デモはフランスのお家芸と言っていいかもしれません。しかし、ここのところのフランスのデモの暴力的な様子は、ちょっと目を覆いたくなります。必ず、負傷者が出て、何かが破壊され、逮捕者が出ます。
イスラエルとパレスチナの紛争に抗議するデモはこの日、世界各地で起こっていました。しかし、パリでは、過激な紛争に対するパレスチナの人々を支援するデモは暴徒化の危険を回避するために、数日前に禁止される通達が流されていました。
にも関わらず、この「デモ禁止」は、さらに「私たちはパレスチナ人との連帯を沈黙させることを拒否し、デモを妨げることはない!」と、かえってデモ隊を煽る結果となり、パリは、デモ隊と警察の間で、大変な騒ぎになりました。
フランス内務省の発表によると、この日のデモはフランス全土で22,000人の参加者を記録し、51人(うち44人がパリ)が逮捕されました。
パリは、この日のデモを禁止はしたものの、この禁止措置が守られるとも到底考えてもおらず、4,200人以上の警察と憲兵隊が動員され、デモ隊が構成されると「即時解散」の指示が出されていました。
しかし、「即時解散」を求める警察に対して、一時解散しても「即時再構成」を続けるデモ隊との応戦が続き、それがエスカレートしていくうちに、デモ隊の一部は発射体の投擲、ゴミ箱の放火などと暴徒化し、それに応戦する形で、警察も放水砲、催涙ガスを発砲、近隣の駅は閉鎖され、大変な騒ぎになりました。
テレビで流されているこの物々しい映像に、警察車両は、どれほどの種類のものがあるのだろうか?と妙な感心をしてしまいました。
平和を訴えるはずのデモから、終いには、パリの街中が戦争状態のようになり、また、この「デモ禁止」に対するデモのような様相が、デモをさらに盛ってしまった感があります。
この「デモ禁止」に抗議する訴えがCAPJPO (Coordination des appels pour une paix juste au Proche-Orient )(デモを禁止する命令の調整を求める協会)によって、起こされていましたが、国務院は、「協会の控訴を裁定する必要はない」と却下しています。
フランスの他の数カ所の地域では、いくつかの(静的な)集会または、デモが承認され、リヨン、モンペリエ、マルセイユ、ナント、レンヌ、ストラスブール、トゥールーズ、リールなどでも、デモは行われていました。
フランス人にとっての「デモの権利」は、相当なもの、権利であるとともに、義務であり、彼らの誇りでもあるのです。それを禁止したのですから、騒ぎが余計大きくなるのは、必須であった気もします。
これは国内の政治家の間でも物議を醸し出し、「フランスは、パレスチナ人への支持へのデモと極右のイスラエル政府に対する抗議が禁止されている世界で唯一の国だ!」とするこのデモ禁止が不当であったとする人々と、「安全確保のために、デモ禁止は賢明な措置であった」とする左派と右派の議論にまで発展しました。
「平穏と平和」を求めるはずのデモが別の紛争を生んでいる困った事態なのです。
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