2021年9月12日日曜日

9週目のヘルスパス反対デモと黄色いベスト運動

   


 フランス全土のワクチン接種率が80%を超えても、ヘルスパス反対のデモは一向に止むことがありません。

 フランスでは、先週末までの段階で少なくとも1回目のワクチン接種を受けている人は4,954万人に上り、これは12歳以下の人口を除いた(ワクチン接種ができない人々を除いた)全国民の85%に該当します。

 それでもヘルスパス反対のデモが止むことはなく、またそのデモも暴徒化の傾向が見られます。


 殊に15日からの医療従事者へのワクチン接種義務化を目前に控えた今回のデモは、ワクチン接種そのものや、ヘルスパスに反対する者にとっては、いよいよ追い詰められたギリギリのタイミングの最後の悪あがき?とも取ることができ、黄色いベスト運動のメンバーがそのうちのいくつかのデモを集結し、本来の目的のデモを煽り、それに暴徒化する集団が加わったりしているのも、始末の悪いことです。

 

 もともと黄色いベスト運動は、2018年10月に起こったエネルギー製品に対する国内消費税(TICPE)の増税に起因する自動車燃料価格の上昇に端を発しており、これが想像以上の規模での反発を生み、収集のつかないデモや破壊行動、(暴徒化)が起こりました。

 政府はTICPEの増税を放棄しましたが、このことをきっかけに、政府の財政政策への疑問、国民の一部の階層の格下げ感、大都市から離れた地域への無視など、フランス行政政策機能に対する不信感を一部の国民に対して、植え付ける結果となりました。

 以来、黄色いベスト運動は、そのターゲットを広げ、国内で度々起こる様々な問題に対するデモにことあるごとに、参入してくるようになりました。

 その間、パンデミックが発生し、国全体が静まりかえったロックダウンの期間は、一時停止していたものの、ロックダウンが解除され、また、彼らは活動を再開したのです。

 黄色いベスト運動のターゲットが単なる燃料価格の上昇から、政府の政策への抗議に範囲を拡大している現在、大抵のデモは、彼らの講義内容に繋がるものになっているのです。

 たしかに、ヘルスパスの起用はかなり強引なやり方ではありましたが、そのおかげで、フランス国民は、ほぼパンデミック前同様の日常生活を取り戻し始めているのです。

 黄色いベスト運動がヘルスパス反対デモに加わることで、デモが暴徒化し、再び、街中で暴れ始め、パリやトゥールーズのデモなどは、近隣の店舗の営業を妨げ、催涙ガスが立ち込め、放水車が出動する事態に陥っています。

 当初の黄色いベスト運動の暴徒化や破壊行動のために、パンデミック前から、観光客は減少し、土曜日の営業が困難になった上に、パンデミックの追い討ちを受け、閉店せざるを得なくなった店舗は少なくありません。

 パリの老舗高級食料品店フォションの倒産もかねてからの業績不振もありましたが、この黄色いベスト運動による営業妨害もその一端を担っていたと言われています。

 ヘルスパスのおかげで日常を取り戻しつつあるフランスでも、まだパンデミックは終わったわけではなく、危険をなんとか回避しつつ、パンデミックから被った負債を取り戻していかなければならないのです。

 9週目に突入したヘルスパス反対のデモは依然として、動員数は週を追うごとに減少している様子ではありますが、黄色いベスト運動が台頭することで、本来のヘルスパスへの抗議運動とは別の意味を帯びてしまう危険を孕んでいます。


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