2021年10月31日日曜日

夏時刻・冬時刻はなぜ、なくならないのか?

  


 

 1970年代に起こったオイルショックから、主にエネルギー消費の節減のために導入されたサマータイムの制度はフランスでは1976年から採用されています。

 しかし、サマータイムの導入から時が経過し、実際のエネルギー消費の節約は、0.5%〜2.5%と、大した節約にはなっておらず、むしろ、健康や事故に対するリスクの方が高く、この年に2回の時刻の変更を失くすという方向で欧州連合では議論が進められ、毎年のように、「これが最後のサマータイム・・」などと言われ続け、本来ならば、欧州連合は2021年に夏時間と冬時間の終了を予定していました。

 2018年には、欧州連合はこの慣行を終わらせることに賛成し、各国は夏時間と冬時間のどちらかを選択する必要があり、翌年に行われた国会の協議により、フランス人は夏時間を選択しました。

 しかし、それ以来、時間の変更についての議論は滞ったままで、未だ夏時刻・冬時刻を1時間ずつ進めたり戻したりする奇妙な慣行は続いています。現在、公的には、パンデミックのせいということになっていますが、EU加盟国にとって、この夏時刻・冬時刻問題は、議論すべき優先事項にはなっていません。

 これは近隣する各国が冬時刻を選択するか、夏時刻を選択するかの相違により、輸送手段などにおける非互換性が生まれ、どちらがどの国に歩み寄るかで摩擦が生じることを恐れていることが原因の一つであると言われています。

 ヨーロッパは地続きのために、国境を越えて通勤している人も少なくはなく、例えば、夏時間を選択したフランスと冬時間を選択したドイツの間を通勤している人は1日2回時計を変更しなければならなくなります。

 ヨーロッパ内を移動する航空会社や鉄道などの輸送事業者が時間の変更に伴う新しいスケジュールを適応させて設定するのには少なくとも18ヶ月はかかると言われています。

 ということは、たとえ、それが今、正式に決定されたとしても1年半先のことになります。

 夏時間から冬時間になる時は、1時間余計に眠れる日ができるため、比較的、慣れやすい時間の変更ではありますが、日本との時差を考えた場合には、時差が7時間から8時間と長くなるために、日本との仕事はしにくくなることになります。

 欧州連合各国が夏時間・冬時間を自由に選択することなどせずに、単純にもともとあったサマータイムなしの時間に戻すということで統一すれば良いものを妙なところで、自由に選択できるなどという融通を効かせるために、この1年に2回の時間の変更はいつまでもなくならないのです。

 私は、この時間の変更が苦手で、たったの1時間の変更ながら、身体がそのリズムに慣れるまでに1週間近くかかります。

 この区切りをうっかり忘れていて、(日曜出勤をしたにもかかわらず・・、)(時間の変更は土曜日の夜から日曜日にかけて行われます)1時間早く出社してしまったこともありました。

 会社に着いた時点で何となくおかしいことに気付いてハッとして、近くのバス停で本を読みながら、1時間待ったという苦い経験があります。まあ、これは単なる自分の不注意であったのですが・・。

 時間の変化が健康と体調不良、そしてそれがもたらす交通事故などへの悪影響にもかかわらず、この主題はEUにとって優先事項ではありません。

 現在のフランスでは、この年2回の時間の変更が交通事故の増加や高齢者、子供の睡眠障害を引き起こし、この時間の変更から生じる時差ボケは、不安定な気分を引き起こし、人々の健康に重要な影響を及ぼしていることが問題視されており、特に冬時間への変更は、日照時間の減少と、気温が低下する時期に重なるため、健康管理はさらに複雑になり、ことにパンデミックを背景に、すでにうつ病や不安の症例が増加している現在では、問題は深刻です。

 欧州連合という連合ではありながら、違う国の集まる連合は、やはり一つの国でのような決定事項のように簡単には行かず、とりあえず、この時間変更の問題では連合できていないのです。

 1時間とはいえ、同じ国内で1年に2度の時差ボケを引き起こすこのサマータイムの制度、もういいかげんやめてくれないかな・・とず〜っと思っています。


サマータイム サマータイム廃止


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2021年10月30日土曜日

医療介護者・看護士不足のための病床閉鎖の増加

   


 科学技術評議会によれば、現在、フランスの公立病院の病床は医療介護者・看護士の不足から、その20%あまりが閉鎖状態に追い込まれていると言われ、このことに対する早急な対応が求められています。

 これは、もちろん今回のパンデミックにより極端に労働条件が悪化したことが引き金を引いてはいますが、そもそもこの問題はコロナ以前からの長期にわたる問題であったことが問題を根深くしています。

 そもそも、医療介護士・看護士の仕事は、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われる職業でもあり、敬遠されがちな上に、フランスの医療介護士(看護士)の給与は他のヨーロッパ諸国と比較してもかなり低水準。

   

EU・OECD加盟国の看護士給与比較

 その上、介護士・看護士という仕事は、30年後もキャリアアップが望みにくい職業であることも将来を見据えた時に、理想と現実とはかけ離れていき、厳しい労働環境下での精神的、肉体的なストレス、疲労が蓄積されていくと、離職、転職に繋がっていってしまうことが少なくないのです。

 2020年10月の時点で全国看護士団は、看護士の10人に4人が、5年後、この職業に止まっているかどうかわからないと述べたことを明らかにしています。実際に今年に入ってからは、1,300人の看護師の辞職が確認されています。

 それに加えて、介護士・看護師を目指す学生の中途退学もこのパンデミック下に急増し、フランスが医療崩壊を起こした時点で看護学生が大量に動員されたことから、実際の職務につく以前に、あまりに厳しい病院の現場を目の当たりにしてトラウマ化してしまったことも大きく影響していると言われています。

 パンデミック以前からすでに人員不足だった医療現場において、大きな志を持って看護の勉強をしていた学生にとって、最初の現場があまりにショッキングなものであったことは間違いありません。

 人を救いたいという高い志を持ち、社会に不可欠な大切な仕事をしている、しようとしている人々が安い賃金と劣悪な労働環境で耐えられなくなり、報われない状態が長く続いていれば、バーンアウトしていくのも当然です。

 昨年の今頃は、感染者が急増して、再度、夜間外出制限や外出距離の制限のロックダウンが行われていた時期です。

 あの頃に比べれば、感染状況はかなり改善してはいるものの、それでも辞職する人が後を経たないのは、問題がパンデミックだけに起因しているわけではないということです。

 フランスでは、医者を志して医学部に進学したものの、医学部途中で医者になることを断念した人が看護士になっているケースも少なくないため、看護師になって、実際の現場での仕事に臨んで余計に焦燥感を感じてしまうという事態にも陥りがちになります。ツイッターなどのSNSでも看護士が辞職を告げているメッセージが広く伝えられています。

 転職ということがあまりマイナスにとらわれていないこともこの状態をさらに悪化させています。

 この医療介護者・看護士不足への中期的な解決策として、「とにかく学生の数を増やすこと、より多くのトレーニングを行う必要がある」と語っている人もいますが、仕事同様にプライベートを大事にする人々が、この現在の介護者や看護師が耐えきれずに辞職していく現状を踏まえて、そのような職業に着くための学校を選択するとは考えづらく、学生の数を増やすためには、現場の労働環境・待遇の改善が先なのではないかと思います。

 昨年から比べると改善しているコロナの感染状況ではありますが、ここ1週間ほどで、コロナウィルスによる入院患者は14%ほど上昇しています。

 マルセイユの病院では、市内にある2,700床の病床のうち、16%の448床が閉鎖されており、感染が再び増加し始めている現在から冬にかけて、どうやって過ごすのかわからない、絶望の危機に瀕していると語っています。

 コロナウィルスのピーク時には、集中治療室の占拠率が〇〇%などということがしきりに報道されていましたが、現在では閉鎖されている病床が〇〇%などと言われるようになり、また、別の意味での不安材料が生じてきました。

 労働者の権利の主張が激しいフランスで、なぜ、このセクターはいつまでも改善されないのか?

 医療現場という社会にとって、必要不可欠な場所で、一生懸命働いている人々が報われない・・そんな状況は改善してもらわなければ困ります。


医療介護者・看護士不足 病床閉鎖


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2021年10月29日金曜日

フランスの食品廃棄物救済アプリ Too Good To Go 


「Too Good To Go」で3.99ユーロで購入した「PAUL」のパン


  最近、環境問題の一貫として、食品廃棄物の問題が取り上げられ、スーパーマーケットなどでも賞味期限間近、または、廃棄処分になっている食料品を食品廃棄物防止の黄色やオレンジ色のラベルが貼られて、大幅に値段を下げて、売られるようになりました。

 これは政府の「アンチガスピヤージュ(無駄廃止)」の呼びかけによるもので、大きな成果を上げてきました。

 そして、ここに来て、食品廃棄物を減らし、それをアプリを使って、利用できるサービスがフランスでは急拡大しています。

 それは「Too Good To Go」という携帯アプリで、自分の希望する地域の食料品を扱う店舗で、その日に売れ残る商品を大幅な割引価格で購入することができるシステムです。「Too Good To Go」をフランス人は「トゥグトゥゴ」と縮めて呼んでいます。

「フランスのToo Good To Go のサイト・ここからダウンロードできるページに飛べます」

 これは、実によくできたシステムで加盟店はその日に売れ残るであろう?食料品を廃棄せずに約3分の1程度の価格で売り捌くことができます。

 まず、だいたい、引き取りに行く都合(時間が限られているために)の良い場所で店舗を探します。

  



 だいたい、この地域にはこれくらいの数の店舗が登録されているということが表示されます。

 毎日、毎日、同じ店舗で同じ数のパッケージがあるかはその日(あるいは前日)にならないとわからないので、その時点での購入可能な数が表示されています。

 


 加盟店には、パン屋さん、レストラン、スーパーマーケットなど、現在、フランスでは23,999の店舗が登録しており、前もって予約し、購入予約をして、アプリで決済を済ませ、当日の指定された時間(閉店間際の時間)に取りに行けば良いだけです。

 この加盟店には地域にもよりますが、「PAUL」や「Eric Kayser(エリック・カイザー)」などのパン屋さん、「Monoprix(モノプリ)」や「FranPrix(フランプリ)」などのスーパーマーケット、Starbucks(スターバックス)など、大手チェーン店も名前を連ねています。

 しかし、今のところ、スタバなどは、購入可能な商品を見つけたことはないので、環境問題に参加してますアピールのために名前を連ねているのか?などと思ったりもします。


注文すると届く画面


 ただ、中身については、選ぶことはできないので、例えば、中身は定価で〇〇ユーロ相当のものが入っているというだけで、その3分の1程度の価格が提示されています。

 先日、それなら一度、試してみよう!と、近くのパン屋さん「PAUL」で12ユーロ(約1,600円)相当のものが3.99ユーロ(約520円)というパッケージを購入してみました。「PAUL」ならば、日頃、売っている商品は大体把握しているし、何が入っていたとしても、ハズレはないと思ったからです。

 なんだか、何が入っているのかわからないので、ちょっとした福袋気分で引き取りに行くのが楽しみでワクワク・・。

 引き取りに行く時間は閉店直前の18時15分から18時30分のたったの15分だけに限られていて(これはお店によって違います)、私たちの他にはもうひと組、この「Too Good To Go」の引き取りに来ていましたが、普通のお客さんは、通常の定価で買い物をしています。

 商品は、その時間には、すでに袋に入って用意されており、アプリを提示するだけで引き取ることができます。

 さてさて、中には何が入っているか?と、家に帰るとさっそく、中身を広げてみました。

 中には、バゲットが1本、スモークサーモンのサンドイッチ、オリーブのパンにオリーブオイルとトマト、モツァレラチーズの入ったサンドイッチ、ブレッツェル、オリーブとベーコンのフガス各1個、ベニエ(チョコレート)2個、シューケット6個、シリアル入りの炭のプチバゲット、ジンジャーブレッドなどなどと盛りだくさん! 余裕で12ユーロ以上の内容です。

