2021年7月31日土曜日

パリのラーメン一杯の値段 パリのラーメン屋さん


一見、ラーメン屋さんには、見えない小洒落たラーメン屋さん


 パリに旅行に来たときに、日本の食べ物が恋しくなって、思わず気軽に食べられるラーメン屋さんに入ったことのある人は、少なくないのではないか?と思います。

 私も以前、イギリスに住んでいた頃、当時は、イギリスにもそんなに日本食屋さんがたくさんあったわけでもなく、パリに旅行に来たときに、ラーメン屋さんに駆け込んだことがありました。

 しかし、パリのラーメン屋さんは、意外な落とし穴でもあり、そんなに高級なラーメン屋さんでなくとも、二人でラーメンと餃子を食べて、それにビールでも頼めば、あっという間に1万円近くなることもあり、旅行中で通貨が違って金銭感覚が麻痺していることも手伝って、なんだか、後から考えてみたら、やけに高かったと思うこともあるかもしれません。

 私は、特にラーメンが好きというわけではありませんが、パリに来たばかりの頃は、今ほどラーメン屋さんもパリにたくさんあったわけではないので、何となく、ラーメン屋さんの近くに用事があったりすると、思わず食べに入ったりしたこともありましたが、最近は、ラーメンは、あっという間にフランス人の間で人気になり、昼時などは、並ぶのが嫌いなはずのフランス人がどこのお店の前にも行列を作っているので、並んでまでは行かなくてもいいかな・・と、逆にすっかり寄り付かなくなっていたのです。

 まだまだ今のような日本食ブームになる前までは、パリのサンタンヌ通りとその近辺にある数軒のみで、ひぐま、北海道、来々軒、サッポロラーメン、金太郎など、ごくごく限られたお店だけでした。

 中には、クォリティも今ひとつのところもあったりして、麺がこれ、ラーメンの麺?とか、スープもイマイチだったり、酷いところになると、猫舌のフランス人仕様になっているのか?湯気のたっていないラーメンだったりすることさえありました。

 ところが、今や、すっかり、ラーメンは定着し、本格的なラーメンの店舗がパリに進出するにつれ、パリのラーメン屋さんのクォリティも上がってきました。

 しかし、上がったのは、クォリティだけでなく、値段もうなぎのぼりで、先日、人気のラーメン屋さんの前を通ったので、ちょっと覗いて、メニューを見て、その値段にびっくり!ラーメン一杯で、13ユーロ〜19ユーロ(約1,700円〜2,500円)でした。

  


 もともとパリでの外食は、高いので、外食してこの値段で済むのは、決して高い方ではないのですが、それにしてもラーメン一杯の値段としては、ちょっと日本円に換算すると、なかなか抵抗のある値段です。

 それでもお客さんがひっきりなしに入るのですから、すごいものです。それは、他の外食の値段がそれにも増して高く、しっかりしたクォリティの、しかも、ちょっと小洒落たお店だったりすれば、フランス人はイチコロな訳で、物珍しいラーメンという食べ物は、この程度の値段のものであるという認識がフランス人には定着してしまったわけですから、日本でのラーメンのだいたいの値段を刷り込まれている私のような在仏邦人にとっては、なかなか抵抗があります。

 しかし、おそらくパリで最も古い部類に入るラーメン屋さん「ひぐま」などは、シンプルに塩、みそ、醤油ラーメンは8ユーロ(約1,000円程度)とまだ許容範囲内です。

 もともとケチなフランス人も、つまらない外食にも結構なお金を使う独特な文化に支えられ、パリのラーメン屋さんは、今や大繁盛の堂々たる地位を獲得しているのです。

 それでもフランスで育ったのに大の日本食党の娘(フランス料理が苦手)などは、この値段で必ず美味しいラーメン屋さんは、決して悪くない・・などと、かなり好意的です。

 私でさえも、生まれ育った日本ではどちらかというとお蕎麦派で、ラーメン屋さんというものには、数えるほどしか行ったことがなく、一時帰国で日本に帰った時も限られた食事の回数の中で、ラーメン屋さんは、私の食べたいものリストには、入ってはおらず、私の人生においては、結果的にパリでの方がラーメン屋さんに行った回数は多いという皮肉な結果です。


パリ ラーメン屋

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2021年7月30日金曜日

フランス領マルティニーク島・レユニオン島 再ロックダウン

   



 やはり、デルタ変異種を甘く見てはいけない・・と、このところ、つくづく思わされています。

 このところのフランスの感染状況は、悪化の一途を辿っており、しかも、見事にバカンスで人が賑わっている地域で地図はどんどん色濃くなっていっています。(感染状況を色分けして表示しているので、フランスのどの地域がヤバいのか一目瞭然)

 感染状態が悪化しているのは、見事にバカンスで賑わっているビーチ沿いで、デルタ変異種は、暑さにもめっぽう強いようなのが恐怖です。

 昨年の夏は、ワクチンがなかったにもかかわらず、気温の上昇とともにウィルスの感染も夏の間は、落ち着いていたのですが、どうやら確実にウィルスはパワーアップしているようです。

 そんな中、フランス領マルティニーク島は感染の急激な悪化により(特に今週に入ってからは、医療崩壊寸前)、島内の病院の集中治療室は、限りなく100%に近く、感染者数は先週の2,241件から3,537件に跳ね上がり、1週間で58%増で、バカンス中にもかかわらず、すでに実施されていた夜間外出禁止(午後9時〜朝5時)に加えて、週末から少なくとも3週間、再ロックダウンになることになりました。

 レユニオン島も2週間の再ロックダウンです。

 この真夏のバカンスの真っ只中に、再びロックダウンとは・・誰が予想していたでしょうか?

 住民及び旅行者は、住居から半径10キロを超えて移動するには、ワクチン証明書か、正当な理由を証明する何かがなければ、身動きが取れません。レストランやスポーツジムなど、マスク着用が不可能な場所は閉鎖されます。仕事もリモートワークが推奨されます。

 また、夜間外出禁止は、午後7時からに繰り上げられます。

 マルティニーク、レユニオンは、フランス領なので、フランス国内と同じ扱いです。

 バカンスシーズン突入の際には、「バカンスの旅行は海外ではなく、できるだけ国内で!」と呼びかけられていたために、マルティニークやレユニオンでバカンスを過ごしている人、これからバカンスに行く予定であった人も少なくないはずです。

 フランス本土からの旅行者も、ワクチン接種証明書かやむ負えない理由を提示する必要があります。

 すでにマルティニークで満床状態の集中治療室では、フランス本土への患者の移送も予定されています。この真夏のタイミングでの患者の移送です。

 この地域の問題点は、極端にワクチン接種率が低いことで、フランス全国でのワクチン接種は、2回の接種が51%以上に至っているのに比べて、この地域では20%を下回っています。

 重症化している患者の97%はワクチン未接種者で、このような地域が出てくれば、ワクチン接種がいかに急がなければならないものであるかがわかります。

 カステックス首相は、すかさず会見に登場し、このマルティニークを例に挙げ、ワクチン接種の緊急性、必要性を強く訴えています。

 またマルティニークだけでなく、他のフランスの海外領、グアドループでは感染者数が一週間で3倍、集中治療室の占拠率は1週間で30%以上アップの81.5%、ここでもすでに患者の移送計画を開始しています。ギアナでも2倍に増加しています。

 フランス本土内では、ここまでワクチン接種率が低い地域はありませんが、最後にワクチン接種が開始された12歳〜17歳の年齢層に加えて、若年層はワクチン接種率が低いことを考えると、ワクチンをしていなければ、あっという間にこれだけ感染拡大してしまうデルタ変異種に打ち勝つためには、9月に学校が始まる前までには、なんとしてでも、このティーンエイジャーのワクチン接種を広めることが必要です。

 ワクチンができていないこれらの若年層に加えて、「何が何でもワクチン接種をしない!」とマスクもせずにデモを続けている一定数の人が頑として存在し続けているのは、今やフランスにとって着火を待つ爆弾のような存在です。

 このパンデミックの中、日本でオリンピックが開催されることでの感染拡大を心配していましたが、フランス人のバカンスと日本のオリンピック、いったい、どっちが危険なんだろう?と、妙なことを考えています。

 フランス人のバカンスは、なんといっても8月がシーズンのピークを迎えます。パリは人が減ってくれて、大気汚染もこの間は一時解消され、空も心なしか青く見えるほど、清々しいのですが、このまま感染が悪化していけば、バカンス先でロックダウン・・なんていうこともあり得ないことではないかもしれません。

 これからバカンス先を選ぶには、その地域のワクチン接種率を調べてから・・なんていう方法も必要かもしれません。


マルティニーク・レユニオン 再ロックダウン


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2021年7月29日木曜日

日本のワクチンパスポートの不思議

   


 日本で、7月26日から「ワクチンパスポート申請受付」を開始したというニュースを見て、???と思いました。

 調べてみると、「ワクチンパスポート」の申請には、「申請書」「パスポート(旅券)」「接種券のうち(予診のみ)部分、(接種済証または接種記録書)」の4点セットが必要で、マイナンバーあるいは、本人確認のための書類が必要となるそうです。

 どうやら日本のワクチンパスポートは、「海外渡航者」の利用を前提としており、発行条件として、「実際に海外渡航予定がある人」に限定されているものであり、フランスで言う「ヘルスパス」「ワクチンパスポート」とは、性質が少し異なるようです。

 とはいえ、フランスでは、ワクチン接種をした時点で、すぐにその場でワクチン接種証明書を配布してくれるので、そのQRコードを自分の携帯に読み込めば、それがそのまま「ヘルスパス」にもなり、「ワクチンパスポート」代わりにもなるので、あらためて申請する必要もなく、あっという間に取得できます。

 日本での、ワクチン接種をして、さらにその証明書や他の書類を揃えて、再び申請しなければならないという方法は、渡航希望者の利用が前提とはいえ、ワクチンパスポートを多方面にも活用することを考えなかったのでしょうか?

 すでにワクチン接種が開始されて時間が経っている今からでは、遅いのかもしれませんが、今後、いつ終息するかわからないパンデミックにおいて、さらに多くの人出を介して、「ワクチンパスポート」の申請をしなければならないというのは、なんとももどかしい感じがします。

 本来の日本のパスポートは、世界一のパスポートと呼ばれていますが、現時点で、この「日本のワクチンパスポート」を受け入れる国は、イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5ヶ国と、隔離免除書発行に必要な書類のうちの1つとして認めるという韓国、エストニア(現時点では、入国後の隔離やPCR検査の必要性がないため実質的には意味なし)だけです。

 フランスは、日本側がフランスのワクチン証明書を認めない(実質的にワクチンをしていても隔離期間が必要とされる)ために、不公平を理由に、現在のところは、日本のワクチンパスポートを認めないという姿勢をとっているようです。(もっとも、フランスでは、日本からの渡航に対して72時間以内のPCR検査の陰性証明書があれば、隔離期間は求めていません)

 日本側では、現在は、オリンピック・パラリンピック関連の入国者対応に追われているために、できるだけ、外国からの入国はしてほしくない、感染対策を強化しているために、たとえ、ワクチン接種済みの人でも、2週間の隔離を強制しているのだと思うのですが、フランスだけでなく、多くの国が日本のワクチンパスポートを受け入れないのは、フランス同様の理由だと思います。

 それにしても、ワクチン接種に際して、ワクチン接種券だのワクチン証明書やワクチンパスポートが紙の書類であったり、最新テクノロジーを誇る日本であったはずなのに、いつの間にか、手間暇も時間もかかるこんな方法を取るようになってしまったのか?と、日本の衰退ぶりが少々、ショックでもあります。

 フランスでは現在、「ヘルスパス(ワクチン2回接種証明書か48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)」について、色々と揉めていますが、今後、日本は、これ以上感染が拡大し、ワクチン接種も進んでいった場合に、ワクチン接種をした人のみに入場を制限する場所や飲食店のためにワクチンパスポートとは別に、ワクチン証明書が必要になるのでしょうか?

 それとも、そんな制限を設けなくても、日本は再び感染を抑えていくことができるのでしょうか? 

 私は、フランスが「ヘルスパス」を作って、ロックダウンせずにワクチンをしていない人だけをロックダウン状態にして、経済を回していこうとしているやり方は良い方法だと思っていますし、もうそれでさえ、急がなければ、再び深刻な状況になってしまいそうなことも予測されています。

 私がフランスに来た20年前には、「日本だったら、なんでもさっさと色々なことが進むのに・・」とどれだけ思ったかわかりませんが(未だにどうしようもないことも多いフランスですが・・)、どうにも最近の日本、「どうしちゃったんだろう?」と思うことが増えました。

 ことに、ワクチン接種関連に着いては、オリンピックという大きなイベントが行われる、実際にもう始まってしまっているのに、なんで、こんな時間のかかることをやっているのでしょうか?

