2024年7月26日金曜日

あれだけいたパリの露天商はどこへ行ったのか?

  


 オリンピックの警備が厳しくなって、住民でさえも、通行は厳しく制限され、現在、パリの街には、警察官や憲兵隊が溢れています。特にここ数日では、警察官も海外からの警察官もけっこういて、物々しいこと極まりない感じです。

 そんな警察官の警戒に気をとられて、しばらく気が付かなかったのは、日常、パリに数千人はいると思われる露天商がいつのまにか、姿を消していることです。



 そもそも違法の商売なので、日常から摘発してもよさそうなものなのですが、通常は見て見ないふりをしているというか、見過ごしているというか、特に観光地と言われるような場所には、ものすごい数の露天商がいるのです。

 一時、エッフェル塔の近くの露天商は、マンホールを貯蔵庫がわりに使っており、クレープの生地や水などが大量に押収された・・などというニュースが出回っていましたが、その露天商そのもの自体は、このオリンピックの警戒が始まる少し前までは、ふつうに存在していました。

 露天商がもっとも多いと思われるモンマルトルの丘(サクレクール寺院近辺)などは、ふだんは、所狭しと丘の途中にエッフェル塔の置物などの店を広げています。

 それがぴったりと、まったく姿を消したのも、ちょっと怖いくらいです。彼らは一体、どこへ消えたのだろうか?と思います。

 また、パリ市の街中に住んでいるホームレスなども、いつのまにか見かけなくなりました。これは、大々的に発表されてはいなかったものの、オリンピック前にフランス政府は、何千人もの移民のホームレスたちを地方都市にバスで移送していたようです。

 彼らには、地方都市などでの長期的な住居や社会福祉が提供されるものと思っていたものの、当の受け入れ先の都市とは、話がしっかりついておらず、場所を変えて、そのままホームレスとして生活を始めたり、パリに舞い戻ってきてしまう人もいるようで、実際、ここ数日、荷物をゴロゴロひいたホームレスらしき人をパリ市内でも、たまに見かけるようになっており、また、市内や駅などは厳重な警備で警察官の警戒が厳しいために、メトロの車内でお金の無心をするホームレスが登場しています。

 市内や駅などには、あれだけ警察官がいるのに、メトロの車内には、なぜか警察官は見かけないので、その隙をついて彼らは戻ってきている感じです。

 オリンピックの警戒は最も厳しいのはセーヌ川上で行われる開会式のパレードのためと聞いていますが、この開会式後は、どのくらい緩和されるのかわかりませんが、このまま恒久的に露天商というものがパリから消えるのかどうかはわかりません。

 今日は、街中で演奏をしているミュージシャンなども撤退勧告を強いられ、違反切符をきられていました。若い好青年だったこともあり、これくらいはいいんじゃないの?と思いましたが、例外を認め始めるとキリがないのかもしれません。

 パリは欧州内でも観光客が一段と多い場所でもあり、観光客とともに、これらの露天商なども近隣の欧州の国々から出稼ぎにやってくるケースも多いと聞いており、また、その商売自体も違法ではありますが、さらにスリやひったくりなどの明らかな犯罪行為の出稼ぎも多いわけで、この警戒を続けるのは、無理としても、この移民問題は、捨て置けない問題であるに違いありません。

 華やかなオリンピックの影には、やっぱり伏せられている問題が潜んでいるのです。


パリの露天商


<関連記事>

「パリは想像以上にガラガラ・・パリジャンはパリにいない・・観光客もあんまりいない・・」

「約2年ぶりに行ってみたモンマルトル サクレクール寺院」 

「モンマルトルの丘 サクレクール寺院あたりのガラの悪さにげんなり」

「露天のクレープの生地はマンホールに保管されていた・・」

「パリで犯罪から身を守る方法は、まず、犯罪の手口を知ること」

2024年7月25日木曜日

空いているパリを満喫する1日

  


 オリンピックまでのカウントダウンが始まり、今週に入ってから、公共交通機関や通行止めなどの不便さに腹を立ててばかりいるのもバカらしく、代わりに予想外に空いてきたパリを満喫することにして、いつもは、混んでいて断念してしまうレストランに行ったり、買い物(といっても食べ物・・)に行ったりして、それなりに空いているパリを満喫しています。

