界各国でのワクチン接種による感染減少の様子を目の当たりにして、ワクチン接種を希望する人がたくさんいます。

 しかし、依然として、一定数のアンチワクチン論者は、常に存在し続けるわけですが、ワクチンをしなければ、自分が危険なだけでなく、他人をも危険に晒すという観点からも、特に高齢者施設で働く介護者がワクチン接種を受けることは、倫理的にも、仕事の一環であるとも言えます。

 ワクチンはすべての人が無料で利用でき、現在は、困難なことではありません。オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在のこの深刻なワクチン接種が進んでいない高齢者施設の介護者とその雇用主に対して、できる限りワクチン接種を受けるように呼びかけていますが、夏の終わりまでにこの状況が改善しない場合には、義務化することも検討すると語っています。

 特にデルタ株(インド)と呼ばれている変異種の感染拡大によって、気温が低下する新年度が始まる秋頃になった頃に第4波を迎えてしまうことをフランス政府は、とても警戒しているのです。

 フランス政府は、この第4波を回避するために、8月末までに全国民の85%へのワクチン接種完了を新たな目標としています。

 我が家の娘は、4月から、パリにある病院内にある研究所でスタージュをしていますが、仕事を始めてすぐに病院側から、すぐにコロナウィルスのワクチン接種を受けてくるように言われ、その当時は、彼女の年齢では、普通はワクチン接種は不可能だったので、「ラッキー!」とばかりにワクチン接種を受け、とっくにワクチン接種は、完了しています。

 一緒に仕事をしている周囲の職場の人々も100%ワクチン接種が済んでいて、最初は、病院でスタージュ?と聞いて、危険ではないのかな?と思った私も、むしろ、全員がワクチン接種が済んでいる職場など他にはなかなかないかも・・と思い直したのでした。

 また、彼女が病院内の研究所でスタージュを始める前の段階で、これまでに彼女が受けてきたワクチン接種(幼少期からフランスでは、いくつもの義務化されているワクチン接種があります)の履歴全てを提出しなければならなかったりで、コロナウィルスに関わらず、病院(研究所)での感染症や疾病等の危険へのチェックは、かなりきっちりしているんだなぁと感心したくらいです。

 フランスでの幼少期から義務化されているワクチン接種は、かなりたくさんあり、フランスで育ってこなかった私は、フランスで義務化されているワクチン接種の種類やタイミングがわからず、かかりつけのお医者さんに定期的に娘の Carnet de Santé (カルネ・ド・サンテ=生まれてからの医者の記録を綴っているノート)を持って通っており、このワクチン接種をそろそろしなければいけない年齢を度々チェックしてもらい、娘のワクチン接種は、滞りなく進められてきました。

 コロナウィルスワクチンに関しては、まだ開発されたばかりのワクチンで、義務化はされる段階ではないのかもしれませんが、ワクチン接種を義務化するということは、不可能ではない事象で、今後、医療従事者や介護者に関わらず、コロナウィルスのワクチン接種が義務化される日は来るかもしれません。

 コロナウィルスワクチン接種の義務化に関して、マクロン大統領は、「当事者への信頼と信念に賭ける方が義務化するよりも、効果的である」と述べています。確かに本人が自らその気になってくれることの方が好ましいことではありますが、その崇高な親心がわからない国民は、けっこう、少なくないのです。

 しかも、医療介護者という仕事に付きながら、このような事態。

 しかし、このことで、ただでさえ人手不足のこのセクターがさらに人員不足になることも心配されているのです。



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2021年6月19日土曜日

フランスで日常が戻るとすかさず始まるのはストライキ



 5月の初旬にようやく10㎞以上の外出制限が解かれて以来、フランスは、あれよあれよという間に、レストラン・カフェのテラス席が再開し、美術館、映画館、デパートなどもオープンし、6月半ばにして、屋外でのマスク義務化が撤廃され、来週からは、夜間外出禁止もなくなり、ますますコロナ前の日常にグングン近づいていく感じです。

 もちろん、まだ、屋内ではマスクが義務付けられているし、人数制限なども行われているので、すっかり元の日常というわけにはいきませんが、かなり、これまで失っていた自由を取り戻しつつあります。

 それは、ワクチン接種も私が予想していた以上に、「これがフランス?」というほど、どんどん進んでいて、感染者も順調に減少し、一時は、集中治療室の占拠率が140%!と言っていたのがウソのように、現在は、50%ほどまでに下がっている現状に裏付けられています。

 しか〜し! 日常が戻り始めると、途端に戻ってくるのがストライキというのが、フランスです。ロックダウン解除の第4段階の繰上げ(夜間外出禁止撤廃や屋外のマスク義務化撤廃)が発表されたのとほぼ同時に、待ってましたとばかりに発表されたのは、SNCF(フランス国鉄)やパリ・シャルル・ド・ゴール空港、病院等のストライキの決行予定です。

 SNCF(フランス国鉄)は、6月21日(月)運転手がストライキを予定しています。これにより、大幅な減便になるため、SNCFは旅行者に対して、彼らの旅行を延期するように忠告しています。

 これは、経営者側がSNCFの過剰人員を整理しようとしていることに抗議するストライキです。SNCFの労働組合トップは、他のドライバーによる穴埋めを妨げるために、路線ごとに、要求は異なってはいても、ストライキを予定している路線は、全て同じスケジュールで同時にストライキを行うと発表しています。非常にタチが悪いです。

 彼らは、鉄道セクターを競争に開放することに反対し、将来の入札を視野に入れ、そのためにすでに開始されている会社側の人員整理の対応に、「鉄道労働者には保証がない」と抗議しているのです。

 ここがフランスのダメなところで、国営鉄道が一括して運営しているために、競争がなく、競争がないために、改善されるべきところも改善されず、「鉄道労働者には、保証がない」などと言うのは、一般市民からすると、「ふざけんな!」と言いたくなります。SNCFは、定年退職の年齢が著しく低かったり(特にドライバー)、一般の職業に比べて、特典もかなり多い職業なのです。

 しかし、彼らはこれまでの自分たちの権利が侵害されることに抵抗しているわけです。乗客という人質をとって・・。

 また、ストライキの予定は、国鉄だけではなく、パリ、シャルル・ド・ゴール空港も2日間のストライキを発表しています。

 彼らは、賃金低下に繋がる労働契約を締結させる計画に異議を唱えています。ストライキは、18日から3日間続く予定です。

 また、7月1日には、5日間にわたる別のストライキも計画されており、これは、夏のバカンスに出発する人で溢れる7月最初の週末にかかるため、影響はさらに大きくなります。

 これらの公共交通機関のストライキの場合、減便や人員不足のために必然的に屋内での混雑が起こり、現段階では感染悪化の危険も孕んでいますが、フランス政府は、ストライキやデモは国民の権利として尊重する態度を取らざるを得ないため、回避することはできません。

 これまで、ロックダウン中でもデモ活動は行われ続けていたフランスですが、営業していないセクターも多かったために、労働に対するストライキは影を潜めていました。

 しかし、一度、社会が動き出すと、パンデミックによる経営不振からの経営者側の対策として開始される賃金カットや人員削減が始まり、いよいよ労働者によるデモやストライキが始まるわけです。

 直に国民に影響を及ぼす公共交通機関や空港などの公共施設に加えて、救急隊、病院、ラジオ局、テレビ局など、ストライキの話は、次から次へと聞こえてきます。

 少しずつ日常が戻り始めて、経済も復興していくと思った途端にストライキ、感染が悪化して、営業停止になっていた時は、「このフランス人が働きたいと言っているんだ!」と営業再開を求める人が喚いていましたが、いざ再開すると、労働条件についてのストライキで途端にストップしてしまいます。

