2020年9月30日水曜日

パリは最大警戒地域に指定されるのか?

 

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 フランスのコロナウィルスの感染拡大により69の地域が警戒地域に指定され、13ヶ所のパリ、ボルドー、リヨン、ニースなどの地域が特別警戒地域に指定され、さらにマルセイユ、グアドループが最大特別警戒地域に指定されてから、一週間も経たないうちに、パリ(イル・ド・フランス)の感染状況に赤信号が灯り始めました。

 先週末から最大特別警戒地域に指定されたマルセイユでは、レストランの営業が禁止になり、パリでも22時以降の営業が禁止になりました。

 政府からのお達しにも関わらず、大人しく従う人ばかりではないのがフランスです。それでも強引に営業を続けるレストランの様子が報道されていました。

 先週の段階では、フランス本土内では、最悪の感染状況だったマルセイユですが、今週に入って、パリ(イル・ド・フランス)の感染状況がマルセイユを上回っています。

 感染発生率(10万人あたりの感染者数)がパリを含むイル・ド・フランス地域で、レッドゾーンのライン250例を超え、259.6例に突入しました。これは、警戒基準の5倍、フランスの全国平均の2.5倍の数字です。病院でも、この地域だけで、現在、2000人以上(2064人)がコロナウィルスのために入院しており、集中治療室でのコロナウィルスの患者の割合が32.1%を超え、増加が止まりません。

 先週、政府が出した指標により、レストランの全時間帯営業停止に追い込まれたマルセイユの例に習うならば、パリのレストランもいつ営業停止になってもおかしくない状況です。

 現在のところは、パリでは22時までの営業は認められていますが、22時閉店でさえも、受け入れられないと、一部のレストランのオーナーが集まって、お鍋を叩きながら、営業時間制限反対を訴えるデモが起こっています。

 感染状況から見ても、営業停止になっても不思議はない状態で、22時閉店に抗議するデモ。どうにも危機意識にズレがあるように思えてなりません。

 AP-HP(パリの病院の統括部門)は、先週末から、通常の病院操作プログラムを解除し、コロナウィルス患者増加への対応との調整に取り掛かり始めました。ロックダウン時にはなかった交通事故や他の病気の患者に加えて、これからインフルエンザの季節が到来すれば、コロナウィルスの患者と相まって、再び、一気に医療崩壊が起こってしまうことも大いにあり得ることなのです。

 現在のところ、フランスでのクラスターの発生している場所の一位は会社、次いで学校とされていますが、それは、レストランやバーでの感染者の追跡ができていないからです。

 コロナウィルスとの共存していくには、徹底的に検査を続けることと、感染源を追跡して、感染の拡大を防ぐしかありません。ロックダウン後には、治まりかけた感染が再びこのように悪化してしまったのは、この検査の徹底と感染者の追跡、隔離ができていないからです。

 感染が増えたからといって営業停止やロックダウンを繰り返すのは、愚かです。

 今ほどの感染状況になってしまえば、一時的にでも、感染を抑えるために、営業時間の制限や停止もやむを得ないかもしれませんが、本来ならば、感染の危険が考えられ、しかもマスクという武器が使えないレストランやバーの営業にあたっては、感染者の追跡が可能になるようにレストランを利用するお客さんに対して、利用した時間帯とともに連絡先を控える等の対策がなされるべきなのではないかと思います。

 それができれば、実際にどの程度、飲食店で感染が起こっているのかも測定することができるし、感染者を追跡できれば、むやみやたらに営業を停止する必要もありません。

 ただ、ソーシャルディスタンスを取れとか、マスクをしろとか、手を洗えとか、それだけをがなりたてても、フランスでのコロナ感染は止まりません。

 3月〜4月のような医療崩壊が起こるようなギリギリの状態にならなければ、フランスはロックダウンをすることはないように思います。ならば、感染者を徹底的に追跡できるシステムを作っていかなければなりません。せっかくお金をかけて作ったコロナウィルス感染者追跡アプリ「STOP COVID」もほとんど活用されていません。

 先日、テレビ番組でジャーナリストに「STOP COVID」のアプリをダウンロードしていますか?と聞かれたカステックス首相が、「していない・・」と答えて、皆、唖然となりました。

 感染者を追跡し、隔離するように厳しく警戒しなければ、フランス人はおとなしく自粛などしていません。

 フランスには、日本のように、自粛警察なる人々はいないのです。

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「フランスの感染拡大対策 69の地域を警戒地域に指定 マルセイユはレストラン・バー営業停止へ」https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/69.html



2020年9月29日火曜日

コロナウィルスの煽りを受けて、急遽、フランスの田舎暮らしが始まった娘

 


 10月からの娘の日本への留学が、コロナウィルスのために、ドタキャンになったのは、9月に入ってからのことで、私としては、日本への渡航のチケットがパーになってしまったことに憤慨していましたが、娘としては、10月から半年間の予定が急にパーになってしまったわけで、9月は、その留学するはずだった期間に入れるスタージュ(企業や大学での研修)探しに躍起になっており、その後の予定も含めて大幅に変更しなければならなくなったために、落ち込んでばかりもいられませんでした。

 10月からのスタージュを9月に探している人など、ほとんどなく、10月からのスタージュはすでにほとんどが決まってしまっているわけで、かと言って、それでも何もせずに半年間過ごすのは、あまりにもったいないことで、彼女の専門分野の研究をしている会社の募集を見ては、CVを10ヶ所以上も送り、ようやく正式にスタージュ先が決まったのが一週間ほど前のことでした。

 「最初から10月からのスタージュを探していれば、もっと理想的な会社が見つかったのに・・」と、こぼしながらも、会社もフランス国内では業界最大手、研究自体も興味深い内容なのだとかで、やれやれ、この土壇場の職探しの中では、上出来と言えるものなのかもしれません。

 しかし、問題は、その会社の研究所がパリではなく、自宅からは通えないブルターニュのど田舎にあることで、そのど田舎での半年間のアパート探しをしなければなりませんでした。

 彼女は、昨年までの2年間、ボルドーにあるグランドエコールに通うために、一人暮らし(といっても、シェアハウスでしたが・・)をしていましたが、それでもボルドーは、地方とはいえ、大都市で、田舎・・という感じではありませんでした。

 今回の研究所のある街は、Google mapで辺りを見てみると、まあ、のどかなこと・・最寄り?の駅も思わず見過ごしてしまうような駅舎で、最初に駅を見つけた時には、これが駅なのかと、しばし呆然としてしまったほどです。

 おそらく、近辺の人は、通勤などの移動には、車を使う人が多い場所なのでしょう。これまで、ことごとく、運転免許を取り損ねてきた娘にとっては、なかなか大変な場所です。

 9月の最終週からの勤務をと言われて、なんとか目安を付けたアパートの家主と連絡をとり、内見と家主との面会の約束が取れたのは、引っ越し当日、そのアパートがダメだった場合のために、到着当日から数日間は、ホテルを予約して、昨日、娘は田舎へと旅立って行ったのです。

 しかし、出発直前に、彼女はポツリと、「この数週間は、これまでの自分の歴史上、記憶にある限りで、最悪の数週間だった・・」と言ったのを聞いて、ハッとさせられたのでした。急な展開で少なからず痛手を受けていた彼女、表には見せなかった彼女の心情を思うと、それを充分に分かち合えていなかったことを申し訳ないような気持ちにさせられたのです。

 とはいえ、一先ず、なんとか落ち着き先も決まって、ヤレヤレでもあります。

 パリからの距離は、それほど遠くないにも関わらず、TGVの到着する駅から乗り換える電車のアクセスが悪く、とても時間がかかります。それでも、彼女は取り敢えず、一週間ほど分の荷物を持って出発し、休日には、電車が1日2本という、ど田舎暮らしが始まりました。

 しかし、考えようによっては、パリよりも余程、人は少なく、勤務先も研究所ということで、滅菌状態で最大限の衛生環境ゆえに、コロナウィルスの感染に関しては、危険も少なく、この期間にお給料を貰いながら、勉強ができることは、ラッキーだったかもしれません。

 そして、これまで大都市以外で生活をしたことのなかった娘の田舎暮らしの良い経験となることでしょう。

 ちなみに、この会社のキャンティーン・・フランスの田舎らしく、パンとチーズは食べ放題なのだそうです。パンはともかく、乳製品が苦手でごくごく限られたチーズしか食べない彼女にとっては、新しいチーズの魅力に出会えるチャンスにもなるかもしれません。


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「娘の留学 コロナウィルスによる被害」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_20.html

 

 

2020年9月28日月曜日

死にたいと思う時に・・

 


 

 私が娘を産んだ時、分娩台の上で赤ちゃんを見せてもらった時に、これは大変なことをしてしまった・・一人の人間が私から誕生してしまった・・これは、大変な責任だ!と改めて思ったのと同時に、この子がなんとか無事に育つまでは、何があっても死ぬわけにはいかない・・と思ったことを、なぜかその瞬間を切り取るようにハッキリと覚えています。

 その後、アフリカからフランスに引っ越し、フランスでの生活が落ち着くまでには、色々なことがあり、主人も仕事のことなどで、うつ状態になったりして、にっちもさっちも行かずに、まだ、赤ちゃんだった娘を抱えて、私にとっても、とてもしんどい時期がありました。

 心配した母が滅多にかけてこない国際電話をかけてきてくれた時に、私は、思わず母に、「死にたいけど、娘がいるから死ねない・・」とこぼしてしまったことがありました。

 日頃は、我関せずで、自分勝手でわがままな振る舞いの多い父も、それを母から伝え聞き、ちょっと離れたところから冷静に状況を分析し、「おまえは、多くを語らないが、芯が強く、自分の意思をはっきりと持ったプライドの高い人間だったではないか・・気を確かに持って、起こっていることを冷静に受け止め、毎日毎日の生活を過ごし、毅然と生きて欲しい」というような内容のファックスが届いたりしました。

 思えば、遠く離れた両親にも心配をかけてきました。

 死にたいと思うことと、実際に実行に移すまでに至るまでには、大きな隔たりがあるなと思います。しかし、そのギリギリのところで、綱渡り状態でいる人も実際は、少なくないのかもしれません。

 そんな時は、淡々と日常をこなしていくことで、いつの間にか死神は、消えてなくなっていくかもしれません。私の場合、具体的に死に方を探していたわけではなく、ついうっかり、「死にたいけど、死ねない・・」などと母に漏らして口にしてしまったことが、その後の生活を淡々と送っていくきっかけとなったかもしれません。

 しかし、あの時の母からの国際電話が私の気持ちを危険な方向に向かってしまうのを食い止めてくれたのかもしれません。

 そして、子供を置いては死ねないという、理屈ではなく、本能的とも思える気持ちが私を救ってくれたかもしれません。もともと、私は、あまり精神的に強い方ではありませんが、子供のためにという気持ちが、私を少しだけ強くしてくれました。

 先日、日本の女優さんが自殺したという話を聞いて、まだ小さいお子さんがいらっしゃるのに、なぜ? と思い、自分の過去の話を思い出しました。

 実際に、自らの死を選んで、実行に移してしまう状態は、病的状態だと思うので、理由はわかりませんが、病気だったと思うしかありませんが、私がつい母にこぼしてしまったように、何か、ふと人に弱音を吐いたりする瞬間があれば、それがわずかでもガス抜きになっていたかもしれません。

 自分の弱さを見せることが苦手な人は、苦しむことが多いと思うのです。時には、弱音を吐いたり、愚痴を言ったりすることも精神衛生上、必要なことです。

 「死ぬほど辛い」ことも、時にはありますが、実際に自ら死んでしまうことは、何より家族や身近な人を強烈に傷つける行為に他なりません。なぜ、気付いてあげられなかったのか?なぜ救えなかったのか? 子供にとったら、捨てられたような気持ちにもなるかもしれません。

 自分の死後、いかに家族や身近な人が傷つくかに思いが至れば、思いとどまれることもあるかもしれません。


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「フランス人の夫との離婚の危機」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_28.html

 

 

2020年9月27日日曜日

ジャック・シラク元大統領の一周忌


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 私がフランスに来た頃のフランスの大統領は、シラク大統領でした。まだ、フランスという国をよく知らなかった私にも、シラク大統領のカリスマ的な存在は、とても頼もしく、また長身で、スマートでどこかエレガントな姿も、フランスの大統領として、どこか誇らしく、たまに目にする彼の演説を大統領というものは、さすがに話も上手で説得力のあるものだなぁと感心しながら聴いていました。

 彼は、フランス国民に絶大な人気の大統領で、官僚出身のエリートでありながら、気取らず、庶民的な一面も見せつつも、威厳と気品の感じられる圧倒的なオーラがある人でした。

 一般庶民に嫌われている現在のマクロン大統領と違って、下層階級の人にも、とても人気のある大統領でした。シラク大統領からサルコジ大統領へと変わった時に、会社のお掃除のおばちゃんまでが、シラクとサルコジの大統領としての格の違いをとうとうと語り、夫人も含めてべた褒めしていたのをなるほどという気持ちで聞いていました。

 その上、シラク大統領は、大変な親日家でもあり、相撲が好きで、自分の愛犬に「スモウ」という名前をつけているとか、熱燗と天ぷらが好きだとか、ついには、京都に愛人がいるなどという噂まで聞いて(あくまで噂で、本当かどうかは知りませんが・・)、親日家の大統領の国にいて、どこか日本人の私としても、居心地が良いような気分でもありました。

 一年前にシラク大統領が亡くなった日は、追悼の意を表して、夜のエッフェル塔も消灯し、それから数日間、エリゼ宮には、お別れの記帳に訪れる国民の長蛇の列が続きました。これが一年後の今であったならば、あれほどの人出ができたでしょうか?(いや、きっと、フランス人には、コロナは関係なしに、やっぱり凄い人出になっただろうな・・)

 シラク大統領の葬儀には、フランス国民だけでなく、海外からも多くの要人が出席しましたが、それも今年だったら、無理だったかも・・スター性のある人というのは、亡くなるタイミングまで、図られているようだと思ってしまいます。

 モンバルナス墓地の彼のお墓には、今でも多くの人が訪れており、一周忌の昨日には、彼の肖像画が刻印されたジャック・シラク記念切手が50万部限定で発売になり、今度は、郵便局に行列ができています。

 愛国心旺盛なフランス人に人気のあった大統領のパワーは、その死後も光を放ち続けています。コロナやテロに脅かされている現在のフランスにシラクのような圧倒的なパワーを持つ存在がいてくれたらなぁと、切手を見ながら、ぼんやりと思うのです。

 日本では、中曽根元首相の葬儀に1億円近くの予算が計上されていることが炎上しているようですが、どれだけの国民が支持するのか、記念切手でも発売してみたらどいかがでしょうか?