 メトロやバスなどの公共交通機関は前もって予告されていたところ以外でも運行していなかったり(特にバス)、途中までしか行かなかったり、これには少々閉口し、移動に時間もかかるのですが、その代わりにというか、その分、パリに人が少ないので、半分は、「そりゃそうだよな・・」「こんなに迂回しなければならなかったりするのは面倒くさいもんな・・わざわざみんな出かけないよな・・」と思いつつ、「いやいや、こんな機会はまたとない!」とその空いているという部分を楽しむことにしたのです。

 オデオン界隈(サンジェルマン・デ・プレ界隈)にお気に入りのレストランがあるのですが、そこは、いつも、行きたいな~行こうかな~?と思って覗いてみると、いつもすごく混んでいて、そうでない場合は時間を外してしまったりとなかなか行けていないお店があって、「そうだ!今なら、あそこも空いているかも?」と思って、行ったのです。

 それでも、行ってみるまでは、「今日はもう混んでいるかもしれない・・」とか、「あそこは、例外的にやっぱり混んでいるかもしれない・・」と目の当たりにするまでは、どうかわからないな・・と思っていたのですが、類にもれずにそこもやっぱり空いていました。

 このお店がお昼時にこんなに空いているのを初めてみましたが、ラッキーでした。地元のパリジャン・パリジェンヌにも大人気の、とっても美味しいお店です。久々のお気に入りのレストランのランチにとっても満足し、ゆっくり、ゆったりと食事をして出てきたら、サンジェルマン大通りがなんと通行止めになっていて、通りの向こうには行けなくなってしまい、帰りに生ハムを買って帰ろうと思ったのに買えず、「もう今日はやめておきなさいということだな・・」と自分に言い聞かせました。



 この近くでいつもは大混雑しているお店といえば、シティファーマ(CITY PHARMA)というビオコスメのお店があるのですが、そこもいつも大混雑していて、最近では、もう人にぶつからずに商品を見るのが大変なくらい大人気のお店なのです。たしかに品揃えが豊富なうえに、明らかに他よりも安いので無理もないのですが、今回の空いているパリの状況で、さすがにどうかな?と思って行ってみたら、空いている・・というほどではありませんでしたが、やはりいつもよりはずっと人が少なくて、いつもは10個くらいあるレジに行列ができていないことはないのですが、今日は、並ばずに会計ができました。こんなのはじめてです。



 そして、調子にのった私は、「だったら、デパートとかも空いてるかも?」とギャラリーラファイエット(といってもラファイエットグルメですが)にでかけ、やっぱり、いつもよりは、格段に空いている店内で悠々とお買い物・・といってもクロワッサンなどを買っただけですが・・。



 さらに調子にのった私は、パリで(このあたりで)あと、混んでいる場所は・・とセドリック・グロレを通ってみたところ(ここでは買わず・・)、さすがにここは行列ができていたものの、行列の長さがいつもよりも全然短く、やっぱりいつもよりも空いている・・と確信しました。



 人が少ないところは、例年の8月のパリといった感じではありますが、全然、違うのは人が少なくても、お店がちゃんとやっていることで、こんなにいいことはないな・・と思うのでした。8月のバカンスの際には、人出が少ないのを見越して、また、自分たちもバカンスに出かけてしまうために休みのお店も多いのですが、現在は、みんなやっています。

 一時は、テロを警戒して、オリンピック時にはお店は閉めようか?とか言っていた人もけっこういたと思うのですが、実際は、ほとんどのお店がオープンしています。

 しかし、今日は、スーツケースを引いて、来ないバスを待っていて、どうやってホテルまで行ったらいいか困っている観光客を見かけました。運航休止にするなら、ちゃんとアナウンスまたは、せめて張り紙くらいはしたらいいのに、それもなく、途方に暮れていました。

 GoogleMapなどには、通行止めになっている道などもあたかも通れるように出てくるし、タクシーなども簡単につかまる状況ではないので、本当に土地勘がない人には、大変なことだろうと思います。

