フランスで黄色いベスト運動(Gilets Jaunes)が始まったのは、2018年11月のことでした。そもそもは、燃料税の増税に端を発したデモであったために、車に関連する蛍光色のベスト(フランスでは車内に蛍光色のベストを常備することが法律で義務付けられています)が安価で入手が容易であるために、この抗議運動のシンボルとして選ばれ、以来、燃料税のみならず、「生活費の高騰」、「政府の税制改革による中産階級への圧迫」、「富裕層に対する連帯税の再導入」さらには、「マクロン大統領の辞任」までもを要求するデモに発展しています。
2018年に始まった黄色いベスト運動は、度を重ねるごとに過熱していき、街を破壊する行為が続き、一時は土曜日はまともな日常生活が送ることができないほどに、土曜日になるとデモの予定ルートになっている通りの店舗は破壊行動を恐れて、土曜日にはショーウィンドーにバリケードを張って閉店することを余儀なくされ、この黄色いベストのために、観光客も激減、経済状態に影響を及ぼすほどにヒートアップしていました。
これはかなり長い期間続き、第二次世界大戦以後に起こったフランスのデモの中でも最も長い期間に渡るものと言われています。
この黄色いベストがストップしたのは、2020年3月のロックダウンで、(ロックダウンになる寸前までデモは続いていました)国民はデモどころか、外出もままならなくなり、黄色いベストどころではない状況がデモを鎮めさせたのでした。
その後、感染が少しずつ減少し、最初のロックダウンが解除されると、様々な外出制限は残っていた段階から、また別の問題が浮上し、「人種差別問題」、「グローバルセキュリティー法反対」、「年金改革反対」、「ヘルスパス反対」などのデモが途切れることなく行われ続けていましたが、2018年の黄色いベスト運動でのデモ隊の暴徒化を教訓に政府のデモに対する警戒と対策は非常に強いものになり、当時のような被害には及ぶことはありませんでした。
本来?の「黄色いベスト運動」のデモ隊は、この3年間は、この間に行われていたデモに乗っかる形でちらほらと姿を見せる程度でした。
しかし、3年後の現在、燃料価格の上昇から、「黄色いベスト・シーズン2(#GiletsjauneSaison2)」として、再び、デモ隊を集結する動きが高まり始めています。
燃料価格の高騰は、フランスだけではないものの、現在、フランスのガソリン価格は1リットル1.63ユーロ(約215円)という史上最高値に達し、この「黄色いベスト・シーズン2」の再集結呼びかけの引き金になっています。
このパンデミックにより、経済的に痛手を被った中産階級の怒りは、この3年間の間にさらに膨れ上がり、燃料価格の高騰があらゆる物価の高騰に繋がり、ここ数ヶ月の間にガスや電気の価格も相次いで上昇し、これに伴う商品の値上げも続いています。
この底知れない国民の燻った怒りに対して、政府は国民に対する援助メカニズムへの扉は閉ざさないことを示し、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「燃料価格の上昇が続く場合は、ガスと電気の場合と同様に(ガス・電気料金の上昇に伴い、これらの減税措置を行った)保護措置を検討する」と発表しました。
「黄色いベスト運動シーズン2」を呼びかけている人々は、「黄色いベスト運動スタートから3年、我々は、新たな長期間にわたる活動を計画しており、必要に応じて、100週間は継続する。私たちは全く疲れてはいない」と、政府が広範囲にわたる社会改革を開始し、「市民への権力」を回復することを期待していると語っています。
燃料価格の高騰はパンデミックが原因の一端となっているのですが、その肝心なパンデミックさえも終息していない段階で、再び、黄色いベスト運動の再開は感染対策な観点からも、経済的な観点からも、抑えなければならない火種です。
フランス人にとって、デモは息をするのと同じようなもので、一種の発散の場、時にはレクリエーションではないかと思われる節もあるのですが、過熱すれば、興奮を抑えられない人々。なんとか、政府の対応でこの火種を燻っているうちに消火してくれることを切に願っています。
黄色いベスト運動シーズン2
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