2020年11月5日木曜日

フランスの国会を騒がせる「フランス人のクリスマスを迎える権利」

  


 フランスがコロナウィルスの急激な感染拡大、悪化から、ロックダウンの措置をとってから、まだ一週間も経っていません。当然、その効果は表れておらず、一日の感染者数は、毎日、4万人~5万人の状態、さらに深刻なのは、一日4000人近くの人がコロナウィルスのために入院しており、どんどん患者が蓄積されていく病院の逼迫状態です。

 集中治療室の患者も4000人を突破、フランスの集中治療室のキャパシティは5000床と言われていますから、すでに80%が埋まっていることになります。

 ここのところ、集中治療室の患者は一日200人前後が増加し続けていますから、もう一週間もすれば、満床になってしまいます。

 政府は、この状況を考慮し、非常事態宣言(ロックダウンとは別で、この宣言により、人の移動などの制限を行うことができます)を2021年2月16日まで延長することを提案していました。

 ところが、フランスの議会は、このコロナウィルスが蔓延する危機的状況にも関わらず、「年末の行事は特権的な瞬間」「今後のスケジュールは、すべてのフランス人がクリスマスを家族と過ごすことができるように調整しなければならない」という野党の意見がまかりとおり、投票の結果、非常事態宣言は、12月14日までということになってしまいました。

 現在の状況から考えても、たとえ、12月になって、ロックダウンの効果が表れ始めたとしても、今回の緩めのロックダウンの状況を考えても、また気温の低下によるウィルス自体の活発化することを考えても、到底、第一波のロックダウンを解除した5月のレベルに達することは、ありえません。

 にもかかわらず、フランスの国会議員は、「フランス人には、クリスマスの行事を行う特別な権利がある」とか、「クリスマスを家族と過ごせるように衛生管理のスケジュールを組むべき」などということを何ら憚ることなく発言し、あろうことかにその意見に多数が同調して、その意見が通ってしまうという驚愕の国なのです。

 フランス人は何よりバカンスを大事にし、バカンスのために生きているようなところがありますが、そのバカンスの次に大切なのが「ノエル」「クリスマス」なのです。

 しかし、ロックダウン解除後にみんながバカンスに出た結果が今の爆発的な感染拡大、そして、2回目のロックダウンを迎えて、まだ数日しか経っていないというのに、国会でどうどうとまかり通ってしまう「クリスマスを家族と過ごす権利」なのです。

 これには、政府側、厚生大臣のオリヴィエ・ヴェランは大激怒。

 「自分が今日、視察してきた病院では、コロナウィルスと戦っている医療者のこれまでの自分を犠牲にしての戦いの経過を聞いてきました。いくつかの集中治療室も訪れました。一つ目の部屋には28歳の男性が、2つ目の部屋には、35歳の男性が意識不明でたくさんのチューブと呼吸器に繋がれて横たわっていました。感染の悪化は高齢者だけのことではありません!これが今のフランスの現実なのです!このような状況で12月半ばに国民に不安定なスケジュールを提示することはしたくありません!」日ごろは、あまり声を荒げることのない彼の怒りの爆発が話題になりました。

 ここ数年のフランスを見ていると、黄色いベスト運動しかり、ストライキしかり、あまりに強すぎる「フランス人の権利の主張」が経済を停滞させ、今回は、コロナウィルスの2度にわたる危機的な感染拡大を招いています。

 コロナウィルスの感染第2波に関しては、ヨーロッパ全土に広がってはいますが、その中でも、特にフランスの感染拡大が著しいのは、この強すぎるフランス人の権利の主張が影響していると思わざるを得ないのです。

 国民がバカンスを過ごす権利を尊重して、感染を再拡大させ、さらに、クリスマスを家族と過ごす権利がまかり通ってしまうフランスに制御不能状態の危機の一旦を再び垣間見る気がするのです。

<関連>

「二週間しか行かないの? フランス人のバカンス感覚」

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「夏のバカンスに突入するフランス TGV予約状況は、ほぼ例年どおり」

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