2025年4月26日土曜日

想像以上に酷かったナントの高校でのナイフ襲撃事件 被害者少女に57ヶ所の刺し傷

  


 先日のナントで起こったカトリックの私立高校でのナイフ襲撃事件について、当日の夜の予定だった検察の記者会見が延期され、翌日、行われ、詳細な事件の概要が明らかになってきました。

 検察官によれば、死亡した女子高生が一番のターゲットであったようで、彼女の遺体の検死が行われた結果、彼女が負った刺し傷は57ヶ所にも及んでおり、現場にいた生徒たちの証言から、その現場の一部始終を説明しています。

 この加害者の少年は予めトイレで犯行の準備を整え、変装(黒づくめの服装に顔と目を隠すためにサングラス)をし、額に傷をつけた後に、全生徒に向けての13ページにも及ぶマニフェスト(今回の犯行とは直接には関係ないと本人も述べているが、彼の思想や社会の問題点などについて詳細に書き綴った独特な論文のようなもの)を送信し、最初に襲撃する教室にナイフを持って入っていきます。

 その最初のターゲットになった少女というのが、非常に孤独であった彼が学校内で質の高い対話ができる唯一の人物だったという少女で、彼は全生徒が見ている前で、彼女を攻撃し、ナイフで主に上半身、特に頭部、喉などを刺し続け、彼女が床に倒れたのちもさし続けたと言います。クラス中の生徒が凍り付いてしまうであろう想像するだに恐ろしい光景です。

 単に彼女を殺害する目的ならば、こんなにさし続ける必要はないわけで、明らかに常軌を逸しています。

 教室では英語の授業中であったそうで、担当教員は、数人の生徒とともに、教室から逃げ、加害者の少年は、次の襲撃のために向かいの教室に移動。向かいの教室では、無差別に対象を選び、男子生徒2名、女生徒1名を狙って攻撃を続けていました。

 そこを、下の階にいたIT技術者が悲鳴を聞きつけ、現場に向かい、2つ目の教室で暴れている加害者の少年を椅子で殴りつけ、犯行を止めようとし、今度は、この助けに入ったIT技術者が彼に追いかけられますが、彼は、これ以上、被害が他の生徒に及ばないように廊下の先にあった扉を閉じ、犯人との対話を試み、その後、彼は持っていたナイフをさしだすことに同意したと言います。

 このIT技術者というのが、学校でのどんな立場の人なのかはわかりませんが、今回の惨劇における、まことに勇気のあるヒーロー的な存在です。

 検察官は、「彼は学校内で非常に孤独な存在ではあったが、いじめや嫌がらせの対象であったことは全くない」と断言していますが、非常に孤独であったということは、ほとんど多くの人々からは無視されたような状況ということで、このことが無関係であるとは考え難いことです。

 彼の両親は離婚しており、彼は母親と二人暮らしで、母子関係は良好であったと言われているものの、彼の言動、特にヒトラーへの異常な感心や自殺願望などを母親は大変心配しており、母親の要請により、ロワール・アトランティック青少年協会の教育者らとも6回にわたる面会を続けていました。

 この面会で、何が行われていたかは明らかにされていませんが、このような凶行が行われた後になってみれば、明らかに彼に必要だったのは、精神科の専門的な治療で、また、身柄拘束後、本人も、「自分の病気が無視されてきたことを残念に思っていた」と話しているそうです。

 彼の周囲にいたクラスメイトたちは、皆、彼は非常に静かで、控え目で、おとなしい人だったと語ってるようですが、実は、静かに見える彼の内側には、なにかのきっかけで爆発するようななにか、煮えたぎるようなものが潜んでいたようです。

 彼は逮捕、拘留後、ほぼほぼ、まともに話ができる状態ではないと伝えられていましたが、その日の夜には、拘留を解かれ、精神病院に入院させられたそうです。

 このような事件が起こった場合、もし娘が被害者だったら・・とか、もし、加害者だったら・・などと様々なことを考えさせられます。

 今回の被害者遺族は、被害者の苗字や写真を公表してほしくないと強く懇願しているそうです。

 フランスの場合、この種の事件があっても被害者の家族、加害者の家族などもがマスコミに登場する場合も見られるのには、驚かされますが、今回は、少なくとも被害者の写真や苗字が公表されることはなさそうです。

