毎年のことですが、5月1日のメーデーは、フランスでは祝日で、「労働者のための祭典」と呼ばれ、スズランの花を送り合う習慣があります。この日の少し前からは、スズランの花がどこでも売られていて、当日などは、街を歩けば、お花屋さんはもちろんのこと、どこから摘んでくるのか、小さなブーケにしたスズランの花を売っている人があちこちに登場します。
あちこちで売られている小さなスズランのブーケ |
反面、最近は、夜間外出禁止のために時短営業を強いられているために、店舗も日曜・祝日も営業しているのですが(もともと時間関係なしに営業停止になっている店舗もありますが・・)この日ばかりは、ほとんどの店舗が閉店、業種にもよりますが、もともと労働者のための祝日ということで、この日に営業した場合は、フランスでは、従業員に対して、この日の労働に対しては、2倍あるいは3倍の賃金を払わなければならないことが法律で定められています。
可憐なスズランの花とは対照的に、この日のハイライトは、何と言っても、フランスのお家芸ともいうべく「デモ」なのです。フランスでのデモは日常のことではありますが、この日ばかりは、労働者の祭典であるだけに、ここぞとばかりに大腕を振って「デモ」が開催されます。(まあ、いつも大腕を振っているけど・・)
昨年は、1回目の完全なロックダウン中だったので、メーデーとはいえ、さすがにデモは行われなかったのですが、今年は、すでに制限もかなり緩くなってきている中、5月1日が土曜日(日常的なデモはだいたい土曜日)に重なったこともあり、天候が悪かったにもかかわらず、パリだけでも2万5千人、フランス全土で15万人がデモに参加したと発表されています。
私はデモに出かけたわけではありませんが、たまたま乗っていたバスの中で「これからデモに行く」と話しているかなり年配の男性に出くわして、「こんな年配の人まで出かけるのか・・」と思っていると、周りのおばあさんたちが、「ちゃんとソーシャルディスタンスをとることを忘れないで!」などと声をかけているのを側で「何か微笑ましいな・・」と思いながら、聞いていました。
しかし、2年ぶりのメーデーのデモはいつもと同じといえば、同じなのですが、来年に大統領選挙を控えていることもあり、一部は選挙活動のような場面もあり、また、いくつかの場所では、ヒートアップして暴れ出す人が出て、また、これに紛れてここのところ、隙をついては登場するブラックブロックと呼ばれる暴力集団が暴れ出そうと、パリの数カ所で警察と衝突し、一部では、デモが中断され、ゴミ箱を燃やしたり、パリ11区では銀行の窓ガラスが割られたり、バスの停留所が壊されたりする騒ぎになりました。
この日のデモでは、パリだけでも46名が逮捕されています。(まあ、こんな状況もフランスでは普通と言えば、普通、いつもの流れなのですが・・)
ただでさえ、労働者の権利、労働組合の強いフランスでのメーデーのデモは、彼らにとって、ある種、お祭りのようなものでもあり、彼らなりの使命感をもった行動であることは、フランスの文化の一部であり、まったく、デモなしにフランスは語れないと言っても過言ではありません。
彼らは、「デモで社会に訴えかけ続けること」を誇りに思っているので、社会に反抗するという意味よりも、自分たちの社会をよりよくしようと主張しているところが、彼らの行動を支えているのです。
しかしながら、その実、自分たちに都合の良い「権利の主張」であることも少なくないのが、どうにも首を傾げたくなる場合も多いのですが・・。
ロックダウンの段階的な解除が発表され、未だ感染拡大が心配される中、彼らが取り戻したい日常の中には、デモが心おきなく自由にできる日常でもあるのです。(まあ、コロナ渦中でもこれだけの規模でやっているので、勝手に取り戻しちゃってはいるのですが・・)
そんなデモ騒ぎに紛れて、パリ12区のベルシー公園では、数百名にも及ぶパーティーが行われ、警察が出動する騒ぎも起こっています。
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