ヌーベル・キュイジーヌが嫌いなフランス人の夫
以前、主人がアメリカのものが嫌いという話を書きましたが、嫌いなのは、アメリカのものだけではありません。
主人が嫌いなものの一つに、いわゆる、「ヌーベル・キュイジーヌ」 というものがあります。フランス料理の好きなフランス人がなぜ?と、私は、思うのです。
ヌーベル・キュイジーヌと言うのは、フランス語で直訳するなら、「新しい料理」のことで、いわゆる、ちょっと小洒落たような、現代的で、洗練された、軽くて、繊細なスタイルのフランス料理で、まあ、近代的な、新しい材料やスパイスを使って、見た目にも、彩りよく、美しく、新しいエッセンスで、どこか、日本の懐石料理に似たようなテイストが含まれているものと私は、解釈しています。
しかし、主人に言わせてみれば、” お〜きなお皿に、ちょこっとだけお料理がのっていて、お皿の空間にソースで絵を描いてごまかしている料理 ” という、身も蓋もない、なんともデリカシーのない表現をします。
あんな料理は、本当のフランス料理ではない!ナンセンスだ!”と言うのです。
まったく、彼のことは、知れば知るほど、古くさいフランス人なのだと思い知らされるのです。
彼の言う、フランス料理は、ひとつひとつのポーションがしっかりとあり、伝統的な作り方をしているお料理で、レストランのテーブルクロスは、白。ナイフとフォークは銀。
あくまでも古典的なものがお好みなのでした。(ちなみに彼の大好物は、coq au vin という雄鶏の赤ワイン煮です)
でも、それは、考えてみれば、彼が嫌いなのは、「ヌーベル」(新しい)なのであって、それは、なにも、「キュイジーヌ」だけに限ったことではなく、つまりは、古い、伝統的なものが好きなのです。
本にしても、重たいハードカバーのついた、私からすれば、百科事典のような本が好きで、本の裏表紙には、必ず、日付と自分のサインを記入します。娘に本を買ってあげたりしても、これまた、ご丁寧にパパから娘へなどと書き入れてしまいます。
手紙も自分のお気に入りの万年筆で手書きするのが好きだったり、きっちりと正装して出かけるのが好きだったり、子供にも小さい時から学校へ行くのにも必ず革靴を履かせることにこだわったり、(運動靴、スポーツシューズはスポーツをするときに履くものだと言い張ります)、骨董市のようなものを丹念に見て回ったり。
こうして書いていると、どこのおじいさんの話?と思うほどです。
何よりも食いしん坊ゆえの、「ヌーベル・キュイジーヌ」嫌いも、元を正せば、古いもの、伝統的なものが好きな、古典的なフランス人ということなのかもしれません。
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