 これはお買い得!そして、普段、自分では試すことがないものを試すことができるので、思わぬ発見もあり、これなら、今度、買ってみようか?などと思うきっかけにもなります。

 しかし、逆にこれを知ってしまえば、もう二度と「PAUL」で定価でパンを買わないのではないか?などと思ったりもします。早々に、バゲットなどは冷凍保存し、日持ちしないサンドイッチを真っ先に頂きました。

 けれど、まだまだ充分に美味しく食べられるものを今までは廃棄していたのか?と思うと、とてもお買い得なお買い物をしたと同時に無駄を減らすことに貢献できた!という都合の良い満足感も感じます。

 このアプリはデンマークで発祥したアプリのようですが、このようなアプリがもっと世界中に広がると良いなと思っています。


食品廃棄物救済アプリ Too Good To Go

 

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2021年10月28日木曜日

パリで見つけた美味しいお蕎麦屋さん あぶりそば Abri Aoba

  

フランス産の鴨の鴨南蛮そば フランス人は鴨が大好き

 

 お寿司、ラーメン、うどん・・今やパリで和食のお店は珍しくなくなりましたが、そんな中でもあまり見かけないのがお蕎麦屋さんです。

 私はお蕎麦が大好きで、日本で仕事をしていた頃は、お昼というと週2〜3回はお蕎麦というオヤジのような生活をしていました。

 パリに来てからは、そもそもお蕎麦屋さんには全く期待をしておらず、ずいぶん前にサンジェルマン・デ・プレの方にお蕎麦屋さんができたという話を聞いたのですが、あまりの高価さに覗いてみる気にもならず、パリでお蕎麦といえば、家で乾麺を茹でて食べるというくらいでした。

 しかし、先日、「何か美味しいものは・・・」と探していたら、パリにもいつの間にかあったではありませんか? なんと、ミシュランのビブ・グルマン(Bib Gourmand Michelin)(ミシュラン星付きレストランほど高価ではなく、比較的お手頃価格の厳選されたお店)に載っているお蕎麦屋さんが・・。

 これは行かないわけにはいかない・・とさっそく、行ってきました!

 それは、こじんまりとした、さほど目立たない外観でお店の看板も出さずに(看板は敢えて出さないという方針らしい)やっているAbri Soba(炙りそば)という名前のお店で、行列を避けて、なんとか昼1時前には・・と思っていたにもかかわらず、すでに少し行列ができていたことでそのお店だとわかったほど、目立たずに営業しているお店でした。

  

目立たず、看板もなく、ちょっと見には何のお店かわからない外観

 店内に入るとすぐに目に飛び込んでくる、吊るされたワイングラスやその上下にずらっと並んだ日本酒やワインの酒瓶が酒飲みの目にはことさら嬉しく、一見すると、バー?飲み屋さん?と思われる店内です。

 

これだけ見たら、とてもお蕎麦屋さんには見えない


 店内はテーブル席30席ほどとカウンター席が6席で、満席。お店の規模のわりには店員さんは8人もいて、スタッフは全て日本人、お客は私たち以外は全てフランス人という珍しい光景です。

 ここでは、ナイフやフォークは提供していないのか?お客さんたちは、器用にお箸を使っていましたが、中には上品そうなマダムがまるでナゲットかフライドチキンのように、天ぷらを手で摘みながら、お蕎麦を食べている様子なども見られてそれはそれで、微笑ましい感じです。

 

一見、日本か?と思うような座席、座席の下には荷物を入れるカゴまで!


 入り口の扉から内装まで、全て木目調で揃えられ、店内のあちこちに見える細かい装飾品も味のある日本のもので飾られています。


可愛らしい日本の小物とともにフランスのレストランには珍しい黒七味


 さすがに日本人だけのスタッフのサービスは、フランスではあまり見られないサービスが隅々まで行き届いており、お店の人の対応にはいちいち、さすが・・日本人・・と嬉しくなります。

 昼のメニューはそれほど種類は多くありませんが、どちらにせよ、そんなに食べられるわけでないので、充分です。

 お蕎麦には、冷たいお蕎麦と暖かいお蕎麦があり、ざるそば、おろしそば、きつね、ごまだれ、天ぷら、月見、山菜、鴨などがあります。お値段は9ユーロ(約1,200円程度)(ざるそば)から17ユーロ(約2,200円程度)(天ぷらそば)の間なので、パリでの外食としては、このクォリティでこのお値段はすごく納得のいく価格です。

 それぞれのお蕎麦には、プラス6ユーロでサラダ、ご飯(炊き込みご飯(ひじきや枝豆などが入っている)かマグロとサーモンの巻き寿司が2個)の他に、唐揚げか野菜餃子、日替わりのお惣菜のいずれかのを選ぶことができます。

 

お昼のメニュー

 お蕎麦以外には、鶏の唐揚げ、とんかつ、鮭の西京焼きのお弁当(定食)があり、ご飯、お味噌汁、漬物、野菜餃子がついてきます。

 寒くなってきたので、暖かいお蕎麦が食べたくて、天ぷらそばと鴨南蛮そばを頼んだのですが、天ぷらは別盛りでカラッと揚がったサクサクの天ぷらが楽しめます。

 お蕎麦はお店で作っている特製のお蕎麦で、比較的細めの麺は滑らかで、舌触りも良く、久しぶりのお蕎麦に舌鼓をうちました。


天ぷらそば 天ぷらは海老2本とエリンギとナス

 大きなぷりぷりの海老の天ぷらも、鴨の脂がじわっとつゆに染み出している鴨南蛮にも大満足、お蕎麦に載せられている刻みネギの細かさと小さな三つ葉にまで感動しました。強いていうならば、おつゆは若干、甘めです。


 


 プラス6ユーロでついてきた、巻き寿司は赤酢の酢飯で巻かれており、サラダには水菜、大根のつまなどが合わされ、鰹節と醤油ベースのドレッシング、唐揚げには甘だれがうっすらとかかっており、唐揚げに添えられたサラダには胡麻ダレがかかっています。

 その一つ一つの小さな小皿にも細かい心遣いが感じられ、丁寧に作られていることがわかります。

 その上、どんなものかわからず、一人分しかプラス6ユーロのメニューにせずに二人で分けあって食べていたら、頼まずとも、唐揚げは二人分に切り分けてくれる心配り。

 

お水を入れてきてくれるボトルも可愛い

 お水一つをとってもなくなったら、すぐに次のボトルを持ってきてくれました。(日本ならあたりまえのことですが、フランスでは決してあたりまえではありません)

 こんな感じのお店なので、夜になると、メニューも増えて、ちょっとつまみながら飲める居酒屋さんのようになり、大賑わいになるようです。

 このお店で出てくるものなら、際限なく飲めそうだと思いながら、次回はぜひ、夜に来たいものだと思ったのでした。


⭐️Abri Soba Paris あぶりそば パリ

10 Rue Saulnier 75009 Paris  月曜休 12:00~14:00, 19:00~22:30 日曜夜のみ

メトロ⑦番線 Cadetより徒歩3分、⑧⑨番線 Grand Boulevardsより徒歩7分


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2021年10月27日水曜日

眞子さまのご結婚報道で見えるフランスの日本という国の見方

 


 「日本の眞子内親王の物議を醸す結婚」「眞子内親王は長い論争の末に結婚した」「眞子内親王の結婚式が帝国の伝統を破る理由」「眞子内親王は4年間の論争の末、ついに婚約者と結婚する」「4年間待った後、眞子内親王はついに結婚しました!」こんな見出しで、フランス大手各紙は眞子さまのご結婚を報道しています。

 フランスでのこの結婚に関する報道は、概ね以下のとおりです。

 天皇陛下の姪にあたる眞子さまは、一般人の小室圭氏と結婚しました。この結婚は婚約発表の3ヶ月後に、夫となった小室圭氏の母親が400万円(3万ユーロ)の返済を拒否したことが公になって以来、日本では物議を醸し続けてきました。

 このスキャンダルは日本社会の非常に保守的な層からは完全に否定的な目で見られていました。

 そのため、宮内庁はこの結婚を延期し、小室氏はニューヨークに旅立ち、勉強を続けていましたが、結婚が正式に決まったタイミングで日本に帰国。4年が経過し、結婚が決まった状況においても空港に降り立った際の彼のポニーテールでさえも非難の的となり、とうとう結婚直前になっても彼らの結婚への反対の声は収まることがありませんでした。

 日本でのこの結婚に対する論争は、英国のメーガンとハリーに匹敵するほどであると報道しています。

 このように、結婚までの経緯については、日本での報道とほぼ同じではありますが、この報道を機に、眞子さまが心的外傷後ストレス障害であると発表されたことから、過去に現皇后・雅子妃殿下が長い間うつ病を患ってきたことなどを例に挙げ、日本のマスコミは、皇族のわずかな粗さにも態度を緩めることはないと指摘しています。

 結果、「多くの人がこの結婚に納得していない」と判断した皇室側は、結婚にまつわる皇室での伝統的な儀式を全て中止し、まるで平和な生活への代償を支払うかのように、結婚時に支払われるはずの1億5,200万円(110万ユーロ)を辞退する結果となり、これは、戦後、日本史上初めてのことであると伝えています。

 また、結婚が単なるラブストーリーの延長ではなく、家族間に関わる契約である場合が多い日本という国で、彼女の父親が結婚を受け入れることは、何世紀にも渡る皇室の伝統や習慣を損なうことになろうとも、娘の幸福を望む秋篠宮文仁親王の皇室の変化への願望とも解釈することができ、この願望はこの世代の日本人の両親によって広く共有されつつあるものでもあり、眞子内親王の結婚は、若い日本人女性の開放の強力な象徴になる可能性があるとも伝えています。

 日本の皇位継承は男性皇族のみに引き継がれるもので、女性の皇族は、結婚後、皇室を離脱することが、定められています。皇室の女性を結婚後も皇室に留めおくことは論じられてはいるものの、強硬派の支持者や伝統主義者は、女性が統治できるようにするための措置に激しく反対しているため、制度の変更は今後長い間続く可能性があります。

 皇室を離れた経緯は異なるとはいえ、ニューヨークに移住するこの元皇族の夫婦は、必然的に王室を離脱して異国に移住したハリー王子とメーガン妃との比較が行われ続けるだろうと予測されています。

 気になるのは、いくつかのメディアでは、国民の多くが賛同しないがゆえに、眞子さまが皇室を離脱したという報道があることです。

 いずれにせよ、ニュースの内容そのものよりも、日本古来の伝統的な皇室の異例な結婚というこのニュースを通じて、フランス(海外)からは、日本がこんな風に見えているのか・・ということを垣間見える興味深い一面もありました。


眞子内親王ご結婚 日本の皇室


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2021年10月26日火曜日

フランスでの婦人科検診 子宮頸がん検診

 


  

 毎年のように婦人科検診の通知が来ていたにも関わらず、ずっと放置したまま、ここ数年は、それにロックダウンなどが重なり、できる限り、病院には行かないことにしていたため、これまで私がフランスで婦人科検診に行ったのは、23年間でたったの一度だけでした。

 もうそれは、10年以上も前のことだったので、記憶も朧げで、ひたすら不快で痛かった記憶しかなく、そのうちの一つは乳がん検診だったと思うのですが、大してありもしない胸を無理矢理機械で挟んで、レントゲン?を撮ったのが、もう悲鳴をあげるほど痛くて、「これは、検査で病気になりそう!」などと思い、「もう一生やりたくない!」と思ってしまったのです。