 フランスと日本では国民性も違い、これまでも日本は、フランスのようなロックダウンをせずに感染を抑えてきた実績があるので、日本には日本のやり方があって、それはそれで回っていくのかもしれませんが、どうにも、もどかしく思えてならないのです。


日本のワクチンパスポート


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2021年7月28日水曜日

柔道は意外とフランスに浸透しているスポーツ フランス人 女子柔道家 クラリス・アグベニェヌ金メダル <フランスの柔道>

  



 現在、開催中の東京オリンピックは、フランスでもライブ中継されていて、国営放送局のどこかで必ず、放送されていますが、当然のことながら、フランスでライブ中継されている競技は、フランス人が出場している種目が中心で、あまり日本人選手の活躍をオンタイムで追うことはできません。

 フランスからは、今回のオリンピックには、378人の選手が出場していますが、オリンピック競技には、33競技もあるうち、各国から全競技に出場するわけでもなく、こうやって海外でオリンピックをあらためて見ていると、国ごとのオリンピックの得意?競技というのは、なかなか違うものだなぁと思って見ています。

 昨日、放送されていたフェンシングや馬術などは、日本ではあまりポピュラーとは言い難いスポーツですが、フランスでは、きっと日本よりは、一般の人でも触れる機会のあるスポーツでもあります。

 東京オリンピックからスポーツクライミングとして新たに競技種目に加わったボルダリングなどもフランスでは、かなり一般的なスポーツで、多くの学校にボルダリングの施設?が備え付けられています。

 現に、娘が小学校に通っていた頃は、学校で乗馬の合宿のようなものがあったし、希望者には、フェンシングなども学校で習う機会もありました。

 逆にフランス(ヨーロッパは概して同じだと思いますが・・)では、野球はマイナーな存在だし、バレーボールをやっているとか、熱狂的に観戦するという話もあまり聞きませんし、フランスの学校には、日本の学校のようにどの学校にもプールがあるわけではありません(むしろ、学校にはプールがないのが普通)。

 ところが、意外なことに柔道というのは、フランスではかなり全国的に浸透しているスポーツで、小学生がお稽古事?にしているスポーツは、女の子は圧倒的にバレエですが、男の子は、サッカーか柔道が一般的なのです。

 実のところ、ご本家の日本よりもフランスの方が柔道人口は、圧倒的に多いのです。

 1933年にフランスに柔道が紹介されて以来、1946年にフランス柔道連盟が設立し、それほど歴史が長いわけでもないのに、柔道がフランスにこれほど浸透していることは、不思議なことでもあります。

 オリンピックの柔道では、見ることはできませんが、フランスの柔道は、帯の色も段階が細かく分かれていて、黄色、オレンジ、グリーン、ブルー、茶色などの日本にはない色も存在します。

 フランス語でも柔道はJUDOですが、競技としての柔道だけでなく、フランス語では、柔道の選手のことを柔道家(JUDOーKA)と呼ぶのも、フランスでの柔道の浸透具合がうかがえます。

 昨日、フランス人の柔道家クラリス・アグべニェヌが63キロ級で金メダルを取ったことは、もうその日の1日だけでも何度、彼女の映像がテレビで流れたか、数え切れないほどです。

 彼女は今回、フランスから東京オリンピックに派遣された選手の中でも、最も期待されていた選手だっただけに、開会式のフランス国旗の旗手にも選ばれていました。

 これまでに(7月27日現在)フランスが取ったメダル7つのうち、4つが柔道であることも恐らく日本が持つフランスのイメージとはかけ離れたものであると思われますが、フランスでの柔道人口の裾野の広さを考えれば、不思議なことではないのです。

 フランス人には、日本の伝統的な文化に対して、畏敬の念を持っている部分があり、○○道、と道のつくスポーツには、少し格別な印象があるようですが、今や柔道はJUDOで、その語源などは、あまり知らない人の方が多いと思います。

 しかし、その礼儀正しさや、いざとなれば護身にもなり、身体や精神を鍛えることができ、何よりもあまりお金がかからないところもフランスで身近な存在へと普及していった理由かもしれません。

 これまでも、全日本の柔道の選手なども、振興試合のためか、かなり頻繁にパリにいらしているのを見かけることも多かったです。

 日本の伝統的なスポーツがこれほど海外で広まり、小さい子供にまで浸透することは、なかなかないことかもしれませんが、柔道は、かなりフランスではメジャーな存在なのです。


フランス柔道


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2021年7月27日火曜日

ヘルスパス起用で映画館がガラガラになった・・

   


 7月21以降、フランスでは、50人以上を収容できる全ての文化施設、娯楽施設でヘルスパス(ワクチン接種2回接種証明書かPCR 検査の陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)の提示が義務付けられています。

 これには、たとえ50人以上が入場していなくても、50人以上収容可能な映画館、劇場、コンサートホール、プール、スポーツジム、遊園地、展示会、見本市などが含まれています。

 フランス屈指の観光地であるルーブル美術館などでも、ヘルスパスのチェックが開始されています。

 ことさら、この中でもヘルスパスによる被害を被っているのが映画館で、このヘルスパス提示が義務付けられて以来、収益70%減という壊滅的な被害を被っています。

 不謹慎ではありますが、これを聞いて、今なら映画館はガラガラ・・ワクチン接種が済んでいる私は普段は映画館にはほとんど行かないくせに、「たまには、映画でも見に行こうかな?」と思ったほどです。

 しかし、この状況にフランス人が黙っているわけはありません。FNEF(Fédération National des éditeurs de Films)(フランス映画連盟)は、フランス政府に対し「映画館のための大規模な緊急援助」と、「部分的な活動メカニズムを含む援助」を求める声明を発表しています。

 とはいえ、美術館、プール、遊園地など、他にも同じ制限を課せられているのに、映画館ばかりがこれほどの壊滅的な被害を被るには、他にも理由があるに違いありません。

 現在は、バカンスシーズン中、観光先でわざわざどこでも見ることができる映画は、ワクチン未接種の人がわざわざPCR検査を受けてまで見にいく対象に選ばれていないということです。

 それでも、このヘルスパスによって、他の美術館やプール、遊園地などに行くことを断念している人もいるでしょうが、気候の良いシーズンに開放的に楽しむことができるプールや遊園地、ここでしか見ることができない美術館のためなら、検査を受けてでも、行きたいと思う人は多いのではないでしょうか?

 映画ならば、今は、ネットフリックスでもアマゾンプライムでも色々と映画を見る手段は手元にすぐにあるのです。

 ヘルスパスの発表があって、慌ててワクチン接種を受けた人も、2回の接種が終わり、さらに一週間の期間が必要となれば、まだまだ多くの施設でヘルスパスとしてワクチン接種証明書を使用することはできません。

 今後、ワクチン接種がさらに拡大されていけば、気軽に映画を見に行ける人も映画館に戻っては来るとは思いますが、現在の映画業界の別の問題も浮き彫りにしています。

 8月初旬からは、カフェ、レストラン、バーなどの恐らくもっともっと大勢の利用者がいるであろう場所でのヘルスパスの起用が控えています。

 ヘルスパスの起用に関しては、議会でも喧々轟々、議論されていましたが、カフェ・レストラン・バーに関しては、テラス席も含めて、ヘルスパスの提示がない限り、利用できないことになっています。

 これは、映画館以上に利用者が多く、日常的なことでもあるため、これで利用客が減り、減益になることが問題になるより先に、利用者の方が騒ぎ出す=ヘルスパス反対デモが拡大する懸念があります。

 バカンスシーズンでのこの規制は、キャンプや別荘滞在ならば、いざ知らず、ホテルに滞在する予定の人がヘルスパスなしには外食ができないとなれば、大変、不便なことです。

 ヘルスパスについての発表があったのは、7月12日ですから、その発表後、慌ててワクチン接種に走ったとしても、8月のバカンスには、ギリギリ間に合うかどうかのタイミングです。

 ましてや、頑としてワクチン接種に反対している人も一定数いる限り、8月1日以降のヘルスパス反対のデモは、さらに激化することが予想されます。

 しかし、フランスの感染状況は、悪化の一途を辿り続けています。地域別の感染状況を見ると、見事に人々がバカンスに出かけている地域に色濃く表れ始めています。

 つまり、ワクチン接種の拡大、ヘルスパスの起用は予断を許さない状況でもあるのです。

 バカンスシーズンだから、デモも起こりにくかったとも思われていたヘルスパスの起用は、バカンスだからこそ怒りを買うかもしれなかった一面が、これからさらに表れてくるかもしれません。


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2021年7月26日月曜日

「生きながら死んでいる」と言っていたフランスの若者を思う ワクチンで自由を勝ち取れ!

 

   東京五輪開会式の翌日、タヒチの病院を訪問してワクチン接種を呼びかけるマクロン大統領


 東京オリンピック開会式に出席するために来日していたマクロン大統領は、オリンピックに参加しているフランス選手に会ったり、菅総理との日仏首脳会談の他、マンガ作家を訪問し、フランスのカルチャーパスに見られる日本の文化とフランスの結びつきを語ったり、日本のビジネスリーダーに会ってフランスをアピールしたり、ほんの1日のスケジュールを精力的に動き回り、翌日には、ポリネシアに向けて旅立ちました。

 タヒチの病院を訪問したマクロン大統領は、「科学はウィルスに対抗する武器を与えてくれています!ワクチン接種を受けてください!」と訴えていました。

 フランス本土では、バカンスシーズンというのに、「ヘルスパス」反対の大きなデモが起こっていますが、マクロン大統領の叫びは、フランス本土にも届くでしょうか?

 ワクチン接種は、高齢者を優先に開始されたこともあり、若年層へのワクチン接種率が遅れている側面もありますが、感染しても重症化しにくいことや、ワクチン接種による後々の副作用がわかっていないことから、今は大丈夫でも、10年後にはこのワクチンによる影響が表れるかもしれない・・などの不安から、できれば先延ばしにしたいと思っている人も少なくありません。

 将来のある若者にとって、10年後のワクチンの副作用を不安に思う気持ちもわからないではありません。しかし、同時に、いつまでもワクチンをせずに、ウィルスの蔓延を止めないことが、いつまでも制限された生活を続けることであることも忘れてはなりません。

 これは、パンデミックですから、多かれ少なかれ、どの国のどんな世代の人も、やりたいことができない大切な時間も機会も奪われてきました。80歳の一年間も10代、20代の一年間も全然、意味合いは違うけれど、どちらも大切な時間です。

 ことに将来を大きく作用する大切な経験を積み重ねていく年齢である若者にとっては、パンデミックは、その年齢にしかできないことが、制限されてしまう、大変、残念な出来事でした。現に我が家の娘も、長年計画していた、この年齢にしかできなかった日本への留学を断念せざるを得なくなりました。

 私は、以前、学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙をマクロン大統領宛に送った学生の手紙を思い出しています。

「私は生きながら、死んでいるような気がする」「希望がない、自分の人生がないような気がする」と彼女は手紙で訴えていました。

 あの時は、マクロン大統領は、「19歳という年齢にこのパンデミックを迎え、どれだけの困難に直面しているか、多くのものを奪ってしまっているかを深く考え、理解しています。それでも、率直に言って、私たちはまだまだ頑張らなくてはなりません。もう一度、努力することをお願いします」と返事を送っていました。

 そして、現在は、ワクチン接種をすれば、かなりの自由が許されるようになりました。そして、今は、望めば、ワクチン接種は誰にでも受けられるものになっているのです。

 現在、フランスで大きなデモを呼び起こしている「ヘルスパス(ほとんどワクチンパスのような存在)」は、今後、まだまだ当分の間は、世界中でワクチン接種なしには、身動きができなくなる状態が続くでしょう。

 「自由」を叫んで、デモをする人々は、結果的に自分から、「自由」を放棄していることになります。

 私は、若者には、10年後の副作用の心配よりも、ワクチンをせずに失われ続ける時間を考えて欲しいと思っています。

 「ワクチンをしない自由」もたしかに、自由な選択肢の一つであるかもしれませんが、現状の世界中のウィルスとの戦いを見るにつけ、その自由は、誰かの命を危険に晒すものでもあります。

 周囲の人を尊重することができない自由は、身勝手なエゴです。現在のウィルスの拡大の勢いは、ワクチンでしか止めることはできません。

 ワクチン接種を受けることで「自由」を手に入れると考えることはできないでしょうか?

 マクロン大統領に手紙を送ったあの学生は、ワクチン接種を受けたのだろうか? 彼女がワクチン接種を済ませ、今は真に生きていると感じられる生活を送ってくれているといいなと思います。

 マクロン大統領がタヒチの人々に訴えていたように、科学はウィルスに対抗する武器を与えてくれたのです。



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2021年7月25日日曜日

通常の日常に戻れるのは2022年〜2023年 8月初旬には1日の感染者が5万人を超える恐れ


フランス国旗を掲げて、ヘルスパスの反対を訴える人々 マスク率もかなり低い


 フランスの科学評議会(le conseil scientifique)(フランスのコロナウィルスのパンデミック対応のための公共の意思決定に必要な情報を提供する責任を負う独立した諮問機関)の議長であるジャンフランソワ・デルフライシー は、第4波に突入したフランスの1日の新規感染者数は8月初旬には、5万人を超える可能性があることを発表しました。

 そして、さらには、冬には新しい変異種が登場し、2022年〜2023年より前には、通常の日常生活に戻ることはないと語りました。まったくもって、まだまだ感染がおさまりそうもないガッカリする話です。

 このウィルスの特徴は、並外れた突然変異力を持っていることで、さらに強力な威力を持つ変異種が誕生する危険があると指摘しています。

 現にすでにいくつもの変異を繰り返し、現在、世界中のウィルスがデルタ変異種に置き換わり始めてからというもの、フランスも毎週、感染者が倍々に増え続け、ここ1ヶ月で約10倍に急増しています。1ヶ月で10倍って、凄くないですか?

