パンデミックが始まって以来、これまでに、フランス政府から、個人の携帯向けに、ダイレクトにメッセージが入ってきたことが2回ありました。
一度目は、2020年3月の最初のロックダウンの際で、それは、「コロナウィルス感染拡大のため、大統領がロックダウンを宣言しました。ウィルスの感染拡大を防ぎ、命を守るためにこのロックダウンの規則を厳格に守ってください。日常最低限の買い物や仕事のための外出の際には、外出証明書が必要になります」という内容のものでした。
全国民に対してこのようなSNSでのメッセージが送ることが、なぜ可能なのだろうか? 携帯電話の番号をなぜ把握しているのだろうか? 個人情報が・・などと一瞬、思ったものの、恐らく、そのメッセージは私には送られてきたのに、娘には送られてこなかったことを考えると、税金の申告書に記載した携帯電話の番号ではないのか? などと思ったりもしました。
しかし、事態が事態だけに、あの頃のフランスは、本当に壊滅的な被害を生んでおり、このまま放っておいたら、さらに被害が甚大になる重大な局面であったことを考えれば、逆にあらゆる手段を使って、国民にロックダウンをいち早く、徹底して伝えるためにこのようなことができることは、スゴいことだ・・とも思いました。
その後、感染は一時は減少したり、またその後、増加したりを続け、第2波、第3波を迎え、その度に、1回目のような街全体がシンとなるような完全なロックダウンではないにせよ、外出時間帯や距離の制限や、店舗の営業制限などが繰り返されてきました。
けれど、第2波、第3波のロックダウンに際しては、政府からの携帯へのメッセージが送られてくることはありませんでした。
そして、2回目の政府からのメッセージが送られてきたのは、今年の6月22日のことで、「もしも、まだワクチン接種が済んでいない場合、また、もしもワクチン接種の予約が取れていない場合は、こちらのサイトをご覧ください、または、こちらに連絡するか(電話番号記載)、かかりつけの医師に相談してください」という内容のメッセージでした。
それは、すでにワクチン接種が開始されて、フランス人が夏のバカンスに出る直前のことで、その時点では、フランスのワクチン接種率が上げ止まりになっていた時期でもあり、ロックダウンは解除になっている中、デルタ変異種が依然として猛威を振るい続けていたこともあり、昨年の例を鑑みて、国民がバカンスから戻る秋には、第4波を迎える危険性を政府が深刻に受け止めていることがうかがえました。
しかし、その後、7月上旬にヘルスパスが日常生活に適用されることが発表され、事態はあっという間に変わっていきました。
ヘルスパス適用に関しては、PCR検査の陰性証明書も認めるとしながらも、かなり強引な内容ではありましたが、結果、ヘルスパスが適用されることにより、一時は、低迷しかけていたワクチン接種率は再び、大きく上昇し始め、また、ヘルスパスによる人の集まる場所での入場制限により、より明確な感染対策が行われることになり、100%安全とは言えないまでも、安心して、人の集まる場所での日常生活を楽しめるようになりました。
まだまだ、先はわかりませんが、結果、「秋には第4波を迎える」と言われていたフランスは、9月に入ってからは、患者数の減少が続いており、陽性率は7月中旬以来最低の1.5%にまで下がっており、第4波の危険を考える事態どころか、今は、ヘルスパスによる制限の緩和の検討を始めています。
フランス人は日本のように曖昧な制限で従順に自粛する国民ではないので、今回のような強行的なやり方がやはり、必要であったように思います。駄々をこねる子供をより具体的でわかりやすい規則で導いていく・・そんな感じです。
しかし、どちらにせよ、政府はこの緊急事態に際して、より具体的でわかりやすい内容の方針を示し、国全体を導いていくことは重要なことだと思います。
現在のフランスは、「現状にルールを適用させていく」という、かねてからの公言どおりに対応していくためには、今度は、この「ヘルスパス」による制限を緩和させていくことを求められています。
感染悪化に対応しているはずだった秋に、代わりに「ヘルスパス」の緩和を検討する事態には、フランス政府にとっては、恐らく嬉しい悲鳴であるに違いありませんが、まだまだウィルスが絶滅したわけでもない中、また一歩、間違えれば、逆戻りの崖っぷちであることには変わりはありません。
一つ一つの政府の決断が大きく現状を変え、国民は政府に命を委ねていることを感じずにはいられません。
フランスのヘルスパス
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