 以来、検査の通知が来ても、ロクに中身も見ずに、捨ててしまうことはないものの、なんとなく気にしながらも、いつか、時間的にも、精神的にも余裕ができたら行こうと、束のように通知が溜まっていき、そのうち、もう封筒を見ただけで、「あっ!これは婦人科検診の通知だ!」とわかるくらいになり、通知に添えられている手紙にも「あなたは、ここ何年も検診を受けていませんが、検診を受けることはとても大切なことです」などと記載されるようになり、歳を重ねるにつれて、普通に生活しているだけでは健康を保てないことを痛感しつつあり、少々、不安を覚えるようにもなってきました。

 先日、いつも薬を処方してもらう、かかりつけの医者のところに行ったときに、ついでに届いていた通知を持っていって、相談したところ、「それは、やらなきゃ!前回は、いつやったの?」と言われ、「もういつだったか覚えていないくらいずっとやっていない・・」と言うと、「そんなはずはない!絶対、5年以内にはやっているはず・・」などと断言されて、なんだかそれ以上はもう言い返すのも憚られて、婦人科を紹介してもらったのでした。

 彼女が知っているお医者さんなら、少しは安心か・・と自分に言い聞かせて、予約を入れて、数十年ぶりに婦人科検診に行ってきたのでした。

 婦人科検診、(今回の通知は子宮頸がんの検診)は、厚生省(公衆衛生局)が2018年に開始した子宮頸がんプログラムの一環で、その通知を持って行けば、検査は無料でやってくれます。

 このプログラムは、25歳から65歳の全女性を対象としており、子宮頸がんの早期治療を行い、死亡率を減らし、また情報のフォローアップとケアの質を向上させることを目的としており、全ての女性が全国の子宮頸がん検診への平等なアクセスを保証しています。

 年齢に応じて、3〜5年に一度の検査が推奨されていますので、これに応じて、この間隔で通知が送られてくるものと思われます。(私の場合、ずっと受けていなかったので、毎年のように送られてきていたのだと思います)

 この通知を受け取ったら、地域の婦人科に予約を取り、検診票を持参して、検診を受けます。この検査の実施の記録と結果はこのプロジェクトを担当する地域ガン検診調整センター(CRCDC)に送信されます。

 この検診に関しては、通知と健康保険カート(Carte Vital)を持参しさえすれば、前払いなしで国民健康保険により100%カバーされます。(しかし、一応、レシートのようなものをくれるので、それに記載されている内容によれば、かかっている費用は30ユーロ(約4,000円程度)ほどです。

 フランスでは、がんの治療に対しては(特別な療法は除く)100%、国で補償されるので、早期に発見して、がんを回避することは、結果的に国の医療費節減にもつながるのです。

 年齢、妊娠、出産の経験、出産時の手術について、健康状態(既往症など)について、家族(家系)の病歴、アレルギーなどについての簡単な問診の後に、内診が行われ、子宮頸部からのサンプルが採取されます。

 多少の痛みと不快感はあるものの、前回感じたほどの嫌悪感はありませんでした。内診・サンプル採取は正味5〜10分ほどで終わります。

 採取されたサンプルは、宛名のついた封筒に入れてくれるので、それを自分で切手を貼って郵送します。

  

サンプルは自分で郵送するところが、いかにもフランス


 一度、検診を受けると個人個人のデータファイルが作成され、地域ガン検診調整センター(CRCDC)がフォローアップし、今回の結果とともに今後のデータもそれに追加される形で保存されます。

 このデータは、フランス公衆衛生研究所やがん研究所(INCa)など、これらのミッションを担当する研究所で共有され、がん制御システムを評価、研究を実施するために、国立がん研究所の腫瘍学データプラットフォームに追加され、ナショナル・ヘルスデータシステムのデータとの照合されます。

 長いこと放置して、検診を受けなかったくせに、こんなシステムを知ってみると、自分の健康維持だけでなく、自分の検査が、国のがん研究に貢献しているようで、少し嬉しい気分です。

 ただし、データ保護規則(RGPD)およびデータ保護法に基づき、このデータ処理へのアクセスを拒否する権利もあり、自分の権利が尊重されていないと感じた場合は、CNILに苦情を申し立てる権利があります。

 本人には、3週間後くらいに、サンプルを送った検査施設から直接、結果が送られてくると言うことです。

 長いこと気にかかりつつも放置してあった検診をようやく受けて、3週間後に受け取る通知に問題なければ、積年の気がかりが解消され、ようやくホッとできることに、なんだ・・もっと早くやっておけばよかった・・と調子のいいことを思った私でした。


婦人科検診 子宮頸がん検診


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2021年10月25日月曜日

燃料費の急激な高騰のためにフランス政府が緊急に支払う100ユーロのインフレ補償手当

   


 パンデミック以来、ロックダウン等により、停滞していた経済が想像以上の速さで回復しつつあったフランスで、今回の燃料費を始めとする物価の急激な上昇は、見過ごすことができない問題として急浮上してきました。

 日常生活に直結するこの急激な物価の上昇にフランス国民がおとなしくしているはずはありません。

 すでに、先週末には、夏以来、続いてきた「ヘルスパス反対」のデモとともに、黄色いベスト運動が、この燃料費・物価の上昇に対するデモを開始しています。

 フランス政府はこれを棄ておけない状況であると判断し、カステックス首相は、このインフレに対応する措置として、「月収2,000ユーロ(約26万円)未満の国民に対し、100ユーロ(約13,000円)のインフレ補償手当を支給する」ことを発表しました。

 この100ユーロの「インフレ補償手当」支給には、3,800万人のフランス人が該当しています。

 カステックス首相は、「価格の上昇に直面して、政府は最も公正で効率的なシステムを選択した」と説明しています。これには、就業者、従業員、自営業者、失業者だけでなく、奨学金を受けている学生、年金生活者などの多くの人が対象になります。

 このインフレ補償手当は、家族の構成や車を所有しているかどうかに関わらず、1人当たり100ユーロが支給されます(非課税)。この手当は個別に支払われるため、例えば、夫婦で双方が2,000ユーロ未満の収入の場合には、200ユーロが支給されます。

 この2,000ユーロの基準額は、税務世帯の規模ではなく、1人あたりに決定されたもので、労働者の半数以上と退職者の70%をカバーしていることになります。また、私は都市部に住んでいるので、さほど車の必要性を感じることはありませんが、フランスでは、現在、84%の世帯が車を所有しているため、特に燃料費の高騰は多くの世帯にとって、切実な問題であるのです。

 すでに高騰している物価のため、この措置は緊急性を帯びていることから、この資格に該当する者には、特別な申請等の手続きは必要なく、2021年12月から2022年2月の間に、自動的に支払われます。

 しかし、これは、恒久的な補償ではなく、差し迫った状況にある中産階級への財政的な後押しであることは言うまでもありません。

 100ユーロ支給の価格について、政府は、車を頻繁に利用する人の値上がり分の費用を80ユーロ、追加の20ユーロは他の物価上昇(食品等)のインフレを補うと見積もっています。

 この緊急措置に必要な金額は38億ユーロとされており、そのための資金として増税が心配されていますが、政府は、このインフレ補償手当を行うことで、消費を停滞させることなく国民が消費することで、価格が上昇している分、追加になる消費税で10億ユーロは回収できるとしており、残りの28億ユーロについては、2021年の経済回復率が6.25%に上方修正されたことにより、特に増税することなく、回収可能な金額であると説明しています。

 フランスのお役所仕事は、本当にトラブルも多く、時間もかかるのが普通ですが、税金やお金に関することは、きっちり漏れなく請求も来るし、支払われるべきものは、きっちり支払われます。

 ロックダウン中の営業停止などのための補償金なども、大きなトラブルが起こったという話を聞くこともなく、早急に支払われていました。

 これは、全ての情報が全てオンライン化され、個人個人の納税状況などが全て把握されているからこそ可能だったわけで、今回の「インフレ補償手当」も同じように支払われるものと思われます。

 同じお役所でも税務署(財務省)だけ、どうして、こうもきっちりしているのだろうか?と思いますが、徴収される場合だけでなく、支払ってくれる時には、ありがたいことです。

 決して黙って我慢はしない国民を抱えたフランス政府は、この燃料費の高騰により、2018年に起こった過激な「黄色いベスト運動」の二の舞にならぬよう、即刻に緊急措置をとったのだと思われます。

 放置すれば、物価の上昇による経済停滞だけでなく、暴徒化するデモにより、さらに状態は悪化する可能性を秘めているのです。

 それにしても、この対応措置の速さ!スゴいです。


フランスの補償 燃料費高騰


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2021年10月24日日曜日

フランス政府からの3回目のマスクの無料配布

   

左から1回目、2回目、右端が3回目に配布されたマスク


 パンデミック以前から、日本からの観光客にマスクをしている人を見かけるにつけ、フランス人から、「なんで?日本人はマスクをしてるの?」と半ば嘲笑的に言われることがありました。「別に、みんながマスクをしているわけではないけど、衛生的に気遣っていたり、花粉症の場合なんかもマスクをするかも・・」などと、適当な返事をしながら、ちょっとバカにされている気分であまり気持ち良いものではありませんでした。

 医療従事者や特別な仕事以外には、マスクをする習慣がなかったフランスで、マスクは病気を連想させ、美観?を損ねるため、個人的には、パンデミック以前は、フランス人が街中でマスクをしているのを見たことがありませんでした。

 ある時、会社内の改装工事をしているときに、あまりに社内の埃がひどく、慌てて誰かがマスクを買いに行って、今はどこでも見かける大きな箱入りのマスクを買ってきた時には、フランスの薬局にもマスクを売ってるんだ・・とビックリしたくらいでした。

 それがパンデミックが始まって、あっという間にロックダウンになり、非常時用に備蓄してあったはずのマスクが経年劣化して廃棄されたまま、補充されていなかったことから、医療施設でさえもマスクが不足し、急遽輸入されるマスクが国賓待遇で警察車両に誘導されながら、政府の管理のもとに運ばれるような時もありました。

 この頃は、まだロックダウン中だったので、ほとんどの人がほぼ外出できない状態でいたので、マスクは薬局でも一般人は購入することはできませんでした。(医療従事者ややむを得ずに人と接する必要のある仕事関係の人優先)

 まさに「マスクを笑うものはマスクに泣く」の状態でした。

 当初は、マスクの必要性をそれほど理解していなかった国民に対して、フランス政府は、「医療従事者でなければ、マスクは必要ない」などと言ってもいました。

 そんなフランスでマスクが配布され始めたのは、日本で「アベのマスク」が騒ぎになっていた頃でもあり、ロックダウン解除が決まった2020年の5月のことでした。

 この時、私のところに届いたのは、市役所からで、ロックダウン解除のタイミングには、国単位ではマスクの供給が間に合わず、市役所が急遽、布で作らせた、色は良いけど、ペラペラのマスクでした。

 あれから、何度かの感染の悪化、減少を繰り返し、その度にマスクの着用が義務化される場所が拡大され、今年の5月に2度目のマスクが今度はフランス政府から届きました。

 それは6枚セットの白い洗えるマスクで前回よりも、だいぶ、しっかりしたものでしたが、しっかりしすぎて、逆にちょっと息苦しい感じでギャザーも少なく、あまり使い勝手が良いものではありませんでした。

 これは、営業が停止されていた店舗や美術館や映画館などが再開し始めたタイミングで、外出は許可するけれど、マスク着用は義務化された状態であったのです。

 あれから、夏のバカンスとほぼ同時にフランスでは、「ヘルスパス」(ヘルスパスによる飲食店や娯楽施設等の入場制限)の制度が取られ、ワクチン接種率も急激に上昇し、それにより、感染状態も減少し、集中治療室の患者数もかなり減少していきました。

 今では、フランスでは、ほぼ日常の生活を取り戻し、屋外でマスクをしている人はかなり減りましたが、相変わらず、公共交通機関や飲食店以外のヘルスパスの提示が求められる場所などの屋内空間では、マスク着用が義務付けられています。

 そして、先日、パンデミック以来3回目の政府からのマスクが届きました。今では、どこでもマスクは買えるようになりましたが、義務化しているためなのか?まだまだ気を緩めてはいけないという警告なのでしょうか? 