 彼が正常な精神状態でなかったことは明らかではありますが、この犯行に対する罪が精神障害のために軽減されるのかどうかは、同時に彼がとった非常に計画的な犯行の準備から、どのように判断されるのかは、殺人罪が適用される可能性もあると言われています。

 つい最近、15歳の誕生日を迎えたばかりという被害者の少女、と15歳の加害者の少年。

 私の勝手な印象ですが、未成年の犯罪には、この15歳という年齢が多すぎる気がしています。

 

 ナントカトリック高校ナイフ襲撃事件


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2025年4月25日金曜日

15歳の高校生が授業中にナイフで生徒を襲撃 女子高生1名死亡、3名負傷

  


 ナント(フランス西部ロワール河畔地域)にある高校で生徒によるナイフ襲撃事件が発生し、女子高校生1名が死亡、3名が負傷(うち1名重傷)するという大惨事が起こっています。

 これが、ちょっと危険な地域の公立校だったり、ちょっとドロップアウトしかけた生徒だったり、壮絶ないじめのうえの仕返し行動だったりするのではなく、この学校がいわゆる県下でもまあまあレベルの高い私立のカトリックの学校であり、この犯行に及んだ生徒も警察にマークされていたり、学校内でも問題視されているわけではなかった生徒の突然の凶行であったために、さらにショッキングな社会現象として受け取られています。

 私自身もなんとなく、この学校が私立のカトリックのそこそこレベルの高いと言われている学校だったということで、なんとなく、娘が小学校から高校まで通っていた学校とダブって考えさせられるところがあり、これまで私立なら、ある程度、安心と思っていたのが、こんなこともあり得るのか?と愕然とさせられました。

 事件は、木曜日の昼頃、12時30分頃に授業中に起こったそうで、加害者の少年が当日、同じクラスで授業を受けていたのかどうかは、わかりませんが、一人目の少女を刺してから、別の教室を襲って、さらに3人を刺したと言われています。

 おそらく、最初に刺された少女が死亡したものと思われますが、その後、別の教室に向かって3人を刺したところで、教師が介入して、取り押さえられ、駆け付けた警察官にそのまま身柄を拘束された模様です。

 この最初の少女との間には、なにかしらの口論があったと見られていますが、とはいえ、これが怒りによる興奮からの突発的な犯行ではなく、犯行の15分前に彼は全校生徒に向けて、13ページにも及ぶ「免疫行動」と題された論文のような内容の文書を送信していました。

 この少年は、論文の中で、グローバリゼーションを攻撃し、人間を分解する機械と化した非常に暗い社会を描写しています。また、同時に彼は、「この13ページの文書は、いかなる行為を正当化するものではなく、単に事実を述べているものである」とし、「地球規模の環境破壊:最初の攻撃」、「組織的暴力と社会的疎外:第二の攻撃」、「全体主義的な社会条件付け:第三の攻撃」と3つの部分によって構成されており、ピーテル・ブリューゲルの「人間嫌い」の挿絵も添えられています。

 彼がこの文書とともに「この文書によって書かれている内容はいかなる行為も正当化するものではない」と説明しているように、この文書の内容とクラスメイトを刺すこととは、どういう関係があったのかは、全くわかっていません。

 しかし、彼の犯行が計画的であったことは、ほぼ明らかで、彼はハンティングナイフを含む2本のナイフを所持していたということで、一部の友人には、一週間まえに「さようなら。良い人生を送れるように祈っている。またすぐお会いできるでしょうが、今度はテレビで・・」と意味深な言い方をしていました。

 しかし、教室に居合わせた生徒たちはもちろんのこと、学校内の生徒にとっては相当なショッキングな出来事で、彼らは、事件発生直後から、4時間近く、学校内の体育館に避難させられ、午後4時半過ぎから少しずつ解放されたようです。

