「孤独のグルメ」という番組は、長く海外に住んでいる私でも、いつの間にか、なぜか知っている日本の人気番組で、食べることが好きな私は、好きな番組でもありました。主人公の五郎さんが美味しそうに食べる食事に「ほ~っ!美味しそう!食べてみたいな~、このお店、行ってみたいな~」と思うことも少なくありません。
これまでは、日本のお店だったので、日本に一時帰国した時に行ってみたいな~と、思ったりもしていたのですが、日本に行ったら行ったで、他にも食べたいものは、たくさんあるし、東京とは限らず、なかなかチャンスがなくて、実際に行ってみたことはありませんでした。
それが、最近、「孤独のグルメ」の映画が出て、五郎さんがパリにやってきた!という話を聞いて、「五郎さんがパリで行ったお店!行ってみたい!」と野次馬根性で行ってきました。
しかし、私は実際には映画は見ていないので、どのように美味しそうだったのか?どんな風に描かれていたのかは、全くわからないので、ミーハーもよいところなのですが、サイトを見てみると、メニューは、まあまあ、なかなかのフレンチで、昼、夜のフォーミュルならば、アントレとメイン、もしくはメインとデザートをいくつかのメニューからそれぞれ選べるようになっていて、それにグラスワイン(赤か白)とコーヒーがついて、30ユーロとまあまあ良心的なお値段だったので、これならいいな・・と行ってみました。
場所はパリ19区、クリッシー広場から歩いて5分くらいのところにあります。
大きな通り沿いではないし、外観もそんなに目立つ感じでもなく、外から見ると、「えっ?今日やってないの?」と一瞬、思ってしまう感じだったのですが、扉を開けると、そこには、独特な味のある感じの空間が広がっていました。
店員さんは、とても親しみのある感じの人々で、暖かく迎えてくれました。
私は、フォーミュルのメニューの中から、アントレにエスカルゴ、メインにロニョン・ド・ヴォー(子牛の腎臓)を選び、それに五郎さんが食べたと聞いていたオニオングラタンスープを追加して注文しました。
近くには、老夫婦が和やかに食事をしていて、まさに同じフォーミュルから私と同じものを食べていらっしゃいました。時々、様子を見に来てくれるお店の給仕の人と、なにやら、他の臓物料理の話をしていて、「ロニョンやトリップなど、私たちはふだんから、色々、食べているし、自分でも料理するけど、ここのは最高!」と絶賛していました。
このご夫婦、今年でちょうど?結婚59周年だそうで、デザートのアイスクリームとマカロンにろうそくをたてて、お祝いしてもらっていました。
私は、ロニョン・ド・ヴォーというものは、これまで食べたことがなく、一度は食べてみたいと思っていたので、今回は良い機会だと思って頼んでみたところ、店員さんは、「これが何だか?わかって注文していますか?」とちょっと心配してくれました。私は苦笑いしながら、「大丈夫、ちゃんとわかっていますよ・・」と言いながら、「でも、どんな感じに出てくるかはわからないけど・・」と内心、思っていました。
注文が終わると、アペリティフの温かいチーズ入りのシューを二つ持ってきてくれました。中身のチーズは「コンテ」ということでしたが、これが軽くてちょっとかじるとチーズの香りがふわっとして、とっても美味しかったです。
次に出てきたのが「エスカルゴ」・・陶器のエスカルゴ用のお皿にグツグツいいながら、出てきます。多くは、エスカルゴの殻ごと焼いたものが出てくるのですが、ここのものは、殻から出したものを焼いてくれるので、食べやすく、あっという間に完食。塩味はわりと薄めでした。
次は私が追加で注文していた「オニオングラタンスープ」こちらも、当然のことながら、焼き立ての熱々、ぐつぐつ状態ですが、これがまた、絶品でした。 ここのオニオングラタンスープは30ヶ月もののコンテを使用しているということで、チーズもたっぷり、もっちりしていて、もうお餅くらいにたっぷりしていて、ぐわ~~んと伸びます。スープ全体の味ととてもよくマッチしていて、もちろん玉ねぎもたっぷりどろどろ入っていて、とても濃厚なスープで、見かけは小さく見えますが、実はとても食べでがあり、もしかして、もうここまででよかったかも?と思うほど、かなりのボリュームがあります。
そして、その後に登場したメインの「ロニョン・ド・ヴォー」ですが、マスタードソースで、プルロット茸(日本語ではヒラタケというらしい)が入っています。マスタードとクリームのソースがとてもよくマッチしていて、何よりもどこかサックリ、どこかふわっともっちりとした食感がなかなか見事でした。
マッシュポテトが添えられており、このマッシュポテトもさすがプロが作るものは、違うな・・と感心しました。
最後に可愛いタスにコーヒーが出てきますが、コーヒーはもちろんですが、それに添えられていたヌガーがとても美味しく、普段、ヌガーなど、ほとんど食べないのですが、甘さがかなり抑えられていて、とても食べやすい軽いヌガーでコーヒーのお供には、なかなか優れものだと思いました。
このお店、初めて訪ねていくにあたって、少しネット等で見てみたのですが、けっこう知る人ぞ知る有名店のようで、色々な紙面(誌面)に紹介されていますし、いくつかの映画のスタジオやレコード会社が近くにあったこともあり、美食家のセレブが訪れるお店でもあるようで、ある誌面では、「ここのゲストブックは社交界の名簿のようだ」と書かれています。
そこまでフォーマルな感じというよりも、むしろ独特世界観のあるレトロな雰囲気も併せたユニークなお店ですが、妙にとても落ち着く感じもあります。
店内にも「パリジャン紙」に紹介された記事などが飾られていましたが、残念ながら、「孤独のグルメ」については、影も形もない・・と思っていたら、数々の展示品の中にフワッと「五郎さん(松重豊氏)」の絵葉書が一枚ありました。
こんなさりげない置かれ方もまた、「なかなかカッコいいな!」と思ってしまうのでした。
偶然、ふらっと見つけて入るような感じの場所でもなく、一瞬、ちょっと入りづらい(高級すぎる感じで腰が引けるとか、そういう感じではない)感じもするけれど、独特な世界観があり、落ち着いた良い感じのお店です。
今回、私が頂いたのは、3種類だけでしたが、おそらく、どれを食べても美味しいのではないかと思われます。
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最寄り駅 Place de Clichy |
しかし、パリでまで、「五郎さん」にお店を教えていただけるとは・・まったく恐れ入ります。
ところで、この映画、なかなかのヒットのようで興行収入10億円を突破したらしいです。
🌟Le Bouclard 1Rue Cavallotti 75018 Paris
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