 感染が減少したため、ヘルスパスはもう撤廃しても良いのではないか?という声も上がり始めている中、政府は追加のマスクを国民に配布し続けているということは、政府はまだまだ慎重な態度を崩していないという表れでもあります。

 政府からのマスクの配布はこれで3回目になりますが、度を重ねるごとに、クォリティもアップし、今回も6枚セットの洗えるマスクですが、かなり使いやすいように改良された自国製のリサイクル可能なもの。

   

マスクのチェックシート

 4時間ごとにマスクは交換してくださいとか、1枚に付き、50回(洗って)使用可能な6枚分のマスクのチェックシートまでついています。これでマスクをチェックしながら、マスクを使用する人がいるかどうかは、疑問ですが、つまり、1日2枚使うとして、150日間分のマスクだということです。

 感染が減少したとはいえ、ここのところ、若干ではありますが、上昇傾向に転じ始めたフランス。先日、フランスは議会で「ヘルスパス」は、必要であれば、2022年7月31日までは延長できる法案が採択されました。

 ここのところ、ワクチン接種の拡大で感染が収まりかけたに見えていた世界の国々でも、イギリス、ロシアなどでは、急激な感染者の増加が記録され、ドイツでさえも感染者の増加を発表しています。

 フランスは「ヘルスパス」で救われ続けるのか? それとも、これまで常にイギリスの数ヶ月後に同じような状態になって感染増加している前例を見る限り、またイギリスと同じ道を辿るのか? いずれにしても、政府が憂慮してマスクを送ってくるように、まだまだ、気を緩めることはできないのが現状のようです。


マスク無料配布


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2021年10月23日土曜日

海外での在外選挙投票には、事前に在外選挙登録が必要 そしてそれは2ヶ月もかかる

   

パリの日本大使館はここから歩いて7分程度のところ


 これまで私は、「在外選挙制度」というものがあることを知りながら、なんとなく忙しさにかまけて、日本の様子もよくわからないし・・やり方もわからないし・・と、なし崩しに、ここ20年以上も選挙の投票はせずに過ごしてきてしまいました。

 このパンデミックや日本の様子を見るにつけ、私も日本国民として、少しでもできることはしなくては・・と思うようになり、近々、日本で選挙があるのを機に、「在外選挙」の投票をしてみようと思い立ったのでした。

 総務省の在外選挙制度についてのホームページ(総務省・在外選挙制度について)もありますが、具体的に必要な書類などを直に聞いてみようと在仏日本大使館に電話してみると、まず、ほっとした何とも日本人らしい丁寧で優しい応対に思いの外、ほっこりさせられたのでした。

 しかし、在留届さえ出していれば、簡単に在外選挙の投票ができると思い込んでいた私には、ショックな話で、在外選挙で投票するためには、まず、「在外選挙登録」というものが必要で、在外選挙人名簿の登録申請書を提出しなければならず、実際に申請が受理されてから、登録証を受け取ることができるまでには、約2ヶ月間かかるということで、「今回の選挙には間に合いませんよ」と言われてしまいました。

 申請した書類は、外務省経由で、日本で最後に居住していた市町村の役所に送られて、住民票が抜かれていることなどを確認してから、発行されるものなのだそうです。

 しかし、大使館の担当者は、「今回は間に合いませんが、来年は参議院選挙もありますから、申請はされておいた方が良いですよ!」と勧めて下さったし、まだまだ、フランス生活も続きそうなので、せっかく来たのだから、申請しておくことにしました。

 最近では、日本出国前にも事前に申請することができるそうですが、私が日本の住民票を抜いたのは、かれこれもう20年以上も前のこと、しかし、フランスで在留届を提出済みであり、住所を変更していなければ、パスポートさえあれば申請することができるのです。(在留届を未提出の場合は、現在の住居の滞在を証明する電気料金の請求書などの住所が記載された書類が必要)

 また、住民票を抜いているのに、どこの区役所?と思いきや、自分が出国前に最後に居住していた市町村が管轄になるのだそうです。申請書には名前、生年月日、性別、フランスでの住所、日本から出国した年月日、日本で住民票に記載されていた最終住所、連絡先などを記入するようになっています。

 私が日本の住民票を抜いたのは、フランスの前にアフリカに行った時点の大昔の話、詳しい日にちなどは、古いパスポートを調べればわかるのでしょうが、とても思い出せませんでしたが、大体でいいですよ・・と仰るので、そのとおりに・・。

 私は、フランス国籍を持っているわけではないので、フランスでも選挙で投票する権利はなく、長らく日本の選挙にも参加していなかったので、かれこれ四半世紀近くも選挙の投票というものをしないまま過ごしてきてしまいました。

 在外選挙登録申請をするのは日本大使館ですが、大使館なんて、あんまり縁がなかったなと思いつつも考えてみれば、ここ20年以上の間には、パスポートの書き換え(自分の分と娘の分)、娘の日本の教科書の受け取り、相続手続きのために必要な書類の申請などなど、ざっと数えただけでも、これまでに50回近くも行っています。

 パリのフランス大使館は、シャンゼリゼにほど近いとても良い場所にありながら、これまで、大使館に行くときには、子供の送り迎えや仕事があったために、昼休みを抜け出して(といっても昼休みは大使館も昼休みのために昼休みをずらしてもらっていました)、全速力で走って行って、走って帰るという慌ただしさで、周囲の景色を楽しむような余裕はまるでありませんでした。

 あらためて、久しぶりに平日の昼間に行ってみると、凱旋門からふらふらと歩くと気持ち良いことこの上なく、また、大使館は嘘のように空いていて、申請もあっという間に済みました。現在は、日本に行くためにビザを申請する人などもほとんどなく、空いているのも当然なのかもしれません。

 この大使館の空いているタイミングならば、在外選挙登録申請もいつもよりもずっとスムーズにできるので、今が狙い目かもしれません。(といっても、今回の選挙には間に合わないのですが・・)

 日本の投票率が低いことは、大変、問題だと思いつつ、海外にいるからといって、投票する権利がありながらも、放置したままに何もしてこなかったことを今、反省しています。

 フランス人は大変、政治にとても関心のある国民で、日常から政治の話題が上がることも多く、そんなフランス人に影響されたところもあってか、また同時にフランスと日本の政治を見比べたりしていることもあり、日本が少しでもより良い方向へ進んでくれることを願いつつ、遠くに住んではいても、日本人としてできることを少しでもしたいと思った次第です。

 実際に投票する際は、実際の日本の投票日よりも1〜2週間早くに投票するということです。

 在外選挙登録には費用はかかりません。また、申請時は本人が大使館(または領事館)に出向く必要がありますが、大使館や領事館の遠くに住われていて、そうそう容易には行けない方には、大使館が費用を負担して、郵送してくださるそうです。

 一度、申請してしまえば、それ以降は同じ登録証で投票ができるそうなので、時間に余裕がある際には登録されておくと良いと思います。

 これまで、私も色々理由をつけては後回しにしていたことですが、思っていたよりもずっと簡単に申請できたので、それをお知らせできればと思いました。


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2021年10月22日金曜日

日本のテレビ・情報番組の視聴者からの質問捏造問題を見て感じたこと

 

 

 日本の大手テレビ局の情報・報道番組が視聴者から寄せられた質問を捏造していたことが話題になっていて、さもありなんな話だと思いました。

 この場合、番組が取り上げたい問題に関して、「視聴者から寄せられた質問」として、あたかも視聴者の多くが同じ疑問を抱いているかの如く扱うから、こういったありもしない質問を捏造することに繋がるのであって、恐らく、その方が説得力があると報道する側が考えており、演出の一つの方法で、また、そのようなことが常態化していることから起こるわけで、取り上げたい問題に対して、率直に報道すれば問題はないものの、妙な話だとも思います。

 また、これがなぜ公に暴露されてしまったのかは語られていませんが、内部にこのようなやり方に疑問を持っていた人がいたということでしょうか?

 しかし、私は、ここのところ、何回か、日本のテレビ局の報道番組から、インタビューを依頼されたことがあり、その際に感じたことから、その程度のことは、当然、あるのだろうな・・という感じがしたのです。

 私がご依頼を受けたのは、最近では、ほぼ、フランスのコロナウィルス感染対策や現状についてのテーマが多いのですが、お話を伺って、実際に話が進んでいくうちに、大抵、インタビューをする以前から、シナリオは決まっており、悪い言い方をすれば、局側の言わせたいことをなんとか言わせようとする・・そんな感じを受けたことがあるからです。

 日頃から、私はフランスの生の声、現実を日本の方々にも知っていただきたいと思ってブログを書いているので、日本の方々にそれをテレビというもっと大きなメディアで知って頂けるのは大切なことだと思い、ご協力させていただきたいと思ったのです。

 実際の放送は、フランスからは見ることはできませんが、当然、編集されるであろうインタビューは気になり、友人に頼んで録画したものを送ってもらったり、たまたまYouTubeなどで、ライブ放送されていたりすると見ることができるので、実際に放送された内容も拝見しています。

 しかし、それは、実際のインタビューで話した内容から、都合よく編集されていることがわかります。長いインタビューでも、数分にカットされることは当然のこととして承知していますが、切り取られた部分のあまりの偏りに、少々、憤慨したのです。

 番組ですから、ある程度の仮設やシナリオは必要だとは思いますが、これでは、現地の声としてインタビューまでして、報道する意味があるのだろうか?と思ってしまいます。

 つまり、フランスの現地からの声ということで、そのシナリオに都合の良い部分だけを切り取って証言者にされているわけです。

 例えば、フランスのヘルスパスの問題なども、私はかなり好意的に受け止めており、インタビューの内容の大部分は「ヘルスパスの制度は良かった・・このおかげでワクチン接種も大幅に拡大し、感染減少に繋がって、安心して日常生活を送ることができるようになった」ということを話したのですが、実際に報道されたのは、否定的な面ばかりで、やはり、伝えたいことはブログで・・と思わないわけにはいきませんでした。

 どの局も同じというわけではありませんが、こんな経験をしたことから、今回の「視聴者からの質問捏造事件」の話を聞いても、そんなことは朝飯前だろうし、謝罪をしたからと言って、基本的な報道の体制は変わらないだろう・・と思ってしまうのです。

 考えてみれば、「視聴者からの質問」というやり方も、「現地在住の日本人の証言」も演出のひとつであることに変わりはありません。

 今回の問題は、たまたま公になった氷山の一角に過ぎず、そのような報道の方法を考えるとフランスにだってないとは言えないかもしれないし、なんとなく、報道というものを疑ってかからなければならないと思ってしまうのです。

 情報過多の世の中、やはり、多くのニュースや報道を自分自身で見て、何が真実で、自分はどう考えるのかを見つめていかなければならないのだと私は強く思うのです。


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2021年10月21日木曜日

今、パリで人気のうどん屋さん 喜心 Kisin

   

一番人気の天ぷらうどん うどんと天ぷらは別皿盛り


 パリで人気の日本食屋さんといえば、恐らく軒数でいえば、圧倒的にお寿司屋さんだと思いますが、あまりにお寿司は広まり過ぎて、中国人経営のチェーン店展開のような、なんちゃってお寿司のお店が大半を占め、もはやお寿司は珍しくもなくなり、むしろ日本人の視点から見ると、本物のお寿司屋さんを見つけるのが難しくなりました。

 次に人気なのは、ここ数年で人気を不動のものにしたラーメン屋さんで、その拡大ぶり、人気ぶりは目を見張るものがあります。どのラーメン屋さんも食事時には必ず行列ができ、お店によっては、ちょっとこれがパリ?と思うほどの行列ができています。