 フランスの現在のワクチン接種率は、58.27%(2回の接種済は、48.26%)で、ワクチン接種も進み始めているにもかかわらず、これだけ感染が拡大してしまうのですから、その威力たるや恐ろしいものです。

 しかし、感染者の96%がワクチン未接種であることからも、ワクチン接種でかなりの感染を回避できるできることは、証明されているようなものです。

 にもかかわらず、週末のフランスは、先週よりもさらに大規模な、全国で16万1千人の人出の「ヘルスパス反対」のデモが起こり、特にパリやマルセイユなどでは、デモが暴徒化し、催涙ガスや放水車まで出動する大騒ぎになりました。


 正直、バカンス中にこれだけの規模のデモというのもなかなか珍しいことですが、今回のデモに参加した人々は、フランス国旗を掲げ、一見、ぱっと見には、オリンピックの応援??と勘違いしそうになるような光景でもあります。

 今回のパリでのデモでは、バスティーユからシャンゼリゼにかけてがルートに選ばれたため、先日のパリ祭ではこの上なく美しいパレードで彩られたシャンゼリゼは、催涙ガスや放水車で煙がモクモクと立ち上がり、終いには、水浸しになり、警察とデモ隊の攻防戦になりました。

 何も知らずにシャンゼリゼに立ち寄った観光客などにも、容赦なく放水車が水で追い立てる結果となってしまいました。


 このヘルスパスの件だけでなく、フランスでは、土曜日にデモが起こる可能性が非常に高いため、パリ(フランス)を観光する際には、土曜日が日程に含まれている場合は、予めデモが起こる予定があるかどうかをチェックして出かけることが必要です。

 このデモは、単にアンチワクチン派だけではなく、かなり強行なほぼワクチン接種に追い込むような形の政府のやり方に反対している人々も多く、現実的に9月からはワクチン接種が義務化される医療関係従事者の人々=ワクチンをしなければ仕事が続けられない人々なども含まれています。

 ですから、このデモは、ヘルスパスに反対するデモでもあり、政府の強行的な政策に反対するデモ、デモクラシーを叫ぶデモでもあるのです。

 フランス国旗を掲げているのは、「フランスは民主国家であるべきだ!」との主張から、本来のあるべきフランスの姿?を訴えているという意味だと思います。

 フランス人のデモは、単に、ある物事に反対する側面と、フランスは、こうあるべきだ!とフランスを愛するがゆえに、これは個々が主張しなければならないと義務感、使命感にかられて行っている不思議な?側面もあります。

 しかし、どちらにせよ、今のパンデミックの状況で、端的にどうすればいいのかは、残念ながら、現在のところ、他に選択肢はありません。

 ワクチン接種を拡大し、ヘルスパスの制度が拡大することで、政府は100%ロックダウンは解除できると言っているのです。

 ワクチンは嫌!でも、ロックダウンは嫌、では、どうしたいのか?全く理解に苦しみます。

 科学評議会の議長は、それでもワクチン接種ができる国は、まだ救われる道がある。しかし、世界には、まだワクチン接種がほとんどできていない国もあり、それらの国では感染拡大が続き、そこで新しい変異種が誕生する危険も指摘しています。

 とりあえず、フランスでは、1ヶ月で感染が10倍にも広がっているウィルス対策に一刻も早く対策を取らなければならないのは必須です。

 ワクチンもロックダウンもイヤイヤと言っている人は、感染が悪化した場合は、病院に行かないつもりなのでしょうか? 権利ばかりを主張して、義務は果たさず、結局は国におんぶに抱っこになる、いつでも問題になる、ある一定の層の人々は、どんな時にも同じなのです。


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2021年7月24日土曜日

フランスで見ていた東京オリンピックの開会式

   


 東京オリンピックの開会式は、フランス時間で午後1時から生中継されていました。

 これまでフランスでは、ギリギリまで開催中止もあり得るとも言われていたせいか、オリンピックの話題に、あまり盛り上がりはありませんでした。

 とはいえ、当日は、エッフェル塔の目の前の広場には、パブリックビューイング会場が設けられ、多くの人で賑わっていました。

 しかし、この場所もヘルスパスなしには、入場できない制限された状態でしたが、この会場では、アルコールの提供も飲食も許され、日本の開会式の様子を「本当に無観客でやっているんだ・・」と驚いている人も多いようでした。

 でも、「ワクチン接種が進んでいない日本では仕方ないのかもしれない・・」と、日本の事情の一部も理解されている様子でした。

 フランスのテレビでも、その1時間ほど前から特番が組まれ、フランスの選手を紹介する映像が流されたり、開会式に参加するために東京に到着したばかりのマクロン大統領がインタビューに登場したりしていました。

 短いインタビューでしたが、マクロン大統領は、相変わらず饒舌によく喋ること・・視聴者のほとんどはフランス人なので、当然といえば、当然なのでしょうが、東京オリンピックについては、申し訳程度で、ほとんどは、フランスについて話していました。

 考えてみれば、私は、これまでオリンピックの開会式というものをテレビでさえ、ライブで見たことはなく、正直、とても複雑な思いで、初めて、私の祖国である日本で行われているオリンピックの開会式をライブ放送で見ていました。

 オリンピックの公用語がフランス語であったことも今さらのように思い出し、アナウンスがフランス語で始まってから、英語、日本語と続くことに、「あ〜、そうだった・・」と思ったくらいでした。

 多くの日本人が反対する中で開始されたオリンピックも開会式を迎えれば、もう、とうとう後戻りができない・・始まったんだ・・というような、どこかしっくり来ない気持ちや、それでも私は、日本に住んでいるわけではないので、日本人のような行動制限や交通制限を加えられているわけでもなく、きっと、私も日本に住んでいたら、また、さらに違う感情を持っていたんだろうな・・と思ったりもしました。

 また、逆に、衛生環境が世界的にも最も優れた日本だからこそ、こんなパンデミックの状況でオリンピックの開催に踏み切ることもできたのではないか? そんなことを思ったりもしました。

 無観客でありながら、無観客であることが目立たなく映るように工夫された場内の客席も、時折、映る、使われることがないであろう座席に備え付けられた飲み物のホルダーなどに虚しさを感じたり、開会式そのものを楽しむということに集中できずに、ぐるぐると色々なことを考えながら見ていました。

 開催までの流れを振り返るフィルムで、オリンピック招致が決定した時の映像などには、さらに複雑な思いを掻き立てられました。そもそもあれが不幸の始まりだった・・と思いながら見た方も少なくないのではないでしょうか?

 特に開会式に登場する組織委員会の面々の誰にも笑顔が見られないことも不自然なような、当然なような妙な思いでした。

 日本語で挨拶する橋本聖子委員長の挨拶の中の「このオリンピック開催を受け入れて下さった日本国民の皆様、開催実現のために、ともにご尽力をいただいたIOC、日本国政府、東京都、関係者の皆さま、ありがとうございます」が「Merci à tous」(皆さん、ありがとう)とだけ、訳されていたことにも、「まあ、そうだけど・・」となんだか、伝わらない気がしたりもしました。

 個人的には、なんとなく纏まりのない流れの演出のような気がしましたが、まあこの際、ギリギリまで色々な騒動があって仕方ないな・・とも思いました。

 おおよそのプログラムと解説は、報道機関には配布されていたのでしょう、フランスのテレビでも進んでいくプログラムを説明していましたが、その中で、「エモーション」という言葉が多いことも、単なる「感動」とは受け取れない、複雑な感情の動きが表れているようで、ことさら耳に残りました。

 フランス人にとって、この開会式で一番印象的であったのは、その後の報道から見ても、1,824個のドローンが東京の夜空に舞いながら、東京オリンピックのエンブレムを描きながら、地球の形を描いていく様子で、「これが日本のテクノロジーだ!」と大絶賛を送っていました。

 そして、報道陣にも知らされていなかった様子のオリンピック聖火の最終ランナーに大坂なおみ選手が登場したことも、これは、様々な意味で素晴らしい人選だったと評されています。  

 フランスでは、今年の全仏オープンで記者会見を拒否して結果的に途中で棄権してしまった曰く付きの大坂なおみ選手でしたが、フランスでは、自分の意思を通した彼女には、わだかまりは感じられず、多くのメディアのオリンピック開会式の報道には、「大坂なおみが聖火を灯し、オリンピックが開幕した!」と見出しに彼女が登場していました。

 おそらく、東京オリンピック開会式のフランスのイメージは、「夜空に舞うドローンでライトアップされた地球」と「大坂なおみ選手」の聖火の灯火として記憶に残ったと思われます。

 さすがに、各国の選手団が入場し始め、選手たちは、満面の笑顔で救われましたが、中には、マスクを誰も着用していない国の選手団も見られて、恐らくマスク着用が義務付けられているであろうに、誰もマスクをしていない選手団に、スタートからこれでは、どうなるんだろう?と思ったりもしました。

  


 フランスの選手団が登場したのは、次回のオリンピック開催国であるためにかなり終盤、それでも、他の国が登場するのとは、全然、違った嬉しさがあり、フランスは私にとって特別な国になっていることも感じました。

  




 そして、最後に登場した日本の選手団に対しても、やはり自分の祖国が登場する嬉しさを当然のように感じ、まるで私が二つの祖国を持っているような気持ちになりました。

    


 この開会式の中継から、フランスのテレビコマーシャルは、一気にオリンピックバージョンのCMに切り替わりました。日本では、オリンピックバージョンのCMは中止することを発表していたTOYOTAもフランスでは、しっかりオリンピックバージョンのCMが流れています。

 日本では放送できない分、海外ではここぞと巻き返しをするTOYOTAの気持ちもいかばかりかとこれまた妙な気分です。

 しかし、フランスでは、華やかな開会式の様子だけではなく、日本国民が未だオリンピック開催に反対してデモが起こっている様子もしっかりと報道しています。

 長いオリンピックの開会式をテレビで見守っていた私は、ちょうど開会式が終わるタイミングを見計らっていたように、新しいメールの着信に急に現実に戻されたような気がしました。

 それは、在フランス日本大使館からのメールで、翌日の「ヘルスパス反対のデモ」のお知らせでした。フランスは、オリンピックをやっているわけでもないのに、新規感染者は2万3千人を突破する急増ぶりで、第4波の波は確実に上昇中のデモです。


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2021年7月23日金曜日

デカトロン(スポーツ用品店)が開始するレンタルサービス

    


 デカトロンは、57ヶ国に2190軒以上の店舗を持つフランスの大手スポーツ用品店で、フランス人では知らない人はいないような、誰もがお世話になったことのあるであろう有名なお店です。

 自転車、キャンプ用品から水着、ダイビング、サッカー、テニス、乗馬、登山、トレーニングウェアなどなど、ありとあらゆるスポーツ用品を扱っているお店は、ここへ行けば、大抵、スポーツに必要なものが揃います。スポーツだけでなく、Tシャツなど、日常から利用できるものなどもかなり扱っています。

 そういう我が家も娘が高校を卒業するまでは、ずいぶんお世話になってきました。

 比較的、値段も手頃で、成長期の子供のスポーツ用品は、どんどんサイズも変わるため、安全でさえあれば、そんなに高価なものは必要ないのです。

 小学校高学年の頃からは、学校のお休みごとにコロニー(サマーキャンプやウィンタースポーツなどなど)でスポーツ三昧だった娘は、学校が休みの前には、必ずデカトロンに行って、必要なものを揃えるのが毎年の恒例行事のようになっていました。

 日頃、学校に履いていく靴の他に、彼女がやっていたスポーツのために、(バレエだけでも毎年2足)ランドネ用(山歩き)、スキー、乗馬など、どんどんサイズが変わっていく娘の足に併せて全ての靴を買い換えなければならないことを恨めしく思い、どうか早く娘の足のサイズアップが止まって欲しい・・と長いこと思い続けていました。

 子供の成長は嬉しいことではありますが、スキーやランドネなどは、一年のうち、そう何回も行くものでもないので、下手をするとワンシーズンで終わり!なんてことにもなってしまうので、その大して使っていない靴が溜まっていくのも恨めしくもありました。

 今もそんな子供の成長に大して使われていない靴やスポーツ用品の山にうんざりしている方も少なくないと思います。

 そんな方々には、これは朗報です。

 デカトロンは、新規事業として、スポーツ用品のレンタルサービスに乗り出しました。現在は、リヨン地域の5つの店舗でこのレンタルサービスのテスト期間中だそうですが、これには、自転車、カヤック、カヌー、パドルのほか、キャンプ用品や釣り道具などが含まれています。

 このテストケースが成功すれば、このサービスはオンラインでも利用できるようになり、レンタルできる製品の種類も広がっていくことになるでしょう。すでに自転車に関しては、サイトでレンタルサービスを開始しているようです。

デカトロン 自転車レンタルのサイト


 デカトロンは、パンデミックのおかげで、キャンプ用品、ハイキング、サイクリングなどのアウトドアスポーツ用品で大幅に売り上げを伸ばしています。この好機に乗って、デカトロンは、次なる戦略に乗り出したわけです。

 もともと年に1〜2回しか行かないキャンプや山歩きなどのために必要な用品を全て揃えて、使用しない期間を家の倉庫、あるいは、棚の奥深くに大きなスペースを占領しているのは、邪魔なことで、しかも、市場にはどんどん新しい商品が登場します。

 物を無駄にしない、環境問題にも配慮した新しい試みです。倹約家のフランス人には、好評に違いないと私は、思っています。

 しかし、この盗難事件の多いフランスで、(特に自転車などは・・)借りたはいいけど、すぐ盗まれそうで、レンタルの際には、保険がかけられることになるのでしょうが、いつでも心配はつきまといます。

 願わくば、もう少し早くこんなサービスができていてくれれば・・とうちにもゴミの山ができなかったのに・・などと思いますが、それでも、少しでもフランスでの生活が便利になっていくことは、嬉しいニュースに違いありません。


Decathlon Paris La Madeleine

23 Blvd.Madeleine 75001 Paris

104 Blvd. Saint-Germain  75006 Paris


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2021年7月22日木曜日

いよいよヘルスパスがスタートしたものの問題は山積み

   


 7月21日から、フランスは、かなりの範囲(文化施設、娯楽施設、ジム、コマーシャルセンター、長距離移動の交通機関などなど)でヘルスパス(ワクチン接種2回証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)が必要になりました。

 しかし、私が昨日、ヘルスパスが必要とされていたはずのコマーシャルセンターに買い物に行ったところ、全くのノーチェック、友人とバカンスに出た娘は、 TGVに乗車というのに、これまたノーチェック・・まぁまだ初日だから・・とも思うのですが、初日に準備できなくて開始できなくても良いなら、日付を設定する意味があったのか? まあ、フランスなら不思議ではないことではありますが、今さらのように思うのは、最初のロックダウン時の衝撃的なシャットダウンをフランスで行えたことは、スゴいことだったのです。

 しかも今は、バカンスシーズンで、多くの人がバカンスに出ていて、どこも人員不足、それでも、しっかりヘルスパスのチェックを行っていたところもあるようで、ジムや映画館、美術館などで、ヘルスパス不携帯で入場できない人の様子がテレビのニュースでは報道されていました。

 当日になって、カステックス首相は、昼過ぎの国営放送のニュース番組に登場し、このヘルスパスのチェックを機能させるまでに1週間のテスト期間を設けることを発表しています。

