2020年11月19日木曜日

コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張

 


 今は、ロックダウン中ではなかったのか???と、首をかしげたくなるような光景がここ数日、ニュースで流れてきます。ここのところ、コロナウィルスの感染状況は、少しずつ減少傾向にあるものの、昨日の新規感染者数は、28,383人、ICUには、4,775人(病床占拠率95%)、死亡者 456人が出ている状態なのです。

 それでも、一時期の新規感染者が6万人以上出ていた時期に比べれば、良くなってきてはいるので、そんな雰囲気も手伝ってか、ロックダウン中にもかかわらず、連日、フランスのお家芸とも言うべくデモが起こり始めているのです。

 一昨日も、グローバルセキュリティ法に反対するデモ、ゴミ収集者による労働条件に抗議するデモなどが起こっています。

 2年前の今頃は、黄色いベスト運動が起こり始めた時期で、2年前の年末は、黄色いベストでフランス国内は、大荒れで、黄色いベストのデモがエスカレートして、週末のパリなどは、シャンゼリゼなども土曜日はシャッターを降ろした上にバリケードまでして、デモの被害を防がなければならないような状態でした。

 黄色いベスト運動は、それから少しずつ内容や形を変えながら、今年3月に最初のロックダウンの直前まで続けられていました。今は黄色いベスト運動も、なりを潜めているものの、決してこの問題も解決したわけではありません。

 このようなデモもさすがフランスだけあって、現金なことに夏のバカンス期間中は、しっかりバカンスを取り、9月に入ってからのデモ・ストライキの予定を決めて、休みに入ります。

 1度目のロックダウンが解除された後も人種差別を訴えるデモや病院のスタッフによるデモ、警察によるデモなど、数々のデモが起こっていました。デモは、フランスでは日常的に起こることで、特別な出来事ではありません。

 そして、今、ロックダウン中にも関わらず、デモが起こり始めていますが、ロックダウン中なのになぜ?とも思いますが、それをきっちりと抑えきれないのには、フランス人の「自分の意見を主張する権利」を冒涜できないことにあります。

 ロックダウンの規則を守ることと、この「自分の意見を主張する権利」とが、ぶつかり合うわけです。フランスでは、デモを制止することは、単なる人出を取り締まる以上にデリケートな問題なのです。

 フランス人の「権利の主張」に関しては、先日のイスラム過激派のテロの原因にもなった、(イスラム教に関する風刺画問題)「表現の自由」=「自由に表現する権利」について、マクロン大統領自ら、「不快に思う人がいるからといって、フランスの表現の自由を否定することはできない」という発言をして、大炎上したばかりです。

 この自分たちの権利のためには、他の人が不快な思いを呑み込まなければいけないとも言うような、あくまでフランスファーストな彼の発言から、彼自身、ザ・フランス人であることを私は、再確認したのですが、この「権利の主張」こそが、1800年代から続くフランスの長い歴史に基づいたものがフランスの根底に流れ続けているのです。

 フランス人は、自分の意見を主張することに誇りを持っていますし、愛国心旺盛な彼らは、意見を言っても、反抗しても、デモを行っても、フランスという国をよりよくする・・フランスは、こんなことではいけない・・という気持ちが根底にあり、政府に反抗しながらも、デモの際には、マルセイエーズ(フランス国歌)を歌って団結するというハタから見ているとちょっと不思議に見える光景でもあるです。

 とはいえ、いくら権利を主張しようとも、コロナウィルスの感染拡大はまた別問題、きっぱりとデモを否定しきれないこともフランスの感染拡大の一端をになっているような気もするのです。


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「フランス人の年金への思い入れ」

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