パンデミック前ほどとは言わないまでも、パリに観光客がかなり戻ってきています。以前ほどではなくとも、観光バスもちらほら見かけるようになってきたし、美術館には行列ができるようになってきました。
しかし、戻ってきたのは観光客だけではなく、観光客を狙う犯罪も戻ってきたようです。パリでは、スリやひったくり、置き引きなどは、珍しいことではないので、たとえ、観光客ではなく、こちらに住んでいる者とて、決して気を緩めることはできません。
ある程度、パリに長く住んでいれば、少なからず、それなりに日常的に少なくとも、自分自身も含めて、周囲の誰かしらが被害に遭ったという話を耳にしているので、大金は持ち歩かないとか、華美な服装やブランドものを持ち歩かないとか、自ずとかなり警戒する生活を送っています。
しかし、観光客となれば、やはり話は別で、慣れない国で知らないところを見に来るのが観光ですから、やはり隙ができるのは仕方ない話で、スリやひったくりなどは観光客をターゲットにしようとします。
スリやひったくりなどは、取り立ててニュースにするほどでもないくらい頻発しているので、特にパンデミックの観光客が少なかった間は、あまり目立った事件を耳にすることもありませんでした。
ところが、先週、パリ・エッフェル塔近くのトロカデロで強盗を働いた12人の若者が逮捕されたという知らせが入ってきました。
スリやひったくりなどは、被害に遭ったことにその瞬間は気付かないことも多く、たいていは、事後になってから気付いて、一応、警察に届けたとしても、その後に捜査をしているとは思い難く、たとえ、無理矢理、何かを奪われることがあっても、その場に警察でもいない限り、身の危険も考えると捕まえることはまず不可能です。
こういった強盗などは、まず単独犯ではないことが多く、たいていは、何かを奪う人とそれを持って逃げる人と役割分担ができているのも特徴です。
それが先週の事件は、一度に12人も逮捕したというのですから、ちょっと驚きです。
今回の事件は、夜11時頃、トロカデロの庭園で2人の若者が観光客から金のネックレスを引きちぎるところをパトロール隊が目撃したことから、始まりました。エッフェル塔付近は、言わずと知れたパリの観光客が集まる場所の一つです。2人の若者は、すぐに逮捕され、近くの警察に連行されました。
その段階で、近くには20人ほどの仲間がいたことが確認されています。
その数分後に同じ警察に、後頭部と腕に傷を負い、血を流しながら強盗被害に遭った人が訪れてきました。被害者はすぐに救急隊によって手当を受けて、近隣の病院に搬送されました。この男性の証言によると、エッフェル塔付近にいたところ、持っていたバッグを奪おうと数人の若者が襲ってきて、彼が抵抗したため、割れた瓶で殴られたそうです。
割れた瓶で殴られるなど、怖すぎる話です。
また、その直後には、2人のアジア人観光客が「iPhone 12 pro Maxをひったくられた」と被害届を提出に警察へ。ここまで、犯行が重なる事態に、警察は大挙して広場に出動、9人の容疑者を確認し、連行。彼らからは、先ほど盗まれたばかりのiPhoneを発見され、若者たちは、即座に逮捕されました。
そして、さらに午前2時30分頃、庭を歩いていた女性の首から金のネックレスが引きちぎられる事件が発生。女性の証言により、5人組の強盗に襲われたことがわかり、警察官は容疑者を発見し、さらに3人の強盗が逮捕されました。彼らは5人の共犯者とともに、観光客に暴行を加え、シャネルのペンダントがついた3連の金の鎖を奪っていました。
一晩で、同じ場所でこれだけの犯罪が起こり、その一部が逮捕されているにも関わらず、犯行が止まずに続くということは、警察も全く舐められているわけで、事実、1日で同じ場所でこれだけの逮捕者が出るという話もあまり聞いたことがありません。
#StopAuxVols | Cette nuit, les 👮♂️👮♀️ de la DSPAP sont intervenus dans les jardins du #Trocadéro pour plusieurs faits de vol à l'arraché (colliers, montres, téléphones et sacs).
— Préfecture de Police (@prefpolice) June 10, 2022
➡️ 5 interpellations#VotreSécuritéNotreQuotidien pic.twitter.com/qemb9vnCAO
言わせてもらえば、深夜に観光地でシャネルの金のネックレスをつけて歩く方もどうかしていると思いますが、そもそも悪いのは、犯罪者の方です。しかし、それを誘因するような身なりや行動にも注意が必要です。
ましてや、金品を奪われるだけでなく、割れた瓶で頭を殴られるなどという暴力的な暴漢に遭遇する危険もあるのです。
以前は、私の職場も比較的、観光客が多い場所にあり、ジプシーと思われるような子供がたむろしているのを道路に座り込んで待機しているのを見かけたことがありましたが、そのような子供には、必ず大人がバックについており、子供の場合は、捕まってもすぐに解放されるために、大人の代わりに仕事?をさせられているようでしたが、最近は、大人がバックについていない未成年のグループの犯罪が増加しているようです。
この日は、結局、大挙して警察が出動し、27人もの身元確認が行われた結果、このうちの12人が逮捕されるという大捕物になりました。
パリ検察庁に送致されるこの手の未成年の犯罪者は年間4,000人と言われています。
ここ2年間、観光客が途絶えていた期間、仕事?ができなかった彼らが観光客の再来とともに急ピッチで仕事を再開し始めたようです。
アジア人、特に日本人はターゲットになりやすいので、パリを訪れる際は、くれぐれもご注意ください。日中の観光は、決して華美な服装はせずに、なるべく現金は持たず、少しおしゃれしてディナーなどに出かけたい場合は、一度ホテルに戻って着替えて、行き帰りはタクシーにした方が無難です。
パリは美しい街ですが、残念ながら、日本の雑誌のパリ特集のようなおしゃれな服装をして出歩けるような場所ではないのです。
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