 つまり、ヘルスパスの本格的な始動は、8月からということになります。

 また、現在のところは、ヘルスパスのチェックにIDカード(身分証明書)の提示、つまり本人確認が必要ないとのことで、これでは、また新しい商売(ワクチン接種証明書のレンタルや偽証明書の販売など)が発生しそうです。

 なにせ、このヘルスパスのチェックを身分証明書と照らし合わせて本人確認をするとなれば、手間も時間も人出もいることになるのですが、本人のものでなくても良いなら、意味はありません。しかし、一般市民が身分証明書のチェックというのは、いささかお門違いの感もあります。

 現在のところは、それぞれの施設がチェックするのは、ヘルスパスだけで、合間を縫って警察がランダムに身分証明書との照合のチェック(抜き打ち検査)をすることになっています。

 しかし、第4波に突入したフランスには、本当はそんな猶予はなく、急増している1日の新規感染者数は、あっという間に2万1千人超え(一週間で2.4倍)と同様に入院患者数も1週間前と比較すると33%増になっており、ここのところ、家から聞こえる救急車のサイレンの音がまた増えてきたような気がする・・と思っていた私の感覚は、間違いではなかったようです。

 街に出てみると、ちらほら観光客も見られるようになり、美術館を訪れようとしていたアメリカ人観光客がこのヘルスパスのルールを知らずに、「2回のワクチン接種は済ませているのに、観光するのにワクチン接種証明書は持ってきていなかったので、入れてもらえなかった・・」とボヤいている人などもいました。

 エッフェル塔などは、こういう人々のために、エッフェル塔の隣に、PCR検査場を設けて、観光客対応をしているようです。

 しかし、人出不足は、こういった文化施設、娯楽施設、レストランだけではなく、病院でさえも、現在は、バカンスのためにスタッフがフルに待機しているわけではありません。

 スタッフがいなければ、たとえ、病床が空いている状態でも患者を受け入れることはできずに、このまま、入院患者、重症患者が急増していく状況が続けば、あっという間に医療崩壊を起こしてしまいます。まだまだ1ヶ月以上続くバカンスシーズンには、そんな危惧も孕んでいます。

 感染状況が特に悪化している場所では、再び、屋外でのマスクが義務化されたり、23時以降のレストラン・カフェ等の営業が禁止される事態になっていますが、今後、さらに感染が悪化する地域が現れれば、当面は、自治体ごとに対応すると発表されています。

 娘は、現在、パリ市内の病院併設の研究所でスタージュをしていますが、このヘルスパスの発表以来、看護士が退職してしまうケースが出始めていると医者が嘆いていたそうで、自分の職を辞してまで、どうしてもワクチンをしないと言っている頑強な信念を貫こうとしている人も一定数いるようです。

 この種のアンチワクチン派の人は、病院だけでなく、様々な業界にもいるようで、8月30日以降は、病院にかかわらず、入場者にヘルスパスの提示が求められる全ての施設の雇用主は、従業員のヘルスパスをコントロールする義務があり、不携帯を続ける場合は、制裁として無給、事実上の解雇になるのです。

 「労働者(組合)の権利」が甚大であるフランスでは、従業員を解雇するにも、雇用主側にとっては、大変な出費でもあり、レストラン・ホテル業界などは、「ヘルスパスには、反対しないが、このヘルスパス不携帯の(ワクチン接種をしない)従業員の解雇のための補償金に関しては、負担することを拒否する」=「国が払ってくれ!」と発表しています。

 現在、フランスのワクチン接種率は70代以上で80%、60代で77%、50代で73%と、開始のタイミングのズレにより、比較的、高齢の人には、かなり進んでいますが、一番、後回しになってしまった12歳から17歳の年少者に対してのワクチン接種期限を8月30日としていたものを9月30日まで延期するとし、9月の年度初めから、全国の中学校・高校にワクチン接種制度を設置することを発表しました。

 とにかく、政府の提案しているヘルスパスは、人々を解雇することでも締め付けることでもなく、感染をなんとか抑えるためにワクチン接種を拡大するためのものなのです。

 ロックダウンが解除になり、人々がバカンスに出ていることも感染拡大の原因でもありますが、昨年の今頃存在していたウィルスと、現在のデルタ変異種は威力が全然違い、真夏の今でさえも、しかもワクチン接種がかなり進み出しても感染が急増してしまうのですから、ウィルスがさらに活性化すると思われる秋までに、少しでもワクチン接種を進めなければ、大変なことになってしまいます。

 現在、フランスの感染者の96%は、ワクチン接種を受けていなかったことが確認されています。

 自由を守るためにワクチンを拡大しようとしている政府と自由を保持するために、ワクチンに反対する人々に接点を見出すことはできるのでしょうか?


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2021年7月21日水曜日

日本のオリンピックで日本のバブル方式が通用しない理由

  


 遡れば、コロナウィルスがこの世に登場し、それがこんなパンデミックにまで広がる前、最初に世界でコロナウィルスについて騒ぎ出したのは、横浜から出港したクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の乗客で香港で下船した男性が新型コロナウィルスに感染していたことが発覚してからのことでした。

 クルーズ船内での感染が拡大し、乗務員・乗客併せて3,713人のうち、712人の感染が確認され、当時は、コロナウィルスの正体もよくわからないままに、クルーズ船内でのクラスターに、日本(アジア)で起こった新しい感染症くらいにヨーロッパでは捉えられていました。

 ちょうど、そんな騒ぎの最中に日本に帰国していた私は、フランスに帰国する際に飛行機に乗せてもらえるかどうか? はたまたフランスに入国できるかどうか心配したくらいでした。

 しかし、帰国当日、恐る恐る羽田空港に行き、ANAのチェックインカウンターに行き、「フランスへの入国は、問題ありませんか?」と確認したところ、「今のところ、フランス側からは、特別な入国条件は提示してきていません」とのことで、飛行機に乗ったものの、それでも疑心暗鬼でいましたが、フランスへの入国は、全くノーチェックで何の問題もありませんでした。

 ただ、フランスに帰国してみると、やはり、日本から感染を運んできているのでは?と感じている人はいるようで、現に留守の間に猫の世話を頼んでいたフランス人などは、家の鍵を返しに来ると、いつもは延々とおしゃべりをして帰るのに、鍵を渡すと早々に退散していきました。

 しかし、それから間もなく、感染が爆発的に拡大したのは、フランスの方で、あっという間に前代未聞の完全なロックダウン状況に陥り、一日中、閉ざされた家の中で救急車のサイレンが絶え間なく聞こえ続く異常な生活が始まりました。

 「日本も油断していると危ない・・コロナを舐めていてはいけない!」などと思っていましたが、日本は、これまでに一度もフランス(ヨーロッパ)のような、深刻な感染拡大に至ることはありませんでした。

 日本では、法律上の問題などもあるのでしょうが、一度もフランスのような完全な罰金を課せられる厳しいロックダウンをすることなしに、感染を抑えられてきたことは、海外から見れば、奇跡的なことです。

 フランス人にそのことを話しても、「日本人は、マスクをする習慣があるからね・・」などと、軽く受け止めていますが、日本で感染をある程度、抑えてこれたのは、マスクだけではなく、日頃からの日常的な衛生的な生活、衛生観念、清潔に身を保つ習慣、規律正しく、規則を守る真面目な国民性などなど様々な要因に支えられてのことです。

 その習慣的に衛生管理に気を配る生活や、はっきりした規則(罰則)がなくとも自粛するということが外国人には、きっと想像もつかない世界です。

 ある意味、日本の方が特別な国なのです。

 ですから、外国人にとっては、日本で非常事態宣言が出ていると言っても、「お店はやっているし、人は街に出ているし、日本の非常事態宣言ってなに??」と意味がわかっていません。

 その上、感染者数は、ヨーロッパなどとは比較の対象にすらならないほどに少ないし、どれだけ日本人がオリンピックのために自粛生活をしているかは知らずに、この程度の感染者数なら、全然OK(あくまでフランスその他ヨーロッパの基準ですが・・)と思ってしまうのです。

 菅総理大臣は、「日本の状況は数字に表れているので、世界に発信すべきだ」と言っているようですが、ただ、数字を発表しても、世界的に見れば、数字だけでは、全く響かない数字で、世界に発信するならば、日本人がどのようにして、これだけ数字を抑えられてきたのかを具体的に説明しなければ、数字だけを発表しても意味がありません。

 むしろ、逆に受け取られかねません。

 オリンピックは、バブル方式とかいう対策がとられているそうですが、これは、あくまでも日本人の常識の範囲内ならば、通用するものであって、世界各国から集まるそれぞれのウィルスに対する衛生対策への感覚や、規則というものをどのように受け止めるかという民度?は、日本人とは全く違うのです。

 これまでは、日本がある程度、感染を抑えることができていたのは、ことさら、この日本人の民度の高さに支えられてきたところが大きく、世界中から人が集まるオリンピックにこれは、通用しません。

 「日本人は政府の意向を示すと多くの人が従ってくれる」と菅総理は言っていますが、(日本人だって、もう我慢の限界に来ているというのに・・)多くの外国人が入ってくるオリンピックでは、それは通用しません。

 オリンピック選手ならば、自分の体調には少なからず、気を配り、もしも感染すれば、出場できなくなることを考えればまだマシかもしれませんが、選手団のスタッフ、マスコミ関係、IOC関係者に関しては、規則をきっちり守るとは、思い難いのです。

 ましてや、オリンピック関係者やマスコミ関係者などは、とかく「自分たちは特別扱い」に慣れている人々で、周りはダメでも自分たちはOKと思って生活している人が多いのです。

 このオリンピック開催にあたっては、海外の人の日常の生活様式や考え方、行動を予測しなさすぎています。日本の中だけでなら通用する素晴らしい日本人の生活の仕方(衛生対策)は、ある意味、世界的には、かなり特別であるという認識に欠けています。

 日本でオリンピック開催反対のデモなどが起こっている様子はフランスのニュースでも報道されていますが、日本のデモは、お行儀がよくて、常日頃からフランスで起こっている激しいデモを見慣れているフランス人にとっては、恐らく日本人の怒りのほどは伝わっていません。

 残念ながら、第4波を迎えているフランスは、1日の感染者数が1万8千人を超え、一週間で感染者数は、2.6倍に増加しているとはいえ、人々は、バカンスを謳歌し、一部の感染が悪化している地域で、レストラン・カフェの営業が23時までの時短営業になっただけで、大ブーイングが起こっています。

 先日、発表されたヘルスパスに反対するデモも度々、起こっており、数万人の人がほとんどマスクなしで、街を練り歩いています。

 多少、厳しい規則でも、はっきりとわかりやすい規則を提示しなければ、バブルには、穴が飽き続けることは明白です。厳しすぎると言われても、一生それが続くわけでもあるまいし、日本人でも今はなかなか行きづらい日本に行っているのだから、日本はオリンピック関係者に対して、もっと毅然と対応すべきです。

 外国人に対して、曖昧な規則は通用しません。

 オリンピックは、2週間とちょっとで終わりますが、ウィルスを撒き散らし、オリンピックのために自粛を強いられ続けている日本がオリンピック後にも、さらに感染拡大に苦しめられるのは、見ていられません。

 オリンピックはやっていないのに、ものすごい勢いで感染が再拡大しているフランスから見れば、オリンピックは恐怖でしかありません。


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2021年7月20日火曜日

フランス第4波突入宣言 ボルドーのナイトクラブでクラスター ヘルスパスが機能していない現実 

 



 フランスでは、ほぼ1年半にわたって閉鎖されていたディスコ・ナイトクラブが7月9日に再開されて、さっそく、ナイトクラブでクラスターが発生してしまいました。

 先日、このディスコ・ナイトクラブの再開にあたっては、アルコールを扱う場所でもあり、開放的に密になる場所として最も警戒されて、これまでのロックダウン解除が最も先送りにされてきました。

 ナイトクラブの営業再開が許可されたとはいえ、衛生管理を徹底することが難しく、未だ再開できていない場所も多いのです。

 ところが、今回、営業を再開したボルドーのナイトクラブで、クラスターが発生し、問題が再浮上しています。もう開けたら、すぐです!