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「フランス人のプライド」

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2020年9月26日土曜日

シャルリー・エブド元本社前でのテロ事件でパリ11区、俄かロックダウン

 Soldats déployés à Paris après une attaque à l'arme blanche le 25 septembre 2020 près des anciens locaux de Charlie Hebdo


 警察はおろか、軍隊が出動する光景は、パリでは見慣れた光景になりました。テロ・デモの暴動化・コロナウィルス・・その度に警察、消防、救急、軍隊とが出動し、街中に物々しいテープが貼られ、厳戒態勢が敷かれるのがさほど珍しくなくなっていることにパリ(フランス)が異常な状況であることを実感させられます。

 25日(金)の昼ごろ、パリ11区にあるシャルリー・エブド(風刺週刊紙)の元本社前で、休憩中であった数名がナイフで襲われ、うち2名が重傷を負うテロと思われる事件が起こり、フランスは、大騒動になっています。

 パリでは、社員が建物の前で数人がたむろして、休憩時間にタバコを吸っている様子は、どこでもよく見かける光景です。そんな平和な時間に、突如、訪れたこの事件にフランス中が震撼としています。

 3週間ほど前から、2015年に起こった同時多発テロ・シャルリー・エブド本社襲撃事件の共犯者とされる被告らの公判が始まっており、毎日のようにその様子が報道されていました。

 そんな報道を、私は、「もう5年も経ったんだ・・今ごろやっているのか・・フランスの裁判もずいぶんと時間がかかるんだな・・」などと、のんきに見ていましたが、この裁判の報道から、被害者、加害者側ともに様々な感情を揺さぶられている人が多くいたことは確かなようです。

 今回の事件の実行犯の一人は、犯行から1時間以内にバスチーユ広場付近で、もう一人は、1時間半後にパリ市内のメトロの駅付近で逮捕され、この事件に関わったと見られている5人が、別の場所で身柄を確保されています。

 この騒ぎに事件の起こったパリ11区では、近隣の125校・32000人の生徒が昼過ぎからロックダウン状態に・・近隣の店舗も閉鎖され、緊迫状態に陥りました。

 主犯は、18歳のパキスタン出身の男性と33歳アルジェリア人の男性で、被害者の身体だけでなく、頭から顔にかけてナイフで叩き切ろうとしており、その犯行の異常さをあらわしています。単に命を狙うならば、顔を切りつける必要はなく、そこには、風刺画でイスラム教徒を怒らせたシャルリー・エブドへの何らかのメッセージ性があったのではないかと私は勝手に思っています。

 しかし、シャルリー・エブド社はすでに2015年のテロ直後に移転しており、被害に遭った人もシャルリー・エブド社の社員ではなく、その場所が犯人にとってシャルリー・エブド社のシンボル的な意味を持っていたというだけで狙われたのかは現在のところは不明です。

 また、犯人の男性は、赤いスポーツシューズに黄色いTシャツという、これでもかというほどの人目に付きやすく、印象に残りやすい服装で、逃げ切るつもりがなかったのか?計画的な犯行としては、まことに杜撰な感じなことも不可解です。

 昨日は、コロナウィルスの感染が急激に増加しているフランスで、コロナウィルス関連のニュースがほとんど消えた異常な1日でした。

 今後、しばらくの間は、恐らくパリはテロ警戒体制に入り、少しのことでもいちいち大騒ぎになるのではないかと思っています。今回は、5年前のテロのような銃や爆弾を使った大規模なものではありませんでしたが、背景等がわからないため、当分は、緊迫した状況になることは間違いなく、昨夜も警察のサイレンの音が途切れることはありませんでした。

 5年前のテロの直後は、金曜日に事件が起こって、土日は怖くて多くの人が引きこもり、つまりはロックダウンのような状態、月曜日に仕事に行く際には、なんとなく怖くてドキドキしたのを覚えています。

 事件後、しばらくしてから、仕事中に会社の入っている建物に、数人の警察官が踏み込んできたと思ったら、会社の前のバス停に停車しているバスの中に不審物があるので、今から出来るだけ遠くに走って避難してください!と言われて、同僚と共に必死でパリの街を走った恐怖をまざまざと思い出しました。

 コロナウィルスの蔓延に加えてテロの恐怖、全く性質の違う恐怖が同時に存在するフランスは、どうなってしまうのだろうか?と底知れない問題を抱えたフランスの現状を思います。

 華麗なパリのイメージとはかけ離れた現実です。

 コロナウィルスによる再ロックダウンだけでなく、テロによるロックダウン状況が起こることは、想定外でした。


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「フランスのテロの報道と対応」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

  










2020年9月25日金曜日

新規感染者1万6千人超えのフランス 全仏オープン・ローランギャロス2020は継続されるか?



 フランスの新規感染者数が1万人を突破したのは、9月12日(土)のことなので、それから、約一週間後に1万3千人を突破し、また一週間も経たないうちにさらに3千人増加の1万6千人も突破しました。

 一週間弱の間に3千人ずつ増えていく感染者数に、もはや、数字の感覚が麻痺してきました。昨日は、新規感染者数の大幅増加だけでなく、ICU(集中治療室)の患者数も1000人を突破し、ロックダウン解除以降の記録を伸ばしています。

 一昨日に政府から発表された69の地域の警戒地域指定や、特別警戒地域、最大特別警戒地域に対する行動制限政策は、大きな波紋を呼び、特に飲食店閉鎖が決まったマルセイユでは、飲食店経営者の怒りや、顧客側もレストランが閉鎖される土曜日の前に駆け込みで外食を楽しむ人が増加しています。

 ロックダウンが決まった際にも前日の夜には、まるでカウントダウンを楽しむかのように、レストランやバーなどが異常に賑わった時と同じ状況が再び起ころうとしています。

 思えば、ロックダウン解除後も最後まで、なかなか営業を許可されず、テラスのみの営業からようやく開店できるようになっていた飲食店が、どこよりも先に再び営業停止になることは、大変な憤りであり、大打撃であると思われます。

 ジャン・カステックス首相は、この飲食店の経営者の怒りと、なぜ?レストランだけが営業停止になるのかという質問にテレビ番組で、「公共の場所でどうしてもマスクをすることができない場所であるから・・」との理由を述べていましたが、駆け込みで外食を楽しんでいる人々は、レストランが閉鎖されれば、別の方法を探すしかない・・と、なんとか人と集おうとする懲りない様子をうかがわせていました。

 そんな中、フランスでは、9月27日(日)には、全仏オープンテニス・ローランギャロスが始まります。例年は5月末から6月の初旬に開催されるこの大会もコロナウィルスの影響で、延期されていました。

 すでに予選は、始まっていますが、27日(日)からのトーナメントは、今のところ、開催予定に変わりはありませんが、大会の行われるイル・ド・フランスの警察からの勧告で、トーナメント中のローランギャロスのスタジアムにアクセスできる観客の数を1000人に制限しています。

 5月末に延期した段階で、全仏オープンテニス協会は、強固に観客を入れての開催にこだわっており、チケットは、すでに7月からオンライン予約が開始され、今年は、当日券は発行されない予定です。

 一度、錦織選手を応援に行こうかと、チケットを取ろうとして、びっくり!ローランギャロスのチケットは、155€〜190€・・高いものだと300€を超える高額で、断念しました。

 協会は万全の対策を取っていることをアピールしており、選手は到着時及び72時間後にPCR検査を行うことが義務付けられ、以後5日おきに検査、指定されたホテルで隔離されています。

 つい先日、延期されていたツールドフランス(自転車のロードレース)が開催されて、終了したばかりですが、同様に延期されていたローランギャロスの開催。両者とも、当初の予定の日程時以上に感染状態が悪化した状態での強行開催に結果論ではありながら、より悪い結果をもたらすことばかりのタイミングの悪さがもどかしいばかりです。

 おまけにローランギャロスは長いこと、屋根の無い、クレーコートで雨が降るたびに試合が中断する事態に悩まされてきましたが、皮肉なことに今年からセンターコート「フィリップ・シャトリエ」には、開閉式屋根が設置されたばかり・・。

                          

            ローランギャロスのセンターコート「フィリップ・シャトリエ」


 屋内が敬遠されるこのタイミングに長いことできなかった開閉式屋根付きのセンターコート。コロナウィルス感染では、ことごとく、全てが裏目に出ているフランスでは、ローランギャロスのセンターコートの屋根までもがタイミングの悪いことに、嫌な予感しかしないのです。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大」

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2020年9月24日木曜日

フランスの感染拡大対策 69の地域を警戒地域に指定 マルセイユはレストラン・バー営業停止へ


       Coronavirus. Les zones d'alerte en France


 フランスでは、ここ数週間のコロナウィルスの感染急拡大を受けて、ようやく政府が、具体的な対策を開始することを発表しました。

 フランスの新規感染者数は、昨日も1万3千人超え(13072人)、死者、入院患者、ICUの患者も確実に増加し、地域によっては、集中治療室の占拠率が危うくなり、病院内での他の病床との調整を開始している状況です。

 昨日、厚生大臣のオリビエ・ベランは、ロックダウンの第一段階とも見える感染拡大を阻止するための地域ごとの行動制限政策を発表しました。

 感染発生率(1週間での10万人あたりの陽性症例数)、陽性率、クラスター、有効R(感染した個人が感染する人数)、コロナウィルス患者による集中治療室の占拠率等を考慮して、フランス全土のうち、69の地域を警戒地域に指定しました。

 さらに、これらの数値からみて、より深刻な状況に至っているパリ、ボルドー、リヨン、トゥールーズ、ニース、サンテティエンヌ、レンヌ、モンペリエ、リール、ルーアンとグルノーブルの11の地域を特別警戒地域に指定しました。

 特別警戒地域では、今週の土曜日から1000名以上の集会禁止、地域の主要イベント禁止、ジム等のスポーツ施設の閉鎖、公共スペースでの10人以上の集まり禁止(冠婚葬祭、家族・友人の誕生日、パーティー等)そして、来週の月曜日からバーの22時閉店が義務付けられます。

 そして、さらに感染状況の深刻なマルセイユ、グアドループは、最大特別警戒地域に指定され、特別警戒地域での制限に加え、レストラン・バーの営業停止が義務付けられました。

 これには、マルセイユのレストラン経営者たちは、大変な怒りと憤りを示しており、「自分たちは、最大限、衛生管理をしながら営業しているし、感染拡大は、レストラン・バーだけから、起こっているわけではない!これは、市民全体の習慣や危機意識の問題で、公共交通機関や他の商店が営業しているのに、レストランやバーだけが営業停止になるのは、納得いかない!」と、突然の政府の発表に怒りを露わにしており、フランスのツイッターのトレンドには、一気に「マルセイユ」が上位に上がりました。

 実際に、一般の商店、博物館、映画館、教会等は、閉鎖の対象にはなっていません。しかし、これらの施設に関しても、厳重な衛生管理がされていない場合は、閉鎖とされています。

 これまでのコロナウィルスに関しての報道を見ていると、クロロキン(マラリアの治療薬)をコロナウィルスの治療薬に有効であることを発表し続けて、一時、ヒーロー扱いされていたマルセイユ大学のラウルト教授の影響もあり?やたらとマルセイユは、パリと張り合っているようなイメージがありましたが、ここにきて、マルセイユが格段に感染状況が悪化してしまいました。(多くのパリジャン・パリジェンヌがバカンスで南方に行ったことも影響していると考えられます。)

  ロックダウン解除以来、「コロナウィルスと共に生きる!(Vivre avec le virus!)」と強気の政策を通してきたフランスですが、たしかに全てを禁止して、引きこもってばかりはいられないのは、たしかですが、そのウィルスと共に生きる生き方に誤りがあったことを認めざるを得ない状況になっています。

 いみじくも、マルセイユのレストランのオーナーが怒りながら語っていた「感染拡大は、レストランだけで起こってるわけではない!これは、国民の習慣、危機意識の欠如が起こしているものだ!」と言っている内容が現実であると考えられます。

 だからと言って、ここまで感染が拡大してしまった現状況では、その中でも、どうしてもマスクをすることができない飲食店に影響が出るのは、致し方ない話です。

 出来るだけ、多くの商店や施設を閉めなくて済むようにするには、フランス人がもっと危機感を持って、生活習慣を変える必要があるのです。フランス人は、興奮すると収集がつかなくなり、家族や友人の集まりは例外と思っているようなところがあります。

 実際に、ヨーロッパの第一波では、同程度やそれ以上に感染状況が深刻であったイタリアやイギリスなどの国々は、綱渡りを続けながらも、現在は、フランスほどの深刻な状況には陥ってはおらず、なんとかコロナウィルスとの共存の道を手探りしながら、生活しているのです。やりようによっては、感染を抑えながらの生活は可能なのです。

 今回の特別警戒地域での様々な制限については、今後、一週間ごとに見直され、最低でも15日間は続けられるということです。

 この政府に対する制限には、今のところ、罰則は、発表されていませんが、この政府の提示した特別警戒警報を国民がどれだけ重く受け止め、自らの行動を制限できるのか?この制限により、効果がない場合は、この先、フランスがさらに深刻な状況に陥ることは、避けようがありません。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大」

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2020年9月23日水曜日

最近のパリのメトロ

 


 コロナウィルスの感染拡大が始まって以来、パリのメトロ、バスには、できるだけ乗らないようになりました。ロックダウンが解除になって以降ですから、5月からの夏にかけての気候の良い時期でもあり、それなら、それで、なんとかなるもので、できる限り、移動は、自転車か徒歩で、かなりの長距離でも移動するようになり、いたって健康的な生活になりました。

 それでも、どうしても自転車や徒歩では厳しい時には、メトロに乗るのですが、今日、久しぶりにメトロに乗って、ロックダウン解除当時の緊張感がなくなっていることに気付いて、びっくりしたのです。

 ロックダウンが解除になって、初めてメトロに乗った時は、私自身もドキドキで、駅やメトロの中に貼られた物々しい色のテープや人と人との間隔を取るための床や座席に貼られたステッカーなどを見つめながら、恐る恐るメトロに乗ったのを思い出します。

 スリやひったくりなど、日常も決して治安が良いとは言えないパリのメトロは、いつでも気を抜けない乗り物ではありますが、特別な緊張感が加わった気持ちでした。

 しかし、今日、久しぶりにメトロに乗ったら、また、別の意味で、びっくり!車内に乗り込んだ時に、やけにみんなが座っているな〜と思ったのですが、気がつけば、一人おきに座るように座席に貼られていたステッカーがなくなっており、なかなかの人混み状態です。

 緊張感というものは、そうそう長く続くものではありませんが、だからこその注意喚起。たとえ、守らずに間隔をおかずに座席に座る人がいたとしても、それなりに注意喚起には、なっていたのだ・・と、改めて思いました。

 路線によっては、座席のステッカーは貼られたままのようですが、この感染拡大が急上昇しているフランスで、ステッカーを外してしまう路線のあるRATP(パリ交通公団)の緩み方。これがフランス全体の傾向なのでしょう。

 おまけにパリのメトロにトラブルはつきものです。今日も駅で車内が真っ暗のまま止まっているメトロに乗るべきか否か少々、迷いながらも、ここで足止めを食いたくない・・いつ、いきなり発車するかもわからない・・とりあえず、車内に乗って待とう・・と乗り込むと、乗客は、慣れたもので、皆、平然と車内で待っています。

 ようやく動き出したメトロは、途中、何回も駅と駅の間で止まったり、車内が真っ暗になったりを繰り返して、なんとか無事に目的地に到着しました。こんなことは、いつものことなので、パリのメトロとしたら、普通のことなのですが、コロナウィルスの蔓延している中、車内に長時間、閉じ込められたら・・と思うとやはり恐怖です。

 いくら自転車を利用する人が増えたとはいい、極端にメトロの利用客が減ったわけでもありません。ソーシャルディスタンスのためのメトロの増便は追いつかないのかもしれません。

 かと言って、自転車にも危険がないわけではなく、ひとたび自転車で出かければ、今度は、自転車の盗難の心配があります。なんと、フランスでの年間の自転車の盗難は、40万件と言います。盗まれたら最後、まず見つかることはありません。

 だいたい、フランスで盗難事件が起こって、警察に駆け込んだとしても、よほどの凶悪事件でない限り、警察は被害届を受け付けるだけで、犯人を探すことはありません。

 そんな中、先日、うちの娘がメトロで奇跡的な体験をしました。

 駅で、お財布を落として、後ろから歩いてきた人が、「落としましたよ・・」と、お財布を拾って、渡してくれたのだそうです。スリやひったくりの横行するパリのメトロで、落としたお財布を「落としましたよ・・」と渡してくれる・・こんな人もいるんだ・・こんなこともあるんだ・・と、一生分の運を使い果たしたかのごとく驚いて帰って来ました。

