マクロン大統領がフランスの若者に大人気のユーチューバーMcfly et Carlito(マクフライとカーリト)(チャンネル登録者数655万人)にチャレンジ企画を提案したのは、今年2月のことでした。
マクロン大統領は、彼らに向けて、ソーシャルディスタンスの重要性を訴えかける動画の作成するように、協力を依頼し、その動画の再生回数が1,000万回に達した場合は、彼らをエリゼ宮に招待し、エリゼ宮での動画撮影に参加することを約束していました。
今年の2月の時点では、マクロン大統領は、とにかくロックダウンを回避するためにできることは、なんでもやる!と必死に様々な試みをしていました。彼らがマクロン大統領に依頼されて作った彼らが歌うパロディソングの動画は、アップされた3日後に軽々と1,000万回再生を突破し、それ以来、マクロン大統領との約束のエリゼ宮での動画はどうなったのだろうか?とずっと思っていました。
結果的には、4月には、とうとう学校閉鎖にまで至る3回目のロックダウンをせずにはいられないほど、感染状態が悪化してしまいましたが、そのロックダウンもかなり解除された現在になって、マクロン大統領とユーチューバーMcfly et Carlito(マクフライとカーリト)のエリゼ宮での動画が公開され、15分後には10万回再生、あっという間にトレンド1位、1日で750万回再生を突破しました。
動画の内容は、エリゼ宮でのマクロン大統領が彼らが準備している現場に登場するところから始まっており、彼らとマクロン大統領の「逸話コンテスト・嘘か?ホントか?」という対決企画でした。
この対決企画が始まる前に、彼らはマクロン大統領と、どちらかが勝った場合には、こうするという約束をします。彼らが勝った場合には、「マクロン大統領が演説をする際、または、7月14日のパリ祭の日にマクフライとカーリトの写真フレームを机上に飾る」ということ、マクロン大統領が勝った場合には、二人は、7月14日にパトルイユドフランスの飛行機の1つに乗って上空を飛行する」というものでした。
対決は、マクロン大統領からの逸話の提案で始まりました。「キリアン・エムバペ(フランスのサッカー選手)、彼のキャリアの面倒を見るのは私です。したがって、キリアン・エムバペは、今後数週間でマルセイユでのオリンピックに向けてPSG(パリ・サンジェルマン)を離れます」という話をします。
マクロン大統領は、その場で、自分の携帯からキリアン・エムバペに電話をして、その話が嘘であることを明かします。
ここでも国民的な人気者を登場させるところなどもマクロン大統領もなかなかです。
その後、彼らの撮影の話、ドナルド・トランプの話など、いくつかの逸話の対決が続き、結果、4対4の引き分けに終わります。マクロン大統領は、彼らの写真フレームを机上に飾って演説をし、彼らは、パリ祭の日にパトルイユドフランスの飛行機に乗ることになりました。
この36分のマクロン大統領のユーチューブ出演は、若者に対する身近な存在であり続けようとするマクロン大統領の政策の一つです。若者に人気のユーチューバーに対して、コロナ対策の動画作成を依頼し、チャレンジ企画とし、彼らをエリゼ宮に呼んで、さらに次の企画に参加して、人気サッカー選手まで巻き込んでのユーチューブ出演は、マクロン大統領の次の選挙に向けての大きな選挙活動であるとも言われています。
今や、政治家も、新しいコミュニケーションモード、ソーシャルネットワークに適応することが不可欠で、他の政治家もTikTokなど、若者が自らアクセスしやすいネットワークにサイトを開設しています。
もともとフランス人は、政治の話が嫌いではなく、政治の話題が身近に上がることは少なくありません。小さい子供でさえも、親の受け売りなのかもしれませんが、一丁前に政治の話をしたりするのに驚かされたりもします。しかし、若者がニュースにアクセスする手段は、変化しているわけで、発信する側は、それに沿った発信の仕方にスライドしていかなければなりません。
今回の動画は、エリゼ宮の庭園でのメタルバンドの演奏で終わっていますが、このユーチューバー二人とのやりとりの中でも、若者との隔たりを感じさせることはなく、(実際、マクロン大統領も若いし・・)非常に和やかなもので、充分に親しみを感じることができる内容になっています。あくまでも動画の編集はユーチューバーがやっているものです。
私は、日本人なので、ついつい日本の政治家とフランスの政治家を比べてしまいますが、どう考えても、日本の政治家にこのようなことができるとは思えず、そんな政治家が率いている日本の将来を不安に感じることが多いのです。
日本は、政治家と国民の隔たり大きく、政治に無関心な若者も少なくありません。自分の国を率いている政治に興味がないのは、若者にも問題はありますが、若者を惹きつけようとしない政治家の側にも問題があるはずです。
日本は時代が変わっても、ちっとも変化していかない。このままの状態でいることは、世界有数の先進国であったはずの日本がどんどん世界から取り残されるのではないかと、この動画を見ながら、日本の現状に思いを馳せるのです。
関係ない話ですが、この動画の編集には、日本語の効果音が使われていたり、彼らのうちの一人が「こんばんは」などと書いたTシャツを着ていたりして、彼らのスタッフの中に、日本人がいるのかな??なんてちょっと思ったりしました。
フランス語ではありますが、日本語の字幕も付くので、よかったら見てみてください!
2日後には、1,160万回再生突破!!
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