 とはいえ、相当にショックを受け、泣き出してしまう生徒たちもいて、すぐに学校の施設の周囲には大規模な警察官が配置され、警察官だけでなくライフルを持った憲兵隊までがずらりとならび、また校内には緊急心理医療ユニットが設置され、これまでに99名がとりあえずの心理的ケアを受けたそうです。

 それはもっともなことで、ふつうの人は人が刺される現場に遭遇することなどないにもかかわらず、白昼堂々・・というか、しかもそれが、学校内、授業中に起こったのですから、その衝撃は計りしれません。

 特に犠牲となった女子高校生の家族にとっては、いつもと同じように学校に行ったと思ったら、学校で刺されて死んでしまうなど、どう考えても受け入れられるものではありません。

 この加害者の少年について、同級生は、「彼は落ち着いた人で、少し内気で控え目な人だった」と見ていましたが、時折、冗談めいて、ナチスやヒトラーなどのイデオロギーや革命について語ることもあったと語っています。

 しかし、一方、スナップチャットのグループでは、過激派や政治家、ナチスなどを説明する動画をたくさん送りつけてくることもあったそうで、そのうち、周囲がついていけなくなった・・と語っている人もいるようです。

 彼は鬱状態であったとの報道もありますが、このような人物(学生)の犯行の場合、日常的には、目立った問題行動は見当たらず、おとなしく、ある程度以上の学力もあったりする場合、問題が思想的なものであったりしても、それを学校側がチェックしてスクリーニングするのは至難の業です。

 娘の通っていた学校は今回の事件が起こった学校と似た感じの私立のカトリックの学校でしたが、非常に厳しい学校で、言動を含む行動などに問題があった場合は、何回かの注意勧告(たしか3回)のあとは、やんわりと転校、退学を促されるような感じだったので、問題のある生徒は学校にはとどまれないようになっていたので、ああいう学校だったら、安心・・と勝手に思っていましたが、今回のような場合、果たして学校は、彼の危険なシグナルに気付くことができたか?と考えると疑問でもあります。

 また、夏のコロニー合宿に行った際には、ディレクトリスから、「あなたのお嬢さんが刺されそうになりました」と電話をもらって、相当驚いた覚えがありました。このとき、娘は小学校高学年くらいでしたが、娘自身は、大してショックを受けておらず、夜、部屋の電気を消すかつけたままにするかで部屋の中の数人でケンカになった末に、当事者の女の子がナイフを持ち出しただけ・・ということで、怪我も何もなく済んだそうですが、子どもから先に連絡が入って親が騒ぎ出すのを恐れて、ディレクトリスの方から先んじて連絡をくれたようです。

 だいたい、小学生の女の子がなんでナイフなんて持ってきてるの?それだけでもおかしいでしょ!と思いましたが、同時に娘には、「学校と違って、色々な人がいるんだから、あまりおかしな子は刺激しないようにした方がいいよ・・」と諭した覚えがあります。

 実際に、私はあの学校なら大丈夫・・と思っていたのです。

 それが、今回のような事件が起こったということは、より難しいことが山積し、複雑な時代になったということでしょうか?


高校生授業中ナイフ襲撃 女子高生死亡


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2025年4月24日木曜日

パリの美味しいお肉屋さん Hugo Desnoyer

  


 パリには絶対に美味しいお肉屋さんがあるはず!と、ずっと美味しいお肉屋さんを探していました。

 とはいえ、日常のお買物は、だいたいスーパーマーケットで済ませてしまうので、そこまで熱心に探していたわけでもないのですが、いわゆる「お肉屋さん」・・お肉だけを売っているお店のお肉の方が美味しいには、美味しいのですが、その中でもとりわけ美味しい「お肉屋さん」というものに、私はこれまで出会ってきませんでした。

 しかし、昨年末頃についに、私は見つけたのです。「これは美味しい!」と感動できるお肉屋さんを・・。

 それは、たまたま、YouTubeでどこかのテレビで放送した番組を流していたもので、ピエールエルメなども登場する日本市場を開拓しようとしている・・もしくは、日本市場に学んでいる各食品の専門家?のルポルタージュのような番組で、パティシエ、ヴィティキュルチュール(ワイン用のブドウ栽培・ワイン製造者)、そして、このお肉屋さんが紹介されていました。