 スリにあってもビックリしますが、拾ってもらうともっとビックリすること自体に、いささか、苦笑してしまいますが、それが現実。とにかくも、盗難、コロナ・・と危険ばかりのメトロにも、こんな奇跡的なこともあるんだと、住みづらいパリでのわずかにほっこりとした出来事でした。


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「ロックダウン以来3ヶ月ぶりのパリのメトロ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_85.html

「パリで時々、目にする光景」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post.html

2020年9月22日火曜日

ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②

L'usine Bridgestone de Béthune


 ブリヂストンがフランス・べチューン工場閉鎖を発表して、1週間が経ちました。

 ブリヂストンの発表同日にフランスのボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相は連名で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表し、その姿勢を継続し、マスコミを巻き込んで、なんとか、工場閉鎖を回避する圧力ともいえる態度で従業員を守ろうとする姿勢を示しています。

 彼らが偽善ではなく、このようなことを主張し続けるのであれば、正気を疑いたくなるような内容です。

 ブリヂストンのこの工場は、自動車用の小口径タイヤを生産しています。10年間で40%生産性が低下したこの工場は、ヨーロッパの中でも最も効率の悪い工場なのです。付加価値の高い大口径タイヤを製造するための投資をこの工場ではなく、同社がポーランドの工場に行ったことをフランス政府は避難しています。

 そして、これから、フランス政府の援助を受けて、工場に再投資し、人を再教育し、工場存続することを要求しています。

 普通、会社が投資を考える場合、最もその効率の良い場所を選ぶのは、当然のこと、フランスのべチューン工場が投資対象に選ばれなかったのには、それなりの理由があってのことです。

 ヨーロッパのタイヤの品質は、格安なアジアの製品には決して劣ることはないなどと言っていますが、実際に売れないのだから、仕方がありません。極端に上質な製品は別として、この工場の製品が格段、アジアで作られる製品に比べて圧倒的に秀逸なものであるわけでもなく、コストや生産性を考えれば、工場は、より安くより良い製品を作れる場所にシフトしていくのは、当然のことです。

 ヨーロッパのタイヤ産業は、長いこと窮状に瀕しています。フランスでは、過去10年間に、Clairoixにあるコンチネンタルの工場、アミアンにあるGoodyearの工場、昨年には、La Roche-sur-Yonにあるミシュランの工場が閉鎖しており、会社全体としての生き残りは必死な問題です。

 ブリヂストンは、フランスで規定されているとおりのペナルティとも言える莫大な金額を従業員に支払い、従業員に対しても誠実に対応すると言っているのです。

 フランスの政府が一時凌ぎのために、この将来性のない工場に、国としてまで投資すると、正気で言っているのであれば、まことにヤバい国であるとしか言いようがありません。

 ここで引き合いに出すことではないかもしれませんが、カルロス・ゴーンが日産を再建した時にした人員削減は、数万人単位の削減でした。数でのみ比べられることではありませんが、863人の工場の閉鎖に政府までも乗り出して抵抗するフランスの資本主義とは、何なのでしょうか? これは、資本主義ではなく、全く自分勝手なご都合主義でしかありません。

 しかし、これが、あくまでも政府、政党の偽善であり、人気取りに利用していると見ている人もいます。これが、偽善で、あくまでポーズであるとしても、それはそれで、なんとも汚いやり方です。

 多くのマスコミを引き連れて、大臣が二人も現地に及んで、労働者を守る声明を発表して、ブリヂストンに圧力をかけていますが、これは、「ひとたび、フランスで会社や工場を作って、労働者を雇った場合は、ヤバいことになる」と全世界に向けて発信しているようなものです。

 こんなことを続けていたら、今後、外国企業は、フランス進出には、二の足を踏むようになるでしょう。


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「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

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2020年9月21日月曜日

週末のパリ ジョルネ・ド・パトリモアンヌとツール・ド・フランス ファイナル

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 新規感染者数が1万3千人を超えたフランス・パリの週末は、いつもの週末以上に人出が多く、街中も賑わっていました。

 というのも、この週末は、毎年9月に行われているJournées du patrimoine(ジョルネ・ド・パトリモアンヌ)といって、フランスの国家遺産、公共施設の裏側など、日頃、足を踏み入れることができない場所を一般公開する週末で、エリゼ宮や大統領官邸、オテル・マティニョン(首相官邸)、パリ市役所、パレロワイヤル、ソルボンヌなどの大学などなど多くの施設が無料で解放される週末であったためです。

 オテル・マティニョンなどは、先日、着任したばかりのジャン・カステックス首相自らが官邸内を案内したりして、首相自らこの日を盛り上げたようです。


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 本来ならば、普段、目にすることができない税金の使い道の一部に足を踏み入れることができるこの機会は、なかなか貴重な体験でもあり、いつもなら、天気もいいし、ちょっとどこかを見てみよう・・とも思うのですが、なにせ、今のフランスの感染状況を考えると、私は、どうにも腰が引けて、わざわざ、人の集まる場所へ足を運ぶ気にはなりませんでした。

 にもかかわらず、腰が引けないフランス人は、多くの人がこれらの施設に足を運び、この日を楽しんでいたのです。

 当然、各施設内の公開にあたっては、マスク着用はもちろんのこと、アルコールジェルの設置やソーシャルディスタンスが厳しく叫ばれていましたが、これらの催しがほぼ通常どおりに行われることに、フランスの強気の態度が垣間見えます。

 1万人を軽々超える感染状況で、ここまで強気の態度を貫くフランスを私は、正直、まったく理解ができません。

 それに加えて、例年7月に行われるツール・ド・フランスが延期されて行われたツール・ド・フランス(23日間にわたる自転車のロードレース)のファイナルを迎え、ロードレースが最終地点のシャンゼリゼに到着して、華やかにフィナーレを飾る日と重なり、当然、これにも多くの観客がツール・ド・フランスの最後の応援に集まりました。

 最終地点では、パリ祭の時のような、トリコロールの煙をはきながら飛ぶ航空ショーのような飛行機まで登場し、花火も上がり、大変な盛り上がり様でした。

 本来行われるはずだった7月よりもはるかに深刻な状況になっている状況でのこのツール・ド・フランスの強行も、・・なら、なんで延期したの??と思わずにはいられません。

                                          

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 それでも、コロナウィルスの影響で、人出は、例年よりも少なかったようではありますが、あくまで、コロナウィルス感染に注意しながら、例年どおりの行事を強行し、「コロナと共に生きる」のスローガンを掲げ、わざと国民を煽っているかのごときの、この週末の催し物の盛り上げ方に甚だ疑問を感じつつ、複雑な気持ちで家の窓から見えるトリコロールの煙を眺めていたのです。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大 新規感染者7000人突破」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/7000.html













2020年9月20日日曜日

娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害

 


 娘の留学が決まったのは、昨年末のことでした。グランゼコールの2年目が終わると、3年目の彼女の予定は、海外でのスタージュや留学で、1年間が、びっちり埋まっていて、本体の学校へは、もう行かないことになっていました。

 彼女は理系専攻のため、エンジニアの資格取得のためには、一定期間のスタージュ(研修)が、必須で、今年の夏も彼女のクラスメートは、皆、漏れなくスタージュの予定が入っていました。

 スタージュ自体は、個人がそれぞれに興味のある会社や大学に申し込み、契約をするので、フランス国内だけでなく、ヨーロッパやアメリカなど、個人の希望で先方が受け入れてくれさえすれば、特別な縛りはありません。

 ところが、コロナウィルスのおかげで多くの学生がスタージュが取りやめになったり、行き先がアメリカだったりした人は、断念せざるを得なくなり、慌てて別のスタージュを探し回り、中には、コロナウィルスの検査を請け負っている会社でスタージュをしたり、それでも見つからなかった学生には、学校側がスタージュに代わる特別なプログラムを用意して、それを消化することで、その期間、スタージュをしたことにするという異例の措置が取られたりしました。

 娘は、夏の間は、イギリスの大学でのスタージュが決まっていましたが、結局、イギリスに行くことはなく、しかし、幸いにも先方がリモートワークで受け入れてくださったので、夏の3ヶ月間のスタージュは、予定どおり?に終えることができました。

 そして、9月の一ヶ月間をあけて、10月からは、今度は、スタージュではなくて、半年間、日本の国立大学の大学院に留学する予定になっていました。この留学は、こちらのグランゼコールからの留学なので、直接、日本の大学とも連絡が取れずに、しかも、このコロナ渦の中、どうなるかわからないまま、時間が過ぎて行きました。

 コロナウィルスでフランスがロックダウンになって以降は、日本の大学からも、航空券の予約は、ギリギリまで、しないように・・との連絡が来ていましたが、8月の半ばになって、急に日本の大学の方から、10月からの滞在場所、寮の申し込みをしてくださいという連絡があり、到着日、到着便なども記入しなければならないことになっていたので、慌てて、日本行きの便を探し始めました。

 彼女は、日本人なので、日本に入国することはできるのですが、留学先の大学が地方のため、パリからは直行便はなく、羽田での乗り換えの際に、そのまま乗り換えができるかどうかを悩んだ末、日本到着後の2週間の自粛は、東京の私の実家でおとなしく、引きこもり生活をし、2週間後に地方へ発つという方法を考えていました。

 羽田からも公共交通機関は使えないということで、親戚や友人にも高齢者である家族を抱える人が多いので、迷惑をかけることは、絶対に避けたいので、彼女は、羽田から、荷物は、配送を頼んで送り、自分は、家まで歩いて行くと言っていました。

 彼女は、運転免許を持っていないので、私が一緒に付いて行って、レンタカーを借りて、空港から実家まで送るという手も考えましたが、それも、あまりにバカらしく、彼女の健脚に任せることにしていたのです。

 寮に入れるかどうかの返事が来るのは、9月に入ってからということだったので、もし、それがダメな場合は、別の滞在先を探さなくてはいけないから、ダメだった時は・・と、見当をつけたりもしていました。

 ところが、9月に入って、こちらのエコールから転送されてきたのは、一ヶ月近く前に日本の大学から来ていた留学延期、あるいは、中止のどちらかを選んでくださいというメール。慌てて、日本の大学に確認のメールを送ったところが、検討の結果、渡航を伴う留学は、今期は受け付けられないとのこと。

 8月の段階で、日本の大学から来ていたメールをバカンス中だったために、こちらのエコールの担当者にスルーされていたのは、フランスなら、大いにあり得ること、そのメールになぜ?Cc.をつけてくれなかったのか? なぜ?日本の大学は、寮の申し込みなどということを言ってきたのか? 考えれば考えるほど、まったく腹立たしいことばかりです。

 買ってしまった日本行きのチケットは、こんなご時世だからと変更可能なチケットにしたものの、一体、いつに変更すれば良いのかも現時点ではわからず、しかも、変更の際には、なかなかな追加料金がかかるため、さらなるリスクを負うことは、躊躇われ、結局、チケットを変更することもできずに10万近くがパーになってしまいました。

 娘は、娘で、慌てて10月からのスタージュ探しに必死・・見つからなければ、彼女が在籍しているエコールに通わなければなりません。

 このフランスの感染状況からしても、フランスからの学生の受け入れは、お断り・・というのは、わからないではありませんが、フランスのエコールはもちろん、日本の大学の不明瞭な対応のために、大金を捨てる羽目になり、まったくもって、私は怒りまくっています。

 考えてみれば、夏のイギリス行きのユーロスターのチケットもキャンセルしたものの、返金ではなく、まさかの金券返し、予約していたホテルも返金すると言いながら、未だ返金されておらず、今度は、日本行きのチケットがパーになりました。

 コロナウィルスそのものに感染はしていませんが、我が家にとって、娘の留学にまつわる大損害、実際に留学した場合の出費なら、仕方ありませんが、連絡ミスのためのこの大出費。

 どうにも納得がいかないのです。


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「コロナウィルスのためのキャンセル料金 ANA変更手数料無料の航空券販売」

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2020年9月19日土曜日

新規感染者数1万3千人突破のフランス

  

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 ここ数ヶ月のフランスは、少なくとも週に1回は、思わず変な声をあげてしまうほど、夜に新規感染者数が発表されるたびに驚かされます。昨夜もその1日でした。

 前日には、1万人を超えていたものの、その数日前にも1万人を超えた日があったので、数日間、土日が入ったりして、検査数や検査の結果が出るまでの時間差で、減少してたものの、再び、1万人に達した時は、さすがに、また、戻っちゃった・・と思ったくらいで、もはや驚きませんでした。

 しかし、一日あけて、1万3千人(13215人)という数字を聞いて、再び、息を呑みました。1日で、3千人増加とは・・さすがに、フランスは、本当に大丈夫だろうか?と、不安になってきました。

 ラボ(検査所)に長蛇の列ができるほど、検査数が増えてはいますが、それは、検査の受け付け方が悪いので、悪目立ちしていますが、他のヨーロッパ諸国、ドイツ、イギリス、イタリア、スペインなどと比べてみると、この一ヶ月間のフランスの検査数は、フランスは、むしろ少ない方で、感染者数だけは飛び抜けているというのは、明らかにフランスの感染状況が飛び抜けて悲惨な状況であることを示しています。

 はっきり言って、これだけ急激に感染者が増加している国とは思えないほどに、街の中には、危機感がまるでなく、義務付けられているので、マスクをしているものの、家族で集まったり、友人と食事をしたりすることに躊躇がまるでなく、緊張感のかけらもありません。

 フランスでは、これまでに 3万人以上(31249人)の死者を出しているというのに、やっぱり、この人たちはバカなんじゃないかと思います。

 しかし、バカどころか、フランス屈指のグランゼコール(超エリート養成学校)パリ政治学院(通称シアンスポ・SciencesPo)でクラスターが発生し、感染経路を追ったところ、原因は、授業ではなく、学生同士のパーティーだということで、シアンスポは、2週間、閉校となることになりました。


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 このエリート集団のグランゼコールでさえ、授業自体は、ほとんどがリモートによる授業になっているにも関わらず、このような学生同士のパーティーから感染が広がってしまうのですから、なぜ、リモート授業になっているのか?この優秀な学生たちでさえ、理解できない・・というより、自粛できないのですから、フランス人の歯止めの効かなさは、どうしようもありません。

 しかし、他のヨーロッパの国は、これほどの感染状況になっていないことから、やはり、他のヨーロッパ諸国は、ロックダウンとは行かないまでも規制がかなり厳しいわけで、フランス政府の甘い対応が浮き彫りになっています。フランスは、確実にコロナウィルスに対する国民の舵取りができていないのです。

 マクロン大統領は、やたらとパニックを起こさないで!と言いますが、パニックどころか、この人たち・・危機感のかけらもありません。

 すでに、感染状況が深刻化しているニースなどでは、深夜には、営業停止になることをとても悲しい・・などと、此の期に及んでまだ言っているのを聞くと、その甘さの方が悲しくなります。

 先日、カステックス首相が感染者と車に同乗していて感染の疑いがあると、自粛に入りましたが、今度は、財務大臣自身が感染したことを発表。

 本当に、フランスは、感染の波がすぐそこまで迫っている、まさに、波打ち際にいるような、そんな感じなのです。


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「新規感染者が1万人に限りなく近づいたフランスの政府の対応」

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「新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_13.html


2020年9月18日金曜日

フランスで今、一番、行列ができる場所


Deux longues files d\'attente pour se faire dépister du coronavirus devant un laboratoire du XIIe arrondissement de Paris, le 14 août 2020. D\'un côté, les asymptomatiques, de l\'autre, ceux qui pensent avoir été en contact avec le Covid-19.


