2022年8月31日水曜日

固定資産税の増税と未申告プールの税金徴収1,000万ユーロ

 


 毎年夏のバカンスの時期の終わりになると、3,000万人以上の住宅所有者が固定資産税の請求を受け取り、現実に引き戻される嫌な時期を迎えます。

 固定資産税などの税金は、毎月、引き落としで支払うこともできますが、毎月、支払っていない世帯に対しては、10月中旬に一括で納めることになります。

 今週から固定資産税の納税通知書は、オンライン化されています。お役所仕事は、とかくスムーズに運ばないフランスでも、本当に税務署だけは、しっかり働きます。

 価格の上昇は、エネルギーや食料だけではなく、あらゆるものがインフレに直面して、政府もまた、固定資産税の計算の基礎となる地籍上の賃貸価格を3.4%再評価することを決定し、2022年予算で議決させています。これは、ここ数年よりもはるかに大幅な増加です。

 これにより、フランスのいくつかの都市で固定資産税が引き上げられ、マルセイユや、アンドル・エ・ロワール県のトゥールでは、1年で15%以上引き上げられ、その他の場所でも続々と固定資産税は高騰しています。それにしても、15%引き上げとは、なかなか穏やかではありません。

 パンデミックをきっかけに、リモートワークが浸透した結果、家賃の高いパリを離れて、地方都市に家を買って引っ越す人が増えましたが、引っ越した先でも今度は固定資産税増税とは、厳しい世の中です。

 地方都市の家が売れて嬉しい悲鳴をあげていた不動産業者も固定資産税の上昇は、地方での家を購入する大きな躊躇いの原因となることを懸念しています。

 また、税務署は、今年の固定資産税の徴収に向けて、未申告の増築、ベランダ、駐車場、物置、プールなどの追跡にも力を入れ始めました。これは、昨年10月から、財務省が始めた家の庭に隠れた未申告プールを追跡する実験に端を発しており、グーグルとキャップジェミニが開発した人工知能ソフトウェアが使われ、衛星画像をもとに納税者の申告と比較が行われ、未申告部分の取り立てを行うわけです。

 一般的に固定資産税の計算のため、不動産の賃貸価値を高めるような工事は、地面に固定されている限り申告が必要で、建物の拡張はもちろん、テラス、ベランダ、庭の物置、プール、駐車場、部屋の増設なども含まれ、工事完了後90日以内に申告書を提出しなければなりません。

 また、固定資産税に加え、増築部分には開発税がかかる可能性があります。これは、建築許可や工事の事前申告など、計画的な許可を必要とする工事に関するものです。物置の表面積が5㎡を超えると有料になります。

 今年の夏はこの追跡のおかげ?で未申告であったプール2万箇所が発見され、財務当局には、1,000万ユーロの収入となりました。今年の夏は実験的に行われた調査でしたが、これに味をしめた財務省は、これを全国規模に拡大し、一般化することを発表しています。

 都市計画法により、工事の申告を怠った所有者は、建築面積1㎡あたり1,200ユーロから6,000ユーロの罰金が課せられます。

 まあ、もともと払わなければならないものを払うことになっただけではありますが、特に今年のプールの摘発については、干ばつによる水不足のため、思う存分使用できなかった人もいて、気の毒な気もしますが、工事終了から90日以内に申告した場合は、2年間固定資産税が免除される特典があります。

 どちらにしても、私には、財産もなく、何も持たない私には、関係ない話で、何も心配することはありません。

 何かを持てば持つほど管理や手間がかかり、身軽なのが一番!と思うのは、私の負け惜しみでしょうか?


固定資産税増税 未申告プール摘発


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2022年8月30日火曜日

フランスの物価上昇と年度始まりの100ユーロのインフレ手当

  


 ここのところ、買い物に行くと、ちょっとギョッとするほど、あらゆるものの価格が上がっているような気がします。普段、具体的に正確な値段を把握していなかったものでも、値段を目にして、「えっ??」とびっくりして、伸ばした手を引っ込める感じで、そんな感じで手を引っ込めていたつもりで買い物しても、最後にレジで、また、「えっ??」そんなに買っていないはずだったのに・・とウンザリします。

 かなりボーッとしている私が気付くほどの値上げなので、よっぽどなのだろうと思うし、散財してしまった・・というわけでもないのに、どんどんお金を使っているというのは、ちょっと恐ろしい気がします。

 それでも、ヨーロッパの中では、まだフランスは物価上昇率はマシな方だと言われていますが、7月の物価上昇率は、全体で約 6.1%と発表されています。でも感覚的には、もっと上がっている気がします。

 ちなみに、日本はどの程度なのかな?と調べてみたら、総務省統計局の発表では7月の物価上昇率は 2.6%でフランスに比べるとだいぶ緩やかなようです。

 大統領選挙を前後して話題にあがっていたインフレ手当(当初はフードバウチャーと呼ばれていました)は、ずっと先延ばしになっていましたが、9月の新年度開始を前にして、9月半ばに1人あたり100ユーロが支払われるようです。

 しかし、今回は、常態的にRSA、RSO、AAH、APL、ASS、AFIS、AVFS、AER、ASPA(障害者、家族・社会生活支援、住宅支援、連帯配分等)などの社会支援を受けて生活している人に限定されており、前回のインフレ手当に比べると対象となる人は少なくなる印象ですが、奨学金を受けている学生(該当者は約150万人)も、一定の条件下で支給されます。

 それでも該当するのは1,100万世帯にまで、のぼると言われており、基本1世帯あたり100ユーロ、扶養家族1人あたり、追加50ユーロが支払われます。ですから、例えば、3人の子供を扶養している家庭は、250ユーロを支給されることになります。

 この給付金を受け取るためには、何の申請もする必要はなく、自動的に口座に振り込まれるようになっているようです。

 このあたりは、フランスの良いところで、最も貧窮している人に対する援助は、一度、基本的な手続きをしていれば、かなり円滑です。

 しかし、この100ユーロがどの程度、助かるのかと言えば、未知数でもあり、全てが値上がりし続けている現在の状況を考えると、当然、値上がりしている物価のために泡と帰すだけの話で、元の原因を排除していただかない限り、解決しない問題です。

 同時にフランス政府は、国民、企業に向けて、できる限りの節電の呼びかけを始めました。特に企業に向けては10%の節電計画を建てるようにと具体的な数字までを示しています。冷房があまり普及していないフランスでは、電力消費は主に冬に消費量が上がります。まだ、ようやく暑さが和らいできたばかりの段階で、もう節電の呼びかけとは、あまりに用意周到で、逆に空恐ろしい気もしています。

 物価高騰・インフレによるものや、電力供給確保のための節電など、しめつけられる感がなかなか強まっていきます。

 まさに、マクロン大統領が言っていた「豊かさの終焉の時」を実感する日々です。

 日本の物価上昇は、フランスほどではないようではありますが、貧窮する家庭に対する社会保障はあまり良さそうではない印象。どちらが生きやすいのか、考えてしまいます。


フランスのインフレ手当 100ユーロ


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2022年8月29日月曜日

海外在住と日本の家族 独り残された父

 

  


 海外に在住することを決めた段階では、私の場合はあまり詳しく後先を考えていませんでした。別に海外に永住すると心に決めていたわけでもないし、もしも私がもう少し思慮深い人間で、後のことまで色々と心づもりをして考えていたら、海外に移住することなどできなかったかもしれません。

 しかし、私だけでなく、周囲の家族を含めての、すべての人々の先のことなど想像がつかないことでした。

 だからといって、海外に移住したことを後悔しているわけではありませんが、最も困ったことの一つは、日本にいる両親が歳をとっていって、健康を害する場面に直面したときだったような気がします。

 娘が生まれて、私がフランスで就職して約1年後、バカンスが取れるようになってからは、娘を連れて毎年のように日本の両親に会いに行っていましたが、本当に一緒に買い物に行ったり、山荘に行ったりと、楽しいばかりの日本への帰国は、最初の数年だけでした。

 その後は母の心臓病が悪化して、急に入院したと聞いて、慌てて日本に帰国して、退院してから母が家で過ごしやすいように実家での母の生活環境を整えたり、介護保険の申請に行ったり、それから先、母は数年、なんとか家で寝たり起きたりの生活を続けていましたが、普段、何もできないからと日本に行った時には、家の家事から何から全て私が請け負いながら、娘を日本の小学校に体験入学をさせてもらったりとまるでバカンスとは思えない忙しい時間でした。

 しかし、今から思い起こすに、それでさえ、母が生きていてくれた頃はそれはそれで、かけがえのない楽しい時間でした。

 母は、結局、69歳で亡くなり、1人残された父は当時72歳でした。父は子供の頃から、ずっと同じところに住んでいたこともあり、今さら自分が他の場所で暮らすということなど微塵も考えていなかった様子だったし、当時から、私も弟も海外在住だったため、父と同居するということは、考えていませんでした。

 72歳にして初めて一人暮らしをすることになった父は、そこまで心配される持病があるわけではなく、少しずつ時間をかけて、独りの生活を築いて行ったようです。幸いにも父の兄弟家族が同じ敷地内の別の家に住んでいたことも、彼にとっては何よりも心強いことだったと思います。

 それから、10年くらいは、碁会に通ったり、ネットに挑戦して株式投資をしたり、友人と旅行に行ったりと、父にこんなに親しくしていただける友人がいたのか?とびっくりするほど、それなりに楽しく暮らしていたようです。

 その間、私の方は、フランスで夫が急に亡くなるということもあったりして、しばらく、日本には行けない期間が数年ありました。

 途中、東日本大震災で日本が大変なことになっていると言う時には、もしも、日本が危険なら、フランスに来たら・・と父に話したことがありましたが、当時、アメリカにいた弟も同じことを父に話していたようで、父は、長期間、家を空けることはできないからと私たちには、断っていましたが、周囲には、アメリカからもフランスからも避難してくれば?と言ってくれていると嬉しそうに話していたそうです。

 当時、父はすでに引退していて、長期間、家を空けられないというのも、私には、よく意味がわかりませんでしたが、後々になって考えるに父にとって、住み慣れた家への執着というものはかなり大きなものであったことをしみじみと思わせられました。

 以前、親をフランスに呼び寄せたという知人がいましたが、しばらくフランスで一緒に生活したものの、結局、日本で介護施設に入れることになったようです。

 日本で生まれ育ったはずの自分の子供が2人とも海外生活を送っているというのは、そうそうあることではないことなのかもしれませんが、我が家の場合は、まさに日本には、父が独り残ったことになりました。

 フランスにいる日本人の友人などでも、たいていは、他の日本にいる兄弟がいて、彼らが親のことは、彼らに任せているという人が多いのですが、先日も久しぶりに日本に帰国した友人が、久しぶりに母親に会ったら、かなり、危うい感じになっていて、愕然としたと話していました。

 しかし、独りになって、歳をとればとるほど、家や住まいを変えるというのは大変なことで、住み慣れた家、地域とともに、友人や親戚なども全てひっくるめた住まいということなわけで、息子や娘がいるからといって、それらを全て捨てて、海外へ・・とは、なかなか思い切れないのもわかります。

 父は英語は堪能で、弟が住むアメリカには、一度、遊びに出かけたことがあったのですが、フランスは言葉の問題もあったのか、父にとってはハードルが高かったようで、結局、一度もフランスに来ることはありませんでした。

 いよいよ、父も身体が弱ってきた頃には、父からは、特に私に対して、具体的に何か言ってくることはありませんでしたが、周囲の親戚などからは、年老いた親を放ったらかしにしておくのか!!などと、お叱りを頂いたりもして、自分たち(私たち姉弟)は身動きがとれず、弟が父に介護施設に入るように説得したりしたものの、父はなかなか受け入れず、「ここで野垂れ死んでもいいからどこへも行きたくない!」と言い張っていましたが、最後の最後には、体調が回復するまでという約束で施設に入りました。

 当時、私はちょうど娘の大学受験前で、今さら日本へ本帰国するということは考えられず、また、一人親の家庭で、裁判所の監督下にあった我が家は娘が18歳になるまでは、娘を一人にして家を空けるということは絶対にできなかったので、そうそう簡単に動くということもできなかったのです。

 あれが数年ずれていたら、私は日本に帰国していたと思うのですが、当時は私には、他の選択肢はありませんでした。幸い弟は、子供の将来を優先すべきだと理解してくれていたので、助かりましたが、私は私で、色々重なる時には重なるものだ・・と、ちょっと参っていました。

 父が亡くなって、もう数年経ちますが、今、私の周囲では、たとえ親子ともに、日本に住んでいても、親の介護問題に頭を悩ませている人が多く、大変だな・・と思うと同時に、両親ともにいなくなってしまっている私にとっては、ちょっと羨ましかったりもするのです。

 しかし、両親がいなくなってしまえば、今度は自分の番で、私など、元気なうちは、願わくば、フランスと日本と半々くらいで暮らしたいなどと思ってはいるものの、パンデミックや戦争、航空運賃の爆上がりなど、そうそう簡単には、日本には行けない状況になり、ほとほと、予定どおりには、人生うまくは行かないものだ・・とつくづく思っています。

 とかく、人生は思い通りには行きませんが、その時にできることを自分で選択していく積み重ね・・それでも、家族の問題は、海外在住者にとっては、特に大きなハードルでもあるのです。