 番組では、彼が日本の和牛を実際の産地数ヶ所を訪れたり、試食したりしている様子や彼のパリのお店などが紹介されていました。




 この番組を見て、そこまで期待してはいなかったものの、パリ市内だし、しかもこのお店、エリゼ宮にお肉を卸しているお店(エリゼ宮御用達)でもあると紹介していたので、まあ、マクロン大統領が食べているお肉・・食べてみたい!と・・ミーハーな気持ちも半分で、そこまで期待はしていませんでしたが、とりあえず、一度、行ってみようと訪れたのが最初でした。

 これまでに、何回か行きましたが、いつ行ってもお客さんがけっこう並んでいて、人気なのがわかります。

 最初に行った時は、とりあえず、ステーキ用の肉を購入。まずは、簡単にステーキにして、ちょっと期待しながら、口に運んだところ、これが感動的に美味しかった!ふだんは、お肉が特に大好きでたまらない!というほどでもない私でも、その美味しさは、感動的でした。


 焼いていても、余分な水分は全くなく、それでいて、ジューシーでひとくち噛みしめると肉汁がじゅわっと広がり、お肉そのものの風味がたまらなく美味しく、もうステーキでありながら、肉は飲み物!といってもいいくらい、すいすいと食べられてしまいます。

 肉は飲み物!というのはオーバーと思われるかもしれませんが、全然、オーバーではありません。それこそ、自分でお肉を買ってきて、家でお肉を焼いて、こんなに感動したのは、初めてのことでした。

 お店自体は、そんなに大きくないお店なのですが、ガラスのショーケースの内側には、数人の店員さんが、次から次へとお客さんの注文を受けて、注文のお肉を切ってくれるので、並んでいても、行列はどんどんはけていきます。

 会計は、別の場所で会計専門の人が担当しているのですが、レジの後ろには、たくさんの注文が書かれたポストイットが一面に貼られています。このお店、小売り以上に多くのレストランにもお肉を卸しているそうで、きっと、そちらに販売されているお肉の量の方が多いように思います。

 一番、最近ではひき肉(こんなお店でひき肉は邪道かともおもったのですが・・)を購入。美味しいお肉はひき肉だって美味しいだろうと思って、買ってきたひき肉でハンバーグとミートソースを作りました。

 ハンバーグは日本風の玉ねぎやパン粉などを入れたハンバーグにしましたが、不思議と玉ねぎやパン粉などを混ぜたのがウソのようにしっかりしたお肉感があり、また、ミートソースにした分もミートソースにしつつも、その中のひき肉を思わず噛みしめたくなるような美味しさでした。

 そんなに近所ではないので、そこまでに頻繁には通ってはいませんが、でも絶対、定期的に行きたいお店のひとつです。今度は、焼肉にするつもりです!

 ただし、このお店の難点は、朝8時からやってくれているのは良いのですが、お昼13時から16時までが閉まってしまうことで、一番、行きやすい時間帯に開いていないことです。(月曜日と土曜日は終日営業のようです)

 現在のところ、私がパリで見つけたお肉屋さんの中では一番、美味しいお肉屋さんです。包装紙も可愛いのですよ!


🌟Hugo Desnoyer 45 Rue Boulard 75014 Paris  8:00~13:00, 16:00~19:30


パリの美味しいお肉屋さん Hugo Desnoyer


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2025年4月23日水曜日

地球温暖化とイワシ

  


 「地球温暖化による気候変動のためにイワシが不漁・・小型化している」という報道を見て、「そういえば、イワシくん・・君を忘れていましたよ・・」と思いました。

 フランスに来て以来、しばらくは、フランスの魚売り場に出回っているお魚を色々と食べてみていた時期もあったのですが、スーパーマーケットなどでは特に、その種類も減っているような気がするし、とにかく高いのに美味しくないというか、高いからといって美味しいとは限らないため、もう探すのもやめてしまった感じなので、たまにマルシェを覗いたりしたときに、「これは!」と思うものがあれば、買うこともあるのですが、フランスでは、すっかりお魚というものを食べる機会が激減しています。