 今、フランスで、一番の行列ができる場所は、ラボラトワ(試験所、検査所)で、いくつもの街で、マスクをした人たちが路上に長い行列を作っています。

 最大限の検査を可能にして、感染者を隔離するという方針をとり、症状のある人はもちろんのこと、会社からの要請や、渡航に際しての証明書が必要だったりで、検査所の行列は、早朝5時、6時から行列が始まって、検査を受けるまでの待ち時間がひどい場所では3時間から4時間もかかかっている状況なのだそうです。

 行列嫌いのフランス人が、コロナ以来、ロックダウン中などは、入場制限がされていたスーパーマーケットに入る時にさえ、行列を作らなくてはならず、それまでは、ちゃんと列を作って並ぶということがあまりなかったフランスで、行列は、フランスに新しくできた習慣でもあります。

 しかし、症状のある人も混じえて、行列を作って、長時間、中には、路上に座り込む人まで出てきて、(このご時世に路上に座り込むことが不潔だと考えないことに唖然とする)その行列を見込んで、飲み物、食べ物を売る人たちが登場したり、これでは、検査所がクラスターになるのでは・・?と、思ってしまいます。

 そもそも、これらのラボは、日常は、他の病気、怪我等の検査を行う場所であり、血液検査、レントゲン、CTなどの他の検査を行う場所です。これでは、とても、他の検査のためにラボに行くことは、よほど緊急でない限り、躊躇われますし、ラボの業務自体もいっぱいいっぱいで、職員たちは、悲鳴を上げ始め、ストライキも厭わないと訴え始めています。

 ラボの職員とはいえ、フランス人、ラボの職員によるストライキで検査がストップする・・なんてこともありえない話ではありません。

 この検査と隔離の政策がスムーズに運ばない中、フランスの感染状況は、日々、深刻化しており、昨日も1日の感染者数は 10593 人と余裕の1万人越え、レッドゾーンに指定されている地域もパリ・イル・ド・フランスはもちろんのこと、マルセイユ、ボルドー、リールなどに加えて、リヨン、ニースなど、さらに広がり、ロックダウンが解除された直後には、ほとんどが緑だったコロナウィルス感染状況マップも今や、フランス全体がオレンジと赤に変わっています。


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 中でもマルセイユなどは、悲惨なことに、この一週間でコロナウィルスにより入院する患者は45%増加、ICUの患者数は48%増加で、病院での人出不足が始まり、ICUの余裕がほとんどなくなり始め、他の病気の患者を移動させたり、他の病院に転院させたりする道を探り始め、完全に感染第二波に乗り始めています。

 この状況の中、政府は、より厳しい注意を呼びかけ、検査に関する優先順位の制定や検査結果のスピードアップなどの対策を発表していますが、あくまでも、ウィルスとともに生きる道を掲げ、現在、すでに2300の学級や90校が閉校になっている状況から、保育園、幼稚園、小学校に関しては、年少の子供は感染率が低いことから、クラスに感染者が出ても、感染が確認された子供は一週間自宅待機、クラスや学校は閉鎖しない方針を発表しました。

 これは、年少の子供の感染率だけでなく、親が仕事を続けることができるための政策であるとも言えます。

 ウィルスとともに生きるという政策のもとに、例年どおりとは言わないまでも、多くの人がバカンスに出かけ、マスクは義務化したものの、感染者が出ても学校を閉鎖しないという強気の政策が今後のフランスの感染状況と経済状況にどう反映していくのか?

 昨日もパリやボルドー、トゥールーズなどでは、バカンス前から予定されていたデモが盛大に行われています。

 この際、フランスもデモもリモートにしてもらえないだろうか?と私は、思っていますが、まあ、フランス人にとって、デモはフランスの文化でもあり、無理な話です・・。

 

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「新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?」

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2020年9月17日木曜日

ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①

 

 L'usine Bridgestone de Béthune


 私は、今日まで、ブリヂストンの工場がフランスにあることを知らず、娘は、ブリヂストンが日本の会社であることを知りませんでした。「だって、日本語っぽくない名前じゃない?」という娘に、創業者の石橋さんという人の名前をとって、STONE BRIDGEの語呂をよくするために、前後をひっくり返してできた名前らしいよ・・と言うと、なるほど・・と彼女も納得していました。

 つまり、ブリヂストンは、どこの国の会社かどうかは別として、その名前は、フランスでも多くの人に知られている会社なわけです。

 ブリヂストンが欧州内の乗用車用タイヤ市場の収益構造悪化のため、フランス・べチューン工場を閉鎖することを発表したことが、トップニュースで扱われているのを見て、工場の閉鎖そのものよりも、私は、ブリヂストンがトップニュースで扱われていることに驚いたのです。

 乗用車用タイヤを生産するこの工場の従業員は863人、フランスのボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相は連名で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表しています。

 これを聞いて、改めて、私は、フランスで労働者を雇うということは、大変なリスクだと思いました。ブリヂストンは、べチューン工場の操業継続のためにあらゆる可能性を検討した結果、競争力を維持しながら、同工場の操業を維持することは困難であると発表しています。

 フランスの労働組合の強さは、ちょっと経営者が気の毒になるレベルで、コロナウィルス騒動後、多くの会社が人員削減や工場閉鎖に陥っていますが、その度に組合の抵抗は、相当なもので、そもそも、平常時ですら、気に入らないことがあるとすぐにデモやストライキといった権利が認められ、その権利を横行して反発するのですから、経営者側から見れば、フランスの労働者ほど使いにくいものは、ないんじゃないか??と思ってしまいます。

 それでも、ブリヂストンは、タイヤ部門において、2005年には、シェアトップのフランスのミシュラン社を抜き、以来、世界シェアトップを貫いているので、今回閉鎖されるフランスのべチューンとて、良い時期もあり、メリットもあったのでしょうが、同工場の生産性は、そもそもコロナ以前からの過去10年間で40%も減少しており、ヨーロッパに10ヶ所ある同社の工場の中でも最低なのだそうです。

 ブリヂストンは、この工場閉鎖に関わる人員について、誠実な対応をすることを約束していますが、そもそも、フランスでは、会社の都合により(業績悪化等)、社員を解雇するためには、契約形態や勤続年数にもよりますが、大変なお金がかかるのです。

 それでもなお、工場閉鎖を決めたのには、おそらくコロナウィルスが引き金を引いたことには違いありませんが、そうでなくとも、フランスでフランス人を雇って継続するメリットがないわけで、もともと、人件費もアジアなどの諸外国に比べて安いわけでもなく、かといって、生産性よく働くわけではもなく、バカンスだけはたっぷり取り、何かと言えば、デモだストライキだと騒ぐフランス人を雇って工場を続けて良いことは、何もなく、その上、国民はドケチで、買うのは、中古車がメイン。少しでもダメージを少なく食い止めるために、工場閉鎖は、もっともな選択だと思われます。

 そもそも業績悪化のために会社が工場を閉鎖すると下した決断に労働相や経済閣外相が工場閉鎖は認められないなどというのもおかしな話です。会社自体も生き残りをかけて必死なのですから、会社は労働者への慈善事業ではないのです。

 いい加減、あまりに労働者ファーストに偏ったフランスのやり方は、経営者サイドから見れば、生産性が悪く、デメリットばかりが目立ち、このままでは、国際競争の中では、置いてきぼりを食い、多くの国のフランスにある工場等が撤退することになりかねないのではないかと思っています。

 ちなみに全然、無駄な情報ですが、フランス人はブリヂストンをブリジェストンという人が多いです。


<関連>

「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_22.html

「権利を主張するわりには、義務をちゃんと果たさないフランス人」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_61.html

「フランスの雇用問題」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/09/blog-post_6.html




2020年9月16日水曜日

幸せの感受性 海外生活でみつけた幸せを感じる方法

 



 昨晩は、なぜか、明け方まで寝付かれずに、朝、早くには、起きれずに、起きる前から背中の全面が痛くて不調そのもの、なんか1日のサイクルも狂ってしまいました。

 朝ごはんも食べたような食べないような・・いつもなら、午前中に済ませるはずのことが立て込んで、なんだか逆にバタバタで、お昼を食べようかと思っても、なんだか何にも食べたくなくて・・なにも作る気がしなかったのです。

 夜だったら、買い置きの生ハムやチーズとちょっとサラダでも作ってワインで終わり・・にしてしまうところですが、昼間から飲むというのも何だかなぁ・・と考えていたら、そうそう酢飯だったら、ちょっと食べたいかも・・と冷凍してあったご飯をチンして、すしの子を混ぜて、ベランダのシソを摘んできて細く切って混ぜて・・。

 このところハマっているオクラをさっと茹でて刻み、冷蔵庫にあったえのき茸にお醤油、砂糖、白ワイン(みりんが切れているので、砂糖と白ワインでゴマかす)をかけてフタをしてチン・・これを刻んでおいたオクラと和えて、ちょっとお酢を加えてネバネバするまで混ぜて、ご飯にかけて出来上がりです。

 それに、パンとビールで作ったぬか床に寝ているきゅうりを出して、切って・・おわり。

 とても質素な食事ですが、我が家には、とても贅沢な食事です。そんなお昼ご飯を食べながら、こんなものが贅沢に幸せに感じられるのも海外にいるからで、日本にいたら、きっと、こんなものは、どこででも手に入る大したことない材料で、いくつかあるおかずのほんの一つの箸休めくらいにしかならなくて、なんの有り難みも感じないだろうなと思ったのです。

 このわけのわからない献立も、たまたま家にあるもので思いついたものですが、そもそもきゅうりもシソも自分で毎日毎日、手入れして大切に育てたもので、ぬか床さえも、どうしてもぬか漬けが食べたくて、全粒粉のパンを細かくしてビールでふやかして、昆布を入れたりしながら、作って奇跡的に成功したぬか床、今や我が家の家宝です。


               パンとビールでつけたお漬物


 こんなわけのわからないことばかりやっていますが、手に入らないものをなんとか自分で育てたり、作ったりする、質素だけど、ていねいな暮らしが、私は、今、とても気に入っています。

 いつでも、どこでも、何でも手に入る日本の暮らしは快適ですが、満たされすぎて、幸せを感じにくくなっていたかもしれません。毎日食べることは、小さなことですが、大きな幸せでもあります。

 お金を出せば、簡単に手に入るものではなく、質素にていねいに暮らすことが今の私には、喜びです。

 しかし、その反動で日本へ行った時には、一食も無駄にするものかとあちこちで美味しいものを食べまくり、その上、これでもかというくらい、パリに食料品を持って帰るのですから、決して大口は叩けません。

 でも、これは、食べることに限らず、何にでも当てはまることなのかもしれません。何でも簡単に手に入る、便利な生活に慣れすぎると、逆にちょっとのことで、イライラすることが多くなってしまうかもしれません。満たされすぎると、不足分がより気になり、もっともっとと欲にはキリがありません。

 贅沢なことも好きな私ですが、日々の生活は、シンプルに質素に、無駄のないように、ていねいに暮らすことが心地よくなっている最近の私です。生活がシンプルになってくると、とても小さな単純なことがとても幸せに感じられます。

 私がこんな風になってきたのも、多分に年齢のせいもありますが、ひとえにフランスでの不便な暮らしの賜物だと思っています。


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「便利な生活がもたらすもの フランスへの修行ツアーのススメ」

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2020年9月15日火曜日

宗教に傾倒しすぎる義理の息子 フランス人の宗教

 


 私が彼に最初に会ったのは、彼が高校生の時で、真面目で、まっすぐな好青年といった印象でした。ちょうど、「バカロレアの試験に通ったよ・・」という報告に、主人が大げさに喜んでいるのに対して・・「C'est normal・・あたりまえだよ・・」と、笑っていたのが、つい少し前のことのように感じられますが、あれからもうずいぶんと時間も経って、あの時に想像していた彼の将来とは、全く違う道を進んでいます。

 彼は、主人の前の奥さんとの間の長男で、お母さんの影響を誰よりも強く受けて育っています。

 というのも、主人が離婚した最たる理由は、彼の前妻の度が過ぎる宗教への傾倒で、新興宗教ではないようですが、最初は、家族揃って通っていた教会から、やがて、生活全てが教会に振り回される形になり、主人は脱退してしまったことがきっかけでした。

 フランスは、カトリック教徒が多くを占める国ですが、実のところ毎週、日曜日に教会のミサに出かける敬虔なクリスチャンは、ほんの僅かでしかありません。

 以前、私は、日曜日も仕事に出ることが多かったのですが、日曜日の朝、いつもより本数の少ないバスには、いつも同じメンバーが乗っていることが多く、その中に、綺麗に身なりを整えた、いかにもこれから教会のミサに出かけると思われる上品な老婦人がいて、なんか、素敵だな・・と思ったこともありますが、逆に言えば、それだけ、目を引く珍しい存在であると言うこともできます。

 彼の前妻はプロテスタントの信者で、年を重ねるとともに、教会に深く傾倒するようになり、日々のお祈りから、週数回の教会通い、教会の行事などが日常生活の中心になっていき、当然の如く、子供たちの教育にも教会の教えが色濃くなっていき、テレビやゲームは、禁止、本も内容によっては制限がかかり、家の中のものは、どんどん教会への寄付に消え始め、明らかに一般の日常生活からかけ離れたものになっていきました。

 主人には、前妻との間に3人の息子がいますが、下に行くほど、母親との関係を壊さない程度に教会との距離をおいており、末っ子の男の子は、教会から逃れるために日曜日になると、よく我が家に避難しにきていました。

 おばあちゃんから買ってもらったという家では禁止されているゲームやハリーポッターの本などは、我が家に全て置いてあり、自分の家では禁止されているテレビやDVDを我が家で楽しそうに見ていました。

 しかし、反対に長男である彼は、母親以上に信仰に生活を捧げる生活になり、普通に経済系の大学を卒業して、有名な銀行に就職して、主人も喜んでいたのですが、結局、自分は、信仰に生きたいと主人とは大げんかをして、せっかく就職した銀行も辞めてしまいました。

 だからと言って、牧師さんになるわけでなく、教会のために働いても生活の糧になるわけではありません。現在は、教会関係の子供の小規模の学校の先生や様々な慈善事業や難民救済?など、まともな収入はないのに、なんだか、いつも、とても忙しそうにしていますが、彼には、深い信仰心が根本にあるので、全く迷いがありません。

 人に迷惑をかけるわけでもなく、贅沢は望まず、一生、ジャガイモだけを食べて暮らすことも厭わないと言うのですから、彼の人生は彼の納得するように、生きればいいと思いますが、ふと、それほどまでに彼を極端に宗教に走らせるものは、何なのか?と思います。

 実際、とても親切で、こちらからほとんど連絡をしなくても、気にかけてくれたり、おそらく頼めば、すぐに飛んできてくれると思います。

 しかし、こちらが宗教お断りといくら話しても、おかまいなしに、お祈りを唱えたりするのには、かなり抵抗があります。

 年齢を重ねるとともに、明らかに普通の生活からかけ離れている人であることが、目に見えるように彼自身の洋装にも表れています。

 彼自身は、心底、善意の人、悪意は全くないのはわかっていますが、善意であるだけに余計に救いようがなく、しかし、強烈なエネルギーと我の強さには、少々、引いてしまいます。悪気がないと言うことは、自覚がないだけに、時に悪意がある場合よりもタチが悪いこともあります。

 日常のフランス人のサッカーの試合やお祭り騒ぎ、デモなどでの興奮ぶりと熱量には、驚かされることも多いのですが、その熱量が宗教に向かった時には、こうなるのか・・と、そもそもの彼らの情熱は、やっぱり日本人とは違うのかな・・と思うのです。


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「海外での新興宗教の勧誘」

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2020年9月14日月曜日

フランスでの日常の食料品の買い物 ② フランスのチーズ等 料理せずに簡単に食べられる食品

 



 食べることが大好きながら、断然、日本食党の我が家は、普段からあまり外食をしないのですが、ロックダウンに引き続き、ロックダウンが解除になっても、圧倒的に家で食事をすることが多く、限られた食材で、色々と工夫しながら、食事の支度をしているのですが、さすがに、もう自分の作るものにも飽きてきて、お料理にも飽き飽きしてきて、そうなってくると、フランスで簡単に買えて、簡単に食べられるもの・・を買ってくることが多くなってきました。