 そして、その中に、ちらほら姿を現し始めたのが「うどん屋さん」で、恐らく、パリに最初のうどん屋さんができて久しいですが、国虎屋、十兵(Jubey)、浪花-YA、など、どれも、日本食屋さんが立ち並ぶパリ1区のオペラ界隈・サンタンヌ通り近辺に集中していました。

 中でも私のお気に入りは国虎屋さんで、うどんの本場四国のうどんが美味で、出汁も天ぷらなども、恐らく日本にあるうどん屋さんにも全く引けを取らないクォリティーで、何回か通ったことがありました。(ただし、お値段は若干高めです)

 そして、最近、周囲の友人やSNSなどで大絶賛されているうどん屋さんがあり、ぜひ、行ってみたいと思い、足を運んで見たのです。

  


 喜心(Kisin)というそのお店は、日本食レストラン街(パリ1区)とはちょっと離れたパリ8区、シャンゼリゼからそう遠くない場所にあり、ミシュランにも掲載されている名店です。

 九州産の小麦粉を100%使用しているという手打ちの麺は、喉越しも良く、こしもあり、透明な出汁は、軟水で北海道産の昆布と築地和田久の鰹節を使用して取られており、一口、口にすれば、化学調味料などは一切使われていない丁寧な出汁であることがすぐにわかります。

 透明でさっぱりしていながらも、しっかりした味わいが感じられる出汁です。

 

店内にはうどんを手打ちしている様子の写真が展示されている

  


 こじんまりとした店内は30席ほどですが、店内装飾なども華美ではないものの、しっとりとした日本を感じられるもので、使われている食器などからも、このお店の配慮が行き届いていることが、そのひとつひとつに感じられます。

  

うどんがつかみやすいように切り込みが入れられたお箸

 例えば、お箸も割り箸などは使用しておらずに、お箸が得意ではないフランス人への配慮からか、お箸の先にはうどんがつかみやすいような切り込みが入っており、うどんが入っている器も表面は小さめながら、底が深めでたっぷり入るわりには場所を取らず、冷めにくい配慮が感じられます。

 提供されているメニューひとつひとつに加えて、細部にわたる配慮、全てにお店の本気度が伝わってきます。

 


 一番人気は天ぷらうどんのようでしたが、天ぷらもさっくりカラッと揚がっていて、うどんとは別皿に天つゆ、大根おろし(鬼おろし)と生姜が添えられています。天ぷらもたっぷり、種類に富み、えびが2本とオクラ、かぼちゃ、モロッコインゲン、紫いも、ズッキーニ、マッシュルームなどが盛られており、メニューにはサラダかお漬物(カブや人参、きゅうり、枝豆など)が混ぜられた酢飯のご飯か白米が選べるようになっています。

 サラダのドレッシングもお醤油ベースのゆず風味です。

 店内に入ってすぐにカレーうどんの注文が入っていたのか、店内にスパイシーなカレーの香りが漂っており、一緒に行った娘はお店に行く前から「胡麻坦々うどん」を食べる!と決めていたにもかかわらず、カレーの誘惑に負けてカレーうどんを注文しました。

 しかも、それに加えて揚げ餅入りという炭水化物の揚げ物トッピングという魅惑的なメニュー(牛カレー揚げ餅うどん)を楽しみました。カレーはさほど辛さはありませんが、(フランス人は辛いものが苦手)、充分にスパイスの香りがたち、手打ちうどんともよく絡む絶品。

 


 その上、サイドメニューを酢飯のご飯という炭水化物オンパレードのラインナップでしたが、不思議と(恐ろしくもありますが)ツルツルッと、軽々と彼女の胃の腑に消えていきました。

 これでお値段もカレーうどん(揚げ餅・チーズが選べる)が19ユーロ、天ぷらうどんが20ユーロとクォリティーと内容・量のわりにはお手頃で、人気の理由が伺えます。

   

  

 ラーメン屋さんにしても、うどん屋さんにしても、いつも行くと思うのですが、麺をすするという文化のないフランス人が器用に音を立てずに麺類を食べる様子も、そして、けっこうお箸を上手に使う人が多いのも日本人としては、嬉しい光景でもあります。

 もちろん、ナイフやフォーク(隣の人はナイフとフォークで天ぷらを切りながら食べていました)なども用意されており、頼めば出してくれます。

 しかし、フランスは、もともと小麦粉文化の国、うどんがフランス人に受け入れられないわけはありません。

 日頃から美味しいものがあれば、すっ飛んでいって食べてみたいという衝動に駆られる私ですが、今回のこの「喜心」は、そんな数々のお店の中でも大ビンゴでした!

 お持ち帰りメニューもありましたが、思い止まりました。

 



パリ うどん 喜心 Kisin


⭐️喜心(Kisin)   月曜〜土曜11:45~14:30, 19:00~23:00 日曜・祭日閉店

7-9 Rue de Pnthieu 75008 Paris

メトロ ①⑨番線Franklin D.Roosvelt  ⑨番線 Saint-Philippe-du-Roule




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2021年10月20日水曜日

ミスフランス運営会社・番組制作会社へフランスフェミニズム団体が訴訟状提出

   



 1920年にモーリス・ド・ワレフによって「フランスで最も美しい女性」というタイトルで始まった「ミスフランス」は、世界で最も歴史のある美を競うコンテストの一つです。

 1987年からは、この決勝戦の模様がテレビで生放送されており、芸術、スポーツ、メディアのパーソナリティで構成される審査員の投票によって、優勝者が選出され、この者には、その年の「ミスフランス」のタイトルが付けられます。

 ミスフランスの候補者は、まずフランス本土と海外の地域の代表に選ばれる必要があります。この中からさらに、スタイル、シルエット、スピーチ、行動、および一般的な文化的な教養についてのテストなどに従って、参加している地域のミスの中から15人のミスを事前に選択します。

 その他、審査基準には、相当数の項目があります。

 まず、フランス国籍であること。その年の11月1日の時点で18歳から24歳であること。独身であること(結婚歴がないこと)。身長170㎝以上であること。犯罪歴のないこと。整形手術をしていないこと。

 また、NG事項は、その他にも、刺青、公の場での喫煙行為、宗教的な宣伝性などなど、詳細にわたっています。

 今回のミスフランス選出にあたって、主催者の要求する基準を満たしていないために大会への参加を諦めなければならなかったと主張する3人の女性が、フェミニスト団体とともに、ミスフランス運営会社と番組制作会社を提訴しました。

 彼女(彼)らの申し出によれば、「美しさを代表する」ためのミスフランス選考の募集基準は差別的であり、フェミニスト団体によれば、この性差別的なコンクールは労働法に違反しており、この番組のプログラムは、「労働者の権利を無視しながら、女性を使って儲けようとするものである」と主張しています。

 このフェミニスト団体は、あえて私たちがフェミニストであるかどうかではなく、女性の権利を行使することを求め、具体的に「公の場での喫煙を禁止したり、目立つ刺青やピアスの着用についてのこれらの差別的な条項を規則から削除すること」などを求めています。

 しかし、今回の争点はコンテスト開催者・番組製作者とコンテスト参加者の間に雇用契約に関してと、これに労働法が適用されるものであるかどうかというところにあります。

 そもそもコンテストという誰かを選出する場面で、選考基準は必要不可欠のものであると思われますが、提訴している側からの言い分では、その基準は、現代社会の基準には即しておらず、その栄誉を勝ち取る機会を公平に与えられていないというものです。

 「コンテストへの参加は仕事の提供につながり、差別条項が含まれたミスフランスによって課された規制による、このポストへの応募の可否は雇用における差別に相当する」と言っているのです。

 一方、コンテスト開催側は、「これはコンテストであり、労働法に準拠するものではなく、一種のゲームでもあり、それに規則は存在する」と反論しています。

 多くの国民が一種のお祭りのように楽しんで見ているこの「ミスフランス」にでさえも、またまた登場するフランス人お得意の「権利の主張」。

 訴訟問題とは縁遠い感のあるこの催しに水をさされた感は否めませんが、この問題浮上で今年の「ミスフランス」は例年以上に注目される結果となりそうです。

 今年のミスフランスのコンテストは12月11日に開催される予定です。

ミスフランス


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2021年10月19日火曜日

ナイトクラブでのコロナウィルス感染状況の実験に希望者殺到

 


 17日、パリではANRS(Agence National de recherches sur le sida et les hépatites virales・エイズとウイルス性肝炎に関する国立研究機関)の支援により、AP-HP(Assistance Publique Hôpitaux de Paris)がパリの2ヶ所のナイトクラブ・ディスコでのコロナウィルス感染状況の実験を行いました。

 すでにナイトクラブは、ヘルスパスの提示義務ならびに通常の75%入場者制限という感染対策のもとに再開されることが許可されていますが、この閉鎖空間でのリスクがどの程度リスクを伴うものであるのか、また、この制限の緩和の可能性を検証する実験です。

 つまり、この実験は、閉鎖された場所でワクチン接種された者同士の間で、どの程度の感染のリスクがあるかどうかを科学的に証明するものです。

 以前に同様の実験がコンサート会場で行われたことがありましたが、今回はさらに、リスクが高く危険視されている場所・ナイトクラブでの実験です。

 この実験には、18歳から49歳までの2回のワクチン接種済みの2,200人が午後4時から11時という時間帯に参加しましたが、すでに、さらなる開放を待ちきれない若者たちでこの実験への参加をめぐって抽選が必要になるほどの希望者が集まりました。

 実験の行われたナイトクラブでは、あくまでも通常の状況に近い形で営業され、あえてマスクは着用せず、ソーシャルディスタンスを取ることもありません。コロナ以前のような環境でダンスフロアでは抱き合って踊る人、フロアからそう遠くないソファでは、ドリンクを飲み楽しみます。

 参加者は、到着時に唾液のサンプルを提出し、このサンプルは一週間後に提出する必要のある別のサンプルと比較されます。そして、ナイトクラブ内には3つの空気センサーが設置され、参加者のウィルスと空中のウィルスを照合し、クラブ内で人々が感染しているかどうかを検証します。

 同時に実験はナイトクラブでの実験に参加したグループとともに、ナイトクラブには行かなかったグループにも協力を求め、2つのグループ間で感染した人々の症例数を比較することになっています。

 この実験の主催者は、実験に臨むにあたり、「ワクチン接種を受けた人々の間では、ナイトクラブのような閉鎖され、過密な場所は危険因子はない」という仮説をたてています。

 残念ながら、この結果が明らかになるのは年末ということですが、この実験の結果が良好で、ナイトクラブでの感染のリスクが高くない場合は、現在のナイトクラブ営業の制限の見直しが可能になります。

 この実験を開催した研究者たちは、「この研究は政府と専門家に、最良の状態でのナイトクラブの長期的な営業を確実にするための科学的手段に基づいた具体的な要素を提供できるものになる」と保証しています。

 しかしながら、現在のフランスの感染状況は、ナイトクラブはさておいても、これまで減少を続けてきた感染者数が僅かずつではありますが、上昇傾向に転じている状態で、どうにも楽観的には考えづらい状況にあります。

 以前にナイトクラブの営業が許可されてまもない7月の段階でボルドーのナイトクラブでクラスターが発生したこともありました。あの時点から比べるとワクチン接種率は相当、上昇しているので、やはりワクチン接種がどの程度、このナイトクラブという閉鎖で密な空間においてもどの程度の効果があるものかということがこの実験により解明されます。

 それでも、少しでも日常を取り戻すために、科学的な検証を続けることは、具体的かつ現実的な対策を取ることが可能になり、ひたすら制限ばかりの環境で我慢をするよりは、どちらの結果になったとしても、皆が納得できるものになると思われます。

 しかし、この実験に参加したい人を抽選で選ばなければならないほど希望者がいるとは、そちらの方が私にとっては、驚きでもあったのです。


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2021年10月18日月曜日

意外に注目されないフランスのマスタードの魅力

   