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2022年8月28日日曜日

エアフランスのロストバゲージは45日経っても戻らない上に90日後には捜索も打ち切り

  


 今年の夏のバカンスシーズンの始まりのシャルル・ド・ゴール空港は、航空会社や空港職員や消防隊員のストライキのためにフライトキャンセルや空港のシステムダウンも重なって大混乱となりました。

 特に、飛行機に搭載されないまま出発した人の荷物がシャルル・ド・ゴール空港に置き去りにされ、この期間に出たロストバゲージは3万5千個と言われており、山積みにされたまま放置されているスーツケースに当事者ではない私でさえも、ゾッとしたくらいでした。

 シャルル・ド・ゴール空港での出来事のため、当然、一番、被害の多かったのはエアフランスのフライトに関するロストバゲージが大部分だったようで、当初はエアフランスは、「1週間以内には、荷物を届ける」と発表していたものの、その後、長い間、そのスーツケースの山がなくならなかったという話も聞いていました。

 それは容易に想像がついた話で、その後もバカンスシーズンで毎日、1,000機以上の離発着便の荷物の処理だけでも人員が足りない中、フランス人が残業してまで、このロストバゲージを積極的に片付けていくとは、とうてい思えませんでした。

 そして、そろそろ、夏のバカンスも終わりという今の時期になって、まだ、空港に残されているスーツケースが800個以上あることを聞いて、唖然と言う気持ちと、やっぱり・・という気持ちと、それでも、ずいぶん減っていたんだ・・という気持ちが混在しています。

 いくら、長々とバカンスを取るフランス人とはいえ、もうそろそろ2ヶ月近くも経てば、さすがにロストバゲージの持ち主はバカンスから戻っているのに、それでも、まだ自分の荷物を受け取れないというのは、どう考えても異常です。

 フランスの法律では、ロストバゲージから21日後には、航空会社が無くなった荷物に対する補償金が支払われることになっていますが、これはなくなった荷物に対する補償金のみで、バカンスを台無しにされた慰謝料は含まれていません。

 私は、これまでにロストバゲージの被害に遭ったのは、1度きりで、しかも、完全に荷物が無くなったわけではなく、「なにも荷物は同じ飛行機で届けるとは言っていない」とばかりに、「届けるんだからいいでしょ!」という感じで、当然のように到着の翌日に荷物は滞在先のホテルに届けられましたが、それだけでも、当時の私は憤慨し、一晩、着替えも何もなく、不便な夜を過ごしたことに腹をたてていましたが、今回のシャルル・ド・ゴール空港のロストバゲージは、ちょっと桁違いの被害です。

 しかも、それに加えて、エアフランスは、90日後には、荷物の捜索も打ち切るのだそうで、その無責任さに目を丸くしています。

 エアフランスは、パンデミック前には、パリから日本への直行便が1日2便は出ていたこともあり、利用することも結構、多かったし、機内サービスやCAの対応も妙に媚びた感じがなく、スパークリングワインではなく、必ずシャンパンがあるのも嬉しかったりして、決して嫌いではなかったのですが、何回か続けて、ストライキのために勝手に予約便を変更されて、急に自分の予定も変更せざるを得なくなって、慌てたりしたこともあって以来、もうこんなのは懲り懲りだ・・と、できれば避けるようにしてきました。

 今回のようなロストバゲージの話を聞いてしまったら、ただでさえ、できれば避けたいと思っていたエアフランスは、絶対、嫌だ!と思ってしまいます。

 旅行のために持って行ったスーツケースが旅行中には届かずに帰ってきてから受け取るというのも、かなり腹立たしく、虚しいものだと思いますが、それでもさらに長期間、戻ってこないどころか、90日経ったら、もう探してももらえないなど、なぜ、こんな無責任な対応が黙認されるのか、腹立たしいのを通り越して、不思議です。


エアフランス ロストバゲージ 90日後は捜索停止


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2022年8月27日土曜日

フランス 教育革新基金に5億ユーロ投入

  


 私がフランスで仕事を始めたのは、娘が1歳になるかならないかの頃で、初めての子育て、しかも、まだフランスに来て1年も経たないフランスのこともよく知らない状況で、周囲には、子育ての先輩が結構いて、色々と忠告をしてくれました。

 まあ、同じフランスでの子育てといっても、それぞれ、家族構成や生活環境は違い、全てを参考にできたわけではありませんでしたが、私にとっては、大きく2つのことを心に留めていました。

 そのうちの一つは、「放っておいたら、日本語はできなくなってしまうから、心して日本語教育には取り組まなければいけない」ということと、「学校は小学校から中学、できたら高校までは、私立に入れた方が良い」ということでした。

 日本語教育については、別にも書いているので、ここでは省くことにしますが、保育園、幼稚園と経て、少しずつ、フランスでの生活の中で、周囲の様子なども見えてきて、外で目にする子供の様子などを見ていて、これは、下に引きずられたら、大変なことになってしまうだろう・・とやはり子供の学校については、真剣に取り組まなければならないと思うようになりました。

 大人でも同じですが、フランスは上と下の差が激しく、クズは限りなくクズで、クズの予備軍は、残念ながら、子供の時から始まっていることを周囲のゴロつきのような子供たちを見ていて思うようになりました。

 私たちにとっては、引越しのタイミングと重なり、娘の小学校の入学の申し込みをした時には、すでに遅く、娘の入学希望はウェイティングリストに乗せられることになりましたが、たまたま最後のタイミングで娘が良い成績表をもらってきたので、それを希望の学校に送ったところ、学校から面接の連絡が来て、結局、小学校入学時には、娘は私立の学校に通えることになりました。

 それからは、私は、ほぼ、学校についての心配はしておらず、せっかく入れた学校・・追い出されないようにね・・くらいで、その他は、日本の学校とは異なる様々なシステムに「フランスの学校というのは、こんな感じなんだ・・すごいな・・」などと感心させられることも度々ありました。

 私は、娘の通っていた学校にとても満足していたので、その学校に入るまで、公立の学校に行かせて、クズの仲間入りをしたら大変・・などと思っていたことはすっかり忘れて、「フランスの教育はなかなか素晴らしいのに、世間一般を見回すと結果は、これってなぜだろうか?」などと不思議に思っていたくらいでした。

 しかし、後から思うに、娘を通わせていた学校は、世間一般の学校とは、全然、違う学校だったわけで、やはり、周囲の子育ての先輩方に言われていた「小学校からは私立へ行かせた方がいい」という忠告は、まことに有難いものであったと感謝しています。

 どうにか、娘が無事に成長してくれたのも、大きくは、この学校のおかげでした。

 現在の厳しい世の中にハッキリと現実をつきつけたマクロン大統領が、教育についても提言を始め、「私たちの教育システムは、上手く機能していない・・」と指摘し、教育を革新するいくつかのテーマを示し、これにかかる予算「教育革新基金」を5億ユーロを提供することを発表しました。

 やはり、一般的なレベルのフランスの教育には、問題があることを彼は見過ごしてはいなかったのです。

 幼稚園では、子どもの発達への配慮を強化。小学校では、引き続き基礎的な学習を重視し、スポーツの日常的な練習を一般化。5年生からは、週1回の半日授業「アベニール」を導入し、生徒が「多くの職業、特に技術、手作業、関係性のある職業を発見」できる機会を設けます。

 高校については、コアカリキュラムにおける数学の強化を挙げています。ここのところ、フランスの子供の数学の学力低下が語られることもしばしばあり、例えば、ウクライナから避難してきている子供たちがフランスの学校に通うと、フランス語については問題があるのは当然としても、ウクライナの子供たちの数学のは、フランスの学校の1年近く先のレベルだった・・などという話を聞いたりもしました。

 マクロン大統領は、非常に現実的で現実をはっきりと述べるので、嫌われるところもありますが、特に教育に関しては、この下を救いあげる努力、教育に力を入れようとしていることが伺えます。

 フランスはれっきとした格差社会で、なかなかこの差を埋めるのは、容易ではありませんが、少しでも社会の底辺にいる人々に機会を与えるチャンスを設けようとしているのがわかります。

 教育は、すぐに成果が出るものではありませんが、少なくとも将来を担う子供たちの教育についても、他の政策同様、あるいは、それ以上に注力しようとしてくれている社会には、好感をもつことができます。

 また、教師といえば、低賃金のために優秀な人材が集まらないこともあり、教師の賃金についても、2,000ユーロ(net)以下でキャリアをスタートすることはない、また既存の教員については、10%の賃上げを約束しています。

 フランスにいるとはいえ、日本人ゆえ、ついつい比べてしまう日本ですが、現在の教育事情については、よくわかりませんが、少なくとも、子供の教育についての話題が日本の政治家からあまり上がらないことは、とても残念に思っています。


フランス 教育革新基金5億ユーロ


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2022年8月26日金曜日

「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」マクロン大統領閣僚理事会での厳しめのスピーチ

  


 マクロン大統領が閣僚理事会を開催し、その冒頭で行ったスピーチが衝撃を与えています。

 マクロン大統領は、世界を襲っている「一連の危機」を振り返りながら、国際関係の非常に厳しいパノラマを描写しながら、非常にインパクトの強いメッセージを発信しました。

 閣僚理事会の席上ゆえ、一応は出席している閣僚に向けての発言ではあるものの、報道カメラが入っている以上、それは、少なからず国民に向けてのメッセージでもあり、同時に国民の不安を煽るものでもありました。

 「私たちは豊かさの終焉、不安のない生活の終焉、先行きの見える生活の終焉を経験しており、コストのかからない流動性の終焉を経験している。水のように、ある素材や技術の希少性が再び登場する。私たちは、今、決して自暴自棄にならずに行動を起こさなければならない」そして「私たちは気楽な時代の終わりを生きているのであって、我々の自由というシステムには犠牲が必要かもしれない」とフランス人の反感を最も煽るようなことも、あえて付け加えています。

 「この大きな変化に直面し、国民は大きな不安を抱えて反応するかもしれません。このような困難に直面したとき、私たちには待つという選択肢はありません。志を持って国を興し、守るべきものを守り、必要とする人を守らなければなりません。」

 「私は真剣さと信頼性を期待します」「このような不安や課題に直面すると、時に何でもかんでも約束したり言ったりしがちです。世界では、人々が望んでいることを言うのが魅力的に見えるかもしれません。彼らが聞きたいことが効果的で役に立つこともあります。」

 「しかし、我々はまず、それが有用で、効果的で、公正であるかどうか、あるいは彼らを説得しに行く必要があるかどうかを自問自答することによって、理由をつけなければならない」。 これは、閣僚向けの注意喚起で、「不用意なことを言うな。容易に約束をするな。」ということです。そして最後に、「私は多くの合議制を期待している」と、締めくくりました。

 これは、この混乱の時期に起こりうる政府の不協和音を回避するための発言とも受け取ることができます。

 また、このマクロン大統領のスピーチを補うように、政府のスポークスマンであるオリヴィエヴェラン氏が「秋には政府が施策のパッケージを提示する」ことを説明しています。

 しかし、このマクロン大統領のメッセージは、何よりも戦争や地球温暖化のための干ばつ被害などから起こるエネルギー危機やインフレなどに直面して、9月の新年度の始まりとともに当然、起こるであろうデモに対しての先制パンチのようなものであったような気がしています。

 げんきんなもので、フランスでは、その大小にかかわらず、年間を通して、毎週のように、土曜日にはデモが行われていますが、7月、8月の夏のバカンスシーズンには、しっかりみんながバカンスをとって、デモも行わないのが普通です。(昨年は、アンチワクチン、アンチヘルスパスのデモがありましたが・・これは例外的な場合・・)

 今年も夏の間には、目立ったデモはほとんど行われていません。

 バカンスも終わって、さあ、これから、仕事!という時になると、デモも再開するのです。

 今年は、この混乱の世、特にデモは激しいものになるのは必須のところ、マクロン大統領は、このデモを迎え撃ちする、わざと強めのメッセージを国民に直接という形でなく、閣僚理事会という場を通して発表したのは、それなりの作戦であったような気がしています。

 人はこのような混乱の時、明らかに今よりも世の中が悪化すると思われる中でも、どこかに希望的観測を抱くもの、しかし、さらに悪化して「こんなはずじゃなかった・・」と怒りが爆発します。たとえ、このようにハッキリといわれることは、ショッキングでも、マクロン大統領は、「現実を直視し、受け入れるところは受け入れて対応していくためのカンフル剤が必要である」と考えたのではないか?と思っています。


マクロン大統領 豊かさの終焉


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2022年8月25日木曜日

フランス発の航空運賃 1年間で 43.5%上昇

  


 フランス民間航空局(DGAC)によると、2022年7月、フランス発の航空運賃の上昇率は、1年前と比較して、すべての目的地を合わせて43.5%に達しました。

 1年前と言われても、1年前の7月といえば、フランスでは、まだまだワクチン接種が思うように進んでいかないためにヘルスパス(ワクチンパスポート)の起用が発表された頃で、ヘルスパスがないと、食事にも旅行にも行けないことになり、皆、慌ててワクチン接種に走り、バカンス先でもワクチン接種をできるようになっていました。

