7月中旬にフランス国民議会は安楽死(aide à mourir(死への援助)法案を可決しましたが、この法案に関して憲法評議会は、安楽死、あるいは自殺ほう助の一形態化を合法化する法案を承認しましたが、同時に3つの解釈上の留保を表明しています。
これは長きにわたる安楽死に関する立法過程の終結を意味するとはいえ、物議を醸す議論の終結を意味するものではないかもしれません。
この法律は一定の条件下で安楽死、あるいは、自殺ほう助を合法化するもので、この一定の条件下について、まだ議論が続く可能性を残しているということでもあります。
この一定の条件下のうちのひとつは、「人が入院または滞在する施設またはサービスの責任者は安楽死の権利行使に関わる医療専門家の介入を許可する義務を負う」というものです。
憲法評議会は、民間施設の経営者は安楽死の手続きを拒否できると説明しています。ただし、このような拒否は、「他の施設が地域のニーズに満たすことができる場合」に限ると明記しています。(この文言は妊娠中絶に関する公衆衛生法の規定と同一)
これは特にカトリック系医療機関における大きな要望でした。「もし、こうした要請があり、施設内(カトリック系)でそれに応じざるを得ない場合、信仰の自由を侵害することになる」ということです。
もう一つは、「薬剤師は致死薬の調剤を拒否することができる」ということ。憲法評議会は、医師と看護師の良心条項に関するもので、「致死性の調剤薬の調剤は担当薬剤師の個人的信念と矛盾する可能性がある」とし、「良心条項」に関して、致死薬の調剤を拒否する薬剤師にも拡大適用するべきとしています。
そして、もう一つの懸念は成年後見または、補佐を受けている成人に対する手続きに関するものです。可決された法案では、「安楽死を希望する患者は自由意志に基づき、十分な理解をもって意思表示できる」能力を有していなければならず、「提供される情報は、常に患者の判断能力に合わせて調整されなければならない」と規定されています。
憲法評議会は、条文には、後見人との協議の必要性が述べられているものの、後見人の意見をどの程度、考慮に入れるべきかについては、明確に規定されていないと指摘しています。
いずれにせよ、生死にかかわる非常にセンシティブなことゆえ、慎重な議論は必要であると思います。
また、この安楽死法案に関してというよりも、私は、正式な立法前に「憲法評議会」という組織が存在することがやはりとても重要なものだと感じています。
フランスの憲法評議会は、立法前にも、「法律そのものが憲法に違反していないか?」をチェックする専門機関です。
日本では、政府が法律案を国会に提出する前に内閣法制局が法律案について憲法との整合性をチェックするそうですが、あくまで内閣法制局、政府内部でのチェックで独立機関ではありません。そして、法律施行後に憲法との整合性に問題がある場合は最高裁がその役割を果たすことになります。
つまり、違憲かもしれない法律を成立する前に、施行される前に止める機関が弱いということです。
国会は国民から選ばれた議員で構成されているとはいえ、多数決で無理矢理、国会で法案が通されてしまう状態が歪に感じてしまうので、この憲法評議会のような機関が日本にもあったら良いのに・・と私は最近は特に思うのです。
安楽死法案 憲法評議会
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