 7月9日の営業開始直後、このナイトクラブには、670人が集まり、それ以来、多い日には2,000人以上が来場しています。

 このナイトクラブの再開以来、この地域(ヌーヴェル・アキテーヌ=フランス南西部)では、21例のクラスターが発生しています。

 このナイトクラブは、夕刻から入り口にヘルスパスコントロールを設置することを命じられていましたが、このパーティーに参加した人のSNSの投稿によれば、このコントロールは充分ではなく、時間帯によっては、チェックがされていなかったことが指摘されています。

 この投稿をした本人は、ヘルスパスのQRコードを提示し、その時間帯には、全てルールどおりに入場制限が行われており、750人中、80人がヘルスパス不携帯のために入場拒否に遭っていたことがわかっています。

 しかし、午前2時以降の入場者に関しては、ヘルスパスは、ノーチェックになってしまい、事実上、クラスターの格納庫のような状態になってしまったのです。

 ワクチン接種が進み、すっかり日常モードになってきたフランスも、ひとたび、気を緩めれば、あっという間にクラスターが発生してしまうことが証明されてしまったのです。

 このナイトクラブへの入場者のヘルスパス保持者のうち、ワクチン接種済みの人の割合がどの程度であったのかはわかりませんが、ワクチンをすれば、感染しないのではなく、重症化しないだけであって、実は、感染していて、感染を広げてしまう可能性も考えられるわけです。

 ワクチン接種をしている人が圧倒的な割合までに達すれば、それほど深刻な事態にまでは発展しないのかもしれませんが、今は、感染者数だけを見れば、あっという間に1万2千人にまで増加しているフランスは、相変わらず、少しでも気を緩めることができないウィルスとワクチン接種の攻防戦が続いていることを思い知らされます。

 この21例のクラスターは、今後数日で増加する可能性も十分にあり、内務大臣は、18日、「ナイトクラブ・ディスコなどの営業に関しては、ヘルスパスのコントロールについて、最も厳格な警戒が必要であるとし、ヘルスパスの管理を尊重しないナイトクラブの閉鎖を求める声明」を発表しています。

 ヘルスパスがあらゆるところで求められるようになっても、そのチェック機能がうまく働いていない、機能していないのでは、意味がありません。そのための人員の配置や段取りには、いくつかハードルがあるかもしれませんが、これを機に、店舗側も営業停止にならないようにしっかりチェックを行ってもらわなければなりません。

 政府が厳しめの緊急措置を取っても、結果としてそれが機能していないことは、いかにもフランスではありそうなことでもあります。

 しかし、ちょっとの緩みがすぐに、感染増加、クラスターと結果が現れるのです。

 フランスは、ここ2週間ほどで新規感染者が急増しており、一時は、2千人台だったものが、あっという間に1万2千人、これまで減少し続けてきた入院患者も集中治療室の患者数も増加に転じています。

 ワクチン接種を進めているにもかかわらず、入院患者、重症患者が増加するということは、ワクチン接種の速度がウィルスの拡大に追いついていないということで、やはりヘルスパスは必須事項だということです。

 フランスは、19日、政府のスポークスマンが「我々は、第4波に突入しました」と宣言しました。現在のフランスの感染者の80%はデルタ変異種に占められ、入院患者数も増加傾向に転じたことがこの宣言の理由とされています。

 現在のフランスは、多くの人がバカンスで国内を大移動し始めてから、ちょうど2週間、やっぱり、バカンスによる国内大移動や開放感で感染が拡大しないわけはありません。

 5月の初旬の時点で、パスツール研究所(フランスの生物学・医学研究機関)が発表していた、「7月以降に第4波を迎え、再び入院患者が増加することは避けられない」という見解は、見事に的中してしまったことになります。

 特に感染状態が悪化しているピレネ・オリアンタル県(オクシタニー地域圏)(スペインとの国境近く)では、感染状況は、フランス国内平均値の4倍の数値で、すでにレストラン・バーなどの営業が23時までに制限されています。

 このまま放っておいたら、また夜間外出制限などの規制を敷かざるを得なくなり、マクロン大統領のかなり強引とも思われたヘルスパスについての発表は、やはり致し方ないとしか言いようがありません。デルタ・・恐るべし・・。

 

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2021年7月19日月曜日

フランス版メルカリ ヴィンテッド Vintedの急成長



 日本の家のものはもちろんのこと、フランスにも長くなり、不用品をいつの間にか、驚くほど溜め込んでいて、断捨離を初めて、久しくなります。

 ただ、ひたすら、処分する=捨てる・・というのは、忍びないものも多く、当初は、近所にあるエマウス(Emmaus)という慈善団体に持って行って、寄付したりしていました。もうスーツケース何個分も運んで、もらって頂きました。

 ここは、大きな家具なども引き取ってくれるので、頼めば配送のための下見に来てくれたりもします。こちらは、そういった寄付により受け取ったものを販売して、その収益を恵まれない人への寄付金として社会貢献している団体です。

 どうにも劣化しているものは、廃棄するのも致し方ないのですが、まだ充分に使えるものを捨てるのは忍びなく、かと言って、いつまでも抱え込んでいても仕方ないので、その処分に困るところなのは、どこの国でも同じです。

 日本は、一時、買い取り業者などが広まったり、メルカリなどで、不用品を処分することができますが、フランスでも、メルカリのようなネットでの売買ができるサイトがいくつか出てきています。

 私が最初に始めたのは、ルボンカン(leboncoin)というサイトで、2006年にスタートしたようです。このサイトは、扱っている物の範囲がとにかく広く、小さな置き物から、家や車、職探しまでできるようになっています。

 しかし、そのうちにヴィンテッドという別のサイトを見つけてからは、同じものを同時に2つのサイトに載せていますが、ヴィンテッドの方が圧倒的に売れるのが早く、その上、サイトが明瞭で、使いやすくできているので、現在は、ヴィンテッドがほとんどになっています。

 日本のメルカリも一度やってみたくて、日本に一時帰国をした際にやってみたことがあるのですが、システムや販売などの流れが実に上手くできていて感心したのですが、難点を言えば、手数料を取られるところです。

 ヴィンテッドは、手数料もかからず、また、システムもなかなか上手くできていて、取引した相手の評価をつけられるようになっているので、例えば、これから買い物をしようとする相手がどの程度、信頼できる相手なのかをある程度、判断できる基準となっています。

 配送料は、購買する人が負担するので、購入の際に購買者側が配送会社を選び、販売する側は、購買者の指定した配送会社を扱っているお店に商品を預けます。

 配送機関は現在のところ、5種類あり、荷物の大きさにもよりますが、軽いものならば(例えば夏用のワンピースなど)2.88€〜6.45€、配送会社(Mondial RelayやRelay Colis, Cheonopost など)によって幅があります。

 以前、メルカリをやってみた時には、フランスには、これらの配送会社のシステムが拡充しておらず、売るのはいいけど、ちゃんと届くかどうかが不安で、日を決めて手渡しすることも多かったのですが、これらの配送システム(荷物を預かる店舗が荷物を管理する)が普及してからは、荷物が紛失したりすることもほとんどなくなりました。

 これらの荷物預かりポイントは、他のものを売っている店舗が副業としてやっていて、この系列に参加している他地域の店舗に送られるので、トラブルが頻発したら、そのお店は取扱停止となり、責任の所在がはっきりしているためにトラブルがほとんどないのです。

 トラブルが発生した場合は、一応、Vintedが中に入って、仲裁してくれることになっていますが、これまでにトラブルは、ほとんどありません。

 売りたい物の写真を撮ってサイトに載せ、その商品説明を記載して、値段をつけて出品します。その商品ごとに、説明とともに、サイト上には、「買う」「お気に入りに追加する」「メッセージを送る」という欄が表示されるので、そのまま買いたい場合は、「買う」をクリックすれば、それで、商談は成立します。

 メッセージでは、値切りの交渉や商品についての質問が来ますので、それに回答して、やりとりをします。

 化粧品・香水などに関しては、未使用のもの(つまり新品)という決まりがありますが、その他のものに関しては、中古品でもOKです。

 最近は、取扱の国も拡大し、ベルギー、オランダ、イタリア、スペインなど10ヶ国以上の国で利用されており、時には、外国からの購買希望者からメッセージが来たりするのですが、外国語にも対応できており、メッセージとともに、Google翻訳の機能付きになっていて、「このメッセージを翻訳する」をクリックすると、自分の理解できる言語に翻訳してくれ、自分の国の言語でメッセージを送り返すことができます。

 中には、「自分のサイトの中の商品と交換してくれませんか?」(物々交換制度あり)とか、「送料を払いたくないので、手渡しにしてくれませんか?」なんていうのもあったり、「お母さんへのプレゼントにしたいのだけど、私の予算はこれだけなので、この値段で売ってくれませんか?」を滔々と書いてくる人などもいます。

 売買交渉が成立すると、商品に貼り付けるラベルがすぐにダウンロードできるので、それを梱包した荷物に貼り付け、指定された配送機関の荷物を扱ってくれているところに置きに行くだけです。プリンターがない場合は、配送中継地点がプリントしてくれます。

 荷物が届いて、受け取った人が商品を確認した時点で、代金は自分のサイトのお財布に入金され、いつでも自分の指定した口座に振り込むことができます。(手数料無料)

 ヴィンテッドもスタート当初は、古着、アクセサリーなどが中心でしたが、今では、子供のおもちゃ、バッグ、靴、化粧品、香水、テーブルウェア、飾り物などのオブジェ、本など、扱うものがどんどん増えてきました。

 このサービスは、ロックダウン下でさらに急成長した企業でもあり、人々が外に出れずにサイトをのぞいている間に、利用者も急拡大し、今では、テレビのコマーシャルでも見かけるようになりました。

 もともと中古車を始めとして、中古品にあまり抵抗のないフランス人の国民性もこれを後押ししているのかもしれません。

 シーズン毎によって、売れるものも、売れ行きも違いますが、これまでの私の経験からは、ノエルの前、母の日の前が最も売り上げが良かったので、フランスでこれをやってみようと思う方は、このシーズンを狙ってみると良いかもしれません。

 今年の夏のソルド(バーゲン)は、予定どおりに開始されたので、これは、ヴィンテッドもしばらくは、お休みだと思いきや、人々の買い物モードにスイッチが入ったのか、ヴィンテッドの方も結局はサイトを見ている人も増えたのか? 売り上げは上々です。

 といっても、別に私は、これを商売にしているわけでもないので、別に急ぐわけでなし、山ほど溜め込んでいたいらないもので、ずーっと売れずにサイトに残っているものもたくさんありますが、それが忘れた頃にポロッと売れたりもして、ちょっとお小遣い稼ぎができて、喜んでいます。

 昨年、ヴィンテッドのサイトから、「税金申告のお知らせ」とともに、「昨年のヴィンテッドの売り上げを確認してください」いうメールが来たので、一瞬、ギョッとしましたが、結局、「これを、商売にしている人は、税金を申告しなければなりません」ということだったので、私のように不用品を売っている場合は、必要ありませんでした。

 フランスには、この種のサイトは他にもいくつかあります。自分の売りたいものによって、それぞれの得意分野があるようで、例えば、ブランド物(ある程度、高価なもの)(ファッション関係)なら、Vestiaire Collectiveというサイトが高い値段で売れるという噂も聞き、一度、チャレンジしたことがありましたが、高額商品ゆえに、商品に関する詳細な情報入力や審査が厳しく、断念しました。

 私は、これまでに、これで、ちょっとした旅行ができるくらいのおこづかいができました。

 断捨離をしている方、思わぬおこづかいになるので、ちょっとトライしてみたら、いかがでしょうか?

 私は、売るだけですが、買い物も思わぬ掘り出し物があるようです。娘などは、もっぱら、Vintedでしか買い物しないみたいです。この間もニューバランスのスニーカー、ほぼ新品(きっと買っただけで、サイズが合わなかったと思われる人の出品でした)が30€だったそうです。


Vinted ヴィンテッド

Vinted のサイトはこちら


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2021年7月18日日曜日

バカンス中にも関わらず、ヘルスパス反対のデモ

   

Plusieurs centaines de personnes manifestent à Toulouse contre le pass sanitaire, samedi 17 juillet 2021

 

 フランスは、デモの国。何かあれば、すぐにデモ・デモ・デモ。しかし、フランス人らしく、デモよりバカンスが優先で、普通、バカンス期間中には、デモはせず、しかし、だからといって、デモをしないというわけでもなく、デモに関してだけは、段取りよく、バカンスシーズン突入前に、バカンスから戻った9月のデモの日程を予告してバカンスに入ったりします。

 今回の7月12日にマクロンがデルタ株の感染拡大を機に発表したワクチン接種拡大の呼びかけ、ヘルスパス(ワクチン2回接種、48時間以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内のコロナウィルス感染証明書)の発表は、一部は7月21日から、また次の段階は、8月1日からとかなり急なものであった上に、結果的に、「そりゃ、ワクチンするしかないでしょ!」という、かなり強引な内容だったため、これはデモか暴動でも起こるのではないか?と思いました。

 しかし、蓋を開けてみれば、マクロン大統領の発表直後から、ワクチン予約が殺到し、翌日には、1日で792,339人がワクチン接種をするという記録を立ち上げ、その週末には、さらにそれを上回る879,597人と記録を塗り替えました。

 世論調査でも、「ワクチン接種に行く」と答えた人が79%にまで上昇し、「ワクチンはしない」と答えた人は16%のみになりました。

 それでも、やはり、デモは、7月14日の革命記念日(パリ祭)の日から始まりました。マルセイユ、パリ、ナント、モンペリエ、リヨンなどの全国各地で、19,000人ほどの人がデモに参加しました。

 そしてこの週末も再びデモが起こっています。

 彼らの言い分は、「マクロン大統領は、フランスでワクチン接種を開始する際に、義務ではないと言った! それを突然、月曜日の夜に現れて、10分でフランス人の生活をひっくり返した!彼の独裁的なやり方は許せない!」とヘルスパス反対を正当化しようとしています。

 この週末は、パリだけでも18,000人、フランス全土で114,000人の規模のデモが行われました。

 しかし、オリヴィエ・ヴェラン保健相はデモが発生したことについて、「これはあくまでも少数派、ワクチン接種は急務である」と断固とした態度を崩してはいません。

 フランスの人口は6,540万人ですから、数万人のデモとはいえ、少数派であることに違いはありません。前回のデモが起こった時点で、彼は、ツイッターで、「デモ隊の25倍の人がワクチンセンターでワクチンを受けています!」とワクチン接種に賛同している人が大多数であることを示しています。

 確かに今回の発表は、かなり強引で、フランスにしては、かなり強行な独裁的な感じを受けたことも確かではありますが、現実的に、政府も予断を許さない必死な状態で、待ったなしの状況であることにも違いありません。

 7月の初旬には、2,500人程度であった1日の新規感染者数は、2週間ほどで1万人を突破しています。

 また、現在のフランスのコロナウィルスによる入院患者数は6,791人ですが、そのうち重症化している患者の96%がワクチン未接種であることがわかっています。

 フランスのデモは日常のことで、デモをやったからといって、事態がひっくり返ることばかりではありません。現に、昨年から起こっていたグローバルセキュリティ法に反対するデモでさえ、あれだけ派手にデモをして暴動を起こしたりしていたのに、結局は法案は可決されています。

 今回のヘルスパスに関しても、デモは起こっていますが、大多数の人がワクチン接種に走り、多くの国民がワクチン接種をする方向に転じて、実際にワクチン接種が加速化しているので、結局のところは、そのまま施行されると思います。

 しかし、ワクチン接種に反対しているだけあって、この種のデモに参加する人たちは、マスクをしていない人がほとんどで、このデモで感染が広まってしまうことも充分にあり得ることです。