 フランスで美味しいものといえば、パン、チーズなどの乳製品が一番、お手軽で簡単に食べられる食品ですが、今日は、お料理をしたくない時のために我が家で買いおきをしているフランスならどこでも買えるだろう食品をご紹介します。

 パンは、バゲットが一番、シンプルで食べやすいのですが、長期保存ができないため、買い置きはできません。そこで、我が家の買い置きのパンの代用品は、こちら↓です。


 

 左は、全粒粉のハードタイプのパンでうっすら自然の甘みが感じられて美味しいです。中央は、スウェーデンのクリスプブレッドで素朴でシンプルな味、物足りないと感じられる方もいるかもしれませんが、スモークサーモンやタラマなどとよく合います。右は、まさにクラッカーですが、このTUCのチーズ味は不思議なことに日本のスナック菓子カールのチーズ味の味に似ています。


 これらのパンに塗って食べるのが、こちら↓です。

        


 左がタラマといって、魚卵(鱈)の塩漬けを菜種油やクリーム、物によってはカラスミ等を混ぜて作られたディップのようなもので、簡単に言うなら、たらこクリームのようなものです。パスタに混ぜたり、茹でたジャガイモと和えてサラダのようにもできます。

 右は、コンコイヨット(カンコイヨット)という常温でもとろーっととろけた状態のチーズで、比較的、しつこくない、日本人にも食べやすいチーズです。これには、ナチュールとガーリック風味のものがあります。私のオススメはナチュールです。


 そして、肉類は、こちら↓

 
           

 左は、生ハムの塊(少しずつ削りながら食べるので切ったものよりも経済的だと思ったら、この間、あっという間に娘に食べられてしまったので、実際のところは経済的かどうかは検討中)、中央は、ソフトサラミソーセージのようなもので、これも少しずつ切ってサンドイッチなどにもできるので、便利で美味しいです。また、このソフトサラミ(に限ったわけではありませんが)によく合うマイーユのバルサミコ味のマスタードが私は、好きです。

 そして、保存食の野菜はこちら↓


         

 左のピクルスは、日本でも売っているのを見かけましたが、酸味がキツ過ぎずに歯ざわりも良いので気に入っています。右のブラックオリーブは、缶詰の物の中では、クレスポのタネを抜いていないブラックオリーブが塩味が濃過ぎず、実もしっかりしていて、グニョグニョになっていないので、美味しいです。

 チーズのお気に入りはこちら↓

  

 左が、カマンベール、中央はコンテ(本当は、18ヶ月が好きです)くせがあまりないわりにはコクのあるとても美味しいチーズです。右は、ミモレット、ハードタイプの味の濃いチーズで、熟成具合にもよりますが、カラスミのような味のものもあります。

 他にも、常備食は、まだまだありますが、とりあえず、目についたものをご紹介しました。私がお料理をしたくない時には、これらのものをちょっとずつ、つまみながら、ワインを開けて、食事がわりです。

 これらの食品は、フランスでは、特別に高価なものではなく、どこのスーパーマーケットでも、普通に売っているものばかりです。

 もしも、フランスに来られることがあれば、(当分、無理そうですが・・)お料理する必要のないものばかりなので、ピクニックのような食事をしてみてはいかがでしょうか?


<関連>
「フランスでの日常の食料品の買い物 ① フランスの野菜」

2020年9月13日日曜日

新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?

 

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 すでに、先週の段階で、1日の新規感染者数が9000人を超え、限りなく1万人に近づいていたフランスでは、この週末、夏のバカンスの間の約2ヶ月間、中断していた黄色いベスト運動が再開を宣言し、土曜日のデモには、6000人が参加。うち2500人はパリ。300人が逮捕、165人が拘留されました。

 それでも、午前中の段階から、デモで23人逮捕・・と報じられていたので、どうなることやらと思っていたら、デモに乗じての暴徒化を防ぐための早い時間からの警察の取り締まりは、かなり厳しかったようで、シャンゼリゼ(今週末は、デモ禁止になっていたけれど・・)をはじめとする、これまでデモから参考にした被害が大きくなる危険性の高い地域では、通行人に身分証明書の提示を求めるなどの警戒体制が敷かれ、大きな被害は、避けられたようです。

 バカンス明けの最初のデモということで、盛大に盛り上がることが予想されたデモも厳重な警察の警戒により、甚大な被害にはならず、(とはいっても、燃えている車も2台は見ましたし、催涙ガスの応酬の現場もなかったわけではありませんが・・)人数も全国で6000人、パリで2500人のデモというのは、フランスのデモとしては、それほど多くの人出ではありません。

 しかしながら、昨夜には、とうとう新規感染者数も1万人を突破し、10561人とコロナウィルスが蔓延し始めて以来(ロックダウン時の最悪の状態も含めて)最高記録を更新しています。

 現在、フランスでは、ツール・ド・フランスというフランス全土にわたる23日間に及ぶ自転車のロードレースが開催中で、フランス全土に渡り、ツール・ド・フランスの通過地点には、多くの人が沿道に集まり応援する、フランスでは、大きな行事の一つでもあります。

 本来は、毎年7月に開催されるレースですが、今年は、コロナウィルスの影響で9月に延期されていました。結果的には、7月の感染状況よりもずっと悪化した現在にこのレースが開催されていることは、なんとも皮肉な愚策であったと言わざるを得ません。

 このツール・ド・フランスには、多くの企業がスポンサーとして参加しており、経済復興の意味もあったと思われますが、屋外とはいえ、多くの人が集まり、歓声をあげて応援するような行事の開催になぜストップをかけなかったのかは、甚だ疑問です。

 実際に、このツール・ド・フランスの視察に行ったカステックス首相は、このツール・ド・フランスの幹部と車に同乗し、後日、その幹部がコロナウィルスに感染していたことがわかり、現在、自粛を余儀なくされ、毎日のように検査を受けています。(現在のところ、首相の感染は認められていませんが・・)

 昨日、急激な感染拡大の対応策として発表された項目の一つにあった、なぜかこの時点で、無症状感染者や感染者との接触があった者に対する自粛期間を2週間から1週間に短縮したのも、実際には、その必要がないということよりも、2週間の自粛では長すぎて国民が規則を守らないからという、「子供かよ!!」という理由であり、本当に開いた口が塞がらないとはこのことです。

 また、フランス人は、家族、親族、友人間では、まるで感染しないかの如く勘違いしているかのように、友人、家族間の集まりを避けません。私は、個人的には、フランスでは、実は、この比較的、小さな集まりの間での感染が少なくないのではないかと思っています。

 自分の主張はしたいだけして、義務を果たさないのが、フランス人ですが、マスクを義務かといえば、家計を逼迫するなどと言って騒ぎ、今やマスクは、さすがのフランスでもどこでも手に入り、バカンスに出かけるお金はあっても、マスクは家計を逼迫するという甚だ身勝手な理屈を振りかざすのです。

 自分がしたいようにするために、それを正当化するために屁理屈をこね、いちいち抵抗する。駄駄を捏ねるできの悪い子供を甘やかす親・・禁止して罰金・罰則を設けなければ言うことを聞かない子供に手を焼く親・・。

 国民を褒めることが大好きで、「我々は、マスクもしているし、手も洗っている!すごく努力をしている!」とテレビで大威張りのジャーナリストを見ると、「それ、威張るところ?」と、もはや、ため息も出ません。

 そんな国民と政府の関係がコロナウィルスの感染拡大を深刻にしているような気がしてなりません。

 「パニックを起こさないで!」と盛んに言うマクロン大統領を見て、「パニックを心配してロックダウンのタイミングが遅れて、どれだけ被害が大きくなったと思ってるの?少しは、危機感を持てよ!」と言う私に、フランス人社会の中で育ってきた娘は、「フランス人が本当にパニックを起こしたら、どうなると思ってるの?」と娘は言います。

 検査数が増えているから、感染者数も増加しているとも言えますが、フランスの検査数は、他のヨーロッパ諸国と比べても、決して飛び抜けて多いわけではなく、感染者数だけが飛び抜けている事実は、深刻な現実として受け止めなければなりません。

 ダメな子供に甘々な対応をいつまで許しているのか? 政府の対応がもどかしくてなりません。


<関連>

「権利を主張するわりには、義務をちゃんと果たさないフランス人」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_61.html

2020年9月12日土曜日

新規感染者が1万人に限りなく近づいたフランスの政府の対応


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 一昨日のフランスの新規感染者数は、9843人と限りなく1万人に近づき、当日夜には、マクロン大統領は、「感染拡大回避の対策案を翌日、発表します。くれぐれもパニックは起こさないでください」とだけ声明を出していました。

 まさか、再びロックダウンということはないにせよ、何らかの措置が発表されるものと私も注目していました。ところが、感染拡大回避の対策発表は、大統領からではなく、カステックス首相からのもので、しかも、思ったほどのインパクトのあるものではありませんでした。

 内容は、

 ●パリ・イル・ド・フランスを始めとする42の地域がレッドゾーンに指定されたこと

 ●逼迫してきた検査体制に関して、症状が出ている人、感染者と接触が認められた人、症状が悪化するリスクが高いと考えられる人、医療従事者を優先して、時間帯によって予約制をとり、感染追跡のための人員2000人を新たに追加すること

 ●検査の結果、陽性と診断された人、感染者と接触した可能性のある人の隔離期間をこれまでの14日間から7日間に短縮すること

 ●今後も引き続き、マスク着用義務、ソーシャルディスタンス、手洗い等を守ること

という、何とも拍子抜けな内容でした。

 現在のフランスは、感染者が増加しているのは、決して無症状の感染者ばかりではなく、入院が必要な患者、さらには、重症患者も着々と増加しており、ICUの患者は、ここ一週間で150人以上増加しており、地域によっては、ICUの空きがほとんどなくなっているところもあり、とても深刻な状況です。

 実際に、家にいても、救急車のサイレンの音が再び、頻繁に聞こえてくるようになり、現在は、ロックダウン中とは違って、交通事故等も考えられるわけですが、それにしてもなかなか騒々しく、夕方には、何やら、ヘリコプターまで飛び出したので、何か起こったのではと慌ててテレビをつけたくらいです。

 実際に、コロナ以前の救急車のサイレンがどの程度だったか思い出せないのですが、救急車がかなり忙しく稼働しているらしいことは、家の中からでも感じることができます。

 そんな中、カステックス首相の発表に比べて、よっぽどインパクトがあったのは、夏のバカンス中は、中断していた黄色いベスト運動が活動復帰を宣言したことです。12日(土)から、各地でデモが再開されます。

 パリでデモが予定されているのは、黄色いベスト運動だけではなく、VTC運転手によるデモ、青少年の非行に関するデモ、人種差別に関するデモ、クルド人に関するデモなど少なくとも5つのデモが予定されています。

 パリ警視庁は、すぐにシャンゼリゼ、ポルトマイヨ、コンコルド広場、サンラザール駅、大統領府、内務省、国民議会、オテルマティニョン、ノートルダム人、パリ警視庁、トロカデロ広場、シャンドマルスなどでのデモを禁止する旨、発表しました。

 デモに乗じて暴徒化して、店舗等を破壊する人が現れるため、前日の夜からシャンゼリゼの多くのお店は、シャッターを降ろして、バリケードを張る警戒体制を取っています。経済復興のために、感染拡大の危険を侵して営業している店舗もせっかくの土曜日が再び台無しになります。

 まったく、1万人近い感染者が毎日出ている国で、デモをやろうとしている人がいることは、ほんとうに理解に苦しみます・・というか、はっきり言って、やっぱりこの人たちは、バカなんじゃないかと再び、呆れています。

 ヨーロッパの中でも特に感染拡大が広がっているフランス(とスペイン)です。

 今、自粛した生活を送らなければ、いつまでも延々とこの生活が続くのです。もう既にみんなバカンスで発散してきたのではないのですか? 本当に、いい加減にしてほしいです。

 これから、秋が深まり、気温も下がり、インフルエンザなどの流行も始まれば、プラスに働く材料は少ないのです。

 フランス政府は、コロナウィルスの対応だけでなく、デモ対応に追われています。

 主にシャンゼリゼ、バスティーユ、シャンドマルスを囲んだ広範囲に渡り、デモが禁止されていますが、必ずしもそれをおとなしく守るような人たちではありません。

 コロナウィルスと闘い、デモと闘い、同時にいくつもの相手と闘うフランス。

 ひとまず、コロナウィルスという全世界共通の敵と闘っている間は、他は勘弁してもらいたいです。

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「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスはデモの国」

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「パリ・アンヴァリッドでの介護者のデモ・1万8千人を震撼させた暴力・ウルトラジョンヌとブラックブロック」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_17.html








2020年9月11日金曜日

海外生活と兄弟関係

 


 私の両親は、兄弟姉妹が多く、父は4人兄弟の末っ子で、母は、5人兄弟の長女でした。両親ともに、結婚後も兄弟とは、それぞれの兄弟は、とても仲が良く、自ずと私は、小さい頃から親戚づきあいがとても多い家に育ちました。

 私の実家は、同じ敷地内に2軒の家が建っていて、隣には、父の兄家族が住んでいました。なので、隣には、従姉妹も二人いて、そのうちの一人は、私と同い年だったので、小学校までは、毎日、一緒に学校に通いました。

 母の実家も車で10分くらいのところにあり、そこにも祖母をはじめ、2軒の家が同じ敷地内に建っていて、母の兄弟、2家族が住んでいました。私は、祖母が誰よりも好きだったので、運転免許をとった時には、まず、一人で運転して、祖母の所に行けるようになるのが目標でした。私も車で買い物に出かけた帰りなどに、祖母のところに寄れば、叔父や叔母が頻繁に顔を出し、おしゃべりをしたりして、楽しい時間を過ごしました。

 小さい頃から、誰かの誕生日、敬老の日、お正月などなど、何かとみんなで集まって食事をしたりする機会が多く、子供の頃は、「また〜〜??」と、少々、気が重かった時期もあるくらいでした。

 しかし、そんな積み重ねがあったこともあり、祖父母が亡くなる時には、みんなで交代で看病し、特に祖母の時には、最期の半年間は、ほんとうに家族一丸となって、祖母を看取り、その時の結束から、その後も一段と皆が仲良くなったような気がしています。

 我が家の場合は、父との確執もあり、弟は大学の途中からほとんど、家にいないような状況でしたし、就職と同時に地方勤務を希望し、さっさと家を出て行きました。彼は私より少し前に結婚したのですが、子供ができるまでは、仕事の都合で弟夫婦は別居状態、私が結婚したのは、弟に子供ができて、すぐの頃で、弟は子供のこともあって、東京勤務になりましたが、私は海外に出てしまったので、弟とは、彼が就職した頃から、滅多に顔を合わすことはなくなりました。

 その後、弟はアメリカに転勤になり、ますます会わなくなりました。アメリカとフランスでは、学校のお休みの時期もずれていて、弟も私もそうそう自分の都合の良い時に日本に帰国できるわけでもなく、滅多に一緒の時期に帰国していることもなかったので、ほんとうに弟に会うのは、何年かに一度、オリンピックなみの頻度でした。

 しかし、決して弟とは、仲が悪いわけでもなく、一度、私の家族に一大事が起こった時は、忙しい中、週末だけの短い期間でしたが、弟がアメリカからわざわざパリまで来てくれたこともありました。あの時ほど、本当に弟がいてくれてよかったと思ったことはありません。

 男女の兄弟の場合、そんなものなのか・・とも思っていますが、彼の奥さんは、親戚づきあいを嫌っているのか、儀礼的に皆で集まる時以外は、一切、関わりを持とうとしません。以前、私は、何かのお礼だったか?何度か彼女宛てに手紙を書いたこともあるのですが、いつも返事は弟からで、そのうち、こちらから彼女に連絡を取ることもやめてしまいました。