 1年前のそんな時期でも、フランス人は、負けじとバカンスに出かけていましたが、それでも、やはり、普段は海外に出かける人も国内旅行、あるいは、近隣のヨーロッパ諸国に切り替える人が多く、また、外からの観光客もちらほらとは見えたものの、観光業界(特に航空業界)は通常モードには戻っていませんでした。

 私自身もまだまだ、長距離の移動は怖くて、バカンスに行くつもりもなかったため、航空運賃などをチェックすることもしていませんでした。感染が怖かったこともありますが、せっかく旅行に行ってまで、やれ検査だ隔離だなどという煩わしさはごめんこうむりたかったこともありました。

 パンデミックが始まって以来、来年には、元に戻るかな?と毎年のように思いながら、もう2年以上、次はウクライナでの戦争が始まり、日本行きなどの飛行機はキャンセルが続いたと思ったら、今度は迂回便のための長距離フライトと燃料費高騰のためのチケット爆上がり。

 普通なら、経由便ならば、時間がかかる代わりに、少々、お値段は安くなるところが、今までよりもずっと時間がかかるにも関わらず、値段はずっと高くなっているのですから、納得いきません。

 そして、それは、日本行きに限ったことではなく、フランス発の航空運賃全般にわたる値上げ(まあ当然ではあるけど・・)、しかも1年で40%以上も値上げしているなど、狂気の沙汰です。それでも、みんなインフレ、インフレ・・と騒ぎ立てているわりには、フランス人はバカンスには出かけるところを見ると、みんなお金あるんだな・・と感心したりもします。

 2022年の夏は、観光業は、ほぼ通常どおりまでに回復しているとのことで、ユーロコントロールの調査によると、フランスの空港では、1日に約4,200便が運航され、これはパンデミック以前の数字の90%の数字にまでのぼっているということです。

 一般的に「航空券の価格は需要と供給によって決まる」と言われていますが、需要は、ほぼ戻りつつあるとはいえ、これにプラスして、燃料費の高騰の問題があります。

 2021年半ばには、燃料がコストの15%を占めていたのに対し、2022年上半期には29%を占めていると言います。このコストに入れられる分と燃油サーチャージとして追加に乗せられる金額をどう設定しているのかは疑問なのですが、JALは、10月から、燃油サーチャージがまた値上げになり、北米、中東、オセアニア、ヨーロッパ線は燃油サーチャージだけで114,400円に値上げするとのニュースを見て、ちょっともうため息も出ない感じです。

 日本は最近、外国人観光客の入国制限を緩和するという発表があったというので、これでフランス人も日本に旅行ができるようになるんだ!!と期待したら、なんのことはない、大した緩和ではなく、依然として個人旅行客は認めないという意味のわからない緩和。しかも、もうすぐ夏休みも終わりというタイミング。これでは、日本へ行く外国人観光客は戻りません。

 パンデミック前の日本行きの飛行機(パリ⇄羽田便)などは、9割型フランス人で埋められていたのに、これらの人々が行けないということは、「航空券の価格は需要と供給によって決まる」のならば、日本行きの航空券の値段は、まだまだ下がらないということで、これに燃油価格の高騰分を加算すれば、雪だるま式に高くなるわけです。

 しかし、パンデミックから戦争と続き、失われていく時間は長くなるばかり、夏のバカンスシーズンが終わったら、もう日本行きは諦めて、近場のヨーロッパの中でどこかへ行こうと思っていたら、欧州域内路線では54.5%値上げしているとのことで、ちょっと萎えてしまいました。

 そして、また、フランス民間航空局(DGAC)が、「航空券は、冬から来年にかけて5〜10%値上げする」と追い討ちをかけるような発表。

 航空運賃が少しでも下がるのを待つか、失われていく時間を少しでも早く取り戻すか? 悩ましいところです。



航空運賃値上げ


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2022年8月24日水曜日

救急車が電動キックボードに乗ったティーンエイジャー2人を轢き殺す陰惨な事故

  


 この間は、消防士の森林火災放火事件があったと思ったら、今度は救急車がティーンエイジャー2人を轢き殺すと言う事件が起きて、驚愕しています。

 消火活動にあたるはずの消防士が放火し、怪我人や病人を助けるために駆けつける救急車が人を轢き殺してしまうのですから、本末転倒このうえない話です。

 月曜日の午後6時半頃、リヨン2区を電動キックボードでバスと二輪車、スクーター専用レーン(一般車道の横のレーン)を走行中だった15歳の少女と17歳の少年が後から猛スピードでやってきた救急車に跳ね飛ばされて死亡しました。

 目撃者によると、2人は数メートルも跳ね飛ばされたと言われており、そのスピードがどれほどのものであったか、この事故が故意によるものではないにせよ、視界のきかない場所でもなく、前方に人がいることがわかれば、人が数メートルも飛ばされるスピードのまま走り続けたというのは、合点がいきません。

 救急車の運転手はアルコール反応はないものの薬物反応についての検査結果はまだ出ていません。

 しかし、リヨン検察庁の発表によると、この救急車の運転手(36歳)は、過去に28件の交通違反の前科の記録が残っており、2019年に一度、運転免許が失効になっており、保険に加入していないことや、免許証で認められている以上のカテゴリーの車を運転していることも、警察に知られていた、なかなかの注意人物であることがわかっており、2020年3月に再交付された8点の点数は2点しか残っていない仮免許で運転していたことが発覚しています。

 このような人物が一般車両を運転することさえも、恐ろしい話なのに、ましてや、他の車より優先的に運転することが許される救急車の運転手という立場で運転していたことは、彼の雇用についても問題があったと思わざるを得ません。

 救急車に撥ねられた2人のうち、1人(15歳の女の子)はほぼ即死、もう1人(17歳の男の子)は、蘇生措置がとられたものの、すぐに死亡しました。

 衝突した運転手は同乗者とともに、ショック状態で入院したものの、すぐに回復、直後に警察に身柄を拘束されました。

 リヨン検察庁は過失致死罪の捜査を開始し、ローヌ公安局に委託しています。

 新年度が始まる寸前の、まだまだ若く健康なティーンエイジャーの命があっという間に失われてしまったこの事件、どうしてもお母さん目線になってしまうのですが、この子たちのご両親、ご家族にしたら、まさに青天の霹靂、信じられない出来事で、悔やむにも悔やみきれない事故であったであろうと思います。

 亡くなってしまった2人は、一般車道を走っていたわけもなく、専用レーンを走っていたのだし、この運転手に全面的に非があったのはもちろんですが、このような人物を救急車の運転手として雇用していた側の責任も深く問われるべきだと思います。

 他人事のようですが、このような事故の話を聞くにつけ、子供が無事に育って大人になるということは、奇跡的なことなんだと思ってしまいます。


救急車死亡事故 電動キックボード


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2022年8月23日火曜日

日本の国税庁キャンペーン「サケビバ」にはフランス人も唖然

  


 最近、日本のびっくりするようなニュースをフランスのテレビで知ることが増えた気がします。

 つい、先日、フランスのテレビのニュースで日本の「サケビバ」の話を報道していて、かなり、驚きました。

 このキャンペーンは、20歳から39歳の若者に向けて、酒類業界の活性化や問題解決に対するプラン、特に若年層の需要に向けた新たなサービスやプロモーションなどを募るもので、国税庁のサイトを見ると、これに応募して、なんかいいことあるのかな?と見ると、参加費無料とあるだけで、何もメリットはなさそうです。アイデアを募集しておいて、参加費無料とは、なんたる上から目線!

 この「サケビバ」に関して、フランスでは、「日本では、パンデミックの影響などで若者の酒類の消費量が停滞し、税収が大幅に減少したために、これを回復させるために、「サケビバ」なるキャンペーンを始めた・・経済が低迷し、約10兆ユーロの財政赤字を抱える国情」「経済規模の2倍もの公的債務を抱える日本では、新しい収入があれば何でもいいのだ」などと言われています。

 もしも、これが酒造メーカーがキャンペーンを張るというのならば、別に驚くこともなく、ニュースにもならなかったと思いますが、これが日本の国税庁が主催というのだから驚きなのです。

 フランスでは、テレビや映画館などのメディアでは、アルコール飲料のコマーシャルは禁止、また、スポーツの協賛も国により、禁止されています。街でポスターなどにも、必ず「アルコールの過剰摂取は、健康を害する恐れがあります」というような内容を併記することが義務付けられています。

 つまり、国民の健康のために、アルコール摂取量の削減を奨励しているのです。まあ、そうは言っても、アルコールは適度に・・という程度という話ではあります。

 それを守って、アルコールをほどほどにしておく人ばかりではない国とはいえ、「税収増」を目的として、国がアルコール摂取を若者に推奨するというのは、よく言えば「すごく奇妙」、はっきり言えば、「日本は税収増化のためなら、国民の健康は考えない国」なのです。

 これは、フランス人に指摘されるまでもなく、どう考えても狂ってるとしか思えないことで、このようなキャンペーンを国税庁が主催するといのも、あまりに露骨です。

 ただでさえ、高齢者向きに作られている日本社会、このうえ、若者に一般的には健康を害すると言われているアルコールを奨励するという、国民の健康よりも税収を優先する恐怖の政治。

 まったく、どこまで節度なく、無自覚にやらかしてくれるのかと、ウンザリさせられます。

 だいたい、日本の人口比率を考えれば、若者は少数派、たしかにパンデミックの影響で、いわゆる日本の「ノミニュケーション」のようなものが減り、それ自体も必要だったのか?という疑問が若者の間で広がったかもしれません。

 しかし、もともと、ノミニュケーション大好き・全盛期の世代が高齢化して、アルコール消費量が減ったのも大きいと思います。

 いかにしても、国として、税収増を考えるならば、普通なら、別の方法を模索するのが当然のこと、もしくは、酒類業界に対して売上増加を促すくらいならば、まだしも、こともあろうか臆面もなく、国税庁が主催して、このようなキャンペーンを張るなど、日本政府は、どこまで世界の認識からズレているのかと本当に恥ずかしい思いです。

 そして、どこまで若者を虐げるのかと腹立たしい思いです。

 フランスでも若者のワイン離れや、最近の若い子はあまり飲まなくなった・・などと言われていますが、アルコールを奨励することは依然としてあり得ないことなのです。


サケビバ 国税庁


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2022年8月22日月曜日

モンマルトルの丘 サクレクール寺院あたりのガラの悪さにげんなり

 


 9月に入って、パリの住人たちがバカンスから戻って来れば、また人が多くなるので、公共交通機関や街も空いているうちに、久しく行かなかったところに行ってみようと、ここのところ、パリの街を歩きまわっています。

 パンデミックの間は、ロックダウンを初めとして、行動制限があったり、観光客もパッタリいなくなって、潰れるお店もけっこうあったりして、この2年ほどでパリの街は少し変わったような気がしています。

 これでは今まであったガイドブックなどは、かなりの改訂が必要かも・・と思ったりしています。

 今年は、すでに日本人や中国人などのアジアからの観光客以外は、ほぼコロナ前の人出に戻ったと言われており、観光地と言われる所は、それなりに、結構、賑わっています。

 パリに観光に来る方はどこへ行くのか?あらためて考えてみると、「これだけは見逃せない!」 とかいうものも、ピンと来なくなってしまっているのですが、ルーブルやオルセーなどの美術館か、シャンゼリゼ、エッフェル塔、ノートルダム寺院、モンマルトルの丘のサクレクール寺院などでしょうか?