 フランスの経済復興の道のりは、長くて険しく、騒がしいものになりそうです。


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2021年6月18日金曜日

ディズニーランドパリ・ユーロディズニー8ヶ月ぶりに再開 一般社会よりも厳しい衛生管理

  


 2020年10月30日以来、閉鎖されていたディズニーランドパリ・ユーロディズニーが約8ヶ月ぶりに再開しました。コロナ前までは、パリ(フランス)の観光地の一つでもあったディズニーランドパリは、1日の入場者数は約5万人であったところ、現在の再開に関しては、入場者数は2万8000人に制限されています。

 しかし、再開当日は、熱狂的なディズニーランドファンは、夜明け前から開場の瞬間を待ち構え、8ヶ月ぶりのディズニーキャラクターがメインストリートをダンスをしながらやってくる様子を楽しみました。

 ディズニーランド内は、たとえ屋外であってもマスク着用が義務付けられており、公園内には、2000ヶ所にアルコールジェル配布のポイントが設けられ、来場者全員がアルコールジェルを頻繁に利用できるように配慮されています。

 現在のところは、ディズニーリゾート内のホテルは、ニューポート・ベイ・クラブのみが営業しており、その他の6つのホテルは、6月21日に営業を再開します。

 現在のところは、観光客もほとんどいないために、通常ならば、セキュリティーチェックのために長い時間を費やされるところ、ほとんど待ち時間もないようです。美術館も今なら、ガラガラだ・・という話を聞きつけて、私は、とりあえず、手近なルーブルにすっ飛んで行きましたが、観光客がいなくて、空いているのは、ディズニーランドも同じなようです。

 (正直、フランスに来て、なぜ?わざわざディズニーランド?と思わないでもないのですが、ディズニーランドがあるのは、アメリカ、日本、香港、中国で、ヨーロッパでは、フランスのみで、ヨーロッパ近隣国からの観光客には、意外とディズニーランドに行きたがる人も少なくないのです。特にロシア人なども多いと聞いています。)

 再開初日は、熱狂的なディズニーファンが多く、いつもは週に2〜3回通っていたという人までいて、「ディズニーのホームを守ってくれてありがとう!」などとプリントされたTシャツを着ている人など、もうファンと人気スターのような関係が垣間見れます。

 かつては、ファンに熱烈な抱擁を受けていたミッキーマウスやドナルドダック、グーフィーなどのキャラクターたちも、すっかり衛生対策モードになっており、張り巡らされているセキュリティーコードの向こうから挨拶しています。

 また、ミッキーマウスに会えるというポイントでも、ミッキーマウスやミニーマウスは、プレシキガラスの壁の向こうで踊っています。

 ディズニーランド内のレストランでは、TousAntiCovid(フランスの感染者追跡アプリ)にリンクしているQRコードを読み込むことを求められます。このQRコードにより、メニューが表示され、注文することができます。

 レストラン内でも、従業員が感染を防ぐために、訪問者間のソーシャルディスタンスを綿密にチェックしています。現在のところ、安全な衛生対策が取られていない場合は、営業停止に逆戻りですから、ディズニーランド側も感染対策には、ことのほか、気を使っているようです。

 ディズニーランドを一周できる電車は、グループ毎に、他のグループから隔離されるために、透明なプラスチックのシートを受け取り、独自のコンパートメントの空間で楽しめるようになっています。他のアトラクションに比べて、滞在時間が長くなるための特別な措置だと思われます。

 再開初日は、途中、停電のために、一部のアトラクションがストップするというアクシデントはあったようですが、この程度のことは、フランスでは、普通のこと、ましてやコロナウィルスとは関係ありません。

 ディズニーランドパリの衛生対策を見ると、一般社会(フランスの街中や、レストラン・カフェなど)よりも、数段、厳しく強化された衛生対策をとっているように見えますが、ディズニーランドが、これから先、フランスでのこの種のアトラクションパークの衛生対策の基準になっていくかもしれません。

 これから海外からの観光客も増え、とかく興奮しがちなアトラクションを抱えるリゾートパークは、かなり厳しめな衛生対策をとって、お客様を迎えようとしています。

 それにしても、普段なら、混雑する場所が、行列なしで楽しめる、今は、夏休みに入る前のもう少しの猶予期間なようです。


ディズニーランド・パリ Disneyland Paris

Disneyland Parisサイト


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2021年6月17日木曜日

当初の予定を前倒しで、屋外でのマスク義務化と夜間外出禁止の撤廃


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 カステックス首相は、16日、かねてからの予定だった6月30日の「屋外でのマスク着用義務化撤廃」を17日(木)からに前倒しにすること、そして、これまで夜間23時以降は禁止されていた夜間外出禁止に関しても、予定よりも10日早い6月20日(日)に解除することを発表しました。

 フランス政府は、このロックダウン解除の第4段階の日程を前倒しにすることについて、フランス国内の感染状況が予想よりも早いスピードで改善していることを示し、ここ一週間ほどの感染者数の平均が1日あたり3,200人となり、昨年の8月以来、最も低い数値となったことで感染状況が終息に向かっていると判断しているとし、現在、国内で憂慮すべき感染状況悪化が見られる地域はなく、集中治療室の患者数も2,000人を下回り、これまで深刻な状況に置かれていた医療機関が通常モードに戻りつつあるためと説明しています。

 4月末に発表されたロックダウン解除の段階的なカレンダー(予定していた日程)は、現状を踏まえて軌道修正する必要があると述べました。

 屋外でのマスク着用義務に関しては、集会の場、人混み、マルシェ、スタジアムの観覧席等に関しては、マスク着用義務は継続、また、商業施設、公共交通機関、職場等の屋内では、全面的にマスク着用義務が続きます。

 23時以降の夜間外出禁止についても、継続する必要はないと判断。しかし、飲食店やスポーツ施設、文化施設における収容人数制限は継続され、ソーシャルディスタンスを充分に取ることなどの衛生措置は、今後も引き続き必要であるとしています。

 つまり、屋外でのマスク着用義務や夜間外出禁止は、撤廃されても、今後も感染対策を講じられていないパーティー、や集会は禁止されたままではあります。

 しかし、これでフランス国民がさらに解除モードに突入し、浮かれまくる様子が目に浮かぶようで、せっかく感染が減少してきたところに危険因子がまた増加し、不安でもあります。

 ここ数日間、6月というのに30℃超えの暑さが続くフランスで、マスクはかなり厳しいものではありましたが、皮肉にも屋外でのマスク着用義務化が撤廃されるその日から、気温は、一気に下がっていく予報になっています。

 6月は、これからも、フェット・ド・ラ・ミュージック(音楽の日)や、サッカーのヨーロッパリーグの試合日程などが続き、血の気の多いフランス国民が興奮状態になる予定が目白押しです。

 中には、「イギリスを見ろ!早くに感染状態が改善したからといって、早くに色々な規制を解除した結果、感染の悪化が見られて、最終的な規制解除を延期しているではないか! イギリスの二の舞を踏みたいのか!」と不安をあからさまにしている人もいます。

 また、「このマスク着用義務化の撤廃や夜間外出禁止の撤廃の前倒しは、統一地方選挙を目前に控えた国民に迎合する人気取りの政治的な判断だ!」と批判する人もいます。

 たしかに、ロックダウン解除が進むに連れ、マスクをしていない人も増え、「23時以降の夜間外出禁止に何の意味があるのか?」などの声が上がっていたことは事実ではありますが、段階的な解除で予定していたとおりに進めていくことに、それほどの困難があったとも思えません。