 それに比べて、さすがに日本のお魚売り場の充実具合は素晴らしく、私の中では、魚は日本に行った時に思いっきり食べればいいか・・と、あとは、もっぱら、フランスでの私のお魚は、PICARD(ピカール)の冷凍のお魚(特に鯖の切り身など)に頼っています。

 そもそも、いつ行っても同じ魚が並んでいる感じのフランスのお魚屋さん・・レギュラーメンバーは、なんといっても、よっぽどフランス人は好きなんだなと思われるサーモン、そして、舌平目や鱸(スズキ)、タラなどの白身魚、茹で海老などでしょうか?

 その中に以前は、イワシもあった気がしますが、最近は、そういえば、あんまり目にしなくなっていました。イワシならば・・と以前は時々、買うこともあって、グリルしたり、から揚げにして、南蛮漬けにしたりもしたのですが、姿を消しても、そもそもそんなに存在感があったわけではないので、すっかりその存在自体を忘れていました。

 以前は、そんなイワシの中には、「これ?ほんとにイワシ?」と思うような大きなイワシも並んでいたりもしたのですが、今は市場にもあまり登場しないうえに、小型化が問題になっているようです。

 フランスでは、イワシが最も消費されるのは、いわゆるオイルサーディンのような缶詰めなのだそうで、特に年配の世代には、食べるものがなくなったとき、安全策としてイワシが常にあるようで、缶詰めのイワシは地味に売れ続けている商品なのだそうです。

 そういえば、フランス人の亡き夫も非常食のように、このイワシの缶詰とラタトゥイユの缶詰を常に買い置きしていたのを思い出します。

 遡って2000年から2010年の時点で崩壊の道を辿っていた地中海のイワシ漁では、すでにサイズの縮小が見られていました。これは、地球温暖化による魚の餌となる動物プランクトンの減少や変化によるものと言われてきました。

 このため、イワシはより温かく、酸素の少ない海で、小さく質の低下した獲物を食べるためにより多くの努力をしなければならず、そのためにより多くのエネルギーが必用となります。その結果、イワシは15年間で50%も小さくなっています。

 小さいイワシの場合、内臓を取り出すのも缶詰めにするのも手作業なのだそうで、労働集約度は2倍かかることになります。

 網を張り巡らせてイワシを量獲する巻き網漁師は、特にアジやサバの漁獲量が大幅に削減されて以来、この小魚?に大きく依存していたと言われていますが、このイワシ漁も成り立たなくなりつつあり、漁業から離れる若者が急増しているとか・・。 

 不漁に加えて、このコスト高でイワシの缶詰めは品薄状態なのだそう・・。

 私の場合、缶詰めも含めてイワシの存在自体を忘れていたくらいなので、イワシの缶詰め売場もあまり見ていないので、正直、品薄なのか気付かなかったくらいなのですが、その存在を思い出してみると、アレンジしてみれば、結構、食べられる食材だったのではないか?と、今度、買い物に行ったら、イワシの缶詰めを調達してこようと思っています。

 それにしても、海は繋がっているのに・・なんで、これしか魚がないの(魚の種類)?と恨めしく思った時期もありましたが、要は需要と供給の問題もあり、そもそも、魚は圧倒的に人気がないのです。


地球温暖化とイワシ


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2025年4月22日火曜日

ノートルダム大聖堂に鳴り響く88回の鐘の音 ローマ教皇ご逝去

  


 ローマ教皇といえば、全世界のカトリックの頂点であり、カトリック教徒にとっては、神のような存在であるとともに、大変な権力者でもあります。

 そのローマ教皇(フランスではパップ・フランソワと呼ばれている)のご逝去に接し、パリ・ノートルダム大聖堂では、彼の死を悼み88回の鐘が鳴らされました。

 宗教を否定するつもりはありませんが、どちらかといえば、派手なイメージのあるカトリック教会の在り方は、無宗教の私にとっては、宗教としては、あっさり受け入れ難い部分もありました。