 しかし、ルーブルやオルセー、シャンゼリゼ、ノートルダム寺院くらいまでは、まあまあ観光客が集まるとはいえ、そこまでウッとくる感じはないのですが、モンマルトル・サクレクールは地域が少し離れていることもあり、なかなかどうして、他の場所とは違う人のいるエリアです。

 パリで日常生活を送っていても、だいたい自分のテリトリーとまでは行かないまでも、だいたい行くところは限られていて、パリといっても、場所によっては、かなりガラが悪いというか、これがパリ???と思うようなところもあって、明らかに治安の悪そうな場所には近寄りません。

 自分の時間に自分の身を置いて、心地よいと思う場所でなければ、不愉快な思いをするだけで、わざわざ行く必要もないのです。

 ロックダウンが明けて、それまで閉鎖されていた美術館などが一斉に再開した時、それでもまだ、観光客は戻ってきていなかった頃に、えらく久しぶりにルーブル美術館に行って、ガラガラでスイスイ見れるルーブル美術館を堪能してきたことがありましたが、それ以来、あまり観光地らしいところには、行くこともなく、この間、たまたま近くに用事があって、エッフェル塔を見てきて、周囲の変わりようにびっくりしました。

 そして、また、そんな変化を楽しみに、先日、急に思い立って、久しぶりにモンマルトルの丘にあるサクレクール寺院に行ってきました。娘が小さかった頃は、なぜか、サクレクール寺院は彼女のお気に入りで、彼女はなぜか、サクレクール寺院を「神様のおうち」とよび、行きたがったので、時々、連れて行っていました。

 私としては、サクレクール寺院は丘の上にあるだけあって、丘の上にのぼるまでの階段を上がったり降りたりして、娘が疲れてくれることを期待していただけなのですが、行けば行ったで美しいし、それなりに楽しんではいました。

 しかし、明らかに他の場所(ルーブルやノートルダム、シャンゼリゼなど)とは、メトロの中から、乗っている人々の様子が違い、特に駅の周辺から丘に向かう道なりは、明らかにガラが悪く、怪しげな人がちらほら。そういえば、そうだった・・と思い出したのでした。

 近辺のお店などは、若干変わっていても、一眼で観光客でもなく、住民でもなさそうな人々が観光客目当てに近寄ってくる人々は変わらないのです。

 メトロの駅を上がってすぐのところに、炭火でとうもろこしを焼いて(といっても、日本のようなとうもろこしではない)売っている人がいて、「いくら?」と聞いたら、「3ユーロ」というので、びっくりして(ちょっと前に別の場所で1ユーロだった)、「えっ??じゃあいらない」と言ったら、焦って「あなたには特別に1ユーロにするから・・」と言ってきたのですが、もう気分悪くて、「もういらない・・」と通り過ぎました。観光客だと思ってぼったくろうとしたんだ・・と思うと、嫌な気分になったのですが、同時に、ヤレヤレ、そういえば、ここはこういうところだった・・ということを思い出したのです。




 そこから、丘に向けて上がっていく細い道の途中には、賭博のようなものを観光客を集めてやっている人々がいて、人だかりが・・そして、それを通り過ぎると、偽物のミッキーマウスがいて、嘘・・と思ったのですが、それでも嬉しそうに一緒に写真を撮る人の人だかりができていて、こんな偽ミッキーマウスは以前はいなかったけど、誰が何のためにこんなことをやっているのかと思うと、ちょっと不気味な気もしました。

 丘の上の教会の前には、エッフェル塔のキーホルダーや何やら細かいお土産物を布の上に広げて売っている人がたくさんいて、バケツに水や飲み物を入れて売って歩いている人もいます。

 値段も段ボールの裏などに書かれたようなもので、明らかにぼったくりの値段で売られています。彼らが布の上にお店を広げているのは、警察の取り締まりが来たら、広げていた布をそのまま包みあげて、すぐに逃げられるためです。

 

サクレクール寺院に入るには、一応、セキュリティチェックがある




 まあ久しく観光地っぽいところに来ていなかったので、観光地ってこんなもんだったかな?と思いながら、教会の中をぐるっと回って、教会の裏手にあるモンマルトル広場へ。




 ここは、レストランが多数、混在しているだけでなく、絵描きさんの溜まり場でもあり、自分の作品を売っている人もいれば、似顔絵書きをしている人々がたくさんいるところです。




 この一画は、古い街並みが緑の木々とともに残されていて、とても美しい場所なのですが、最近の絵描きさんは、似顔絵広場に場所を確保できていない絵描きさんが、「あなたの絵、描きますよ!」近寄ってきて、呼び込みまがいのことまでするようになっているのには、びっくりしました。

 似顔絵を描いてもらっているのは、子供連れのお客さんが多く、子供の顔を描いてもらっている人が多かったのですが、1枚、20分で、だいたい50ユーロから60ユーロ(約8,000円)ということで、これが高いのか安いのか、よくわかりません。

 モンマルトル地区(パリ18区)は市長がこの地区をユネスコの世界遺産登録を目指していて、交通規制をしたり、さまざまな試みをしていると聞いていたのですが、この観光客を食い物にしようと集まってくるガラの悪い人々が、何よりもこの街を汚している気がしてなりません。

 パリはたしかに美しい街なのですが、こうやって観光地らしきところに足を踏み入れれば、観光客とともに、必ずこの怪しげな人々が集まっているのには、げんなりさせられるのです。


モンマルトルの丘 サクレクール寺院


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2022年8月21日日曜日

パリで200以上の黄色い郵便ポストが閉鎖 黄色いポストはパリの景観の一部?

  



 私自身は、全然、気づいていなかったのですが、パリでは今年の2月以来、200以上の郵便ポストが閉鎖、または撤去されているそうで、最近、ちょっと話題を呼んでいます。

 フランス郵政省(P.T.T.) は、この郵便ポストの撤去について、郵便物の盗難被害対策をその理由として説明しています。

 2021年には650件以上の盗難被害が報告されているとかで、郵便小包などなら、いざ知らず、ポストに投函される程度の大きさの郵便物の盗難という割の悪そうな犯罪が、どうして、そんなに多発しているのかと思いきや、郵便物から個人情報を集め、勝手にローンを組まれたりするという、なかなかな被害が生じているのです。

 この郵便ポスト撤去に対しては、顧客はもちろんのこと、郵便局の労働組合も仕事がなくなることを恐れてなのか、撤去反対の声があがっていて、労働組合は、「かつてロンドンの街を彩った赤い電話ボックスのように、パリの街を彩る黄色いポストはパリらしい景観を失う」などと、盗難被害対策のもとに隠れたコスト削減策を糾弾しているとかで、それほどパリの景観に寄与しているとも思えない黄色いポスト(その多くは、添付した写真のように汚れている)を、いざとなったら、こじつけるようにパリの景観の一部であるという言い方までして争うのにも、フランス人らしいといえば、フランス人らしいところです。

 そもそも、私自身、郵便ポストというものは、もうあまり利用しなくなっていて、以前は郵便を利用していたものは、ほぼ全てネットで済ませるようになっていて、めっきり郵便ポストを利用する機会はなくなっています。

 以前は、日本にいる家族や友人に手紙を書いたり、娘の写真を撮って送ったりしていたものも、もう長いこと、とんと、手紙も書かず、写真を印刷することさえなくなりました。

 また、以前は、後になってから、きっちり支払ったことを証明できる必要のある支払いは小切手を書いてそれを郵便で送るということをしていましたが、それも全てネットに切り替わり、自分でネットで振り込むようにしてからは、それすらもなくなりました。

 郵便ポスト以前に、我が家の近所にあった郵便局も2つなくなり、ちょっと離れたところ1軒のみになってしまいましたが、そもそもほとんど必要がないために、郵便ポストの前に郵便局自体が減っているので何を今さら・・感もあります。

 日本から荷物を送ってもらったりするのも、たとえ在宅していても不在通知を入れられたりするために、職場に送ってもらうようにしたために、郵便局に取りに行くということもなくなりました。

 郵便ポストの数が減れば、それだけ回収作業も少なくて済むわけで、経費削減にもなるのかもしれませんが、盗難被害自体が減るかどうかは、多少は影響はあるのでしょうが、多くは郵便局内での盗難ということも多いにあり得るので、甚だ疑問ではあります。

 以前、職場の同僚が日本に小包を送ったのに、日本の家族は延々と荷物を受け取っておらず、荷物を出した郵便局へ問い合わせに行ったところ、窓口の女性が彼女が送ったはずのマフラーをしていたのを見つけて、彼女はその女性に食いついて、大騒ぎになったことがありました。

 そのマフラーはどこでも売っている既製品ではなく、一点もののオリジナルのマフラーだったために、彼女が送ったものであることは一目瞭然だったのです。

 そんなわけで、人の手を介すれば介するほど、盗難被害に遭う確率は高く、郵便ポストの撤去が盗難被害に貢献するかは甚だ疑問ではありますが、よほどの公的書類などの他は郵便以外の方法で済ませられるようになっているので、できるだけ違う方法を利用した方がいいというのが私の正直な見解です。

 そもそも、郵便物が届くというのは、ろくな用事ではなく、たいてい何かの請求書で、良い知らせではありません。ここまで書いて思い出したのですが、そういえば、先月の家賃の請求書が届いていません。言っている側から、もしかしたら、これも盗難に遭ったのかもしれません。


パリの郵便ポスト200個撤去


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2022年8月20日土曜日

検問拒否で、また警察官発砲事件 同乗者死亡・運転手意識不明の重体

  


 リヨン近郊のヴェニシュー(ローヌ県・フランス南東部にある街)で検問を拒否した車に対して警察官が発砲し、1人が死亡、1名重症に陥る事件が発生しています。

 ほんとに、また?と思ってしまう警察官の発砲事件です。

 事件が起こったのは深夜0時頃のこと、パトロール中の4人の警察官が、ヴェニシューにあるスーパーマーケット・カーフールの駐車場で盗難届が出ている車を発見しました。

 警察官が検問のため、警察車両をおり、対象車に近づくと、運転手は検問を拒否して車を発車させ、それを止めようとした警察官が車にぶつかったものの、車はそのまま逃走しようとしたため、同行していた同僚の警察官が数回にわたって発砲したと言われています。

 警察官の発砲により、車は停車したものの、助手席に乗っていた20歳の男性は銃撃の数分後に死亡、運転手は頭部に重傷を負い、病院に搬送され脳死状態という事態に至っています。

 武器を使用した2人の警察官は、事件後の早朝には身柄を拘束されましたが、同日夕刻には、釈放されています。警察官付きの弁護士によると、「捜査当局は正当防衛の条件を満たしていると考えた」と発表し、この見解は、リヨン検察庁によって確認された。

 しかし、検察庁は「警察官が武器を使用した正確な状況を確認するためには、さらなる捜査、特に事件の詳細の検証と弾道検査が必要である」と述べ、IGPNに調査を委託し、銃器使用の経緯を再確認する模様です。

 検察によると、運転していたアヌシー地方出身の26歳の男性は前科9犯。事件当時、彼は車両窃盗の容疑で捜索中、同乗していた男性はリヨン出身の20歳、警察にはマークされていたものの前科はありませんでした。札付きの不良といった感じの若者のようですが、殺されなければならなかった凶悪犯かどうか、また同じ年頃の子供を持つ親としては、親御さんの気持ちはいかばかりかと思ってしまいます。

 警察組合は、「彼らは同僚が盗難車の制圧に向かい、車が発進したので、反撃した。彼らは命を守るために撃った」と述べ、内務大臣も「私は、フランスのすべての警察官と憲兵に、私は彼らを支持し、彼らの働き方が模範的で勇ましいと思うことを伝えたい」と述べ、倫理規定に則って行動したかどうかは、司法の場に委ねます。私は、私の権限の下にある公務員を信頼しています。」と概ねこの警察官の発砲を容認する声明を発表しています。

 フランスでは検問拒否は30分に1回起こっていると言われていますが、それが警察官の発砲を容認につながるのは、別の問題だと思っています。警察官の発砲事件には、なかなかな確率で犯人を死亡させる結果に繋がってしまっていることも、見逃せない事実です。

 相手が銃を所持している場合は別としても、今回のように車で逃走しようとする場合などは、致命傷にならない発砲方法はなかったのだろうか? たとえ警察官とはいえ、発砲があまりに雑なのではないか?と思ってしまいます。

「死刑制度は人類の恥」とまで明言して死刑制度を非難する国である一方、こんなに頻繁に警察官の発砲事件で死亡者を出すのは、どうにも納得がいかないのです。

 警察も30分に1回は起こっているという検問拒否に往生しているとは思いますが、検問拒否で発砲という事件がここのところ、急激に増えているのは見過ごせない気がするのです。逆に言えば、検問を拒否して逃走する場合は射殺される覚悟で・・というのは、言い過ぎでしょうか?


警察官発砲事件 フランス


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2022年8月19日金曜日

パリ市内観光の新しい移動手段 トゥクトゥクには、ご注意ください

  


 パンデミック以前には、あまり見かけることのなかった人力車の現代版のようなトゥクトゥクがパリに急激に増加しています。

 先日、たまたま美味しいチーズ屋さんがあると聞いて、出かけて行ったら、残念なことにそのお店はバカンス中でお休みで、ふと気付くとエッフェル塔のわりと近くで、滅多にこのあたりには来ないのだから、久しぶりにエッフェル塔まで散歩してこようと思って、てくてく歩いて行ったのです。

 近辺は、比較的ゆったりした道で、緑も多く、きれいな街並みで、エッフェル塔など何十年ぶりだろう?と思いながら、歩いていました。

 すると、さすがに観光地だけあって、観光用と思われるインスタスポットができていたり、バトーパリジャン(セーヌ川の遊覧船)の停車場がきれいに整備されていたり、暑い中、行列している観光客に感心してみたりしていましたが、その中でもちょいちょい目にする緑の中をゆったりと走っている真っ赤なトゥクトゥクには、一際、目を惹かれました。




 なるほど、車の規制がうるさくなっている中、人力車(といっても電動自転車)とは、なかなかよい交通手段かも・・と思ったのですが、ちょうど私がバスを待っている間、「フェラーリ」の名前とロゴを使った真っ赤なトゥクトゥクが信号待ちで停まり、「ふふっ・・フェラーリね・・」とちょっと笑ってしまったのですが、そのフェラーリに貼ってあった値段表を見てびっくり!