 そして、この規制を早めた10日ほどの間にだけでも、どれだけワクチン接種ができて、その分の人が少しでも守られた状況でマスクの義務化や夜間外出禁止の撤廃の日を迎えた方がどれだけ、被害が少なくて済んだか?とも思います。

 イギリスで問題になっているデルタ株(インド変異種)に関しては、現在フランスでは、感染者の4%程度であると言われており、現段階ではさほど問題にはなっていません。しかし、この変異株自体は充分危険なものであり、今後、さらにこの変異株の選別のための措置を強化し、空港や港、国境における出入国時のコントロールを強化するとしています。

 また、これらの緩和の措置は、感染状況が急激に悪化した場合は、必要な規制を再び講じるとしています。

 しかし、規制はどうあれ、人のいない屋外はともかく、個人的には、まだ、到底、マスクを外す気にはなれそうもありません。

 ただ、多くのフランス国民は、これでさらに日常モードに近づき、これまでの鬱憤も合間って、一気にハメを外すのは、目に見えています。

 お祭り気分に拍車がかかり、フランスでは、「日本でのオリンピックなんて、全然、OKじゃん!」という流れになるかもしれません。


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2021年6月16日水曜日

6月15日から12歳から17歳の未成年もワクチン接種開始 未成年のワクチン接種の条件

 



 フランスは、現在までに3037万人へのワクチン接種が進み、全国民の45.34%が少なくとも1回のワクチン接種を受けています。(2回終了は、23.37%)

 フランスがとりあえずの目標としている全国民の60%へのワクチン接種まであと14.66%となりました。

 ここへ来て、ワクチン接種は、1回目のワクチン接種をする人と2回目のワクチン接種をする人とが、ほぼ同数になり、このままでは、2回目のワクチン接種をする人が上回り、後回しになっていた年少者へのワクチン接種がずっと先に取り残されることになります。

 このタイミングで、フランスは、12歳から17歳へのワクチン接種への門戸を開きました。もちろん、未成年ですから、両親の承諾書(webサイトでダウンロード可能)が必須で、ワクチンの種類は、現在のところ、ファイザー・ビオンテックのワクチンに限定され、薬局やかかりつけの医者ではなく、ワクチンセンターに出向かなければなりません。

 また、承諾書を書いた両親のどちらかは、ワクチン接種に立ち会うことが義務付けられています。

 また、これまでにコロナウィルスに感染後、小児多系統炎症性症候群(PIMS)を発症した子供は、重度の炎症反応のリスクを回避するために、ワクチン接種を受けることができません。

 これは、夏のバカンス後の学校再開時にの9月・10月に学校がクラスターとなる第4波を懸念しての対応でもあります。

 また、6月も半ば過ぎになってくると、2回目のワクチンがバカンス中に重なってしまうために、1回目のワクチンをしなくなる人が出ないように、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、「7月にバカンスに行くために、今、一回目のワクチン接種をするのを躊躇ってはいませんか?」「1回目ののワクチン接種から21日から49日(3週間から7週間)の間に2回目のワクチン接種をスケジュールできるように、予約システムを変更しています。」とバカンス最優先のフランス国民の動向を慮る対応と説明を前もって発信しています。

 フランス人の夏のバカンスがいくら長いとはいえ、普通は、せいぜい1ヶ月のことです。3週間から7週間の間隔をあけられることがわかれば、バカンス前に1回目のワクチン接種をして、バカンスから戻って、2回目のワクチン接種をすることができます。

 また、フランスでは、ワクチンを少しでも無駄にしないために、1回でもコロナウィルスに感染して抗体を持っている人は、1回のみの接種で済ませられるため、ワクチンセンターにおける接種においては、ワクチン接種前の問診とともに、簡易の抗体検査を実施し始めました。

 この検査の実施により、すでに自分でも気づかないうちに感染して、抗体ができている人に対しては1回のワクチン接種で済ませることができ、ワクチンの節約と副作用の回避への対策にもなります。

 現在のところ、カナダ、イスラエル、イギリスなどの国々では、全国民の60%以上のワクチン接種率に到達しており、アメリカは、52%、イタリア、ドイツ、フランスが45%〜50%の間でスペインがそれを追う感じです。

 ワクチン接種開始当初は、大きく遅れをとったフランスですが、ワクチン接種に関しては、その後の追い上げでフランスは珍しく頑張りました。いつも、何をやってもグズグズと時間がかかるイメージなのに、こんなに遅れを取り戻せるなんて、やればできるんじゃないか!という上から目線で、その頑張りを讃えたくなります。

 当初は予約の電話が繋がらなくて、大変だったワクチン予約は、今では、高齢者でリスクの高い人から、ワクチン未接種者に保健所からワクチンの予約を促すために、一軒一軒、電話をしているというのですから、驚きです。

 ここで、「バカンスに出る前にできるだけワクチン接種をしてバカンスを安心して楽しもう!」キャンペーンをすれば、フランス人にとってはバカンスが鼻先にぶら下げられた人参になってさらにワクチン接種も進むかとも思いますが、ワクチンをしてもしなくともフランス人は、楽しくバカンスを過ごすに違いありません。


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2021年6月15日火曜日

フランス政府が若者に発行したカルチャーパスがMANGAパスになった!

 


 新型コロナウィルスにより停滞した文化事業推進・支援と若者への文化と芸術への好奇心を喚起させるために、マクロン大統領は、5月半ば過ぎに、現在、18歳(2003年生まれ)の若者、約80万人に対して、300ユーロのカルチャーパスを付与することを発表しました。

 マクロン大統領は、同時に、彼のTikTokアカウントでも、申請書のアカウントに名前を登録するだけで使うことができるカルチャーパスは、「映画、小説、マンガ、ビデオゲーム、劇場、ラップ、メタルなどなど・・あらゆる文化的な目的に使用することができます」と若者向けに拡散しています。

 若い世代には、若者の通信手段に向けて、自らのアカウントから直に発信するあたり、しっかりと時代を把握している感があります。

 このカルチャーパスの実現には2年以上の月日が費やされており、劇場、映画館、美術館、音楽、ショーのチケット、映画のサブスクリプション、芸術・美術材料、楽器のコースまでも提供しています。

 しかし、それには、ある程度の制限がかかっており、書籍は、書店からの購入に限られ、Amazonから配送することはできません。また、音楽の面では、SpotifyではなくDeezer、映画等の配信サービスは、Netflix、Amazon Prime、DisneyではなくCanal +、Madelenなど、フランスの産業を盛り立て、活性化するように意図されています。

 また、2022年1月には、このカルチャーパスは、中学生に年間25ユーロ、高校生にそれそれ50ユーロが割り当てられます。これは、一人当たり合計200ユーロで、若者が18歳になった時の300ユーロを加えると、500ユーロになります。

 この時点で、カルチャーパスは、中学生以上、400万人が該当する特大案件に膨れ上がります。18歳のカルチャーパスに関しては年間1億6000万から1億8000万ユーロが見積もられています。

 しかし、もともとフランスでは、ルーブルなどの主要国立美術館などに関しては、26歳以下は無料で、このカルチャーパスを使うまでもありません。 

 そして、いざ、蓋が開いてみると、これは、意外な?方向に偏り始めたのです。

 このカルチャーパスでは、本を購入することができるのですが、このうち、4分の3はMANGA(マンガ)で、日本の漫画コミックが爆発的に売れているのです。若者たちが、10 冊、20 冊、さらには 50 冊のマンガを抱えて店を出てきます。