 しかし、幸いにも暑すぎず、寒くもなく気候のよい日々が続くなか、思いのほかこんなに空いているパリを楽しめていることはラッキーなことです。

 去年までは、この時期までに猛暑・酷暑などと言われるような日があったと思うのですが、今年のパリは幸いなことに、そこまで耐えきれないほどの暑さにもなっていません。

 ところが肝心?の開会式の日、現在の天気予報では今のところ雨・・天気予報もあまりあてにならないし、よく変わるのでわかりませんが、こればかりはどうしようもないですね・・。


オリンピック前のパリは空いている


<関連記事>

「パリは想像以上にガラガラ・・パリジャンはパリにいない・・観光客もあんまりいない・・」

「特別警戒中のパリ 驚異的な数の警察官・憲兵隊と交通機関の混乱と・・」

「オルリー空港まで開通したメトロ14号線」

「パリオリンピック開会式1週間前からの通行止めとメトロ・RER 17駅閉鎖」

「パリでビオコスメを買うなら絶対ここ! シティファーマ・CITY PHARMA」

2024年7月24日水曜日

環境活動家ポール・ワトソン逮捕で注目される日本の人質司法

  


 今週初めのグリーンランドでの環境活動家ポール・ワトソンの逮捕はフランスで憤りと支持の波を同時に引き起こしています。この男性の環境活動家としての歴史は長く、1977年シーシェパード保護協会(主に反捕鯨)を設立して以来、様々なアクションを起こし、過去にも、数回、数か国で逮捕されています。

 彼のアクションはよく言えば、なかなかパンチがあるもので、捕鯨やアザラシ捕獲などの妨害行為や漁船乗り込みを始め、この反捕鯨を訴えるために、フランス人女優ブリジット・バルドーをカナダ北部の流氷に連れて行き、アザラシの赤ちゃん狩りを非難するアピールを行ったりと広報活動にも長けています。

 しかし、その行動はなかなか強引で時に破壊的、暴力的でもあったりしていることから、1979年には、カナダのセントローレンス湾で1000頭のアザラシの屠殺を阻止した際に暴力をふるったとして逮捕、1983年、ポール・ワトソンと彼のチームはシー・シェパード2号でニューファンドランド州セント・ジョンズ港を封鎖。

 10 年後、シーシェパードはクリーブランド・アモリー号を購入し、ニューファンドランド島のグランドバンクからキューバとスペインのトロール船を捕獲。

 その度に逮捕され、裁判が行われ、懲役刑などが課されていますが、結果的には、裁判所側が告訴を棄却したりしています。

 その後、1997年には、オランダで再び逮捕。ノルウェーは捕鯨船ニブレナ号沈没の罪で同氏の身柄引き渡しを要求し、彼は120日間拘留されましたが、オランダの裁判所が彼の引き渡しに反対したため最終的に釈放。

 彼の環境活動家としての活動には、その都度、賛否両論の嵐が起こってきましたが、2000 年、タイム誌は彼を 20 世紀の最も優れた環境擁護者 50 人の中に「エコロジーの英雄」として選出しています。

 彼の訴えによれば、「動物を殺そうとしている人の装備を破壊するのは、非暴力行為だ」そうです。

 しかし、2012年コスタリカのサメ漁船に対する航行妨害容疑のためにドイツで再び逮捕されますが、保釈中に彼を強く支援する者と出会い、逃亡していました。

 そして、彼は2024年7月21日にグリーンランドで逮捕、コスタリカはこの訴えをすでに放棄していますが、日本は調査捕鯨を妨害した容疑で海上保安庁から国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配中でした。

 俗にいうインターポールの赤通知が出されていたわけです。

 2016年の段階で、ポール・ワトソンは日本の国際手配について、「日本は違法捕鯨活動で国際司法裁判所から非難されているにもかかわらず、私を国際刑事警察機構のレッドリストに載せる経済的・政治的権力を持っている」と逆に日本の国際手配を非難しています。

 日本での彼の調査捕鯨妨害というものがどのようなことであったのかは、わかりませんが、彼については賛否両論がある中、グリーンランドが彼を日本に引き渡すかどうかが注目されています。