 価格は行き先によって20ユーロから35ユーロになっていて、しかも、「一人当たり」と書いてあります。行き先もシャンゼリゼ、凱旋門、エッフェル塔、ギャラリーラファイエット、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オペラ座、バトームーシュ、オルセー美術館、コンコルド広場などが書いてあって、それぞれに価格設定がされています。

 だいたい出発地はエッフェル塔近辺(トロカデロ近辺)ではあるらしいのですが、もともと、そんなに広くないパリです。例えば、ルーブルからコンコルド広場を通って、シャンゼリゼを通って凱旋門まで行くというのは、まあ結構、距離はあるとはいえ、その一つ一つは、そんなに離れているわけでもなく、歩こうと思えば、歩けないこともありません。

 どうも、この値段の付け方、ちょっと、ちゃんと値段交渉をしないとめんどくさそうだし、だいたい、一人当たりこの値段だと、タクシーよりも高いのでは?と思ったのです。

 まあ、遊園地の乗り物のようにこのトゥクトゥクそのものを楽しみたいというなら別ですが、(しかし、それにしても高いと思うけど)可愛いからと気軽に乗ってしまうと、痛い目に遭いそうです。

 案の定、この異常に増加しているトゥクトゥクはパリ警視庁の警戒対象となっているようで、現在、このトゥクトゥクはパリにおよそ400台存在し、もちろん、正規に許可されたものも中にはあるものの、90%以上は違法のトゥクトゥクだそうで、詐欺まがいの値段設定で、観光客が法外な料金を請求されるという被害が続出しているそうです。

 私が見かけトゥクトゥクの値段を見ても、土地勘のない観光客にとったら、ここと、ここと、ここを通ったからなどと言われかねない場所と値段の設定で、1時間で2人で160ユーロ(約2万2千円)払わされたなどという被害も出てきて、(うっかり家族4人でなど乗ったら、大変なことになります!)パリ警視庁は、この違法トゥクトゥクは著しいパリのイメージダウンに繋がると、私服警官を動員して、検挙を始めています。

 言葉も通じにくく、土地勘もなく、通貨の感覚も希薄な観光客は、この手の悪質な業者?または詐欺師にとっては絶好のターゲットになることは目に見えているのです。今は、日本人の観光客はあまり見かけませんが、日本人観光客などさしずめ絶好のターゲットになりそうなので、パリに来られる方は十分、注意してください。

 本来ならば、トゥクトゥクなど、環境にもやさしい、絶好の移動手段になり得ると思うのですが、あっという間に、この詐欺まがいの輩が市場を埋め尽くすパリというのは、やっぱりかなりえげつないところのある街だな・・とも思うのです。

 フランス政府は、2024年のオリンピックに向けて観光客を増やすために、「パリが安全であること」をアピールし続けることを目標としている中、観光客が増えるにつれて、危険は増すばかりです。

 街の安全性にかけては、東京オリンピック招致の時の滝川クリステルの「東京は世界一安全な国で、落としたお金が昨年は3000万ドルも警察に届けられた・・」とスピーチしていたことを思い出しますが、パリでは、残念ながら、「落として届けられるどころか、お金は落とさなくとも取られる街」なのかもしれません。

 もちろん、正規のトゥクトゥクもあるので、それなら心配はないと思いますが、現在のところ、正規のトゥクトゥクに当たる可能性はかなり低そうで、なんとなく、可愛いし、外の風を身体に感じながら観光できるし、運転する人とも直に話せるので、逆に安心してしまうかもしれませんが、きちんと値段交渉をしてから乗らないと、後になってからとんでもない額を請求される可能性があるので、面倒な嫌な思いをしたくなければ、タクシーか、公共交通機関(バスかメトロ)を使うことをおススメします。


パリのトゥクトゥク


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2022年8月18日木曜日

猛暑の後は豪雨、洪水 パリの脆さを露呈する異常気象

  


 ここ数年は、毎年の年中行事のようになった夏の猛暑も、今年は5月から始まり、6月、7月、8月と数週間おきに続き、例年ならば、40℃に迫る暑さが訪れた翌日には、本当にここはパリなのか?と思うほどのスコールのような雨が降ったりして、スッと涼しくなる感じだったのに、今年の猛暑は、一瞬、気温が下がっても、長いこと雨はほとんど降らずに本当の日照り状態で、水不足が深刻になり、作物が育たなくなるだけでなく、原子力発電所の冷却のための川の水位の低下と温度の上昇で、電力供給にまで影響が出ていました。

 また、街中でも、パリの街中のあちこちにある、本来は青々としているはずの芝生が黄色くなって枯れ始め、シャンゼリゼの街路樹までが黄色くなりかけていました。

 最近、パリで流行りの造花によるカフェなどのデコレーションでさえも、日焼けして、色褪せるほどでした。

 それが、先日、猛暑の波が去ったと思ったら、今度は豪雨で、本当ならば、待ちに待った恵みの雨だったはずなのですが、90分間に40ミリ以上の記録的な大雨で、我が家の近辺では、なにやらガラス窓にカチカチ氷の粒があたっているのが聞こえていて、雹まで降っていました。

 90分間に40ミリの雨というのは、通常1カ月に降る量の70%をすべて合わせた量だそうです。

 パリの街路樹には落雷で倒れた木もあり、何よりも、この豪雨に、街中の水は捌けていかずに、あっという間にパリの街中の道路は川のような状態になり、車もウォータースライダーのように水飛沫をあげて走っていました。


 大きな駅は別として、パリ市内の小さなメトロの駅は、かなりシンプルな構造で、街中から続く階段をいくらも降りないところに駅があることが多いので、駅には容易に水が流れ込み、浸水状態になってしまうのです。


 パリ市内のメトロ10、12、6、9、4、8番線の複数の駅は閉鎖に、首都圏の中心部にある地下鉄のサンミッシェル駅では雨漏りのためにホームにまで水が及ぶ事態となりました。


 幸い?にも、現在のパリはパリの住民の多くがバカンスにでかけている時期で、一年中で最も人の少ない時期で、車も人も少ないため、そこまでの大騒動には発展しませんでしたが、これが人も車も多い時期だったら、大変なことになっていたと思います。

 何より、2年後に控えたパリオリンピックには、通常の数倍に人口も膨れ上がっているはずで、その間に、もしもこんなことが起こったら?フランスはオリンピックの際のこの異常気象対策をしているのだろうか?と疑問に思います。

 水捌けが悪いのは街中だけではなく、セーヌ川も大雨が続いたりすると、あっという間に川の水位が上がり、何本の橋の下を通過するバトームーシュなどの遊覧船が通れなくなったり、水が溢れたりするのをどうしていつまでも改善しないのか不思議ですが、ずっと改善されないままです。

 パリオリンピックでは、選手の入場パレードをセーヌ川で行うなどと言っているので、オリンピックのためになら、このような洪水対策も含めて万全の対策をとってくれるだろうと勝手に期待しています。

 しかし、地球温暖化対策をいくらとったとしても、急激な改善を期待できるものではなく、そもそも、この異常な暑さの中、なぜオリンピックを夏にするのか? もう少し誰もが過ごしやすい春や秋にすればいいのにと思います。

 今回の豪雨は、2年後のパリオリンピックには猛暑だけでなく、洪水のリスクも多いにあり得ることを予告してくれたようにも思います。


パリ豪雨被害 メトロの駅浸水


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2022年8月17日水曜日

日本の統一教会問題の一部始終は海外でも報道されている

   


 私は海外に住んでいるとはいえ、日本人なので、日本のニュースが気になるので、日本で起こっているニュースはネットなどでチェックするようにしていますが、最近の日本の統一教会問題については、探さなくともフランスでも報道されています。

 先日、ネットで統一教会会長の記者会見を見ましたが、考えてみれば、あの記者会見は日本外国特派員協会のもので、海外にその内容が報道されるのも当然のことです。外国特派員協会で行われる記者会見の内容が必ずしも海外での報道に繋がるとは限りませんが、この事件に関しては、安倍元総理大臣の襲撃事件に端を発しているだけあって、その報道のスタートはセンセーショナルで、しかもセクト(新興宗教)という海外においても、決して見過ごすことのできない問題でもあるため、報道は続けられているのです。

 この報道はフランスだけではなく、アメリカやイギリスなどでも拡散されていることは言うまでもありません。



 海外での報道では、忖度は働かない分、その書き方、報道の仕方には容赦がありません。

 例えば、フィガロ紙では、「日本における統一教会の驚異的な影響力」と題して、「数千人の統一教会信者の前で晴れ晴れとスピーチする衆議院副議長は、日本で非難を浴び続けている宗教団体の集会に参加したということで、当然、本来ならば、彼の政治生命は絶たれるはずだが、安倍晋三の下ではそのような付き合いは無害どころか、高く評価されていた・・」などと書かれています。

 そのうえ、日本政府は統一教会と閣僚、政務三役の関係については個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はないとする答弁書を閣議決定したそうですが、これだけ被害が顕著に挙げられている団体との繋がりについて、調査を行う必要がないとは、どういうことなのか? このまま、だんまりを続けて世間が忘れてくれる時を待ってごまかそうとしているのは、明白です。

 7月末に行われた共同通信の世論調査では反対が53%にまでになっているという国葬も世論を無視して行われようとしていることなども含めて、岸田内閣が支持率の急激な低下に押されて、9月に行われるはずだった閣僚の入れ替えを早めたものの、依然として不評をかっていることまで、これらの全ての様子は全世界で報道されており、詳らかにされています。

 政府が日本国民を甘く見ているのは明白ですが、正面から向き合おうとしない日本政府の姿勢には、世界からの目も冷たいものです。

 この日本政府が世界に向けて発信している日本のネガティブイメージは今後の日本の外交にも影響します。海外からしても、このような政府とまともな話をしようとは思わないでしょう。ましてやこれだけ問題のある新興宗教と関わりのある政府とは積極的には関わりたくないと思うのが自然でしょう。

 こんな状態で国葬をして、外交に繋げようとしても、通り一辺倒の挨拶をするだけの外交に終わります。

 今は一瞬で、世界中にニュースが駆け巡る時代です。日本の政府の人々は、海外のニュースをチェックしないのでしょうか? 海外からの見え方を日本政府は考えていないのでしょうか? 日本国民をバカにしている結果、日本が海外から冷たい目で見られています。これ以上、日本の恥をさらしてほしくありません。

 日本では、統一教会そのものの被害状況と政府との繋がりについて、これに対する政府の対応など、別々に扱わなければならない問題を混ぜてしまっている感がありますが、まずは、「安倍元総理殺害事件そのものについて(警備などの問題)」、「統一教会の実態について(被害状況)」、「政府との繋がり」、そして、何よりも「30年前に問題視されたにも関わらず、捜査が中断されたことについて」、別々に糾弾しなければなりません。

 擁護すべき国民の被害を見過ごすどころか、警察の捜査を止め、よりにもよって、その団体を利用し、また逆に利用されているなどあってはならないことです。国民の安全を守るための警察の機能を政府が止めてしまう政府など、もう正気の沙汰ではありません。

 日本政府はこの統一教会問題が風化することを待っているようですが、この問題はきちんと解明されるまで忘れてはなりません。


統一教会問題 日本政府 海外報道


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2022年8月16日火曜日

日本に住むにあたっての手続き マイナンバーカードと住民票の不思議

   


 娘の就職にあたって、彼女は初めて日本に住むことになって、生活を始めるにあたっての様々な手続きが必要で、パンデミックのためにしばらく日本に行けずに放置してあった家のことも気になり、彼女が本格的に社会人としての生活をスタートさせる前に、最後に親として手伝ってあげられることがあるかもしれない、保証人などが必要な場面もあるかもしれない・・と手続きについて行きました。

 これまで幼少期から度々、日本には連れて行っていた娘ではありますが、日本に住むのは初めてのこと。住民票を入れたり、カードを作ったりと生活していく上で最低限やらなければならないことは、いくつかありました。

 私自身、日本から住民票は抜いたまま、もう20年以上が経過しているため、住民票を入れるということも、以前、どのようにしたのか?もうよく覚えていなかったし、家の名義は私になっていても、私自身の住民票は入っていないというイレギュラーな感じだったので、なにかとややこしいことがあるのではないかと心配でもありました。

 住民票を入れること自体は、何の問題もなく、スムーズにいきましたが、住民票を入れたと同時にマイナンバーカードを申請しますか?と言われて、私が日本に住んでいた頃にはなかったマイナンバーカード、私は勝手にフランスにあるIDカードと同じようなものだと思っていましたので、娘も当然のようにマイナンバーカードの申請をしてきました。

 これから他の手続きに度々、必要になる住民票の写しというものも、ついでにもらってくるつもりで、区役所の人に頼んだのですが、その際に「マイナンバーカードが記載されているものにしますか? それともマイナンバーカードが記載されていないものにしますか?」と尋ねられて、びっくりして聞き返すと、「提出先によっては、マイナンバーカードが入っていなければならないものもあるし、入っていてはいけないものもあるので・・」ということでした。

 個人情報の問題があるのかもしれませんが、日本のこのマイナンバーの位置付けがよくわからなくなる出来事でした。

 マイナンバーカードですから、当然、身分証明書になるものとは思われますが、マイナンバーカードは身分証明書になるのか?と検索したら、「保険証や運転免許証、パスポートなどと同様、身分証明書として通用します」と出てきて、かえってわからなくなりました。

 銀行や証券会社などではパスポートは身分証明書として通用しないからです。まあ、日本に住んで働いていれば、保険証もあるのですから、身分証明書に困ることはないのでよいのですが、だったら、公的書類にあえて記載したり、しなかったりするマイナンバーというものは何なんだろうか?と疑問に思った次第です。

 しかし、後日、彼女のもとには、思っても見なかった「20歳から、これまでの間の年金不払いの通知」が届いたようで、(本来は住民票が日本にない場合は支払いの義務はない)住民票を入れると年金事務所?(日本年金機構)に情報が行き、未払いがないかチェックされる仕組みになっていることがわかりました。