 とはいえ、カトリックとは、ある種のご縁を感じないこともなく、私が大変お世話になった大学の恩師もカトリックの神父様でもありましたし、娘は小学校から高校までフランスの私立のカトリックの学校に通っていましたし、夫が突然、亡くなった後は、ただちにカトリックからご援助をいただき、学費はカトリックの教会(協会)が負担してくださいました。

 私も若い頃にその自分のお世話になっていた教授から、ずいぶんカトリックについての講義なども受けましたが、信仰には至りませんでした。私はその教授(研究)に神髄していたので、できるなら、教授の導かれる信仰を持ちたいと思ったこともあったのですが、どうにもそれ以上、踏み込むことはできませんでした。

 当時、そんな信仰にいたらない自分の気持ちを教授に一対一でお話したことがあったのですが、「大丈夫、信仰は無理に持つものではなく、必要なときは自然に訪れますから・・」と諭されたことを今でも覚えています。

 話は逸れましたが、恐らく多くの人々と同じように、ヨーロッパに長く住んで、どこかに旅行すれば、その地の大聖堂などを訪れたりもしましたし、昨年末に再開したノートルダム大聖堂にもたまに、思い出したように入ってみたりもしますが、私にとっては、観光地のひとつのようなもので、しかし、そのいくつかには、中で、突然、不思議な感覚に襲われることもありました。

 今回のローマ教皇のご逝去に関してのように、亡くなってから、多くの報道を見たりして、あらためて、「あ~こんな方だったんだ・・もっとご存命中に色々、知りたかった・・」と思うことは少なくありませんが、まさに今回、同じことを思いました。

 お加減が良くないことは、ここ数日、イースターを控えたミサの様子などで、聞いてはいたのですが、お辛そうではありながらも、前日まで公のミサでお話をしていたりされていたので、まさか・・と驚きました。

 彼は、カトリックの過度な権力支配的、腐敗した構造を嫌い、その改革に取り組み、もっとも貧しい人々に手を差し延べ、移民の運命や環境問題についても、強い問題意識を持ち、極めて人道的なヒューマニストであったそうで、没後すぐに、彼の功績を讃える声が多くあがっています。

 思えば、昨年12月のパリ・ノートルダム大聖堂の再開セレモニーには、カトリックの大司教として当然、参加すると思いきや、「自分は社交行事の教皇ではない」と、マルセイユとコルシカ島を訪問していたというのですから、ここにも、彼の強い意志と毅然とした態度が表れており、私は、このことにもっと注目すべきだったと今になって思っています。

 ノートルダム大聖堂は、あなたはいったい何者?と思うほどに、マクロン大統領が前面に登場し、ウクライナからゼレンスキー大統領や就任直前のトランプ大統領まで招いて、まさに政治・外交の場と化していました。多くの政治的だったり、商業的な思惑が見え隠れし、ノートルダム大聖堂の入場料を取るなどという話まで浮上し、この際も「祈りの場であるはずのカトリックの大聖堂で入場料などもってのほか!」とパップ・フランソワが大反対していると聞いていました。

 無信仰者が増えたとはいえ、それでも29%近くはカトリック教徒(多宗派を含む)というフランスでは、この大教皇のご逝去のニュースはその日のトップニュースで大変、大きな扱いでした。

 奇しくも、彼の命日になったのは、イースター(復活祭)の祭日だったのは、なにか、とてもドラマチックであったような気もします。

 その日は、パリ・ノートルダム大聖堂では、夜通し祈祷が行われました。


ローマ教皇逝去 フランシスコ大教皇 パップフランソワ


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2025年4月21日月曜日

政府も警鐘を鳴らすSNS上の危険な極端な痩せを推奨する「Skinny Tok」スキニートックの流行

   


 夏に向けて、真剣にダイエットに取り組もうと思うのは、女性ならば、誰でも経験があるとも思われますが、現在、問題視されているのは、単にほっそりしたいとかいう程度のダイエットではなく、「極端に痩せたボディ」への推奨動画です。

