2025年6月15日日曜日

アンチファストファッション法 ファストファッションと超ファストファッション

  


 今年の4月の段階ですでに発表されていたSHEIN,  TEMU,  Ali Express などの中国からの小包に課税するという話は、「アンチ・ファストファッション法」として、より広範囲に具体的に、また強力なカタチになりつつあります。

 4月の段階では、年間8億個以上の中国からのこれらのネットショッピングによる小包が到着しており、これが少額のために関税がかからずにフランスに入ってきており、この少額だが莫大な数のネットショッピングがフランスの繊維業界・服職業界を脅かしているというもので、これは、航空便という輸送に関してのみならず、低価格のために、結局はすぐに廃棄されてしまう、いわば使い捨てファッションという面からも環境問題にそぐわない見過ごせない状況であるとしています。

 今回、フランス上院に提出され、可決した「アンチファストファッション法」は、単なるアンチファストファッションというよりも、ターゲットを中国のネットショッピングプラットフォームであるSHEIN,  TEMUに絞ったものになっているのが現状で、ファストファッションとして知られているZaraやH&MやKiabiなどのブランドは、超ファストファッションブランドではないとし、すでにフランスで長く価値を見出しているとして、このアンチファストファッションのリストからは除外されています。

 フランスの中規模程度、小規模の服飾業界が不振でここ数年で倒産した企業が相次いでいます。多くの人々が特にパンデミックを境に大きくネットショッピングに傾き、需要の構図が一気に変わり、これに早く対応できなかったフランスに根付いていたはずの服飾ブランドがあっという間に本当に見事なほどにバタバタと倒れています。

 そもそもはファッション業界というものは、流行というものがあり、時代に乗っていなければ、また、それを牽引していくくらいでないと、生き残れない業界でもあります。

 昨今の若者たちは、偽ブランドも隠さず、それで構わないと堂々と偽物をいとわず持って歩く(身に着けて歩く)人が増えたそうで、そこそこ可愛ければ、品質は二の次でも、とにかく低価格のものに手がのびる世代が登場してきています。

 半面、シャネルやディオール、ルイヴィトンなどのハイブランドの価格は天井知らずという値段をつけても、やはりそれを買いたい人は後をたたず、超ハイブランドか超低価格のものが人気で、その中間に位置するこれまでの、そこそこ手が届く範囲の中途半端な位置にあったブランドは、一番生き残りが難しいのです。

 その中間あたりで、大成功しているユニクロは、本当にスゴイと思います。フランスでのユニクロは、日本のユニクロのイメージよりももう少し高級感があり、また、絶対的な品質の良さには定評があり、ネットショッピングはもちろんのこと、パリの大きなコマーシャルセンターには、たいていユニクロの店舗が入っているようになったくらいです。

 本当は、資本主義の社会では、仕方のない話で、これらの中堅どころのブランドもそのどちらにも該当しないながらも、何等かの押しを開発して、生き残らなければならないところ、フランスは、これを環境問題という大義名分を用いて、法律で超ファストファッションの勢いを止める手立てを打とうとしているのです。

 フランス環境庁によれば、フランスでは毎秒35着の衣類が廃棄されているといいます。たしかに環境問題的には、よいことではないとはいえ、本音を言えば、欧州企業やフランスの企業を保護するための法律といっても過言ではありません。

 この法案は、排出量、資源利用、リサイクルの可能性などファストファッション企業が販売する製品の環境への影響を評価するエコスコアシステムを導入し、最も低いスコアを獲得したブランドには、2025年から商品1点あたり最大5ユーロの税金が課せられ、2030年には、10ユーロに増額される可能性があります。ただし、税金は商品の小売価格の50%を超えることはないことになっています。

 また、この法には、超ファストファッションの広告禁止やオンラインで宣伝するインフルエンサーへの制裁も含まれているそうです。

 しかし、この法がターゲットにしているのは、主に2つのブランド(SHEIN,  TEMU)であり、フランス国内で生産・販売されている、衣料品の少なくとも90%を占めるブランドは除外されています。

 この法案はまだ上院で可決しただけで、まだ完全に施行されることが決定されたわけではありませんが、なんらかのかたちでこの中国のファストファッションに制裁を加えることはほぼ確実です。


アンチファストファッション法


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