 しかし、住民票には、どこから転入したか(娘の場合はフランス)を記載されているにもかかわらず、このような請求がくるということはシンプルに個人の住民票が入ったということだけが通知されるわけで、(まあ海外からの転入は稀なケースゆえ、そのようなことまでチェックしないのかもしれないけど)そのような情報のどこからどこまでがマイナンバーカードに入っているのかが不思議です。

 まあこのような公的手続きはフランスにいても、何かとややこしいもので、どこにいても避けられないものですが、日本の区役所や年金事務所の人は親切で感じがよく、それだけでも救われる気持ちですが、その分、フランスはかなりの部分がネットで済むようになってきたのには、助かる気もします。

 日本のマイナンバーカードのサイトを見ると「デジタル庁」とど〜んと出てくるところが不安を駆り立てられますが・・日本のデジタル化にも期待したいところです。

 

マイナンバーカード 海外からの転入 住民票


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2022年8月15日月曜日

バイリンガルになった娘の就職

  

日本に行きたいがためにママに公文の宿題を毎日やらされていた頃の娘



 子供ができたとわかった時から、私はなぜか、お腹の中の子供は女の子だと思い込んでいて、産婦人科のお医者さんにエコーで診てもらった結果、「手足の長い女の子ですよ!」と言われて、「やっぱり!・・よかった!」と思いました。

 名前も、フランスにも日本にも、英語圏にもある名前にしようと前から決めていました。正直、私は名前はひらがなでもいいな・・と思っていたのですが、パパが「日本にはせっかく漢字があるんだから、漢字の名前をつけてあげなければ可哀想だ・・」などと言い出し、そうなると、今度は実家の母が「せっかく漢字にするなら、画数のいい字を選んだ方がいい・・」などと名前の画数の本などをわざわざ送ってきてくれたりしたので、検討の結果、かなり画数の多い難しい漢字を選ぶことになりました。

 しかし、私としては、フランスにも日本にも英語圏にもある名前ということで満足していて、将来、娘が国際人になってほしいという思いを込めてつけた名前でした。

 娘が生まれて(アフリカで)すぐにフランスに引っ越してきて、パパはフランス人で生活の基盤はフランスになることから、フランス語に関しては、あまり心配していませんでしたが、とにかく私は娘に日本語がしっかりできるようになってほしいと、彼女が生まれて以来、日本語を教えることに、とにかく一生懸命でした。

 パパがフランス人でママが日本人だったら、自動的にバイリンガルになるわけではないので、私はひたすら娘には日本語だけで話すようにしてきました。せっかくの環境、これを無駄にしてはいけないと思ってきましたが、それは、そんなに簡単なことではありませんでした。しかし、今から思うに私にしては、かなりしつこく日本語教育にはこだわってきました。

 私は単に彼女が日本語を話せるだけでなく、読み書きもしっかりできるようになってほしいと思っていたので、毎晩、寝る前には絵本を読み聞かせ、2歳になってすぐにフランスでの学校が始まる前に(日本語が面倒臭いと感じないように)、公文に通わせ始め、えんぴつの持ち方から公文の先生に教えていただきました。

 教えていただくことも、もちろんのことでしたが、その頃の娘にとってはフランスでは私以外の日本人と接する機会がなかったので、公文に通って、日本人との接点ができるということも大きな役割を果たしてくれていました。

 毎日毎日、学校から帰ると私は食事の支度をしながら公文の宿題を監督し、バタバタと毎日が過ぎていきました。娘が音を上げそうになっても、「公文をやらない子、日本語ができない子は日本には行けないよ・・」と日本行きをちらつかせて、続けさせてきました。

 小学校の頃には夏休みに短期間、日本の小学校の体験入学をさせていただいたこともありました。

 結局、公文は10歳まで続けましたが、その後、パパが亡くなって、私も仕事と、一人で学校の送り迎えとでいっぱいいっぱいで(フランスの場合、小学生まではどこに行くにも送り迎えが必要)、まずは学校が最優先と、公文は一時、諦めていましたが、日本語そのものは諦めたわけではなく、父や叔母などが日本から送ってくれる日本語のテレビ番組などは、常に家で流し続けてきました。

 彼女がバカロレアを取得する年齢になった頃、オプションの科目の一つを日本語にしたいと言い出した時、今度は天理のやっている日本語のクラスに通い始め、1〜2年は通ったでしょうか? その頃になると、彼女はもう自分で勉強ができるようになっていたので、私は、あまり口は出さずに、出すのはお金だけでした。

 その後、彼女は無事に高校を卒業し、プレパー、グランゼコールへと進み、グランゼコール在学中に日本の大学に留学する予定にしていましたが、パンデミックのために2度にわたってキャンセルになり、結局、日本への留学は叶いませんでした。

 そして、グランゼコールの卒業が決まって、さて就職となった時、しばらく彼女はいくつかの進路に迷っている様子で、この先、また次のエコールにという選択肢などもあったのですが、結局、彼女が選択したのは、イギリスの会社の日本支社という道でした。

 「日本には家もあり、住むところもあるし、留学できなかった分、仕事ができて、お金ももらえて、日本で生活するという体験もできて、よかったけど、なんで、この道を選んだの?」と聞いたら、「他の色々な就職先の中で、自分のやりたい仕事の中で、条件が一番よかったから・・」というのが彼女の解答でした。

 彼女の専攻は生命工学で、それを活かした仕事の中で、日本語ができるということが彼女のスキルの一つに加わって、彼女の新しい生活の一歩を踏み出せたことは、私にとっては、本当に何よりも嬉しい、感慨深いことでした。

 たしかに、彼女の言うとおり、ほとんどがリモートワークで、初任給としたら破格のお給料を頂き、かなり自由に時間も使えるかなり条件のよい職場のようです。

 彼女が日本語でリモートで、今や専門用語などを含めて、私でさえ理解不能な日本語まで使って仕事をしているのが聞こえてきて、「うわぁ〜!日本語で仕事してる!」と、小さい頃から必死で日本語を教えてきた母としては、うるうるしてしまいそうになりました。

 皮肉なことに、現在の仕事では英語と日本語のみで、フランス語を使うことのない生活のようですが、彼女にとって、やはり母国語はフランス語、フランス語を忘れることはないでしょう。バイリンガルのつもりがいつのまにか、トリリンガルです。

 日本には、日本独特の社会があるので、フランスで育ってきた彼女にとっては、理解し難い難しいこともあるでしょうが、そこは、ひとまず日本にある会社とはいえ、イギリスの会社ということで、いきなり日本の会社というよりはハードルが低いかもしれない・・とも思っています。

 とはいえ、日本支社ゆえ、一緒に仕事(といってもほとんどリモート)をしているのは、ほとんどが日本人。最初に日本に行って、「プレゼンが終わって、「お疲れ様でした・・」と言われた時は、なんて言ったらいいのかな? ほんとに疲れたんだけど・・」などと聞いてくる娘にホッコリしてしまいました。

 これまで私は娘に対しては使うことのなかった「お疲れ様でした・・」という日本独特の挨拶?など、これからまだまだ彼女が学んでいくことはあるでしょうし、このまま、ずっとこの仕事を続けるのかどうかもわかりませんが、とりあえず、私は彼女が日本語を活かした仕事に就くことができて、これまで私が頑張って、娘に日本語を教え続けてきたことが報われた気がして、とても嬉しく思っています。

 日本語というのは、どこでも通用する言語ではないにしても、とりあえず、自分のルーツの一つでもある日本という国でも生きていける術を持ってくれたことがとても嬉しいのです。

 私の両親はすでに他界しているので、そんな彼女を見てもらえなくて、残念ではありますが、周囲の私の親戚、叔父、叔母、従姉妹たちや私の友人たちも彼女を見守ってくれています。

 小さい時から、日本行きを餌?に日本語を教えて、日本に行くたびに、親戚に会うにも、友人に会うにもいつも一緒に連れて歩いていたので、親戚はもちろんのこと、私の友人たちも彼女が小さい時からよく知っているおばちゃんたちなのです。

 もう彼女が仕事を始めてから半年近く経ちますが、その間、出社したのは3回くらいだけということで、つい先日も2日半だけお休みをとって、2週間くらいパリに来ていました。

 リモートワークなので、パリに来ても、日本時間、イギリス時間に合わせさえすれば、仕事ができているのは、たしかに条件がいいといえば、いい仕事なのかもしれません。

 以前、私がイギリスに留学する時に、父が言語(英語)は目的ではなく、あくまで手段だ・・というようなことを言われたことを思い出しましたが、まさに彼女にとって、日本語は彼女にとっての大きな手段の一つとなったことをしみじみと感じています。

 

バイリンガル教育


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2022年8月14日日曜日

日本の未来はもう心配という段階ではなく、絶望的

  


 平常時には、見過ごしてしまいがちな国の在り方とか、政治などが、非常時になると浮き彫りになってくることをここ数年、特にパンデミック以来、ひしひしと感じています。

 ことにパンデミック以来、その現れ方は顕著で、私は日本人でありながら、フランスに住んでいることで、フランスと日本の国の対応を見続けてきました。

 フランスはパンデミックが始まる寸前まで、黄色いベスト運動で、国は大荒れで、黄色いベスト運動のデモもパンデミックのおかげで静まったようなところさえあり、もともとは、燃料税に端を発したデモに政府に対する不満が積み重なり、毎週のように土曜日になると起こるデモは、もう週末には、デモが起こる近隣などの店舗などは、まともに営業もできなくなるほどの騒ぎで、フランスはどうしようもないな・・と思っていました。

 何百年に一度、起こるかどうかというパンデミックという一大事に世界中は大変な影響を受けましたが、フランス人はほんと、どうしようもない・・と思うと同時に、フランス政府の対応の仕方は、満点とはいえないまでも、このおとなしく言ううことを聞かない国民を統制していくために必要なことは、かなりできていたのではないかと少し見直すところさえありました。

 ただちにロックダウンになった時は、焦りましたが、ロックダウンなど感染対策のために仕事ができない人々に対してはすぐに補償金が振り込まれましたし、その後のヘルスパス、ワクチンパス、ワクチン接種のオンライン予約や、いつでもどこでも検査が無料で受けられるシステムなど、フランスすごいな・・と、初めて思いました。

 一方、日本は、政府の対応はといえば、「国民の皆様のご理解とご協力」を求めることばかりで、日本である程度、感染が広がらなかったのは、ひとえに国民がまじめで自制心があったからで、対応の遅さ、ワクチン接種の遅さ、何重にも人出を介す予約のシステムなど、いつの間にか、日本はこんなに遅れをとっちゃったんだろうか?と遠く離れて見ていても、ちょっと愕然とさせられたのです。

 それでも秩序正しい国民に支えられて、日本は生き延びてきましたが、それから戦争が起こり、世界的なインフレは進み、そして、日本にとっては元総理大臣が襲撃されて死亡するという前代未聞の大事件が起こりました。

 それにつれて、統一教会問題や信仰宗教と政治の繋がりが浮き彫りになり、政治と、この反社のような宗教との関わりや警察やマスコミとの関係など、腐敗しきった政治の体制に、心配を通り越して、もう絶望的な気持ちです。

 日本は便利で清潔で、安全で、世界基準から行けば、格段に暮らしやすい国なので、現状は、なにかと気を紛らわして生きていけるかもしれませんが、これから10年〜15年以内くらいに死ねない人々にとっては、よほど、経済的に恵まれてでもいなければ、このままでは、悲惨な道を辿ることは明白です。

 統一教会との繋がりを指摘されて、国民の疑念を払拭するために組閣された新内閣にも、大した説明もないまま、相変わらず統一教会と繋がりが発覚している面々がならび、国民をバカにしているとしか思えない、当選回数順のご褒美人事のような高齢者が並びます。

 都合が悪くなると、沈黙するかわりにひたすら威圧的な態度でやり過ごす。

 もう現在の日本の政治を変えるには、少なくとも前面には出てこない御長老の政治家には、全てお引き取りいただくしかない気がします。

 政治家といえば、本来は激務なはず、歳をとれば、身体的にも頭脳的にも衰えがきて、世間の動静についていけなくなるのは、政治家とて同じです。ましてや反社と繋がりがあるなどといったら、一般社会では、抹殺されるかの如く扱われるのに、政治家ならばOKなどということは、あり得ないことです。

 政治家が介入すれば、警察や司法も手を出せなくなっているのが今の日本なのです。

 日本にも、40代、50代で優秀な人はいるのに、権力に胡座を書いている人々がいつまでも居座って、裏で采配を振るっている限り、割り込むことも不可能です。

 うちの親族には政治家はいませんが、世間的に結構な要職についている人もいて、もういい加減、引退したらいいのに・・などと思いますが、周囲に言わせれば、あの人脈はすごいらしいのよ・・などと言うのですが、はたから見れば、その古い人脈がいつまでも通用していること自体がおかしな社会です。

 日本の少子化問題一つをとってみても、本当に深刻な問題で、今の若者が将来、どれだけの高齢者を背負わなければならなくなるか?あり得ない現実がもうそこまで迫っているというのに、現状を変えようともせずに、いつまでも選挙にも行かずに文句だけ言っている若者もおかしいと思います。