 捕鯨問題といえば、日本が矢面に挙げられることが多い気がしますが、今回はこの捕鯨問題云々以前に、日本の司法制度と刑務所制度は人権NGOによって非常に定期的に非難されており、2023年5月に発表されたヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、日本の「人質司法」制度は、容疑者から適正な手続きと公正な裁判を受ける権利を奪っていると指摘されています。

 ポール・ワトソンは8月15日まで拘留されますが、グリーンランドはデンマーク自治領であるため、デンマーク法務省が日本に引き渡すかどうか決定します。マクロン大統領は、彼の引き渡しを阻止するために状況を注意深く監視し、デンマーク当局に介入しているとエリゼ宮が発表しています。

 つまり、この環境活動家の逮捕と同時に日本の人質司法制度が痛烈に非難されているという状況でもあるのです。


環境活動家 ポール・ワトソン 日本の人質司法


<関連記事>

「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

「フランス税務当局、カルロス・ゴーンに追徴課税金と財産差し押さえ」

「フランス司法当局 カルロス・ゴーンに国際逮捕状発行」

「フランスの報道機関が指摘する安倍元総理と統一教会についての日本での報道と警察と政府、報道機関の歪み」

「日光でのフランス人女性行方不明事件について」



 

2024年7月23日火曜日

パリは想像以上にガラガラ・・パリジャンはパリにいない・・観光客もあんまりいない・・

  


 いよいよオリンピックを今週末に控えて、パリは一層、動きづらくなり、私も昨日、通行証を用意していなかったために通してもらえず、行こうと思ったところに行くのを断念し、まあ、どうしても行かなければならないというわけでもなかったので、急遽、予定を変更して、別の場所に行きました。

 一時、アラート(エリアによっては通行証なしには通れなくなるので、通行証を取っておくようにというお知らせ)が来た時に、通行証を取ろうとしたのですが、通勤用などならいざ知らず、いつ、どこに行くという明確な場所や理由が必用で、その時々に自分の都合で動いている私はあらかじめ予定を決めきれず、この通行証をとっていませんでした。



 「パス(通行証)がないなら、少し待ってください・・」と警備にあたっていた警察官に言われたので、「いつまで待つのですか?」と聞いたら、ニッコリ「土曜日までね・・」とのこと。ずいぶん、待たなければなりません。

 この通行止めのちょっと手前にコカ・コーラがやっているフードフェスのような大きな会場があったので、「じゃあ、せっかく近くまで来たのだから、こっちを覗いて行こうか・・」と思って入ってみたら、大きな会場に人がまばらでガラガラ・・。これ?ほんとにフェス???






 それでも入口には警備の人がいたので、「あんまり人が来てないですね・・」と言ったら、苦笑いしながら、「19時からはDJが来る予定だから、もう一度、夜に来てよ!」と。

 せっかくこんなに大きな会場を用意してフェスとかやっているのに、こんなに人が来ないなんて、コカ・コーラも大赤字だな・・と思いつつ、どうやら、パリは本当にかなり人が少ないようで、メトロも空いているし、その割に、駅などには、行列対応の赤いテープが貼られていたり、やたらと警備用の警察官が控えているのですが、通常よりも全然、人がいなくて、なんだか手持ち無沙汰な感じで携帯を眺めて話したりしています。むしろ、お客さんよりも警察官の方が多そうな感じの駅というのも、なかなか微妙です。

 例年、夏になるとパリジャンはバカンスにでかけて、多少、パリも空いてくるのですが、それも本格的に空くのは8月の話。しかも、それともちょっとまた違う不気味な感じです。まだオリンピックは始まってはいないとはいえ、オリンピック目当ての観光客がそろそろ増え始めてもよさそうなのに、そんな兆しもまだありません。

 我が家の近所にあるホテルなども、さぞかしお客さんがいっぱいになって大変だろうと思っていたのですが、未だにそんなにお客さんが増えている感じもしません。パリのホテルが満杯になるには程遠いとの報道もあります。


 特にパリの中心部はそんなふうに通行止めになっていたりするために身動きもとれないので、レストランやお店などもほぼ開店休業状態のようで、大打撃を被っているようです。

 