 マンガを扱う書店におけるコミックの売上高トップ 40は、ほぼすべて日本語のタイトルで構成されています。書店においては、今や、「カルチャーパス=マンガパス」と呼ばれているほどです。

 「大多数は、普段は購入する余裕のない大規模なシリーズものを購入する」のだそうで、一人で10冊、20冊、50冊のマンガを抱えて店から出てくるのも頷けます。

 カルチャーパス運用のベストセラーマンガは、すでにトップセラーとなっているマンガです。フランスで2年間で200万部以上を売り上げた「鬼滅の刃」は、記録を塗り替え続けています。これは、先日、映画館の再開とともに、封切りになった映画「鬼滅の刃」の大ヒットも後押ししています。

 また、「進撃の巨人」の最終巻は10月13日に発売予定になっていますが、すでに、シリーズのすべての巻で在庫が落ちしています。

 フランスのカルチャーパスがまさかのマンガパスになるとは、フランスの文化継承に貢献することを見積もっていた政府の意向をよそに日本のマンガという文化がこれほど、フランスの若者に根付いていたことに驚きを隠せません。

 数年前から、フランスでは、普通の書店に行っても、当たり前のようにマンガが置いてあるようになり、メトロの中でもマンガを読んでいる若者を見かけたりすることに意外な驚きを持って眺めていましたが、このカルチャーパスにより、そのフランスの若者文化のほとんどをマンガが占めているということがさらにはっきりと浮き彫りになった形です。

 フランスで広まった日本食ブームの一旦は、マンガが担っていたとも言われており、日本のマンガの中に登場する日本のラーメン・餃子などの食べ物を食べてみたい・・と思って、最初は、パリにある日本食屋を訪れた・・という人も少なくありません。

 以前、家に遊びに来た女の子が「日本のラーメンを食べてみたい・・」というので、パリのラーメン屋さんに連れて行ったことがありましたが、「なぜ?ラーメン?」と聞くと、その子も日本のマンガが好きで、「マンガに出てきたラーメンを食べてみたかったから・・」とのことで、とても満足そうにしていました。

 日本のマンガを読んで、日本に行ってみたい!と、思う若者も少なくありません。コロナ前までは、日本行きの飛行機は、いつ乗っても、フランス人でいっぱいでした。

 残念ながら、現在は、日本へは簡単には、行ける状態ではありませんが、このカルチャーパス=マンガパスで、さらに日本を知る人が増え、パンデミックが終息したら、また多くのフランス人に日本を訪れて欲しいものです。

 それにしても、フランス文化の継承を目論んでいた政府が目の当たりにしたのは、「フランスの若者の文化=日本のマンガ」というフランスにしたら、ちょっと残念、でも日本人の私としては、フランスの若者から日本が愛されているような、ちょっと嬉しい現実でした。



カルチャーパス

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2021年6月14日月曜日

モンブランってフランスではマイナーな存在  アンジェリーナのモンブラン

 


 先日、数年ぶりにルーブル美術館へ行って、帰り道、あまりに閑散としているリヴォリ通り沿いのお店を気の毒だなぁと思いながら、それでも、久々に通るこのあたりの風景に、そういえば、ここには、こんなお店があったとか、もうちょっと行くとサン・ロック教会だな・・とか、サン・トノーレ通りだな・・とか、少しずつ思い出し、「あぁ・・そう言えば、もうちょっと行くと、アンジェリーナがある!」と思い出して、「久しぶりにアンジェリーナに寄って、モンブランを買って帰ろう!」と名案を思いついたのでした。

 本当は、ルーブルの中をさんざん歩いて、本当は、もう歩きたくはなかったけれど、モンブランのためだと思うと、元気に歩けるから現金なものです。

 私は、特にモンブランが好きで堪らないというわけでもないのですが、アンジェリーナのモンブランは、別です。というか、私は、アンジェリーナのモンブランを食べて以来、モンブランが大好きになりました。

 アンジェリーナは、1903年以来、パリのリヴォリ通りにある、今年で創立118年を誇る老舗の洋菓子のサロンです。店内は、ベル・エポックの有名な建築家、エドワード・ジャン・ニールマンスによってデザインされたもので、その装飾は、優雅さ、魅力、洗練を兼ね備えています。

                         
    


 歴史あるこのお店は、パリの貴族にとって欠かせない有名なお店で、プルースト、ココ シャネルなども通った場所として知られており、ことに「モンブラン」と「ホット・チョコレート」で有名なお店です。

 モンブランは、メレンゲの上にのった濃厚な生クリームがマロンクリームに包まれているだけのシンプルなものですが、小細工してない分だけ、生クリーム・マロンクリームそのものの味が引き立つ絶品です。

 一見、しつこいような感じもしますが、しっかり固まっているのにふわっとしているクセのない生クリームとマロンクリームは、素晴らしく相性がよく、上品な口どけに、後味もよく、あっという間に食べてしまいます。

 しかし、不思議なことに、フランスでは、モンブランを置いている洋菓子店は、そんなに多くありません。一般的なフランスの洋菓子店は、どこへ行っても、まるで決められているかのようにミルフィーユとかエクレアとか、タルトとか、同じものばかり・・モンブランを知らないフランス人も少なくないのではないかと思われます。

 意外なことですが、もしかしたら、モンブランという洋菓子自体の認知度は、日本よりフランスの方が低いかもしれません。

 我が家の近くの洋菓子店でも、まずモンブランを見かけることはなく、ようやく見つけても、どうしてもアンジェリーナに及ぶものではありません。

 一度、冷凍食品のお店PICARD(ピカール)でモンブランを見つけて、喜び勇んで買って帰りましたが、まあ、この値段なら、これで仕方ないか・・と思う程度のもので、また買おうとまでは思いません。(ゴメンねピカール!)

 ネットで調べてみたら、アンジェリーナのお店は、フランスで、10店舗。日本に7店舗、シンガポール、上海、ニューヨークにそれぞれ1店舗ずつ。日本にいかに美味しいものが入っているかが伺われます。

 フランスの洋菓子店などが海外進出をする場合、まずは、日本に出店して、様子を見る・・フランスにとって、日本は海外進出における大きなマーケットなのがわかります。

 しかし、日本に進出するような高級店舗や高級食料品は、フランスの一般庶民には、意外と知られていないのも皮肉なことです。
 
 以前、日本であれだけ高価な値段にも関わらず人気なエシレバターをフランス人は意外と知らないことにびっくりしたことがありましたが、とうとうとフランスの食べ物を語るわりには、意外と美味しいものを知らないフランス人は、食べ物に関しても意外と保守的で、質素です。

 灯台下暗しで、フランスにある本当に美味しいものを意外とフランス人は、知らないのです。

 お値段もなかなかで、モンブランは1個7ユーロ(現在のレートで約930円)、そうそう気軽に買える値段ではありませんが、モンブラン1個だけ買っていくという人も少なくないらしく、全然、気兼ねすることなく、「モンブラン1つ下さい」と言えるし、モンブラン1個用の箱や紙袋も用意されています。

 ここ数年、近くに寄ることがなくて、食べたいと思いつつも食べ損ねていたモンブランは、変わることなく、美味しくて、大満足。以前と全く変わることなく、変わったことといえば、「一緒にスプーン、つけますか?」と言われて、つけてもらったスプーンがプラスチックではなく、木のスプーンになっていたことぐらいでした。