 これは、主にTikTokを中心に若い女性の間でトレンドとなりつつある拡散を示しており、これを見ると、明らかに病的とも思えるような痩身の女性が「痩せること」への崇拝を促し、太ることへの嫌悪感を増長させるような内容のものになっています。

 TikTokの#SkinnyTokのトレンドは、極端に痩せているという理想を追い、個人の健康状態や体型に関係なく、モデルのような体型を実現させるために体重を減らすことをユーザーに推奨しています。これらの怖いことには、SNS上ではアルゴリズムが自動的に機能して、ひとたび、これを見たり、反応したりすれば、それが正しいことであれ、間違ったことであれ、次から次へと同様の映像が流れ続けることで、ますます洗脳され、最悪は「摂食障害」への扉が開かれることになります。

 正直、そんな映像を見ても、およそ魅力的とは感じ得ず、むしろ、病的な痩せ方なのですが、これらの映像には、「あなたは醜いのではなく、ただ太っているだけ・・」とか、「痩せれば、この美しい顎のラインが強調されます」とか、「この鎖骨がポイント!」などと語っているものもあれば、「あなたはおやつを食べたいですか?おやつになりたいですか? 痩せていると感じることほど美味しいものはありません!」など、叱咤激励しています。

 また、これらの映像に反応して1ヶ月で10㎏痩せたという女性は「唯一の確実な解決策は食べるのをやめること!」、あなたのお腹がグーグー鳴ったとしても、それは、あなたへの拍手喝采であり、激励してくれているのです」などという内容を投稿していたりします。


   


 これら「Skinny Tok」のトレンドがここ1ヶ月程度でフランスでも急上昇していることに、懸念を示し、フランスの国会議員は、3月初旬、TikTokが子どもや青少年に及ぼす心理的影響について調査する委員会の設置を承認しました。

 また、デジタル相は、TikTok上での極端な痩せを推奨する「Skinny Tok スキニートック」の流行は容認できないとして、メディア規制局と欧州員会に連絡をとったと伝えられています。

 ダイエットに関しては、若い女の子の場合、全然、太っていない女の子に限って、やたらとダイエットしたがるような気もします(きれいな女性ほど何回も整形を繰り返すような気もするし・・)。

 しかし、今回の場合は単なるダイエットの域を超えており、極端な痩せ体型を推奨していることが、これまでのダイエットとは違うところ・・。

 全然、美しくないし、全然、魅力的じゃない。

 もはや、捨て置けない問題として、テレビのニュースなどでも、ジャーナリストたちが顔をしかめて、「これは絶対によくない!ティーンエージャーを持つ親御さん、ご注意を!」などと呼びかけています。


Skinny Tok  スキニートック TikTok


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2025年4月20日日曜日

オリンピックの影に泣いた人々への補償は置き去りのまま・・

  


 パリオリンピックが終わって、早や8ヶ月以上が経過し、華やかにオリンピック仕様に飾られていたパリの街にオリンピックの痕跡はほぼほぼ残っていません。ついこの間、まだ、フリージュ(パリオリンピックのマスコット)がペイントされたゴミ収集車を見かけて、「あれ!まだ、あったんだ・・」と思ったくらいです。

 本当にパリは、このオリンピックのために長いことメトロの工事をしたり、オリンピック会場になるスタジアム近辺の駅を改装したりと準備をしていました。しかし、依然として14号線の拡張工事が続いているのを知って、必ずしもオリンピックのためだけでもなかったんだな・・とも思いましたが・・。

 オリンピックともなれば、大変な観光客が舞い込んでくると誰もが思っていましたし、私自身も、近所にわりと大きめなホテルがあるために、「このホテルもオリンピックのときには、満員になるんだろうな・・」となると、近所のバス停などは、えらいことになるだろう・・どうしよう?などと思っていました。

 このオリンピックで大混雑になるパリを見込んで、パリおよびパリ近郊のホテルは1年前からオリンピック期間中の値段を爆上げし、結果、蓋をあけてみれば、予約が埋まらない状態になりました。

