2020年11月1日日曜日

コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」

 


 

 2度めとはいえ、「ロックダウン」という国全体の一大事と言える事態が起こって、本来ならば、ニュースは、ロックダウン一色になっているだろうタイミングで、フランスでは、毎日、ロックダウンのニュースを塗り替えるような出来事がここ数日、次から次へと起こっています。

 近々では、パリ郊外で起こった、表現の自由の講義を担当していた教師が路上で首を掻き切られて殺されたり、ニースのカトリックの教会内で祈りを捧げていた信者3名が刺し殺されたり、昨日は、リヨンのギリシャ正教会の司祭が銃で打たれるという事件が起こりました。

 いずれも、イスラム過激派によるテロと見られていますが、物騒なこと極まりありません。

 表現の自由に対する暴力的な抵抗、反抗、テロ行為は、絶対に許されないことは、大前提ではありますが、表現の自由とはいえ、人を傷つけるほどの表現は、ある程度、考慮されるべきであると思います。

 しかも、昨日はすでにロックダウン下の出来事で、街中は、通常以上に警察の取り締まりが多いはずで、このようなテロリストが教会内に普通に侵入できることからも、いかに今回のロックダウンの中、かなりの人が街を往来している状況であるかがわかるような気がします。

 とはいえ、別にテロ対策のためのロックダウンではないわけで、警戒するとは言っても、こうテロ事件が全国的に散らばって起こっていては、警戒にも限界があります。

 コロナウィルスを警戒し、テロを警戒し、警戒だらけのフランスです。

 そして、もう一つ、警戒しなければならない動きは、SNS上で「すべての中国人(アジア人)を攻撃せよ!」という呼びかけが起こっていることです。

「アジア人狩り」の呼びかけです。

 フランスでは、今年、2月にコロナウィルスが広がり始めた頃に、すでに、中国人差別、アジア人差別問題が起こっており、メトロの中、街中などでも、アジア人がコロナウィルス扱いされて、暴言を吐かれたり、時には暴力を振るわれたりした事件が相次いだのですが、ここへ来て、その動きが再燃しているようです。

 「すべての中国人を攻撃せよ!」という呼びかけと同時に、「アジア人は、最大限の注意を払ってください!そして、あなたがもしもアジア人でないならば、あなたの周りの隣人を見守ってください!」という呼びかけも同時に広まっています。

 ほとんどのフランス人(ヨーロッパの人)から見れば、中国人も他のアジアの国の人も区別はできないため、差別となれば、十把一絡げに差別されるわけです。実際に襲われて被害にあった中国人が傷だらけになった自分の顔をSNSに挙げたりもしています。

 この「アジア人狩り」の動きに関しては、パリ検察庁が調査を開始しています。問題のおおもととなったと思われるツイートは、すでに削除されていますが、このような動きが存在していることに代わりはありません。

 残念なことですが、フランスに差別は存在します。平常時には表面化しにくいものの、このようなパンデミックの異常事態が長く続き、抑圧された生活や経済危機が続くことにより、日頃は表面化しない差別が浮上します。

 鬱屈した感情を異人種に向けての憎悪として発散し、感染拡大の原因を責任転嫁し、スケープゴートを探して、行き場のない感情を爆発させようとするのです。もちろん、すべての人がこのような感情を持っているわけでもなく、ごく一部の人たちの行為ではあるものの、その一部の人に遭遇する機会がいつやってくるかはわかりません。

 恐ろしいこと極まりありません。ある程度、この種のゴロツキとも思われる人々の多いと思われる地域などには、行かないようにするか、フランス人と行動を共にするように心がけるとか、できる対策は限られています。

 もっとも、今は、ほとんど外を出歩けないので、危険も少ないとは思いますが、このパンデミックがおさまるまでは、ずっと続く恐怖です。

 コロナウィルスの陽性率は現在20%というフランス。5人に一人は感染者という状況で、感染する恐怖、テロの恐怖、加えて「アジア人狩り」にあう恐怖。

 強制されなくとも当分、ロックダウンします。



アジア人狩り


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