 久しぶりのモンブランに寝た子を起こされた気分の私。

 また近いうちに、買いに行くつもりです。


アンジェリーナ本店 226 rue de Rivoli 75001 PARIS  10:00~19:00 無休
東京では、日本橋三越に入っているようです。



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2021年6月13日日曜日

パリ1区マドレーヌにオープンしたIKEA(イケア) IKEA City Paris


メトロ・マドレーヌ駅上がってすぐの抜群のアクセスにできたIKEA City Paris


 IKEA(イケア)は、スウェーデン発祥の家具量販店で、これまでIKEAといえば、パリ近辺でもちょっと郊外の車なしには、行きづらいような場所にある広大な敷地の中に建つ倉庫のようなお店が普通で、まだフランスに来たばかりの頃に数回、行ったことがありましたが、そのIKEAがパリ・マドレーヌにできたと聞いて、「あんな場所にIKEA?」とちょっと意外な気がしていました。

 IKEAといえば、その倉庫のようなお店のイメージからも、あまり高級品のイメージではなく、(中には、高級品もあるけど・・)車で行って、倉庫のようなお店で組み立て式の家具や、大量生産品の食器やカーテン、クッションなどが比較的安く買え、ショッピングの合間に簡単でお手軽な値段の食事もできるスペースなどもあったりして、今で言う、コストコの家具バージョンのお店のようなイメージだったからです。

 パリ・マドレーヌといえば、パリ1区と8区の境界線あたりで立地条件も良く、家賃だけでも高そうで、IKEAのような広いスペースが必要なお店ができるなんて、思ってもみないことでした。

 マドレーヌ近辺は、マドレーヌ広場を中心として、今は閉店してしまったFAUCHON(フォション)の本店やエディアール(総合高級食料品店)の本店やトリュフの専門店やキャビアの専門店、有名なショコラティエなど、高級食料品店がたくさんある場所で、個人的には、他についでの用事がなくても、時々は、なぜかわりと行く機会も多い場所です。

 先日、どうしても美味しいチョコレートが食べたくて、その近辺に行った際に、IKEAを見かけて、ちょっと様子を見によってみたのでした。

 平日の昼間にも関わらず、結構なお客さんが入っていて、思わぬ人気ぶりに興味津々にお店を覗いてみたのでした。


 店内は、あのIKEA(家具の量販店)でありながら、地上階(日本でいう1階)には、調理器具や食器や、どちらかというと家の中のデコレーションや植物、照明器具、テーブルアートなどがメインで、比較的、値段もお手頃でなかなか可愛いものもあったりして、楽しいスペースになっていました。



こんな和食器っぽい湯呑みも・・


 あってもなくてもいいけど、あったら、ちょっと便利、ちょっと可愛いもの・・下手をすると爆買いしてしまいそうな・・そんな感じです。

 2階、3階は、キッチンやベッドルーム、子供部屋、サロンなどのショールームのようなスペースもあり、クッションやテーブルクロス、ベッドカバーやシーツなどの持ち帰れるものとともに、インテリアデザイナーに相談してキッチンや部屋をアドバイスを受けながら、コーディネートして作り上げることもできるサービス(要予約、有料)も行っています。

 この近辺は、数年前のテロ事件から、一昨年の黄色いベスト運動の暴徒化(黄色いベスト運動のデモの通り道になった)による被害を大きく受けてしまったこともあり、フォションを始めとして、多くの店舗が閉店に追い込まれてしまった場所でもあります。

  

キッチンのショールームのスペース




 
  
ちょっとしたスペースのデコレーションの展示


 実際に、現在、IKEAができた場所が以前、何の店舗であったかは思い出せないのですが、比較的、高級品を扱うお店が多いイメージだった場所にIKEAという量販店がデコレーションをコンセプトにした新しい趣きのお店をオープンしたことには、パリも少しずつ変化していることを感じさせられます。

 とはいえ、IKEAのすぐ隣には、すでにDECATHLON(デカトロン)という、大型スポーツ品店もあったりするので、その延長線の流れと考えられないでもありません。

 なにしろ、これまでアクセスが悪く、IKEAは、実際に行くよりも、カタログを見て、注文して・・ということが多かったのですが、この場所にできてくれることは、なんかグッと身近になった気がします。

 何よりも、家具ではなくて、ちょっと可愛くて安いキッチン用品やデコレーションなどは、パリ市民だけでなく、観光客にも、もしかしたら意外とウケるかもしれません。

 簡単な食事ができるスペースもあって、またそれが安く、1ユーロのソフトクリームや、50セントのベジタリアン用ホットドッグなど、テイクアウトでもその場で食べることもできます。

 6月23日には、このIKEA City の2号店がパリの中心地・サマリテーヌの向かい(144 rue de Rivoli 75001)にオープンします。

 パリにいらした際には、ちょっとIKEA City を覗いてみるのも楽しいかもしれません。


⭐️IKEA City Paris Madeleine(イケア・シティ・パリ・マドレーヌ)

 23 Boulevard de la Madeleine 75001PARIS

    メトロ 8・12・14番線 マドレーヌ駅 出口Rue Duphot

  月〜土 9:00~19:00,  日11:00~19:00



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2021年6月12日土曜日

ネット上で広まる偽のワクチン接種証明書・QRコード販売に、パリの病院の看護師が加担していた!

  



 以前、偽のPCR検査の陰性の証明書が出回っていたことがあったので、偽のワクチン接種証明書なるものも、きっと出てくるだろうと思っていたら、やっぱり出てきました。

 パリのサンタンヌ病院で1月から臨時職員として働いていた看護師が、ネット上で販売されていた偽ワクチン証明書の発行に加担していたことが発覚し、衝撃を呼んでいます。

 これは、偽のPCR検査の証明書と同じようにネット上で販売されています。

 例えば、スナップチャットでは、「ワクチン接種を希望せず、ワクチン接種済みとみなされたい人は、私に連絡してください。もちろん、無料ではありません。生理食塩水は 400 €です。」と、こんな文言が流されています。

 これからのバカンスシーズンに向けて、ワクチン接種証明書がなければ、色々と行動が制限されることが必須である現在、ワクチンを受けたくないアンチワクチン派の人にとっては、買ってでも欲しいものであるかもしれませんが、感染拡大回避のために広げているワクチン接種に偽のワクチン接種証明書なるものが横行すれば、何の意味も持たなくなります。

 この疑惑は、予防接種センター内での「1日10人以上の患者さんに対して、この患者さんは、自分の担当だ!」と固執する彼女の不自然な行動の変化を不審に思った同僚の密告から、彼女の行動が数週間にわたって観察され、発覚したものです。

 まさか、医療従事者の中から、このような不正が起こるとは、許し難い気持ちです。

 本来、フランスで、ワクチン接種を予約した場合、ワクチンの種類や接種場所は、指定できますが、それを誰が接種するかまでは、予約はできません。それを私の担当だなどと言い張ることが、どれだけ不自然なことか? 現在、次から次へとワクチン接種に訪れる人がいる中、ワクチン接種をする側とて、患者を選んでいる場合ではありません。

 同僚の密告を受けて、彼女の行動を追跡した医師は、彼女が自分の患者だと抱え込んだ患者は、同様に一度は、コロナウィルスに感染したと主張し、1回だけの接種でワクチン証明書を受け取っていることに気がつきます。

 しかも、その1回の接種さえ、行われておらず、通常、そのワクチンセンターでは、予防接種を受ける人々の皮膚はオレンジ色の消毒剤を使っていますが、彼女が担当した患者には、消毒剤の痕跡はなく、ワクチン接種が行われなかったことを示しています。

 彼女は、少なくとも1日あたり、10名に対して、実際にワクチンをせずにワクチン接種証明書を渡していたことがわかっています。彼女がいつからワクチンをせずに証明書を渡す闇の仕事に関わっていたのかはわかっていませんが、すでに相当数の実際はワクチン接種を受けていない証明書が出回ってしまっていると思われます。