 彼には、女の子が一人いて、うちの娘の2つ年上なのですが、聴覚障害を持っていて、同じ年頃の女の子、そんなことにも、少々、複雑な思いがあるのかもしれません。

 そんな調子だったので、母は、看病する間もないくらいにあっという間に亡くなってしまいましたが、父の最期の時にも、私たちもそうそう帰国もできず、父の病状と看護については、時々、メールで連絡をとったりしていましたが、結果的には、隣に住む叔母と従姉妹にとても、負担をかけてしまった上に、父の気難しい性格も災いして、弟の奥さんと親戚の間で揉めてしまい、弟から、なんとか、一週間でもいいから、日本に帰れないか?と電話があって、慌てて帰国したこともありましたが、それ以降、さらに、距離が遠のいた感があります。

 弟は、今も別の国で、海外生活を送っており、父が亡くなった後も、父の葬儀と一周忌の際に顔を合わせて以来、ほとんど会っていません。彼は、海外にいるといっても、日本企業に勤めているので、それなりに日本に行く機会も多いと思うのですが、仕事も結構な要職にあり、うちの両親は二人とも亡くなってしまいましたが、彼の奥さんの家族も抱えているので、それなりに忙しくしていると思って、あまり連絡をとることも、ありません。

 このコロナ渦の中、日本に帰っているのかどうかもわかりません。フランスがロックダウンになった直後くらいに、「仕事の関係のヨーロッパ支社の人から、アジア人がコロナ扱いされて辛い思いをしているという話を聞いたけれど、大丈夫? なんなら、日本にしばらく帰っていたらどうですか?」というメールをもらいましたが、その頃は、すでに簡単に動ける状態ではなく、「心配してくれて、ありがとう。でも、こちらは、そう簡単に動けそうにありません。」という返事を送ったきりです。

 彼が小さい頃は、気が弱くて、何かあると、すぐにお腹が痛くなってしまった弟。隣に住む同い年の従姉妹と、つきまとってくる年の離れた弟をからかって遊んだ話を今でも、二人にイジメられて大きくなったと大きく話を盛って笑い話にしている弟。

 私には兄弟は、一人だけなので、娘にとっては、従姉妹は日本に、一人だけです。私には、従兄弟・従姉妹が13人います。全員と密に付き合いが続いているわけではありませんが、従姉妹とは、今も弟以上に仲良くしてもらっています。

 色々な事情もありましたが、娘のためにも、私が弟家族とそのような関係を築いて来れなかったことをとても残念に思っています。


<関連記事>

「日本にいる親の介護問題」

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「親子関係・家族関係 私が海外生活をしている理由」

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「義兄夫婦のフランス人の家族」

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2020年9月10日木曜日

フランスのインターネット・携帯電話の乗り換え

 



 我が家のインターネットを引いてから、かれこれ15年(いや、もっとかも??)くらいが経つのですが、その時は、どこの会社のインターネットにしようかと、当時、会社に出入りしていたネット整備をしてくれていたエンジニアの人に、「どこの会社のものがいいですか?」と、聞いたら、「少し高いけど、一番、故障やトラブルが少ないのは、圧倒的にフランステレコムのやっているオランジュ(Orange)」だというので、トラブルはごめんだ!と思って、それ以来、ず〜っと我が家はオランジュを利用してきたのです。

 フランスでは、何かの修理とか工事などを頼んで予約しても、まず、時間どおりに来てくれるか? たとえ時間どおりではないとしても、来てくれるだけまだマシで、時には、すっぽかされることもあり、さらに来てくれた人がちゃんと仕事ができるかというリスクもあるので、できるだけ、故障等のトラブルは少ないに限るのです。

 たしかに、この15年間で故障は一度だけ、それも、ほぼボックスの寿命のようなものだったので、致し方なく、その一度でさえ、1回目に来てくれた人は、問題が何かがわからず、結局、2回分の時間を割くことに・・。

 それでも、故障はその一回だけだったので、マシな方だったのだと思います。

 ところが、ロックダウン中に一度、ネットが繋がらなくなったのですが、問い合わせの電話さえ留守電のメッセージのみで、一体、いつ復旧するのやら、途方にくれました。

 まあ、2日ほどで、いつの間にか復旧したのですが、それ以来、「ん〜〜??」と思うようになったのです。

 だいたい、トラブルがないから少々高めなのはわかっていたのに、そのまま継続してきたのに、同じようにトラブルがあるのでは、あまり意味がありません。

 この15年の間に随分と色々なインターネットサービスの会社もでき、後続のネット会社のシステムもサービスも向上し、ほとんど、フランスでは先発で、独占状態であったオランジュとも遜色のない状態になってきました。

 しかも値段は、圧倒的に安く、これでは無駄な高額を支払う必要はなく、娘が一人暮らしをしていた際に使っていたSFR(フランスの携帯・インターネットの会社・フランスではオランジュに次いで国内シェア第2位に成長している会社)に乗り換えることにしました。

 今のネットは、家の電話・インターネット・テレビサービス・携帯と全てが連携しており、これまで私は、ネット会社を変えることは、家の電話番号から何から全てが変わることで、それはそれで、厄介なことと尻込みをしてきました。

 正直、家の電話はいらないも同然なのですが、住所の証明の他、すでに色々な機関に家の電話番号で登録している機関がたくさんで、ほとんど使わないながらも、なぜか、家の電話を全く、切ってしまうのもちょっと躊躇われるのです。

 ところが、現在は、携帯もネットも乗り換えても、電話番号をキープすることも可能で、しかも、ネットを通じての電話なので、家の電話からなら、フランス国内はもちろんのこと、国際電話でも(どこの国でもというわけではありませんが、主要な国・例えば日本への固定電話への電話料金などは、)無料なのです。

 今は、電話自体をあまりすることもなく、LINEやWhat's upやメッセンジャーなどで済んでしまうのですが、それらを使わない人もいるので、やっぱりいざとなると電話が無料で使えることは便利です。

 ということで、乗り換えの工事を予約して、「朝8時から12時までの間に行きます」というざっくりとした予約。(工事などの場合、このようなざっくりした予約がフランスでは普通です)

 朝8時から待って、9時、10時になっても来ません。10時半くらいになって、やっと来てくれて、はて?どこの誰だかわからない他人が家に来る場合は、家の中でもマスクをしなくてはいけないことに、改めてビックリしながら、慌てて、自宅にいながらにして、マスクをして、工事をしてくれるお兄ちゃんをお迎えしました。

 果たして、工事自体は、ほぼ20分ほどであっさり終わり、ネットもこれまで以上に家の中、広範囲に亘って通じるようになり、大満足。(今のところはですが・・)実際に新しいものに変えれば、当然のごとく、最新のボックスになるわけですから、いいに違いありません。

 ざっくりな予約でしたが、一応、予約どおりの時間内に、しかも、ちゃんと仕事ができる人が来てくれてラッキーでした。フランスでは、決してこれは当たり前のことではないのです。当然、一度では済まない覚悟もしていました。

 これで、解約の手続き(電話でOK)をして、これまでの電話番号をキープするためのナンバーのようなものをもらい、新しいネット会社に連絡すれば、電話番号の問題は解決。これまで使っていたボックスは、返却しますが、返送先は、ネットでラベルをダウンロードして、梱包した箱に貼り付けて送るだけで完了です。

 今は、なぜ、もっと早く乗り換えなかったのだろうか?と思っています。

 これまで月40ユーロ(5000円位)以上払っていたネット+電話料金が23ユーロ(2875円位)になりました。セット価格で携帯料金は、50Gで、月15ユーロ(1875円位)、家族携帯月3ユーロ(375円位)です。

 新規ユーザー獲得のために、フランスたりとも、乗り換えには、特典がたくさんつけられています。

 そういえば、私は、以前にミューチュエル(健康保険でカバーしきれない分を保証してくれる保険)の乗り換えしたことがありました。その際も乗り換え前の保険会社に契約解除の手続きの書類や面倒な手紙などは、全部、乗り換え先の会社の人がやってくれました。

 ついつい既存のものを使い続けてしまいますが、ちょっと見直してみれば、ずっと好条件の乗り換え先があり、結構、お得になるかもしれません。


<関連>「基本、信用しないことで成り立つフランスでの生活」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_3.html








2020年9月9日水曜日

娘には幼少期の記憶がほとんどない! 小さい頃は可愛かったのに・・

 

             ペコちゃんと同じサイズだったのに・・


 最近、このコロナ渦の中、娘もスタージュがリモートワークになったりして、彼女とこんなに一緒にいるのは、幼少期の頃以来のことです。私は、娘が1歳になると同時に仕事を始めたこともあり、彼女の幼少期には、仕事以外の時間は、ほとんど彼女と一緒の時間を過ごしてきました。

 私にとっては、初めての子育て、しかも海外で仕事をしながら・・。私のような人間が、子供を持ってしまった・・出産の時に、まさに赤ちゃんの頭が出ようにもなかなか出なかった時くらいから、もしかしたら、私は、大変なことをしてしまった・・一人の存在しなかった人間が私から生まれて、この子をどうにかまともに育てるまでは、重大な私の責任だ・・。

 そんなことをまず、思ったものでした。

 娘が生まれた頃には、なんだか青少年犯罪が多く、わけもわからず、小さい子を誘拐して殺してしまったり、家で暴れて家族を殺してしまったとか・・そんなニュースばかりが目につきました。「とにかく、身体を動かして、発散させること・・」そんな助言を叔母からもらって、とにかく私は、彼女のエネルギーを発散させることに懸命でした。

 同時に、日本語を教えることにも一生懸命でした。私が休みの日は、出来るだけ一緒に時間を過ごして、日本語での時間を出来るだけ増やすように、やることもいっぱいで時間を惜しむような気持ちでしたし、預かってくれる実家も遠く、とにかく、どこへ行くにもず〜っと一緒だったような気がします。

 思い返せば、彼女は、かなり変わった子供で、おかしな逸話が山ほどあります。よく言えば、個性的なのですが、やけに調子よく自分を納得させて、世渡りしているかと思えば、強情で、こうと思ったら、なかなか譲らないところもあったので、今から思えば、型にはまりがちな日本の学校に行っていたら、反発していたりしたかもしれません。

 いわゆる子供用のおもちゃには興味がなく、石を集めてみたり、ボールで遊ぶよりもビニール袋を自分で膨らまして遊ぶのが好きだったり、子供用の電動の乗り物(遊具)を怖がったり、遊園地が嫌いだったり・・負けず嫌いで、競争することが好きで、別に競ってないのに、駅などでは、私がエスカレーターに乗っているところを隣の階段を駆け上って、私が上に到達した頃には、得意げな顔をして、上で待ち構えていたりしました。

 ブランコが好きで、好きで、日本に行くと近くの公園に毎日でもブランコに乗りに通いました。(フランスには、あまりブランコがないのです。)

 とにかくピンクが好きで、洋服のコーディネートは自分でしないと気が済まず、パンツの色まで合わせないと気が済まないので、出かけてみたら、パンツを履いていなくて、「どうしてパンツはいてないの??」と聞くと、この服に合うパンツがなかったから、履いてこなかった・・などなど・・。

 そんな逸話がいくつもある娘ですが、このところ、彼女の小さい頃のことを話すと、彼女は、自分の幼少期をほとんど覚えていないことに驚きます。彼女には、5歳以下の記憶がほぼ、ないのです。

 日本行きの飛行機の話をしていて、昔は、JALのファミリーサービスとかで、子供を連れていると、優先搭乗をさせてくれた・・という話をしたら、「飛行機にさっさと乗る人の気持ちがわからない・・狭いところで長い時間待つだけでしょ!」と娘が偉そうに言うので、「一体、誰のおかげで早く乗らなければならなかったか? 飛行機に乗ってシートベルトをすれば、あなたがチョロチョロもう動かないからでしょ!」と、こんな具合です。

 考えてみれば、私自身も自分の幼少期をそれほど覚えているわけでもないので、当然のことかもしれませんが、親として、色々なことをやらせてあげようと、頑張ってやってきたことを彼女がほとんど覚えていないことは、なかなかガッカリなことです。

 あくまで記憶があるのは、写真やビデオの記憶ですが、そんな写真やビデオもめったに見るわけではないので、本人もまるで別人のビデオを見るような気分で見ているようです。

 小さい頃は可愛かった・・ので、ほんとうにみんなに可愛がってもらったし、「あなた、小さい頃だけでも可愛くて、みんなに可愛がられてよかったね・・」と言っても、「そんなに可愛がられた覚えがない・・」と言う・・。

 親というのは、こんなに不甲斐ないものなのか・・と思いますが、これも順番、実際に私自身もそんなに自分の子供の頃のことを覚えているわけではありません。

 幸い娘は、横道に逸れることも犯罪者になることもなく育ち、今では、偉そうな顔をしていて、腹立たしい事ばかり言いますが、ドキドキしながら、時には怒りながら、思いがけないことを言ったりやったりする娘に笑わせられながら毎日を必死に過ごしていた頃が懐かしいなと思うのです。

 小さい頃は、可愛かった・・雰囲気が、今となっては微塵もない娘ですが、今でも、本当はブランコが大好きで、人目さえなければ、ブランコに乗りたくてたまらないし、嬉しいことがあるとついスキップしてしまう癖だけは残っていることに、どこか、ホッとさせられるのです。


<関連>

「フランスの保育園で・・」

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「パピーとマミーの愛情」

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「娘の寝相と寝言」

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2020年9月8日火曜日

恩師との別れ 死生学のすすめ アルフォンス・デーケン教授

       


 偶然、その前日に、普段はあまり思い出すこともなくなっていたのに、ふと、デーケン先生に、「使命感を持って頑張ってください!」と言われた時のことを思い出していました。あの頃の私は、先生がおっしゃっていた本当の意味の「使命感」ということを全然、わかっていなかったなぁ・・と、なぜか、ふと先生の言葉が心に浮かんで、ぼんやりとその時のことを考えていたのです。

 そんなことを考えていた翌日に、先生の訃報を目にすることになるとは、なんだか虫の知らせとでもいうのか、とても不思議な気持ちでした。

 アルフォンス・デーケン先生は、日本で、死を忌み嫌うものとしてではなく、死ぬことを見つめて、生きることを学ぶ、「死生学」を広め、「死の準備教育」を提唱し、当時、日本では数少なかったホスピスを広めていった上智大学の教授でした。

 おそらく彼は、私の人生に最も大きな影響を与えてくれた恩師でした。

 私は、ちょうど、初めて身近な人を亡くしたばかりの頃で、それまで人の死に接したことがなかった私は、死について、考えるようになりました。世の中に絶対ということはない・・絶対おこることは、誰もがいつかは必ず死ぬということ、人間の死亡率は100%です・・・言われてみれば、当然のことなのに、当時の私は、大発見をしたような気分になったものです。

 いつか訪れる死をどうやって迎えるかを考えることは、とても大切なことですし、死について考えることは、生きることについて考えることでもあるのです。死は恐れるものではないことも彼の講義から学びました。

 死についての話となると、どこか怪しげな宗教と誤解されがちなこともあり、実際に先生は、大学の教授であったとともに、カトリックの神父様でもあったのですが、死生学の講義では、宗教色を強く出すことはありませんでしたし、彼の講義は、ところどころに必ず、ユーモアが組み込まれていて、思わずクスッと笑ってしまうようなジョークまでが含まれているのです。

 私は、どの宗教にも属していませんが、デーケン先生にかなり傾倒して、彼のキリスト教の講義も受講しました。若かった私は、今よりもずっと繊細?で、迷うことも多く、何かを信じることができたら、どんなに楽だろうか?と思ったこともあったのです。