 観光客とて、やたらとホテルなども値上がりし、メトロなどの交通機関も倍近く値上がりし、こんなに身動きとれないとすれば、今週は特に来なくて幸いだったことでしょう。

 これを見越して、バカンスに逃避行したパリジャンたちは、想像以上に多くて、彼らもまた、正解だったかもしれません。

 なんだか報道では、いよいよオリンピックを盛り上げようと聖火リレーの行方を追ってみたり、マクロン大統領が選手村を訪れて、選手たちと選手村で食事をしてみせたりして、激励している様子を映し出したりしていますが、「そんなことなら、通行止めの煽りを受けて、閑古鳥が鳴いているレストランに行ってあげなさいよ!」などと思います。

 予定していた場所に行けなかったので、従姉妹がこんなのパリでやってるよ!と教えてくれた「La Plus Grande Peinture au Monde PARIS 2024」(世界で一番大きな絵)という日本がやっているという催し物に行ってみたら、案の定、こっちもガラガラで、ほとんど人がいませんでした。



 まあ、それこそコロナ時のロックダウンの時に近い今のような状況というのは、そんなにないタイミングで、ここまでパリから人が消えることを予想できなかったのは仕方がないですが、それにしても、かなりお金もかけているると思うのに、こんなに人に見てもらえないのも、いかにも気の毒。

 しかも、オリンピックの開会式の前日に終わってしまうとのことなので、このオリンピックロックダウンとまるかぶり・・さきほどのコカ・コーラのフードフェスは9月8日までらしいので、オリンピックロックダウンが解除された後は、そこそこお客さんの入りも期待できると思いますが・・それにしても、1週間以上の売り上げが大幅赤字というのは大打撃にちがいありません。

 私としても、ふだん、利用しているバスが極端に本数が減り、ルートも変わっていたりするために、どこかにでかけるのも、ものすごく遠回りして時間もかかるのですが、その分、メトロなどは空いているのは、少しだけ気分はよいです。

 この際、このタイミングを逆手にとって、いつもは混んでいて、行くのを断念しているレストランなどに行ってみようかと思っています。


パリ オリンピックロックダウン


<関連記事>

「特別警戒中のパリ 驚異的な数の警察官・憲兵隊と交通機関の混乱と・・」

「約束どおりセーヌ川で泳いだパリ市長とセーヌ川周辺の今」

「オリンピックが始まる前からすでに渋滞 PARIS 2024 オリンピック関係者専用レーン」

「パリはオリンピック会場設営のために突貫工事中」

「パリオリンピック開会式1週間前からの通行止めとメトロ・RER 17駅閉鎖」







2024年7月22日月曜日

フランスでの甘いお醤油と辛いお醤油

  


 私が別で書いた記事の中でお醤油の話がちょっとだけ登場していて、フランスのお醤油には大きく分けて?甘いお醤油と辛いお醤油というものがあって、お寿司にまで、その甘いお醤油をかけて食べる人もけっこういて、しまいには、その甘いお醤油をご飯にかけて食べる人もいる・・という話を書いたら、それにビックリしたという感想をもらって、もうなんか、私の中では、驚かなくなっていることに反応があって、「そうか・・いつのまにか、慣れてしまったけど、そういえば、最初はビックリしたな・・」と思い出したので、その時の話とお醤油にまつわる話を書こうと思います。

 私がフランスに来たばかりの20年くらい前は、お醤油というものは、フランスの一般的なスーパーマーケットでは、あんまり存在感がなくて、よ~く探してみれば、中国製のよくわからないもの(知らないもの)があるくらいで、日本食材店やアジア系のスーパーマーケットにいけば、キッコーマンもあるかな?というくらいでした。

 それからしばらくして、フランスにもSUSHIブームがやってきて、ある時期から、お寿司屋さん(といっても中国系の人の経営するチェーン展開のお店でいわゆる日本のお寿司屋さんとは、ちょっと違うサーモン中心の焼き鳥なども置いている感じのお店)が一気に増えてきて、当時は、珍しくもあり、また日本食恋しさも手伝って、たまに行くことがありました。