 とにかく、今の日本の政治は、どう考えてもため息しか出ず、ため息ばかりで酸欠になりそうになります。

 こうなったら、フランスのようにデモとか暴動でも起きない限り、日本はどうにもならないのではないか・・と絶望的な気持ちなのです。


日本の政治

 

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2022年8月13日土曜日

不足していたはずのひまわりオイルがダブつき始めた・・

 



 ウクライナでの戦争が始まってしばらくして、ひまわりオイルがスーパーマーケットの棚から消え始めたのは、4月に入ってからのことでした。フランス人って、そんなにひまわりオイルを使ってたのかな??と思っていたら、ひまわりオイルだけでなく、他の食用オイルも消え始めました。

 結局、最後までいつも棚にあったのはオリーブオイルでしたが、これは、ヨーロッパ内での供給が比較的安定しているからなんだな・・と思っていました。

 特にそんなに使っているわけではなくとも、なくなるとなると、一応、買っておこうか・・と思うのが心情なのか、ぐんぐんと値上がりしたにもかかわらず、飛ぶように売れていくのですから、お店側としては、なんとしてでも仕入れて売りたいと思ったのもまた頷けます。

 スーパーマーケットの売り場の中央に、「どうだ!」と言わんばかりにひまわりオイル入りの段ボール箱が山積みにされ、「こんなにあるんだ・・」と驚かされたのが6月頃のこと、その頃はまだ、それでも売れていたのでしょうが、現在、ひまわりオイルはさっぱり売れなくなり、店舗側は大量のストックを抱えてしまったと言われています。

 しかし、ひまわりオイルに関しては、この騒動がきっかけとなり、ここ数ヶ月で、通常の数年分の売り上げを記録しています。これまでの在庫を一掃したと同時に値段がこれまでの約2倍になっても飛ぶようにうれたのですから、食用オイル業界は、いくら原価や輸送のための燃料費が上昇したとしても、まさか2倍の値段でさえも売れたわけで、ないないと言いつつ、実はバブルに沸いていたわけです。

 しかし、バブルであったならば、引き際も大事だったはずなのに、現在はダブつき状態。

 本来ならば売れるはずのない量を買い占めという現象のために、そもそも、もともとは一般家庭ではそれほどは消費されてもいないひまわりオイルはある程度、買いだめしたところで、それ以上は必要はなく、今やひまわりオイルは、ぱったり売れなくなったのです。

 これは2年前のサージカルマスクと同じ状態で、もともとマスクをする習慣のなかったフランスでは、一般的には、マスクの買い置きなどあるわけもなく、とにかくマスクが不足していて、輸入されるマスクがVIP扱いで警察に先導されて病院に運ばれるような状態で、いざ、ロックダウン解除の際には、マスクは異常な価格で販売されていて、当初はそれでさえ、なかなか買えない状態が続いていました。

 それがマスクが普及するにつれ、そして、感染も少し下火になりつつあり、ほとんどの人がマスクをしなくなり、マスクは今やフランスの薬局には山積みにされていて、スーパーマーケットにさえ、マスクが未だに積まれているのを見かけます。

 マスクの場合は、この需要と供給のバランスの変化がさらに著しく、現在はマスクなどする人はほとんどいないのですから、2年前から考えたら信じられないくらい値段が下がっていますが、それでも、売れません。

 私はこの期間、ひまわりオイルも食用オイルも、以前からの買い置きもあるし、この際、できるだけオイルは控えめにしておこうと、価格が上がって以降、買いませんでしたし、マスクに関しても、どういうわけだか、さすが日本人?家の中を探し回ったら、マスクのストックは少々あり、こうして値段が下がってくれるまで、不自由することもありませんでした。

 この不安定な時代、○○がない!と騒いでいても、なければないで、あるもので何とかしてみるか、あまりジタバタしないのが賢明だと今、再び肝に銘ずるのでした。

 もともとフランスでは手に入りにくい日本食材を使わずになんとか代用品で、日本食もどきのものを作ろうとする生活ゆえ、代用品利用の訓練は否応なしに積んでいます。

 今回は、戦争ではなく、干ばつ被害で牛乳が不足するかもと言われていると思ったら、今度はじゃがいも栽培に大きく影響が出ていると、早くもじゃがいも不足が懸念され始めました。

 なにも、じゃがいもがなくとも他に食べるものはたくさんあるわけで、むしろ、供給側から煽られているような気もするわけで、もう余程のものでも無い限り、何が不足しようとその時あるもので済ませよう・・たびたび振り回されるのはバカバカしい気がしてきました。


ひまわりオイル過剰ストック


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2022年8月12日金曜日

秋には、コロナウィルス第8波が来るのは確実 EUオミクロン対応新型バージョンワクチン確保

  


 今週もフランスは熱波が襲ってきていて、1日、いや半日でも外を歩いてくると、もうヘロヘロな感じで、もうさすがにマスクどころではないし、マスクをしないでさえも、もう辛いような日差しで、それでも、たまにはメトロの中などではマスクをしている人がいないわけではないけれど、パリジャンはパリにいないし、パリにいる観光客は、それこそもうバカンス気分でコロナの影はほとんど見えなくなりました。

 フランスは6月末から7月にかけて第7波を迎えていましたが、その後、順調に感染者数は、減少し、一時は20万人近くもいた1日の新規感染者数も現在は3万人以下にまでになっています。

 現在のところ、「ウイルスの感染力は強くなっているが、危険性は低くなっている」というのが定説になっており、実際に、集中治療室の患者数も減少し、死亡者も減ってはいます。

 街の様子を見る限り、もうコロナなどなくなったような感のあるパリではありますが、しかし、ウィルスが消滅していない限り、気温の低下などから、再び感染が拡大する可能性はいつも抱えており、ウイルスが循環すればするほど、危険な突然変異が起こる可能性が高くなり、厚生相が「秋にはコロナの新しい波がやってくるのは、ほぼ確実である」と警告を発しています。

 もう一時の衝撃的な感染の広がりや死亡者で、数字には麻痺してはいますが、未だにフランスでは1日あたり、100人近くがコロナウィルスのために亡くなっています。やはり、これは尋常なことではありません。

 ところで、日本はどうなっているんだろう?と思って調べてみたら、びっくり!日本の1日の新規感染者数は20万人近くで1日の死亡者数は250人で、フランスよりも遥かに高くてびっくりしました。

 フランスも一時は大変なことになっていて、私は、今までに3〜4回くらい検査をしましたが、その度に陰性でした。しかし、もう2人に1人は感染しているくらいの勢いだった頃には、もしかしたら、検査をした時にはたまたま陰性だっただけで、もしかしたら、罹患したことがあったかもしれないとも思っています。

 多くの人がワクチンをしただけでなく、実際に罹患したことで、現在のフランスの状況が深刻化していないとしたら、それは、とても皮肉な結果です。

 フランスは、1回目のブースター接種までは、全国民に対して、かなり強硬な態度で進めていましたが、現在は、高齢者とリスクの高い人を中心に2回目のブースター接種を進めています。

 ほぼ確実に秋には次の波がやってくると第8波を待ち受けているフランス政府は、「欧州委員会が、アメリカ・ビオンテック社からオミクロン変種用に改良された新バージョンのモデルナワクチン1500万回分を追加で予約した」と発表しています。

 2020年から続くパンデミックで、その間、インフレ、戦争、異常気象など様々な問題が覆いかぶさっていますが、同時進行で解決していってもらわなくてはならない問題で、ますます政府にはしっかりしてもらわなければ・・、また、自分自身も情報を集めて、その時々で自分なりの対応を選択していかなければ・・と思うのです。


フランス秋には第8波 オミクロン対応モデルナ新バージョンワクチン


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2022年8月11日木曜日

パリ シャルルドゴール空港(CDG)でナイフを振り回した男 射殺

 


 今年の夏のシャルル・ド・ゴール空港は、さんざんなニュースばかりが続いています。

 夏のバカンスシーズンの始まりとともに、大規模なストライキにより、大幅なフライトチケットのキャンセル、また 、空港職員のストライキと、荷物積載のシステムダウンというトラブルが重なり数万個に及ぶロストバゲージ放置状態・・と、ろくなことがありません。

 だいたい、ただでさえ、ハイシーズンで高価格の時期に加えて、現在の航空運賃は、ちょっと洒落にならないほどの値上がりで、そのうえ、トラブルといえば、ちょっと許せない話なのですが、これでもかというほどにトラブルが続きます。

 今回は、シャルル・ド・ゴール空港のターミナル2Fで、朝、刃物を振り回した男に警察官が発砲、射殺という事件が起こっています。CDGの2Fといえば、私も利用する機会が少なくない場所で、(多くの日本行きのフライトは2Eか2Fのことが多い)ぞっとする話です。

 考えてみれば、飛行機に乗る場合は、チェックインしてから、通関する過程では、荷物チェックがありますが、空港自体に入るのには、荷物検査はありません。

 当日の朝に空港警備員と揉めていたホームレスとみられる男のもとに、国境警備隊の警察官(PAF)が応援にかけつけ、男は、一度、退避させられました。ところが、その後、男は警察官に対して攻撃的、脅迫的になり、国境警備隊の警官(PAF)に腹部を殴られ、逆上し、警察官を殴ろうとした後、自分のキャディからナイフを持って戻ってきたと言われています。

 現場を目撃したAFPのカメラマンは、「背の高い男が警察に向かってナイフのようなものを振り回し、警察側からの警告が出たが、彼は警告を無視して前に出て、警官が発砲した」証言しています。発砲は1回だけだったようです。

 警察の発表によると、撃たれたのはマルティニークのフォール・ド・フランスの出身だという。テロ発言はしていないことから、彼の行為がテロ行為であったとは見られていません。

 パリの街中でも駅でも空港でも、なかなか立派な銃を携帯している警官を間近にみかけることは少なくなく、そばを通りかかっても、何気に、「これ、ほんものなんだよな・・」とチラ見することはあるものの、うっかり話しかけて、妙に誤解されたり不審に思われるのも怖いので、そのまま通り過ぎるのですが、幸いなことに、これが実際に発砲される場面には、これまで直に遭遇したことはありません。

 日本でも、警察官は銃を携帯していると思いますが、こちらの警察や憲兵隊の携帯している銃は、長さ50㎝はあると思われる、なかなかな迫力の銃です。(全ての警察官がこのサイズの銃を持っているわけではありませんが・・)

 最近、警察官の発砲事件の話を以前よりも頻繁に聞くようになった気がしますが、シャルル・ド・ゴールの空港、しかもターミナル2Fという、必ずしも無縁でもなさそうな場所、しかも空港といえば、屋内で人も多い空間での発砲といえば、周囲は騒然としたに違いありません。

 発砲されたのは1発だけで、1発が命中して、撃たれた男は死亡したということなので、周囲に被害は及んでいませんが、これが本当に発砲が必要な事態であったかどうかは、少々疑問でもあります。少なくとも、犯人の動きを止めるだけで、致命的な傷を負わさなければならなかったかどうかは検証する必要がある気がします。

 


 国家警察総監部(IGPN)は、この事件を「国家権力者による自発的過失致死」で、発砲した警察官に関する捜査と、もう一つは、射殺された男に関する「公権力者に対する殺人未遂」についての2つの捜査を開始しています。

 このホームレスの男性はフォール・ド・フランス(マルティニーク)生まれの32歳。フォール・ド・フランス(マルティニーク)生まれの32歳で、以前から定期的にこの辺りを歩いていたといわれています。この男が有色人種であったことも警察官の発砲に関係していることもないとも言えず、そうなると、また別の問題も生じてくる可能性もあります。

 警察官自身や公衆の安全を守るということは、彼ら(警察官)の仕事ではありますが、このケースで、発砲の必要があったのかどうかが詳しく検証される必要があります。

 治安の悪化もありますが、どうにも、以前よりも警察官が発砲するハードルが低くなっているような気がするところは、恐ろしいところです。

 フランスに死刑制度はありませんが、警察官が犯人を射殺することは、少なくないのです。

 まことに、どこもかしこも物騒なことです。


シャルルドゴール空港 発砲事件


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2022年8月10日水曜日

フランス人が日常のトラブルには寛容な不思議

  


 5年近くも工事していた近所の市営プールがリニューアルオープンして、まだ1ヶ月も経っていません。パンデミックで長い間、できるだけ歩くようには心がけていたものの、運動不足だった私は経年からの体力の衰えをひしひしと感じ、これからはせめて、週に1度か2度くらいは泳ぎに行こうとオープン以来、プールに通っていました。

 もともと歩くよりも泳ぐ方が楽な私、身体がほぐれる感じで全身に感じる心地よい疲れにこのところ、順調にプールに通っていました。

 この市営プール、以前は夏には職員がバカンスを取るために夏の間はクローズしてしまうプールだったのですが、さすがに長い工事期間を経てリニューアルした後は夏でもクローズにならないことで少しホッとしていましたが、営業時間は昼12時から14時、15時から19時というなんと、昼休みつきというクラッシック?なスタイルです。

 この昼休みのあることには、少々、苦々しい思いもあるのですが、まあ、夏、閉めないでくれるようになっただけでも、まだマシというものです。

 とにかく、今のところ全てが新しくなってキレイで気持ちよく、ここのところ、自分を奮い立たせてプール通いをしていたのですが、さて、今週も頑張るぞ!と出かけたところ、なんと、プールには、人手不足のために臨時休業のお知らせ・・8月の間、期日指定で、週1〜2日、お休みの日が指定されて張り紙がされていました。