 当時、日本では、オウム真理教などの新興宗教が拡大していた時期でもあったので、私が持っていた漠然とした不安も、当時の若者の多くが抱えていたものと似ていたかもしれません。私は、先生の講義を聞いたり、本を読んだり、実際に先生とお話ししたりすることで、ずいぶんと救われていました。

 先生は、忙しい中、個人的に面談の時間も設けてくださり、漠然とした私の悩みなどもずいぶん聞いて下さいました。キリスト教を信じたくても、信じられない・・という私に、先生は、「大丈夫、自然に信じられる時が来るまで、無理に信じようとしなくても良いのです」と優しくおっしゃり、張り詰めていた私を静かに抱き寄せて下さいました。

 私は、キリスト教を信じることはできませんでしたが、デーケン先生は信じることができる・・今は、それで、充分ではないか? そんな風に思えたのです。

 なぜか、その時、ルサンチマンについて話したことも覚えています。こうして書いていると、次から次へと色々なことを思い出します。

 彼は、とても聡明で、努力家で、穏やかで、かといって、堅苦しくもなく、懐の大きな、ちょっと可愛らしいところもある、とても優しい先生でした。

 彼の死生学の講義を受け、当時、動き始めた日本でのホスピスムーブメントに関する研究会などにも軒並み参加して、私がとうとうイギリスのホスピスを自分の目で見てみたいとイギリスへ行くことを決意した時は、先生がホスピス宛の推薦状を書いて下さいました。

 その時に言われたのです。昨日、ふと思い出した「使命感を持って頑張ってください!」を・・、そして、昨日の結婚式で頂いたものですが・・と、きれいな花束を下さいました。

 私の海外生活も長くなりましたが、そのきっかけを作ってくださった方です。

 デーケン先生は、ドイツ人でしたが、私は、先生が外国人であるということを全く意識をしていませんでした。先生は、心は日本人、日本に骨を埋めるつもりだと仰っておられましたが、実際に先生自身のアイデンティティーに関する考察には、外国人として日本に住むに当たって複雑なものもおありになったと思います。しかし、私にとっては、先生は、一人の人間であって、国籍などは、全く関係ありませんでした。

 今、私が海外で生活し、日本にいる時以上に自分が日本人であることを意識しますが、デーケン先生を思い出してみると、どこの国の人というよりもその人の本質的なところで人と関わることの大切さを再確認させられます。

 講義の最初には、「日本の寿命は世界一・・だから、私は、日本に来たんですね・・」と仰っていたデーケン先生、88歳、見事に日本人の平均寿命を超えられた旅立ちでした。

 そして、講義の際に、よく話されていた「私は、アイジンバンクに登録しています。アイバンクと腎臓バンクです。私が死んだら、私のこの美しい目を差し上げます。」というオチのついた話も実現したのかな? と、先生のその時の口調などを思い出しています。

 死は、終わりではなく旅立ちだと説かれていた先生の死は、悲しくはありません。

 いつかまた、次の世界で先生と再会できる日を私は、とても楽しみにしています。


<関連>「イギリスのホスピスにいた、ある青年とお母さんの話」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_25.html

 





2020年9月7日月曜日

フランスのPCR検査 感染者を責めないフランス人のラテン気質

 



 フランスの新規感染者数は、8月に入って以来、ウナギ登りに上昇し、9月に入ってからは、さらに拍車がかかり、先週末には、9000人に迫る勢いになっています。毎日、8000人、9000人の新規感染者がいれば、自ずと身近なところにまで、感染の渦が迫ってきていることを感じずには、いられません。

 実際に、友人が・・または、友人の家族が・・などと言う話を頻繁に聞くようになってきました。このウィルスの厄介なところは、感染しても、最低5日間は、待たなくては、検査に陽性として表れずに陰性として判定されてしまうことが多く、例えば、自分の友人が感染したとして、その友人に会っていたとしても、一定の期間がたたなくては、検査を受けても無駄なわけで、その整合性も決して高くはないところです。

 フランスでは、PCR検査を広範囲で行うようになってからは、予約なしで費用もかからないことから、比較的、積極的に検査を受けようとする人が増えたため、パリ市内でも検査をしている試験場では、どこも長蛇の列で、検査が間に合わずに、本当に検査が必要な人が検査ができなくなっている状況が起こっています。

 ロックダウン中ならば、いざ知らず、通常の社会生活を送っていれば、今、感染していなくても、もうその次の日には、感染している可能性もあるわけで、それでも、このキリがないような検査をずっと続けなくてはならないことには、もどかしさを感じますが、それでも、検査を少しでも多くして、感染者を隔離していく以外は、方法がないのです。

 フランスでは、ここまで感染状況が悪化しているわりには、全体的に危機感が薄く、ここのところは、さすがにほとんどの人がマスクをするようになりましたが、それは、マスクが義務化され、マスクをしていないと罰金を取られるからであり、こんな状況になっても、まだ、マスクの必要性の有無を語り続けています。

 この時期の感染拡大の大きな原因は、バカンスであるのは、間違いないのですが、皆がバカンスに出ていたために、バカンスに出ていたことを非難するような風潮は全くなく、したがって、感染したからといって、感染した人を責めるようなことも全くありません。

 どんなに気をつけていても(大して気をつけていない人が多いのも問題ですが)、かかる時にはかかるもの・・長期戦になることを考えれば、息抜きは必要だから、バカンスにも行くし、カフェにも行く。ポジティブにコロナと付き合って行くしかない・・と、深刻になりすぎることは、ありません。

 良くも悪くもコロナによる閉塞感というものも、あまりありません。

 今回のコロナウィルスの大災害のさなかにフランスにいて、フランス人を見ていると、改めて、彼らはラテン気質の人たちなんだということをつくづく思い知らされます。

 3月から4月にかけての大惨事を経てきたにも関わらず、これだけ、切り替え?が早く、バカンスに出かけられるのも、ある程度、気をつけて、それでも感染してしまったら、その時は、その時のことだと思っているようなところがあり、たとえ感染してしまったとしても、それは、その人のせいではないと鷹揚な態度なところも、彼らの根っこには、ラテン気質が備わっていることをまざまざと感じるのです。

 これまで私は、ラテン系というと、どちらかといえば、イタリアとかスペインとか、南米とかのイメージがあり、フランス人は、ちょっと格好つけたがりで、一見、小難しいことを理屈っぽく、滔々と語って、ラテン系ど真ん中の感じとは、少し違うように感じていたのですが、今回のパンデミックを見ていると、この深刻な状況でも、お祭り騒ぎをしたり、怒りに震えてデモに集合したり、しかも、その感情の発散の仕方がまさに血が騒ぐという感じの桁違いのものであったり、なるようになるしかないと、深刻になりすぎることなく、あくまでも緩い感じでいるのも、彼らの根っこには、ラテンの血が流れていることを感じずにはいられません。

 フランス人は、よく、「C'est la vie(セ・ラ・ヴィ)(それが人生よね・・)」と、相手も自分をも納得させるように言うことがありますが、まさに、「セ・ラ・ヴィ」は、彼らのラテン系の気質を表す言葉であったことを今さらのように感じています。


<関連>「フランス人のプライド」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_6.html

2020年9月6日日曜日

娘のフランス人のDNAが活性化するとき・・生ハムの塊が消えた・・

消えた生ハムの塊

 

 冷蔵庫・冷凍庫というのは、厄介なもので、中のものが減ってくると、補充しなければと思うし、満杯になっていれば、なんとか、消費していかなければと食材に追い立てられるような気持ちになります。

 我が家の冷蔵庫は、きれいに整頓されてはおらず、そもそも冷蔵庫には、調味料に近い瓶詰めの調味料やお味噌、ピクルスやお漬物、佃煮等、また、冷凍庫にも日本から持ってきている大切な日本食の一部など(明太子や塩辛、しらす、うなぎなどなど)の長期保存の食料がかなりの割合を占めていて、まずまず大きな冷蔵庫でありながら、少し買い物をすれば、あっという間に満杯状態になってしまうのです。

 特に肉類などは、まとめて買って、小分けにして冷凍したり、作り置きしたお料理を冷凍してあったり、おまけに、たまにPICARD(ピカール・冷凍食品店)に行ったりすれば、場所を取ることはわかっていても、ついつい買ってしまうと、かなり、満杯状態であることが多いのです。

 約2年間、時々、バカンスの時期には、帰ってくることはあっても、しばらく家を出て、一人暮らしをしていた娘が帰ってきて、しかも、リモートワークで一日中、家にいて、我が家の食料のサイクルが大幅に崩れ、なんだか、冷蔵庫の中身を満たしたり、減らしたりするペースがせわしなくなって、日頃から乱雑な我が家の冷蔵庫は、ここのところますます酷いことになっていました。

 そんな言い訳をしつつ、我が家の冷蔵庫の中は、とても人様には、お見せできるような状態ではなく、しかも、夏の終わりに、ベランダで育てていたきゅうりも、もうそろそろ終わりに近づいて、去りゆく夏の日本のきゅうりを惜しむ気持ちから、パンとビールと昆布を使ってぬか床などまで作ったことから、ますます冷蔵庫は、混雑状態なのです。

 現地の食材をできる限り使いつつも、和食に偏りがちな我が家の食卓ですが、フランスのものが、全く嫌いなわけでもなく、ここのところ、しばらく食べていなかった18ヶ月のコンテ(チーズ)やカマンベール、ミモレット、サラミなどを買ったりしていました。

 そんな、俄かに起こっている我が家のフランス食品フェアの中でのハイライトは生ハムの塊でした。

 いつもは、生ハムは、薄切りになっているものを買うのですが、大きな生ハムの原木に憧れがあったものの、さすがにまるまる原木を買うのは少々ためらわれ、単行本ほどの塊を買ってきたのです。

 少しずつ自分で削るように切って食べる生ハムは、赤ワインにもよく合い、切りたてのものを食べられるので、風味もよく、しかも、薄切りのものを買うより、結局は割安なのではないか?と大変、満足していました。

 毎日、食べたくなる気持ちを抑えつつ、(ということは毎日、飲むことになるので・・)今日は、もう夜は、お料理したくないから、冷凍のピザでも焼いて、あとは、生ハムとサラダ、あとは、ミモレットがあったね・・と言いながら、ごちゃごちゃの冷蔵庫の中、生ハムの発掘作業に取りかかったのです。


             久しぶりのミモレット・・美味しい


 切りかけの少し小さくなった生ハムの塊は、ラップに包んで、ジップロックに入れて、冷蔵庫に入れておいたのです。ところが、どこに埋まってしまったのか? いくら探しても見つかりません。とにかく、満杯の冷蔵庫、もしかして、場所がなくて、野菜室に入れてしまった? と野菜室まで探しました。(だいたい、自分の記憶にも自信がない)

 まさか??と思って、娘に問いただしたところ、あの生ハムの塊は、いつの間にか全部、彼女が食べてしまったとのこと!「えっ??全部??」「ソースィソン(サラミ)もあったよね! あれも?全部、食べちゃったの??」

 楽しみにワインを用意していた私は、呆然・・娘は、少々、ばつが悪そうにしていましたが、あの塊をいつの間にか(といっても一週間もたってない)食べてしまった娘のガッつきぶりに、ちょっとヤバい主人のDNAを感じるわ、私自身、楽しみにしていた生ハムが消えていたことにあまりにガッカリして、動揺する自分の気持ちの持っていきように困った夜でした。

 常日頃は、フランス料理嫌いで、フレンチと言えば嫌な顔をする娘ですが、美味しいフレンチ食材に、ひとたびスイッチが入った時には、一気に主人のDNAが活性化したような状態になることに、少々、恐怖を感じたのです。

 小さい頃には、幼稚園で夜中に冷蔵庫を漁る主人のことを「家にはねずみが出るんです!」と先生に言いつけた娘です。

 まさか彼女自身がねずみになるとは、DNAとは恐ろしいものです。しかし、考えてみれば、生ハム一つにこれだけ気持ちをかき回される私のガッつきぶりも相当なものなのです。


<関連>「パパのダイエット メガネをかけた大きなねずみ」

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2020年9月5日土曜日

新規感染者が9000人に迫るフランス フランスにやってきたバカンスのツケ


 

 昨日のパリは、マスクをしていると、少し汗ばむくらいの晴天で、朝のうちは、それでも涼しいので、今の季節は、真夏のようなサンダル履きの人から、早々にマフラーをしたり、ダウンを着ている人までいる、多分、一年のうちで一番、街を歩く人のファッションがちぐはぐで、様々な格好をしている人がいる季節です。

 銀行から頼んでおいた小切手ができたという連絡をもらったので、銀行の用事に加えて、いくつかの用事を済ませるために、久しぶりにパリの中心に出かけてきました。私もすっかり、最近は、今までバスに乗っていた区間も歩くようになり、メトロに乗らなければ行けない最低限の区間だけに限って、メトロを利用するようになりました。

 久しぶりのパリの街は、お天気がいいこともあってか、とてもきれいで、街中には、本当に自転車やトロチネット(キックボード)などがどこに行っても置いてあって、すっかり交通手段の一つとして、定着したな・・そして、ものすごく増えた・・しかも電動のものも増えた!!すごい!!と思いました。


                        前にはカゴ、後ろには子供が乗せられるママチャリベリブ


 昨日は、ベリブ(パリの貸出自転車)に、ハンドルの前にはカゴ、後ろの荷台には子供の座席?が備え付けられた、まさにママチャリ仕様のベリブまでできていて、ビックリしました。

 さすがに義務化されただけあって、街中はもちろんのこと、メトロの中は、ほぼ全ての人がマスクをしていました。メトロの中もあまり話をしている人はいなくて、皆、俯いて、携帯をいじっていて、なんだか、東京の地下鉄に似てきたな・・とも、思いましたが、やはり、東京の地下鉄のようなピカピカした清潔さは感じられません。

 ロックダウンが解除になってすぐには、RATP(パリ交通公団)は、一日、数回の消毒作業を行うと言っていましたが、車内の様子を見るに、とても、1日、数回の消毒作業をしているようには、見えません。

 その上、なんのつもりか、地べたに自分の荷物を置いてしまっている人をその日1日だけでも、何人も見つけて、やっぱり、フランス人の衛生観念・・やっぱり、まだ発達していない・・このご時世、地べたに荷物を置く神経がわかりません。土足で家に入るのと同じ感覚なのでしょうが、いくらマスクマスクと騒いでも、やっぱり、もともとの衛生観念が欠けていると思わざるを得ません。

 
                                    理解できない地べたに荷物を置く神経


 普段はバスに乗っていた道のりを歩きながら、気持ちの良い天気に映えるきれいな景色を眺めながら、これで、コロナさえなければ、どんなに気持ちが晴れ晴れとしたことか・・とちょっと思いました。

 夜になると、ニュースで1日の新規感染者が8975人というのが発表されていて、あまりの数字の上がり方にちょっと声を出しそうになるほど驚きました。だって、先週は、6000人を超えてビックリしていたばかりですから、それが一週間でほぼ9000人って・・。

 今やフランスは、1日の新規感染者に関しては、インド、アメリカ、スペインに次いで、世界第4位に跳ね上がってしまいました。さすがに1日に9000人も感染者がいれば、無症状の人ばかりではなく、入院患者も重症患者も確実に増えています。

 現在、フランスのコロナウィルスによる入院患者は4653人、(そのうち1日に入院した患者は292人)ICU(集中治療室)には464人、1日に46件のクラスターが発生しています。

 始まったばかりの学校も、すでにこれまでに22校が閉校になっています。

 長引くパンデミックに失敗を繰り返しながらも、前に進んでいかなければいけないことはわかりますが、この感染拡大の仕方は、いくらなんでも酷すぎるのではないかと心配でならないのです。

 なんだかんだ言いながらも、結局、皆、盛大にバカンスに出かけていたツケが今、フランスには、来ているようです。おまけにバカンスも終わったからと、やたらと家族や友人と集まったり、ほんとうに、なめくさってるな・・と、私は、苦虫を噛み潰すような気分でいるのです。


