2019年7月20日土曜日

夫を誘惑しようとしたフランス人の女性の話



その女性が近づいてきたのは、私たち家族が今のアパートに引っ越してきて、まもなくのことでした。まだ、地域のことが、よくわからずに、手探りで、新しい生活を始めたばかりでした。

 その女性は、「子供にフランス語を教えます」という広告を出していた、近所に住む中年の女性でした。フランス語は、主人が充分に教えられるので、本当は、別に必要はなかったのですが、ちょうど、その頃、パリでは、長期にわたる学校のストライキが行われていて、なんと、一ヶ月近くも学校がストライキのために閉校となってしまったことがあったのです。

 私も主人も、小学校がストライキだからといって、そうそう、仕事を休むわけにもいかず、かといって、子供を一人で家に置いていくこともできないので、(フランスでは、子供を一人で放置するのは、法律違反になり、罰せられます)誰か、その間、子供を見てくれる人を探さなければなりませんでした。

 その時に、主人がその広告を見つけてきて、どうせ、子供を預かってもらうなら、ただ預けるだけでなく、勉強を教えてくれる人の方が良いということで、彼女にお願いすることになりました。

 最初は、私も近所には、知り合いもなく、娘のバレエのレッスンができるところを探していたりしたので、そんな情報も、彼女に聞いたりしていました。

 彼女は、結婚していて、ご主人も中学生くらいの娘さんもいらっしゃるとのことで、お嬢さんのおさがりの洋服や、おもちゃなどを持ってきてくれたりして、とても親切でした。バレエのレッスンに関しても、” うちの娘もやっているから、今度、紹介するわ!” などと調子良いことを言っていました。

 ところが、後になって、実際に、他からの情報で、娘がバレエのレッスンを始めてみると、そのお嬢さんは、バレエには、来ていないし、彼女が嘘をついていたことが、ばれ始めたのです。(私たちの街には、バレエのレッスンをできるところは、一ヶ所しかありません。)

 そのうえ、私に隠れて、主人にコンタクトを取ろうとしたりし始めたので、主人とは、ケンカにもなりました。

 でも、同時に、彼女がご主人がいる時間帯は外出できないとか、フランス人らしからぬことを言ったりして、妙だなと思っていると、そのうち、彼女が顔を腫らしたりしている姿を見かけ、どうやら、家でDVを受けているらしいことがわかりました。

 この街に、しばらく住んでみると、彼女の噂は、色々あって、とにかく、決まった仕事をしている様子もないのに、朝、早くから、外をウロウロしているのです。お客を取っているのではないか?という人もいました。

 昼間は、私も仕事に出ていていないので、わかりませんが、夜は、夜で、また、何をしているのかわかりませんが、必ず、外で、彼女の姿を見かけるのです。

 彼女がフラフラしているから、ご主人が怒るのか? ご主人が暴力を振るうから、彼女が外でフラフラしているのか? どちらが先かは、わかりません。

 ただ、子供の勉強を見るといって、男性を誘惑するのだけは、本当に、やめてもらいたいものです。子供を巻き込むなんて、最低です。

 それから、しばらくして、いつの間にか、彼女は、街から姿を消していました。








 







 

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