マイーユのラベルを彷彿とさせる黒を基調とした洒落た店構え


 我が家のフランス人の夫は、なぜかマヨネーズを目の敵のようにしています。まぁ、体型上、ダイエットの敵であることは、言うまでもありませんが、それにしても・・と思うほど、なぜか敵視しています。

 私自身はマヨネーズは大好きなのですが、フランスのマヨネーズは概して酸味が足りず、今ひとつこれ!というマヨネーズがなく、どうにか辿り着いたマヨネーズはマスタード風味のマヨネーズ(Mayonnaise à la moutarde)というものでした。

 体型を気にしてマヨネーズを使わないにしては、他の食べ物(チーズやバターなどなど)の食べ方を見ていると、非常に矛盾を感じるのですが、食事をする上であまり必要を感じていない上にそんなものでカロリーを摂取することが許せないのかも知れません。

 その代わりと言ってはなんですが、彼はマスタードを非常に良く使います。肉や魚にはもちろんのこと、茹で野菜などにも欠かすことはありません。

 そんな彼と暮らし始めた頃は、食卓には必ずマスタードが置かれ、何にでもマスタードをつけるのを見て、「この人、変わってるな〜」くらいに思っていたのですが、よくよくフランスでの生活に慣れていくと、ビストロやカフェなどの食事の際には、マスタードが登場することがとても多く、フランス人にとって、マスタードは日本のお醤油やお味噌などのような国民的な存在であることに気付かされました。

  

フランスのスーパーのマスタードコーナー

 そうしてマスタードを食する機会が増えてみると、マスタードというものは、なかなかに味わい深いもので、日本のからしとも違い、独特な風味と酸味があり、なるほど色々な食材に合わせることができる優れた調味料であるとも言えます。

 あらためて、スーパーマーケットなどでマスタードのコーナーを見ても、そこには、膨大な種類のマスタードがあり、また国民食でもあるだけあって、比較的、安価でもあります。

 フランス人のマスタードの年間消費量は一人当たり、年間1キロとも言われ、やはりその人気・・というより彼らの食生活に根付いている底力を窺い知る事ができます。

 また、フランス料理を作る時などにも、マスタードは重用され、簡単に済ませたければ、マスタードに生クリームを加えるだけで、簡単なフランス料理のソースらしくなります。

 個人的には、エシャロットのみじん切りをバターで炒め、マスタードと生クリームを混ぜてちょっとブランデーを垂らしたりしたマスタードソースが気に入っていますが、これを手間を省いて、一気に他の食材と合わせてしまいます。

       


 私が特に気に入っているのは、フライパンにバターを敷いて、フライパンの半分で帆立貝をソテーし、残りの半分でみじん切りにしたエシャロットを炒めて、マスタードと生クリームをエシャロットと合わせて、ひと煮立ちしたら、サッと帆立貝と合わせて、ブランデーを垂らして香りづけをするという簡単で美味しい一品です。

 これは、他の肉や魚などにも応用することができ、なんちゃってフランス料理には、やはりマスタードは欠かせない存在でもあります。また、シチューなどの煮込み料理にも隠し味にマスタードを少し加えます。

 またサラダのドレッシングを作るときにもマスタードは欠かせません。シンプルにオリーブオイルとマスタード、お酢を泡立て器で混ぜ、塩・胡椒で味を整え、我が家の場合はそれにちょっとガーリックパウダーやすりおろした玉ねぎを加えます。シンプルで簡単ですが、飽きの来ない安定の美味しさです。

 恐らく、日本で一番有名なフランスのマスタードはマイーユのものではないかと思われますが、このマイーユのマスタードでさえ、フランスのスーパーマーケットでは、シンプルなものなら、一瓶2ユーロ前後=200円程度で買うことができるので、日本へのお土産としても悪くないかも知れません。(日本では高いみたい・・)

 中でも私のお気に入りは、バルサミコ入りのマスタードですが、他にもトリュフ入りのものやハーブを使ったものやパルメザンを使ったもの、蜂蜜、胡椒など様々なフレーバーのものがあります。

  

その場でマスタードを瓶に詰めてくれます


 マイーユの専門店はパリのマドレーヌ広場の一角にありますが、ここではすでに瓶詰めされたたくさんの種類のマスタードの他、マヨネーズ、ドレッシング、ピクルスなども買うことができますが、せっかくマイーユのお店に行くなら、瓶を買って、その場でマスタードを瓶詰めにしてもらうこともできるので、他では手に入らないものなので、おススメです。

 こうして考えてみると、マスタードはいつの間にか我が家の食卓にもしっかり定着しているもので、年間1キロとまではいかないものの、かなりの量を消費していることは明らかです。

 日本には、他に美味しい調味料がたくさんあり、マスタードは、日本の食卓には登場しないかも知れませんが、ひとたびマスタードの魅力に気付いたら、なかなか奥深い調味料の一つでもあります。

 フランスにいらっしゃる機会があれば、お食事の際は、ぜひ、マスタードに注目してみれば、その魅力に取り憑かれるかもしれません。


<Maille Paris>  6 Place de la Madeleine 75008 Paris


フランスのマスタード


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2021年10月17日日曜日

黄色いベスト運動シーズン2 黄色いベスト運動再開の動き

   


 フランスで黄色いベスト運動(Gilets Jaunes)が始まったのは、2018年11月のことでした。そもそもは、燃料税の増税に端を発したデモであったために、車に関連する蛍光色のベスト(フランスでは車内に蛍光色のベストを常備することが法律で義務付けられています)が安価で入手が容易であるために、この抗議運動のシンボルとして選ばれ、以来、燃料税のみならず、「生活費の高騰」、「政府の税制改革による中産階級への圧迫」、「富裕層に対する連帯税の再導入」さらには、「マクロン大統領の辞任」までもを要求するデモに発展しています。

 2018年に始まった黄色いベスト運動は、度を重ねるごとに過熱していき、街を破壊する行為が続き、一時は土曜日はまともな日常生活が送ることができないほどに、土曜日になるとデモの予定ルートになっている通りの店舗は破壊行動を恐れて、土曜日にはショーウィンドーにバリケードを張って閉店することを余儀なくされ、この黄色いベストのために、観光客も激減、経済状態に影響を及ぼすほどにヒートアップしていました。

 これはかなり長い期間続き、第二次世界大戦以後に起こったフランスのデモの中でも最も長い期間に渡るものと言われています。

 この黄色いベストがストップしたのは、2020年3月のロックダウンで、(ロックダウンになる寸前までデモは続いていました)国民はデモどころか、外出もままならなくなり、黄色いベストどころではない状況がデモを鎮めさせたのでした。

 その後、感染が少しずつ減少し、最初のロックダウンが解除されると、様々な外出制限は残っていた段階から、また別の問題が浮上し、「人種差別問題」、「グローバルセキュリティー法反対」、「年金改革反対」、「ヘルスパス反対」などのデモが途切れることなく行われ続けていましたが、2018年の黄色いベスト運動でのデモ隊の暴徒化を教訓に政府のデモに対する警戒と対策は非常に強いものになり、当時のような被害には及ぶことはありませんでした。

 本来?の「黄色いベスト運動」のデモ隊は、この3年間は、この間に行われていたデモに乗っかる形でちらほらと姿を見せる程度でした。

 しかし、3年後の現在、燃料価格の上昇から、「黄色いベスト・シーズン2(#GiletsjauneSaison2)」として、再び、デモ隊を集結する動きが高まり始めています。

 燃料価格の高騰は、フランスだけではないものの、現在、フランスのガソリン価格は1リットル1.63ユーロ(約215円)という史上最高値に達し、この「黄色いベスト・シーズン2」の再集結呼びかけの引き金になっています。

 このパンデミックにより、経済的に痛手を被った中産階級の怒りは、この3年間の間にさらに膨れ上がり、燃料価格の高騰があらゆる物価の高騰に繋がり、ここ数ヶ月の間にガスや電気の価格も相次いで上昇し、これに伴う商品の値上げも続いています。

 この底知れない国民の燻った怒りに対して、政府は国民に対する援助メカニズムへの扉は閉ざさないことを示し、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「燃料価格の上昇が続く場合は、ガスと電気の場合と同様に(ガス・電気料金の上昇に伴い、これらの減税措置を行った)保護措置を検討する」と発表しました。

 「黄色いベスト運動シーズン2」を呼びかけている人々は、「黄色いベスト運動スタートから3年、我々は、新たな長期間にわたる活動を計画しており、必要に応じて、100週間は継続する。私たちは全く疲れてはいない」と、政府が広範囲にわたる社会改革を開始し、「市民への権力」を回復することを期待していると語っています。

 燃料価格の高騰はパンデミックが原因の一端となっているのですが、その肝心なパンデミックさえも終息していない段階で、再び、黄色いベスト運動の再開は感染対策な観点からも、経済的な観点からも、抑えなければならない火種です。

 フランス人にとって、デモは息をするのと同じようなもので、一種の発散の場、時にはレクリエーションではないかと思われる節もあるのですが、過熱すれば、興奮を抑えられない人々。なんとか、政府の対応でこの火種を燻っているうちに消火してくれることを切に願っています。


黄色いベスト運動シーズン2


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2021年10月16日土曜日

3回目のワクチンを拒否するとヘルスパスが無効になるかもしれない

 


 ヘルスパスの適用から一気にワクチン接種率が上昇したフランス。このおかげで、現在、感染状況も落ち着きを見せ、日常生活を取り戻しつつも安定した状況を保っています。

 しかし、1日の新規感染者数は5,000人前後から下がることはなく、引き続きウィルスが確実に存在し続けていることを示しています。そんなフランスの次なる課題は、2回目のワクチン接種から6ヶ月経過すると、その効果が減少することが多くの専門家の研究で明らかにされている今、3回目のワクチン接種をどのように浸透させていくかにあるようです。

 現在のところ、フランスでは、9月から、2回目のワクチン接種が終了して6ヶ月以上経過した65歳以上の人(特に80歳以上を優先)、重症化のリスクの高い人(腎不全、糖尿病、肥満、癌患者、心不全、高血圧、慢性肝疾患、脳卒中、重度の免疫不全などの病歴のある人)に対しては、3回目のワクチン接種が推奨され、すでに開始されています。

 今後、2回のワクチン接種後6ヶ月後に急激に効果が減少し始めると言われている現象がどの程度、感染状況、また、感染悪化の状況に影響してくるかは未知の部分であるために、3回目のワクチン接種をどうやって拡大していくか、また、どの程度、必要性があるかを国民に納得させていくのは容易なことではありません。

 先日、労働相のエリザベット・ボルネがインタビューを受け、「最近の研究ではコロナウィルスに対する免疫がワクチン2回目の投与から6ヶ月後に低下することが示されています。」「したがって、3回目の投与を行うことは絶対に必要です。」と述べています。

 また、この必要性に伴い、「3回目のワクチン接種を拒否した場合は、それ以前のヘルスパスの撤回を検討している」「これは現段階では決定事項ではないものの、あくまでもフランス国民を保護するための重要な検討事項」と述べています。

 「今日、私たちが幸いにも恩恵を受けているワクチンによる保護を継続させることは必要不可欠である」としています。

 「ヘルスパス」の起用の発表も、かなり衝撃的で、強硬的なもので、当初は少なからず反発もありましたが、結果が伴ってきたために、今では国民の大半はこの「ヘルスパス」を受け入れています。

 それが「3回目のワクチン接種をしなければ、これまでのヘルスパスが無効になる」というのもまた、なかなか強硬な手段で反発を生みそうな気もします。

 しかし、これまでヘルスパスによって、ある程度、保護された空間であった場所が、6ヶ月以上経過したワクチンの効果が薄れてきている人も同じ空間にいるということは、ヘルスパスの意味をなさなくなってしまうことになります。

