欧州議会経済通貨委員会は先月末、デジタルユーロ(€N)プロジェクトに関する立場を採択し、決定的な一歩を踏み出しました。
これは単なる決済手段の改革にとどまらず、デジタル時代における欧州連合(EU)の通貨主権維持能力に関わる問題として注目されています。欧州連合の主権と競争力は、現在、決済システムの根本的な変革に直面していると言えます。
現在、デジタル決済は現金利用をはるかに凌駕する一方で、その運用を支えるインフラの大部分は欧州以外主体のものに支配されています。
EUにおけるカード取引の10件中6件はVISAとMastercardのネットワークを経由しており、モバイル決済においては、Apple PayとGoogle Payの支配力が拡大しています。このような状況は、単なる経済競争を超えた欧州の通貨主権という重大な問題を引き起こしていると欧州議会は考えています。
欧州の通貨システムは現在、欧州中央銀行が発行する2種類の公的通貨(紙幣と銀行が保有する準備金)に依存している一方、日常の決済は民間銀行の資金によって行われています。
現金の使用が減少するにつれ、公的通貨が日常的な決済手段から姿を消し、外国の主体によって支配されることが多い民間の決済手段に取って代わられるリスクが高まっているのです。
この依存関係は、欧州の主体にとって決済コストが増加し、非欧州企業によるデータや付加価値の獲得が容易になり、EUを地政学的リスクに晒すことになり、米国の域外制裁は、決済インフラが権力行使の手段として利用され得ることを示しているのです。
デジタルインフラが主権にとって不可欠なものになりつつ世界において、欧州はこの動向を無視し続けることはできないのです。
こうした背景の中で、欧州中央銀行はデジタルユーロプロジェクトを推進しつつあるわけですが、その目的は新たな通貨を創設することではなく、公的通貨をデジタル形式でも存在させることです。
これは仮想通貨でも、暗号通貨でもなく、銀行や決済プロバイダーが配布するデジタルウォレットの形をとります。
簡単にいえば、VISAやMastercardを通さない決済システムを構築するということです。
現在、多く利用されているVISAやMastercardに手数料を支払うことなく、欧州独自のシステムを作るということでもあります。
この大枠を管理するのは、欧州中央銀行ですが、日常的に使用するアプリ等のサポートは銀行が行うことになります。
ただし、デジタルユーロは金融システムの安全性を維持するために複数のセーフガードが盛り込まれ、預金の流出を防ぐために保有できる金額には上限が設けられ、利息はつきません。
かといって、現金を廃止するわけではなく、あくまでも共存、また、既存のカード会社の決済とも共存を目指し、用途や金額によって使い分けるという形を目指しているようです。
これは、欧州全体の海外企業への依存を減らし、欧州独自の決済インフラを持ち、緊急時にも欧州内で決済を維持することを目的としているようです。
まだこのシステムは実際にはスタートしていませんが、このような方向に世の中が動いているということを知っておくことも必要かと思います。
デジタルユーロ
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