 その手のお店では、お寿司に焼き鳥が組み合わせてあるセットのバリエーションがけっこうありました。

 これ以上、小さく切れるか?と思うほど小さく、さいの目に切ったお豆腐の入った薄いお味噌汁にこちらの固いキャベツを機械で細~く千切りして、小学校の時に家庭科の授業の調理実習で作ったようなドレッシングがかけてあるサラダがついていて、なぜかお寿司なのに白いご飯もついてくるという不思議なセットメニューがけっこうありました。(最近は、その手のお店には行っていないので、今はどうなのかはわかりませんが・・)

 その手のお寿司屋さんには、甘いお醤油と辛いお醤油(辛いといっても甘くないお醤油ということで、ふつうのお醤油)が置いてあり、甘いお醤油は焼き鳥のたれのように焼き鳥に追いダレのように使うものなのかな?と私は思っていました。

 ある時、娘と二人でそのお寿司屋さんで食事をしていたところ、近くにいたフランス人が甘いお醤油をお寿司につけようとしていたので、「えっ??違う違う!教えてあげた方がいいかな?」と思ったのですが、「まあ、一つ食べれば気が付くだろう・・」と、ちょっとビックリする様子を半ばちょっと楽しみに見守っていたのでした。

 すると、その女性は、何も驚くことなく、次のもう一つのお寿司からもその甘いお醤油をつけて食べ続けたのには、こっちがビックリでした。そして、最後には、お寿司なのに、なぜかついてくる白いご飯に、その甘いお醤油をかけて、美味しそうに平らげていたのです。

 もともと、フランス人は一つ一つのお皿を順々に食べ進めていくという食べ方をする人が多いので、お味噌汁を飲んで、サラダを食べ、お寿司、焼き鳥、そしてご飯という風に順々に食べることが多く、どれも同時にちょっとずつ食べるということをあんまりしないので、最後に甘いお醤油でご飯ということになるのかもしれません。

 その後、その手のお店に行く度に、フランス人はこんな風にお寿司セットを食べているのを見かけることが多くて、いちいち、そんなことにも驚かなくなっていました。

 お寿司ブームがさらに進むと、どこのスーパーマーケットに行ってもお寿司が並んでいるようになり、それと同時にあたりまえのように日本のお醤油もスーパーマーケットに並ぶようになっていったのです。

 今では、それに乗じて、甘いお醤油、辛いお醤油だけでなく、TERIYAKIソースとか、YAKITORIソースとか、中にはポン酢までおいてあるところも出てきました。

 スーパーマーケットでお寿司の試食販売をしている際などは、ひとくちサイズのお寿司とともに、2種類のお醤油があって、「試食しませんか?お醤油は、甘いお醤油、辛いお醤油どちらにしますか?」と聞かれます。

 ということは、フランス人には、かなりの割合でお寿司に甘いお醤油をかけて食べる人がいるということです。

 私自身、個人的にはお寿司に甘いお醤油をかけるのは、ちょっと受け付けられませんが、まあ、人それぞれ、好きなように食べればいいので、別にそれを推奨することはしませんが、否定もしません。

 世界各国のお料理は、その土地のそのままのものが伝わっているとは限らず、少なからずその国の嗜好に寄ったものになっているということはあることですが、お寿司に甘いお醤油というのもフランスの定番として、定着してしまったと思われます。

 また、蛇足ですが、娘が日本で一人で生活を始めてすぐに、一番、驚いていたことは、「お醤油ってこんなに安いものだったの??」ということでした。

 それくらい、フランスではお醤油は高いのです。


フランスの甘いお醤油と辛いお醤油


<関連記事>

「フランスで日本の餃子(GYOZA)が浸透し始めた!」

「フランス人と日本食」

「今、パリで人気のうどん屋さん 喜心 Kisin」

「パリで見つけた美味しいお蕎麦屋さん あぶりそば Abri Aoba」

「パリで今、大人気のラーメン屋さん KODAWARI RAMEN TSUKIJI こだわりラーメン築地」



 

 

2024年7月21日日曜日

オリンピック開会式のセレモニーに登場予定のダンサーたちが当日のストライキを予告

  


 今回のパリオリンピックは、パリ住民はもちろんのこと、それに関わる人々に大きな負担を強いていますが、特に開会式当日のセーヌ川を舞台にした壮大なパレード計画は、ことのほか、この負担を大きくしているように思います。

