2021年9月19日日曜日

10週連続のヘルスパス反対デモと3,000人の医療従事者の停職処分と戻ってきた日常

 

すっかり戻った日常を皆がゆったりと楽しむパリの光景

   

 ヘルスパス(ワクチン接種2回済み証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)による公共の場所(レストラン・カフェ、文化施設、娯楽施設、商業施設(2万㎡以上の施設)等)への入場制限を行う規制が発表されて以来、このヘルスパスに反対するデモは10週目を迎えました。

 また、9月15日からは、医療施設で働く医療従事者(病院、高齢者施設、民間介護、ホームヘルパー、消防士、救急隊員など)に対しては、ヘルスパスだけではなく、ワクチン接種の義務化が正式に法的に執行され、この時点で1回目のワクチン接種が済んでいない(または、予約もない)人々は、停職処分となり、実際にこの時点で、3,000人が停職処分となったことが発表されています。

 この処分に関しては、同日、オリヴィエ・ヴェラン保健相は会見を行い、3,000人の停職処分により医療体制が逼迫することはなく、これまでどおり医療のケア体制は確保されていることを発表しています。

 また、この停職処分は一時的なものであり、これらの処分に該当した者は、医療に直接関わる人々ではなく主に医療をサポートする仕事に携わっている人であることも加えて説明し、国民の動揺を抑えています。

 この医療従事者に対するワクチン接種義務化後、初めてのデモということもあり、また、先週行われたデモが動員数自体は減少したものの、一部が暴徒化したことから、一部地域では、予めデモが閉鎖される措置が取られていました。

 このため、10週目のデモは、相変わらず行われてはいたものの、大きな問題もなく、動員数も先週よりもさらに減少し、現在の時点では、デモが沈静化の傾向にあると言えます。

 現実に、フランスは、すでにこのヘルスパスによる効果が顕著に数字として現れ始めており、ワクチン接種率は81.7%にまで上昇し、感染者数も入院患者数、集中治療室の占拠率も全てが減少しており、一部、デモが起こっている場所を除けば、街は、本当に平和な日常を取り戻しています。

 ここのところ、土曜日はできるだけ外出しないようにしていた私ですが、たまたま用事ができて、土曜日の午後にノートルダム寺院の近くに出かけたのですが、一時は、ロックダウンが解除されたとはいえ、飲食店も閉ざされたままで死んだような街だった辺りの様子を見ていた私には、ごくごく日常の午後のひと時を皆がゆったりと楽しむ姿に、ちょっとうるうるしそうな感慨を覚えたのでした。

 マクロン大統領も16日の段階で、フランス全体でのワクチン接種が5,000万人のしきい値を突破し、ヘルスパスによる効果が具体的に数字に現れ始めていることを述べ、現段階では、時期尚早としながらも、「ウィルスの循環が遅くなってきている地域から、特定の制約を解除する準備ができている」と発表しています。

 もはや、ワクチン接種を済ませている人にとっては、ヘルスパスを提示することだけで、かなりの制約は排除されているわけで、それ自体も感染がこのまま減少を続け、ワクチン接種率がさらに上昇を続けていけば、ヘルスパスの提示で入場制限をする必要もなくなり、本当に元どおりの日常にさらに近い日常が戻ってくる可能性があることを示唆しているのです。

 マクロン大統領のこの発表は、デモを計画している人々に釘を刺したという意味もあったかもしれません。

 もっとも、全世界が足並み揃えて、この状況というわけではないので、観光客が多いパリなどは、また、観光客対策として、何か別の感染対策が求められることも考えられます。

 しかし、学生の多い地域であると同時にいつもなら観光客で賑わう(というよりごった返す)ノートルダム寺院界隈などは、フランス国内、また近隣のヨーロッパ各国からの観光客は、少しずつ戻りつつあり、ザ・お土産屋さんのようなお店も再開していましたが、まだまだいつもどおりの観光客は見当たらず、むしろ、地元の住民がゆったりと土曜日の午後を楽しんでいる感じです。

 なんといっても、フランスにとっては、アジアからの観光客が戻らないということは、大打撃なのです。ヘルスパスにより、すっかりフランスには、日常が戻ってきた今、次の課題は、観光客からの感染対策をどう取って、いかに、以前のような観光客を取り戻すことかもしれません。


今はテラス席になっているが、本来ならまともに歩けないほどの人混み


 

一時はこの辺りも全店閉店していたが、元に戻ってよかった・・

 いずれにせよ、ワクチン接種とヘルスパスによる制限で、ある程度の感染を抑え、同時にアンチワクチンやヘルスパス反対のデモを抑えつつ、日常を取り戻しつつあるフランスです。

 現在のところ、フランスは、ワクチンに対して、より伝染性で耐性のある新しい変異体の出現がない限り、このまま感染回避と経済復興の道を進んでいけそうな、そんな楽観的なムードなのです。


ヘルスパス反対デモ パリに戻ってきた日常


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