 誰だって、マスクも嫌だし、ワクチンだって本当はしなくて済むならしたくないけど、ロックダウンはもう嫌だし、犠牲者がこれ以上出るのも何としても避けなければなりません。「デモをやりたいなら・・ワクチンが嫌なら、せめてマスクぐらいしろよ!」と思うのです。


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2021年7月17日土曜日

夏休みの日本への一時帰国 日本の小学校体験入学

   


 ここ一年半以上、日本には、一時帰国はできていませんが、もう20年以上にもなる在仏生活の中で、夏休み(夏ではない時もあったけど・・)の日本への一時帰国には、色々なことがありました。

 フランスに来て以来、初めて日本へ行ったのは、娘がちょうど2歳になったばかりの頃で、それまで孫に一度も直にあったことのなかった両親の喜びようは、大変なものでした。その2人の喜びように、今まで私がどんなに親孝行しても(とはいっても大してしてないけど・・)、孫の存在には、叶わないんだな・・などと思ったものです。

 私が娘をバイリンガルにしたかったのは、日本にいる家族ともコミニュケーションがとれるようにという思いもあってのことで、娘が生まれた時から他に日本語を使う人がいない環境で、私は娘とは日本語のみで接してきたので、その頃は、娘もろくな言葉は話せませんでしたが、周囲の言っていることは理解し、初めて会うパピーやマミー(フランス語ではおじいさん、おばあさんのことをパピー、マミーと呼びます)ともすぐに打ち解けました。

 やがて、娘が小学校に入る年頃になると、フランスの学校がお休みになるとすぐに日本に連れていって、実家近くの公立の小学校に2週間ほどですが、編入させていただき、日本の小学校生活も体験させて頂いていました。

 予め、受け入れ先の小学校の教頭先生に連絡をとっておくと、帰国後、すぐに編入させてもらえます。学校に最初に電話した時などは、素晴らしく好意的な印象で、「フランス語ですか〜、英語なら話せる教師はいるんですが・・」などと親身になって考えてくださり、「日本語は、ある程度はできるので、日本語に接する機会でもあるので、ぜひ日本語だけでお願いします」と念を押したくらいです。

 フランスの学校に入学した時などは、面接の際に私が日本人だと知ると、「うちはフランス語だけですからね!」と逆に念を押されたくらいで、その時は、「そんなことわかってるわよ!」とムッとしたくらいだったので、たった2週間の編入のために、気遣ってくださる日本の先生が「日本人て、なんて、優しいんだろう!」と感動したくらいです。

 フランスの学校にはない給食当番や掃除当番なども体験させてみたかったので、「どうぞ、お客様扱いせずにやらせてください」とお願いしました。

 両親が元気なうちは、一緒に山荘に出かけたりもしましたが、やがて、母の心臓病が悪化し始めてからは、母は家にいても寝たり起きたりの生活になり、急に入院して、駆けつけた時にも階段の登り下りが心臓に負担がかかるということで、母のベッドを階下に移したり、寒くないように(その時は冬だった)フローリングの床にカーペットを敷いたり、介護保険の手続きをしたり、日頃、側にはいられない分、なんとか日本にいるうちにできるだけ色々なことをしていこうと、日本への一時帰国は、楽しいだけでなく、かなり忙しいスケジュールギチギチのものになって行きました。

 そのうち、母が亡くなり、父一人の生活になってから、こちらの生活でも色々なことがあり、また、私が夏に休みを取れなくなって、しばらく日本には、帰れない年もありました。

 また、しばらくして、日本に行き始めてからは、一人の生活の父の食事の用意や、父の病院に付き添って、担当の先生に話を聞いたり、いつも父がお世話になっている人々にお土産を渡しがてら挨拶に行ったり、その間に友人と会ったり、買い物をしたり、帰るときには、後で父が少しずつ食べられそうなものを作り置きを小分けにして、冷凍したり、楽しい半分、家を出てフランス行きの飛行機に乗った頃には、正直、半分、ホッとするようなところもありました。

 日本への一時帰国は、美味しいものもたくさん食べられて、会いたい人にも会える楽しいものであると同時に、期間が限られているからこそ、両親(高齢になってから)のために頑張ってしまう期間でもあり、はっきり言って、バカンスとは言い難く、どうしても、忙しく動き回らざるを得なくなってしまい、楽しいことばかりでもありません。

 今は、両親ともに亡くなり、そんな日々が懐かしく、二人がいなくなった家を片付けるくらいで、日本の家では、あまりお料理をすることもなくなりましたが、日頃、側にいられない負い目もあって、できるときには、できるだけのことをしてあげたいと思って忙しく動き回っていた日本への一時帰国をもう何もしてあげることができなくなってしまった今になって、もっともっと、色々してあげたかったと寂しく思うのです。

 現在は、小さなお子様をお持ちのお母さん方も日本の学校に一時的に編入させてあげたくても、2週間の隔離生活が必要なので、きっと日本の学校への編入は難しいと思います。今、ご両親が日本にいて、病気だったりしても、すぐに飛んで行って看病することも、万が一のことが起こっても、駆けつけることはできません。

 日本の学校への編入体験も限られた年齢でしか難しいだろうし、ましてや病気の親に付き添えなかったり、最期の時にも会えなかったり、節目節目の大切な瞬間でさえも、ただでさえ、遠くて困難なところを長引くパンデミックがさらに日本を遠ざけています。

 海外で生活をすると選んだ時点で、ある程度は覚悟はしていたものの、そのような思いをされている方々にとっては、本当に心が張り裂けんばかりの悲しさだと思います。

 1日も早く、元の生活が戻って、行こうと思えば、翌日でも日本に飛んで行くことができる・・そんな世の中に戻って欲しいと思っています。

  


 現在、外務省及び厚生省から、「変異株指定国・地域に指定した国および感染症危険情報レベル3対象国・地域・国については、帰(再入)国を前提とした短期渡航について、当分の間、中止するよう改めて強く要請致します。」という書面が出入国管理庁から出ています。

 私は、現在、無理して日本へ行こうとは思っていませんが、世界各国からオリンピックのために、多くの人が入国している中、日本国民に対して、帰国するなという通達には、反発を感じます。

 海外在住者には、ワクチン接種済みの人も多く、しかも2週間の隔離期間はきっちり守る日本国民なのです。

 これは、オリンピックのための措置に他ならないと思いますが、「日本人を閉め出してまで、そこまでしてオリンピックをやるのか?」と思ってしまいます。

 それならば、せめて、オリンピック関係で入国している人々には、「海外在住の日本人も帰国を許されない中、オリンピックが行われている」ということをしっかり通達し、それほど危険な状態であることをちゃんと知っていてもらいたいと思います。


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2021年7月16日金曜日

WHOが警告するより危険な新しい変異種の出現の可能性

  


 

 先日、マクロン大統領から発表されたあらゆる文化施設、娯楽施設入場の際には、ヘルスパス(ワクチン2回接種証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)の提示が必要となる決定に対して、全仏フランス映画連盟(FCNF)は、「映画館の責任、企業と観客の責任、適用される制裁、従業員の職域、費用、検証の運用プロセスなど」多くの問題に直面することを理由にヘルスパス提示措置の遅延を求めています。

 しかし、パスツール研究所(生物学・医学研究を行うフランスの研究機関)の研究によると、現在、猛威を振るっているデルタ変異種は、早急に感染対策を強化しない限り、8月初旬に1日あたりの感染者数は、35,000に急増する可能性があると発表しています。

 実際に、6月末(6月30日)には、2,457人であった1日の新規感染者数は、2週間後の7月14日には、8,875人まで上昇しており、なんと2週間で3.6倍!これが雪だるま式に増えていけば、考えられない数字ではありません。

 ほぼ、同じタイミングでWHO(世界保健機構)は、「おそらく、これまでよりもさらに危険な、制御することが難しい新しい変異種が出現する可能性が極めて高い」ことを警告しています。

 現在のところ、WHOは、大きく分類して、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4つの危険変異種をリストアップしています。デルタ変異種は、他の変異種に比べ、遥かに伝染性が高く、ワクチンに対して少し耐性があります。それ以上の威力を持った新しい変異種は、ワクチンの効力をも揺るがすものになるかもしれません。

 しかし、WHOは、現在、アメリカやヨーロッパが今後、数週間の間に人口の大部分にワクチン接種を行い、さらに3回目のワクチン接種を開始しようとしていることに対し、世界のワクチン接種が滞っている国は、人口の1%にも満たない国もあることから、ワクチン供給の不平等を悪化させる可能性があることに懸念を抱いています。

 「特にファイザー・ビオンテックグループにより提案された3回目のワクチン接種が科学的正当性がほとんどない「ワクチンの不公平を悪化させる」ことはしないで下さい。」と述べています。

 これは、単に不公平だけでなく、ワクチン接種が進まない国で、現在のデルタ変異種が感染爆発を起こした場合は、インドでデルタ変異種が広まったように、さらに強力な変異種の誕生を促進することにも繋がりかねないことも意味しています。

 これがパンデミックと言われる恐ろしさで、ようやく開発されたワクチンも、救われたい力のある国がワクチンを抱え込み、その間にワクチンができない弱い国でさらに強力な姿に変異しながら、結局、いつまでも世界中が感染を抑えることができないのです。

 昨年までは、気温が上昇するとウィルスもその力を弱めていたのに、現在は、これから夏というのに、感染が拡大しています。変異種が気温の影響を受けにくい性質に変化している証拠です。

 フランスは、今のところ、まだ3回目のワクチン接種よりも、一先ず2回のワクチン接種を拡大することに躍起になっていますが、本格的にワクチンが活性化する秋を迎える頃には、どんな状況になっているのでしょうか?

 パンデミックは、まだまだ終わらない・・・そんな気がしてきました。


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2021年7月15日木曜日

2021年のパリ祭のシャンゼリゼの軍事パレードが復活した!

   

騎馬隊はパレードのハイライトでもある 色の調和が素晴らしい!


 フランスの革命記念日は、祝祭日で、毎年、パリのシャンゼリゼでは、大規模な軍事パレードが行われます。昨年は、パンデミックのために、シャンゼリゼでのパレードはキャンセルになり、コンコルド広場を中心に小規模な形で行われましたが、今年は、かなり例年に近い形で行われました。

 とはいえ、全国から集まってくるシャンゼリゼの沿道は、通常の2万5千人に対して、1万人までに制限され、その上、朝早くから、観客のヘルスパスやテロ対策の荷物チェック、マスク着用が義務付けられる厳戒態勢の中で行われました。

 昨年の縮小されたパリ祭の最後には、「来年こそは、元どおりのデフィレ(パリ祭の軍事パレード)を!」と願っていたのに、元どおりにはなりませんでしたが、パレード自体が復活しただけでも、大きな前進です。

  


  7月14日のパリ祭は、フランス人にとって、特別な日で、パリだけでなく、全国各地で花火が上がったり、お祭り騒ぎになる日ですが、今年はまだ、その花火もキャンセルになってしまったところが少なくありませんでした。

 しかし、2年ぶりに見たパレードはやはり圧巻で、緩やかな坂の上にある凱旋門から続くトリコロールのフランス国旗に彩られた緑のマロニエの木々に挟まれたシャンゼリゼの大通りが素晴らしいステージです。 

   


 2021年のテーマは「未来を勝ち取る!」だったそうで、高ハイテク機器も登場しました。

 それぞれの部隊ごとの制服、制帽に身を包んだ4,300人の兵士、73機の飛行機、24機のヘリコプター、221台の戦車などの車両、200頭の騎馬隊を含む5,000人がシャンゼリゼを次から次へと2時間以上かけて登場する光景は、洗練されていて、見事なもので、毎年のことながら、感動します。  

この戦車は実際に戦争で使われているもの すごい迫力!

 フランス人の愛国心の強さは、こういったフランスを誇らしく思えるような行事が大きく支えているような気もします。フランス人ではない私でさえも、日々のトラブル連続の生活を忘れて、フランスにいてよかった!とうっかり思ってしまうような日でもあります。

  

白バイもブルーと黄色のライトでこれだけ集まると壮観

 パリ祭が近づくと、このパレードのための予行演習が行われ、パリの上空には、デフィレに登場する飛行機が飛び、飛行機やヘリコプターが飛ぶ爆音が聞こえてきて、慌てて窓の外を眺めてみたりします。

 昨年は、外に出れない中、この同じ窓から、同じようなヘリコプターが「また誰か患者が運ばれている・・」と思いながら眺めていたな・・と思うと感慨もひとしおでした。

  

航空ショーのハイライトは、トリコロールカラーの煙を流して飛ぶ飛行機


 パリでは、夜には音楽祭、花火なども上がりましたが、ヘルスパス(ワクチン接種証明書またはPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)保持者のみの厳戒態勢が敷かれました。

 しかし、フランスらしいところは、感染状況が危ういというのに、こういったイベントを「今まで頑張ってきたのだから、こういうことも大事だ!」と皆が肯定するところです。

   

夜には、エッフェル塔で盛大に花火が上がりました

 しかし、このような華やかな行事が行われる中、先日、マクロン大統領が発表した医療従事者へのワクチン接種の義務化やヘルスパスに反対するデモがパリ、マルセイユ、ナント、モンペリエなどで起こっており、パリで晴れやかにパレードをしている同僚とは裏腹に催涙ガスでデモ隊と戦っていた彼らの同僚が大勢いたことは、残念なことです。

 バカンス期間中ゆえ、デモは起こらないと思っていましたが、やはり一部の人には、依然として受け入れ難いことのようですが、これがバカンス期間中でなかったら、もっと大変な騒ぎになっていたのではないかと思うとゾッとします。

 しかし、マクロン大統領の発表以来、ワクチンの予約や接種状況が激増していることを考えると、このデモに参加する人々がごく少数派になってくれることを祈るような気持ちです。


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2021年7月14日水曜日

マクロン大統領の発表がフランス人に与えた衝撃 ヘルスパスのトリセツ

   


 前日にマクロン大統領が発表したヘルスパス(Pass Sanitaire)やワクチン接種についての新しいフランスの措置にフランス国民は、想像以上の反応を示しました。