 このパレードが行われる周辺の通行止めや交通規制は、このセレモニーのために、広大な範囲に及び、パリ市内は、厳戒体制に近い、移動が制限されている状態にあります。

 先日、セーヌ川を200隻のボートが行進するリハーサルが行われたようですが、たしかに、これがとどこおりなく成功すれば、素晴らしいものになるに違いないと思いつつ、その1日のために、これだけ不自由な思いをしなければならないのか?とも思ってしまいます。

 そもそも、この警備にあたっている警察官や憲兵隊なども、もうずいぶんと早い段階で、オリンピック期間中に働くことを盾に様々な要求をつきつけ、ストライキなどを行った結果、賃上げや特別ボーナスなどを獲得し、関係する公的機関などは、すでにほとんど、この手のストライキを伴う交渉は終了しているものと思っていました。

 ところが、ここに来て、舞台芸術家組合(SFA-CGT)は、(オリンピック開会式に出演する予定のダンサーたちのギャラ等の不平等な扱いへの抗議)パリオリンピックの開幕日である7月26日、また8月28日のパラリンピック開会式のリハーサルのためのストライキを通告しています。

 オリンピックまで1週間を切った段階でのストライキに、さすがにこのタイミングで要求を突きつければ、通らないわけはないな・・さすがフランス、すごいな・・と思ったのですが、この労働条件のバラつきは、実際に、なかなか深刻な状態であったようです。

 舞台芸術家組合がAFP(仏報道機関)に訴えた報告によれば、断続的に募集されていた3,000人のダンサーのうち、250人から300人が無報酬で雇われているほか、その報酬は60ユーロから団体交渉の恩恵を受けた人の1,610ユーロまでとバラつきがあり、強い不平等、差別的扱いについても批判しています。

 7月初めに2回の交渉会合が行われたが、目立った進展は得られなかったということで、すでに交渉の機会がもたれていたにもかかわらず、状況は改善されていないという、このままなあなあに進められてしまいかねない、切羽詰まった状態であったことがうかがえます。

 これに対し、2024年パリオリンピック組織委員会は、労働条件の問題を非常に真剣に受け止めており、パナメ24(このセレモニーの舞台のサービスプロバイダー)はダンサーの労働協約を尊重しており、報酬は従来の最低額よりも高くなるだろうと断言。 

「検証の結果、サービスプロバイダーのパナメ24は、ダンサーという職業に適用される労働協約を適用することで、法律を厳格に遵守していることが確認できました」と主催者の代表者は付け加えていますが、ハタから見ている私でさえ、「それができていないから、抗議しているのでは??」と思ってしまいます。

 オリンピック開催にあたっては、巨額の費用が費やされていることは言うまでもありませんが、正直、こんなもの必用、こんなこと必用?ということにも、相当な金額が割かれており、それでも、それで賄えるならばともかく、ダンサーを無報酬で雇う?(無報酬の場合はふつう雇うとは言わない)、末端?の労働者に払うべきものを払わずに費用を削るのは、あり得ない・・もしかして、そのプロバイダー業者の中抜きでは???などと日本のオリンピックの後の騒動を見ていて、想像してしまいます。

 どちらにしても、これだけの騒ぎになれば、実際に彼らがストライキを実施してセレモニーに支障をきたすということはないとは思いますが、声をあげなければ、隙あらば、弱者が痛い目に遭う可能性が高いということが表面化した一例ではないか?と思うのです。


オリンピック開会式セレモニーダンサー 当日ストライキ予告


<関連記事>

「特別警戒中のパリ 驚異的な数の警察官・憲兵隊と交通機関の混乱と・・」

「オリンピックが始まる前からすでに渋滞 PARIS 2024 オリンピック関係者専用レーン」

「オリンピック直前 パリ市内観光事情 五輪付きのエッフェル塔」

「パリオリンピック開会式1週間前からの通行止めとメトロ・RER 17駅閉鎖」

「パリオリンピック開催時に予想される住民が迷惑すること」

「2024年パリオリンピック始動 シャンドマルスからヴェルサイユ宮殿まで!」




2024年7月20日土曜日

エマウス(フランスの慈善団体)の創始者 アベ・ピエールからの性的暴力が発覚

  