 ヘルスパスの起用は国民をワクチン接種に追い立てる目的とともに、人の集う空間を少しでも保護された場所に保ち、相互に人々を保護する役割も果たしてきたのです。それが6ヶ月以上経過し、ワクチンによる保護が薄れてきた人が混ざってしまうのでは、ヘルスパスの意味がなくなってしまうのです。

 結局、ヘルスパスにより、国民を保護し続けることを考えれば、少々、残酷な気もしますが、6ヶ月以降経過したヘルスパスは無効とするというのは至極、真っ当なことなのかもしれません。

 数度にわたるロックダウン(完全ロックダウンからレストランや店舗の営業停止、外出行動範囲、時間制限など)やヘルスパス、医療従事者のワクチン接種義務化など、フランスはこれまで、感染対策に関しては、かなり強硬な手段を取り続けてきました。

 しかし、フランスは、かなり強硬な手段を取らなければ、統制の取れない国であることは、これまでの感染の経緯を見ても明らかで、彼らは危機管理能力、衛生観念、感染対策の基本的な能力が極めて低い上に、ある程度の個人個人の良識に頼ることが可能な日本と違って、自主的な自粛などはあり得ない話で、強硬的な規則がなければ、感染を抑えることは不可能なのです。

 2回のワクチン接種率が上昇したことを喜んでばかりはおられず、今度は、このワクチン接種の効力が薄れ始めていく対応をしていかなければならないのです。これを放置すれば、また、ふりだしに戻り、さらなる混乱が生じます。

 依然として、コロナウィルス対応は綱渡り状態です。

 ようやく落ち着き始めたと思ったら、今度は3回目のワクチン接種問題とそれに伴うヘルスパス問題。コロナウィルスが完全に終息するか、さらに長期に効力が持続するワクチンができない限り、永遠にこれが続くと思うとうんざりしますが、これも致し方ありません。

 私は2回目のワクチン接種が終了したのが、6月の初めだったので、このままでいくと、3回目のワクチン接種は12月になりそうです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス無効


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2021年10月15日金曜日

フランスでは知らない人に話しかけられる確率が高い私

  


 フランス人、特にパリジャン・パリジェンヌはツンとしていて、お高くとまっているイメージがあるかもしれません。たしかにそういう感じの人もいるにはいますし、同じフランスの中のフランス人同士でも、パリジェンヌ・パリジャンは感じが悪いと評判が悪いのも事実です。

 しかし、実際に生活していると、そうでない人も多く、あくまで私は日本(東京)と比べてのことですが、パリでは、知らない人に話しかけられることが多いのです。

 最近は、Googleのおかげで随分と減りましたが、私は実によく道を聞かれることが多かったのですが、実のところは、私は、大変な方向音痴で、特別よく知っている場所は別として、方向感覚がなく、道を説明するということが大変苦手なのです。

 最初は、「外国人の私になぜ道を聞くかな?」などと思ったりもしたのですが、フランスには、そもそも移民も多く、外国人が普通に生活しているので、外国人だからといって、よそ者だというような感覚が彼らには、あまりないのです。(もっと、別の意味での区別はあるとは思いますが・・)

 道を尋ねられやすいタイプの人というのがあるそうですが、どうやら、私はその一人のようです。

 しかし、私は、日本ではあまり知らない人に話しかけられるということはないし、日本で道を聞かれたこともほとんどありません。

 道を聞かれるだけでなく、フランスでは知らない人によく話しかけられます。

 例えば、買い物をしていて、知らないおばさんから、「それ、どうやって食べるの? 美味しい?」とか、逆に聞いてもいないのに、「これいいわよ!」と言われたり、「これは気をつけなきゃダメよ!」とか言われたりします。

 この間もバターを見ていたら、「このバターとこっちのバターはどう違うの?」(フランス人が私にバターについて聞くか?と思ったけど・・)とか、すれ違った女性に、「そのスカーフ素敵ね!どこで買ったの?」とか、骨折して矯正用の靴を履いていた時も、「うわぁ〜私と一緒!どうしたの?」とか、先日もバス停でバスを待っていたら、青年から「バス・・もうすぐ来るはずなんですけどね・・この間もね・・」などと話しかけられて、ナンパでもなかろうに・・と思ったりもしました。

 薬局で顔見知りの店員さんと話していたら、別の見知らぬ人が会話に加わってきて、話に花が咲いたり、なかなか知らない人と話す機会は少なくありません。だからと言って、それはその場限りのことなのですが、とにかく、フランス人が話好きなことに間違いはありません。

 考えてみれば、バスに乗ったりする時も、運転手さんに「ボンジュール!」と挨拶している人も少なくないし、運転手さんの方から「ボンジュール!」と言われることもあります。知らないバスの運転手さんにも気軽に挨拶する、そんな文化なのです。

 うちの母は日本でも、わりと気軽に誰とでも話をする人で、私が若かった頃には、そんな母を「ママは全くおしゃべりなんだから・・」と、ちょっと恥ずかしいような気持ちでいたのですが、まさに、私は自ら望んでというわけでもないにもかかわらず、これではまるで母のようだと現在の自分に苦笑してしまいます。

 だからと言って、私が日本に行った時には、やはり、知らない人から話しかけられることはないので、やはり文化の違いなのか?とも思います。

 自分自身がフランス語や英語を話している時と、日本語を話している時は、無意識のうちに何か自分の中で違うスイッチが入る気がすることもあります。

 それでも、やはり、フランス人が知らない人にわりと気安く話しかけることは間違いないのですが、しかし、それも誰にでもというわけでもなさそうなのです。

 先日、家のプリンターのインクが切れて、娘がインクを買いに行った時、「じゃあ、ついでにこの空っぽになったインクのボックス捨ててきて!」と頼んだのです。空のインクのボックスはどこにでも捨てられるゴミではないので、売っている場所なら専用のゴミ箱があるためです。

 娘は、その空のインクのボックスを持ってゴミ箱を探してウロウロ・・ようやくゴミ箱を見つけて捨てに行ったら、近くにいた警備のおじさんが、「ゴミ箱、探しているみたいだったから、場所を教えてあげようかと思ったけど、怖くて話しかけられなかった・・」と。

 イカつい警備のおじさんに怖がられる娘には、ちょっとウケましたが、どうやら、だれも彼もが誰にでも気安く話しかけるわけでもなさそうです。

 イカつい警備のおじさんが意外とシャイだったのか?はたまた娘がよっぽど怖い顔して歩いていたのか? 

 黙って歩いているだけで、話好きなフランス人を怖がらせる娘と、やたらと知らない人から話しかけられる母親、妙な親子です。


フランス人は話好き

 

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2021年10月14日木曜日

ワクチン未接種の医療従事者は医療従事者全体の0.6%

   


 医療従事者のワクチン接種が正式に義務化された9月15日から約1ヶ月が経過しました。

 7月からヘルスパスの起用が開始され、食事に行くにも、美術館や映画、コンサート、長距離の旅行などなど、フランスではヘルスパスがないと身動きが取れない状態になり、「義務化」という言葉は使わないものの、ワクチン接種はほぼ義務化されたようなものでしたが、医療従事者はきっぱりとワクチン接種は義務化という言葉を使って義務化されました。

 この医療従事者のワクチン接種義務化はかなり厳しい措置を伴うもので、ワクチン接種をしないと給与が支払われない状態になるというもので、ここでは、解雇という言葉は使わないものの、ワクチン接種を拒否している医療従事者は停職処分となっています。

 7月にこの法令が発表された時点では医療従事者の中でも介護の仕事に携わる人のワクチン接種率は60%程度でしたが、現在は、介護者も含めた医療従事者のワクチン接種率は99.4%にまで上昇しており、ワクチン接種をしていない者は医療従事者全体の0.6%だけとなりました。

 頑なにワクチン接種を拒否して退職までに至った者は全体の0.1%程度でかなり例外的なケースのようです。

 当初、この医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしていなければ仕事ができなくなる状況に反発して、多くの医療従事者が停職になったり、退職をしてしまい、医療体制に弊害が起こるのではないかとの懸念もされていましたが、これまでに病院ないし介護施設等が閉鎖されたり、業務が滞ってしまったケースはなく、結果的にここまでの数字まで上昇してきたので、今後、医療従事者のワクチン接種義務化について、これ以上は問題になることもないと思われます。

 それでも、ワクチン接種をこの段階にまで至って未だに拒否し続けている0.6%の医療従事者は全体の割合としては、少ないものの、実際の人数に換算すると約15,000人ほどの人数でもあり、停職処分にまでなっても拒否し続ける人をどう説得するのでしょうか?

 そして、彼らは拒否し続けて仕事もできずに、どうやって生きていくのでしょうか?

 大勢に影響はないものの人道的にどうなのか? 当初は、実際に医療従事者とてワクチン接種を受けるかどうかの選択の権利はあるべきだ!などの声が大きく上がっていました。

 しかし、個人の意思を尊重するべきだという声が猛然と上がり続けると思いきや、これらの依然としてワクチン接種を拒否している医療従事者がインタビューに答えていたりすると、かなり露骨に冷たい態度を示すフランス人が多いのにも、ちょっと意外な気がしたりもします。

 この背景には、医療従事者にかかわらず、国民全体の85.5%までワクチン接種率が上がっている状況があり、「医療従事者はワクチン接種を受けるのは当たり前だ!」という認識につながっているようです。

 時が経つにつれて、ワクチンに対する世論も変化してきていることを感じます。

 今回、ワクチン接種拡大のためにフランス政府が取った政策は、ヘルスパス(ワクチン接種2回接種証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと多くの場所にアクセスできないという法令や、医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしなければ停職(給料が支払われない)という、かなりのインパクトのあるもので、日頃のフランスならば、もっともっと反発を生み、暴動でも起こりかねないほどの強硬手段でした。

 しかし、パンデミック・数回にわたるロックダウンから、国民も、いつまでの感染の波とロックダウンを繰り返すことはできないという危機感から、どうにか事は政府の思いどおりになり、なんとか結果も伴ってきました。

 フランス政府は、0.6%のワクチン未接種の医療従事者への説得とともに、医療従事者に対しては、早めにワクチン接種を開始し始めたこともあり、3回目のワクチン接種を推奨し始めました。

 現在のところ、医療従事者への3回目のワクチン接種に関しては、義務化にするかどうかは決定されていません。


医療従事者ワクチン接種義務化


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2021年10月13日水曜日

フランス2022年1月から野菜や果物のプラスチック包装禁止

  


 フランス政府は、2022年から、現在使用されている野菜や果物のプラスチック包装を禁止することを発表しました。

 この法令により、フランスでは、ねぎ、ズッキーニ、なす、ピーマン、きゅうり、トマト、カリフラワー、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、かぶ、りんご、梨、バナナ、オレンジ、キウィ、みかん、グレープフルーツ、メロン、パイナップル、マンゴー、柿などの青果はプラスチックの包装で販売することはできなくなります。 

 ただし、例外として、1.5㎏を超える容量の青果については、引き続きプラスチック包装で販売が可能であり、まとめて販売すると劣化リスクが高い完全に熟した果実、春頃収穫される赤い果実(いちごなど)も例外に加えられています。

 罰則・罰金がなければ規則ではないようなフランスならではで、この義務を順守しなかった場合、罰金は15,000ユーロ、1日当たり1,500ユーロの罰金が課せられる可能性があります。

 店舗にもよりますが、現在、果物と野菜の約37%がプラスチックのパッケージで販売されており、これはプラスチック消費量の45.5%にあたります。

 日頃、買い物をしていても、フランスではもともとスーパーマーケットなどの野菜なども計り売りが基本で、自分で選んだ分量の野菜を袋に入れて、専用の計りにかけて、出てくる金額とバーコードが表示されたステッカーを袋に貼り付けて買い物をするので、そこまでプラスチックを使っているとは思ってもみませんでした。