 出かける前に、え〜と午後からの時間は何時からだったっけ?とサイトで営業時間を確認して、現在は開いているのを確認して出かけたのに、まさかの休みで、ムッとして帰ってきました。ちょうど、私と同様、プールの入り口で張り紙を見て、呆然としていた若い男性も「ズッ・・」と呟いて、帰っていきました。

 そして、その翌日、今日こそはやってるよな・・と意気揚々と出かけて、午後の時間帯に一番のりの勢いで出かけていき、さすがにこの暑い中、夏休みのバカンス中ということもあり、子供連れも多い中、プールの前には人だかりができていました。

 ところがオープンの時間になったら、何やら中から再び張り紙を貼る職員が・・「えっ??まさか、また休み??」と思いきや、その女性が貼り出したのは、「子供用プール閉鎖」の張り紙・・、周囲の子連れのお客さんからは、「4年以上も工事してたのに、また??」という声が聞こえてきたものの、関係ないお客さんは、なだれ込むようにプールへ・・。

 「すみません」とか、「ごめんなさい」でもなく、「冷房してるから、扉を開けっぱなしにはできないんだから!」、「いいわね!子供用のプールはクローズよ!」とがなりながら、職員の女性はプールの中に消えていきました。謝らずにまさかの逆ギレ・・最近はあまり見かけなくなったクラッシックなフランスの接客を久しぶりに見た思いでした。

 それでも、子供用のプールは私には関係はなく、さっさと私は淡々と泳ぎ始め、一応、1日のノルマにしている1キロを泳いで、さて、ゆっくりシャワーを浴びて、そろそろ帰ろうかな?・・と思っていたら、何やら、周囲のみんなも引き上げる様子。午後の営業時間が始まって、わずか30分ほどのことです。

 特に場内アナウンスがあるわけではなく、どうやって、知らされたのかはわからないのですが、とにかく、その日のプールは閉鎖になって、全員が追い出される様子で、皆がシャワーを浴びて、帰り支度を始めだしました。

 私としては、どちらにせよ、自分が泳ぐだけ泳いで、もうさっさと帰るつもりにしていたので、別によかったのですが、皆がしぶしぶとプールを追い出されて帰っていくのは、なんだか気の毒な感じでした。

 なぜ、急に営業時間帯に閉めることになったのか?と聞いても、フランスお得意の「プロブレム・テクニック、詳しいことは知らない」という回答。「明日はやっているの?」と聞いても、「わからない・・」と両方の手のひらを返して肩をすくめて首をかしげるフランス人お得意のジェスチャーでの回答。

 プールの出口では、その日の分のチケットの払い戻しの代わりに次回の分のチケットをくばっていたので、私ももらって帰ってきて、なんだか、一応、泳いだので、なんか得した気分でしたが、他の人々は、まだろくに泳いでもいないのに、帰らなければならないのに、さほど怒る様子もなく、おとなしく帰っていくのでした。

 以前から私が不思議に感じているのは、とかく自己主張が激しくて、黙って引き下がらないフランス人が、こと日常のこのようなトラブルに対しては、さほど腹を立てる様子もなく、おとなしく引き下がることで、職場などで、「日本人は黙って我慢するからダメなんだ・・」とかいって、焚き付けられたりもするのに、なぜ、日常のトラブルに対してはこんなにあっさりと引き下がるのだろうか?と思うのです。

 度々起こるストライキや、電車が止まって、急に線路の上を歩くハメになったりしても、猛烈に怒りだしそうなところ、案外、騒ぎにもならずに、それはそれと受け入れて、再び電車が動き出すのを待ったり、淡々と他の線に乗り換えていったりするのです。

 逆に我慢強いはずの日本人の方がとかくサービスなどに関しては、ほんの些細なことで、腹をたてて、クレームをつける人がいたりするので、フランス人が日常のトラブルに関しては、寛容なことが不思議です。

 どうにも、フランス人と日本人では腹を立てるポイントが違うようで、フランス人が日常に多発するトラブルにいちいち腹をたてないのは、まぁこんなもんだ・・という慣れもあるのか、また、逆に、「お客さまは神様」の本当に行き届いたサービスが日常の日本では、ほんのわずかなこともお客さまは許してくれないのかもしれません。

 逆に今の日本の統一教会と政治家の繋がりなどの問題を見ていると、フランスだったら、大変な暴動が起こるだろうと思われるのに、日本人はもっともっと怒っていい!と思うのに、暴動などは起こっていないのも、フランス人から見たら、それはそれで、不思議なことかもしれません。


フランスの日常トラブル 怒りのポイント


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2022年8月9日火曜日

干ばつが引き起こす牛乳価格の高騰と品不足

  


 今週から再び、気温の上昇が見込まれ、さらなる干ばつ被害が広がると見られているフランスでは、今度は、牛乳の価格の上昇および、品不足が心配されています。

 この夏の熱波以前からのウクライナ戦争により、牛の餌代が上がり、燃料費が2倍、肥料費が3倍になっている中、フランスの牛乳の価格はさほど上昇しないままに抑えられてきました。

 しかし、戦争によるインフレに加えて、この干ばつは、酪農家にとっては、ダブルチョップの災難で、全国農業組合連合会(FNSEA)は、今後の牛乳の生産と供給について警笛を鳴らしています。

 雨も降らず、草も枯れる。そして、青草がないということは、夏場はいつも外にいる牛の放牧地がないということです。ただでさえ高い飼料価格に悩まされ、牛を抱えている酪農家にとっては差し迫った危機の異常事態なのです。

 そのため、酪農家は現在、通常、冬に備えて蓄えている飼料を家畜に与えるハメになっており、2022年から2023年の冬の間、多くの農家が牛を養えるのかが懸念される事態となっているのです。

 牛乳だけでなく、バター、クリーム、チーズ、ヨーグルトなどなど、フランス人の食卓にとって、欠かせない乳製品の元となる牛乳価格が高騰したり、牛乳が不足するという事態は大変、深刻な事態で、すでにシードの輸入が滞って欠品が目立ち、価格が爆上がりしているマスタード不足どころではない危機が訪れることになってしまいます。

 現在、秋から冬にかけて牛に与えるはずの飼料や牧草を使用していまっているということは、秋には、多くの酪農家が家畜に与える食料が不足する可能性があるということなのです。2022年から2023年の冬の間、多くの農家が牛を養い続けることができるのかという問題は、かなり緊急な対処が必要な深刻な問題なのです。

 そのため、彼らは皆、経費を補い、セクターの存続を確保するために、価格の値上げを望んでいるのです。ミルクを作るには飼料が必要で、主に牧草とトウモロコシが必要ですが、今年はあまり育っていません。そのため、今年の秋から冬にかけて、牛を飼い続けることができなければ、牛乳が不足する恐れがあるのです。

 恒久的に牛を生産しつづけている酪農家にとって、母牛を失うと、3年間は子牛を生産する能力を失うことになるのです。この負のスパイラルを止めるためにも、酪農家は国の支援を求めています。つまり、今、なんとかしないとこの牛乳問題は少なくとも3年間は続くことになってしまうのです。

 フランスの牛乳価格は、他のヨーロッパの生産者、特にドイツやオランダの牛乳価格よりも20%安いと言われています。

 全国農業組合連合会(FNSEA)は、このフランスの低い牛乳価格の値上げを求めると同時に、国には、農家が飼料を購入できるような援助を受けられる災害基金があるはずだ・・と援助を求めています。

 パンデミック、戦争の影響から、燃料費の高騰から始まって、インフレ、あらゆるものの価格の上昇が続いていますが、フランス人にとってのガソリンともいうべく乳製品の値上がりは、それこそかなりの家庭での痛手になりそうです。

 こんな話が出始めたら、今度は牛乳の買い占めが始まりそうです。フランスで売られている牛乳の多くは、常温保存が可能なものが大部分を占めるため、ある程度の期間の買い置きが可能です。

 そういえば、今日、買い物に行った時、いつも私が買っている牛乳がなかったのは、もうすでに、買い占めが始まっているせいだったのかもしれません。私はそんなに乳製品をとる方ではありませんが、少なくとも、この状況で価格が上昇しないことは考えづらいと思うと、今のうちに少し買い置きしておこうか??などと思ってしまうのです。


牛乳価格高騰 牛乳不足 干ばつ


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2022年8月8日月曜日

公共交通機関でのベビーカー問題について

   


 日本の公共交通機関で「ベビーカーが邪魔だ!畳め!」と言って、ベビーカーを蹴飛ばしていった人がいた・・とかいう話がSNSで出回っていて、あらためて、自分の子供が小さい頃のことを思い返してみると、私は子供を連れてベビーカーで公共交通機関に乗ったことはなかったように思います。

 たった一度、思い当たるのは、アフリカから引越してくる際のことです。夫は先にフランスに到着していて、一人で赤ちゃんだった娘を連れて、アフリカからパリに来た時のことで、空港で飛行機に乗る時にベビーカーは預けました。

 その時は、ブリュッセル経由の飛行機だったのですが、ブリュッセルまでの飛行機が遅延して、経由便の飛行機に乗るために、ブリュッセルの空港をまだ生後3ヶ月だった娘と荷物を抱えて、汗だくになって走った記憶があります。

 ベビーカーはブリュッセルの空港で積み残されて、ロストバゲージュとなり、数日後に夫が空港までピックアップに行ってくれました。

 そもそも飛行機の場合は機内にベビーカーを持ち込むということもないので、話は別ですが、それ以外でも、私はベビーカーを利用はしていたものの、ベビーカーで出かけるのは、近所のみで、公共交通機関にベビーカーを持って乗ることはありませんでした。

 娘は1歳になるかならないかの頃に歩き始め、その後は、エネルギー満ち溢れる娘に夜、寝てもらうには、ベビーカーに座らせるなどということはせず、できるだけ歩いて疲れてもらわなければならなかったし、バスや電車の乗り降りや駅の階段などの移動を娘だけでなく、ベビーカーとともに移動するのは、私にはちょっとムリだ・・と思っていたからです。

 しかし、実際にメトロやバスに乗っていると、ベビーカーを押して?バスやメトロに乗っている人を見かけることはあり、それに対して、周囲の人がすごく親切なのには、いつも驚かされます。

 今のバスは、たいてい、ベビーカーや車椅子の人が乗り降りできるように、電動のスロープがついていて、たいていは、特に頼まなくてもバス停にそのような人がいると、運転手さんが予め気づいてくれて、スロープを降ろしてくれて、難なく乗れるようになっているし、バスの中には、車椅子やベビーカーのためのスペースもとられています。

 赤ちゃんを連れているような人がいれば、すぐに、すっと席を譲る人がいて、駅の階段をベビーカーを運ぶのに往生している人がいて、私が手伝ってあげようかな?と一瞬、迷ったりしていても、すぐに通りすがりの人の中に、手を貸してくれている人が現れ、さっと運んで、そのまま、すっと何もなかったかのように、また通り過ぎていくのをよく見かけるので、こういうところは、フランス人って優しいなぁ〜、カッコいい〜!、と感心します。

 彼らは、実にさりげなく、弱い人々に席を譲り、子供も連れていない、まだそこまで年寄りでもない私などにも、(ちょっと疲れた顔をしていたのかもしれないけど・・)「マダム、座りますか?」などと言って、席を譲ってくれたりします。

 一見、身勝手な感じもするフランス人ですが、そのあたりは、とてもフェミニストというか、弱者には往々にして優しいと感じることが多いです。

 電車によっては、乗客のマナーが悪いと思われる路線もあるのですが(特にパリ近郊郊外線)、席を譲ることに関しては、腰が軽いというか、実にスマートな印象があります。彼らは、バーやカフェなどでも立ち飲みすることも多いし、立っていることに、あまり抵抗がないのかしら?などと思うこともないではありませんが、普段はフランスの地方の人からも冷たいと評判の悪いパリジャンも、実に親切にさりげなく、席を譲ってくれたり、ベビーカーを運んでくれたりします。

 ですから、パリでベビーカーが邪魔だと言って怒っている人を私はみかけたことはありません。


ベビーカーどころか、こんなのまで乗ってる パリのトラムウェイで・・


 しかし、一方では、我が家の近くの決まった路線(バス)ですが、すごく威張ったおばあさんたちが乗ってくるバスがあって、うっかり座っていようものなら、「はい、立って!私を座らせて!」と席をどかされることもあり、唖然としたことがあります。

 もちろん、誰もが同じではないでしょうが、往々にして、フランスでは、弱者には優しいという印象があります。

 ただでさえ、大変な子育てです。誰よりも大変なのは、ベビーカーで公共交通機関を移動しなければならないお母さんなのに・・と思います。

 そういえば、そんなわけで?、娘は1歳半くらいになるまで、電車というものに乗ったことがなく、初めて、電車でパリに出かけた時(その頃はパリ郊外に住んでいたので)は、電車が怖くて泣いてしまったのを覚えています。

 今では、一人で飛行機に乗ってどこの国へでもでかける娘にも、そんな可愛い頃があったと、懐かしく思い出しています。


公共交通機関でのベビーカー問題


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