 病院は直ちに看護師の契約を打ち切り、国家看護師団、検察官、地域保健局にもこの事実を通知しました。

 偽のワクチン接種証明書とQRコードを偽造するのではなく、実際には、ワクチン接種はせずに本物のワクチン接種証明書が配布されていたわけです。

 この看護師からワクチン接種証明書を買い取った人が追跡され、それが剥奪されるかどうかは、現在のところ、不明です。

 実際には、ワクチン接種を受けるのは、無料なのに、400ユーロ払って、不正をしてまで受け取りたいワクチン接種のQRコードと証明書。感染する危険と感染させる危険を軽減させるはずのワクチンをそこまでして、受けたくない、しかし、自由に行動するパスポートは欲しい。

 これは、「義務を果たさずに権利だけを主張しようとする」ダメなフランス人の傾向にも通ずるところがあります。

 ワクチンがそこまで嫌なら、せめて、感染しないように、自分自身で行動を規制すべきところです。

 そして、それを利用し、闇で商売をしようとする人々とそれに加担する医療従事者。

 また、驚くことに、この看護師を非難するよりも、病院スタッフの一部のメンバーは、ワクチン接種体制の機能不全を非難しているという、「それは私のせいではない」という責任回避のをする、いかにもフランスには、ありそうな、その後の騒動の発展の仕方なのでした。


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2021年6月11日金曜日

ガラガラのルーブル美術館なんて今だけ! 一人ぼっちのミロのヴィーナス


一人ぼっちのミロのヴィーナスの後ろ姿


 パリのルーブル美術館といえば、世界最大級の規模を誇るフランスの世界遺産の一つで、パリの中心地にありながら、総面積66,000㎡、収蔵品38万品以上の中から、歴史的美術品35,000点以上が公開されているフランスの国立美術館です。

 コロナ前までは、年間来場者数は、1,000万人を超える大人気スポットでもあります。

 美術館は、展示品はもちろんのこと、その建物自体が、もともとは王宮として使われていたもので、ありきたりの美術館とは一線を画す豪華絢爛さと、荘厳な趣きを放っています。

 もちろん、通常は、入場者のほとんどは、海外からの観光客で、以前は、ルーブル美術館の入り口には、協賛企業として、これは日本の美術館なのかと思うほど、日本の企業の名前もデカデカと掲げられていました。(現在は、以前のような名前の出し方はされていません)

 行けば、必ず感動し、来ようと思えば、いつでも来れる距離に住んでいることを幸せだなどと思うのですが、実際には、ルーブル美術館には、なかなか足を運ぶことはありません。

 一時、娘が小さい頃に美術館通いにハマったことがあり、その時に数回、それ以外は、誰かが日本から来た時に一緒について行ったりするくらいで、20年以上もフランスに住んでいるのに、5〜6回しか行っていないかもしれません。

 それは、あまりの広さに、ちょっと気軽に立ち寄るような規模ではなく、大理石の階段を登ったり降りたり、まあ相当の距離を美術館内を歩くことになり、それなりに時間もかかることになるからです。

 もう一つは、いつでも、もの凄い混雑で、数年前(コロナ前)から完全予約制になったものの、いつ通りかかってもスゴい行列。以前の私の勤務先がルーブルに近かったこともあり、その近辺はよく歩き、ルーブルを外から眺めることも多かったのですが、あの行列には、全くもって、行く気が起こらなかったのです。

 なにしろ、年間1千万人の来場者ということは、閉館日を除いて計算してみても、1日あたり3万人以上の人が訪れるのですから、いくら広い館内とはいえ、人気の展示品などの前には、館内でさえ、行列して見学するという状況に足が遠のいてしまっていたのです。

 そんなわけで、敷居の高いルーブルも、誰かがパリに来たとか、それなりの理由がないとなかなか行く気にもならずに、ず〜っと長い期間を行き過ごしてきたのです。

 最近は、誰かが来たとしても、「ルーブルは、まあ、外からだけでいいわ・・ガラスのピラミッドを見られればいいわ・・」などと言う人も多くて、行かないことも多かったのです。

 今回のパンデミックでルーブル美術館も長いこと閉館状態が続いていましたが、ロックダウンが徐々に解除されて、美術館も再開し、しかし、まだ海外からの観光客は、戻ってきていない今、「ルーブルがこんなに空いている!」という情報を聞きつけ、恐らく、今後、私の生きている間に、こんな絶好のチャンスは二度とないのではないか?と、数年ぶりに重い腰をあげて、ルーブルに行ってきたのです。

 

本当はこんなに並ぶはず・・

 それでも、どうせなら、できるだけ人が溜まっていない朝にしようと出かけたところ、やはり、本当に館内は、ガラガラで、人が集まって喋っていると思えば、美術館で働く人々、外国語(フランス語以外)が聞こえてくることもありません。

  

館内の地図もダウンロードで・・

 そんなに頻繁に来ていたところではないため、もはや、ここは、この程度の人の入り方をする場所だったのではないか?と勘違いしそうになるほど。しかし、モナリザの前など、行列を促すためのテープが張られた通路などは、以前のままになっていて、やっぱり、ここは、本当は、こんなじゃないんだ・・と思いなおすのです。


こんなモナリザの部屋見たことない


 




 とりあえずの有名なモナリザやサモトラケのニケ、ミロのヴィーナスなどを見るだけでも相当歩くのですが、やはり、ほとんど人のいないこれらの展示品の光景は、おそらく、今後、そうはあり得ない(あっても困るけど・・)光景で、やはり感動的でした。

           

サモトラケのニケも一人

 私は、特に美術品に詳しいわけでもないのですが、見たことのある有名な絵画などを見つけながら、ゆっくりとその絵に登場する人々の表情を細かく見てみたり、また、何よりもこの豪華で贅沢な建物内の装飾や天井、空間に身を置く心地よさを味わうことができたのです。

  

 

  

   

ナポレオンの権力が伺い知れる豪華絢爛な部屋


 しかし、ここは、貧乏根性が頭をもたげ、せっかく来たんだから、あれも見ておこう!とか、通り過ぎた後から思い出して、また戻ったりしていると、もう数時間後には、クタクタで、いい加減、あまりに膨大な数の彫刻や絵画などに、もうお腹いっぱいな感じになってきて、到底、1日で見ることなど不可能、とりあえず、今日のところは、この辺にしておこう、また、来よう!と、半日だけで帰ってきたのでした。

    

ガラスのピラミッドの一つの下になる光の入る心地よいマルリーの中庭 


 ルーブルを出ると、美術館前の庭園では、晴天も合間って、ピクニックをする人や犬の散歩をさせる人など、極めて平和な雰囲気。パンデミックを忘れそうになりました。

 しかし、帰りにルーブル近くのリヴォリ通りなどを歩いてみると、観光客目当ての土産物店などは、軒並み閉店したままで、やはり、私が「ルーブルが空いている!」などと浮かれているのも憚られるようなさびれ様に、パリは、このままでいるわけには行かないのだ・・と思い知らされました。

 現在のところ、パリ市内にあんなにあったはずの観光バスなども戻ってはおらず、ルーブルの地下にある団体客を運ぶバスの駐車場などもガラガラ状態でした。

 実際に、年間1,000万人という観光客を呼ぶルーブル美術館は、美術館だけでなく、その近辺の商店や、それにまつわる観光業に多大な影響を及ぼす大変な存在なのです。

 しかし、ルーブルに行くには、健脚でなければならないことをあらためて痛感。家に帰ると足はガクガク。携帯のウォーキング距離を見ると、10.8㎞、上がった階数26階となっていました。