 9月15日からの医療従事者のワクチン接種の義務化を始めとして、8月から、ヘルスパス(Pass Sanitaire)(ワクチン2回接種証明書、48時間以内のPCRの陰性結果証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がなければ、レストランにも行けない、文化施設、娯楽施設、コマーシャルセンターにも行けない、長距離移動の電車、バス、飛行機にも乗れない・・10月にはPCR検査も有料になる・・そんな衝撃的な発表に、フランス人は、デモや暴動を起こすんじゃないか?と、私は内心、思っていました。

 実際に、マクロン大統領のスピーチ直後には、フランスのツイッターでは、#ジレ・ジョンヌが堂々、トレンド入りしたりしていたので、もっともっと反対の声が上がり、もしかしたら、マクロン大統領が発表した内容が変更されるのではないか?と半信半疑でした。

 しかし、意外にもフランス人の反応は、マクロン大統領のスピーチを聞いた後、「ワクチン接種に行く」と答えた人が79%まで跳ね上がり、(「行かない」は16%、「まだわからない」が5%)大多数の人がワクチン接種を受け入れはじめたのです。

 実際にワクチン接種の予約サイトは、彼のスピーチ直後にパンク寸前の状態、翌日のワクチン接種は、1日で792,339人と記録的な数字を叩き出しました。

 何よりも今はまだ7月半ばで、まだ1ヶ月半のバカンス期間が残っているバカンスシーズンの真っ最中です。フランス人にとっては、デモもできず(人々がバカンスに散らばっているため、バカンス期間中はデモもお休み)、何よりも彼らにとって一年のメインイベントであるバカンスを思いきり楽しむためには、もう一刻も早くワクチンをするしかなく、彼らが最も大切にしているバカンスを人質に取られた感じになったのです。

 それでも、ヘルスパスの提示が求められる施設(レストランや文化施設、娯楽施設、コマーシャルセンターなど)で働く従業員に関しては、8月30日までの猶予期間が設けられ、ワクチン接種が一番遅く開始された12歳から17歳のティーンエイジャーに関しても同様の猶予期間が与えられることになりました。

 また、当初は、ヘルスパスの提示を求められる施設内ではマスク着用が義務化は、一先ず、8月30日までの期限がつけられ、また、2回目の接種後2週間の期間が必要とされていたものが1週間に変更されました。

 それでも、随時、取り締まりは行われ、違反が認められれば、(つまり必要な場所でのヘルスパスの不携帯)お客さんはもちろんのこと、店舗側に対しては45,000ユーロ、お客さん側には罰金135ユーロが発生します。

 前日のマクロン大統領の言う「ヘルスパス」は、ほとんど、イコール「ワクチン接種」に置き換わって受け取られているような感じです。

 事実上、10月には有料になるPCR検査を2日おきにし続けることは不可能なので、結局はそういう事なのですが、かなり強引で荒療治だと思ったフランス政府の政策は、私が心配したほど国民の反対に合うことにはなりませんでした。

 考えてみれば、またロックダウンになる方がいいのか?ワクチンをした方がいいのか?は、明白なのですが、厄介な理屈をこねくり回して、やたらと反抗するフランス人に対して、これほど説得力があった前日のマクロン大統領のスピーチの威力は圧巻でした。

 何よりも彼の思惑どおりにワクチン接種の拡大にこれだけアクセルがかかったのは、このバカンスシーズン前半という絶好のタイミングでした。

 ワクチン接種状況が見られるサイトでは、いつの間にか、目標数値が全国民の80%(少し前までは60%になっていた)に変更されていて、あと26.35%と表示されていました。

 8月30日までの猶予期間がティーンエイジャーに対しても設定されたのは、明らかにバカンスが終わった後、学校に戻った子供たちの学校での感染爆発を懸念して設定された期日だと思われます。

 マクロン大統領のスピーチの威力、恐るべし!

 次の彼のスピーチは、お得意の「俺たちは、よくやった!」という勝利宣言になるといいのですが・・。


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2021年7月13日火曜日

フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化


 


 マクロン大統領のスピーチは、3月末に、4月から学校を閉鎖することを発表して以来の久しぶりのスピーチでした。

 ここのところの、フランスでのデルタ変異種の急拡大により、これまで減少し続けていた感染者数が増加に転じ始めたことから、世界中でも再び、感染拡大が深刻化してきていることを述べ、東京オリンピックでさえも無観客で行われることになったことなどを例に挙げ、第4波が始まりかけている状況を説明し、これまで以上の注意を喚起し、とにかく1日でも早く、ワクチン接種をしてほしいと訴えました。

 続いて、このワクチン接種の拡大において、これまで一番、問題視されていた医療従事者のワクチン接種が義務付けられることになり、医療、介護に関わる全ての人々は、ワクチン接種を9月15日までにしなければならないことになりました。

 これには、病院、介護施設等で働く全ての人々、救急隊員、訪問看護士など、かなり広範囲の人が該当します。

 罰則なしには、なかなか規則が徹底しないフランスのこと、しない場合はどうなるのかな?と思ったら、9月15日以降にワクチン接種をしていない場合は、罰金??と思いきや、給料が支払われないというかなり厳しい規定です。

 これは大変なこと、モノ申すフランス人が黙っているはずはありません。国立病院組合は、その直後に、「ワクチン接種は、あくまで任意であるべき」という声明を発表しています。

 また、一般市民に対してのワクチン接種の義務化はさらにハードルが高いためか、外堀を埋めていくような縛りが段階的に取られていきます。

 7月21日(来週)からは、これまで1,000人以上が集まるイベントにのみ提示が求められていたヘルスパスが50人を超える全てのイベントにおいて求められ、これがない場合は入場できなくなります。

※<ヘルスパス(Pass Sanitaire)> 2回のワクチン接種の証明書か48時間以内のPCR検査の陰性証明書、または、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書

 これは、あらゆる文化施設(美術館など)、娯楽施設(映画館、遊園地など)にも適用されます。

 そして、8月からは、レストラン、カフェ、電車(長距離)、飛行機、コマーシャルセンターなどへのアクセスもこのヘルスパスなしには、不可能になります。(12歳以上の国民全て)

 レストラン・カフェ等に関しては、テラス席、店内の座席に関わらず・・というものなので、お店側のお客さんの管理にも大変、ややこしい問題になりそうです。

 2回のワクチン接種が済んでいない場合は、レストランに行くのにも、コマーシャルセンターに買い物に行くためにも検査が必要なわけで、ワクチン接種なしには、せっかく取り戻し始めた日常がスムーズに送れなくなるのです。

 また、レストラン側においても、義務化されていないとはいえ、お客さんにヘルスパスを求めるということは、従業員でさえも、ヘルスパスが必要ということで、毎日、検査を行うことも非現実的なために、事実上、ワクチン接種が義務化されたような状態になります。

 このバカンス時期で、フランス国内を旅行中の人、これから旅行する予定の人も、ヘルスパスなしには、身動きができないことになり、すでにバカンス中の人でワクチン接種が済んでいない人は、緊急にワクチン接種をしても、今月中に2回を済ませることは難しいので、なかなか大変なことになります。

 兎にも角にもワクチンをしなければ、バカンス後の生活とて、思うように送ることはできません。

 そして、さらに、フランスではパンデミック開始以来、これまでずっと無料だったPCR検査・抗原検査が10月からは処方箋がない限り、全て有料(50€)になります。ワクチンをせずにレストランに行きたい、コマーシャルセンターに買い物に行きたい場合は、その度に、食事代、買い物代プラス50€がかかることになります。

 ワクチンをしない状態で、度々、PCR検査を受けてヘルスパスとして利用していくことも、10月以降は、無理になるということです。

 これは、一般の人に対しては、ワクチン接種はあくまで任意ではありながら、事実上、できる限りの圧力をかけた状態で、このマクロン大統領のスピーチの直後のワクチン接種予約サイトは、パンク寸前になるほどに予約が殺到したようです。


               Image

 と、同時に、フランスのツイッターでは、瞬く間に、ハッシュタグ#ジレジョンヌ(黄色いベスト)がトレンド入りし、このマクロン大統領の発表に憤りを覚えているアンチワクチン派の人々の強烈な反対デモが起こるのは、必須です。

 しかし、フランス人は、おかしなもので、7月〜8月のバカンス期間中は、デモも行わないのが通例なので、デモが起こることは避けられないとしても、それを見越して、バカンスシーズンに入った直後にこれを発表し、デモが始まるであろう9月までに少しでもワクチン接種を拡大したいという目論見なのだと思います。

 現在のフランスには、ワクチンは希望者には、直ちにワクチン接種を行えるだけの潤沢なストックがあり、今後も引き続き、ワクチンが届き続けることになっており、バカンス期間中で2回目のワクチン接種との間隔をうまく取れずに、ワクチン接種を思いとどまっていた人も少なくないのですが、バカンス先(フランス国内)でも、予約なしにワクチン接種ができる場所で、慌ててワクチン接種に走る人も今後、増えるのではないかと思われます。

 しかし、海外からフランスに来られる観光客の方も8月からは、ワクチン接種をしていないと、検査に追われる毎日になります。

 最近は、ロックダウンも解除され、夜間外出禁止もなくなり、取り締まりの警察官が街を練り歩く光景もすっかり見かけなくなっていたのですが、今回のヘルスパスに関する取り決めで、街には、再び、取り締まりの警官が戻ってくるものと思われます。

 しかしながら、この感染悪化状態でバカンスシーズンを迎え、人々が国内を移動しまくり、ワクチン接種以外に感染を抑える手段がないだけに、このままでは、フランスは、8月の初め頃には、再び1日の感染者数が2万人に及ぶだろうとも言われています。

 ようやく落ち着いてきたと思いきや、この厳しいヘルスパス縛りの生活が再開します。しかし、こうしている間にもデルタ変異種に次ぐ新しい強力な変異種がいつ誕生するかもわからず、よもや第4波・第5波が訪れ、再びロックダウンになるよりは、全然マシです。

 マクロン大統領は、スピーチの中で、「残念ながら、ウィルスとの戦いは、まだまだ続き、2022年になってもまだ続いているだろう」と語っています。そして、10月以降は、今年の始めにワクチン接種をした人に対して、3回目のワクチン接種もできるようになると発表しています。

 このこれまでよりも3倍も感染力が強いと言われているデルタ変異種への警戒・深刻さがこのフランスらしくない締め付けのようなワクチン接種に国民を追い込む、かなり強引なやり方に現れています。

 国民もこのパンデミックにも、ロックダウンにもいい加減、うんざりしていますが、国民を支援し続けているフランス政府こそ、もういい加減、こんなことをダラダラと続けてはいけないわけで、どんなことをしてでも、感染者を増やすわけにはいかないのです。

 重症化しなければ、医療崩壊を起こさなければ、まずは良いのかもしれませんが、感染者が拡大していけば、新しい変異種が出現する危険もあるのです。

 いつもは、国民に甘々なフランス政府ですが、今回ばかりは、なかなかな強気なワクチンへの追い込み作戦。これがバカンス中に発表され、すぐに国民の怒りが爆発して、大変なデモ・暴動とはならないことが救いです。

 現在、フランスのワクチン接種率は、1回でもワクチンを受けた人が53.06%、2回接種すみの人が40.06%、この強めの規制に踏み込むにはある程度、ワクチン接種が進んだからこそ可能なこと。ワクチンの供給が間に合っているのに進んでいない状況にならなければ、できなかったことです。

 しかも、バカンス中、バカンスを楽しみたい人は是が非でもワクチンを受けようとします。

 ワクチン接種拡大作戦決行のこのタイミングをフランス政府は、待っていたのかもしれません。これからは、ロックダウンによって、人の行動を制限するのではなく、ワクチン接種による制限に切り替わっていくのかもしれません。


フランス ヘルスパス


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2021年7月12日月曜日

パリでビオコスメを買うなら絶対ここ! シティファーマ・CITY PHARMA

   

外から見たところ、一見、普通の薬屋さんのようにも見える


 以前、私は、仕事で少し化粧品にも関わっていたことがあったので、これまで私は、パリに来て以来、ほぼほぼ化粧品というものをまともに買ったことは、ありませんでした。

 しかし、仕事を変わって以来、これまでストックしていた化粧品(特に基礎化粧品)が底をつき始め、このところ、夜用のクリームを中心に探して、気になるお店を渡り歩いていました。

 化粧品と言っても、私が探していたのは、メイク用の化粧品ではなく、クリームやローションなどの基礎化粧品なので、選択肢もたくさんある中、どれを使ったら良いのかが、非常に難しいので、行く先々のお店に立ち寄っては、店員さんに相談して、紹介してもらいながら、値段を比較し、色々と説明を聞いたりしてきました。

 もともとズボラで、化粧品は、あまり興味があるものではないのですが、お肌の曲がり角をとうに過ぎてしまった私としては、やはり、今後、ある程度、最低限の手入れをすることが必要なのは、周囲のフランス人を見ていても必須なことは明らかです。

 フランス人は、もともとバカンス命の国民で、美白を心がけ、お肌の手入れに余念のない日本人などから比べるとびっくりするほどの杜撰さで、もともとの肌の質などの違いもありますが、それ以上に美意識が違って、夏は日焼けして健康的に、そしてリッチにバカンスを満喫しているのをひけらかすのが何よりも誇らしいらしく、結果、日焼け後の肌は、ガビガビで象のような肌に満面の笑顔でバカンス話をとうとうと語る人が少なくありません。

 もちろん気を使って手入れする人もいるにはいますが、少数派、普通は洗顔していきなりクリームを塗っておしまい・・なんていう人が多いのです。

 しかし、そこのところのフランス人の美意識は私には受け入れ難く、歳をとって、汚らしいおばあさんにはならないように心がけるのは、私の美意識?でもあります。

 化粧品というのは、人の弱みに付け込んだ商売で、それこそ上を見ればキリがなく、たしかにブランド物の高いクリームなどは、品質も素晴らしいのですが、毎日使う消耗品でもあり、そうそう高価なものを買ってもいられません。