 今、フランスはさすがにオリンピック開催まで1週間を切って、オリンピックにまつわる話題が続々と持ち上がっているし、同時に国民議会がどうにもしっくり落ち着かない話題などのニュースに湧いています。

 しかし、そんなニュースの中に見過ごせないニュースがあったので、様々なニュースに埋もれてしまわないように書いておくことにします。

 フランスにいて、おそらく「アベ・ピエール」という名前を知らない人は少ないと思いますが、彼のもともとのルーツはカトリックの司祭でその後、修道院長を経て、現在、フランスでの慈善活動の大きな柱の一つとなっているエマウスやアベ・ピエール財団を設立した人物です。

 彼は、すでに2007年に94歳で亡くなっていますが、この財団は今もフランスの慈善団体の代名詞のような存在で、現在でも、貧しい人々の司祭として多くの人々の共通の記憶に残っている、長い間フランス人に人気の人物であり、ホームレスや劣悪な住居の人々の擁護者という聖人・偉人に相当する人物でした。

 しかし、ここへきて、彼から性的暴行を受けていたという女性の証言が公になり、現在のアベ・ピエール財団の代表がこの事件について発表しています。

 ことの発端は、昨年2月、「ピエール修道院長による女性への性的暴行を報告する証言」の報告書が提出され、この事件を解明するために、暴力防止を専門とする独立系企業が内部調査を依頼されています。

 この調査により、現在7人の女性が証言しており、「1970年代末から2005年にかけてアベ・ピエールが犯した性的暴行またはセクハラ行為」を報告しています。本人がすでに他界していることから、本人からの事情聴取は不可能であることは言うまでもありませんが、この犠牲者たちや周囲の人々の証言から、報告書は、「年齢差、ピエール修道院長の地位、そして一種の「偶像崇拝」によって培われていた支配の一形態、彼と民衆との間の従属的な関係が存在していたこと」、「隠蔽されていた可能性」も指摘しています。

 どこか、日本のジャニーズ事件にも通ずるところがあるような気もするこの事件ですが、彼が貧しい人々、弱い立場の人を救う聖人のような存在であっただけに、その弱者に対して行っていた行為は、余計に許しがたいものです。

 現在のアベ・ピエール財団の代表がインタビューに応じ、沈痛な面持ちで彼に対する怒りと悲しみを語っていますが、独立系企業の内部調査によれば、この問題は、すでに財団の中では既知の事実で、1992年、告発者の一人が当時の指導者らに通報、「秘書たちがピエール修道院長に注意するよう警告されていた」と報告されており、また、この事実に関して、内部職員は、まったく動じず、アベ・ピエールは「年をとり、本能を抑えるのが難しくなった」と本人も認める発言をしていたと記されています。

 1970年代末から2005年にかけての長期間にわたる告発者が存在する以上、犠牲者は、今回証言している7人だけということは考え難く、結果的に周囲も本人に注意できずに、この犯罪が続いてしまっていたことを示しています。

 アベ・ピエールは亡くなる2年前、著書「神様…なぜ?」の中で「自分の人生を神に捧げても、欲望の強さは何も減りません。私はたまたま一時的に欲望の強さに負けてしまったことがある」と意味深な告白をしています。

 神に最も近い存在と思われ、ほぼほぼ絶対的な地位を確立したとき、やはり彼は神ではなく、最も卑劣な人間であったと言わざるを得ません。

 「私たちが特定した被害者たち、そしておそらく名乗り出るであろう被害者たちを全力で支援したい」と現エマウス代表は語っていますが、本当に真剣に彼女たちの支援に取り組んでほしいと思います。


アベ・ピエール エマウス 性的暴力


<関連記事>

「リサイクルショップ・エマウスがノエル前に繁盛しているフランスの一面」

「ラグビーワールドカップとジャニーズ性加害スキャンダル」

「世界が首をかしげる日本のマスコミ ジャニー喜多川性加害問題」

「俳優ジェラール・ドパルデューのレジオンドヌール勲章剥奪とマクロン大統領の発言」

「続々と浮かび上がる有名人の性加害への告発 今度は、フランスのトップ精神分析医ジェラール・ミラー」

「現在フランスで起きているMe too ラジオ番組人気司会者の性加害告発続々浮上」