Muséé du Louvre ルーブル美術館

Metro ①⑦Palais Royal Muséé du Louvre 9:00~18:00 火曜日休館 

入場料17€、当日券(空きのある場合)15€ 18歳以下、26歳以下(EU在住)失業者 無料

ルーブル予約サイトはこちらから


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「半年ぶりのレストラン・カフェのテラス席営業 美術館・映画館・劇場再開 ロックダウン解除パート2」

「香取慎吾 ルーブル美術館 パリ個展」

2021年6月10日木曜日

夜間外出23時まで延長 レストラン屋内営業開始 フランスのロックダウン解除 パート3

                                                                                                                         


 すでに、フランスは、5月19日から、レストラン・カフェのテラス席の営業が始まり、映画館も美術館もデパートも再開し、すっかり日常モードになってきた感じではありました。

 その間、感染が再び、増加するのではないかとの心配もありましたが、5月19日の時点から比べてみても、感染は減少し続けていて、コロナウィルスによる死者数も、5月19日には、141人だったのが、現在(6月9日)には、65人、集中治療室の患者数も3,862人から2,326人に、1日の新規感染者数も19,050人から5,557人へと確実に減少を続けています。

 6月9日からは、レストラン・カフェの店内営業も許可され、(とはいえ、本来の収容人数の50%だけという制限はあり)、夜間外出禁止もこれまでの21時から23時までに延長されました。

 今の季節のパリは、21時には、まだ充分に明るく、気温も25℃という気持ちの良い陽気で、むしろ屋内よりもテラス席の方が気持ちが良いような気候ではありますが、必ずしもどこのレストラン・カフェも充分なテラス席を確保できるところばかりではなく、やはり店内営業ができないままでは厳しい店舗も多かったのです。

 もともとパリのレストランやカフェは、小さいテーブルをいくつも並べて、ぎゅうぎゅう詰めの状態で営業している店舗が多く、収容人数の50%といっても、そんなにスペースをとっている感じはありません。

 外出禁止が23時以降にずらされたことで、店舗の営業時間も長くなり、映画館や劇場なども20時からの上映が可能になり、仕事を終えた人々が映画を見て帰るということも可能になったわけです。

 これに加えて、これまで7ヶ月以上も閉鎖状態だったスポーツジムやプールなども営業を再開、どの場面ではマスク着用か? さすがにプールの中では、マスクは無理としても更衣室ではマスク・・プールの中でも、人が集まらないように・・などとなかなか面倒なことになっています。

 そして、屋内イベント、1,000人以上のコンサートや展示会などの催し物に関しては、現在のところ、入場は、ワクチン接種の証明書、あるいは、48時間以内のPCR検査、あるいは抗源検査、免疫を持っているという証明書がある人に限られます。

 今後、ワクチン証明書がないと、いちいち検査を受けたり、なかなか面倒なことになりそうな気がしています。

 外国からの観光客に対しても、国別に入国の条件を設定して、受け入れを開始。日本の他、ヨーロッパ、オーストラリア、韓国、イスラエル、日本、レバノン、ニュージーランド、シンガポールなどからの入国に関しては、ワクチン接種済みの人、72 時間以内に遡って陰性の PCR または抗原検査の陰性結果を提示すれば、入国後も監禁生活を送る必要なく、観光を楽しめることになっています。

 今後、次のステップは、6月30日になりますが、グングンと進んでいく日常復活に頼みの綱は、ひたすらワクチン接種の拡大です。

 現在のところ、確実に減少を続けているため、このままワクチン接種の拡大で、乗り切ってくれるかな?と期待していますが、こればかりは、目に見えないウィルスとの戦い、どうなるのかは、まだわかりません。

 しかしながら、段階的なロックダウンの解除に一年のうちに何回も年明けのようなワクワクした気分を味わえるのも悪くないな・・などと思っています。

 ワクチン接種の拡大のスピードがこの人の動きに間に合わなければ、状態は、再び悪化することも充分に考えられるわけで、今のうちに充分にこの少しずつ自由になってきた生活を思い切り楽しもうとしている人々が街に溢れています。

 さすがに、これまで長いこと我慢を続けてきただけに、楽しそうに戯れる人々の様子には、言いようのない感慨を感じます。

 しかし、ウィルスは、決して消え失せたわけではないことを知らしめるかの如く、カステックス首相が、彼の妻がコロナウィルスに感染したことにより、彼自身は、検査の結果、陰性ではあったものの、濃厚接触者として、一週間の隔離生活に入ることを発表しました。

 彼自身は、感染はしていないものの彼の隔離は、3回目。

 ウィルスは、まだまだそこにいる・・まだ感染の危険は充分にあるということを首相自らが警告を鳴らしつつ、フランスのロックダウン解除の新たなステージが始まったのです。


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2021年6月9日水曜日

マクロン大統領 地方行脚中に平手打ちをくらう

                                                              

    Emmanuel Macron a reçu une gifle ce mardi 8 juin lors d'un déplacement dans la Drôme.


 現在、次回の大統領選に向けての地方行脚中のマクロン大統領が訪問地のドローム県(フランス南東部)のタン・エルミタージュで近辺に集まった群衆の一人から突如、平手打ちをくらったという事件にフランスは、一日中、そのニュースで大騒ぎになりました。

 その日、マクロン大統領は、ホテル学校を訪問。本来は、この場所での住民とのふれあいは、予定には入っていなかったために、彼は一度は車に乗ったものの、近辺に集まっていた群衆に挨拶するために車を降り、群衆に駆け寄って、握手を始めてまもなく、突然、その中の一人から腕を掴まれ、平手打ちをくらったのでした。

「モンジョワ、サン・ドニ、マクロニー!」と叫びながら、マクロン大統領に平手打ちをくらわせた男は、その場ですぐに取り押さえられ、周囲のおばちゃんたちからは、「私たちは、痛いことしないから、早くこっちに来て!」などの訳のわからない声も上がり、マクロン大統領は、平手打ちにひるむこともなく、集まっている群衆に笑顔で応え続け、彼らとの握手・ふれあいの時間は続けられました。



 だいたい、このように集まってくる人たちは、マクロン大統領を応援している人々で、マクロンよりの人々、周りの聴衆は、この男に大激怒、一様に非難し、ブーイングが起こり、余計にマクロンを支持する雰囲気が高まりました。

 このマクロン大統領平手打ち事件で、平手打ちをくらわせた本人とその仲間と思われる二人の男はすぐにその場で逮捕されましたが、取り押さえられてもなお、彼はマクロン大統領に向かって、「この場から立ち去れ!消えろ!」と叫び続けていました。

 何か事件が起これば、周囲の人の証言には、よくあることですが、この逮捕された男を知る人は、こぞって、「そんなことをする人ではない・・むしろ、いつも穏やかな人だった」と語っています。

 犯人は、サンヴァリエ(ドローム県)出身の28歳の男で、歴史的武術の信奉者であり、自身のインスタグラムには、彼自身が中世の衣装を身に纏った姿がアップされています。

 また、ル・フィガロ紙は、彼は剣を使った日本の武芸である剣道の実践者でもあると付け加えています。

 しかし、警察からはノーマークであったこの犯人の犯行動機は現在のところ不明です。

 逮捕された二人の男は、黄色いベスト運動に参加しており、ただちに、周囲にいた黄色いベスト運動を呼びかける人々などは、退去を命じられていました。

 彼は、刑法第 222-13 条により、「公権力を持っている人物に対する故意の暴力」で警察に拘留され、3 年の懲役および 45,000 ユーロの罰金に処せられる可能性があります。