 高価なブランド物と一般的にスーパーなどで買える化粧品の間に割り込んでここ10年ほどで急成長しているのが、パラファーマシーと言う、日本で言うビオコスメの分野です。

 薬局、あるいは、薬剤師をおいた店舗でしか扱いを許されていない基礎化粧品で、フランスでは、パラファーマシーと言って、普通の薬も買うことができますが、その多くをビオコスメなどで運営しているお店がすごく増えました。

 日本で有名なのは、ビオデルマとか、ラロッシュポゼとか、アヴェンヌあたりでしょうか?フランスでは、ビオコスメのご本家みたいなところがあって、それはそれはたくさんのビオコスメがどんどん登場し、どれにしたらいいのか、さっぱりわからないので、自分にあったものを探すのは、至難の業です。

 しかも、年齢とともに、自分にあったものは変わっていくので、日々、アンテナを張っておくことは必要かもしれません。少しずつでも手入れをしながら歳を取るのと、何も構わずに歳をとってしまうのでは、数十年後に雲泥の差になります。

 色々な情報から、また、たまたま通りかかって、「ん?ここは?」などと思うお店に立ち寄ってみた結果、結果的に今のところ、ここが一番だと思ったのは、サンジェルマン・デ・プレにあるシティファーマ(CITY PHARMA)でした。

 最初、話を聞いた時は、サンジェルマン・デ・プレという場所がら、「そんなに安いわけないじゃん!」と半信半疑だったのですが、実際に行ってみると、外から見ると普通の薬局のようなのに、中はすごい人。

 店内に足を踏み入れると、すぐにこのお店は、ただものではないことがわかりました。バーゲンでもないのに、一見、目立たない、この手のお店でこれほどの人が集まるということは、絶対に理由があるのです。

 知っている人は知っているんだ・・そんな風に思ったものです。実際、サンジェルマン・デ・プレという高級店が立ち並ぶ界隈にこんなお店があることは、正直、意外でした。

 店内も次から次へと在庫が補充され、店員さんのアドバイスも明瞭簡潔でわかりやすく、地上階と上階にいくつもあるレジは、フランスとは思えないほど、人が次から次へと流れるようにシステマティックになっており、お店に入ると、スーパーなどにあるカゴの代わりにCITY PHARMAと書かれた赤いバッグに商品を入れて店内を移動できるようになっています。

 このバッグがまた可愛い!!

  

このバッグだけでも相当、売れるんじゃないかと思うけど、売ってはいない


 決して広くない店内には、相当数のビオコスメから、健康サプリ、シャンプー、歯磨き粉、石鹸、ハンドクリーム、リップクリーム、日焼け止め、虫除けスプレーに、血圧計、マスク、アルコールジェルからありとあらゆるいわゆる健康・衛生管理に関わる商品が所狭しと陳列されていて、それが飛ぶように売れていくのです。

 中には、スーツケースを抱えて大量買いして来ている人までいるほどです。

 人気で、上手く回っているお店というものは、たとえ、フランスといえども、店内がシステマティックに動いていて、店員も手際よく、どんどんお客を捌いているのに、ちょっと感動さえ覚えました。

  

混雑対応にも慣れていて、フランスなのにレジ対応も早い! 


 実際に私が目をつけかけていたクリームもどこのお店よりも安く、ネットを見ても、それよりも若干安いものを見つけましたが、結局、送料などを加えると高くなってしまうので、私のクリーム探しは、とりあえずは満足のいくものとなりました。

 一時は、化粧品といえば、マリオノ(Marionnaud)か、セフォラ(SEPHORA)といったチェーン展開で多くの店舗を持つお店が主流でしたが、今、パリでは、マリオノやセフォラには、これほどのお客さんはいません。(最もマリオノやセフォラは、マキアージュ(メイク)や香水などが多く、扱っているものにも若干違いはあるのですが・・)

 マリオノやセフォラで扱っている基礎化粧品は、いわゆるシャネルやランコム、ディオールなどのブランド物が主流で、あまりに高価で一般庶民には手が届きにくく、成分的には、それに引けを取らないビオコスメに注目されるようになったのです。

 今回、私が購入したクリームは、パッケージなどは、どこか冴えないのですが、成分的には、かなり優れているDARPHIN(ダルファン)というメーカーのもので、私は、以前にも使ったことがあったのですが、色々とこちらの肌の状態やどんなもの(金額等も含めて)を求めているのかを話すと専門家が適切にアドバイスしてくれた中から選んだものです。

  


 今は、観光客がいないので、途絶えていますが、ダルファンは、一時、美容大国と呼ばれる韓国で大人気で、パリに来る韓国人観光客は誰もが、このダルファンのクリームを買いあさって帰るという逸話があるフランスのビオコスメのブランドです。

 お店によっては、明らかに相談している内容よりも、自分の売りたいものをゴリ押しするようなところもある中、このお店の人のアドバイスは、中立で的確で信頼できるものでした。

 サンジェルマン・デ・プレ界隈はパリの中でも最もパリらしさを味わえる場所の一つ。観光のついでにお土産探しにこんなお店もなかなか良いかもしれません。

 

【CITY PHARMA】シティファーマ パリ・ビオコスメ

26 Rue du Four  75006 PARIS / Metro ④ Saint-Germain des près

8:30~21:00(月〜金)、9:00~21:00(土)



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2021年7月11日日曜日

「スペインとポルトガルには、行かないで下さい!」 今年の夏のフランス人のバカンス

   


 フランス人にとって、一年中で一番のイベント「夏のバカンス」に突入し、週末には、フランス全土で、1,000キロの交通渋滞が発生しました。

 今年の夏のバカンスは、一年半の間に3度のロックダウン、数々の制限された生活から、ようやく解放されたこともあって、一段と気合が入り、例年のバカンスよりもバカンスに当てる費用(予算)も平均20%増なのだそうです。

 フランス人の夏のバカンスといえば、短くても3週間、長い人なら1ヶ月間の長期のバカンスです。多くは、7月組と8月組に分かれています。学校に至っては、2ヶ月以上がお休みですから、子供たちも1ヶ月はコロニー(合宿のようなもの)に参加して、もう1ヶ月は、家族とバカンス・・と、1ヶ月単位の区切りです。

 しかし、まだまだ終息してはいないコロナウィルスの影響から、バカンスに出ると行っても、83%の人は、国内旅行なのだそうで、フランス政府にとっては、国内消費が増加する不幸中の幸いなのかもしれません。

 そんな中、フランス政府は、現在、デルタ変異種のために、急激に感染状況が悪化している「スペインとポルトガル」への旅行は、避けるように呼びかけています。

 フランスでも、デルタ変異種の拡大は毎週毎週、増え続け、現在は、50%以上がデルタ変異種に置き換わり、一時は1日の新規感染者が1,000人前後まで下がったにも関わらず、あっという間に現在は、4,000人を超えてしまっています。

 しかしながら、現在のところ、フランスでは、感染者は増加しているものの、集中治療室の患者数は減少を続け、さらなる深刻な状態には、至っていません。

 感染者は増えても重症化していないのは、何よりもワクチン接種の拡大の成果で、現在のフランスのワクチン接種率は52.75%、さらにデルタ変異種が拡大する前になんとかワクチン接種を拡大していくことに躍起になっています。

 ですから、1日の感染者数が2万人超えに跳ね上がってしまっているスペインなどに対しては、当然、警戒体制をとっているのです。比較的近いバカンス地として、スペインやポルトガル、イタリアなどはフランス人には人気の場所でもあり、すでに予約してしまっている人、これから予約しようとしている人も多く、SNCF(フランス国鉄)は、スペインやイタリア行きのチケットは、100%払い戻しをすることを発表しています。

 しかし、払い戻しをしてくれるのは、SNCFだけで、その他の航空券、ホテル等に関しては、予約時の契約次第ということになるわけで、フランス政府とて、はっきり禁止というわけにもいかず、「避けれるものなら、避けてください」という呼びかけに留まっています。

 また、ポルトガルは、感染悪化を受けて、リスボンやポルトを含む45の自治体で夜間外出禁止令を復活、ポルトガルにバカンスに出かけても、夜の外出はできない不完全燃焼のバカンスになりかねません。

 そして、地中海に浮かぶマルタ島(マルタ共和国)などは、非常に厳しい入国制限を敷くことになり、ワクチン接種証明書(しかも、2回目のワクチン接種から14日以上経過していなければならない)に加えて、マルタ行きの飛行機搭乗の際に検査の陰性証明を提出することが義務付けられています。

 人口50万人の地中海の小さな島であるマルタは、EU圏内で最もワクチン接種が進んだ国の一つであり、成人国民の79%が2回のワクチン接種が完了しています。にもかかわらず、感染者が再び増加して100人近くになり始め、しかも感染者の90%はワクチン未接種の人であったこともあって、現在のヨーロッパ全体のデルタ変異種の拡大を鑑みて、この措置を決定したと思われます。

 しかし、すでに近々のマルタ行きを予約していた観光客で、ワクチン接種が済んでいない人、または、済んでいても2回目のワクチン接種から14日間経過していない人は、入国できないわけで、この急なマルタの入国制限に憤っています。

 結局のところ、フランス国内でのバカンスが今のところは、一応、安泰なわけで、概ね83%のフランス人は、予定どおりに例年よりも2割り増しの贅沢なバカンスを楽しむことになると思います。

 しかし、フランス国内とて、第4波は7月末か8月初めか??などと言い始めていて、今まで、私たちは、第1波から第3波を経験してきて、今、第4波の前にいる・・などと、もう第4波ありきの感じになっています。

 下手をすると、8月には、国内でも、また再度、制限が加わって、「7月に行っときゃよかった・・」なんてことになるかもしれません。 

 日本人である私は、今はことあるごとに、もうすぐ始まる日本でのオリンピックに伴う入国制限のことを考えてしまうのですが、やっぱりオリンピックともなれば、世界中のオリンピック関係者が日本に入国するわけで、そりゃあもう、デルタ変異種はもとより、様々な変異種の巣窟になりかねないわけで、小さなマルタ島でさえ、観光客の受け入れに、2回のワクチン接種済み(しかもワクチン接種後14日以上経過要)+陰性証明書と制限しているのだから、オリンピック関係者にも同等の制限を敷いても良かったんじゃないかな?などと思ってしまいます。


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2021年7月10日土曜日

無観客になった東京オリンピックについてのフランスでの報道

   



 オリンピックを目前に控えた日本で非常事態宣言が発令され、その直後に今年の東京オリンピックが無観客で開催されることになったことは、フランスでもすぐに報道されました。

 「デルタ変異種の出現とともに、感染状況が悪化している日本は、非常事態宣言が発令され、20時以降のレストランの営業も制限(アルコールの提供も禁止)され、コンサート等も21時までに制限され、その上、ワクチン接種も国民の15%しか済んでおらず(2回の接種)、オリンピック選手だけでも1万1千人が全世界から集まるこの世界的な大会において、感染拡大回避のために、オリンピックを無観客で行うことに決定した」「入場できるいくつかの会場でさえも、観客の数は定員の半分を超えてはならない」と伝えられています。


 フランスの感染症の専門家などは、テレビのニュース番組で、「現在の東京の状況を鑑みると、これ以外の選択肢はないと思います」などと語っていたので、「ちゃんと日本が危険な状態は理解されているんだ・・」とちょっとホッとするような感じもしましたが、このオリンピックについては、なかなかの辛口の報道も目立ちます。

 見出しだけでも、「東京オリンピック・どこまで失敗が続くのか?」、「歴史上、最も高額な負債を負ったオリンピック」「密室でのオリンピック」「オリンピック無観客を発表・イライラする決定」などなど、見出しだけでもわかるオリンピックの失敗を匂わせる内容です。


<以下、フランスでのいくつかの報道の内容>

 2011年の津波から10年後に「完全復興大会」を公言してきた彼らにとっては、パンデミックのために、歴史上初めて1年延期になった時点で、一回目のダメージ。そして、延期を決めた時点で、彼らは、「一年後には、コロナウイルスに対する人類の勝利の証としてオリンピックを開催する」と声明を発表しましたが、今年の3月の時点で、海外からの観客をシャットアウトした時点から、再び、影を落とし始めました。

 オリンピック開催は、ギリギリまで決定されず、強引な国際オリンピック委員会(IOC)や煮え切らない菅政府の対応に、国民の多くが最後までオリンピック開催に反対し、オリンピックの開催が「人々を結びつける」どころか、日本列島を分断しました。

 オリンピック開催にもかかわらず、ワクチン接種にアクセルがかかり出したのは、今年の5月に入ってからで、2回のワクチン接種が済んでいるのは、未だ国民の15%程度。

 オリンピック延期を決定して以来、16ヶ月間もの間の全てが不確実な期間をジリジリと過ごした挙句に決定したのは、無観客開催。

 さらに観客をシャットアウトしたことで、チケットは払い戻し、これは、オリンピック収益の15〜20%が失われることを意味しています。これに加えて、無観客になることで、スポンサーが撤退する恐れが加わりました。

 キヤノンや食品大手の味の素を含む十数社の日本企業は、すでにプロモーションイベントをキャンセルし、会場のブースを閉鎖すると述べています。

 この国がオリンピックで呪われたのはこれが初めてではない。1940年、第二次世界大戦のために東京はすでにオリンピックをキャンセルしなければなりませんでした。

 この無観客オリンピックの発表は、8月22日まで東京で緊急事態宣言を復活させるという日本政府の決定の数時間後に行われ、オリンピックの全期間を網羅する措置となります。同時に日本政府はこの期間中に感染を減少させ、緊急事態宣言を解除させるという課題も負ったことになります。

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 フランスでの報道は、概ねこのような内容ですが、つくづく始まる前から「大失敗感」満載のオリンピックが「やれやれ、終わってみれば、めでたしめでたし・・」となる日が来るのかどうか? それとも、この大失敗ストーリーに続編が続くのか、歯に衣着せないフランスの報道は、恐ろしいのです。



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