 しかし、考えてみると、自分で必要な分だけ自分で選んで買い物をする野菜や果物の他には、マッシュルームやバナナ、比較的、安くまとめて売るために、プラスチックを使用した包装もたしかにあるのです。それだけ、プラスチックについて無意識に利用していたことを今さらのように思い知らされます。

 日本へ行くと、野菜などもプラスチックで適量に仕分けされ、買い物も簡単に済むのに・・などと思っていた私は、自分の環境問題への認識不足を感じます。

 もっとも、日本はゴミの収集もフランスとは比べ物にならないくらい徹底しているので、食料品がパッケージされていたトレイなどもきれいに洗って回収されているので、日本はまた別のアプローチの仕方なのかも・・と思ったりもしますが、フランスのゴミ収集・処理の現状を見れば、日本のような回収作業はほぼ不可能なので、こういったかなり強行的な手段に出るのも致し方ないのかもしれません。

 この禁止は、使い捨てプラスチックを排除するというフランスとヨーロッパの方針の一環で、政府はこの試みにより、年間10億以上の不要なプラスチックの削減に役立つことになると見積もっています。

 フランスでは、レジ袋というものもなくなって久しく、使い捨てのプラスチック製の食器や綿棒やストローなど、いくつかの商品は販売できなくなりました。

 しかし、この措置は果物や野菜の包装に完全に終止符を打つものではありません。包装は、プラスチックに代わる解決策として、木製のものや段ボールの使用、また野菜や果物の貯蔵方法についても検討の余地があるとしています。

 それにしても、ここ1〜2年でのスーパーマーケットでの環境問題に対応する規制は、次から次へと進み、レジ袋がなくなって以来、野菜などの計り売りの際に使われていたビニール袋は全て紙袋になり、食品廃棄物を減らすために賞味期限ギリギリもしくは切れているもの、見るからに危うい野菜などが食品廃棄物防止のラベルが貼られて販売されるようになり、レシートを廃止する動きから、今度のプラスチック包装禁止の法令です。

 地球温暖化が進み、洪水などの被害が多発している中、このような環境問題への取り組みは必須で急務であるとはいえ、先日もマクドナルド・フランスのペットボトル廃止から生じたマクドナルドの水問題が沸騰したばかりですが、スーパーマーケット・食品業界が優先事項として特にターゲットになっている感じが否めないことも確かです。

 それだけ日常に直結するものであり、消費量も多いことからだと思いますが、これに対応していく業界側も悲鳴をあげています。

 変化を嫌うフランス人が変化していくことを余儀なくされている・・地球環境問題は、急務であることをひしひしと感じさせられる、ここ数年の変わり様なのです。


フランス 2022年1月からプラスチック包装禁止


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2021年10月12日火曜日

フランスの小・中学校(高校) 私立進学へのススメ

 


 子供の教育は、もちろん、その家庭に一番の責任があることは言うまでもありませんが、子供の通う学校も大きくその子の人生に影響してきます。

 どの国にも社会的格差は存在しますが、フランスはその格差がかなり大きく、子供の頃から通う学校によって、まるで世界が違います。そのどちらに行くか、人生の別れ道の違いは最初は小さいものでも、年齢を重ねるとともに大きくなっていくのが、恐ろしいほどです。

 我が家の近所にも、小学校、中学校、高校ともにいくつかの公立の学校がありますが、たまに近所を走っているバスに乗ったりすると、子供たちのバスの中での立ち振る舞いや言動で、大体、どこの学校の生徒なのかが見当がつきます。

 我が家は、そんなに治安の悪い地域でも貧窮層の多い地域でもないにもかかわらず、公立の学校がこのような状況であることは、信じ難いことですが、これがフランスの現実なのです。

 家の近所には、私立の学校は幼稚園から高校までの一貫教育の学校が一つだけなので他に選択肢はなかったのですが、それにしても、バスの中で暴れて騒いでいる子供たちを見ると、もしも私が娘の教育について、深く考えずにこれらの公立の学校に入れていたら、娘もこの子たちの仲間入りをしていたかもしれないと思うと今さらながら、私立の学校に入れて助かった・・などと思うのです。

 特に中学生・高校生くらいになると、どちら側の子供たちなのかは、一目瞭然です。

 私が娘を私立の学校に入れようと思ったのは、当時の私の職場の近くに、なかなかな暴れようの公立の中学校があり、こんな家賃の高そうなパリの中心に住んでいる子供たちでも、こんなことになる・・と危機感を持ったことがきっかけでした。(学校のストライキにうんざりしていたこともあります)

 私たちは、娘が小学校に入学する少し前に現在の場所に引っ越してきたので、小学校からは私立へと思って、入学の申し込みをしたのですが、すでにその時点では定員オーバーで、娘の名前はウェイティングリストに入れられ、仕方なく、その学校に入学できるまでは、公立の小学校に通うことにしていたのです。

 現在はわかりませんが、当時は私立だからと言って、日本のようにお受験があるわけでもなく、子供の能力が測られることもありませんでした。しかし、なんとかして、その学校に入学させてもらえないかと、娘の成績表を送ってみたところ、夏休みの間に「面接に来てください」と学校から連絡があり、急遽、夏休みの間に娘の進学先が変更になったのでした。

 その学校は、カトリック系の学校ではありましたが、宗教色はあまり強くはなく、他宗教の子供たちも多くおり、校内にチャペルはあるものの、礼拝なども強制的に参加しなければならないわけでもなく、どちらかというと、子供たちの学力向上をうたっている学校で、バカロレアの合格率100%を宣言していたので、少しでも優秀な子供を集めたいと思っていることは明白でした。

 私が最初にその学校を見に行って、すぐに思ったのは、「子供たちの顔つきが全然違う」ということでした。小さい子供でもこんなに顔つきが違うものなのかと逆にそのことが空恐ろしいくらいでした。子供の顔つきがここまで違うというのは、明らかに学校の教育なのです。

 バカロレアの合格率100%ということは、できない子は追い出されるということで、小学校からでもできない子は留年(これはフランスの学校では当たり前のことですが・・)、または、やんわりと他の学校への転校を勧められます。

 ですから、娘が小学校、中学校、高校と進む間に、いつの間にかいなくなっていた子供たちもちらほらいました。特に中学校から高校にかけては、特に急に学力ともにその子供の様子が変わってしまうことも少なくない難しい年頃です。

 しかし、厳しいのは学力だけではなく、日頃の生活態度、言葉遣いなども、成績同様に評価され、先生を睨みつけようものなら、「目を伏せろ!」などと言われるほどだったのです。

 常に自由や民主主義を掲げ、言いたいことを言うフランスの文化の中でこのような教育は意外でもありましたが、このような社会にあるからこそ、ある程度の枠内で厳しい環境に身を置くことは必要なことなのかもしれません。

 私立の学校だからこそ、成績や態度が悪ければ追い出すこともできるのですが、それは、そこにいる子供たちを守ってくれるということでもあります。

 大人になれば、ある程度、危険な人には近づかないこともできるし、自分が身を置く環境は選ぶことができますが、学校という括りは、意外にも守られていない環境でもあるのです。特に小学校、中学校はその子の基盤ができる大切な時間です。

 格差の大きい社会であるからこそ、クズは限りなくクズです。麻薬やドラッグなども年々蔓延し、低年齢化していることを考えれば、子供が1日の大半を過ごす学校環境を選んであげることは、とても重要なことに違いありません。

 フランスでは、学歴云々以前に(学歴ももちろん重要ではありますが)、その子供が真っ当な人間になるかどうかがかかっているような気がするのです。

 フランスの文部省は、たいそうな理想を掲げてはいますが、現場は理想どおりには行ってはいないのです。

 学校によって差はあるとは思いますが、フランスは私立だからといって、極端にお金がかかるということもありません。私はフランスでは、小学校・中学校・(高校)は特に私立の学校をおススメします。


フランスの小学校・中学校・高校 私立校のススメ


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2021年10月11日月曜日

パリジャンの84%は自分たちの街が汚れていると思っている でも自分たちが汚しているとは思っていない

 

 


 パリの街並みはやはり美しいです。しかし、街並みは美しくても清潔であるかと言えば、そうでもありません。

 JDD(Le Journal du dimanche)の行った世論調査によれば、実際にパリの住民の84%は自分たちの街が汚れていると考えており、73%が清潔さとその維持に不満を感じていると答えています。

 パンデミックにより、数回のロックダウンを経て、一時はパリの街も至るところが消毒され、人出が極端に減少し、飲食店も閉鎖されたことから、その間は清潔さを保っていました。

 しかし、ロックダウンが解除され、ワクチン接種が進み、ヘルスパスの起用により、人々がほぼ以前の日常と同じように街に出始めると、再び街の清潔さも失われ、不衛生な日常が戻ってきました。

 日本人がイメージするおフランスのイメージのパリはシャンゼリゼやサンジェルマンデプレなどのごく一部であり、さすがにそんな場所はキレイに保っていますが、東京に比べれば、決して広いとは言えないパリにも、目を疑いたくなるような不衛生な場所が少なくありません。

 日常が戻ってきて、駅の臭いトイレも戻ってきました。トイレだけが臭いならまだしも(それさえも信じがたいのですが)、駅の周辺までもが臭くなるのは、これが先進国なのか?と疑いたくなります。

 私が時々、通るパリ・リヨン駅なども駅・構内に入るとそこはかとなく漂ってくるアンモニアを含む不快な匂いが戻りつつあることを感じています。

 パリの地下鉄オペラ・オーベール駅も臭い駅として有名な場所です。

 これらの匂いが駅に戻ってきたということは、人出が戻ったことが原因ではありますが、同時に駅での清掃、消毒作業がパンデミックが始まった頃のようには、もはや行われていないということでもあります。

 また、このパンデミックをもってしても、フランス人の衛生観念は、改善されていないということでもあります。

 パリの街中には、多くのゴミ箱がありますが、たくさんあるゴミ箱も利用する人はまだマシですが、そのゴミの捨て方も酷いのです。逆に日本(東京)に行ったことのあるフランス人は、ゴミ箱の少なさに驚いています。(ゴミ箱が少ないのにゴミが落ちていないこと)

 また、住宅街の家庭が排出するゴミなどは、ある程度は分類されて、住宅施設ごとに纏めて管理人が出すのが普通ですが、引っ越しの際の大量の粗大ゴミが出されていたりすると、そこから掘り出し物を探すのか?近隣住民が寄ってきてゴミが大散乱していたりします。

 パリ市は実に街を清潔に保つために年間5億ユーロを費やしているにも関わらず、パリの住民が不満に感じるほどにしか、その成果は上がっていないのです。

 このパリという街を清潔に保つことに目を瞑り、改善しようとしていないパリ市に抗議して、この日曜日にはPlace de l'Hotel de Ville(パリ市庁舎広場)でデモまで行われました。

 しかし、言わせてもらえば、パリの街を汚している張本人たちがパリを清潔に保つ努力をパリ市が行っていないと抗議するのは、なんともお門違いな話で、どのツラ下げて誰が物申しているのか?と相変わらず、自分たちがすべきことをせずに、言うことだけ言うフランス人に唖然とさせられます。

 パンデミックはまだ終息していないにもかかわらず、以前と同じように街を汚し始めたパリジャンたちは、自分たちの街が汚れていると思い、それを不満に感じているようですが、自分たちの街を自分たちが汚しているとは考えていないようです。

 今回のパンデミックにより、実にこれまでに117,052人の犠牲者を出してもなお、衛生環境がどれほど日常生活に大切なものであるか?それを個人個人の心がけにより変えていこうとはせず、問題の責任を国に押し付けようとする彼らには、パリの街を清潔に保つためには、ロックダウンの時と同じように、罰金・罰則が必要なのかもしれません。


フランス人の衛生観念


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「フランスの駅とトイレの先進国とは信じ難い臭さ」

「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

「ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない」

「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」