 数日後、彼には、懲役18ヶ月(実刑4ヶ月、執行猶予14ヶ月)の判決が下り、すぐに刑務所に移送されました。

 実際に、フランスの政治家があまりに国民と近い場所に、度々、現れることに対して、危険ではないのだろうか?と思っていましたが、この時とて、武器が用いられなかったのは幸いであったにせよ、この血の気の多い人々の中に飛び込んでいく政治家も、これが慣例のようになっているだけに、この事件にひるんで、地方行脚を中断するわけにも行かないだろうし、そんなつもりも毛頭ないことでしょう。

 地方行脚の様子を見ていると、握手をしたり、一緒に写真を撮ったり、どこへ行っても大人気、ちょっとした人気タレント以上の神対応ぶりです。

 こんな事件が起こると、過去に群衆から襲われた政治家の映像が続々と流され、過去にマクロン大統領が卵を投げつけられた映像や、他の政治家が小麦粉を振りかけられたり、(この人はグルテンアレルギーだったらしい)、タルトを投げつけられた映像がテレビでは流されています。

 今回は、平手打ちでしたが、投げつけられるものが、小麦粉や卵・・なんともフランスだな・・と変なことに感心してしまいました。

 それよりも、感染状況は、改善し始めているとはいえ、まだまだ感染がおさまってはいない状況での来年の大統領選挙のための地方行脚。

 このような平手打ち騒ぎ以前に、人が集まる機会を全国で作って歩くことなど、日本だったら、さぞかしバッシングのネタになりそうだ・・と思ったりもするのですが、実のところ、フランスでは、もうすっかり、日常への開放モードで、地方行脚で人が集まる危険などを問題にする人は誰もいないのです。


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2021年6月8日火曜日

フランスのショコラティエ ベルナシオンとメゾン・ド・ショコラ

  


 私は、フランスに住み始めて、20年以上経ちますが、我が家の食生活は、フランスでできる限りの和食よりで、恐らく一般的なフランス人家庭のような食事はしていません。

 日本に帰国した際には、運び込める荷物のほとんどは、日本の食料品で占められ、限りある食材を少しずつ使いながら、手に入らない野菜などは、なんとか自分で育て、かなり日本に近いような食事をしています。

 それでも20年以上も経つ間に知らず知らずのうちによく食べるようになっているフランスの食品も、いくつかは、あるのですが、その中で、日本にいた時に比べて、私が圧倒的にたくさん食べるようになっているものの一つはチョコレートです。

 そもそも、私は、以前は全くの辛党で、日本ではほとんど甘いものは食べませんでした。しかし、年齢を重ねるにつれて、お酒の量も減り(減っただけで飲んでいる)、次第に甘いものに手が出るようになってきたこともあるかもしれませんが、その甘いものの中でも圧倒的に食べているのは、チョコレートのような気がするのです。

 いつもいつも贅沢なメゾンのチョコレートを食べているわけではありませんが、家には、必ず板チョコの買い置きを欠かすことはありません。

 なぜこうなったのかはわかりませんが、恐らく、比較的、安価で気軽に手に入るわりには、美味しいからです。スーパーマーケットなどに並ぶチョコレートの数はものすごい量で、しかも、結構、クォリティが高いように思います。

 日本でも有名なショコラティエなどのチョコレートもほとんど網羅していると思います。とはいえ、そんな高級チョコレートは、日本へのお土産や、ノエルやイースター、お誕生日などの特別な機会ぐらいしか、買いませんが、それでもこの20年ほどの間には、かなりのお店を訪れました。

 ジャン・ポール・エヴァンなどは、それこそチョコレートの温度を保つために店内のお客さんの入場制限をするほど、品質管理に厳しく、パトリック・ロジェなどは、お店に入った途端にカカオの香りに包まれ、店内には、美術館かと思われるようなチョコレートでできた彫刻が並んでいたりします。

 しかし、ほとんどの有名なショコラティエは、日本に入ると値段が跳ね上がることはありますが、ほぼ、日本に進出していないお店はなく、日本に行く際のチョコレートのお土産(リクエストも多い)には、悩ましい思いをしていました。

 フランスのパティシエ、ショコラティエなどは、有名になって、海外に進出したい場合、まず、日本を選ぶ傾向にあるような気がします。

 昨年だったでしょうか?偶然、日本でサロン・ド・ショコラをやる際には行列ができ、最近、人気だという「ベルナシオン」というショコラティエがまだ日本には、店舗が進出していないという話を聞いて、一度は行ってみたいとずっと思っていました。

 もともとは、リヨン発祥のお店でパリにもお店ができたと聞いていたので、サイトで店舗をチェックするとリヨンに2軒、パリに1軒、そしてJAPON mitsukoshi-isetan shinjyukuと書いてあります。

 なんだ、日本にもあるのか・・と思いながらも、日本で有名な女性タレントさんがYouTubeで、ここのチョコレートを大絶賛していたりしたのも見かけていたので、とにかく、一度は食べてみたいと思い、ロックダウンが明けると、勇んで出かけて行ったのです。

   

思っていたよりずっとこじんまりとしたお店

 パリの店舗は、思ったよりもずっと小さいお店でしたが、ずっと食べてみたいと思っていたチョコレートにウキウキとした気分でした。

 ちなみに・・と思って、店員さんに、日本にもお店があるんですか?と確認してみると、「日本では、日本のサロン・ド・ショコラの時に出店するだけ」とのこと。

「なら、サイトに日本の店舗みたいに載せるなよ・・」と内心、思いながらも、「これは、日本では、簡単には、手に入らない!お土産にいいじゃない!」と思って、店員さんと話をしながら、店内のチョコレートを眺め、結局、そのお店のスペシャリティで一番人気だという「パレ・ドール」というチョコレートにすることに・・。


 

 そして、ご丁寧にも店員さんが、「一つ食べてみる?」と言ってくれたお言葉に甘えて、パレ・ドールを一つ試食。ワクワクしながら、一口かじって、よ〜く味わって・・「ん???」「えっ???」もう一口かじって、また「ん???」「えっ???」と困惑。

 思っていた感じではありませんでした。

 とりあえず、せっかく来たのだから、家に帰って、娘ともう一度、味見してみようと、その「パレ・ドール」の一番小さな箱と、「パレ・ドール」でできた板チョコを買って帰りました。

 家に帰って、娘も試食。「うん。美味しいけど、なんか普通・・」そうなんです。「美味しいけど、そこまで騒ぐかな?」という感じだったのです。

 期待が大きすぎたせいもあるかもしれませんが、なんだかガッカリしてしまったのです。

 勝手に盛り上がって、勝手に失恋した・・そんな気分でした。

 これは単に私の味覚の好みによるもので、私の味覚がこのチョコレートの良さを理解できるほどではなかったということかもしれないので、特にこのお店のネガティブキャンペーンのつもりはありません。

 あれからも、先日、ちょっと日本の従姉妹に贈り物をしたくて、チョコレートを色々と探して、食べ歩いたのですが、結局のところ、これまでのお気に入りは、クラッシックではありますが、「メゾン・ド・ショコラ」で、このお店ばかりは、いつ行っても、いつ買っても、決して裏切られる(勝手な見解ですが・・)ことはなく、一粒のチョコレートで、極上の至福の時を味わえるのです。

 一人当たり年間約7㎏のチョコレートを消費すると言われているフランス人ですが、私も知らず知らずのうちに、そんな一旦をになっているようになっているのかもしれません。


<Bernachon Paris> ベルナシオン 127 Rue de Sevres 75006 Paris


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