2021年9月10日金曜日

25歳以下の女性への避妊ピルの無料化に踏み切るフランスの事情

   


 オリヴィエ・ヴェラン保健相は、2022年から25歳以下の女性に対して、避妊ピル等の避妊に関する処方(パッチ、インプラント、膣リング、ホルモンIUD(またはIUD)、さらには筋肉内注射等)を無料化することを発表しました。

 フランスでは、ピルなどの避妊薬に関連する費用は、既に2013年から、15歳から18歳の少女に対して、そして、また、2020年8月からは、15歳未満の子供に対しても国民健康保険で100%カバーされてきました。

 この避妊薬の無料化により、その後5年間の期間を経て、この該当年齢の少女の人工中絶の割合を1,000人あたり9.5人から6人へと大幅に減少させることに成功しています。成功しているとはいえ、それでもそんなにいることが驚きではありますが、さらに驚くことには、毎年、12歳から14歳までの1,000人近くの若い女の子が妊娠し、これらの妊娠のうち770人が中絶手術を行なっているという事実です。

 これには、私個人としては、あまりピンと来ないというのが正直なところで、1,000人が妊娠して、そのうち770人が中絶という厳しい現実に直面しているのも悲劇ですが、残りの220人は、どうしているのでしょうか? この統計が取られている年代が12歳から14歳ということもなかなかショッキングなことです。

 今回のオリヴィエ・ヴェラン保健相の発表は、これらの無料化の措置を25歳までという年齢制限の引き上げをしたということですが、これは近年、浮上してきている若年層の貧窮化の問題が背景にあります。

「妊娠の危険に晒される道を選んだ場合に、女性が自分自身を守ることができず、避妊をすることができないのは耐え難いことです。若い女性が経済的な理由から避妊を断念し、更なる悲劇を生んでいる状況を改善するために、国は2200万ユーロを投じて、これらの女性を守る」とオリヴィエ・ヴェラン保健相は語っています。


 大臣は、「経済的、社会的、収入の面で「より自律的」に対応する時代であるため、年齢制限を25歳に引き上げるとしています。 

 これは、単に避妊薬自体だけではなく、それに関わる処方相談、ケアに対する費用をカバーしてくれるものです。下記、無料化される避妊薬の例です。

○ピル(経口避妊薬)(ホルモン避妊薬)

 最も良く知られている方法で、21錠または28錠のパックで、3週間または継続的に毎日決まった時間に摂取する必要があり、排卵をブロックし、妊娠を防ぎますが、感染症を予防することはできません。

 また、2つのホルモンを組み合わせている複合ピルもあり(エストロゲン・プロゲストゲン)、非常に効果的ではありますが、全ての女性に適しているわけではなく、静脈血栓症(静脈炎、肺塞栓症)及び脳卒中、心筋梗塞のリスクを高めるケースもあります。

○パッチ

 皮膚を通してエストロゲン・プロゲストゲンホルモンを拡散させる自己接着パッチ、パッチは3週間毎週交換する必要があります。

○膣リング

 ラテックスあるいは、シリコン、柔軟なプラスチックリングは膣内に装着されるもので、体熱により、エストロゲン・プロゲストゲンホルモンが継続的に拡散されます。

○注射・インプラント

 2つの形態があり、1つ目は、診療所での局所麻酔下での手術が必要で、インプラントはプロゲステロンを継続的に拡散する薄くて柔軟な4センチの円筒形ロッドが上腕の皮下に埋め込まれます。このインプラントは3年間有効ですが、不規則な出血を引き起こす可能性もあります。

 2つ目は、期間の1日目と5日目の間に筋肉内注射によってエストロゲン・プロゲストゲンが体内に取り込まれ、2回目の注射は最初の注射から8〜12週間後に行われます。

○ホルモンまたは銅IUD:3〜5年間の子宮内避妊器具

 IUD、またはホルモンIUSは、医師によって子宮内に配置されます。銅の場合もあれば、子宮内にプロゲステロンを拡散させる場合もあります。どちらの場合も、IUDは子宮内膜の形成を遅くし、精子の通過を防ぎます。3〜5年ごとに交換する必要があります。

 なんだか、色々な方法があるようですが、これらの方法が避妊に対しては有効ではあるとはいえ、費用以外にもなかなかな精神的、肉体的な負担があるような感も拭えません。

 そのために、これらのいずれかの処方相談も無料になっているわけですが、なかなかどうして、今、コロナウィルスワクチンの副反応などが騒がれている中、これらの処方も必ずしも別のリスクがないとも言えないような気もするのです。

 フランスは、アムールの国などと言われますが、国がここまで援助しなければならない現状もまた、アムールの国の一面なのです。


フランス 25歳以下の避妊ピル無料化


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