<関連>「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_6.html

「フランスの駅とトイレの先進国とは信じ難い臭さ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_27.html

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

2020年9月4日金曜日

日本は海外に住んでいても教科書を無料でくれる

 


 新年度に入って、学校が始まれば、フランスの学校でも、一年の始めには教科書が配布されます。しかし、それは、ほとんどの場合、一年間、教科書を借りるということで、新年度には、その一年間お借りする教科書のブックカバーをする仕事が待っています。

 借り物なので、汚したり、破損したり、紛失したりした場合は、弁償しなければなりません。一年の始めには、学校からクラスごとに揃えなければならないノートやファイル、ペン、定規、計算機などの細かいリストが配られ、そのリストに従って、一通りの買い物をしなければなりません。

 ノートの大きさ、ページ数、様式など、細かい指定で、だいたいカーフールなどのスーパーマーケットには、新年度の前になると、リストを片手に買い物をする人で溢れます。品切れのものや売っていないものなどが必ずあって、たいていは、一度の買い物では済みません。結構な手間と時間がかかります。

 さしずめ、日本ならば、同じものを揃えるならば、学校側が業者に委託して販売すると思われますが、学校側の仕事が増えるのが嫌なのでしょうか? この不思議なフランスの風習?は、毎年のように続いています。

 教科書をカバーする透明のシートも一緒に買ってきて、色々な持ち物に名前をつけるのと同時に一冊一冊、教科書にカバーをするのですが、以前、娘の友達が家に来て、一緒に教科書のカバーをするのを手伝っていたら、不器用なフランス人の本のカバーの無様なことにびっくりしたことがありました。

 同じく、娘の友人のお誕生日会に呼ばれていた時に、一緒に行こうと言っていたママ友が「ちょっと、まだ、プレゼント、買ってないから、付き合って!」と言われて、付き合って、彼女がプレゼントをプレゼント用の紙に包むのを見て、あまりの杜撰さに驚いたこともありました。フランス人は、概して、不器用な人が多いのです。というか、大雑把で、日本のようにきっちりしていないのかもしれません。

 話は、それましたが、そんな風にフランスでは、教科書は、一年間、お借りするもので、一年の終わりには、きっちりお返しすることになっています。教科書は、まあ、一年が終わってしまえば、手元にあっても、もう使わないことも多いので、フランスらしい合理的といえば、合理的なシステムです。

 そんな中、日本は、日本国籍を持っている子供には、海外に住んでいても、義務教育の間は、希望者には、教科書を無料で配布してくれます。教科書は、科目によっては、一年に2回、上巻・下巻と配布されるので、(前もって予約が必要ですが・・)私は、娘が小学校・中学校の9年間、年に2回、教科書を受け取りに通いました。(以前は、在仏日本人会が請け負っていましたが、今は、大使館で配布しています)

 たいていは、平日の時間帯なので、教科書をもらいに行くときは、昼休みをずらして取って、(昼休みは大使館は、休みなので)メトロで数駅、バタバタと大使館に駆け込んでは、仕事に戻る、そんなことを一年に2回ずつ、続けていました。

 きれいな新品の教科書を海外にいても、無料で配布してくれる国など、そうそうあるものではありません。私の職場には、色々な国からの外人もいましたが、そんな話は、聞いたことはありません。

 自分が育った頃とは違う、今の教科書は、なかなか自分自身が読んでも興味深いものですし、私は、特に娘に日本語をしっかり学んで欲しかったので、これは逃すものかと9年間分の教科書を全て頂いてきました。

 これらの本を自分で調達するとなったら、個人としたら、相当な負担になるはずのものなので、とても助かりました。

 教科書は、今でもほとんど取ってあり、娘が日本語検定を受験したりした際には、日本語の勉強に使っていましたし、今、自分の専門分野である生物の教科書などは、日本語では、こういう言葉を使うんだ・・などと、中学校の教科書を開いたりもしています。

 日本の学校の様子や社会の仕組みなどもわかりやすく書いてあるので、今さらではあっても、大人になってから読んでも結構、勉強になります。

 私は、日本のそんなところは、やっぱり日本は、凄いな・・と、誇らしくもあり、ありがたくも思っています。海外にいても、日本人としての教育を配慮してもらえることがとても嬉しいのです。そんな国は、そうそうないのです。

 海外在住の方で、このシステムをご存知ない方は、ぜひ、せっかくの機会を利用しては、いかがですか?

 国によって、配布方法は違うと思われますが、フランスは、大使館がやっているので(もしかしたら、場所を提供しているだけかもしれませんが・・)大使館に問い合わせれば、わかると思います。


<関連>「フランス人は不器用なのか?」

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2020年9月3日木曜日

再婚・養子縁組・大学進学・就職 イレギュラーなママ友の人生

 


 学生時代の友人や昔からの友人が長続きして付き合いが続いていくのは、なかなか容易なことではありません。ましてや一生のうちには、自分の生活圏や生活環境がどんどん変わっていく中で、それを維持していくのは、よほどのことであると思っています。

 また、思わぬことで、なぜか、妙に縁がある人というのもいるものです。

 私など、海外に出てしまっているので、日本での学生時代からの友人などは、もう片手で十分に足りるほどで、また、真の意味での友人がいれば、それで十分、満足しています。

 また、海外に出たら出たで、そこでまた、新しい繋がりができるので、それはそれで良いのです。

 そんな友人関係の変化が娘にも見えてきて、私は、なるほど・・と遠くから娘の友人関係を眺めています。彼女は、小学校から高校まで同じ私立の学校に通っていたので、高校卒業までの12年間は、彼女の友人関係は、あまり変わることはありませんでした。それだけ強固な繋がりかと思いきや、もうすでにそれぞれが別の道に進めば、バラバラになっていきます。

 その中で、小学校からの仲良しで、バレエなどのお稽古事も一緒、高校卒業後に進学したプレパー(グランドエコール準備学校)も一緒、同じ理系の道を進みながらも選考は違い、グランドエコールは、別々の学校(それぞれ別の地方)へ進みましたが、彼女とは、今も付き合いが続いているようです。

 彼女は、小さい時から優秀で、小学校の時に飛び級をして、娘のクラスに入ってきてからの付き合いなので、本当は、娘よりも一つ年下です。

 私は、仕事で時間の自由が効かなかったこともあり、時間的にも余裕がなく、ママ友付き合いというものをほとんどしてきませんでしたが(内心、此れ幸いと思っていました・・)、それでも、彼女のママは、とても行動的でアクティブな人で、バレエのクラスの世話役や市役所のイベントに顔を出したりしていたので、そんな私でさえも、会えば、少しは、話をしたり、困ったことがあれば、アドバイスをしてくれたりしていたので、他のママたちよりは少しは、彼女のことを知っていると思っていました。

 彼女は、ご主人とは再婚で、しかもかなり年が離れていて、彼女の子供二人は、養子だということは知っていました。彼女のご主人には、前の奥様との間に子供がいて(すでに成人して、独立している)、その上、養子を迎えるということは、並大抵なことではないな・・それだけでも、彼女は、すごくバイタリティーのある人だと思っていました。

 フランスでは、子供のできない人が養子縁組するケースは、少なくなく、うちの主人の兄も養子です。

 しかし、そんなプライペートなことは、娘から話を漏れ聞くだけで、彼女と直接話したわけではありません。そして、つい最近、娘と留学費用の話をしていて、その友人が留学費用を借金したという話を聞いて、”えっ? なんで??”という話になり、”だって、彼女のママは、つい最近まで働いてなかったんだよ! おまけにパパはもう年金暮らしだし・・”という話を聞いて、びっくりしたのです。

 フランスでは、だいたい、共働きが普通で、お母さんが仕事をしていない家庭というのは、極端に少ない上に、ましてや彼女を見ていれば、とてもバリバリ仕事をしていそうな感じだったので、てっきり、仕事を持っているのだとばかり勝手に思い込んでいたのです。

 それぞれの個人の事情には、余程、親しくなければ、立ち入らないフランスですし、私自身も、あまり他人のプライベートは、相手が自分から話さない限りは聞くこともありません。

 娘が高校を卒業してから、もう4年が経ち、それ以来、いや、それ以上に娘がバレエをやめて以来ですから、もう6年くらい、私は、彼女のママには会うことはありませんでした。

 この間の6年の間に彼女のママは大学に入り直して、つい最近、就職したばかりなのだそうです。

 私よりも若いママではありましたが、さりとて決してもう若いわけでもありません。そんな中、大学に通い直して、仕事に付いていたとは・・今さらながら、凄い人だったと思いました。

 色々な面で、順番が普通とは違いますが、年の離れたご主人と結婚して、子供二人を養子に迎え、子育てもそろそろ目処が付いたところで、大学に入って勉強しなおして、就職。

 かなりイレギュラーな人生ではありますが、自分の子供ではない子供を立派に育て、自分も勉強し直して、就職。話を聞いてみれば、人それぞれには、なかなか色々な事情があるものですが、まさに自分の人生をたくましく切り拓いて生きている彼女に、改めて、尊敬の意を抱いたのでした。


<関連>「義兄夫婦のフランス人の家族」

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2020年9月2日水曜日

新年度が始まったフランス 学校も再開・仕事も再開


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 長いバカンスも終わって、フランスは新年度が始まりました。子供は、学校へ、大人は仕事へとまるで仕事場に行く大人までが、新学期が始まるように感じられるのがフランスらしいところです。

 8月に入って、感染者が爆発的に増えたフランス。学校も仕事もリモートにしないのかな?と思うところですが、会社も学校もマスク着用を義務化して新年度に臨むところに、この先、長く続きそうなコロナウィルスと共存していこうとする姿勢が感じられます。

 会社内でのマスク着用義務に関しては、反対の声も上がっていますが、今のところ、フランスでは、大きな騒ぎにはなっていません。(ヨーロッパの中では、ドイツなどで、マスク義務化反対の大きなデモなどが起こっています。)

 とはいえ、学校も11歳以上の子供はマスク義務化、従わない場合は、それなりの制裁も考えているという強気な態度。義務化されない11歳以下の子供でも、マスクをしている子供は、少なくないと思います。

 はるか昔のことになりますが、娘が小学校に入学した9月1日のことを思い出します。娘は、小学校から私立の小学校に通うことが夏休みの間に急に決まったのです。

 フランスでは、日本でいうお受験のような入学試験がないので、我が家が申し込んだ時点では、定員オーバーということで断られ、ウェイティングリストに載せてもらっていたのですが、直近の成績が奇跡的にオールAという成績をもらってきたために、念の為に成績表を希望していた学校に送ったら、面接に来てくださいと学校から連絡をもらい、急遽、9月の最初から入学許可が下りたのです。

 ですから、急なことでもあり、周りのお友達のほとんどは、公立の学校への入学だったため、周りは知らない子供ばかり・・ましてや、なかなか厳しい学校で、娘はともかく、少なくとも私は、とてもドキドキしていました。

 9月1日の朝、夫婦揃って娘を学校まで送り、彼女の新しい学校生活のスタートを見届けるつもりでした。ところが、親が送っていけるのは門の前までで、そこから先は、保護者とて、中に入ることもできません。入学式もありません。

 娘は、私たちの方へ、「じゃあね!」と軽く一回手を振ると、意気揚々と学校へズンズン入って行きました。パパは、「一度も振り返らない!」と、グングン学校に入っていく娘が不満そうでしたし、私に至っては、たくましく学校生活に入っていく娘が心配なような、たくましく、頼もしいような、複雑な気持ちで、うるうるしてしまったほどです。

 あの時の気持ちを思い出すと、今年、新入生として入学する子供を持つ親御さんたちは、通常の不安プラス感染のリスク・・どんなにか不安で心配かと思うとちょっと胸が痛くなります。

 フランスの学校は、低学年は、短縮授業ということもなく、いきなり、朝8時半から16時半(エチュード(宿題を見てくれる授業)も含めると18時までギッシリの授業が始まります。

 ただでさえ、慣れない学校生活でマスクや手洗い、ソーシャルディスタンスを取らなければならずに友達と触れ合うこともできないのです。それでも、きっと子供の方がそれなりの方法を見つけて、友達とも工夫をして遊んだりしていくのだと思います。

 しかし、感染者が出れば、たちまちクラスターが発生してしまうリスクもあります。しかし、恐れて逃げてばかりいては、前へ進めない・・今のところ、幸い重症化している人は、少ないため、いくつかの失敗を重ねながらでも、手探りでウィルスと共存していく道を歩まなければならないのかもしれません。

 3月のロックダウンから数えれば、約半年ぶりの学校に行けることを嬉しそうにしている子供たちを見ると、そんな風にも思えてくるのです。


<関連>

「学校選びは人生の岐路 娘の通った学校はなかなか厳しい学校だった」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_54.html


「入学式も卒業式もないフランスの学校」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/09/blog-post_7.html

 









 

2020年9月1日火曜日

バカンス帰りの12台のTGV・最大20時間の遅延に見舞われた5000人の旅行者

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 9月の新年度に滑り込みで帰郷する人々で溢れかえる8月30日(日)の夜、フランス南西部からのTGVが電気系統のトラブルによりストップし、計12台の車両がブロック、5000人の旅行者が足止めを食い、翌日、夕方、最大、20時間遅延したTGVがパリ、モンパルナス駅に到着しました。

 この時期、ただでさえ、TGVという密閉空間でのコロナウィルスの感染拡大が心配される中、なぜ、電車が止まっているのか、復旧にはどれだけかかるのかなどの的確な情報もなく、また、時折、発表される情報もコロコロ変わり、水も食料もないまま、高齢者や子供も含む多くの人が電車内での夜明かしを余儀なくされました。下の写真は、乗客が、「水も何も支給されない中、コロナが蔓延する中、TGVで夜明かしする様子をツイッターに投稿していた写真です。

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 今さら誰もフランスのTGVに時間どおりの発着を期待してはいませんが、今、このタイミング(コロナウィルスの感染者が再拡大している、しかも、夏休み終わりの最終日)での遅れ、しかも20時間の遅延という記録的な遅れは、もうこれは事故です。

 しかし、この驚異的な遅れにも関わらず、乗客は、イライラは募りながらも暴れたりする人が出なかったことも、これまた奇跡的です。

 日頃からパリでもメトロが急に駅と駅の間で停車したり、駅で止まったまま発車しなかったりすることは、よくあることで、また、何の説明もないか、あるいは、テクニカルプロブレムの一言で終わり、また、しばらくこの電車は動きません・・と言った途端に発車・・などなど、電車のトラブルの例えをあげれば、キリがありません。

 この日常を考えれば、20時間遅延したTGVのアナウンスなどがどんな具合であったのかは、容易に想像がつきます。

 情報がない中、ましてや夜中に、電車の乗り換えや、諦めてホテルに泊まることも簡単ではありません。

 先週には、フランスのコロナウィルスの1日の新規感染者は7000人を突破している中でのこの事故でのTGVでの20時間の缶詰状態。この12台のTGVがクラスターになっている可能性は低くありません。

 日本の東海道新幹線は、年間13万本運行し、自然災害などによる遅延も含めて、平均遅延時間は、24秒だという話を聞いたことがあります。遅延時間を秒単位で測ること自体が驚きで、フランスから見れば、まるで違う時代か違う宇宙の話のようです。

 20時間といえば、パリから日本への直行便は、12時間弱、羽田に着いて、家に帰って寝ているほどの時間です。もはや遅延と言える時間なのか?疑問です。

 さすがの遅延大国フランスも20時間の遅延に対しては、遅延のために利用したホテルの費用など、旅行者向けの「追加費用の全額」とチケットの返金、3倍返しを発表しています。


<関連>「ストライキ大国・フランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_46.html