2021年5月6日木曜日

いつからフランスは銃社会になったのか? アヴィニョン警察官射殺事件 


Un policier a été tué dans le centre-ville d'Avignon (Provence) le 5 mai 2021. (MAXPPP)


 一昨日、パリ19区を物々しく警戒する大勢の警察官の様子が報道されていて、何ごとかと思ったら、ここのところ、数日、麻薬・ドラッグの密売人と住民との衝突が立て続けに起こっていて、そのための警戒を行っている光景でした。

 このところ、特にパリを中心に「CRACK(クラック)」と呼ばれるコカインの一種とされるドラッグの拡大が深刻で、比較的、安価に手に入ることから「貧乏人の薬」と呼ばれて、広い範囲に急速に広まっているようです。

 このクラックを服用した人々が夜中に暴れて、街を破壊したりする行為が特にパリ環状線沿線に増加しており、この19区の警戒もこのクラック問題が絡んでいるようです。

 このパンデミックの一年ほどの間に、麻薬・ドラッグによる事件が急増している印象があります。

 また、公に上がってくる麻薬・ドラッグが関わっている事件には、銃が使われてることも多く、フランスは、アメリカのような銃社会ではなかったはずなのに・・と不安な気持ちになります。

 そして、また昨日、アヴィニョン(フランス南東部・ヴォクリューズ県)で、午後6時半頃に、麻薬・ドラッグ取引ポイントであると警戒されていたエリアに群衆が集まったために、部門介入グループの警察官3名が急遽、取締りに配置されたところ、そのうちの警察官一人が銃で胸と腹部を撃たれ、救急隊が駆けつけましたが、その場で死亡するという事件が起こりました。


 亡くなった36歳の警察官は、まだ幼い少女の父親で、彼の父親も警察官という警察一家に育った人物で、危険な職務であることを充分に承知していて、日頃から注意深く行動していたと言うのですが、何の前触れもなく、ある程度の距離から、急に銃で撃たれたのでは、ひとたまりもありません。

 アヴィニョンでは、4月中旬に麻薬密売組織の一団が逮捕されたばかりで、その際にも、約37の武器とさまざまな口径の多数の弾薬が押収されていました。

 犯人は、警察官に発砲した後、電動トロチネット(電動キックボード)で逃走し、未だ逮捕されていません。目撃証言も現在のところ、ごくごく僅かで、黒い服を着た若い男性だったという程度の証言のみです。

 ここのところの、傷害・殺人事件の逃走には、車ではなく、キックボードが使用されることが多いのも注目すべき点でもあります。

 車であると、車両ナンバーから、足がつきやすいこともあり、キックボードだと、目立ちにくく、車の入れない細い道を縫って逃走が可能です。

 ここのところ、フランスでは、環境問題やコロナ感染回避の方法として、自転車やキックボードを安易に借りることができるVelib(べリブ)(パリのレンタルサイクルシステム・キックボードバージョンもある)なども急激に増え、使用する人も急増したことから、こんな逃走手段が登場したのは、皮肉なことです。

 事件が起こったのは、市内中心部の一見、平和そうに見える地域のことで、住民にも大きな衝撃が走っています。

 しかし、なぜ?銃まで使用して、街中で警察官を銃殺しなければならなかったのか? 先月、逮捕された一団の仲間の報復であったのか? また、警察に対しての挑戦、威嚇の意味であったのか? 犯人逃走中では、わかりようもありません。

 つい先日もランブイエ(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)警察署にテロリストが押し入り、警察官を殺害するという痛ましい事件が起こったばかりです。

 いずれにせよ、パリでも連日、麻薬・ドラッグの密売組織が暴れているし、彼らの恐怖は、薬だけではなく、銃を持っているということで、ますます治安の悪くなっているフランスを連日のように感じるのです。

 マクロン大統領は、最近、警察官をここ数年で増員していくことを発表していましたが、一体、どれだけ警察官がいれば、平和な社会になるのか?と、人数よりも別の方法が必要なのではないか?と思ってしまいます。


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