2019年7月3日水曜日

学校選びは人生の岐路 娘の通ったフランスの学校はなかなか厳しい学校だった




 娘が通っていたのは、私たちの住んでいる地域にあるカトリック系の学校で、私立の幼稚園から高校までの一貫教育の学校でした。娘は、小学校から高校まで、その学校にお世話になりました。私立といっても日本のように入学金などなく、ことのほかお金がすごくかかるということもありませんでした。

 以前にも書きましたが、たまたま私の職場の近くにあった学校の、あまりのレベルの低さ、生徒の態度の悪さに、学校選びは、ちゃんとしないと大変なことになるという危機感を持ち、地域の私立の学校を当たってみたのです。

 最初に学校に様子を見に行った時に、もう、生徒の顔つきが全然、違うので、一目で、この学校なら、大丈夫だと思いました。顔つき、って、凄いですね。良きにつけ悪しきにつけ、子供でも、生き様は如実に顔に表れています。

 さて、実際に学校に入ってみると、かなり、厳しい学校でした。

 小学校の面接の際に、ディレクトリス(校長先生)にあっけらかんとして、”ボンジュール!”と無邪気に挨拶した娘に、キリッとまっすぐ娘の目を見て、「”ボンジュール、マダム” と言うのですよ。」と毅然として、おっしゃった校長先生の姿勢が教育にも見事に反映されていました。

 小学生の時から、先生に反抗するようなことがあると、Baisse les yeux ! (目を伏せなさい)と怒られます。これを聞いて、軍隊みたいだ・・と思ったものです。・・が、しかし、このフランスの状況で、一定の年代には、ある程度、先生が毅然として、絶対的に強い姿勢でいることは、必要なのかもしれないとも思うのでした。(実際に強いといっても手をあげたりするわけではありませんから。)
 
 授業の進み方も他校と比べると随分、早かったようですし、日常生活の態度などについても、かなり厳しい学校でした。(娘の学校しか知らなかった私は、これがフランスの学校なのだと思っていたのですが、かなり例外的だったようです。)

 また、中学校からは、成績にも、Vie Scolaire という評価 (生活態度に対する点数)があり、満点だと20点ですが、生活態度が悪かったり、遅刻やおしゃべり、忘れ物などが多かったりすると、20点からどんどん、マイナスされていき、それは、成績の総合点に反映されます。

 しかし、この点数によって、落第したり、退学になったりということは、ないものの、態度が悪い生徒は、結果としては、成績も下がり、そのような道を歩むことになる子供もいたこともあるそうですが、結局、学校全体が真面目に取り組むような空気になっていたようです。

 小学校から中学校に上がっていき、そして中学校から高校に上がるにしたがって、知らない間に、いなくなっている生徒さんも、ああ、そういえば、あの子もいなくなってる・・という感じで、ポツポツと思い当たりました。多くは、授業についていけなくなって、転校を進められて、転校して行ったようでした。

 そして、中学から高校へと上がるにつれて、ますます、進学校の色が濃くなっていきました。
 
 バカロレアのための3時間テスト、4時間テスト(バカロレア=高校卒業資格試験のようなもので、約1週間近く、一科目につき、3時間から4時間のテストが続きます。)のための練習のテストの時間が毎週、設けられ、テストの度に、自分の点数と平均点がネットを通じて、発表され、休み時間になると、皆、携帯で点数をチェックして、点数が、0.1上がったとか、下がったとか、戦々恐々としていたそうです。
 フランスでも、そんなこと、やってるんだーと思っていましたが、娘などは、その学校側の煽りに見事に乗せられて、一喜一憂していました。

 また、クラスの成績の順位などにも、親の方もかなり敏感で、順位は公表されてはいないものの、PTAのクラスの代表の人には、知らされているため、自然と(?)漏れ聞こえてくるようで、”おたくは今回も順位がよくて、良かったわね・・”などと、他のお母さんから娘の成績の順位を聞いたりすることもあり、”なんだかなあ〜” と微妙な気持ちになったものです。

 私自身は、人と比べることは嫌いだし、子供のためにも良くないと思っているので、全く煽られることはありませんでしたが、けっこう、親の方も他人の子供の成績に、躍起になっているんだなあ〜と、敢えて、ますます、煽られまいと思ったくらいです。

 また、年に一度、新年度の始まりに行われる、クラス毎の父兄への説明懇談会のような場での、周りの親の熱心さにも、ビックリしたものです。

 自分の子供の苦手科目について、効果的、かつ合理的に勉強させられるサイトのようなものは、ないでしょうか?とか、体力的に長時間のテストに緊張感が続かないのですが、どう対策をしたら良いでしょうか?とか、凄く、前のめりで、中には、両親揃って来ている家庭もあって、親がこんなに一生懸命なんだ!とビックリした覚えがあります。

 逆に、高校生にもなって、親にこんなに必死になられたら、子供の方もプレッシャーだろうし、逆に萎えてしまいそうな気さえしてしまう、と、私は、なんとなく、斜にかまえているようなところがありました。

 また、先生の中でも、本当に教師という仕事をこれだけ、真剣に、かつ、計画的に、モチベーションを持ってやっておられるのは、素晴らしいなあと思える先生のお話を聞いて、何度か関心、いや感動した覚えがあります。やはり、良い先生との出会いも、子供の人生に大きなものをもたらしてくれます。

 私には、フランスの学校に関する知識はなかったので、これまで、フランスの学校というのは、こういうものだと思っていたのです。フランスの教育は、素晴らしいなあ・・と。しかし、現実の社会を見ると、その結果が・・これ!? どうして?と長い間、疑問だったのです。

 でも、娘の行っていた学校はあまり一般的な学校ではなかったようです。

 学校の教育への姿勢も、それに集まる親の教育に対する姿勢も全然、違います。

「朱に交われば赤くなる」とか、「水は低い方に流れる」とか言いますが、子供の学校環境の違いは、本当に大きいのです。これが、フランスの社会の格差なのだ。と今になって納得がいく思いです。

 家から比較的近い私立の学校はその学校だけで、それほど熟考して決めた学校ではありませんでしたが、結果的にとても良い学校で、娘がもし、他の学校に行っていたら、娘の人生はまるっきり違ったものになっていたことでしょう。

 学校の選択は、人生の岐路と言っても、過言ではありません。


フランスでの学校選び