人の気持ちがわかる猫 我が家に猫がやって来た
我が家に猫がやって来て、はや、10年くらい経ちました。
当時、私たち家族に不幸があって、悲嘆にくれて、落ち込んでいた頃のことです。
知り合いのフランス人が、私たちが、猫好きなことを知って、彼女の知り合いのところに猫が数匹、生まれたから、そのうちの一匹を譲ってもらえるという話を持って来てくれました。
お休みの日に、娘がその方のところに行って、数匹いる、生まれたばかりの猫の中から、娘と相性がいいと思われる猫を一匹を選んできました。
それから、少しずつ、猫を迎え入れるために、猫のご飯や、トイレやベッドや爪とぎ、など、猫のための品物を買い揃えていきました。猫が来る準備をするだけで、私たちの気持ちは少しだけ、上向きになり始めました。
そして、数週間後、お母さんと離しても、もう大丈夫になった時、猫が我が家にやって来ました。生まれたばかりの女の子の子猫です。
猫の名前は、ポニョと名付けました。
ポニョは、ツンデレで、気ままで、でも、寂しがりやのところもある、とてもかわいい子猫でした。私が、おそばを食べようと支度をしていると、どんぶりの中に入って待っているようなおチャメなことをしてくれたりもしました。写真を撮っておけなかったのが、残念でなりません。
猫が来てくれたことで、凍りついてしまった家の中の空気が溶けていくようで、私たちの心は、ようやく緩み始めました。
娘がまだ、小学生だった頃、数学の宿題をやっていて、分数だったか、何だったかは、もう覚えていませんが、よくわからなくて、私に聞きに来たことがありました。その程度なら、まだ、私にも教えられるレベルだったので、そんなに難しいことをやっていたわけではありません。
計算の仕方を説明して、方法は、理解したようだったので、あとは、練習問題をやって、慣れるだけだね!と言って、私は、突き放したのです。
娘は、不服そうに部屋に戻って行きましたが、それから、かなり時間が経っても、娘が部屋から出てこないので、のぞきに行ってみると、娘は、宿題に行き詰まって、シクシク泣いていました。
娘のすぐ側には、ポニョが右の前足の片手(?)を娘の手の上に置いて、じっと、心配そうに娘に寄り添っていました。
それからというもの、しばらくの間は、娘が数学の勉強を始めると、娘から、嫌〜なオーラが発散されているのか、ポニョは、必ず、娘の側に寄り添うようになったのです。
それ以来なのか? ポニョは、どうやら娘のことを自分の姉妹と思っているようで、ちょっかいを出されても、追いかけてついて行き、娘が長く家をあけていて、久しぶりに帰ってきたりすると、何とも言えない、満足気な平和な表情をしています。
でも、ちょっと、上から目線で、やっぱり自分が面倒見てやらなきゃな!みたいな顔をしています。
しかし、人の好き嫌いが激しく、嫌いな人だと、遠慮なく、激しく”カーッ!” と威嚇します。家に友人が来たりしても、嫌いな人だと構わずに、この ”カーッ!”をやるので、困ってしまう時もあります。
でも、実のところは、誰にでも気安く、愛想よく、いい顔をしないところも私は、気に入っているのです。そんなところは、娘に良く似ています。
一度、ポニョが病気になって、みるみるうちに、弱ってしまって、歩けなくなってしまったことがありました。焦って、娘などは、半べそを書きながら、今にも死んでしまうのではないかと心配して、夜中にヴァンセンヌにある24時間やっている動物病院に連れて行きました。
とりあえず、3日間は、入院してくださいと言われ、泣く泣くポニョを病院に預けて、二人でガックリ肩を落として、家に帰りました。翌日の午後、13時から15時までなら、面会できると言われて、二人で、面会に行ってみると、ポニョは、点滴の効果でかなり回復していました。
そして、獣医さんに説明を聞きに行くと、彼は、もう堪らない!という顔をして、” 何しろ、すごく怒ってるから・・” と言い、例の、”カーッ!”をやり続けるので、もう、おうちに連れて帰ってくださいと言われて、苦笑しながらもホッとして、ポニョを抱きかかえて家に帰りました。
こんな、激しいポニョですが、彼女は、家の中が悲しい空気に満ちた時に来てくれたせいか、人が辛そうにしている時には、誰よりも敏感で、今でも、夜、眠れなくて、一人で起きていたりすると、心配そうにポニョが様子を見にやってきます。
そして、” ママは大丈夫だから、ありがとう” というと、安心して、自分のベッドに戻って行きます。
これも、あの頃の悲嘆にくれた家の空気の中で育ったポニョに染み付いてしまった、哀しい習性なのかと思うと、そんな、ポニョの優しい心配りにどこか痛々しさを感じてしまいます。
ポニョは、大切な家族の一員なのです。
猫って本当に可愛くて愛おしい。
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