 また、このホテル価格の爆上げに加えて、セーヌ川でのオリンピック開会式に向けてのパリ市内、広範囲にわたる通行止め(歩行者も含めて)状態にオリンピック開会式前後などは、前代未聞のガラ空きのパリ・・こんな空いているパリ、滅多にない・・状態でした。

 私などは、いつもは混雑している場所を軒並み渡り歩いて空いているパリを満喫しましたが、オリンピックの観光客で売上げ倍増!と目論んでいたパリの商店・レストラン(特に通行禁止に指定された地域の商店・レストラン)は、軒並み閑古鳥が鳴く状態になりました。

 つまり、この地域の商店・レストランなどの経営者は、特にオリンピック開会式の前後、1ヶ月近くは売上げが激減し、補償を求める声が強く上がっていました。

 この声が大きくなることを恐れた政府は、オリンピック開会式直後、2024年8月1日付で、経済産業省が補償についての説明の書簡を出しています。

 「2024年パリオリンピック・パラリンピックをフランスで開催することは、我が国にとって大きなチャンスであると同時に行政機関にとって大きな挑戦でもあります。すべてがスムーズに進み、全ての人の安全が保証されるためには、特定の場所、エリア、ルートへのアクセスを制限または禁止する必要がありました。このエリアには、経済的な損失を被るケースが生じる場合は、補償が可能となります。ただし、補償の対象となるのは、政府が行った制限的な決定に関連する経済的損失に限られます」

 おそらく、欲張って価格を高騰させた結果に顧客に逃げられたホテルなどは、補償の対象にはならないということだと思いますが、とにかく、少なくとも、この通行止めのエリアの商店やレストランに関しては、彼ら自身には、何の咎もなく、本当に遠くから眺めるにも、お気の毒な気がしたものです。

 ところが、この補償、オリンピックが終わって8ヶ月以上が経過したというのに、まだ支払われていないどころか、補償委員会さえも設立させていないそうで、さすがに「ふざけんな!」との声が上がり始めているようです。

 2024年を通しての売上げがすでに出ている中、これに該当するエリアの店舗は、年間売上げが10%~12%減少しています。

 個人的には、ノートルダム大聖堂近辺の商店などは、2019年の大聖堂の火災以来、まさに踏んだり蹴ったりだったと思います。

 当然、火災により、ノートルダム大聖堂への観光客は長期間にわたり激減、それでも、さすがにノートルダムだけあって、焼けた跡でさえも、観光客の足が全く途絶えることはなかったとはいえ、さすがに修復中の間は観光客は少ないことはたしか。

 せめて、オリンピック期間には!と観光客を期待していたところが、まさかの通行止めに・・。

 オリンピックが済んでしまえば、オリンピックのことは、もうすっかり忘れて・・となりがちなところに、この補償問題は置き去りにされてきたようです。

 奇しくも、フランスは、オリンピック後に政権が2度も変わったこともあったりして、終わったことに関しては、置き去りにされてしまったのもわからないでもないのですが、当事者にとっては、死活問題です。

 税金などは、滞納したりすれば、追徴金が加算されたりもしかねないわけですから、この補償に関しても、速やかに対応すべきだったと思います・・が、補償委員会も設立されていないというのですから、払う気がないと思われても仕方ありません。

 「いいかげんにしろ!」と声をあげ始めた約100人の店主は、被害者委員会を設置しました。

 これに対し、パリ警察署長とイル・ド・フランス(パリ近郊)地域圏知事は、ようやく4月末までにこの補償委員会を設立することを確約しました。

 ここで、ようやく補償に向けての動きがスタートする兆しが見え始めたところです。

 取り立てるときは、強引なのに、支払う段になると、ものすごく時間も手間もかかるのは、世の常とはいえ、あまりに気の毒な話です。


オリンピック被害の補償


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「空いているパリを満喫する1日」

「こんなの初めて!パリジャンが驚いているパリのメトロ・・」

「あれだけいたパリの露天商はどこへ行ったのか?」